説明

ボディタオルおよびその製造方法

【課題】ボディタオルの織成に使用する経糸と緯糸を工夫することで、より優れた機能性を発揮するボディタオルの製造法の提供。
【解決手段】ボディタオルにおける経糸と緯糸により組成された生地のうち、経糸と緯糸の一方または両方が、太さの異なる複数の長繊維(フィラメント糸)の絡み糸1(束糸)により織成。従来品にはない高い泡立ち性とコシの強さを有したボディタオルを得ることができ、しかも他の種類の糸の混在や、生地の中に部分的に細めの同じ太さのフィラメントを複数本絡ませて全体太さを細くした細めのフィラメントを織り込むといった従来の混み入った加工を最小限度に抑えることができるために生産性に優れ、しかも低コストを実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、おもに風呂場などにおいて皮膚洗浄の目的で用いられる各種の繊維製ボディタオルの改良に関し、ボディタオルとしての風合いを良好にするとともに、とくに泡立ち性を著しく向上させることを目的とする。ボディタオルは主に顔や腕、あるいは胸部などにはふんわりとした軟質の接触感覚を有しつつも1枚のボディタオルとして十分なコシの強さを維持し、しかも泡立ち性が高いことが要求される。
【背景技術】
【0002】
汎用のボディタオルとしては、マッサージ効果や垢擦り効果を高めるために、天然繊維製の布生地の緯糸に対し、コシの強さを維持する必要上から太い意匠撚糸を一定の間隔を隔てて平行して織り込み、またこの太い意匠撚糸の間に細い意匠撚糸を挟装状態にて織り込むようにしたもの(特開2002−191527号公報参照)が知られている。
【0003】
また適度の皮膚刺激、洗浄性、速乾性、寸法安定性を向上する目的のもとに、速乾性及び吸水性等を有する基布経糸部と、泡立ち、速乾性、軽量性および寸法安定性等を有する基布緯糸部に、パイナップル繊維等の粗剛性天然繊維からなるパイル糸条部とを組合わせて風合い測定数値に基づく所望の硬さ等が得られるようにしたもの(特開平9−131276号公報参照)も知られている。
【0004】
さらにその後、泡立ち性をより一層向上させる目的から、経糸と緯糸とで織成するボディタオルを、モノフィラメント糸からなる経糸の複数本を略等間隔置きに引き揃えるとともに、この引き揃えられた複数の経糸を、所定間隔の空を設けた状態で繰り返し配置し、この経糸にモノフィラメントの緯糸を打ち込むことにより、前記空を設けた部分の緯糸が渡り糸となったタオル素材を熱処理することにより、前記渡り糸となっている緯糸部分が表裏の少なくとも一方に曲成されて突出するようにしたボディタオルおよびその製造法が本発明者らによって開発された(特許第4385029号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−191527号公報
【特許文献2】特開平9−131276号公報
【特許文献3】特許第4385029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1および特許文献2に記載されているものにあっては、天然繊維製の布生地の緯糸間に、太い意匠撚糸を平行して織り込むためにたとえばウオータージェットルームやエアージェットルームのような高生産性の織機を用いて生産することが困難であるところから必然的に杼式あるいはレピア式の織機によることになるために生産性が悪く、コスト高となるのを免れない。
【0007】
また繊度の大きな糸や意匠撚糸を用いる場合においては、生地組織が複雑化するばかりでなく生産上においても多くの手間がかかりコスト高となる問題もある。さらに特許文献3に開示されているものにあっては、泡立ち性が向上し、しかも生産性の向上が見込まれるものの、実際の使用にあたっては顔や腕などの皮膚面に対するソフト感がある程度向上し、しかも泡立ちによる洗浄性も向上するが、背中や足裏部分に対する摩擦力不足により身体の部位によっては使用に適さないところから別途摩擦力の強いボディタオルをもう1枚用意する必要があり煩わしさが残るのが避けられない。
【0008】
さらにボディタオルの表面側と背面側とで肌当り硬さの異なる構成としたボディタオルや、あるいは肌当りの硬いボディタオルと肌当りの柔らかいボディタオルを重ね合わせて、端部を相互に縫い合わせることにより1枚のボディタオルとする試作もおこなったが、編み方(織りかた)が複雑となったり、また使い勝手が悪くなったり、さらに著しくコスト高となる等の課題がある。
【0009】
つまり従来品のボディタオルには一般に、複数本の同じ太さの長繊維を束ねて1本の糸とした絡み糸が用いられている。この場合に一番硬い糸でも42.85(デニール)×7本絡みのフィラメント糸が用いられており、この場合においては1本の糸束全体で約300デニールということになる。そして基本的には同じ太さの複数の長繊維絡み糸を用いてボディタオルを織成するとともに、縦横に織成した生地の中に、細めの同じ太さのフィラメントを複数本絡ませて全体太さを細くした細めのフィラメントを部分的に織り込むことにより泡立ち性の向上をはかっていた。
【0010】
この場合に、ボディタオルにおいては同じ太さからなる長繊維絡み糸を用いた場合であってもフィラメント糸の数を増やせば泡立ち性がある程度よくなることは知られているが、単にフィラメント糸の数を増やしただけではボディタオルとしてのコシの強さが失われて商品性が損なわれるために、同じ太さからなる長繊維絡み糸を用いて泡立ち性の良好なボディタオルを得るには限界があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで本発明においては上記の課題を解決し、とくに従来のボディタオルでは得られないボディタオルとしての十分なコシの強さを維持することにより風合いを良くするとともに、従来品にも増してボディタオルの泡立ち性をより一層向上させるようにしたものである。
【0012】
具体的には経糸と緯糸により組成された生地が、経糸と緯糸のうち、少なくとも一方または両方が太さの異なる複数の長繊維(フィラメント糸)の絡み糸(束糸)により織成されていることを特徴としたボディタオルおよびその製造方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
太さの異なる複数の長繊維(フィラメント糸)の絡み糸は、複数の太い糸と複数の細い糸とが混在した状態で1本の束糸として絡んでいるために、それ自体が高い水分保持力および泡立ち性を有しており、単一種類の太さの異なる複数の長繊維(フィラメント糸)の絡み糸をもって経糸と緯糸により縦横に織成されるボディタオルを製造する場合に、緯糸のみに用いても著しく泡立ち性が向上する。またこの場合に経糸と緯糸の両方に用いれば泡立ち性がより一層向上するばかりでなく、泡立ち性向上のために格別複雑な糸加工を必要としない。
【0014】
これにより石鹸やシャンプー等を使用した場合に、従来品にはない高い良好な風合いや泡立ち性とコシの強さを有したボディタオルを得ることができ、しかも他の種類の糸の混在や、生地の中に部分的に細めの同じ太さのフィラメントを複数本絡ませて全体太さを細くした細めのフィラメントを織り込むといった従来の混み入った加工を必ずしも必要としないために生産性に優れ、しかも低コストを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例であるボディタオルの全体をあらわした概略図、およびその一部拡大図。
【図2】本発明に拘わるボディタオルを織成するための、太さの異なる複数の長繊維(フィラメント糸)の絡み糸をもって1本の糸を構成している状態をあらわした部分拡大図。
【図3】図2にあらわした糸を経糸と緯糸との両方に用いる場合における経糸と緯糸との交差状態をあらわした部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下において本発明の具体的な内容について図面をもとに説明をすると、1は本発明のボディタオル織成に用いられる絡み糸であって、該絡み糸1は太い長繊維(フィラメント)の糸2が4本と、細い長繊維(フィラメント)の糸3が7本により互いに絡ませた状態にて全体として1本(1束)の絡み糸1を構成している。
【0017】
この場合の各長繊維絡み糸2および3については、ナイロンやポリエステルなどの合成樹脂性のフィラメント糸等、従来より使用されてきた汎用の長繊維フィラメント糸と同様の成分からなるものでよく、ただ太さの異なる複数のフィラメント糸を、複数の径の異なるノズルから射出し、その後クリンプ加工(捲縮加工)等を施すことにより、1本の糸束を構成する各個別の糸にうねりを生じさせて側面方向に向けた十分な膨らみを持たせて突出曲成させ、しかも糸をスプリング状にして伸縮性を持たせることにより1本の糸束として十分な弾力性と膨らみによる保湿性の向上をもはかることができるようにしたものである。
【0018】
これにより各糸束がボディタオルBTの側面方向に突出してふんわりとした軟質の接触感覚が生じて肌当りが柔らかで滑らかにすることができる。なおこの場合の絡み状態については糸束を構成する各長繊維のウエーブをもって相互に絡ませた状態とし、あるいは各長繊維糸を相互に撚り糸状に絡ませて順次成形することもできる。
【0019】
さらにこの場合に用いられる長繊維のフィラメントについては、1本の糸束を構成する太さの異なる複数の長繊維のうち、少なくとも1本または複数本は断面が楕円や長円形、あるいは三角や四角形などの方形にするなど、真円ではないものを使用することにより光沢を増し、あるいは肌触りを良くして質感をより一層高めることもできる。
【0020】
上記した絡み糸1を用いて図1にあらわしたボディタオルBTを織成する。この実施例の場合に、絡み糸1は経糸(ボディタオルの長さ方向に向けた糸)4のみならず、経糸4・4間に交差方向に差し込まれる緯糸(経糸4と交差方向に向けられた糸)5・5としても用いられる(図3を参照)。経糸4としての絡み糸1と緯糸5としての絡み糸1とを、経糸4・4間に緯糸5・5を交差方向に打ち込んで編みこむことにより全体として1枚のボディタオルBTを織成することができる。
【0021】
なお、上記の実施例においては本発明の太さの異なる複数の長繊維の絡み糸をボディタオルの経糸4・4と緯糸5・5との両方に用いた場合について説明をしたが、経糸は従来どおりの糸を用いるとともに、経糸間に織り込まれる緯糸についてのみ、さらには全緯糸のうち、例えば間欠箇所に織り込まれる一部の緯糸について用いただけでも泡立ち性を相当程度に向上させることができる。
【0022】
ボディタオルBTの織成には、ワイヤヘルドの上下動により交互に開口する筬前部分に、ウオータジェットなどにより開口に緯糸5が、予め設定されたパターンにて打ち込まれることによりボディタオルの素材が形成され、乾燥後熱処理工程を経て長尺のボディタオル材が順次出来上がり、これを適当な長さに裁断し、端部を縫製して本発明のボディタオルBTを完成させる。なお本発明品の製造には、必ずしも既述した織成工程を経ることに限られるものではなく、ウオータージェットやエアージェットなどのほかに別の編織機械を用いて編成したものであってもよい。
【0023】
また泡立ち性が良好であるだけでなく、ボディタオルとしての適度のコシの強さを維持し、しかも商品性を良好にするためには、経糸と緯糸の両方に用いる場合に限らず、経糸と緯糸のうち片方についてのみ用いる場合も含め、太さの異なる複数の長繊維束からなる絡み糸1の束強度に注意する必要がある。この場合に束強度が200デニールを下回るとボディタオルの生地が薄くなりボリュウム感がなくなって見栄えが悪くなるばかりでなく使い勝手が悪くなる。
【0024】
また反対に500デニールを上回るとかえってボディタオルの生地が厚ぼったくなって商品価値が下がるため好ましくない。そこでナイロン製の長繊維フィラメントを用いた絡み糸1の束を構成する場合に、太い長繊維と細い長繊維との太さと混合割合について種々の実験をおこなった結果を以下の実施例にあらわす。
【実施例1】
【0025】
50デニールのフィラメントを4本と20デニールのフィラメントを7本絡み合わせて合計で340デニールの絡み糸1とした。この絡み糸1を用いてボディタオルを織り上げたところ、完成したボディタオルBTは従来品に比して肌触りや泡立ち性においてきわめて優れており、しかもボディタオルとしての十分なコシの強さを有していた。
【実施例2】
【0026】
70デニールのフィラメントを2本と10デニールのフィラメントを20本絡み合わせて合計で340デニールの絡み糸1とした。この絡み糸1を用いてボディタオルを織り上げたところ、完成したボディタオルBTは上記実施例1のものに比して品質的に殆ど劣るところが少なかった。
【実施例3】
【0027】
100デニールのフィラメントを2本と10デニールのフィラメントを24本絡み合わせて合計で440デニールの絡み糸1とした。この絡み糸1を用いてボディタオルを織り上げたところ、完成したボディタオルBTは実施例1のものに比して泡立ち性とコシの強さ維持の面において共にそれほど遜色がなかった。
【実施例4】
【0028】
150デニールのフィラメントを1本と20デニールのフィラメントを10本絡み合わせて合計で350デニールの絡み糸1とした。この絡み糸1を用いてボディタオルを織り上げたところ、完成したボディタオルBTは実施例3のものに比して泡立ち性とコシの強さ維持の面において共にそれほど遜色がなかった。
【実施例5】
【0029】
70デニールのフィラメントを1本と、30デニールのフィラメントを5本絡み合わせて合計で220デニールの絡み糸1とした。この絡み糸1を用いてボディタオルを織り上げたところ、完成したボディタオルBTは泡立ち性の面においては従来品より良好であるものの、コシの強さ維持の面においては劣り、商品性としてはあまり良いとはいえなかった。
【実施例6】
【0030】
70デニールのフィラメントを2本と、30デニールのフィラメントを4本と、20デニールのフィラメントを4本と、10デニールのフィラメント6本絡み合わせて合計で400デニールの絡み糸1とした。この絡み糸1を用いてボディタオルを織り上げたところ、完成したボディタオルBTは実施例1〜実施例5のものに比して泡立ち性とコシの強さ維持の面において共にそれほど遜色がなかった。しかし太さの異なる糸を4種用いるためにコストの上昇は避けられなかった。
【実施例7】
【0031】
30デニールのフィラメントを2本と10デニールのフィラメント10本絡み合わせて合計で160デニールの絡み糸とした。この絡み糸を用いてボディタオルを織り上げたところ、完成したボディタオルは従来品に比べて泡立ち性の面ではある程度優れていたが、ボディタオルとしてのコシの強さとボリューム感がなく商品性の面ではあまり良好ではなかった。
【実施例8】
【0032】
200デニールのフィラメントを2本と20デニールのフィラメント8本絡み合わせて合計で560デニールの絡み糸とした。この絡み糸を用いてボディタオルを織り上げたところ、完成したボディタオルは従来品に比べて泡立ち性の面で格別優れてはいなかった。
【0033】
上記したように、太さの異なる複数の長繊維の絡み糸を用いてボディタオルを織成した場合においては基本的に良好な泡立ち性の向上がみられるが、太目の長繊維の本数が2本以下と極端に少なかったり、また反対に多すぎてもコシの強さが維持しにくく、あるいは逆にコシが強すぎて商品性の面において十分ではなくなることが解った。
【0034】
さらに細めの長繊維を増やせば泡立ち性は良好となるものの、増やしすぎるとコシの強さを維持する必要から太めの長繊維を加えた場合に、糸束を構成する絡み糸の合計太さが増大しすぎてボディタオルとして製品化した場合に、やはり商品性の面において十分ではなくなることが解った。上記からみて結論的には太さの異なる複数の長繊維の絡み糸(束糸)を用いてボディタオルを織成する場合においては、絡み糸(束糸)の全体太さが200(デニール)〜550デニールの範囲内、より好ましくは250(デニール)〜500デニールの範囲内であることが必要であった。
【符号の説明】
【0035】
1 絡み糸
2 太い長繊維(フィラメント)の糸
3 細い長繊維(フィラメント)の糸
4 経糸
5 緯糸
BT ボディタオル



































【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸と緯糸により組成されたボディタオルの生地が、太さの異なる複数の長繊維(フィラメント糸)の絡み糸(束糸)により織成されていることを特徴としたボディタオル。
【請求項2】
太さの異なる複数の長繊維(フィラメント糸)の絡み糸(束糸)がボディタオルの少なくとも一部に織成されているところの請求項1に記載のボディタオル。
【請求項3】
太さの異なる複数の長繊維(フィラメント糸)の絡み糸(束糸)が複数の長繊維の撚り糸からなるものであるところの請求項1に記載のボディタオル。
【請求項4】
太さの異なる複数の長繊維の絡み糸(束糸)のうち、少なくとも1本は断面が楕円や長円形、あるいは方形などの真円ではないものを使用するようにした請求項1に記載のボディタオル。
【請求項5】
絡み糸(束糸)の全体太さが250(デニール)〜500デニールの範囲内であるところの請求項1〜請求項4のいずれか1に記載のボディタオル。
【請求項6】
太さの異なる複数の長繊維(フィラメント糸)の絡み糸(束糸)を経糸と緯糸のうち一方または両方に用いて織成するようにしたボディタオルの製造方法。
【請求項7】
太さの異なる複数の長繊維(フィラメント糸)の絡み糸(束糸)をボディタオルの経糸と緯糸のうち一方または両方の少なくとも一部に用いて織成するようにしたボディタオルの製造方法。
【請求項8】
太さの異なる複数の長繊維のうち、少なくとも1本は断面が楕円や長円形、あるいは方形などの真円ではないものを使用するようにした請求項6または請求項7に記載のボディタオルの製造方法。
【請求項9】
絡み糸(束糸)の全体太さが250(デニール)〜500デニールの範囲内にあるものを用いるようにした請求項6〜請求項8のいずれか1に記載のボディタオルの製造方法。








【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−112080(P2012−112080A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263783(P2010−263783)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(506106084)株式会社山敏 (2)
【Fターム(参考)】