説明

ボビン処理装置及び糸巻取システム

【課題】ケーブルの取り扱いを容易にしたボビン処理装置を提供する。
【解決手段】ボビン処理装置は、複数の電子機器32を制御する制御基板(メイン基板及びスレーブ基板31)と、各電子機器32を接続するための複数の基板側コネクタ36と、を備えている。そして、制御基板と、複数の基板側コネクタ36とは、多芯ケーブル39によって接続されている。このように、複数のコネクタと制御基板とを多芯ケーブル39によってまとめて接続することで、配線の取り回しが簡単になり、配線の省スペース化も実現できる。また、配線のからまりを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボビン処理装置における電子機器の配線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1が開示するようなボビン処理装置が知られている。このボビン処理装置は、搬送トレイに載置した給糸ボビンを所定の搬送経路に沿って搬送して、当該給糸ボビンを、糸巻取装置が備える巻取ユニットへと供給するように構成されている。
【0003】
この種のボビン処理装置は、ボビン巻取ユニットにおいて給糸ボビンからの糸の解舒を適切に行うことができるようにするため、給糸ボビンに対して所定の処理(例えば糸の口出し処理)を行うように構成されている。この種の処理を適切に行うために、ボビン処理装置には、給糸ボビンの存在を検知するボビンセンサや、前記搬送トレイの存在を検知するトレイセンサなど、各種の電子機器を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−247517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種のボビン処理装置において、センサなどの電子機器が多い場合には、配線が複雑になりケーブルの取り扱いが容易でなくなるという問題がある。特に、ケーブルの本数が多くなると、ケーブル同士が絡まり易くなる。この点、特許文献1は、センサの位置に関しては記載されているもの、センサの配線構造については何ら記載されていない。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、ケーブルの取り扱いを容易にしたボビン処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の観点によれば、供給された給糸ボビンに所定の処理を行って糸巻取装置に順次供給するボビン処理装置の以下の構成が提供される。即ち、このボビン処理装置は、複数の電子機器を制御する制御基板と、各電子機器を接続するための複数の基板側コネクタと、を備えている。そして、前記制御基板と、複数の基板側コネクタとは、多芯ケーブルによって接続されている。
【0009】
これにより、複数のコネクタと制御基板とを多芯ケーブルによってまとめて接続することができるので、配線の取り回しが簡単になり、配線の省スペース化も実現できる。また、配線のからまりを防止することができる。
【0010】
上記のボビン処理装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記制御基板は、メイン基板と、複数のスレーブ基板と、から構成される。前記基板側コネクタは、複数のスレーブ基板のうち何れか1つと、前記多芯ケーブルによって接続されている。
【0011】
即ち、制御基板を分割してスレーブ基板を複数設けたことにより、各スレーブ基板を、ボビン処理装置の各部に分散して配置することが可能となる。これにより、スレーブ基板を適切な位置に配置することができるので、当該スレーブ基板と基板側コネクタとを接続するケーブルを多芯ケーブルによってまとめ易くなり、ケーブル長も短くなるので、配線の省スペース化を実現することができる。
【0012】
上記のボビン処理装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、このボビン処理装置は、ベース体を備える。前記ベース体は、前記基板側コネクタが固定されるコネクタ固定面を有している。前記コネクタ固定面は略水平に配置される。前記電子機器は、前記コネクタ固定面よりも上方に配置されている。一方、前記多芯ケーブルは、複数本の基板側ケーブルからなり、当該複数本の基板側ケーブルを束ねた結束部が、前記コネクタ固定面よりも下方に配線されている。
【0013】
このように、多芯ケーブルをコネクタ固定面の下方に配置したので、多芯ケーブルが不必要に露出しなくなり、メンテナンス時などに多芯ケーブルが邪魔になることを防ぐことができる。
【0014】
本発明の別の観点によれば、上記のボビン処理装置と、前記ボビン処理装置に給糸ボビンを供給するボビン供給部と、前記ボビン処理装置によって所定の処理が施された給糸ボビンから糸を巻き取る糸巻取装置と、を備える糸巻取システムが提供される。
【0015】
即ち、上記ボビン処理装置は、配線の取り回しが簡単になり、配線のからまりを防止することができるので、ボビン処理装置の保守整備作業の効率を向上させることができる。従って糸巻取システム全体の生産性も向上させることができる。
【0016】
上記の糸巻取システムにおいては、前記ボビン供給部はリング精紡機であり、前記糸巻取装置は、自動ワインダであることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、リング精紡機と自動ワインダとの間の限られたスペースでも容易に電気配線を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る自動ワインダシステムの全体的な構成を示す概略平面図。
【図2】ボビン処理装置の斜視図。
【図3】制御基板と電子機器の接続方法を説明する図。
【図4】電子機器とコネクタの様子を示す正面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1に示すのは、本実施形態に係るボビン処理装置3を備えた自動ワインダシステム(糸巻取システム)1の概略的な平面図である。
【0020】
この自動ワインダシステム1は、自動ワインダ(糸巻取装置)2と、ボビン処理装置3と、ボビン供給装置(ボビン供給部)4と、を備えている。
【0021】
自動ワインダ2は、複数の巻取ユニット5を多数並べて備えている。各巻取ユニット5は、紡績糸が巻かれた給糸ボビンから紡績糸を解舒し、巻取ボビンに巻き取ってパッケージを形成する公知の構成である。自動ワインダ2には、各巻取ユニット5まで給糸ボビンを自動的に搬送するための供給路6が形成されている。また、自動ワインダ2には、各巻取ユニット5から排出される空ボビンを搬送するための回収路7が形成されている。
【0022】
前記供給路6及び回収路7はベルトコンベア等から構成されており、搬送トレイを搬送することができるように構成されている。この搬送トレイは、給糸ボビンを略直立状態で載置することができるように構成されている。
【0023】
給糸ボビンは、前工程の精紡機において生成された紡績糸を、ボビン管の周囲に巻き付けたものである。精紡機で生成された給糸ボビンは、ボビン供給装置4まで運搬され、当該ボビン供給装置4に投入される。ボビン供給装置4は、投入された給糸ボビンを、搬送トレイの上に一本ずつ略直立状態で載置していくように構成されている。このボビン供給装置4は、搬送トレイの上に給糸ボビンを載置するためのボビンシュート9を備えている。
【0024】
ボビン処理装置3は、ボビン供給装置4と自動ワインダ2との間に配置されている。ボビン供給装置4から供給された給糸ボビンは、そのままでは自動ワインダ2において糸を適切に解舒できない状態である。そこで、ボビン処理装置3において、ボビン供給装置4から供給された給糸ボビンに対して予め適切な処置を行うように構成されている。ボビン処理装置3で行われる処置としては、例えば、バンチ巻き解舒、糸端処理、口出し処理などである。なお、バンチ巻き解舒、糸端処理、及び口出し処理については、例えば特許文献1に記載されている。ボビン処理装置3は、バンチ巻き解舒を行うためのバンチ解舒装置10、糸端処理を行うための糸端処理装置11、及び口出し処理を行うための口出し装置12を備えている。
【0025】
また、ボビン処理装置3は、当該ボビン処理装置3が備える各構成を制御するための制御部を備えている。この制御部は、オペレータが操作するための操作パネル14を有している。自動ワインダシステム1のオペレータは、操作パネル14を操作することにより、ボビン処理装置3の起動、停止、又は非常停止などの各種の操作を行うことができる。
【0026】
ボビン処理装置3は、地面(ボビン処理装置3の設置面)に対して略水平になるように設置されたベース体21を備えている。ボビン処理装置3が備える各構成は、このベース体21に対して直接又は間接的に取り付けられている。このベース体21には、搬送トレイを搬送する搬送路8が形成されている。この搬送路8は、ベルトコンベア等から構成されている。図1に示すように、搬送路8は、自動ワインダ2の供給路6と回収路7とを接続するように構成されている。
【0027】
この自動ワインダシステムにおける搬送トレイの流れについて説明すると、以下の通りである。
【0028】
ボビン処理装置3は、給糸ボビンの有無を検出するためのボビンセンサを、搬送路8の各所に備えている。また、ボビン処理装置3は、搬送トレイの有無を検出するためのトレイセンサを、搬送路8の各所に備えている。なお、以下の説明では、ボビンセンサとトレイセンサをまとめて、単に「センサ」と呼ぶ場合がある。
【0029】
例えば、空の搬送トレイ(ボビンが載っていない搬送トレイ)がボビンシュート9の直下位置16まで到達すると、当該空の搬送トレイが前記センサによって検知される。この場合、制御部は、ボビンシュート9を作動させ、前記空の搬送トレイの上に給糸ボビンを1つ、略直立状態で載置する。
【0030】
ボビンシュート9によって給糸ボビンが載置された搬送トレイは、下流側のバンチ解舒装置10へ向けて搬送路8を搬送される。給糸ボビン(及び搬送トレイ)がバンチ解舒装置10の正面位置17に到達したことをセンサが感知した場合、制御部は、バンチ解舒装置10を動作させて、給糸ボビンに形成されているボトムバンチを除去する。
【0031】
ボトムバンチを除去された給糸ボビンは、更に下流側の糸端処理装置11へ向けて搬送路8を搬送される。給糸ボビン(及び搬送トレイ)が糸端処理装置11の正面位置18に到達したことをセンサが感知した場合、制御部は、糸端処理装置11を動作させて、給糸ボビンの外周に巻き付いているバックワインド糸を切断し、糸端を形成する。
【0032】
バックワインド糸を切断された給糸ボビンは、更に下流側の口出し装置12へ向けて搬送路8を搬送される。給糸ボビン(及び搬送トレイ)が口出し装置12の正面位置19に到達したことをセンサが感知した場合、制御部は、口出し装置12を動作させて、糸端処理装置11で形成された糸端をボビン管の内側に挿入する(口出し)。
【0033】
口出しされた給糸ボビンは、搬送路8を更に下流へと搬送され、自動ワインダ2の供給路6へと供給される。給糸ボビンは、供給路6を搬送され、巻取ユニット5のうち何れかに供給される。
【0034】
巻取ユニット5においては、給糸ボビンから糸の解舒が行われ、解舒された糸がパッケージに巻き取られる。糸が全て解舒されたボビン(空ボビン)を乗せた搬送トレイは、巻取ユニット5から排出され、回収路7を介して再びボビン処理装置3の搬送路8に戻される。
【0035】
搬送路8において、ボビンシュート9の上流側には、ボビンプロー13が配置されている。ボビンプロー13は、回収路7から搬送路8に戻ってきた搬送トレイに載置されている空ボビンを抜き取るための装置である。空ボビンを乗せた搬送トレイがボビンプロー13の直下位置20に到達したことをセンサが検知した場合、制御部は、ボビンプロー13を動作させて、当該空ボビンを搬送トレイから抜き取る。抜き取られた空ボビンは、図2に示す空ボビンシュート23から放出される。空ボビンシュート23の先には、空ボビンを回収するためのコンテナ(図略)が配置されており、当該コンテナ内に空ボビンが回収される。
【0036】
なお、巻取ユニット5からは搬送路8に戻ってくるボビンには、糸が残ったボビンも含まれている。ボビンに十分な糸が残っている場合には、当該ボビンを再度自動ワインダ2に供給することにより、残りの糸を巻取ユニット5において巻き取ることができる。そこでボビンプロー13は、糸が十分に残ったボビンが乗った搬送トレイが搬送されてきたときには、ボビンの抜き取りを行わないように構成されている。一方、多少の糸は残っているものの、巻取ユニット5で巻き取りを行うことができる程度には残っていないボビン(極小残糸付ボビン)の場合は、空ボビンと同様に、ボビンプロー13によって搬送トレイから抜き取られる。
【0037】
本実施形態のボビンプロー13は、空ボビンと極小残糸付ボビンを分別するために、ボビンに残った極小残糸を検出する極少残糸センサを備えている。搬送トレイから抜き取ったボビンに極少残糸が無い場合(空ボビンの場合)、ボビンプロー13は、前述のように空ボビンシュート23からボビンを放出する。一方、ボビンに極少残糸が残っていることを極少残糸センサで検知した場合、ボビンプロー13は、図2に示す極少残糸付きボビンシュート24からボビンを放出する。極少残糸付きボビンシュート24の先には回収ボックス25が配置されており、この回収ボックス25内に極少残糸付きボビンが回収される。
【0038】
次に、本実施形態のボビン処理装置3の電気的な構成について説明する。
【0039】
前述のように、このボビン処理装置3は、給糸ボビンに対して適切な処置を行うことができるようにするため、各種のセンサ(ボビンセンサ、トレイセンサ、極少残糸センサなど)を複数の所定箇所に備えている。また、各装置を駆動するためのエアシリンダを制御する電磁バルブ、駆動源としての電動モータなどを各所に備えている。このように、ボビン処理装置3の各所に配置されたセンサ、電磁バルブ、電動モータなどを、まとめて「電子機器」と呼ぶことがある。これら電子機器は、制御部によって制御されている。
【0040】
前記制御部は、前記操作パネル14と、制御基板から構成されている。
【0041】
制御基板には、電子機器を制御するための制御回路が形成されている。また、操作パネル14及び前記電子機器は、ケーブルを介して制御基板に接続されている。これにより、制御基板において各電子機器の制御が可能となっている。
【0042】
本実施形態のボビン処理装置3において、制御基板は、メイン基板30と、複数のスレーブ基板31(後述)と、で構成されている。
【0043】
メイン基板30は、金属製の基板ケース15の内部に収容されている。本実施形態では、基板ケース15内のメイン基板30は縦置きとされている(即ち、メイン基板30の回路形成面が、地面に対して略垂直となるように配置されている)。これにより、基板ケース15の内部に風綿(糸くず)等が侵入したとしても、当該風綿がメイン基板30の回路形成面に蓄積しにくくなる。従って、風綿によるトラブルを未然に防ぐことができるとともに、基板ケース15内の清掃の手間を軽減することができる。
【0044】
スレーブ基板31は、図3に示すように、メイン基板30と各電子機器32とを結ぶ配線経路の途中に配置されている。電子機器32がモータや電磁バルブなどの場合、スレーブ基板31は、メイン基板30からの制御信号に基づいて、前記電子機器32を制御するように構成されている。また、電子機器32がセンサなどの場合、スレーブ基板31は、当該電子機器32から受信した信号を、メイン基板30に送信するように構成されている。以上の構成により、ボビン処理装置3が備える各電子機器32を。メイン基板30において集中的に制御することができる。
【0045】
なお、従来のボビン処理装置では、制御基板をマスターとスレーブに分割せずに、1つの基板で各電子機器の制御を行っていた。このように1つの制御基板で電子機器を制御する構成の場合、各電子機器と制御基板とを接続するケーブルは、1つの制御基板に集中的に接続されることになる。従って、電子機器の数が増えるに従い、制御基板から引き出されるケーブルの本数が多くなり、配線やメンテナンスが煩雑になるという問題があった。また、制御基板から遠い位置の電子機器に対しては、ケーブルの長さが長くなってしまっていた。
【0046】
この点、本実施形態のボビン処理装置においては、制御基板をメイン基板30とスレーブ基板31とに分割し、かつ、スレーブ基板31を複数設けている。そして、各電子機器32は、何れかのスレーブ基板31に接続されるように構成されている。また図3に示すように、それぞれのスレーブ基板31は、1本の通信ケーブル33によってメイン基板30に接続されている。このように、メイン基板30とスレーブ基板31との間の通信は通信ケーブル33で行うように構成することで、メイン基板30から出るケーブルの本数を少なくすることができる。
【0047】
また、本実施形態ではスレーブ基板31を複数設けたので、1つのスレーブ基板31に接続される電子機器の数が膨大になることがない。従って、1つのスレーブ基板31に接続されるケーブルの本数が少なくなり、この点でも配線やメンテナンスが容易になる。また、スレーブ基板31を複数設けたので、それぞれのスレーブ基板31をボビン処理装置3の各部に分散して配置することが可能となる。これにより、スレーブ基板31を、電子機器32の近傍に配置することができるので、スレーブ基板31と電子機器32とを接続するケーブルの長さを短くすることができる。
【0048】
なお、このスレーブ基板31は透明プラスチック製のスレーブ基板ケース34に収容されている。このようにスレーブ基板31をケースに収容することにより、スレーブ基板31に風綿などが付着することを防止できる。また、スレーブ基板ケース34を透明プラスチック製とすることで、スレーブ基板31の表面に実装されたインジケータ等を外部から視認することができる。
【0049】
次に、スレーブ基板31と各電子機器との間の接続構造について、より詳しく説明する。
【0050】
図4に示すように、本実施形態のボビン処理装置3は、スレーブ基板31と各電子機器32とを接続するためのコネクタ35を備えている。このコネクタ35は、基板側コネクタ36と、機器側コネクタ37と、から構成されている。
【0051】
基板側コネクタ36とスレーブ基板31との間は、多芯ケーブル39によって接続されている。
【0052】
多芯ケーブル39は、複数本の基板側ケーブル39aを束ねた構成とされている。各基板側ケーブル39aは、各基板側コネクタ36と、スレーブ基板31とを接続している。複数本の基板側ケーブル39aは、両端部を除く途中部分同士が結束部39bによってまとめられて(結束されて)いる。結束部39bは、例えば可撓性を有するゴムチューブ等であり、当該ゴムチューブ内に複数本の基板側ケーブル39aが挿通されることで、当該複数本の基板側ケーブル39a同士が結束されている。これにより、1本の多芯ケーブル39が構成されている。
【0053】
以上のように、スレーブ基板31と基板側コネクタ36との間を多芯ケーブル39で接続することにより、基板側ケーブル39aがバラけたり、絡み合ったりすることを防止でき、ケーブルの取り扱いが容易になる。
【0054】
なお、制御基板と、複数の基板側コネクタとの位置関係が不適切である場合には、両者を繋ぐケーブルを多芯ケーブル39によって1本にまとめることが困難である。この点、本実施形態のボビン処理装置3ではスレーブ基板31を複数設けているので、当該スレーブ基板31をボビン処理装置3の各部に分散させて配置することができる。即ち、スレーブ基板31の配置自由度を高めることができる。これにより、1本の多芯ケーブル39によってまとめて配線を行い易い位置に、スレーブ基板31を配置することができる。
【0055】
一方、機器側コネクタ37と電子機器32との間は、機器側ケーブル40によって接続されている。そして、基板側コネクタ36と機器側コネクタ37とを嵌合させることにより、スレーブ基板31に対して電子機器32が接続されるように構成されている。また、基板側コネクタ36と機器側コネクタ37は嵌合を解除することが可能である。これにより、電子機器32を取り外すことができる。
【0056】
図4に示すように、ボビン処理装置3のベース体21は、略水平に配置されたコネクタ固定面38を有している。このコネクタ固定面38には、基板側コネクタ36が固定されている。このように基板側コネクタ36をベース体21に固定したので、当該基板側コネクタ36に対して機器側コネクタ37を抜き差しする作業が行い易くなっており、電子機器32の取り外し、交換などを容易に行うことができる。
【0057】
また本実施形態のボビン処理装置3では、基板側コネクタ36に対して、機器側コネクタ37を上方から嵌合させることができるように構成されている。即ち、基板側コネクタ36は、その接続側端部を上方に向け、かつ前記接続側端部をコネクタ固定面38の上面に露出させるようにして、コネクタ固定面38に固定されている。このように基板側コネクタ36が上を向いているので、オペレータがメンテナンスや電子機器の交換等を行う際などに、機器側コネクタ37の抜き差しを行い易くなっている。
【0058】
またボビン処理装置3が備える装置(例えば、バンチ解舒装置10、糸端処理装置11、口出し装置12、ボビンプロー13など)はベース体21の上方に配置されている。従って、電子機器32の多くは、コネクタ固定面38よりも上方に配置されている。一方、コネクタ固定面38の下方には、配線ダクト41が配設されている。この配線ダクト41の内部には、多芯ケーブル39の結束部39bが配線されている。即ち、多芯ケーブル39の結束部39bは、コネクタ固定面38を挟んで、大部分の電子機器32の反対側に配置されている。
【0059】
この点、従来のボビン処理装置では、全てのケーブルをベース体の上部に配線していたので、当該配線が煩雑になりケーブルの取り扱いが難しくなるだけでなく、メンテナンス時などに不必要に配線に触れてトラブルの原因となる可能性があった。本実施形態では上記のように、電子機器32の反対側に多芯ケーブル39を配線しているので、ケーブルの取り扱いが容易になり、電子機器32のメンテナンスなどの際に、多芯ケーブル39に不必要に配線に触れることがなくなり、トラブルを未然に防ぐことができる。なお、各電子機器が取り外し可能になっているので、下方に配線された多芯ケーブル39のメンテナンスも自由に行うことができる。
【0060】
なお、ケーブルの本数が多い場合には、コネクタ固定面38下方の配線ダクト41内にケーブルを配線する作業が困難になることが予想される。この点、本実施形態では、複数本の基板側ケーブル39aを多芯ケーブル39として1本にまとめているので、当該ケーブルの取り扱いが容易になっており、配線ダクト41内への配線作業等をスムーズに行うことができる。
【0061】
なお、図4に示すソレノイド32aのように、コネクタ固定面38よりも下方に配置された電子機器があっても良い。この場合であっても、ソレノイド32aの機器側ケーブル40をコネクタ固定面38から上方に引き出せば、上向きの基板側コネクタ36に機器側コネクタ37を接続することができる。
【0062】
以上で説明したように、本実施形態のボビン処理装置3は、供給された給糸ボビンに所定の処理を行って自動ワインダ2に順次供給するものであって、以下のように構成されている。即ち、このボビン処理装置3は、複数の電子機器32を制御する制御基板(メイン基板30及びスレーブ基板31)と、各電子機器32を接続するための複数の基板側コネクタ36と、を備えている。そして、制御基板と、複数の基板側コネクタ36とは、多芯ケーブル39によって接続されている。
【0063】
これにより、複数のコネクタと制御基板とを多芯ケーブル39によってまとめて接続することができるので、配線の取り回しが簡単になり、配線の省スペース化も実現できる。また、配線のからまりを防止することができる。
【0064】
また、上記のボビン処理装置3は、以下のように構成されている。即ち、前記制御基板は、メイン基板30と、複数のスレーブ基板31と、から構成される。基板側コネクタ36は、複数のスレーブ基板31のうち何れか1つと、多芯ケーブル39によって接続されている。
【0065】
即ち、制御基板を分割してスレーブ基板31を複数設けたことにより、各スレーブ基板31を、ボビン処理装置3の各部に分散して配置することが可能となる。これにより、スレーブ基板31を適切な位置に配置することができるので、当該スレーブ基板31と基板側コネクタ36とを接続するケーブルを多芯ケーブル39によってまとめ易くなり、ケーブル長も短くなるので、配線の省スペース化を実現することができる。
【0066】
また、本実施形態のボビン処理装置3は、以下のように構成されている。即ち、このボビン処理装置3は、ベース体21を備える。ベース体21は、基板側コネクタ36が固定されるコネクタ固定面38を有している。コネクタ固定面38は略水平に配置される。電子機器32は、コネクタ固定面38よりも上方に配置されている。一方、多芯ケーブル39の結束部39bは、コネクタ固定面38よりも下方に配線されている。
【0067】
このように、多芯ケーブル39をコネクタ固定面38の下方に配置したので、多芯ケーブル39が不必要に露出しなくなり、メンテナンス時などに多芯ケーブル39が邪魔になることを防ぐことができる。
【0068】
また本実施形態の自動ワインダシステム1は、上記のボビン処理装置3と、ボビン処理装置3に給糸ボビンを供給するボビン供給装置4と、ボビン処理装置3によって所定の処理が施された給糸ボビンから糸を巻き取る自動ワインダ2と、を備えている。
【0069】
即ち、上記ボビン処理装置3は、配線の取り回しが簡単になり、配線のからまりを防止することができるので、ボビン処理装置3の保守整備作業の効率を向上させることができる。従って自動ワインダシステム1全体の生産性も向上させることができる。
【0070】
次に、上記実施形態の変形例を説明する。
【0071】
上記実施形態では、精紡機で生成された給糸ボビンをボビン供給装置まで運搬し、当該給糸ボビンをボビン供給装置に投入する構成として説明した。これに代えて、ボビン処理装置とリング精紡機との間を搬送路で繋ぎ、リング精紡機で生成された給糸ボビンが前記搬送路を通ってボビン供給装置まで送られてくるように構成することもできる。この構成によれば、リング精紡機で生成された給糸ボビンが、ボビン処理装置3を介して、自動ワインダに連続的に供給される。このように、リング精紡機から給糸ボビンが連続的に供給されるように構成しても良い。この場合、リング精紡機がボビン供給部に相当する。
【0072】
以上のように、この変形例に係る糸巻取システムにおいては、ボビン供給部はリング精紡機であり、糸巻取装置は自動ワインダである。
【0073】
即ち、リング精紡機と自動ワインダとの間のスペースは限られているので、配線の引き回しが困難になる場合がある。この点、本発明では、制御基板と電子機器との間の配線に多芯ケーブル39を採用しているので、当該配線を小さいスペースで構成することができる。従って、上記変形例の構成によれば、リング精紡機と自動ワインダとの間の限られたスペースでも容易に電気配線を行うことができる。
【0074】
以上に本発明の好適な実施の形態、及びその変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0075】
上記実施形態では、コネクタ固定面38が略水平であるとしたが、これに限らず、斜めであっても良いし、垂直であっても良い。
【0076】
上記実施形態では、「電子機器」として、センサ、電磁バルブ、及びモータ等を例示した。しかし、本明細書において「電子機器」とは制御基板と電気的に接続される機器ないし部材を含む広い概念であり、センサ、電磁バルブ、モータ等に限定されるものではない。
【0077】
図4においては、スレーブ基板31がコネクタ固定面38の下方に配置された様子が描かれている。この場合、多芯ケーブル39の全部を、コネクタ固定面38よりも下方に配線することができる。しかしスレーブ基板31の配置位置はこれに限らず、例えばコネクタ固定面38よりも上方に位置していても良い。この場合、基板側コネクタ36から下方に引き出された多芯ケーブル39は、コネクタ固定面38よりも下方を配線され後、コネクタ固定面38から上方に引き出されて、スレーブ基板31まで配線される。この場合であっても、コネクタ35の近傍においては、多芯ケーブル39の結束部39bはコネクタ固定面38の下方に配線されるので、コネクタ35まわりで配線が煩雑になることはない。このように、多芯ケーブル39の一部のみがコネクタ固定面の下方に配線される構成であっても良い。
【0078】
多芯ケーブル39の結束部39bは、複数本の基板側ケーブル39aを結束できる構成であればよく、上記実施形態で例示したゴムチューブに限定されない。
【0079】
上記変形例ではリング精紡機で生成された給糸ボビンが連続的に供給される構成としたが、リング精紡機以外にも、例えば空気式の精紡機で生成された給糸ボビンが連続的に供給される構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0080】
1 自動ワインダシステム(糸巻取システム)
2 自動ワインダ(糸巻取装置)
3 ボビン処理装置
4 ボビン供給装置(ボビン供給部)
21 ベース体
30 メイン基板(制御基板)
31 スレーブ基板(制御基板)
32 電子機器
36 基板側コネクタ
37 機器側コネクタ
38 コネクタ固定面
39 多芯ケーブル
39a 基板側ケーブル
39b 結束部
40 機器側ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された給糸ボビンに所定の処理を行って糸巻取装置に順次供給するボビン処理装置であって、
複数の電子機器を制御する制御基板と、
各電子機器を接続するための複数の基板側コネクタと、
を備え、
前記制御基板と、複数の基板側コネクタとは、多芯ケーブルによって接続されていることを特徴とするボビン処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のボビン処理装置であって、
前記制御基板は、メイン基板と、複数のスレーブ基板と、から構成され、
前記基板側コネクタは、複数のスレーブ基板のうち何れか1つと、前記多芯ケーブルによって接続されていることを特徴とするボビン処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のボビン処理装置であって、
ベース体を備え、
前記ベース体は、前記基板側コネクタが固定されるコネクタ固定面を有しており、
前記コネクタ固定面は略水平に配置され、
前記電子機器は、前記コネクタ固定面よりも上方に配置され、
前記多芯ケーブルは、複数本の基板側ケーブルからなり、当該複数本の基板側ケーブルを束ねた結束部が前記コネクタ固定面よりも下方に配線されていることを特徴とするボビン処理装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載のボビン処理装置と、
前記ボビン処理装置に給糸ボビンを供給するボビン供給部と、
前記ボビン処理装置によって所定の処理が施された給糸ボビンから糸を巻き取る糸巻取装置と、を備えることを特徴とする糸巻取システム。
【請求項5】
請求項4に記載の糸巻取システムであって、
前記ボビン供給部はリング精紡機であり、
前記糸巻取装置は、自動ワインダであることを特徴とする糸巻取システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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