説明

ボビン分離装置及び自動ワインダ

【課題】簡単な構成でボビンを分離することができるボビン分離装置を提供する。
【解決手段】ボビン分離装置12は、複数のボビン9が投入されるボビン投入部22と、ボビン投入部22に投入されたボビン群からボビン9を取り出すボビン取出部23と、を備える。ボビン取出部23は、複数のボビン皿26と、無端環状帯体25と、ボビン分離部材41と、を備える。ボビン皿26は、ボビン9を乗せることができる。無端環状帯体25は、ボビン皿26を、ボビン投入部22の載置面に対して垂直に駆動する。ボビン分離部材41は、ボビン皿26がボビン9を乗せて駆動される領域に沿って設けられ、各ボビン皿26に乗ったボビンを個別に分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、乱雑に供給されたボビンを一本ずつ分離するためのボビン分離装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、乱雑に供給されたボビンを一本ずつ分離する装置が提案されている。
【0003】
特許文献1は、不規則に供給されるボビン(コップ)を、一列に分離配列するための装置が開示されている。この装置は、ボビンを一個ずつ受け取り、次工程まで搬送する昇降機を有している。
【0004】
特許文献2は、集積されているボビン(チューブ)を取り出して移送するための装置を開示している。この装置は、ボビンを搬送する急傾斜コンベアを有している。コンベアが傾斜角を有して配設されているので、余計なボビンは帯行片から落下する。特許文献2は、これにより、ボビンを一本一本確実に移送できるとしている。
【0005】
特許文献3は、往復運動するフィーラを備え、このフィーラによって、糸の付いたボビンをエレベータから落下させる構成を開示している。特許文献3は、これにより、使用できないボビンを確実に排除することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−104875号公報
【特許文献2】特開平6−227747号公報
【特許文献3】特開昭60−232374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された装置は、昇降機に対してボビンを一本ずつ受け渡すために、コンベア、フラップ、摺動部材等を連携させて動作させる必要があり、装置が複雑化及び大型化する。
【0008】
特許文献2に記載された装置は、余分なボビンはコンベアから自然に落下していく構成なので、コンベアに対してボビンを一本ずつ受け渡すという複雑な機構(特許文献1のコンベア、フラップ、摺動部材等)は必要ない。ところが特許文献2の装置が移送する対象として想定しているのは、糸が巻かれていないボビンである。糸が巻かれていないボビンは、形状や重心が一定であるため、特許文献2のようにコンベアの傾斜で帯行片から落下させる構成で一本ずつ分離することが可能である。一方、糸が巻かれたボビンは、その形状や重心が不規則である。従って、糸が巻かれているボビンを、特許文献2の構成で一本ずつ分離することは困難である。
【0009】
また特許文献3の構成は、フィーラを駆動するための駆動機構を設ける必要があり、機構が複雑であった。また特許文献3の構成は、フィーラを駆動する際にはエレベータを停止させる必要があるので、ボビンの搬送速度も遅いものであった。
【0010】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、簡単な構成でボビンを分離することができるボビン分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0012】
本発明の観点によれば、以下の構成のボビン分離装置が提供される。即ち、このボビン分離装置は、複数のボビンが投入されるボビン投入部と、前記ボビン投入部に投入されたボビン群からボビンを取り出すボビン取出部と、を備える。前記ボビン取出部は、複数のボビン受け部材と、ボビン受け部材駆動部と、ボビン分離部材と、を備える。前記ボビン受け部材は、前記ボビンを乗せることができる。前記ボビン受け部材駆動部は、前記ボビン受け部材を、前記ボビン投入部の載置面に対して略垂直に駆動する。前記ボビン分離部材は、前記ボビン受け部材が前記ボビンを乗せて駆動される領域に沿って設けられ、前記各ボビン受け部材に乗ったボビンを個別に分離する。
【0013】
これにより、ボビンを略垂直方向に搬送しつつ分離することができるので、水平方向での装置の設置スペースを小さくすることができる。また、ボビン分離部材は、ボビンが搬送される方向に沿って配置されているので、設置スペースを増やすことなく長い区間でボビン分離を行うことができ、分離ミスも少ない。
【0014】
上記のボビン分離装置において、前記ボビン受け部材駆動部は、前記ボビン受け部材を、前記ボビン投入部の載置面に対して垂直に駆動することが好ましい。
【0015】
これにより、ボビンを垂直方向に搬送しつつ分離することができるので、水平方向での装置の設置スペースを小さくすることができる。
【0016】
上記のボビン分離装置においては、以下のように構成することもできる。即ち、前記ボビン受け部材駆動部は、前記ボビン受け部材を、前記ボビン投入部の載置面に対して傾斜した方向に駆動する。前記ボビン取出部は、前記ボビン受け部材に乗って搬送されるボビンから解舒された糸を切断するためのカッタを備える。
【0017】
このようにボビンの糸を切断することにより、ボビンからの糸が絡み合ってしまうことを防止できる。そして上記の構成によれば、ボビン受け部材によってボビンが斜め方向に搬送されるので、ボビンから解舒された糸をカッタに導入し易くなる。
【0018】
上記のボビン分離装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記ボビン分離部材は、前記ボビン受け部材に乗ったボビンに対して、当該ボビン受け部材の取り上げ側端部とは反対側から接触可能である。前記ボビン分離部材は、前記ボビン受け部材の取り上げ側端部側に向けて凸となる押出部を有する。そして当該押出部によって、前記ボビン受け部材に載置可能なボビンの本数を制限する。
【0019】
ボビン受け部材に乗ったボビンは、押出部によって押されるので、余分なボビンはボビン受け部材から落とされる。このように簡易な機構により、ボビン受け部材に乗せられるボビンの本数を制限することができるので、ボビンを一本ずつ分離することができる。
【0020】
上記のボビン分離装置は、以下のように構成することもできる。即ち、前記ボビン分離部材は、前記ボビン受け部材に乗ったボビンに対して、当該ボビン受け部材の取り上げ側端部とは反対側から接触可能である。前記ボビン分離部材は、前記ボビン受け部材の取り上げ側端部側に向けて凸となる押出部を有する。そして当該押出部によって、前記ボビン受け部材に載置可能なボビンの糸量を制限する。
【0021】
ボビン受け部材に乗ったボビンは、押出部によって押されるので、太いボビン(糸が多く巻かれたボビン)はボビン受け部材から落とされ、細いボビン(巻かれた糸が少ないボビン、又は糸が完全に巻き取られた空ボビン)はボビン受け部材の上に残る。このように簡易な機構により、ボビン受け部材に乗せられるボビンの糸量を制限することができるので、ボビンを糸量に応じて分離することができる。
【0022】
上記のボビン分離装置において、前記押出部は、前記ボビン受け部材が前記ボビンを乗せて駆動される方向で複数形成されることが好ましい。
【0023】
これにより、設置スペースを増やすことなく複数回のボビン分離を行うことができるので、分離ミスを低減することができる。
【0024】
上記のボビン分離装置において、前記ボビン分離部材は線状部材であり、当該線状部材を屈曲させることにより前記押出部が形成されていることが好ましい。
【0025】
このように、ボビン分離部材を線状部材で形成することで、当該ボビン分離部材の設置スペースが必要なく、かつ軽量に構成することができる。
【0026】
上記のボビン分離装置において、ボビン受け部材にはスリットが形成されており、前記線状部材は前記スリット内を通るようにして配置されていることが好ましい。
【0027】
これにより、ボビン受け部材に乗って搬送されるボビンに対して、ボビン分離部材を当てることができる。
【0028】
上記のボビン分離装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記ボビン受け部材駆動部は、回転軸が平行に設けられた少なくとも2つの回転ローラの周りをループ状にかけ渡されたシート状部材である。前記ボビン受け部材は、前記回転軸と平行な方向にボビンが載置できる形状である。前記線状部材は、前記シート状部材の幅方向に複数設けられている。
【0029】
このようにボビン受け部材駆動部をシート状に構成することにより、ボビン受け部材に乗ったボビンが奥(シート状部材側)に落ちることがない。また、ボビン受け部材駆動部をシート状に構成することにより、当該ボビン受け部材駆動部に対してボビン受け部材を安定して取り付けることができる。
【0030】
上記のボビン分離装置において、前記回転ローラの少なくとも1つを駆動させる駆動源を有し、前記駆動源はステッピングモータであることが好ましい。
【0031】
これにより、例えばボビンが詰まってボビン受け部材駆動部が駆動できなくなったとしても、ステッピングモータが脱調するので、当該モータの破損及び装置の破損を防止できる。
【0032】
上記のボビン分離装置においては、前記ボビン取出部に前記ボビンが詰まったことを検出すると、前記駆動源を逆回転させることが好ましい。
【0033】
これにより、ボビンの詰まりを速やかに解消できる。
【0034】
本発明の別の観点によれば、以下の構成の自動ワインダが提供される。即ち、この自動ワインダは、上記のボビン分離装置と、複数のワインダユニットとを有する。前記ボビン分離装置は、精紡機で防止された紡績糸が巻かれたボビンを個別に分離して前記各ワインダユニットに供給可能な状態とする。
【0035】
即ち、ワインダユニットに対するボビンの供給準備を、本発明のボビン分離装置によって行うように構成することで、自動ワインダ全体コンパクトに構成することができる。
【0036】
本発明の更に別の観点によれば、以下の構成の自動ワインダが提供される。即ち、この自動ワインダは、上記のボビン分離装置と、複数のワインダユニットとを有する。前記ボビン分離装置は、前記複数のワインダユニットから排出された排出ボビンを糸量に応じて分別する。
【0037】
これにより、自動ワインダから排出されたボビンを、簡単な構成で、糸量に応じて分別することができる。
【0038】
上記の自動ワインダは、以下のように構成することが好ましい。即ち、この自動ワインダは、前記ワインダユニットから排出されるボビンを搬送するための排出ボビン搬送部を備える。各ワインダユニットは、マガジン式のボビン供給装置を備える。そして前記ボビン分離装置は、前記排出ボビン搬送部の搬送方向端部に備えられている。
【0039】
これにより、マガジン式の自動ワインダから排出された排出ボビンを自動的に分別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係るボビン分離装置の構成を示す正面断面図。
【図2】ボビン分離装置の斜視図。
【図3】ボビン取出部の斜視図。
【図4】ボビン取出部の拡大側面断面図。
【図5】ボビン取出部の拡大斜視図。
【図6】ボビン分離装置の平面図。
【図7】揺動部材の斜視図。
【図8】揺動板を滞留部側に向けたときの様子を示す正面断面図。
【図9】揺動板によってボビンを案内部に搬送したときの様子を示す正面断面図。
【図10】糸量に応じてボビンを分離する様子を示すボビン取出部の拡大側面断面図。
【図11】別の実施形態に係るボビン取出部の拡大側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明の一実施形態に係る自動ワインダ10は、複数のワインダユニット(図略)と、ボビン搬送装置11と、ボビン分離装置12と、を備えている。
【0042】
ワインダユニットは、ボビン9に巻かれた紡績糸を解舒して、巻取ボビンに巻き返すことにより、パッケージを形成するように構成されている。
【0043】
ボビン搬送装置11は、コンベア等によって構成されたボビン搬送経路20と、ボビン搬送経路20上を搬送される多数の搬送トレイ21と、を有している。図1に示すように、この搬送トレイ21は、ボビン9を略直立状態で載置することができるように構成されている。ボビン搬送経路20は、ボビン9を乗せた搬送トレイ21を各ワインダユニット(図略)まで搬送することができるように構成されている。これにより、各ワインダユニットに対して自動的にボビン9を供給することができる。
【0044】
ところで前記ボビン9は、精紡機等で紡出された紡績糸が巻かれたものである。精紡機で製造されたボビン9は、コンテナ8等に入れられて自動ワインダ10まで運ばれる。このコンテナ8内のボビン9を、オペレータが手作業で一本ずつ搬送トレイ21に載置しなければならないようでは、オペレータの負担が大きくなる。そこで、本実施形態のボビン分離装置12は、ボビン9を一本ずつ分離して(個別化して)、搬送トレイ21に載置していくように構成されている。
【0045】
図1及び図2に示すように、本実施形態のボビン分離装置12は、ボビン投入部22と、ボビン取出部23と、トレイ載置部24と、を有している。
【0046】
コンテナ8に入れられて運ばれてきたボビン9は、ボビン投入部22内に投入される。ボビン投入部22内に投入されたボビン群は、ボビン取出部23によって一本ずつ取り上げられ、個別化される。
【0047】
ボビン取出部23は、上下方向に配設されたコンベアとして構成されている。具体的には、図3及び図4に示すように、ボビン取出部23は、無端環状帯体25と、無端環状帯体25の外側面において、当該無端環状帯体25の長手方向で等間隔に取り付けられた複数のボビン皿(ボビン受け部材)26と、を備えている。
【0048】
無端環状帯体(ボビン受け部材駆動部)25は、回転軸が平行に設けられた上下2つの回転ローラ37,37の間にループ状に掛け渡された帯状(シート状)の部材である。上側の回転ローラ37は、駆動源38によって回転駆動される。本実施形態において、駆動源38はステッピングモータとされている。当該ステッピングモータの出力軸の回転は、駆動伝達ベルト等を介して回転ローラ37に伝達される。これにより、無端環状帯体25が循環駆動され、当該無端環状帯体25に取り付けられたボビン皿26が垂直方向に駆動される。
【0049】
また、ボビン皿26を無端環状帯体25に取り付ける構成とすることにより、例えば無端チェーンにボビン皿を取り付ける構成に比べて、ボビン皿26を安定して支持することができる。また、ボビン皿26の装置奥側は、シート状の無端環状帯体25によって塞がれた状態となっているので、ボビン皿26に乗ったボビンが、装置奥側に落下してしまうことがない。
【0050】
また、無端環状帯体25の駆動源38をステッピングモータとしているので、例えばボビン取出部23にボビンが詰まって無端環状帯体25が動かなくなってしまった場合に、ステッピングモータが脱調することにより、クラッチ等を使用しない簡素な構成で、モータの破損及び装置の破損を防止できる。なお、本実施形態においては、ボビン取出部23にボビンが詰まったことを検出するセンサを備えている。具体的には、ボビン皿26の通過を検出するセンサを設け、駆動源38に電圧を印加しているにもかかわらず一定時間ボビン皿26が通過しない場合に、ボビン取出部23にボビンが詰まって無端環状帯体25が停止していると判断する。本実施形態では、ボビン取出部23にボビンが詰まっていることを検出すると、所定時間の間、駆動源38を逆方向に駆動するように制御を行う。あるいは駆動源38の駆動速度を変更しても良い。これにより、ボビンの詰まりが自動的に解消される可能性が高く、ボビン取出部23によるボビンの搬送を通常に復帰させることができる。なお、上記のように駆動源38を逆方向に駆動する処理も、当該駆動源38をステッピングモータとして構成することにより容易に実現することができる。このように、駆動源38としてステッピングモータを採用することにより、ボビン詰まり時のモータ破損防止、モータ逆転によるボビン詰まり解消などの制御を、インバータ等を使用することなく容易かつ安価に実現することができる。
【0051】
ボビン皿26は、ボビン9を乗せることができるように長方形の面を有している(なお、図5に示すように、この長方形のボビン皿26にはスリット40が形成されているが、この点については後述する)。この長方形のボビン皿26は、その長手方向が、回転ローラ37の回転軸方向と平行になるように、無端環状帯体25に取り付けられている。これにより、ボビン皿26は、回転ローラ37の回転軸と平行にボビン9を乗せることができる。また、ボビン皿26の奥行き(前記長方形の面のうち、長手方向に直交する方向の長さ)は、ボビン9が2つ並んで乗ることができない程度とされる。この構成で、無端環状帯体25を循環駆動することにより、ボビン投入部22内のボビン9をボビン皿26の上に一本ずつ乗せて、装置設置面に対して垂直方向上向きに搬送するようになっている。このようにして、ボビン投入部22内のボビン群を一本ずつ取り上げる(個別化する)ことができる。
【0052】
ここで、ボビンを個別化する装置としては、例えば特開平8−337317号公報のような構成も知られている。特開平8−337317号公報に記載の管糸供給装置では、フィーダボールによってボビンの個別化を行っていた。このフィーダボールは、その構成上、水平方向に大きなスペースが必要であった。この点、本実施形態のボビン分離装置12が備えるボビン取出部23は、ボビン9を垂直方向に搬送することにより個別化するものであるから、水平方向でのスペースをあまり必要としない。従って、従来の構成に比べてボビン分離装置12を小型化することができる。
【0053】
また、特開平8−337317号公報に記載の管糸供給装置は、ボビンを下に落としながら個別化を行う構成であったので、荷あけ装置によってボビンを荷あけする位置は、高い位置とならざるを得なかった。このようにボビンの投入位置が高い位置になるため、特開平8‐337317号公報の管糸供給装置は、視認性、作業性が悪かった。この点、本実施形態のボビン分離装置12は、ボビン9を上方に向けて搬送することにより個別化する構成であるから、ボビン9の投入位置を低い位置とすることができる。これにより、視認性、作業性が大幅に向上する。
【0054】
ボビン取出部23によって上方に搬送されたボビン9は、トレイ載置部24に供給される。トレイ載置部24は、ボビン取出部23から受けとったボビン9の解舒側端部と支持側端部とを判別するとともに、支持側端部が下になるように回転させたうえで、当該ボビン9をボビンシュート27から落下させる。ボビンシュート27の下には搬送トレイ21が待機しており、ボビンシュート27からのボビン9が搬送トレイ21に載置される。なお、このようなトレイ載置部の構成は公知であり、例えば特開平8−169525号公報に開示されているので、詳細な説明は省略する。
【0055】
以上のように、本実施形態のボビン分離装置12により、ボビン投入部22に投入されたボビン群から、ボビン9をボビン皿26の取り上げ側端部(無端環状帯体25に取り付けられた端部とは反対側の端部)ですくい上げることにより取り上げる。そして当該ボビン9を搬送しつつ個別化して、搬送トレイ21に載置していくことができる。
【0056】
なお、以上の説明では、ボビン皿26にボビン9を一本ずつ乗せて取り上げることができるとしたが、実際には、1つのボビン皿26の上に、ボビン9が上下方向に2本以上重なった状態で乗ってしまう場合がある。
【0057】
そこで本実施形態のボビン分離装置12は、ボビン皿26によって搬送されるボビン9に接触可能なボビン分離部材41を有している。このボビン分離部材41は、ボビン皿26によってボビン9が搬送される領域に沿って配置された金属製のワイヤ(線状部材)である。図5に示すように、ボビン皿26には、その奥行き方向に沿ってスリット40が形成されており、ボビン分離部材41はスリット40を通るように配置されている。また、前記スリット40は、ボビン皿26の長手方向で複数形成されており、ボビン分離部材41は各スリット40に対応して複数配置されている。この構成で、ボビン分離部材41は、ボビン皿26に乗ったボビン9に対して、ボビン皿の奥行き方向で無端環状帯体25側から(ボビン皿26の取り上げ側端部とは反対方向から)接触することが可能となっている。
【0058】
そして、このボビン分離部材41は、ボビン皿26の長手方向に直交する平面(図4の紙面に平行な面)内で屈曲する形状となっている。より具体的には、ボビン分離部材41は、ボビン皿26の取り上げ側端部側に向けて凸形状になる押出部42を有している。これにより、ボビン皿26に乗って搬送されるボビン9は、押出部42の位置にさしかかると、ボビン分離部材41によってボビン皿26の取り上げ側端部に向かって押される。このように、ボビン皿26の取り上げ側端部に向けてボビン9を押すことにより、ボビン皿26に余分なボビン9が乗っている場合には、当該ボビン皿26から落とすことができる。即ち、ボビン分離部材41によって、ボビン皿に乗せられるボビンの数を制限することができる。
【0059】
例えば図4のように、一つのボビン皿26に2本のボビン9が重なって乗っている場合、当該ボビン皿26が押出部42の位置にさしかかると、前記2本のボビン9は、ボビン分離部材41によって押されることにより揺さぶり作用が与えられ、上に重なっているボビン9がボビン皿26の取り上げ側端部から下方に落とされる。このように、押出部42を有するボビン分離部材41を、ボビン9の搬送方向に沿って配置するという簡単な構成で、ボビン皿26に乗っている余分なボビン9を、当該ボビン皿26から落とすことができる。即ち、ボビン分離部材41によって、ボビン皿26に乗るボビン9の数を1本に制限することができるので、ボビン9を確実に個別化することができる。なお、ボビン分離部材41は、前記押出部42を、ボビン皿26によるボビン9の搬送方向で複数(本実施形態では4箇所)有している。これにより、前記揺さぶり作用が複数箇所で与えられるので、ボビン9をより確実に個別化することができる。
【0060】
ところで、ボビン投入部22に投入された大量のボビン群が、ボビン取出部23に対して一度に供給されてしまうと、当該ボビン取出部23においてボビン9を1本ずつ取り上げることが難しくなる。そこで本実施形態のボビン分離装置12は、ボビン投入部22に投入された大量のボビン群から、ボビン9を少量ずつ切り崩して、ボビン取出部23に供給するように構成されている。
【0061】
具体的には図1、図2、図6に示すように、ボビン投入部22は、滞留部28と、定量搬送部29と、案内部30と、を備えている。滞留部28と、案内部30は連通している。また、定量搬送部29は、滞留部28と案内部30との間に配置されている。
【0062】
精紡機等からコンテナ8によって運ばれてきたボビン9は、滞留部28に投入される。図1に示すように、滞留部28の底面43は、案内部30に向けて下向きに傾斜するように形成されている。これにより、滞留部28内のボビン群は、案内部30に向けて流入しようとする。
【0063】
定量搬送部29は、揺動部材31を有している。図1に示すように、揺動部材31は、滞留部28内のボビン群が案内部30に流入しないように堰き止めることができるように構成されている。これにより、投入されたボビン群を、滞留部28内で一時的に滞留させることができるので、大量のボビン9が案内部30へ一度に流入することを防いでいる。
【0064】
次に、定量搬送部29の構成について詳しく説明する。
【0065】
揺動部材31は、揺動軸33を中心に揺動することが可能に構成されている。また揺動部材31は、その上面に搬送板32を有している。定量搬送部29は、揺動部材31を揺動駆動するための図略の駆動源(例えば空気圧シリンダ)を有している。この駆動源は、搬送板32の上面が案内部30側を向いた姿勢(図1の状態)と、滞留部28側を向いた姿勢(図8の状態)と、の間で揺動部材31を揺動駆動することができるように構成されている。
【0066】
揺動部材31は、搬送板32の上面が案内部30側を向いた姿勢(図1の状態)においては、滞留部28内のボビン群が案内部30に流入しないように堰き止めることができるように構成されている。より具体的には、揺動部材31は、流入阻止壁34を有している。流入阻止壁34は、搬送板32の滞留部28側の端部近傍から下向きに延伸され、揺動軸33の軸線を中心とした円柱の外周面の一部を構成するように形成されている。また、流入阻止壁34は、滞留部28側を向いている。この構成で、揺動部材31が揺動軸33を中心に揺動することにより、流入阻止壁34が出没可能になっている。滞留部28の底面43の傾斜によって案内部30に流れ込もうとするボビン群は、出現した流入阻止壁34に接触することにより、堰き止められる。
【0067】
なお、滞留部28は、当該滞留部28内のボビン群が流入阻止壁34を乗り越えて案内部30に流入してしまわないようにするため、定量搬送部29に向かうボビン9の通路の高さを制限する高さ制限プレート36を有している。また、図6に示すように、滞留部28は、定量搬送部29に向かうボビン9の通路の幅(装置奥行き方向の幅)を徐々に狭くするように形成されている。以上のように、定量搬送部29に向かうボビン9の通路が狭くなるように構成されているので、滞留部28内の大量のボビン群を堰き止めるための流入阻止壁34は、比較的小さくても良い。これにより、揺動部材31をコンパクトに構成することができる。
【0068】
次に、定量搬送部29によって、滞留部28内のボビンを案内部30へと搬送する様子について説明する。案内部30へとボビンを搬送する際には、定量搬送部29は、搬送板32の上面が滞留部28側を向いた状態(図8)となるように揺動部材31を揺動させる。これにより、流入阻止壁34で堰き止められていたボビン9が、搬送板32の上面に接触する。
【0069】
この状態で、定量搬送部29は、揺動部材31を再度揺動させ、搬送板32の上面が案内部30側を向いた状態(図9)とする。これにより、一定量のボビン9が搬送板32の上に乗った状態で揺動部材31が揺動するので、当該搬送板32に乗ったボビン9だけが、案内部30に導入される。このように、揺動部材31を揺動させるだけという簡単な構成で、滞留部28内の大量のボビン群から、所定量のボビン9のみを切り崩して案内部30へと搬送することができる。
【0070】
また、揺動部材31は、搬送板32の滞留部28側の端部において、当該搬送板32の上面よりも上方に突出する突出部44を有している。この突出部44により、搬送板32の上面に乗ったボビン9が滞留部28側へ滑り落ちてしまうことを阻止することができる。これにより、揺動部材31を揺動させてボビン9を搬送する際に、搬送板32に乗ったボビン9を確実に案内部30へと導入できるので、定量搬送部29によって搬送するボビン9の量を安定させることができる。
【0071】
また前述のように、滞留部28から定量搬送部29へとボビン9が流入する通路が狭く形成されているので、滞留部28内のボビン群を揺動部材31によって少量ずつ切り崩すことが容易になっている。
【0072】
なお上記のように、滞留部28においては、定量搬送部29へと向かう通路が狭くなるように構成されているので、当該通路にボビン9が詰まってしまうことも考えられる。そこで、滞留部28の底面43には、高さ制限プレート36の下方の位置において、ボビン崩し部材45が設けられている。このボビン崩し部材45は、揺動軸46を中心に回動することにより、その上面が底面43と略面一の状態(図1及び図9の状態)と、底面43から突出した状態(図8の状態)と、の間で姿勢を変更することができるように構成されている。また、滞留部28は、このボビン崩し部材45を揺動駆動するための図略の駆動源(例えば空気圧シリンダ)を有している。
【0073】
なお、このボビン崩し部材45の揺動軸46は、当該ボビン崩し部材45の下端寄りの位置に配置されている。これにより、揺動軸46を中心にボビン崩し部材45を揺動させてボビン崩し部材45を底面43から突出されたときに、当該ボビン崩し部材45の上面によって、傾斜した底面43の下側へ向けて(即ち、定量搬送部29に向けて)、滞留部28内のボビン9を押し出すように衝撃を与えることができるようになっている。これにより、定量搬送部29に向かうボビン9が詰まっていたとしても、当該ボビン9の詰まりを崩すことができる。
【0074】
なお図7に示すように、搬送板32は、蛇腹状に折り曲げ加工されることにより、その上面に、波状の溝部47が複数平行に形成されている。この構成で、搬送板32に乗せられたボビン9は、溝部47に嵌まり込む。このとき、当該ボビンの長手方向は、溝部47の長手方向に一致した姿勢となる。従って、上記のように搬送板32の上面に溝部47を平行に複数形成することにより、搬送板32によって搬送されるボビン9の長手方向の向きが揃い易くなる。
【0075】
以上のように、本実施形態の構成によれば、揺動部材31を揺動させるという簡単な構成により、ボビン群を切り崩して所定量のボビン9のみを案内部30へと搬送することができる。従って、特許文献1のように、ボビン群を切り崩すために水平方向に配設されたコンベアが必要ないので、ボビン分離装置12の設置スペースをコンパクトにすることができる。
【0076】
次に、案内部30について説明する。案内部30は、定量搬送部29から搬送されてきたボビン9を、ボビン取出部23へと案内するように構成されている。
【0077】
より具体的には、案内部30の装置奥側の側壁(図6の図面上側の側壁)は開放されており、当該開放部分がボビン取出部23の前記コンベア(無端環状帯体25及びボビン皿26が配置された空間)に連通している。そして、案内部30の底面48は、ボビン取出部23へ向けて下向きに傾斜するように構成されている。これにより、定量搬送部29によって案内部30へと搬送されてきたボビン9は、ボビン取出部23へ向けて寄せられる。従って、案内部30の底面48は、ボビン寄せ部であるということができる。
【0078】
底面48の傾斜によってボビン取出部23へと寄せられたボビン9は、当該ボビン取出部23の前記ボビン皿26によってすくい上げられる。これにより、ボビン9を1つずつ、装置設置面に対して垂直方向上向きへと搬送することができる。即ち、ボビン9を個別化することができる。
【0079】
案内部30は、当該案内部30内のボビン9の量を検出するためのボビンセンサ(検知部)49を備えている。具体的には、このボビンセンサは、案内部30の側壁がボビン取出部23へと開放されている部分(ボビン取出部23のコンベアへの入口部分)のボビン9の有無を検出する非接触式のセンサとして構成されている。そして、本実施形態のボビン分離装置12は、ボビンセンサ49の出力に基づいて、揺動部材31を揺動駆動するように構成している。
【0080】
即ち、ボビンセンサ49でボビン9が検出されている場合は、案内部30内にボビン9が残っている状態なので、搬送板32の上面を案内部30側に向けた状態となるように揺動部材31の姿勢を維持することで、滞留部28内のボビン群が案内部30に流入しないように堰き止めておく。一方、ボビンセンサ49でボビン9が検出されなくなった場合は、案内部30内のボビン9がなくなった状態であるから、定量搬送部29によって所定量のボビン9を案内部30に搬送させる。より具体的には、ボビンセンサ49でボビン9が検出されなくなった場合は、搬送板32の上面を滞留部28側に向けるように揺動部材31を揺動させ、搬送板32の上にボビン9を乗せて、再び揺動部材31を揺動させて搬送板32の上面を案内部30側へと向ける。これにより、所定量のボビン9を案内部30へと搬送する。
【0081】
以上のように、案内部30内のボビンセンサ49の出力によって揺動部材31を制御駆動することにより、案内部30内のボビン9の量を、常に所定の範囲内とすることができるので、ボビン取出部23によって、案内部30内のボビン9を適切にすくい上げることができる。
【0082】
なお、前記搬送板32の上面の溝部47は、その長手方向が、ボビン皿26の長手方向と平行になるように形成されている。従って、搬送板32に乗せられて案内部30へと搬送されてきたボビン9は、前記溝部47に嵌まり込むことにより、その長手方向が、ボビン皿26の長手方向に平行な姿勢となっている。従って、案内部30の底面48の傾斜によってボビン取出部23へと寄せられたボビン9は、その長手方向が、ボビン皿26の長手方向と一致している可能性が高い。これにより、案内部30内のボビン9を、ボビン皿26によってすくい上げ易くなっている。
【0083】
なお、必ずしもこのように、ボビン9の長手方向とボビン皿26の長手方向とが一致した状態で、ボビン取出部23にボビン9が案内されるとは限らない。ボビン9の長手方向が、ボビン皿26の長手方向に対して斜めになっていると、当該ボビン皿26にボビン9が乗らず、落ちてしまうことがある。しかしながら、落ちてしまったボビン9は、落ちる前とは姿勢が変化するので、案内部30の底面48の傾斜によって再びボビン取出部23へと寄せられたときには、ボビン皿26に乗る可能性がある。このように、案内部30の底面48が斜面として形成されているので、ボビン皿26に乗らずに落ちてしまったボビン9は何度でもボビン取出部23へと寄せられる。この度にボビン9の姿勢は変化するので、最終的には、ボビン9を確実にボビン皿26に乗せることができる。
【0084】
ところで上記のように、案内部30内のボビン9は、ボビン皿26によって何度も姿勢を変化させられる。即ち、案内部30内のボビン9は、ボビン皿26によってかき混ぜられるような状態となるので、ボビン9の糸が出てしまっている場合(糸引きがある場合)は、糸同士が絡み合い易い。ボビン9の糸が絡み合ってしまうと、ボビン取出部23による個別化を適切に行えないという状況が発生し得る。そこで本実施形態では、図1等に示すように、揺動部材31の案内部30側の端部に、糸をカットするためのカッタ50を設けている。このカッタ50は、ハサミ状に構成されており、図略の駆動源によって駆動されることにより、ボビン9から出た糸を切断することができるように構成されている。これにより、定量搬送部29から案内部30へとボビン9を搬送する際に、予め、ボビン9から出ている糸を切断しておくことができる。これにより、ボビン9がボビン皿26によってかき混ぜられたとしても、糸の絡みつきなどの発生を防止し、個別化を適切に行うことができる。
【0085】
また上記のように、ボビン皿26には必ずしもボビン9が乗るとは限らない(即ち、ボビン皿26は空の場合がある)。従って、ボビン取出部23からトレイ載置部24に対してボビン9を供給できないときがあることになる。すると、トレイ載置部24から搬送トレイ21に対してボビン9を供給できないことになるので、トレイ載置部24がいわば遊んでいる状態となってしまう。そこで、本実施形態では、ボビン取出部23とトレイ載置部24との間に、ボビン9を一時的にストックしておくことができるボビンバッファ部(保留部)51を有している。そして、ボビン皿26にボビン9が乗っていない場合には、ボビンバッファ部51にストックされたボビンをトレイ載置部24へ供給するように構成されている。これにより、トレイ載置部24が遊んでしまうことを防止し、装置の効率を向上させることができる。
【0086】
以上で説明したように、本実施形態のボビン分離装置12は、複数のボビン9が投入されるボビン投入部22と、ボビン投入部22に投入されたボビン群からボビン9を取り出すボビン取出部23と、を備える。ボビン取出部23は、複数のボビン皿26と、無端環状帯体25と、ボビン分離部材41と、を備える。ボビン皿26は、ボビン9を乗せることができる。無端環状帯体25は、ボビン皿26を、ボビン投入部22の載置面に対して垂直に駆動する。ボビン分離部材41は、ボビン皿26がボビン9を乗せて駆動される領域に沿って設けられ、各ボビン皿26に乗ったボビンを個別に分離する。
【0087】
これにより、ボビン9を垂直方向に搬送しつつ分離することができるので、水平方向での装置の設置スペースを小さくすることができる。また、ボビン分離部材41は、ボビン9が搬送される方向に沿って配置されているので、設置スペースを増やすことなく長い区間でボビン分離を行うことができ、分離ミスも少ない。
【0088】
また本実施形態のボビン分離装置12は、以下のように構成されている。即ち、ボビン分離部材41は、ボビン皿26に乗ったボビン9に対して、当該ボビン皿26の取り上げ側端部とは反対側から接触可能である。ボビン分離部材41は、ボビン皿26の取り上げ側端部側に向けて凸となる押出部42を有する。そして当該押出部42によって、ボビン皿26に載置可能なボビンの本数を制限する。
【0089】
ボビン皿26に乗ったボビン9は、押出部42によって押されるので、余分なボビンはボビン皿26から落とされる。このように簡易な機構により、ボビン皿26に乗せられるボビン9の本数を制限することができるので、ボビン9を一本ずつ分離することができる。
【0090】
また本実施形態のボビン分離装置12において、押出部42は、ボビン皿26がボビン9を乗せて駆動される方向で複数形成されている。
【0091】
これにより、設置スペースを増やすことなく複数回のボビン分離を行うことができるので、分離ミスを低減することができる。
【0092】
また本実施形態のボビン分離装置12において、ボビン分離部材41は線状部材であり、当該線状部材を屈曲させることにより押出部42が形成されている。
【0093】
このように、ボビン分離部材41を線状部材で形成することで、当該ボビン分離部材41の設置スペースが必要なく、かつ軽量に構成することができる。
【0094】
また本実施形態のボビン分離装置12において、ボビン皿26にはスリット40が形成されており、ボビン分離部材41はスリット40内を通るようにして配置されている。
【0095】
これにより、ボビン皿26に乗って搬送されるボビン9に対して、ボビン分離部材41を当てることができる。
【0096】
また本実施形態のボビン分離装置12は、以下のように構成されている。即ち、無端環状帯体25は、回転軸が平行に設けられた2つの回転ローラ37,37の周りをループ状にかけ渡されたシート状部材である。ボビン皿26は、前記回転軸と平行な方向にボビン9が載置できる形状である。ボビン分離部材41は、前記シート状部材の幅方向に複数設けられている。
【0097】
このように無端環状帯体25をシート状に構成することにより、ボビン皿26に乗ったボビン9が奥(無端環状帯体25側)に落ちることがない。また、無端環状帯体25をシート状に構成することにより、当該無端環状帯体25に対してボビン皿26を安定して取り付けることができる。
【0098】
また本実施形態のボビン分離装置12において、回転ローラ37を駆動させる駆動源38はステッピングモータである。
【0099】
これにより、例えばボビンが詰まって無端環状帯体が駆動できなくなったとしても、ステッピングモータが脱調するので、当該モータの破損及び装置の破損を防止できる。
【0100】
また本実施形態のボビン分離装置12においては、ボビン取出部23にボビン9が詰まったことを検出すると、駆動源38を逆回転させる。
【0101】
これにより、ボビン9の詰まりを速やかに解消できる。
【0102】
また、本実施形態の自動ワインダは、上記のボビン分離装置12と、複数のワインダユニットとを有する。ボビン分離装置12は、精紡機で防止された紡績糸が巻かれたボビンを個別に分離して前記各ワインダユニットに供給可能な状態とする。
【0103】
即ち、ワインダユニットに対するボビンの供給準備を、本発明のボビン分離装置12によって行うように構成することで、自動ワインダ全体コンパクトに構成することができる。
【0104】
次に、本発明の別の実施形態について説明する。なお、この実施形態の説明において、上記の実施形態と同一又は類似する構成については、同一の符号を付して説明を省略することがある。この実施形態に係るボビン分離装置12は、ボビンの糸量に応じてボビンを分別するように構成されている。
【0105】
即ち、ボビン分離部材41の押出部42は、ボビン皿26の上のボビン9を、ボビン皿26の取り上げ側端部に向けて一定量だけ押し出すのであるから、図10に示すように、ある径よりも太いボビン9はボビン皿26から落とし、それよりも細いボビン9はボビン皿26の上に残すようにすることができる。ここで、糸が多く巻かれたボビン9は径が太く、巻かれた糸が少ないボビン9は径が細い。従って、ボビン分離部材41によって、所定より糸量の多いボビン9はボビン皿26から落下させ、糸量が所定以下のボビン9のみをボビン皿26に残すようにすることができる。即ち、ボビン分離部材41によって、ボビン皿に載置可能なボビン9の糸量を制限することができる。
【0106】
なお、この実施形態の場合、ボビン分離部材41によってボビン皿26から落とされるボビン(径の太いボビン、即ち、所定よりも糸量が多いボビン)が案内部30まで落下してしまうと、当該ボビンは案内部30とボビン皿26との間で永遠に循環して滞留することになる。そこで、本実施形態では、ボビン皿26から落下するボビン9を受けとめるためのボビン容器52を、案内部30の上方に設ける。これによれば、所定よりも糸量が多いボビン9はボビン容器52の上に落下し、糸量が所定以下のボビン9はボビン皿26によって上方に搬送される。この構成により、糸量に応じてボビン9を分離することができる。
【0107】
なおボビン分離部材41は取り換え可能に構成されている。従って、押出部42の突出量が異なるボビン分離部材41を複数種類用意しておけば、押出部42の突出量を容易に変更することができるようになっている。押出部42の突出量を変更することにより、ボビン皿26に載置可能なボビン9の糸量を変更することができるので、所望の糸量のボビン9をボビン分離部材41によって分離することができる。
【0108】
次に、この実施形態のボビン分離装置12を備えた自動ワインダについて説明する。先に説明した実施形態では、ボビン分離装置12を、各ワインダユニットに対してボビンを供給する際に用いていた。この点、本実施形態では、ボビン分離装置12を、ワインダユニットから排出されたボビン9を、糸量に応じて分別するために利用する。即ち、各ワインダユニットにおいては、糸を解舒し終わった空のボビン9が排出されるが、場合によっては、まだ糸が残っているボビン9が排出されることもある。糸が大量に残っているボビン9は、回収して再利用することが好ましい。
【0109】
そこで、本実施形態の自動ワインダにおいて、ボビン分離装置12に、糸が大量に残っているボビンと、糸がほとんど残っていないボビン(または全く残っていない空のボビン)と、を分離するように構成している。これにより、糸が大量に残っているボビンを分離して回収し、再利用することが容易になる。
【0110】
また本実施形態の自動ワインダは、各ワインダユニットから排出されたボビン9を、ボビン分離装置12まで搬送する排出ボビン搬送部を備える。排出ボビン搬送部のボビン搬送方向端部に、本実施形態のボビン分離装置12が配置される。排出ボビン搬送部によって搬送されてきたボビン9は、ボビン投入部22に投入される。これにより、ワインダユニットから排出されたボビン9を、ボビン分離装置12に自動的に投入することができるので、糸が残っているボビンの分離を自動的に行うことができる。
【0111】
なお、本実施形態においては、各ワインダユニットにボビンを供給する手段として、マガジン式のボビン供給装置を採用している。マガジン式のボビン供給装置はコンパクトなので、自動ワインダ全体をコンパクトに構成することができる。
【0112】
以上で説明したように、この実施形態のボビン分離装置12は、以下のように構成されている。即ち、ボビン分離部材41は、ボビン皿26に乗ったボビン9に対して、ボビン皿26の取り上げ側端部とは反対側から接触可能である。ボビン分離部材41は、ボビン皿26の取り上げ側端部側に向けて凸となる押出部42を有する。そして当該押出部42によって、ボビン皿26に載置可能なボビン9の糸量を制限する。
【0113】
ボビン皿26に乗ったボビン9は、押出部42によって押されるので、太いボビン(糸が多く巻かれたボビン、又は全く糸が巻かれていない空ボビン)はボビン皿26から落とされ、細いボビン(巻かれた糸が少ないボビン)はボビン皿26の上に残る。このように簡易な機構により、ボビン皿26に乗せられるボビン9の糸量を制限することができるので、ボビン9を糸量に応じて分離することができる。
【0114】
また本実施形態の自動ワインダは、上記のボビン分離装置12と、複数のワインダユニットとを有する。前記ボビン分離装置12は、複数のワインダユニットから排出された排出ボビンを糸量に応じて分別する。
【0115】
これにより、自動ワインダから排出されたボビンを、簡単な構成で、糸量に応じて分別することができる。
【0116】
また本実施形態の自動ワインダは、ワインダユニットから排出されるボビン9を搬送するための排出ボビン搬送部を備える。各ワインダユニットは、マガジン式のボビン供給装置を備える。そしてボビン分離装置12は、前記排出ボビン搬送部の搬送方向端部に備えられている。
【0117】
これにより、マガジン式の自動ワインダから排出された排出ボビンを自動的に分別することができる。
【0118】
次に、本発明の更に別の実施形態について説明する。即ち、上記実施形態では、ボビン皿26はボビン9を垂直方向で搬送する構成としたが、略垂直方向に搬送する構成であれば良く、必ずしも厳密に垂直方向に搬送する必要はない。そこで本実施形態のボビン分離装置12は、図11に示すように、コンベアによるボビン9の搬送方向を、装置載置面に対して若干傾斜させた構成としている。具体的には、無端環状帯体25は、ボビン皿26を、垂直方向から傾斜した方向に向けて駆動するように構成されている。このように、ボビン皿26によるボビン9の搬送方向を若干傾斜させたとしても、ボビン9の分離は問題なく行うことができる。
【0119】
ところで、ボビン皿26によって搬送されるボビン9の中には、糸が解舒されてしまっているもの(当該ボビン9から糸54が出てしまっているもの)がある。このように糸54が出ているボビン9をボビン皿26に乗せて上方に向けて搬送すると、図11のように、当該糸54がボビン皿26から垂れ下がったような状態となる。このように糸54が垂れ下がった状態のボビン9をそのままトレイ載置部24に供給した場合、当該トレイ載置部24の内部においてボビン9から出ている糸54が絡まるなどの問題が発生する可能性がある。
【0120】
そこで本実施形態において、ボビン取出部23は、ボビン皿26に乗ったボビン9から解舒された糸54を切断するカッタ53を設けている。ここで、本実施形態ではボビン皿26によってボビン9を斜め方向に搬送する構成としているので、当該ボビン9が搬送される経路の下側にカッタ53を配置することが可能となる。これにより、ボビン皿26から垂れ下がっている糸54を、カッタ53に導入し易くなっている。
【0121】
以上で説明したように、本実施形態のボビン分離装置12は、以下のように構成されている。即ち、無端環状帯体25は、ボビン皿26を、ボビン投入部22の載置面に対して傾斜した方向に駆動する。ボビン取出部23は、ボビン皿26に乗って搬送されるボビン9から解舒された糸を切断するためのカッタ53を備える。
【0122】
このようにボビン9の糸を切断することにより、ボビン9からの糸54が絡み合ってしまうことを防止できる。そして上記の構成によれば、ボビン皿26によってボビン9が斜め方向に搬送されるので、ボビン9から解舒された糸54をカッタ53に導入し易くなる。
【0123】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0124】
検知部は、非接触式のボビンセンサ49に限らず、接触式のセンサによって案内部30内のボビン9の量を検出する構成であっても良い。
【0125】
ボビンセンサ49でボビン9が検出されている場合は、搬送板32の上面を案内部30側に向けた状態で揺動部材31の姿勢を維持するとして説明したが、これに代えて、搬送板32にボビン9を乗せた状態で、当該搬送板32が略水平状態となるように揺動部材31を待機させていても良い。このように揺動部材31にボビン9を乗せて待機させておけば、案内部30のボビン9が無くなったことをボビンセンサ49が検知した際に、直ちに案内部30へボビン9を搬送することができる。
【0126】
ボビン寄せ部は、案内部30の傾斜底面であるとしたが、これに限らない。例えば、ボビン9をボビン取出部23に向けて押す押し部材を設け、当該押し部材によってボビン9をボビン取出部23に向けて寄せる構成としても良い。
【0127】
ボビン分離部材41は金属製のワイヤであるとしたが、これに限らない。例えば、板状の部材によってボビン分離部材41を構成することもできる。
【0128】
ボビン分離部材41によってボビン皿26に載置可能なボビンの糸量を制限する場合、当該ボビン分離部材41に複数形成された押出部42の突出量をそれぞれ異ならせても良い。押出部42の突出量を異ならせることにより、それぞれの押出部42においてボビン皿26から落とされるボビンの径を異ならせることができる。即ち、この構成によれば、糸量に応じてボビンを3種類以上に分離することができる。
【0129】
ボビン分離装置12は、自動ワインダに限らず、他の種類の繊維機械に対してボビンを供給する用途にも利用することができる。
【符号の説明】
【0130】
9 ボビン
11 ボビン搬送装置
12 ボビン分離装置
22 ボビン投入部
23 ボビン取出部
25 無端環状帯体(ボビン受け部材駆動部)
26 ボビン皿(ボビン受け部材)
28 滞留部
29 定量搬送部
30 案内部
31 揺動部材
32 搬送板
40 スリット
41 ボビン分離部材
42 押出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のボビンが投入されるボビン投入部と、
前記ボビン投入部に投入されたボビン群からボビンを取り出すボビン取出部と、
を備え、
前記ボビン取出部は、
前記ボビンを乗せることができるボビン受け部材と、
前記ボビン受け部材を、前記ボビン投入部の載置面に対して略垂直に駆動するボビン受け部材駆動部と、
前記ボビン受け部材が前記ボビンを乗せて駆動される領域に沿って設けられ、前記各ボビン受け部材に乗ったボビンを個別に分離するボビン分離部材と、を有することを特徴とするボビン分離装置。
【請求項2】
請求項1に記載のボビン分離装置であって、
前記ボビン受け部材駆動部は、前記ボビン受け部材を、前記ボビン投入部の載置面に対して垂直に駆動することを特徴とするボビン分離装置。
【請求項3】
請求項1に記載のボビン分離装置であって、
前記ボビン受け部材駆動部は、前記ボビン受け部材を、前記ボビン投入部の載置面に対して傾斜した方向に駆動し、
前記ボビン取出部は、前記ボビン受け部材に乗って搬送されるボビンから解舒された糸を切断するためのカッタを備えることを特徴とするボビン分離装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載のボビン分離装置であって、
前記ボビン分離部材は、前記ボビン受け部材に乗ったボビンに対して、当該ボビン受け部材の取り上げ側端部とは反対側から接触可能であり、
当該ボビン分離部材は、前記ボビン受け部材の取り上げ側端部側に向けて凸となる押出部を有し、
当該押出部によって、前記ボビン受け部材に載置可能なボビンの本数を制限することを特徴とするボビン分離装置。
【請求項5】
請求項1から3までの何れか一項に記載のボビン分離装置であって、
前記ボビン分離部材は、前記ボビン受け部材に乗ったボビンに対して、当該ボビン受け部材の取り上げ側端部とは反対側から接触可能であり、
当該ボビン分離部材は、前記ボビン受け部材の取り上げ側端部側に向けて凸となる押出部を有し、
当該押出部によって、前記ボビン受け部材に載置可能なボビンの糸量を制限することを特徴とするボビン分離装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のボビン分離装置であって、
前記押出部は、前記ボビン受け部材が前記ボビンを乗せて駆動される方向で複数形成されることを特徴とするボビン分離装置。
【請求項7】
請求項4から6までの何れか一項に記載のボビン分離装置であって、
前記ボビン分離部材は線状部材であり、当該線状部材を屈曲させることにより前記押出部が形成されていることを特徴とするボビン分離装置。
【請求項8】
請求項7に記載のボビン分離装置であって、
ボビン受け部材にはスリットが形成されており、前記線状部材は前記スリット内を通るようにして配置されていることを特徴とするボビン分離装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のボビン分離装置であって、
前記ボビン受け部材駆動部は、回転軸が平行に設けられた少なくとも2つの回転ローラの周りをループ状にかけ渡されたシート状部材であり、
前記ボビン受け部材は、前記回転軸と平行な方向にボビンが載置できる形状であり
前記線状部材は、前記シート状部材の幅方向に複数設けられていることを特徴とするボビン分離装置。
【請求項10】
請求項9に記載のボビン分離装置であって、
前記回転ローラの少なくとも1つを駆動させる駆動源を有し、前記駆動源はステッピングモータであることを特徴とするボビン分離装置。
【請求項11】
請求項10に記載のボビン分離装置であって、
前記ボビン取出部に前記ボビンが詰まったことを検出すると、前記駆動源を逆回転させることを特徴とするボビン分離装置。
【請求項12】
請求項1から11までの何れか一項に記載のボビン分離装置と、
複数のワインダユニットと、
を有し、
前記ボビン分離装置は、精紡機で防止された紡績糸が巻かれたボビンを個別に分離して前記各ワインダユニットに供給可能な状態とすることを特徴とする自動ワインダ。
【請求項13】
請求項1から11までの何れか一項に記載のボビン分離装置と、
複数のワインダユニットと、
を有し、
前記ボビン分離装置は、前記複数のワインダユニットから排出された排出ボビンを糸量に応じて分別することを特徴とする自動ワインダ。
【請求項14】
請求項13に記載の自動ワインダであって、
前記ワインダユニットから排出されるボビンを搬送するための排出ボビン搬送部を備え、
各ワインダユニットは、マガジン式のボビン供給装置を備え、
前記ボビン分離装置は、前記排出ボビン搬送部の搬送方向端部に備えられていることを特徴とする自動ワインダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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