説明

ボルスター段替装置

【課題】
ピット部分を広げることなく、かつ床台車を装備することなくピット部の開口部を塞ぐことが可能なボルスター段替装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
ピット3に設置したレール4を所望な高さに保持する架台18と、かつ、該ピット3の底部の両側に床板9が昇降可能な床昇降装置10を設け、搬送台車7のいずれかのステージ6がプレス機1の正面に位置する時に、ピット3の開口部側にある床昇降装置10の床板9を作業床2の高さまで上昇させることで、ピット3の開口部を塞ぐことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス機上の使用済みボルスターと交換用のボルスターを交換する際に、ボルスターを搬送する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鍛造プレス機においては、同一のプレス機で型の異なるの製品を成形するため、成形する製品を変更する際には、その都度金型の交換を行う必要がある。しかし、金型交換時には生産を一時中断しなければならず、生産に大きな影響を生じることになる。そのため、金型交換作業を効率化することは生産性向上のため必須の検討項目であり、現在まで多数の金型交換装置が提案されており、例えば特許文献1に記載されている様な金型交換装置が提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−246373号公報
【0004】
そして、この特許文献1には、プレス機に近接して作業床にピットを設け、そのピット底面に左右に延びるレールを敷設し、このレールに沿って移動する搬送台車にダイホルダが載置される2つのステージを備えた金型交換装置について記載されている。
【0005】
上記金型交換装置の搬送方法ついては、次に使用する金型がセットされたダイホルダを一方のステージに載せ、使用済みの金型がセットされたダイホルダをプレス機から他方のステージに引き取り、搬送台車の移動に伴い一方のステージをプレス機の正面に位置づけ、このステージ上のダイホルダをプレス機に送り込む搬送方法となっている。
【0006】
この金型交換装置の特徴として、前記ピットの両端部を前記ステージの移動範囲を超えて両側にさらに延長させ、その延長させたピットの底面までレールを敷設し、前記搬送台車の両端に、昇降可能な床板を備えた床台車を連結して、これらの床台車を前記レールに沿って搬送台車と共に移動可能とし、いずれかのステージがプレス機の正面に位置付けられているとき、プレス機の正面に位置付けられたステージに遠い側の床台車が作業床の下方に潜りこみ、他方の床台車の床板を上昇させることによって、ピットの開放部が覆われる機構となっている。
【0007】
この装置により、ダイホルダ搬送台車の両端に連結した床台車の床板を上昇させることによってピットの開放部を覆うことができるため、作業員が盲蓋をセットするという作業がなくなり、かつピットへの転落を防止し、広い作業スペースを確保することが可能となるといった効果を得ることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1に記載の金型交換装置には以下の問題がある。
特許文献1における金型交換装置では、搬送台車の両側に床台車を連結することで、ピットには床台車の配置及び移動が可能な広いスペースを設ける必要がある。また、搬送台車に床台車を連結することで、搬送台車、床台車を同時に動かすための動力能力を持った電動機が必要となる。
もし、プレス機の近接に前記の様なピットを設ける広いスペースが無い場合には特許文献1に記載の金型交換装置が設置できない場合が生じる。
また、床台車や動力能力の高い電動機を装備するとなるとその分の設備投資が高くなる。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、具体的には、前記の様なピット部分を広げることなく、かつ床台車を装備することなくピットの開口部を塞ぐことが可能なボルスター段替装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、請求項1における発明は、プレス機1に近接された中間台8と、該中間台8に近接し、プレス機1と反対方向に設けられたピット3と、該ピット3内に設けられ、ピット3の長手方向に対して平行に敷設されたレール4と、該レール4上を走行し、上部にボルスター5を搭載し得るスペースを有する2つのステージ6が設けられた搬送台車7により構成され、前記プレス機1から使用済みのボルスター5aを中間台8を経由して取出し、該搬送台車7上で待機する交換用のボルスター5bをプレス機1へ搬送させるボルスター段替装置において、前記ピット3に設置した該レール4を所望な高さに保持する架台18と、かつ、該ピット3の底部の両側に床板9が昇降可能な床昇降装置10を設けた構成となっている。
【0010】
上記発明の構成により、床台車を装備することなく床昇降装置を設置することが可能となる。それにより、従来の金型交換装置の様なピット部分を広げる必要がなくなる。
【0011】
請求項2における発明は、前記床昇降装置10において、搬送台車7のいずれかのステージ6がプレス機1の正面に位置する時に、ピット3の開口部側にある床昇降装置10の床板9を作業床2の高さまで上昇させ、また、他方のステージ6がプレス機1の正面に位置する様に搬送台車7が移動する時は、作業床2の高さまで上昇させていた床板9を搬送台車7の下方まで下降させることにより搬送台車7が床昇降装置10の上部を移動できる構成となっている。
【0012】
上記発明の構成により、ピットの開口部を床昇降装置の床板で塞ぐことが可能となり、従来の金型交換装置と同様に作業員が盲蓋をセットするという作業がなくなり、かつピットへの転落を防止し、広い作業スペースを確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
上記発明の装置を使用することにより、特許文献1記載された装置の様にピット部分を広げることなく、かつ床台車を装備することなく、ピットの開口部を塞ぐことができ、盲蓋のセット作業をなくすことやピットの転落防止及び作業スペースの確保といった従来の金型交換装置と同様の効果が得られるのは勿論であるが、特許文献1に記載の電動機よりもさらにより小型の電動機を使用することが可能になり、設備投資の低減にも大きな効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(装置の構成)
以下、本発明の一実施例を図1、図2により説明する。
プレス機1に近接して、ボルスター5の搬送通路となる中間台8が設置されている。中間台8の上面には、搬送台車7と係合するチェーン溝13及びガイドレール17が設置されている。
中間台8に近接し、プレス機1と反対側にピット3が設置されている。ピット3内の底面の前後にはレール4用の架台18がピット3の長手方向に対して平行に敷設され、その架台18の上にレール4が敷設されている。
ピット3の底面には、床板9がシリンダーの油圧により昇降可能となる床昇降装置10がピット3の両端に1台ずつ設置されている。
【0015】
レール4上には搬送台車7が配置され、搬送台車7のフレーム14には車輪15が取り付けられている。搬送台車7に取り付けられた電動機11が車輪15を回転させることにより、搬送台車7はレール4上を移動可能となっている。
搬送台車7の上部には、ボルスター5が2台積載可能なステージ6a、6bが設けられ、ステージ6a、6b上にはそれぞれ、ガイドレール17及びチェーン溝13が設置されている。
チェーン溝13には一端にフック16を有するチェーン19が抜差自在に挿入され、チェーン19の他端にはピット3の後方に位置する電動機12に接続されている。
【0016】
(ボルスターの搬送方法)
プレス機1内にある使用済みのボルスター5aを交換する際は、まず、搬送台車7の一方のステージ6bに交換用のボルスター5bを積載し、もう一方のステージ6aは何も積載していない状態にしておく。
搬送台車7の何も積載していないステージ6aがプレス機1の正面に位置づけられる様に搬送台車7を移動させる。プレス機1内にある使用済みのボルスター5aのフック掛け20にフック16を係合し、電動機12によりチェーン19を巻き取ることにより、使用済みのボルスター5aは中間台8を経由して何も積載していないステージ6a上に積載される。
【0017】
使用済みのボルスター5aのフック掛け20からフック16を外し、今度は交換用のボルスター5bを積載したステージ6bがプレス機1の正面に位置づけられる様に搬送台車7を移動させる。交換用のボルスター5bのフック掛け20にフック16を係合し、電動機12によりチェーン19を繰り出すことにより、交換用のボルスター5bは中間台8を経由してプレス機1へ搬送される。
【0018】
(床昇降装置の作用)
まず、使用済みのボルスター5aの搬送時において、何も積載していないステージ6aがプレス機1の正面に位置づけられている時は、ピット3内開口部側の床昇降装置10の床板9がシリンダーの油圧により作業床2の高さまで上昇し、ピット3の開口部が塞がれる。その時、もう一方の床昇降装置10の床板9は搬送台車7の下方に下降された状態にある。
【0019】
次に、交換用のボルスター5bを積載したステージ6bがプレス機1の正面に位置づけられる時には、搬送台車7が移動する前に、床板9が上昇していた床昇降装置10側の床板9がシリンダーの油圧により下降する。そして、搬送台車7が移動し、交換用のボルスター5bを積載したステージ6bがプレス機1の正面に位置づけられた後は、もう一方の床昇降装置10の床板9がシリンダーの油圧により作業床2の高さまで上昇し、それによりピット3の開口部が塞がれる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るボルスター段替装置の平面図である。
【図2】本発明に係るボルスター段替装置の縦断正面図である。
【符号の説明】
【0021】
1・・・プレス機
2・・・作業床
3・・・ピット
4・・・レール
5・・・ボルスター
6・・・ステージ
7・・・搬送台車
8・・・中間台
9・・・床板
10・・・床昇降装置
11、12・・・電動機
13・・・チェーン溝
14・・・フレーム
15・・・車輪
16・・・フック
17・・・ガイドレール
18・・・架台
19・・・チェーン
20・・・フック掛け


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス機1に近接された中間台8と、該中間台8に近接し、プレス機1と反対方向に設けられたピット3と、該ピット3内に設けられ、ピット3の長手方向に対して平行に設けたレール4と、該レール4上を走行し、上部にボルスター5を搭載し得るスペースを有する2つのステージ6が設けられた搬送台車7により構成され、前記プレス機1から使用済みのボルスター5aを中間台8を経由して取出し、該搬送台車7上で待機する交換用のボルスター5bをプレス機1へ搬送させるボルスター段替装置において、前記ピット3に設置した該レール4を所望な高さに保持する架台18と、かつ、該ピット3の底部の両側に床板9が昇降可能な床昇降装置10を設けたことを特徴とするボルスター段替装置。
【請求項2】
前記床昇降装置10は、搬送台車7のいずれかのステージ6がプレス機1の正面に位置する時に、ピット3の開口部側にある床昇降装置10の床板9を作業床2の高さまで上昇させ、また、他方のステージ6がプレス機1の正面に位置する様に搬送台車7が移動する時は、作業床2の高さまで上昇させていた床板9を搬送台車7の下方まで下降させることにより搬送台車7が床昇降装置10の上部を移動できる構成としたことを特徴とする請求項1に記載のボルスター段替装置。











【図1】
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【図2】
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