説明

ボルト締結方法及びその装置

【課題】2つの軸孔を並設された状態で形成しその各軸孔に一対の半割メタルを装着する取付けボディと軸受キャップとを3本のボルトにより締結する場合において、各ボルトの最終的な締付軸力を極力ばらつかないようにすると共に、補正値の演算処理等の負担を軽減できるボルト締結方法を提供する。
【解決手段】最初に、軸孔の両側外方のボルトA,Cをメタルクラッシュ領域を超える初期締めトルクTxまで締付け、半割メタル23のクラッシュハイトを両軸孔間に集約させ、次に、両軸孔間のボルトBによる締結を、集約されたクラッシュハイトを押し潰す過程を経た所定の締結状態になるまで行わせ、そのトルク特性から半割メタル23のメタル成分角度θcを求め、全ボルト共通の補正締付角度θc/2を演算する。次に、全ボルトA,B,Cを、各理論着座点を基準として、初期設定角度θstdに共通の補正締付角度θc/2を付加した締付角度になるまで締付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルト締結方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボルト締結方法として、特許文献1に示すように、被締結部材間に弾性変形部材を介在させた上で、その両被締結部材を、両弾性変形部材の両側位置において、ボルトにより締結し、その際、そのボルト締付値を、設定値に弾性変形部材の締め代を押し潰すために必要な締め代締付値(補正値)を付加するものがある。
【0003】
例えば、軸受構造体の組立方法においては、図11に示すように、軸受キャップ(被締結部材)21と取付けボディ(被締結部材)20との間に区画形成された1つの軸孔22にクラッシュハイトを有する一対の半割メタル(弾性変形部材)23と軸体24とを装着した上で、軸受キャップ21と取付けボディ20とを、ボルトA,Bを用いて締結することが行われ、その際、軸受キャップ21と取付けボディ20とが密着するまでの間、メタルクラッシュ(半割メタル23の押し潰し)が生じて、そのメタルクラッシュに伴いボルト軸力の消費成分(≒メタル成分角度θc)が発生することから、そのメタル成分角度θcがボルトの締付過程で求められ、そのメタル成分角度θcが補正角度として初期設定角度(前工程である軸孔加工形成時の締付角度と同じ締付角度)に付加される。
【0004】
より具体的には、図12に示すように、上記半割メタルを装着した状態でのボルト(軸受キャップボルト)の締付過程において、締付終了前(軸受キャップ21と取付けボディ20とが完全に密着した状態)のトルク勾配β(dT/dθ)から理論着座点θ0を算定すると共に、そのトルク勾配βとボルトの締付初期(上記半割メタルのメタルクラッシュハイトを押し潰す過程)のトルク勾配α(dT/dθ)とから、メタル成分角度θc(増し締め量)を求め、理論着座点θ0を基準として、初期設定角度θstd(前工程である軸孔加工形成時の締付角度と同じ締付角度)にメタル成分角度θcを付加した締付角度だけ各ボルト毎に締付けることが行われる(θstd+θc)。この方法においては、図13に示すように、ボルトの締付過程で検出されるメタル成分角度θcが安定し易いことから、メタル成分角度θcを増し締め制御しても、軸体と半割メタルとの間に適正なクリアランスを維持しつつ上記軸孔の真円度を確保することが可能となる。
【0005】
ところで、被締結部材間に2つの弾性変形部材を並設状態をもって介在させた上で、その両被締結部材を、両弾性変形部材の並設方向における該各弾性変形部材の両側位置において、ボルトにより締結する場合がある。例えば、図1に示すように、軸受キャップ(被締結部材)21と取付けボディ(被締結部材)20との間に区画形成された2つの軸孔22に一対の半割メタル(弾性変形部材)23と軸体24とを装着した上で、軸受キャップ21と取付けボディ20とを、3本のボルトA,B,Cを用いて締結するような場合である。このような場合においても、前述の場合同様、一対の半割メタル(弾性変形部材)23のクラッシュハイト(締め代)を押し潰すために必要な補正値(メタル成分角度θc)を求め、それを増し締めする必要がある。
【特許文献1】特開平02−041830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、各ボルト毎に補正値としてのメタル成分角度θcを求めようとした場合、締付過程で検出されるメタル成分角度θcが、図14に示すように、ボルト毎にばらつく傾向にあり、この後、そのばらついたメタル成分角度θcに基づき各ボルト毎に補正制御を行ったとしても、各ボルトによる最終的な締付軸力はばらつくことになる。このため、2つの軸孔を有して3本のボルトにより締結された軸受構造体等においては、軸体と半割メタルとの間を適正なクリアランスに維持することや、軸孔の真円度を確保することが困難となっている。
【0007】
また、上記場合においては、各ボルト毎に、その締結特性を用いて特有の補正値(メタル成分角度θc)を個々に演算しなければならず、ボルトの本数が増えたことと相まって、補正値の演算処理等の負担は増えることになっている。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その第1の技術的課題は、被締結部材間に2つの弾性変形部材を並設状態をもって介在させた上で、該両被締結部材を、該両弾性変形部材の並設方向における該各弾性変形部材の両側位置において、ボルトをもってそれぞれ締結し、その際、各ボルトを、該各ボルトの締付基準点を基準として、基本締付値に該弾性変形部材の締め代を押し潰すために必要な補正値を付加した締付値で締付けるボルト締結方法において、各ボルトについての最終的な締付軸力を極力ばらつかないようにすると共に、補正値の演算処理等の負担を軽減できるようにすることにある。
第2の技術的課題は、上記ボルト締結方法を使用したボルト締結装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記第1の技術的課題を達成するために本発明(請求項1に係る発明)にあっては、
被締結部材間に2つの弾性変形部材を並設状態をもって介在させた上で、該両被締結部材を、該両弾性変形部材の並設方向における該各弾性変形部材の両側位置において、ボルトをもってそれぞれ締結し、その際、各ボルトを、該各ボルトの締付基準点を基準として、基本締付値に該弾性変形部材の締め代を押し潰すために必要な補正値を付加した締付値で締付けるボルト締結方法において、
前記ボルトによる締結を、前記両弾性変形部材の並設方向両側外方位置における両側位置ボルト締結と、前記両弾性部材の間位置における中間位置ボルト締結とに分け、そのうちのいずれか一方のボルト締結だけを、その締付値が前記弾性変形部材の締め代を押し潰す領域を超える所定締付値になるまで行わせて、前記両弾性変形部材の締め代を、前記ボルトによる締結のうちの他方のボルト締結の締結位置に集約させ、
次に、前記他方のボルト締結を、前記集約された締め代を押し潰す過程を経た所定の締結状態になるまで行わせて、その締結特性から前記弾性変形部材の締め代成分角度を求めると共に、その締め代成分角度から、前記補正値として全ボルト共通の補正値を演算し、
次に、前記全ボルトを、その各締付基準点を基準として、前記基本締付値に前記全ボルト共通の補正値を付加した締付値になるまで締付ける構成としてある。請求項1の好ましい態様としては、請求項2〜7の記載の通りとなる。
【0010】
前記第2の技術的課題を達成するために本発明(請求項8に係る発明)にあっては、
被締結部材間に2つの弾性変形部材を並設状態をもって介在させた上で、該両被締結部材を、該両弾性変形部材の並設方向における該各弾性変形部材の両側位置において、ボルトをもってそれぞれ締結し、その際、各ボルトを、該各ボルトの締付基準点を基準として、基本締付値に該弾性変形部材の締め代を押し潰すために必要な補正値を付加した締付値で締付けるボルト締結装置において、
前記両弾性変形部材の並設方向両側外方位置に設けられるボルト、及び前記両弾性変形部材の間位置に設けられるボルトの締付けをそれぞれ調整する複数のボルト締付け調整手段と、
前記両弾性変形部材の並設方向両側外方位置に設けられるボルト、及び前記両弾性部材の間位置に設けられるボルトのうち、いずれか一方のボルトの締付けを調整するボルト締付け調整手段の制御に関しては、そのボルトを、前記弾性変形部材の締め代を押し潰す締付領域を超える所定締付値になるまで締付けさせて、前記両弾性変形部材の締め代を他方のボルト位置に集約させ、他方のボルトの締付けを調整するボルト締付け調整手段の制御に関しては、そのボルトを、前記集約された締め代を押し潰す過程を経た所定の締結状態になるまで締付けさせる初期締め制御手段と、
前記初期締め制御手段の締付制御によって生じる前記他方のボルトによる締結特性から、前記弾性変形部材の締め代成分角度を求めると共に、その締め代成分角度から、全ボルト共通の補正値を演算する演算手段と、
前記他方のボルトの締付けを調整後、前記複数のボルト締付け調整手段を制御して、前記全ボルトを、その各締付基準点を基準として、前記基本締付値に前記全ボルト共通の補正値を付加した締付値になるまで締付けさせる後締め制御手段と、
を備える構成としてある。この請求項8の好ましい態様として、請求項9以下の記載の通りとなる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、各ボルトの締付値には、その各締付基準点を基準として、基本締付値(一定値)に各ボルト毎の特有の補正値ではなく全ボルト共通の補正値を付加したもの(一定値)が用いられることになり、各ボルトの最終的な締付軸力がばらつくことを防止できることになる。その一方、各ボルトの補正値は、その各ボルトの特性を用いて個々に導き出すのではなく、一部のボルトの締結特性(他方のボルト締結の締結特性)を用いて導きだされることになり、各ボルトの特性を用いて個々に補正値を導き出す場合に比べて、補正値の演算処理等の負担を軽減できることになる。このため、各ボルトの最終的な締付軸力のばらつきを防止できると共に、補正値の演算処理等の負担を軽減できる。
しかも、上記全ボルト共通の補正値を求めるに際して、他方のボルト締結だけで(一部のボルトだけで)集約された弾性部材の締め代を押し潰すことから、そのときの特性が明瞭に表れることになり、締め代成分角度の検出精度を高めることができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、他方のボルト締結を、その締付値が一方のボルト締結の所定締付値まで行い、その後、全ボルトを、所定締付値を基準として、前記全ボルト共通の補正値を考慮した共通の増し締め値だけ増し締めすることから、所定締付値(弾性変形部材の締め代を押し潰す締付領域を超える領域の値)では各ボルトの締付軸力がほぼ等しくなることを利用して、それを基準として、共通の増し締め値だけ増し締めされることになり、各ボルトの締付値は、その各締付基準点を基準として、ほぼ一定値となる。このため、この場合も、各ボルトの最終的な締付軸力がばらつくことを防止できる。
【0013】
請求項3の発明によれば、全ボルトを、所定締付値から同時に増し締めすることから、同期条件を同一として、各ボルトの締付制御等を簡略化することができる。
また、ボルトを停止状態から再締付する際、ボルト締結面に静摩擦と動摩擦とが生じるが、全ボルトを同一同期条件の下で所定締付値から同時に増し締めできることから、摩擦の影響を受けて各ボルト毎に締付特性が変化することを抑制できる。このため、多軸からなるボルト締結体構造においては、締結品質を高い状態で確保できる。
【0014】
請求項4の発明によれば、両側位置ボルト締結を中間位置ボルト締結に先行して行う場合には、中間位置ボルト締結の締結特性から両弾性変形部材の締め代成分角度を求めると共に、全ボルト共通の補正値を該締め代成分角度の1/2とすることで、弾性変形部材の2倍分の締め代を押し潰した際の締め代成分角度を、本来の補正すべき値とすることができ、適正な共通の補正値を得ることができる。
【0015】
請求項5の発明によれば、中間位置ボルト締結を両側位置ボルト締結に先行して行う場合には、両側位置ボルト締結の締結特性から各弾性変形部材の締め代成分角度をそれぞれ求めると共に、全ボルト共通の補正値を該締め代成分角度の平均値とすることで、両側位置ボルト締結における各ボルトが弾性変形部材の締め代を押し潰した際の各締め代成分角度を、ばらつきが抑制された値とすることができ、適正な共通の補正値を得ることができる。
【0016】
請求項6の発明によれば、各ボルトの締付基準点が、弾性変形部材の締め代を押し潰す領域を超える領域での締結特性の勾配から導き出される理論着座点であり、弾性変形部材の締め代成分角度を、他方の締結の締結特性において締め代の押し潰し終了点が示す締付角度と、該締め代の押し潰し終了点を超える領域での締結特性の勾配から導き出される理論着座点と、から求めることから、前記請求項1〜5の作用効果を具体的に実現できる。
【0017】
請求項7の発明によれば、両被締結部材が、2つの軸孔を並設した状態で形成する取付けボディと軸受キャップとからなり、弾性変形部材が、各軸孔内に円環を構成するように装着される一対の半割メタルであり、弾性変形部材の締め代が、前記半割メタルのクラッシュハイトにより構成されることから、前記請求項1〜6の作用効果を具体的に実現できる。
【0018】
請求項8の発明によれば、作動において、前記請求項1に係るボルト締結方法が使用されることになり、請求項1に係るボルト締結方法を使用したボルト締結装置を提供できる。
【0019】
請求項9の発明によれば、作動において、前記請求項2に係るボルト締結方法が使用されることになり、請求項2に係るボルト締結方法を使用したボルト締結装置を提供できる。
【0020】
請求項10の発明によれば、作動において、前記請求項3に係るボルト締結方法が使用されることになり、請求項3に係るボルト締結方法を使用したボルト締結装置を提供できる。
【0021】
請求項11の発明によれば、作動において、前記請求項4に係るボルト締結方法が使用されることになり、請求項4に係るボルト締結方法を使用したボルト締結装置を提供できる。
【0022】
請求項12の発明によれば、作動において、前記請求項5に係るボルト締結方法が使用されることになり、請求項5に係るボルト締結方法を使用したボルト締結装置を提供できる。
【0023】
請求項13の発明によれば、作動において、前記請求項6に係るボルト締結方法が使用されることになり、請求項6に係るボルト締結方法を使用したボルト締結装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
本実施形態に係るボルト締結方法は、図1に示すように、シリンダボディからなる取付けボディ(被締結部材)20とエンジン軸受部品としての軸受キャップ(被締結部材)21とを3本のボルトA,B,Cにより締結する組付工程に用いられる。取付けボディ20と軸受キャップ21とは、取付けボディ20に軸受キャップ21がボルトA,B,Cによりボルト締結されるとき、その取付けボディ20と軸受キャップ21との間において2つの軸孔(加工前)22を並設状態で形成することになっており、その各軸孔22は、取付けボディ20及び軸受キャップ21の双方に略半々に跨ることになっている。このとき、ボルトA,B,Cの締付位置は、2つの軸孔22の並設方向において、各軸孔22の両側とされており、本実施形態においては、ボルトA,Cの締付位置は2つの軸孔22の並設方向両側外方とされ(両側位置ボルト締結)、ボルトBの締付位置は2つの軸孔22間とされる(中間位置ボルト締結)。
【0025】
前記取付けボディ20と前記軸受キャップ21との組付工程は、軸受加工前工程と、軸孔加工工程と、軸受組立工程とからなっている。本実施形態に係るボルト締結方法は、そのうちの軸受組立工程において用いられている。
【0026】
先ず、軸受加工前工程から説明する。軸受加工前工程は、軸孔加工工程を行う前に、取付けボディ20と軸受キャップ21とをボルトA,B,Cによりボルト締結する工程であり、この工程においては、図2に示すように、ボルトの締付角度を制御する角度法を用いて、3本のボルトA,B,Cが、その各理論着座点θ0を基準として、予め設定されている初期設定角度θstd(一定)にまで締付けられる。この場合、理論着座点θ0は、ボルトA,B,Cの各締付過程中に、その各ボルトA,B,Cについての締付角度とその締付角度に対応する締付トルクとを計測して、その計測値から各トルク特性(各トルク特性線)を得、その各トルク特性(各トルク特性線)のトルク勾配β(=dT/dθ)を利用してそれぞれ求めることになっている。尚、ボルトの締付けには、ナットランナー等のボルト回転手段が用いられる。
【0027】
前記軸孔加工工程は、軸孔22加工として例えばボーリング加工を行うものであり、その軸孔加工工程においては、前記軸受加工前工程において行われたボルト締結状態が維持される。
【0028】
前記軸受組立工程は、上記軸孔加工工程後、一旦、取付けボディ20から軸受キャップ21を取外して、その各軸孔22(取付けボディ20の円弧状凹所及び軸受キャップ21の円弧状凹所)に弾性変形部材としての一対の半割メタル23と軸体(クランク軸等)24とを装着し、その上で、ボルトA,B,Cによるボルト締結により取付けボディ20と軸受キャップ21とを再組付けする工程である(図1の状態参照)。この場合、半割メタル23は、略円筒形の金属部材を直径に沿って分割したような形状とされて、取付けボディ20から軸受キャップ21を取外した後に、取付けボディ20の円弧状凹所及び軸受キャップ21の円弧状凹所に沿うようにそれぞれ装着されるが、その際、半割メタル23は、図3に示すように、軸受キャップ21、取付けボディ20の接合面よりも僅かに突出して締め代としてのクラッシュハイト23aを構成することになり、その半割メタル23が装着された取付けボディ20と軸受キャップ21とが、その間に軸体24を挟み込むようにしつつ組み合わされる。
【0029】
前記軸受組立工程において、半割メタル23が装着された取付けボディ20と軸受キャップ21とがその間に軸体24を挟み込むようにしつつ組み合わされると、ボルトA,Cによる締結と、ボルトBによる締結とに分けられて、ボルト締結が行われる。
【0030】
本実施形態においては、先ず、図4に示すように、ボルトA,Cによる締結が開始される。各組の半割メタル23のクラッシュハイト23a(メタルクラッシュさせるためのメタル成分)を、ボルトBが位置する側に集約させて、ボルトA,Cによっては、半割メタル23のクラッシュハイト23aをメタルクラッシュさせないようにするためである。このため、図4に示すように、ボルトA,Cの場合のトルク特性は、取付けボディ20と軸受キャップ21とを締結する際の直線状のトルク特性を示す(θ0A(又はθ0C)〜θxの間を参照)。
【0031】
前記最初のボルト締結であるボルトA,Cによる締結は、図4に示すように、同時に開始され、初期締めトルクTx(又はそれに対応する初期締め角度θx)に到達すると停止される。このボルトA,Cによる締結は、前述したように、各組の半割メタル23のクラッシュハイト23aをボルトBが位置する側に集約させるためであるが、ボルトAによる締結とボルトCによる締結とを同時に行うのは、クラッシュハイト23aの集約効果を高めると共に、締付条件を同一条件として締付制御等の簡略化を図るためである。ボルトA,Cによる締結を、初期締めトルクTxに到達すると停止するのは、この後の工程で行われるボルトBによる締結により補正締付角度が求められるのを待つためである。ここで、上記初期締めトルクTxは、全クラッシュハイト23aを押し潰すために必要な締付トルク以上(領域外)の所定のトルク値であり、この初期締めトルクTxは、実験等により予め求められる。
【0032】
この各ボルトA,Cの締付過程中においては、その各締付角度とその締付角度に対応する締付トルクとを計測することにより、各トルク特性(各トルク特性線)を得て、その各トルク特性(各トルク特性線)のトルク勾配β(=dT/dθ)から理論着座点θ0(θ0A,θ0C)が求められる(図4参照)。後述のボルトBを含め全てのボルトA〜Cの締付角度の基準を各理論着座点とするためである。
【0033】
前記ボルトBによる締結は、図4に示すように、前記ボルトA,Cによる締結が初期締めトルクTxに到達してその締結が停止されると、開始される。ボルトBによる締結をボルトA,Cによる締結よりも後で行わさせるのは、ボルトA,Cにより集約された各組の半割メタル23のクラッシュハイト23aをボルトBの締付けだけで押し潰すことにより、クラッシュハイト23aのメタルクラッシュ特性を含むトルク特性を求め、その1本のボルトBのトルク特性に基づき、全体のメタルクラッシュのためのメタル成分角度(締め代成分角度)θcを精度良く求めるためである。
【0034】
上記ボルトBの締付特性としては、図4に示すように、半割メタル23のクラッシュハイト23aをメタルクラッシュする際のメタルクラッシュ領域のトルク特性(θx〜θcの間を参照)、取付けボディ20と軸受キャップ21とを締結する際のトルク特性が、順に表れる(θc〜θxの間を参照)。具体的には、取付けボディ20と軸受キャップ21とを締結する際のトルク特性のトルク勾配βは、メタルクラッシュ領域のトルク特性のトルク勾配αよりも大きくなり、トルク勾配βの勾配線とトルク勾配αの勾配線とは交点(押し潰し終了点)Pを形成する。
【0035】
このようなボルトBの締付特性に基づき、そのボルトBについての理論着座点θ0B、その理論着座点θ0Bを基準とした前記メタル成分角度θc、全ボルトA,B,C共通の補正締付角度が求められる。ボルトBについての理論着座点θ0Bを求めるのは、前述したように、ボルトA〜Cの締付角度を理論着座点を基準として調整するためである。このため、トルク勾配βの勾配線を利用して、その勾配線と締付角度軸(横軸)との交点が、ボルトBの理論着座点θ0Bとして求められる(具体的には、トルク勾配βの勾配線上の締付トルクTとトルク勾配βとによりT/βを算出し、その締付トルクTに対応する締付角度からT/βだけ遡った点を求める)。
【0036】
メタル成分角度θcを求めるのは、クラッシュハイト23aの締付消費分を求めて全ボルトA,B,C共通の補正締付角度の基礎とするためである。このため、ボルトBについてのトルク勾配αの勾配線とトルク勾配βの勾配線とを利用し、その両者の交点Pが求められ、その交点Pにおける座標の一つである締付角度がメタル成分角度θc(理論着座点θ0Bを基準)として求められる。
【0037】
全ボルトA,B,C共通の補正締付角度を求めるのは、この後の工程で行う再締付角度に利用するためである。このため、本実施形態においては、ボルトBについての上記メタル成分角度θcに基づきθc/2が演算され、それが全ボルトA,B,C共通の補正締付角度θc/2とされる。ここで、メタル成分角度θcを2で割って補正締付角度θc/2とするのは、2組の一対のクラッシュハイト23aが集約され、2倍分のメタル成分(クラッシュハイト23a)を1本のボルトBが押し潰して、メタル成分角度が2倍になって表れるからである。これにより、全ボルトA,B,C共通の補正締付角度θc/2が得られるだけでなく、これに伴って、個々のボルトのトルク特性からメタル成分角度θcをそれぞれ求めてそれら個々について補正締付角度を算出する場合に比べて補正締付角度の演算処理負担を軽減できることになる。
【0038】
このボルトBによる締結も、図4に示すように、ボルトA,Cの場合と同様、初期締めトルクTxに到達すると、その締結が停止される。ボルトA〜Cの締付停止点(初期締めトルクTx点)を、締付軸力がほぼ等しい共通の再締付開始点とするためである。すなわち、初期締めトルクTxに到達する点では、メタルクラッシュ領域を超えて、取付けボディ20と軸受キャップ21とを締結する領域に入っており、そこでは、ボルトA,B,Cのいずれもが、ほぼ等しいトルク勾配βを示すことになり、締付停止点(初期締めトルクTx点)を共通にすれば、その点ではボルトA,B,Cの締付軸力(ボルト軸力)はほぼ等しくなる(図4におけるθ0A(θ0C)Txθxがなす三角形の面積と、θ0BTxθxがなす三角形の面積とがほぼ等しいことを参照)。このため、このことと、前述の全ボルトA,B,C共通の補正締付角度とに着目し、初期締めトルクTx点(初期締めトルクTxに対応する初期締め角度θx(理論着座点を基準にしたもの))を、この後の工程で行う締付けの共通の再締付開始点としようとしているのである。
【0039】
ボルトBの締結が停止されると、全ボルトA,B,C共通の補正締付角度を考慮したボルトA,B,Cによる再締付けが開始される。各ボルトA,B,Cを、ばらつかせることなく最終的な締付軸力にまで締め付けるためである。すなわち、全ボルトA,B,C共通の再締付開始点(初期締めトルクTx点)においては、前述したように、締付軸力ほぼ等しくなっており、その再締付開始点を基準に、全ボルトA,B,Cを、共通の補正締付角度θc/2を考慮した締付角度だけ締付けることにより、ボルトA,B,Cの最終的な締付軸力がばらつかないようにしているのである。具体的には、ボルトA,B,Cによる再締付角度(締付制御角度)は、各理論着座点θ0(θ0A,θ0B,θ0C)を基準として、共通の初期設定角度θstdに共通の補正締付角度θc/2を加算したものに設定されることになる。本実施形態においては、それから初期締めトルクTxに対応する初期締め角度θx(理論着座点を基準にしたもの)を差し引いたものθstd+θc/2−θx(共通値)が演算され、各ボルトA,B,Cは、各締付軸力がほぼ等しい初期締めトルクTxに対応する初期締め角度θx(理論着座点を基準にしたもの)から、共通値であるθstd+θc/2−θxだけ増し締めされる。これにより、各ボルトA,B,Cの最終的な締付軸力がばらつくことが防止されることになる。
【0040】
またこの場合、全てのボルトA〜Cの再締付けは、同時に開始(同期)される。これは、同期条件を同一として、各ボルトA〜Cの締付制御等を簡略化するためである。また、ボルトを停止状態から再締付する際、ボルト締結面に静摩擦と動摩擦とが生じるが、全ボルトA〜Cを同一同期条件の下で所定締付値から同時に増し締めすることにより、摩擦の影響を受けて各ボルト毎に締付特性が変化することを抑制するためでもある。これにより、高い締結品質を確保できることになる。
【0041】
勿論、各ボルトA,B,Cについて、各理論着座点θ0(θ0A,θ0B,θ0C)を基準とした締付制御角度θstd+θc/2を設定し、各理論着座点θ0から締付制御角度θstd+θc/2までに到達しているか否かを判断する場合には、必ずしも、各ボルトA,B,Cの初期締めトルクTxを等しくする必要はない。各ボルトA,B,Cの締付角度が、各理論着座点θ0を基準として締付制御角度θstd+θc/2であれば、各ボルトA,B,Cの締付軸力は共通することになるからである。
【0042】
各ボルトA,B,Cが初期締めトルクTxに対応する締付角度θxからθstd+θc/2−θxだけ増し締めされたとき(理論着座点θ0から締付制御角度θstd+θc/2までに到達したとき)には、その各締付は停止し、締付けは終了する。これにより、各ボルトA,B,Cのいずれもが、理論着座点θ0から締付制御角度θstd+θc/2だけ締め付けられることになり、各ボルトA,B,Cの最終的な締付軸力がばらつくことを抑制できることになる。
【0043】
次に、上記第1実施形態に係る方法を用いたボルト締結装置について説明する。このボルト締結装置1は、図5に示すように、ボルト回転手段としての複数(本実施形態においては3台)のナットランナ2A〜2Cと、その各ナットランナ2A〜2Cを制御する制御系3と、を備えている。ナットランナ2A(2B,2C)は、ボルトの頭部に係合されるソケット4と、そのソケット4を回転駆動する駆動モータ(ボルト締付け調整手段)5と、ソケット4によってボルトに負荷されるトルクを検知するためのトルクトランスデューサ(トルク検知手段)6と、駆動モータ5の回転角度を検出することによりボルトの締付け角度を測定する角度エンコーダ(締付け角度検出手段)7とを有している。
【0044】
前記制御系3は、演算制御装置(CPU)8を備えている。この演算制御装置8には、トルクトランスデューサ6からの締付けトルク信号、角度エンコーダ7からの締付け角度信号が直接、入力されている他に、トルク勾配演算、初期締めトルクTxへの到達を検出するためのの各種情報が入出力される。先ず、トルクトランスデューサ6からの締付トルク信号、角度エンコーダ7からの締付角度信号について説明する。これら信号に基づく締付トルク、締付角度は、ボルトの締付け開始と同時に計測が開始されることになっており、そのうち、締付角度については、後述する如く、理論着座点が求められた後は、以後、その理論着座点を基準として(締付角度値0として)、締付角度が特定される。
【0045】
次に、トルク勾配演算のための入出力関係について説明する。制御系3には、基準トルクT00を設定する基準トルク設定器9Aが備えられ、その基準トルク設定器9Aからの基準トルク信号と各ナットランナ2A〜2Cのトルクトランスデューサ6によって検知されたボルトの締付トルク信号とが各コンパレータ10Aa(10Ab,10Ac)にそれぞれ入力されている。各コンパレータ10Aa(10Ab,10Ac)は、基準トルク信号と締付トルク信号とを比較して、その両者の値が一致したときに一致信号を出力することになっており、その一致信号はアナログゲート11Aa(11Ab,11Ac)を介して基準トルク到達信号として演算制御装置8に入力されることになっている。一方、演算制御装置8には、各ナットランナ2A(2B,2C)の角度エンコーダ7が検出するボルトの締付角度信号が、その各角度エンコーダ7に対応した角度ゲート12a〜12e(3組あるうちの1組のみ図示)を介して入力されることになっており、その各組の角度ゲート12a〜12eには、ON,OFFするための演算制御装置8からのON,OFF信号がそれぞれ入力されることになっている。演算制御装置8から各組の角度ゲート12a〜12eへのON信号は、基準トルク到達信号が各アナログゲート11Aa(11Ab,11Ac)を介して演算制御装置8に入力されることを条件にそれぞれ出力されることになっており、これにより、各組の角度ゲート12a〜12eがONとされて、演算制御装置8(記憶手段)は、基準トルクT00時点における基準締付角度θ00を記憶することになる。これに対して、演算制御装置8から各組の角度ゲート12a〜12dへのOFF信号は、各組の各角度ゲート12a〜12dがONになってから入力される締付角度が、その各角度ゲート12a〜12dに応じて設定される角度に到達したときにそれぞれ出力されることになっている(角度ゲート12eについては後述(図7において説明))。すなわち、制御系3には、締付角度θ1を設定する角度設定器14a、締付角度θ2を設定する角度設定器14b、締付角度θ3を設定する角度設定器14c、締付角度θ4を設定する角度設定器14dがそれぞれ備えられており、演算制御装置8は、各アナログゲート11Aa(11Ab,11Ac)からの各基準トルク到達信号毎に(各ナットランナ毎に)、基準締付角度θ00と各角度設定器14a〜14dがそれぞれ設定する角度θ1,θ2,θ3,θ4との和θ00+θ1,θ00+θ2,θ00+θ3,θ00+θ4を記憶し、各角度エンコーダ7からの締付角度がθ00+θ1,θ00+θ2,θ00+θ3,θ00+θ4に順次至ったと判断したときには、それに応じて、各角度ゲート12a〜12dにOFF信号を順次、出力する。また、この角度エンコーダ7からの締付角度がθ00+θ1,θ00+θ2,θ00+θ3,θ00+θ4にそれぞれ至ると、演算制御装置8は、そのθ00+θ1,θ00+θ2,θ00+θ3,θ00+θ4に至ったタイミングの入力締付トルクT1,T2,T3,T4を記憶する。これらに基づき、後述する如く、各ナットランナ毎に、トルク勾配α又はトルク勾配α、βが演算され、そのうちのトルク勾配βを利用して、実質的な締付け開始点である理論着座点が求められる。尚、θ1,θ2,θ3,θ4については、θ1<θ2<θ3<θ4の関係がある。
【0046】
次に、初期締めトルクTxへの到達検出について説明する。制御系3には、初期締めトルクTxを設定する初期締めトルク設定器9Bが備えられ、その初期締めトルク設定器9Bからの基準トルク信号と各ナットランナ2A〜2Cのトルクトランスデューサ6によって検知されたボルトの締付トルク信号とが各コンパレータ10Ba(10Bb,10Bc)にそれぞれ入力されている。各コンパレータ10Ba(10Bb,10Bc)は、基準トルク信号と締付トルク信号とを比較して、その両者の値が一致したときに一致信号を出力することになっており、その一致信号はアナログゲート11Ba(11Bb,11Bc)を介して初期締めトルク到達信号として演算制御装置8に入力されることになっている。尚、初期締めトルクTxとしては、メタル成分角度θcに対応するトルク(2組のメタルを押し潰すのに必要なトルク)以上の締付トルクが設定されることになっており、これは、予め実験等により求められている。
【0047】
前記演算制御装置8は、上記各種入力情報等を処理すべく、図6に示すように、設定角度加算手段、記憶手段、第1トルク勾配演算手段、第2トルク勾配演算手段、理論着座点演算手段、締付角度再調整手段、メタル成分角度算出手段、締付制御角度算出手段、増し締め角度演算手段、初期締め制御手段、後締め制御手段、制御信号出力手段を備えている。
【0048】
設定角度加算手段は、基準トルクT00に対応した基準角度θ00(基準トルクT00の到達信号が演算制御装置8に到達した際の締付角度)が入力された際、その基準角度θ00と、角度設定器14a(14b〜14d)が設定する設定角度θ1(θ2〜θ4)とをそれぞれ加算するものである。この加算値θ00+θ1,θ00+θ2,θ00+θ3,θ00+θ4は、後に、トルク勾配の算出に利用されることになる。
【0049】
記憶手段は、予め設定される初期設定角度θstd,その他各種情報(θ00+θ1,θ00+θ2,θ00+θ3,θ00+θ4,それらに対応するT1〜T4)等を記憶するものである。
【0050】
第1トルク勾配演算手段は、メタル成分(クラッシュハイト23a)の押し潰し領域において、締付角度θ00+θ1,θ00+θ2及びそのθ00+θ1,θ00+θ2に対応するトルクT1,T2を情報として受け入れて、それらに基づき、トルク勾配αを演算するものである。すなわち、第1トルク勾配演算手段は、前述の記憶手段からθ00+θ1,θ00+θ2,T1,T2を読み出し、メタル成分の押し潰し領域において第1トルク勾配αを、α=(T2−T1)/{(θ00+θ2)−(θ00+θ1)}に基づき演算する(図4参照)。
【0051】
第2トルク勾配演算手段は、メタル成分の押し潰し領域よりも高く、初期締めトルクTxよりも低いトルク領域において、締付角度θ00+θ3,θ00+θ4及びそのθ00+θ3,θ00+θ4に対応するトルクT3,T4を情報として受け入れて、それらに基づき、トルク勾配βを演算するものである。すなわち、第2トルク勾配演算手段は、前述の記憶手段からθ00+θ3,θ00+θ4,T3,T4を読み出し、第2トルク勾配βを、β=(T4−T3)/{(θ00+θ4)−(θ00+θ3)}に基づき演算する(図4参照)。
【0052】
理論着座点演算手段は、締付トルクの安定領域の前記トルク勾配βと前記締付トルクT4とを利用して、T4/βを演算し、図4の締付角度軸(横軸)上において、締付トルクT4に対応する締付角度点からT4/βだけ遡った点を理論着座点θ0と特定するものである。
【0053】
締付角度再調整手段は、前記理論着座点演算手段が求めた理論着座点における締付角度値を0とし、それを基準として、締付け開始から計測した締付角度及びこれから計測する締付角度を再調整するものである。
【0054】
メタル成分角度算出手段は、トルク勾配αの勾配線とトルク勾配βの勾配線との交点Pにおける締付角度(理論着座点を基準)を、トルク勾配α、β、理論着座点θ0等から求め、それをメタル成分角度θcとするものである。
【0055】
補正締付角度演算手段は、メタル成分角度算出手段が求めたメタル成分角度θcを演算して、各ボルトA,B,C共通の補正締付角度を演算するものである。本実施形態においては、1本のボルトBが2組の一対の半割メタル23のクラッシュハイト23aを押し潰すことから、θc/2が演算され、それが、ボルトA,B,Cの共通の補正締付角度とされる。
【0056】
締付制御角度算出手段は、初期設定角度θstd(軸受加工前工程における締付角度と同じ)に補正締付角度θc/2を加算して、締付制御角度θstd+θc/2を演算するようものである。この締付制御角度θstd+θc/2は、演算を終えると、前記記憶手段に記憶される。
【0057】
増し締め角度演算手段とは、初期締め角度θx(初期締めトルクTxに対応する締付角度)から再締付けをするに際して、初期締めトルクTxに対応する初期締め角度θxでは不足する締付角度を演算するものである。このため、増し締め角度演算手段は、理論着座点を基準として、初期締めトルクTxに対応する初期締め角度θxを求め、前記締付制御角度θstd+θc/2と初期締め角度θxとの差分θstd+θc/2−θxを増し締め角度として求めるように設定されている。
【0058】
初期締め制御手段は、前述のボルトA,Cの締付け、ボルトBの締付けを初期締めトルクTx(又は初期締め角度θx)まで行わせるもので、作動条件(設定条件)に基づき、そのいずれかを先行させて行うように設定されている。これにより、先行するボルトの締付けが、先ず、半割メタル23のクラッシュハイト23aを、その後に締付けを行うボルト位置に集約させることになり、その後、そのクラッシュハイト23aが集約された位置のボルトの締付けが、その集約されたクラッシュハイト23aを、押し潰す過程を経た所定の状態にすることになる。
【0059】
後締め制御手段は、各ボルトA,B,Cの各理論着座点θ0を基準として制御する場合には、締付制御角度算出手段による締付制御角度θstd+θc/2の算出後、全ボルトA,B,Cの締付け制御を行うものであり、この場合、後締め制御手段は、各ボルトA,B,Cの締付けが締付制御角度θstd+θc/2に到達したか否かを判断して、全ボルトA,B,Cの締付け状態を、各理論着座点θ0を基準として、締付制御角度θstd+θc/2に到達するようにする。また、初期締め角度θx(初期締めトルクTx)を基準として制御する場合には、増し締め角度演算手段による増し締め角度θstd+θc/2−θxの算出後、全ボルトA,B,Cの締付け制御を行うものであり、この場合、後締め制御手段は、各ボルトA,B,Cの締付けが増し締め角度θstd+θc/2−θxに到達したか否かを判断して、全ボルトA,B,Cの締付け状態を、初期締め角度θxを基準として、増し締め角度θstd+θc/2−θxに到達するようにする。さらに、本実施形態においては、後締め制御手段は、全ボルトA,B,Cの締付けを同時に開始させることになっている。
【0060】
制御信号出力手段は、各種情報に基づき、サーボアンプ13を介して駆動モータ5に駆動、停止信号を出力するものである。これについては、図7に示すフローチャートの説明と共に説明する。
【0061】
次に、上記ボルト締結装置1による軸孔22加工後の制御例を、図7に示すフローチャートに基づきより具体的に説明する。
半割キャップ、軸体24がセットされると、再組付けを行うべく、先ず、ボルトA,Cの初期締付が行われる。このため、ボルト締結装置1が起動されると、S(ステップを示す)1において、各種情報として、ボルトA,Cに対する初期設定角度θstd等が読み込まれ、S2において、制御信号出力手段からのサーボアンプ13を介した駆動信号がナットランナ2A,2Cに出力され、ボルトA,Cの締付けが開始される。
【0062】
ボルトA,Cの締付けが開始されると、S3において、締付トルク及び締付角度の検出が開始され、S4において、締付トルクが基準トルクT00に到達したか否かが判別される。S4がNOのときには、判別が繰り返される一方、S4がYESになったときには、ナットランナ2A,2Cに対応する各組の角度ゲート12c、12dがONとされて、そのときの締付角度θ00(基準トルクT00に対応する基準角度)に角度設定器12c、12dの設定角度θ3,θ4を加算したものがそれぞれ求められ、それらは記憶手段に記憶される。そして、次のS6において、各組の角度ゲート12cから制御演算装置8に入力される締付角度θがθ00+θ3に到達したか否かが判別され、S6がYESになったときには、S7において、その時点で入力されている締付トルクT3(TA3,TC3)が取り込まれ、それが記憶手段に記憶される。これを終えると、S8において、角度ゲート12cにOFF信号が出力されて角度ゲート12cはOFFとなる。
【0063】
ボルトA,Cについての各角度ゲート12cがOFFとされると、S9において、各組の角度ゲート12dから制御演算装置8に入力される締付角度θがθ00+θ4に到達したか否かが判別され、S9がYESになったときには、S10において、その時点で入力されている締付トルクT4(TA4,TC4)が取り込まれ、それが記憶手段に記憶される。これを終えると、S11において、角度ゲート12dにOFF信号が出力されて角度ゲート12dはOFFとなる。
【0064】
ボルトA,Cについての各角度ゲート12dがOFFとされると、S12において、ボルトA、Cについてのトルク勾配β(βA,βC)が演算される。このトルク勾配β(βA,βC)の演算に際しては、記憶手段からθ00+θ3、θ00+θ4、TA3、TC3、TA4、TC4が読み出され、トルク勾配βAについては、βA=(TA4−TA3)/{(θ00+θ4)−(θ00+θ3)}に基づき算出され、トルク勾配βCは、βC=(TC4−TC3)/{(θ00+θ4)−(θ00+θ3)}に基づき算出される。このトルク勾配βA、βCが算出されると、それが利用されて、S13において、前述の如く、理論着座点θ0(θ0A,θ0C)が求められる。このボルトA,Cについての理論着座点θ0(θ0A,θ0C)が求まった後、締付トルクが初期締めトルクTxに到達したか否かが判別され、S14がYESのときには(初期締めトルク信号が演算制御装置8に入力されたとき)、S15において、ボルトA,Cに対するナットランナ2A,2Cによる締付けが停止(制御信号出力手段が駆動停止信号を駆動モータ5に出力)される。
【0065】
ボルトA,Cに対する締付けが停止されると、ボルトBの初期締付を行うべく、S16において、ボルトBに対する初期設定角度θstd等が読み込まれ、S17において、ナットランナ2Bの駆動が開始される。これに伴い、S18において、締付トルク及び締付角度の検出が開始され、S19において、締付トルクが基準トルクT00に到達したか否かが判別される。S19がNOのときには、判別が繰り返される一方、S19がYESになったときには、ナットランナ2Bに対応する各組の角度ゲート12a〜12eがONとされて、そのときの締付角度θ00(基準トルクT00に対応する基準角度)に角度設定器12a、12b、12c、12dの設定角度θ1,θ2,θ3,θ4を加算したものがそれぞれ求められ、それらは記憶手段に記憶される。そして、次のS21において、角度ゲート12aから制御演算装置8に入力される締付角度θがθ00+θ1に到達したか否かが判別され、S21がYESになったときには、S22において、その時点で入力されている締付トルクTB1が取り込まれ、それが記憶手段に記憶される。これを終えると、S23において、角度ゲート12aはOFFとなる。
【0066】
この後、設定角度θ00+θ2についてのボルトBの締付トルクTB2についても、同様に求められ(S24〜S26)、これらボルトBの設定角度θ00+θ1,θ00+θ2、締付トルクTB1,TB2に基づき、クラッシュハイト23aのメタルクラッシュ領域におけるトルク勾配αが、α==(TB2−TB1)/{(θ00+θ2)−(θ00+θ1)}に基づき算出される。
【0067】
ボルトBについてのトルク勾配αが求められ、ボルト締結領域がクラッシュハイト23aのメタルクラッシュ領域から、取付けボディ20と軸受キャップ21とを締結領域に入ると、前記同様、設定角度θ00+θ3,θ00+θ3に基づき締付トルクTB3,TB4が検出され(S28〜S30,S31〜S33参照)、それらに基づき、トルク勾配β(βB)がβ=(TB4−TB3)/{(θ00+θ4)−(θ00+θ3)}により演算される(S34)。そしてこの後、S35において、トルク勾配βに基づき理論着座点θ0Bが求められ、S36において、S27のトルク勾配αの勾配線、S34のトルク勾配βの勾配線を利用して、その交点P座標であるメタル成分角度θc(理論着座点を基準)が求められ、そのメタル成分角度θcから共通の補正締付角度θc/2が演算される。
【0068】
メタル成分角度θcが求まり、補正締付角度θc/2が演算されると、S37において、締付トルクが初期締めトルクTxに到達したか否かが判別され、S37がYESのときには、S38において、ボルトBに対するナットランナ2Bによる締付けが停止(制御信号出力手段が駆動停止信号を駆動モータ5に出力)される。
【0069】
そしてこの後、S39において、初期設定角度θstd、補正締付角度θc/2、初期締めトルクに対応する初期締め角度θxを用い、初期締めトルクに対応する初期締め角度θxでは足りない共通の増し締め角度θstd+θc/2−θxが求められる。この演算の後、S40において、各ボルトA,B,Cは同時に締付けが開始され、初期締めトルクTxに対応する初期締め角度θxから、θstd+θc/2−θxに至ると、制御演算装置8は、ナットランナ2A〜2Cに駆動停止信号を出力して各ボルトA,B,Cの締付けを停止すると共に、角度ゲート12eをOFFとする。これにより、各ボルトA,B,Cは、締付軸力がほぼ等しい初期締め角θxを基準として、共通の増し締め角度θstd+θc/2−θxだけ増し締めされることになり、各ボルトA,B,Cの最終的締付軸力は、ほぼ等しくなる。勿論、上記態様とは別の態様として、S39において、各ボルトA,B,Cについて共通の締付制御角度θstd+θc/2を求め、それ以降のステップにおいて、各ボルトA,B,Cの締付けが、その各理論着座点から共通の締付制御角度θstd+θc/2に至ったか否かを判断してもよい。
【0070】
図8は、上記第1実施形態に係る方法(メタル成分補正有(本案))、個々のボルトについてメタル成分角度を求めそれに基づいて補正を行ったボルト締結の場合(メタル成分補正有(従来技術))、メタル補正を行わなかったボルト締結の場合(メタル成分補正無)について、軸体と24と半割メタル23との間のメタルクリアランスを調べた結果である。この結果によれば、メタル成分補正有(本案)が、メタル成分補正有(従来技術)、メタル成分補正無に比べて、軸体と24と半割メタル23との間のメタルクリアランス拡大を大幅に抑制できる結果となった。
【0071】
次に、第2実施形態に係るボルト締結方法について説明する。
第2実施形態に係るボルト締結方法は、第1実施形態の変形例を示すもので、最初のボルト締結として、ボルトBによる締結が行われ、その後に、ボルトA,Cによる締結が行われる点が、第1実施形態と相違している(図9参照)。このため、最初のボルト締結であるボルトBによる締結により、各組の半割メタル23のクラッシュハイト23a(メタルクラッシュさせるためのメタル成分)が、ボルトA,Cが位置する側にそれぞれ集約することになり、ボルトBによっては、半割メタル23のクラッシュハイト23aはメタルクラッシュせず、その集約された各組の半割メタル23のクラッシュハイト23aは、ボルトA,Cによりそれぞれメタルクラッシュされることになる。そして、ボルトA,Cによるメタルクラッシュによるトルク特性からメタル成分角度θc(θcA,θcC)がそれぞれ求められ、その平均値(θcA+θcC)/2が各ボルトA(B,C)についての補正締付角度θcaveとされる。このように、補正締付角度θcaveを、メタル成分角度θc(θcA,θcC)の平均値としているのは、ボルトA,Cが、集約された1対のクラッシュハイト23aをそれぞれ押し潰してメタル成分角度θc(θcA,θcC)をそれぞれ求めるものの、求めたメタル成分角度θcA,θcCが同一でないことがあり得るからである。
【0072】
この後、増し締め角度として、θstd+θcave−θxが求められ、各ボルトA,B,Cは、初期締め角度θxから、増し締め角度θstd+θcave−θxだけ増し締めされる。これによっても、前記第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0073】
上記第2実施形態に係る方法を用いたボルト締結装置1は、前記第1実施形態に係る方法を用いたボルト締結装置1と基本的に同一の構成とされ(図5参照)、その作動のみが異なっている。図10は、その作動を示すフローチャートであり(Qはステップを示す)、そのフローチャートには、上述の第2実施形態に係るボルト締結方法を用いた具体的内容が示されている。そのフローチャートに示す具体的内容も、基本的に第1実施形態に係るフローチャートと対応しており(第2実施形態に係るボルト締結方法で述べた点のみが相違)、Q1〜Q15にはボルトBの締結工程、Q16〜Q39にはボルトA,Cの締結工程、Q40〜Q42にはボルトA〜Cの再締結工程が示されている。以下、図10に示すフローチャートにおいて、第1実施形態に係るフローチャートのステップと対応関係にあるステップに同じ数字が付すことにより、これ以上の説明を省略する。
【0074】
尚、これまで、角度法を中心として説明してきたが、この他に、本件ボルト締結方法にトルク+角度法(予め設定されたスナッグトルクに達するまでボルトを締付けた後、そのスナッグトルクに達した時点におけるボルトの締付け角度を基準として、さらに設定角度だけボルトを締付けること)を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】第1実施形態に係るボルト締結方法が適用される軸受構造を示す図。
【図2】軸受加工前工程におけるボルト締結を説明する説明図。
【図3】クラッシュハイト23aを説明する説明図。
【図4】第1実施形態のボルト締結方法を説明する説明図。
【図5】第1実施形態に係るボルト締結装置示す図。
【図6】制御演算装置の内容を示す図。
【図7】第1実施形態に係る制御例を示すフローチャート。
【図8】各種ボルト締結方法を用いた場合のクリアランス拡大量の結果を示す図。
【図9】第2実施形態のボルト締結方法を説明する説明図。
【図10】第2実施形態に係る制御例を示すフローチャート。
【図11】2本のボルトを用いた軸受構造を示す図。
【図12】メタルクラッシュ補正を説明する説明図。
【図13】2本のボルトを用いた軸受構造体でのメタル成分角度のばらつきを示す図。
【図14】3本のボルトを用いた軸受構造体でのメタル成分角度のばらつきを示す図。
【符号の説明】
【0076】
1 ボルト締結装置
2A,2B,2C ナットランナー
5 駆動モータ(ボルト締付け調整手段)
6 トルクトランスデューサ
8 制御演算装置
20 取付けボディ(被締結部材)
21 軸受キャップ(被締結部材)
22 軸孔
23 半割メタル(弾性変形部材)
23a クラッシュハイト(締め代)
A,B,C ボルト
Tx 初期締めトルク(所定締付値)
θx 初期締め角度(所定締付値)
θstd 初期設定角度(基本締付値)
θc メタル成分角度(締め代成分角度)
θ/2,θcave 補正締付角度(補正値)
θ0(θ0A,θ0B,θ0C) 理論着座点


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被締結部材間に2つの弾性変形部材を並設状態をもって介在させた上で、該両被締結部材を、該両弾性変形部材の並設方向における該各弾性変形部材の両側位置において、ボルトをもってそれぞれ締結し、その際、各ボルトを、該各ボルトの締付基準点を基準として、基本締付値に該弾性変形部材の締め代を押し潰すために必要な補正値を付加した締付値で締付けるボルト締結方法において、
前記ボルトによる締結を、前記両弾性変形部材の並設方向両側外方位置における両側位置ボルト締結と、前記両弾性部材の間位置における中間位置ボルト締結とに分け、そのうちのいずれか一方のボルト締結だけを、その締付値が前記弾性変形部材の締め代を押し潰す領域を超える所定締付値になるまで行わせて、前記両弾性変形部材の締め代を、前記ボルトによる締結のうちの他方のボルト締結の締結位置に集約させ、
次に、前記他方のボルト締結を、前記集約された締め代を押し潰す過程を経た所定の締結状態になるまで行わせて、その締結特性から前記弾性変形部材の締め代成分角度を求めると共に、その締め代成分角度から、前記補正値として全ボルト共通の補正値を演算し、
次に、前記全ボルトを、その各締付基準点を基準として、前記基本締付値に前記全ボルト共通の補正値を付加した締付値になるまで締付ける、
ことを特徴とするボルト締結方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記他方のボルト締結を、その締付値が前記一方のボルト締結の所定締付値になるまで行い、
その後、前記全ボルトを、前記所定締付値を基準として、前記全ボルト共通の補正値を考慮した共通の増し締め値だけ増し締めする、
ことを特徴とするボルト締結方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記全ボルトを、前記所定締付値から同時に増し締めする、
ことを特徴とするボルト締結方法。
【請求項4】
請求項1において、
前記両側位置ボルト締結を前記中間位置ボルト締結に先行して行う場合には、該中間位置ボルト締結の締結特性から前記両弾性変形部材の締め代成分角度を求めると共に、前記全ボルト共通の補正値を該締め代成分角度の1/2とする、
ことを特徴とするボルト締結方法。
【請求項5】
請求項1において、
前記中間位置ボルト締結を前記両側位置ボルト締結に先行して行う場合には、該両側位置ボルト締結の締結特性から前記各弾性変形部材の締め代成分角度をそれぞれ求めると共に、前記全ボルト共通の補正値を該締め代成分角度の平均値とする、
ことを特徴とするボルト締結方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、
前記各ボルトの締付基準点が、前記弾性変形部材の締め代を押し潰す領域を超える領域での締結特性の勾配から導き出される理論着座点であり、
前記弾性変形部材の締め代成分角度を、前記他方のボルト締結の締結特性において前記締め代の押し潰し終了点が示す締付角度と、該締め代の押し潰し終了点を超える領域での締結特性の勾配から導き出される理論着座点と、から求める、
ことを特徴とするボルト締結方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項において、
前記両被締結部材が、2つの軸孔を並設した状態で形成する取付けボディと軸受キャップとからなり、
前記弾性変形部材が、前記各軸孔内に円環を構成するように装着される一対の半割メタルであり、
前記弾性変形部材の締め代が、前記半割メタルのクラッシュハイトにより構成される、
ことを特徴とするボルト締結方法。
【請求項8】
被締結部材間に2つの弾性変形部材を並設状態をもって介在させた上で、該両被締結部材を、該両弾性変形部材の並設方向における該各弾性変形部材の両側位置において、ボルトをもってそれぞれ締結し、その際、各ボルトを、該各ボルトの締付基準点を基準として、基本締付値に該弾性変形部材の締め代を押し潰すために必要な補正値を付加した締付値で締付けるボルト締結装置において、
前記両弾性変形部材の並設方向両側外方位置に設けられるボルト、及び前記両弾性変形部材の間位置に設けられるボルトの締付けをそれぞれ調整する複数のボルト締付け調整手段と、
前記両弾性変形部材の並設方向両側外方位置に設けられるボルト、及び前記両弾性部材の間位置に設けられるボルトのうち、いずれか一方のボルトの締付けを調整するボルト締付け調整手段の制御に関しては、そのボルトを、前記弾性変形部材の締め代を押し潰す締付領域を超える所定締付値になるまで締付けさせて、前記両弾性変形部材の締め代を他方のボルト位置に集約させ、他方のボルトの締付けを調整するボルト締付け調整手段の制御に関しては、そのボルトを、前記集約された締め代を押し潰す過程を経た所定の締結状態になるまで締付けさせる初期締め制御手段と、
前記初期締め制御手段の締付制御によって生じる前記他方のボルトによる締結特性から、前記弾性変形部材の締め代成分角度を求めると共に、その締め代成分角度から、全ボルト共通の補正値を演算する演算手段と、
前記他方のボルトの締付けを調整後、前記複数のボルト締付け調整手段を制御して、前記全ボルトを、その各締付基準点を基準として、前記基本締付値に前記全ボルト共通の補正値を付加した締付値になるまで締付けさせる後締め制御手段と、
を備える、
ことを特徴とするボルト締結装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記初期締め制御手段は、前記他方のボルトを前記一方のボルトの所定締付値になるまで締付けるように設定され、
前記後締め制御手段は、前記初期締め制御手段に基づき前記他方のボルトが前記一方のボルトの所定締付値になるまで締付けられた後、前記全ボルトを、前記所定締付値を基準として、前記全ボルト共通の補正値を考慮した共通の増し締め値だけ増し締めするように設定されている、
ことを特徴とするボルト締結装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記後締め制御手段は、前記全ボルトを、前記所定締付値から同時に増し締めするように設定されている、
ことを特徴とするボルト締結装置。
【請求項11】
請求項8において、
前記演算手段は、入力情報に基づき、前記両弾性変形部材の並設方向両側外方位置に設けられるボルトが、前記両弾性変形部材の間位置に設けられるボルトよりも先行して締付けられると判断したときには、前記両弾性変形部材の間位置に設けられるボルトの締結特性から前記両弾性変形部材の締め代成分角度を求めると共に、前記全ボルト共通の補正値を該締め代成分角度の1/2とするように設定されている、
ことを特徴とするボルト締結装置。
【請求項12】
請求項8において、
前記演算手段は、入力情報に基づき、前記両弾性変形部材の間位置に設けられるボルトが前記両弾性変形部材の並設方向両側外方位置に設けられるボルトよりも先行して締付けられると判断したときには、前記両弾性変形部材の並設方向両側外方位置に設けられるボルトの締結特性から前記各弾性変形部材の締め代成分角度をそれぞれ求めると共に、前記全ボルト共通の補正値を該締め代成分角度の平均値とするように設定されている、
ことを特徴とするボルト締結装置。
【請求項13】
請求項8〜12のいずれか1項において、
前記各ボルトの締付基準点が、前記弾性変形部材の締め代を押し潰す領域を超える領域での締結特性の勾配から導き出される理論着座点であり、
前記演算手段は、前記弾性変形部材の締め代成分角度を、前記他方のボルト締結の締結特性において前記締め代の押し潰し終了点が示す締付角度と、該締め代の押し潰し終了点を超える領域での締結特性の勾配から導き出される理論着座点と、から求めるように設定されている、
ことを特徴とするボルト締結装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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