説明

ボンド磁石用希土類−鉄系磁石粉末とその製造方法

【課題】ボンド磁石用組成物としたときの成形性やボンド磁石の機械強度に優れるボンド磁石用希土類−鉄系磁石粉末とその製造方法を提供。
【解決手段】表面に膜厚100nm以下のFe、P、O、RE(REは希土類元素)を含む被膜を有する希土類元素−鉄系磁石粉末において、被膜中に金属状態で存在するFeの量が、磁石粉末表面をX線光電子分光装置でFe2p3/2スペクトルを測定した後、得られたスペクトルプロファイルの面積に基づいて算出したとき、2.0%以下であることを特徴とする希土類−鉄系磁石粉末などによって提供する。被膜は、磁石粉末が燐酸を含む処理液と接触し、その後、特定温度で加熱乾燥処理されることで形成され、この燐酸との接触処理、加熱乾燥処理が繰り返されることで金属状態のFe量が低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンド磁石用希土類−鉄系磁石粉末とその製造方法に関し、さらに詳しくは、ボンド磁石用組成物としたときの成形性やボンド磁石の機械強度に優れるボンド磁石用希土類−鉄系磁石粉末とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、フェライト磁石、アルニコ磁石、希土類磁石などが、一般家電製品、通信・音響機器、医療機器、一般産業機器をはじめとする種々の製品にモーターやセンサーなどとして組込まれ、使用されている。これら磁石は、主に焼結法で製造されるが、脆く、薄肉化しにくいため複雑形状への成形は困難であり、また焼結時に15〜20%も収縮するため寸法精度を高められず、研磨等の後加工が必要で、用途面で大きな制約を受けている。
【0003】
これに対し、ボンド磁石(樹脂結合型磁石)は、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂などの熱可塑性樹脂、あるいは、硬化剤との併用によりエポキシ樹脂、ビス・マレイミドトリアジン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂などの熱硬化性樹脂をバインダーとし、これに磁石粉末を充填して容易に製造できるため、新しい用途開拓が繰り広げられている。
【0004】
こうしたボンド磁石の中でも、特に、希土類元素を含む鉄系磁石粉末を用いたボンド磁石は、磁石粉末と樹脂バインダーとを混合・混練した組成物を製造するとき混練機の負荷が大きく、組成物の粘性が増大することがある。そのため、このような組成物を射出成形法、押出成形法、または圧縮成形法などで成形しようとすると、成形性が悪く良好な成形品を得にくかった。これは磁石粉末による触媒作用でバインダー樹脂が変性することが主な原因であるから、磁性粉末に種々の表面処理を施すことによって緩和される。
【0005】
表面処理としては、従来高温高湿度環境下での防錆を目的として、例えば、成形体表面に熱硬化性樹脂等のコーティング膜を形成することで発錆を抑制したり、また、成形体表面に燐酸塩含有塗料による被覆処理を施したりすることで発錆を抑制することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、粉末表面への表面処理については、燐酸塩処理やクロム酸塩処理などの化成処理を行うこと(例えば、特許文献2参照)、高分子被膜を形成すること(例えば、特許文献3参照)、さらには、金属めっきをすること(例えば、特許文献4参照)などの技術も提案されている。
【0007】
このような表面処理も、単に発錆の抑制だけでなく、樹脂の変性を抑制する効果を持っている。しかし、被膜形成により充分な効果を得るためには、数10μm程度の膜厚にする必要があるとされ、このような厚い膜では磁気特性を発現する材料の体積分率が低下し、磁気特性の低下を招いてしまう。また、上記の方法では、被膜を形成する際に微粉末同士の凝集も起こることから、異方性の磁石粉末の場合には磁化容易方向を揃えるのが困難になり、磁石成形体の磁気特性の低下が避けられなかった。
【0008】
従来、nmレベルの膜厚になるように磁石粉末を被膜処理する場合、粉砕溶媒中に燐酸を添加し、磁石粉末を粉砕しながら、希土類や鉄の燐酸塩を粉末表面に生成させる方法が検討されている(例えば、特許文献5参照)。この方法によれば、作製される磁石粉末の膜厚が小さいため、非磁性相による磁気特性の低下や微粉末の凝集が緩和されるが、バインダー樹脂の変性を抑える効果は十分でなく、組成物の流動性や粘性が変化してなお成形性が損なわれることがあった。さらにバインダー樹脂との界面に成形時の熱歪に起因する応力集中やバインダー樹脂との親和性不足も重なって、ボンド磁石としての成形体の機械強度が低く、加工時に破壊するなどの問題もあった。
【0009】
近年、家電機器用モーター、自動車用センサーやモーターの製造において、海外で部品を組み立てるため船などによる輸送が必要となり、その使用環境、輸送環境がさらに厳しくなり、また機器を小型化するため、上記課題を解決できるとともに磁気特性にも優れた磁石粉が要求されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−208321号公報
【特許文献2】特開平1−14902号公報
【特許文献3】特開平4−257202号公報
【特許文献4】特開平7−142246号公報
【特許文献5】特開2002−124406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、前述した従来技術の問題点に鑑み、ボンド磁石用組成物としたときの成形性やボンド磁石の機械強度に優れるボンド磁石用希土類−鉄系磁石粉末とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、膜厚100nm以下のFe、P、O、RE(REは希土類元素)を含む被膜を有する希土類元素−鉄系磁石粉末において、粉末表面に金属状態として存在する鉄Feの量を特定値以下に低減することによって、この磁石粉末を用いてボンド磁石用組成物にしたとき、その成形性に優れ、また得られた成形品の機械強度を改善することができることを見出した。また、このような磁石粉末を得るには、燐酸を含む溶液と希土類−鉄系磁石粉末を接触させた後、非酸化性雰囲気で、100〜300℃の温度範囲で加熱処理し、次いで、得られた希土類−鉄系磁石粉末を再び燐酸を含む溶液と接触させた後、非酸化性雰囲気で、80〜200℃の温度範囲で加熱処理すれば効率的に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、表面に膜厚100nm以下のFe、P、O、RE(REは希土類元素)を含む被膜を有する希土類元素−鉄系磁石粉末において、被膜中に金属状態で存在するFeの量が、磁石粉末表面をX線光電子分光装置でFe2p3/2スペクトルを測定した後、得られたスペクトルプロファイルの面積に基づいて算出したとき、2.0%以下であることを特徴とするボンド磁石用希土類−鉄系磁石粉末が提供される。
【0014】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、被膜中に金属状態で存在するFeの量は、まず、前記X線光電子分光装置で測定して束縛エネルギー705eV〜720eVの範囲で得られたFe2p3/2スペクトルプロファイルを、シャーリー法によってプロファイルのベースラインを設定し、金属状態の鉄Feの波形P1、鉄Feの酸化物形態の波形P2、鉄Feの別の酸化物形態の波形P3の3つの波形に分離し、次に、P1、P2、P3のそれぞれの波形の面積を算出して、これら3つの波形面積の合計に対する金属状態の鉄Feの波形P1の波形面積の百分率として決定することを特徴とするボンド磁石用希土類−鉄系磁石粉末が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、希土類−鉄系磁石粉末が、NdFeB系、Sm(Co、Fe、Cu、M)17系、又はSmFeN系であることを特徴とするボンド磁石用希土類−鉄系磁石粉末が提供される。なお、Sm(Co、Fe、Cu、M)17系におけるMは、Mn、ZrまたはHfのいずれかの元素が該当する。
【0015】
一方、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明に係り、燐酸を含む溶液と希土類−鉄系磁石粉末とを粉砕容器又は攪拌容器中で接触させる第一の工程、接触処理された希土類−鉄系磁石粉末を非酸化性雰囲気で、100〜300℃の温度範囲で加熱処理する第二の工程、加熱処理された希土類−鉄系磁石粉末を、再び燐酸を含む溶液と攪拌容器中で接触させる第三の工程、接触処理された希土類−鉄系磁石粉末を非酸化性雰囲気で、80〜200℃の温度範囲で加熱処理する第四の工程を順次行うことにより、希土類−鉄系磁石粉末の表面に、金属状態で存在するFeの量が低減した被膜を形成することを特徴とする希土類−鉄系磁石粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第4の発明において、燐酸を含む溶液が、有機溶剤として、エタノールまたは2−プロパノール(IPA)から選ばれた1種以上のアルコールを含むことを特徴とするボンド磁石用希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明のボンド磁石用希土類−鉄系磁石粉末は、膜厚100nm以下のFe、P、O、RE(REは希土類元素)を含む被膜を有する希土類元素−鉄系磁石粉末において、被膜中に金属状態で存在するFeの量が、磁石粉末表面をX線光電子分光装置でFe2p3/2スペクトルを測定した後、得られたスペクトルプロファイルの面積に基づいて算出したとき、2.0%以下に低減しているので、ボンド磁石用組成物の成形性に優れ、また得られた成形品の機械強度を改善することができる。
従って、本発明の希土類元素−鉄系磁石粉末は、例えば、一般家電製品、通信・音響機器、医療機器、一般産業機器等に至る幅広い分野において極めて有用であるため、その工業的価値は非常に高い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来の燐酸溶液による表面処理で得られた磁石粉末被膜のFe2p3/2プロファイルとこのプロファイルを波形分離したときのチャートである。
【図2】本発明により、燐酸溶液による表面処理された磁石粉末に対して、繰り返し燐酸溶液による表面処理を行って得られた磁石粉末のプロファイルとこのプロファイルを波形分離したときのチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のボンド磁石用希土類−鉄系磁石粉末とその製造方法について説明する。なお、本発明のボンド磁石用希土類−鉄系磁石粉末を以下、表面被覆磁石粉末ということがある。
【0019】
1.表面被覆磁石粉末
本発明の表面被覆磁石粉末では、希土類元素を含む鉄系磁石合金からなる磁石粉末の表面に、Fe、P、O、RE(REは希土類元素)からなる厚さ100nm以下の被膜が形成され、被膜中に金属状態で存在するFeの量が、磁石粉末表面をX線光電子分光装置でFe2p3/2スペクトルを測定した後、得られたスペクトルプロファイルの面積に基づいて算出したとき、2.0%以下であることを特徴とする。
【0020】
表面被覆される磁石粉末は、希土類元素を含む鉄系磁石合金の粉末であれば、その種類は特に制限されない。例えば、NdFeB系、Sm(Co、Fe、Cu、M)17系、SmFeN系などの各種磁石粉末を使用できる。
希土類元素としては、Sm、Nd、Pr、Y、La、Ce、またはGd等が挙げられ、単独若しくは混合物として使用できる。これらの中では、特にSm又はNdを5〜40原子%、Feを50〜90原子%含有するものが好ましい。また、SmFeN系合金粉末の製造方法には、鋳造法や還元拡散法などがあるが、本発明においては、特に還元拡散法が適している。
希土類元素を含む鉄系磁石粉末には、フェライト、アルニコなど、ボンド磁石や圧密磁石の原料となる各種磁石粉末を混合してもよい。
【0021】
本発明においては、希土類元素を含む鉄系磁石合金からなる磁石粉末が、燐酸を含む処理液と接触し、その後、特定温度で加熱乾燥処理され、この燐酸との接触処理、加熱乾燥処理が繰り返されることで、その表面にFe、P、O、RE(REは希土類元素)を含む特定の厚さの被膜が形成されている。この被膜の厚さは、平均100nm以下であり、100nmを越えると磁気特性が低下する。平均厚さが1nm未満であると成形性があまり改善されないので、10〜90nmであることが好ましい。上記無機有機複合被膜の膜厚は、被覆処理された希土類元素を含む鉄系磁石粉末の断面の電子顕微鏡写真から確認することができる。
【0022】
本発明において、被膜中に金属状態で存在するFeの量は、X線光電子分光装置(XPS)により以下のようにして測定し評価する。
まず、モノクロX線源(AlKα線)でFe2p3/2スペクトルを測定する。次に、束縛エネルギー705eV〜720eVの範囲で得られたスペクトルプロファイルをXPSに内蔵されている解析ソフトウェア(スペクトラムプロセッシング)によって、シャーリー法に基づきプロファイルのベースラインを設定し、金属状態の鉄Feの波形P1、鉄Feの酸化物形態の波形P2、鉄Feの別の酸化物形態の波形P3の3つの波形に分離する。その後、P1、P2、P3のそれぞれの波形の面積を算出して、これら3つの波形面積の合計に対する金属状態の鉄Feの波形P1の波形面積を百分率で求める。
【0023】
従来の燐酸溶液による表面処理方法によって得られた磁石粉末では、被膜をX線光電子分光装置でFe2p3/2プロファイルを波形分離すると、図1のようなチャートが得られた。これまで、燐酸溶液による表面処理方法によって得られた磁石粉末には、金属状態の鉄Feの形態と、鉄Feの酸化物を含む形態の少なくとも2種類からなる被膜が形成されることが明らかになっている。図1中、金属状態の鉄Feの波形がP1、鉄Feの酸化物形態の波形がP2とP3である。鉄Feの酸化物形態には、FeO、Fe、Fe、FeOOHといった酸化鉄があり、その一部が希土類元素、炭素、水素との複合酸化物になっているものと考えられる。
【0024】
その後、P1、P2、P3のそれぞれの波形面積を算出して、これら3つの波形面積の合計に対する金属状態の鉄Feの波形P1の波形面積を求めると、面積百分率は3%を超えた。
更なる検討により、金属状態の鉄Feの波形P1の百分率が2.0%を超えた磁石粉末を用いると、バインダー樹脂と混練するときのトルクが高く、得られた組成物の流動性Q値が低下することが分かっている。また組成物を成形して得たボンド磁石の機械強度が低下してしまう。
【0025】
これに対して、本発明により、さらにこの粉末に対して燐酸溶液による表面処理を行うと、得られた磁石粉末は、被膜をX線光電子分光装置でFe2p3/2プロファイルを波形分離したとき、図2のようなチャートが得られた。金属状態の鉄Feは目視できず、鉄Feの酸化物形態の波形P2と、P2とは異なる鉄Feの酸化物形態の波形P3のみからなることが分かる。金属状態の鉄Feの波形が消失する理由は、まだ完全には解明されないが、燐酸処理を繰り返したことで金属状態の鉄Feが鉄Feの酸化物に変化したためと推測される。その後、同様にしてP1、P2、P3のそれぞれの波形面積を算出して、これら3つの波形面積の合計に対する金属状態の鉄Fe(P1)の波形面積を求めると、面積百分率は0.1%であった。
さらなる検討により、金属状態の鉄Fe(P1)の波形面積の割合が2.0%以下の磁石粉末を用いると、バインダー樹脂と混練するときのトルクが低くなり、得られた組成物の流動性Q値が上昇して、組成物を成形して得たボンド磁石の機械強度が増加することが分かっている。
【0026】
ボンド磁石用希土類−鉄系磁石粉末は、NdFeB系の場合、そのP含有量が、0.1重量%以上のものが好ましく、また、SmFeN系の場合は、そのP含有量が、0.5重量%以上のものが好ましい。また、NdFeB系磁石、SmFeN系磁石とも、C含有量は、0.1重量%以下、H含有量は、0.1重量%以下であることが好ましい。
【0027】
2.表面被覆磁石粉末の製造方法
本発明の希土類元素を含む鉄系磁石粉末は、燐酸を含む溶液と希土類−鉄系磁石粉末とを粉砕容器又は攪拌容器中で接触させる第一の工程、接触処理された希土類−鉄系磁石粉末を非酸化性雰囲気で、100〜300℃の温度範囲で加熱処理する第二の工程、加熱処理された希土類−鉄系磁石粉末を、再び燐酸を含む溶液と攪拌容器中で接触させる第三の工程、接触処理された希土類−鉄系磁石粉末を非酸化性雰囲気で、80〜200℃の温度範囲で加熱処理する第四の工程を順次行うことにより、希土類−鉄系磁石粉末の表面に、金属状態で存在するFeの量が低減した被膜を形成することを特徴とする。
【0028】
(第一の工程)
第一の工程は、燐酸を含む溶液と希土類−鉄系磁石粉末を粉砕容器又は攪拌容器中で接触させる工程である。
本発明で使用される燐酸を含む溶液としては、金属化合物と反応して金属燐酸塩を生成するオルト燐酸をはじめ、亜燐酸、次亜燐酸、ピロ燐酸、直鎖状のポリ燐酸、環状のメタ燐酸が挙げられる。また、燐酸アンモニウム、燐酸アンモニウムマグネシウムなども使用できる。燐酸のうち、オルト燐酸が好ましい性能を発揮するが、その理由は、これが上記の金属化合物と反応しやすく、希土類系金属を成分とする磁石粉末の表面に保護膜を形成しやすいためと考えられる。これら化合物は、単独でも複数種を組み合わせてもよく、通常、有機溶剤、キレート剤、中和剤などと混合して処理剤とされる。
有機溶剤としては、特に制限はなく、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノールなどのアルコール類、ペンタン、ヘキサンなどの低級炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンなど芳香族類、ケトン類、それらの混合物等が使用できるが、安全性などの観点から特にエタノール、イソプロピルアルコールが好ましい。
【0029】
燐酸は、磁石粉末の粒径、表面積等に合わせて最適量を添加する。通常は、磁石粉末に対してHPOとして0.1〜2mol/kg(粉末重量当たり)であり、好ましくは0.15〜1.5mol/kg、さらに好ましくは0.2〜0.4mol/kgである。燐酸の添加量が0.1mol/kg未満であると、磁石粉末の表面が十分に被覆されないために耐塩水性が改善されず、また大気中で乾燥させると酸化・発熱して磁気特性が極端に低下する。2mol/kgを超えると、磁石粉末との反応が激しく起こって磁石粉末が溶解する。燐酸の濃度は、特に制限されず、無水燐酸、50〜99%燐酸水溶液などが用いられる。
【0030】
その後、磁石粉末が、NdFeB系、Sm(Co、Fe、Cu、M)17系であれば、燐酸を含む処理液中で攪拌する。また、SmFeN系であれば、粉砕しながら攪拌することが好ましい。
攪拌時間や粉砕時間は、装置の大きさ、処理すべき磁石粉の粒径や処理量などによって異なり、一概に規定できないが、所定の燐酸濃度の処理溶剤内では0.1〜3時間、好ましくは0.1〜2時間とする。0.1時間未満では、磁石粉の表面が充分な厚さの燐酸塩被膜が形成されず、3時間を超えると磁石粉が凝集しやすくなり好ましくない。本発明の方法においては、磁石合金粉の粉砕時に燐酸を適量添加することで磁石粉表面にメカノケミカル的な作用で被膜が形成されるために乾燥時間の短縮が可能となる。
【0031】
(第二の工程)
第二の工程は、引き続き、希土類−鉄系磁石粉末を不活性ガス中または真空中、100〜300℃の温度範囲で加熱処理する工程である。
ここで、第一の工程で得られる磁石粉末は、多量の処理液を含むスラリー中の合金粉ケーキとして得られる。スラリーの含液率は、5〜30重量%が好ましく、10〜30重量%になるように、スラリーを固液分離装置内で処理調整することがより好ましい。加熱処理には、ミキサー型乾燥機、処理物静置型の箱型乾燥機などを用いることができる。好ましいのは、ミキサー型乾燥機である。
【0032】
熱処理雰囲気は、非酸化性雰囲気であればよく、不活性ガスを用いる場合は、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気にすることが可能である。また、使用する装置にもよるが、昇温開始時の圧力は絶対圧力で70kPa〜100kPa、脱水エタノールの蒸発後の圧力及び乾燥操作の圧力は絶対圧力で5kPa以下とすることが好ましい。
熱処理温度は、100〜300℃の温度範囲とする。熱処理温度が100°C未満であるか300°Cを超えると、表面処理被膜に金属状態の鉄が残留し、ボンド磁石組成物の成形性や成形品の機械強度が改善されない。特に100℃未満では、表面処理被膜の緻密性が不足し、また磁石粉末に含有される炭素量、水素量が多く、保磁力低下が起こるので好ましくない。
熱処理時間は、装置の大きさ、処理すべき磁石粉の粒径や処理量などによって異なり、一概に規定できないが、なるべく短いほうが望ましい。例えば容積100リットルの攪拌型乾燥機にて磁石粉50kgを処理する場合は3時間以内、特に2時間以内とする。加熱処理時間が長くなるほど磁気特性が低下する。ただし、10分よりも短いと安定な燐酸塩被膜が形成されない場合がある。
【0033】
(第三の工程)
第三の工程は、第二の工程で得られた希土類−鉄系磁石粉末を、攪拌容器中で再び燐酸を含む溶液と接触させる工程である。
第二の工程で得られた希土類−鉄系磁石粉末は、前記燐酸を加えた処理液中で粉砕され、表面に燐酸塩の被膜が形成されているが、まだ必ずしも充分とはいえず、磁石微粉末が磁力などによって互いに凝集しているため流動性が悪い。そのため、燐酸を加えた有機溶剤で再び処理して、磁石粉末の接触面に被膜処理を行うのである。
【0034】
燐酸の種類は、前記第一の工程に用いたものと同じく、特に制限が無く市販の燐酸を使用することができる。燐酸の添加量は、粉砕後の磁石粉末の粒径、表面積等に関係するので一概には言えないが、通常は、磁石粉末に対して0.03〜1mol/kgであり、より好ましくは0.05〜0.5mol/kgが好ましい。0.03mol/kg未満であると磁石粉末の表面処理が十分に行なわれないためにコンパウンドの流動性が改善されない。ただし、1mol/kgを超えるとボンド磁石の磁気特性が低下することがある。
処理時間は、所定の燐酸濃度の有機溶剤内では1〜60分間、好ましくは5〜30分間とする。1分間未満では、磁石粉の表面が充分な厚さの燐酸塩被膜で均一に被覆されず、60分間を超えても流動性が大きくは改善されないので好ましくない。
【0035】
(第四の工程)
第四の工程は、第三の工程で得られた希土類−鉄系磁石粉末を不活性ガス中または真空中、80〜200℃の温度範囲で加熱処理する工程である。
ここで加熱雰囲気など加熱処理の条件は、処理温度以外は、前記第二の工程と同様である。処理温度は、80〜200℃の温度範囲であれば、前記第二の工程の温度よりも高くても低くても構わない。処理温度が80°C未満または200°Cを超えると、表面処理被膜に金属状態の鉄が残留し、ボンド磁石組成物の成形性や成形品の機械強度が改善されない。特に80℃未満では、表面処理被膜の緻密性が不足し、また磁石粉末に含有される炭素量、水素量が多く、保磁力低下が起こるので好ましくない。
上記のとおり、本発明では、磁石粉末が燐酸を含む処理液と接触し、その後、特定温度で加熱乾燥処理されることで被膜が形成され、この燐酸との接触処理、加熱乾燥処理が繰り返されることで金属状態のFe量が低減することになる。
【0036】
3.ボンド磁石用樹脂組成物
上記希土類−鉄系磁石粉末を樹脂バインダーと混合することでボンド磁石用組成物が得られる。
【0037】
樹脂バインダーの種類は、特に限定されることはなく、各種熱可塑性樹脂単体または混合物、あるいは各種熱硬化性樹脂単体あるいは混合物であり、それぞれの物性、性状等も所望の特性が得られる範囲でよく特に限定されることはない。
熱可塑性樹脂は、磁石粉のバインダーとして働くものであれば、特に制限なく、従来公知のものを使用できる。その具体例としては、6ナイロン、6−6ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、6−12ナイロン、芳香族系ナイロン、これらの分子を一部変性した変性ナイロン等のポリアミド樹脂、直鎖型ポリフェニレンサルファイド樹脂、架橋型ポリフェニレンサルファイド樹脂、セミ架橋型ポリフェニレンサルファイド樹脂、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂、アイオノマー樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、メタクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ三フッ化塩化エチレン樹脂、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合樹脂、エチレン−四フッ化エチレン共重合樹脂、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアリルエーテルアリルスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、酢酸セルロース樹脂、樹脂系エラストマー等が挙げられ、これらの単重合体や他種モノマーとのランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、他の物質での末端基変性品等が挙げられる。特に好ましいのは、6ナイロン、6−6ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、6−12ナイロン、芳香族系ナイロン、これらの分子を一部変性した変性ナイロン等のポリアミド樹脂である。
【0038】
熱可塑性樹脂の配合量は、磁石粉100重量部に対して、通常5〜50重量部、好ましくは5〜30重量部、より好ましくは5〜15重量部である。熱可塑性樹脂の配合量が5重量部未満であると、組成物の混練抵抗(トルク)が大きくなり、流動性が低下して磁石の成形が困難となり、一方、50重量部を超えると、所望の磁気特性が得られない。本発明の目的を損なわない範囲で、ボンド磁石用組成物の加熱流動性等を向上させるために、各種カップリング剤、滑剤や種々の安定剤等を配合することができる。
磁石合金粉と樹脂バインダー等を混合、混練するには各種ミキサー、ニーダー、押出機を用いることができる。
【0039】
ボンド磁石用組成物は、メルトインデックスMI法の試験方法に基づいて測定される流動性に優れている。なお、流動性は、具体的には東洋精機(株)製メルトインデクサーを用い、樹脂バインダーがポリアミドの場合、250°Cの加熱温度、荷重:21.6kgで、ダイス:直径2.1mm×厚さ8mmの中を所定重量のコンパウンドが通過する所要時間から、流動性(cc/sec)を評価する。得られた流動性の数値が0.1cc/sec以上であるボンド磁石用組成物は実用上好ましいものであるといえる。
【0040】
4.ボンド磁石
上記ボンド磁石用樹脂組成物は、射出成形法、圧縮成形法、押出成形法又は射出プレス成形法などの成形法により成形することによりボンド磁石を製造することができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0042】
(1)成分
磁石粉末:
・SmFeN合金粉末(粗粉)[住友金属鉱山(株)製、平均粒径:30μm]
・NdFeB系合金粉末[マグネクエンチインターナショナル製、MQP−B、平均粒径:47μm]
処理液:
・85%オルト燐酸水溶液[関東化学(株)製]
バインダー樹脂:
・ポリアミド(PA12、宇部興産(株)製)
【0043】
(2)評価方法
(2−1)磁石粉表面の金属Fe量
表面処理した磁石粉を導電性テープに密に固定して、X線光電子分光装置(XPS、VG Scientific社製 ESCALAB220i−XL)で状態分析した。鉄の状態分析としてFe2p3/2のスペクトルに注目し、分析面積をφ0.6mmとして試料表面の平均的な情報が得られるようにした。束縛エネルギー705eV〜720eVの範囲で得られたFe2p3/2スペクトルプロファイルを、前記XPSに内蔵されている解析ソフトウェアであるスペクトラムプロセッシングによって、シャーリー法に基づきプロファイルのベースラインを設定し、金属状態の鉄Feの波形P1、鉄Feの酸化物形態の波形P2、鉄Feの別の酸化物形態の波形P3の3つの波形に分離し、この後、P1、P2、P3の各波形面積を算出して、これら3つの波形面積の合計に対する金属状態の鉄Feの波形P1の波形面積を百分率で求めた。
波形分離は、前記スペクトラムプロッセッシングに初期値として、P1については中心値707.4eV及び半値幅1.06eV、P2については中心値711.2eV及び半値幅3.02eV、P3については中心値713.0eV及び半値幅5.3eVを入力し、この後はソフトウェア内部で以下の処理が実行される。即ち、分離された波形の合成波形と実際に測定された波形について束縛エネルギーにおける強度の差を算出し、この差が最小となるように前記の中心値と半値幅を求め、この中心値と半値幅に対応するP1、P2、P3の各々の波形面積の合計に対する金属状態のFeの波形P1の面積の百分率を、前記のスペクトラムプロッセッシングが算出する。
【0044】
(2−2)流動性(メルトインデックスMI法)
東洋精機(株)製メルトインデクサーを用い、250°Cの加熱温度、荷重:21.6kgで、ダイス:直径2.1mm×厚さ8mmの中を所定重量のコンパウンドが通過する所要時間から、流動性(cc/sec)を評価した。
【0045】
[実施例1〜5、比較例1〜6]
第一の工程として、SmFeN合金粉末3kgを、脱水エタノール4kgと表1に示す量の処理液との混合溶液中で媒体攪拌ミルを用いて平均粒径2.0μmまで粉砕した。ここで平均粒径は、Sympatec社製レーザー回折式粒度分布測定機HELOS&RODOSにて粒度分布を測定し、体積基準で算出したものである。なお、この処理液の量は、磁石粉末に対して0.3mol/kgに相当する。
次に、第二の工程として、粉砕したスラリーをミキサーに投入し、非酸化性雰囲気として窒素雰囲気を保持し、絶対圧力70kPaの圧力で昇温を開始し、2時間で表1に示す温度に達するようにし、更に乾燥させるために2時間保持した。昇温中に脱水エタノールが蒸発するため、蒸発が完了すると5kPaの圧力となり、この圧力を保持したまま乾燥操作をおこなった。
第三の工程として、表1に示す量の処理液を脱水エタノール3kgに分散し、冷却された磁石粉末に加えて30分攪拌した。なお、この処理液の量は、磁石粉末に対して0.1mol/kgに相当する。
引き続き、第四の工程として、非酸化性雰囲気として窒素雰囲気を保持し、70kPaの圧力で昇温を開始し、2時間で表1に示す温度に達するようにし、更に乾燥させるために2時間保持した。昇温中に脱水エタノールが蒸発するため、蒸発が完了すると5kPaの圧力となり、この圧力を保持したまま乾燥操作をおこなった。
冷却後に回収した磁石粉末は、被膜成分に対して、X線光電子分光装置で表面被膜の定性分析による元素分析を行い、また、磁石粉表面の金属Feの量を求めた。
その結果を表1に示す。比較例1については、図1に波形分離の例を示し、実施例1については、図に示した。これらの磁石粉末について、透過型電子顕微鏡にて表面被膜の厚みを確認したところ、比較例を含むすべての試料について被膜厚みが10〜50nmだった。
次に、得られた磁石粉末をバインダー樹脂と混合し、ラボプラストミルで30分間混練し、ボンド磁石組成物を得た。次に、この組成物を射出成形して40×8×2mmの成形品を得て、三点曲げによる曲げ強さを評価した。混練物中における磁石粉末の重量割合となる磁粉率、バインダー樹脂、混練温度を表1に示す。また混練30分での混練トルクと、得られた組成物の流動性Q値、さらに射出成形の温度と得られた成形体の曲げ強さも表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
[実施例6〜8、比較例7〜11]
第一の工程として、NdFeB系合金粉末3kgを、脱水エタノール4kgと表2に示す処理液との混合溶液中でミキサーを用いて30分間攪拌した。なお、この処理液の量は、磁石粉末に対して0.3mol/kgに相当する。次に、第二の工程として、表2に記載の温度以外の操作については、[実施例1〜5、比較例1〜6]に記載した第二の工程と同じ操作を行った。
第三の工程として、表1に示す処理液を脱水エタノール3kgに分散し、冷却された磁石粉末に加えて30分攪拌した。なお、この処理液の量は、磁石粉末に対して0.1mol/kgに相当する。引き続き、第四の工程として、表2に記載の温度以外の操作については、[実施例1〜5、比較例1〜6]に記載した第四の工程と同じ操作を行った。なお、比較例11については、第一工程から第四工程の処理を行っていない。
冷却後に回収した磁石粉末に対して、X線光電子分光装置で表面被膜の定性分析と金属Fe量を求めた。その結果を表2に示す。またこれらの磁石粉末について、透過型電子顕微鏡にて表面被膜の厚みを確認したところ、比較例11以外の試料については、被膜厚みが10〜90nmだった。
次に、得られた磁石粉末をバインダー樹脂と混合し、ラボプラストミルで30分間混練しボンド磁石組成物を得た。次に、この組成物を射出成形して40×8×2mmの成形品を得て、三点曲げによる曲げ強さを評価した。混練物の磁粉率、バインダー樹脂、混練温度を表2に示す。また混練30分での混練トルクと、得られた組成物の流動性Q値、さらに射出成形の温度と得られた成形体の曲げ強さも表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
「評価」
SmFeNの磁石粉末の場合、金属状態のFe量が2.0%以下となる実施例は、金属状態のFe量が2.0%を越える比較例に対して、混錬トルクが小さくなり、流動性を示すQ値が大きくなるため、成形性が向上しており、また、成形体の曲げ強さは大きくなっており、機械的強度も増加している。
NdFeBの磁石粉末の場合、金属状態のFe量が2.0%以下となる実施例と、金属状態のFe量が2.0%を越える比較例との関係は、上記したSmFeNの磁石粉末の場合と同じである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に膜厚100nm以下のFe、P、O、RE(REは希土類元素)を含む被膜を有する希土類元素−鉄系磁石粉末において、被膜中に金属状態で存在するFeの量が、磁石粉末表面をX線光電子分光装置でFe2p3/2スペクトルを測定した後、得られたスペクトルプロファイルの面積に基づいて算出したとき、2.0%以下であることを特徴とするボンド磁石用希土類−鉄系磁石粉末。
【請求項2】
被膜中に金属状態で存在するFeの量は、まず、前記X線光電子分光装置で測定して束縛エネルギー705eV〜720eVの範囲で得られたFe2p3/2スペクトルプロファイルを、シャーリー法に基づきプロファイルのベースラインを設定し、金属状態の鉄Feの波形P1、鉄Feの酸化物形態の波形P2、鉄Feの別の酸化物形態の波形P3の3つの波形に分離し、次に、P1、P2、P3のそれぞれの波形の面積を算出して、これら3つの波形面積の合計に対する金属状態の鉄Feの波形P1の波形面積の百分率として決定することを特徴とする請求項1に記載のボンド磁石用希土類−鉄系磁石粉末。
【請求項3】
希土類−鉄系磁石粉末が、NdFeB系、Sm(Co、Fe、Cu、M)17系、又はSmFeN系であることを特徴とする請求項1に記載のボンド磁石用希土類−鉄系磁石粉末。
【請求項4】
燐酸を含む溶液と希土類−鉄系磁石粉末とを粉砕容器又は攪拌容器中で接触させる第一の工程、接触処理された希土類−鉄系磁石粉末を非酸化性雰囲気で、100〜300℃の温度範囲で加熱処理する第二の工程、加熱処理された希土類−鉄系磁石粉末を、再び燐酸を含む溶液と攪拌容器中で接触させる第三の工程、接触処理された希土類−鉄系磁石粉末を非酸化性雰囲気で、80〜200℃の温度範囲で加熱処理する第四の工程を順次行うことにより、希土類−鉄系磁石粉末の表面に、金属状態で存在するFeの量が低減した被膜を形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の希土類−鉄系磁石粉末の製造方法。
【請求項5】
燐酸を含む溶液が、有機溶剤として、エタノールまたは2−プロパノール(IPA)から選ばれた1種以上のアルコールを含むことを特徴とする請求項4に記載のボンド磁石用希土類−鉄−窒素系磁石粉末の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−52277(P2011−52277A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202357(P2009−202357)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】