説明

ボーリング孔底地盤平板載荷試験装置及び同装置の設置方法

【課題】ボーリング孔を利用して、その孔底面での地盤の平板載荷試験を効率良く、また精度良く行えるようにする。
【解決手段】ボーリング孔底を、載荷板11で押圧し、孔底地盤の平板載荷試験を行うボーリング孔底地盤平板載荷試験装置であって、載荷板11と円筒部15とからなる載荷部を下端に保持した状態で、試験準備孔内に収容され、削孔機により所定の試験地盤面まで載荷板11の載荷面を掘進、到達させる載荷部保持パイプ12を備える。載荷部保持パイプは、側面に螺旋状の翼状突起13が形成されるとともに、載荷板11は、円筒部15のスリット14を介して載荷部保持パイプ12の下端に支持される。載荷板11は、掘進時には同期回転可能に支持され、平板載荷試験時には載荷ロッド20による鉛直方向載荷に対して、地盤押圧方向のみに移動可能に支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボーリング孔底地盤平板載荷試験装置及び同装置の設置方法に係り、ボーリング孔を利用して、その孔底面での地盤の平板載荷試験を効率良く、また精度良く行えるようにした装置及び同装置の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、深い地盤の支持力特性を地表面から調べる方法は深層載荷試験と呼ばれ、載荷試験の一方法として地盤工学会から紹介されている。地下のない建築物を直接基礎で計画する場合の基礎下端は現状地盤面から2〜3m程度下がっている場合が多く、その地盤の支持力を、早期に(例えば建物計画時点)に把握することは基礎設計の精度を早い段階から上げることができ、非常に有用である。一般的には、計画段階では既存建物があって調査ができない場合が多く、対象地盤面まで広く掘削して平板載荷試験を実施することは行われないのが実状である。
【0003】
そこで、発明者は、このような現場に適した載荷試験方法として、建物基礎の性能設計に必須である地盤の荷重〜沈下関係に着目し、静的平板載荷試験と急速平板載荷試験を併用する簡易な方法を、ボーリング孔底に適用し、深い地盤の荷重〜沈下関係を早期に調査する方法を提案している(非特許文献1)。
【0004】
また、類似の先行技術が特許文献1に開示されている。特許文献1は、孔内鉛直載荷試験方法において、ボーリング装置又は載荷装置の先端に設けた開閉するビットによりボーリング孔底を整面し、その後ボーリング孔底を載荷し、載荷試験装置としてロードセル、変位計、水圧計などを設置して孔底での各種試験を行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−107943公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】木下孝介,根本恒,崎浜博史,松澤一行,松本樹典著,静的および急速平板載荷試験による固結砂質地盤の地盤特性評価(その1:静的平板載荷試験による支持力評価),(その2:急速平板載荷試験によるばらつきの評価),2006年度大会(関東)学術講演梗概集」,日本建築学会刊,2006年7月31日,B−1分冊,P.571〜P.574
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述したボーリング孔底に対して実施する平板載荷試験を行う場合、以下のような問題が予想される。
(1)ボーリングにより削孔した孔の先端にスライム(掘りくず)が残ると、載荷板と試験
地盤の間に緩い土が挟まり、荷重〜沈下関係に影響する。
(2)載荷板に対する加力の方向が載荷板に対して垂直でないと斜めの荷重となり、載荷板
が回転しようとして、荷重〜沈下関係に影響する。
(3)得られた荷重〜沈下関係には土被りの効果が入っているので、それを考慮した支持力
評価が必要である。
【0008】
特許文献1に開示された発明では、ボーリング装置と一体である載荷試験装置の載荷板を用いてボーリング孔底を載荷するため、装置内に加力駆動部、載荷部、計測部などの各装置が一体的に収容する必要があり、全体構造が複雑になる。また、複数の計測装置を備えているため、計測操作も煩雑になるという問題がある。そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し、ボーリング孔を削孔した際に、載荷板を孔底地盤に対して安定した状態に保持でき、これにより載荷試験の精度向上を図ることができるボーリング孔底地盤平板載荷試験装置及び同装置の設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明はボーリング孔底を載荷部で押圧し、当該孔底地盤の平板載荷試験を行うボーリング孔底地盤平板載荷試験装置であって、前記載荷部を下端に保持した状態で、試験準備孔内に収容され、削孔機により所定の試験地盤面まで前記載荷部の載荷面を掘進、到達させる載荷部保持パイプを備え、該載荷部保持パイプの側面に翼状体が形成されるとともに、該載荷部保持パイプの下端に前記載荷部が同期回転可能に支持されたことを特徴とする。
【0010】
前記載荷部は、前記載荷部保持パイプに、鉛直方向載荷に対して地盤押圧方向のみに移動可能に支持させることが好ましい。
【0011】
前記載荷部保持パイプ内に、平板載荷試験設備の一部が装備され、前記載荷部が平板載荷試験に用いることが好ましい。
【0012】
前記翼状体は、前記載荷部保持パイプ下端に螺旋状に形成され、該載荷部保持パイプによる掘進時に、周辺地盤を撹乱させることが好ましい。
【0013】
ボーリング孔底地盤平板載荷試験装置の設置方法として、本発明はボーリング孔底地盤深度近傍まで掘削された試験準備孔内に、下端に載荷部を備えた載荷部保持パイプを挿入し、該載荷部保持パイプを孔底地盤面に回転押圧して、前記載荷部を試験深度まで掘進到達させ、前記載荷部保持パイプ内に平板載荷試験設備の一部を装備させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上に述べたように、本発明によれば、ボーリング孔を削孔した際に、載荷板を孔底地盤に対して安定した状態に保持でき、これにより各種の平板載荷試験の計測精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のボーリング孔底地盤平板載荷試験装置の載荷部保持パイプと載荷板の構成を示した部分拡大図。
【図2】図1に示したボーリング孔底地盤平板載荷試験装置の載荷板の掘進時と載荷試験時の動作状態を説明した説明図。
【図3】ボーリング孔底地盤平板載荷試験装置の設置手順を示した作業順序図。
【図4】静的平板載荷試験の一実施状態を示した説明図。
【図5】急速平板載荷試験の一実施状態を示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のボーリング孔底地盤平板載荷試験装置及び同装置の設置方法を実施するための形態として、以下の実施例について添付図面を参照して説明する。
【実施例】
【0017】
[試験装置先端部の構成]
本発明のボーリング孔底地盤平板載荷試験装置10(以下、載荷試験装置10と略記する。)は、上述の問題点を解決するために、特に載荷試験の載荷部の一部としての載荷板11の構成と、載荷部を保持する手段の構成およびそれらの動作に特徴を有する。図1各図は、載荷試験装置10のうち、載荷板11を先端に保持する手段としての、載荷部保持パイプ12の先端部の載荷板11と翼状突起13の取付状態と、載荷板11を操作する内部機構について、部分的に示した拡大図である。
【0018】
図1(a)は、載荷試験装置10の一構成である載荷部保持パイプの下端に載荷板11が保持された状態を示すために、載荷部保持パイプの下端の一部を切欠いて示した正面図である。同図に示したように、載荷板11上面には側面にスリット14が形成された円筒部15が載荷板11と一体化され、載荷部を構成している。そのスリット14には載荷部保持パイプ内面に横向きに溶接取付されたガイドロッド16の先端が嵌合している。また、載荷部保持パイプの下端外周面には2条の翼状突起13が載荷部保持パイプ12の中心を挟んで180°の対称位置に螺旋状をなして取り付けられている。本実施例では螺旋状に加工された鋼板がパイプ側面に溶接によって固定されている。翼状突起13の下端は、図1(a)に示したように、載荷部保持パイプ12の下端から載荷板11の厚さ分だけ下方に突出した状態にある。
【0019】
図1(b)は、平板載荷試験装置10として機能する場合の載荷板11の構成と動作とを示すために示すために、載荷部保持パイプ12の下端の一部を切欠いて示した正面図である。同図に示したように、載荷部保持パイプ12内には載荷ロッド20が挿入され、その下端は載荷板11と一体化した円筒部15の上面を直接押圧するようになっている。同図は、所定の載荷重によって載荷板11が所定量だけ孔底地盤面(図示せず)に押圧され貫入した状態が示されている。本実施例では載荷板11として直径φ100mm、厚さ25mmの扁平円筒形鋼材が用いられている。
【0020】
ここで、上述した載荷板11と翼状突起13の機能について、図2各図を参照して説明する。
[載荷板の機能]
載荷部保持パイプ12先端の載荷板11は試験時に孔底の地盤面2に密着した状態にある必要がある。実際のボーリング孔の先端は、削孔による地盤の乱れや残存スライムによって、孔底の試験地盤面がきれいに露出していない状態にある場合が多い。そこで、周辺地盤の乱れを矯正するとともにスライムを原地盤に押圧することで、原地盤に近い状態を保持して載荷部保持パイプ12で載荷板11を掘進させることとした。すなわち、図2(a)〜(b)に示したように、載荷部保持パイプ12を回転及び押し込み(黒矢印)動作させる際に、載荷部保持パイプ12の側面の翼状突起13がともに回転することで、載荷板11の周りを掘り崩すとともに、翼状突起13の傾角によって下方への掘進力を増加させることができる。
【0021】
また、本発明の特徴は、載荷板11の動作を、載荷板11設置時と載荷試験時とで異ならせた点にある。すなわち、載荷板11設置時は、載荷部保持パイプ12の下方への掘進と一体的に下端の載荷板11が掘進する(図2(a)〜(b))。一方、載荷試験時(図2(c)〜(d))は、載荷部保持パイプ12内に載荷ロッド20が挿入され、その下端を介して載荷板11の円筒部15に下向きのみの荷重(白抜き矢印)が加えられる。これにより、載荷板11のみが載荷部保持パイプ12から分離して下方に移動し、所定の押圧力を受けて孔底面に貫入する。そのために本発明では、載荷板11の上部の円筒部15の側面に形成された縦長のスリット14と載荷部保持パイプ12側のガイドロッド16とを係止させている。これにより、載荷部保持パイプ12に回転動作を付与した際には、載荷板11も同時に回転でき、後述する載荷試験時に載荷荷重を下向きに作用させた際には、載荷板11のみが下方に移動することができる。
【0022】
翼状突起13の機能として、掘進力の増加に加え、載荷板11設置時の載荷板11周囲の土砂の撹拌効果が期待できる。すなわち、載荷板11を所定深度まで設置させた状態で、載荷板11周囲の地盤が翼状突起13により乱され、周面摩擦がなくなる。そのため、孔内試験にもかかわらず載荷初期の周面摩擦を除いた試験が可能となる。
【0023】
[載荷板11の設置手順]
上述した載荷部保持パイプ12を用いて載荷板11を深い地盤内(ボーリング孔底部)に設置する作業手順について、図3各図を参照して説明する。
(1) 表層ケーシング3(一例として、外径φ216.3mmの鋼管を使用)を地表面1から約1mの深度まで貫入、設置する。この表層ケーシング3は、試験位置での地表面付近の土砂の崩落防止のために用いるものであり、ケーシング直径や貫入深さは対象地盤の状況に応じて適宜設定することができる(図3(a))。
(2) 表層ケーシング3で掘削され、露出した地盤面から、ケーシングパイプ5(一例として、外径φ114.3mmの鋼管を使用)で防護した試験準備孔4を、削孔機6を用いて掘削する。使用する削孔機6は、ケーシングパイプ5に回転、振動を付与してケーシングパイプ5を貫入可能とするタイプを地盤に応じて選定すればよい。この試験準備孔4の深度は載荷試験の試験深度Dより50mm程度浅い深さとする(図3(b):削孔時,(c):削孔完了時)。
(3) 掘削した試験準備孔孔4を防護するケーシングパイプ5内に、先端に載荷板11を保持した載荷部保持パイプ12(一例として外径φ102.4mm鋼管)を建て込む(図3(d))。その後、載荷部保持パイプ12の上端に取り付けた削孔機6により、所定の試験深度Dまで掘進(回転貫入)させる(図3(e))。このとき、上述した載荷部保持パイプ12と載荷板11とは円筒部15に形成されたスリット14(図1,図2各図参照)を介して一体化した回転状態にある。
(4) 載荷板11の下面が試験深度Dに到達した状態で、削孔機6を取り外す(図3(f))。この状態から、載荷部保持パイプ12を利用し、以下に述べる静的平板載荷試験、急速平板載荷試験の実施に対応した、それぞれの装置を載荷部保持パイプ12内及び地上部にセットし、所定の試験を行う。
【0024】
以下、上述した孔底平板載荷試験装置10を設置した状態から、実施可能な2種類の平板載荷試験の内容について簡単に説明する。
【0025】
[静的平板載荷試験の実施]
図4は、静的平板載荷試験の試験の実施状態を模式的に示した説明図である。同図に示したように、静的平板載荷試験では、まず、載荷板11を押すための載荷ロッド20(φ89.1mm)を載荷部保持パイプ12内に挿入する。地上部に出したロッド上端に油圧ジャッキ21、荷重計22、球座(図示せず)を載せ、固定部としての反力体23で装置上部を保持する。本実施例では、反力体23として、載荷時の反力によって変形が生じない程度の小型バックホーの一部に反力を負担させた。載荷板11の沈下量は載荷ロッド20上端に取り付けた平板24の沈下量を変位計(図示せず)で計測することで求める。この後、所定のステップ(連続載荷、段階載荷など)で載荷重を変化させ、各載荷時での計測結果から荷重−沈下量関係図を求める。
【0026】
[急速平板載荷試験の実施]
図5は、急速平板載荷試験の実施状態を模式的に示した説明図である。急速平板載荷試験では、載荷部保持パイプ12の下端の載荷板11に設けられた加速度計30、荷重計31によって、重錘32を落下させた時に計測された加速度、動荷重が求められ、さらに速度および変位量を計算で求めることができる。使用する重錘32の質量(MH)は、人力による吊り作業を考慮して30kgとし、地上部に滑車35を有する三脚櫓33を建て、重錘32を載荷部保持パイプ12内でワイヤーロープ34を介して吊持し、ワイヤーロープ34を手動で操作して重錘32を持ち上げて、所定高さから落下させる方法をとる。
【0027】
このとき、載荷部保持パイプ12内の加速度計30、荷重計31の上部に受圧部36を設置し、この受圧部36の上面に重錘32を落下させる。載荷部保持パイプ12が重錘32の落下時のガイドとなるため、受圧部36に重錘32を精度良く落下させることができる。この試験では、重錘落下高さ(h)を0.2m間隔で増加させ、5段階の試験を行う。
【0028】
このように、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲内での種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0029】
10 載荷試験装置
11 載荷板
12 載荷部保持パイプ
13 翼状突起
14 スリット
15 円筒部
20 載荷ロッド
21 油圧ジャッキ
22,31 荷重計
23 反力体
30 加速度計
32 重錘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボーリング孔底を載荷部で押圧し、当該孔底地盤の平板載荷試験を行うボーリング孔底地盤平板載荷試験装置であって、前記載荷部を下端に保持した状態で、試験準備孔内に収容され、削孔機により所定の試験地盤面まで前記載荷部の載荷面を掘進、到達させる載荷部保持パイプを備え、該載荷部保持パイプの側面に翼状体が形成されるとともに、該載荷部保持パイプの下端に前記載荷部が同期回転可能に支持されたことを特徴とするボーリング孔底地盤平板載荷試験装置。
【請求項2】
前記載荷部は、前記載荷部保持パイプに、鉛直方向載荷に対して地盤押圧方向のみに移動可能に支持されたことを特徴とする請求項1に記載のボーリング孔底地盤平板載荷試験装置。
【請求項3】
前記載荷部保持パイプ内に、平板載荷試験設備の一部が装備され、前記載荷部が平板載荷試験に用いられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のボーリング孔底地盤平板載荷試験装置。
【請求項4】
前記翼状体は、前記載荷部保持パイプ下端に螺旋状に形成され、該載荷部保持パイプによる掘進時に、周辺地盤を撹乱することを特徴とする請求項1に記載のボーリング孔底地盤平板載荷試験装置。
【請求項5】
ボーリング孔底地盤深度近傍まで掘削された試験準備孔内に、下端に載荷部を備えた載荷部保持パイプを挿入し、該載荷部保持パイプを孔底地盤面に回転押圧して、前記載荷部を試験深度まで掘進到達させ、前記載荷部保持パイプ内に平板載荷試験設備の一部を装備させることを特徴とするボーリング孔底地盤平板載荷試験装置の設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−21415(P2011−21415A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168583(P2009−168583)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(591028108)安藤建設株式会社 (46)
【Fターム(参考)】