ボールねじ用シール部材及びボールねじ
【課題】位相合わせが容易で且つ重ねた状態でのボールねじナットへの取付けが容易なボールねじ用シール部材を提供する。
【解決手段】予め設定された所定位相だけずれた状態で互いに係合する複数の係合部15をボールねじ軸線方向端面に形成する。係合部15は互いに嵌合する凸部16と凹部17との組合せとし、溝底中心位相Cからボールねじ円周方向の何れか一定の方向に(1/2×D)/L×360°ずれた位相を基準位相Jとし、その基準位相Jから夫々所定位相Y°ずらした位置に凸部16又は凹部17を形成し、シールリップ13の内側先端部はシール基体12の厚さの中央に位置する。更に、シール基体12の厚さAを隣合うシールリップ13の内側先端部のボールねじ軸線方向距離Dと同等とする。
【解決手段】予め設定された所定位相だけずれた状態で互いに係合する複数の係合部15をボールねじ軸線方向端面に形成する。係合部15は互いに嵌合する凸部16と凹部17との組合せとし、溝底中心位相Cからボールねじ円周方向の何れか一定の方向に(1/2×D)/L×360°ずれた位相を基準位相Jとし、その基準位相Jから夫々所定位相Y°ずらした位置に凸部16又は凹部17を形成し、シールリップ13の内側先端部はシール基体12の厚さの中央に位置する。更に、シール基体12の厚さAを隣合うシールリップ13の内側先端部のボールねじ軸線方向距離Dと同等とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールねじ用シール部材及びボールねじに関するものであり、特にボールねじナットの軸線方向端部に二以上重ねて取付けられて使用されるボールねじ用シール部材に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
ボールねじは、ボールねじ軸に雄ボールねじ溝を形成すると共に、ボールねじナットに雌ボールねじ溝を形成し、それら雌雄ボールねじ溝間にボール(鋼球)を介装し、ボールが転動することにより滑らかな回転−直動運動を可能とするものである。ボールと雌雄ボールねじ溝との間に異物が介入すると滑らかな回転−直動運動を確保できないので、例えばボールねじナットの軸線方向端部にシール部材を取付け、シール基体の内周に設けられたシールリップの内側先端部を雄ボールねじ溝の内部を含めてボールねじ軸の外形面に接触させ、もって異物の侵入を防止する場合もある。同様に、ボールねじナットの軸線方向端部にシール部材を取付け、例えばボールねじナットの内部に供給された潤滑剤の外部への漏れを防止し、内部に密封する場合もある。そのため、下記特許文献1では、ボールねじナットの軸線方向端部に二以上のシール部材をボールねじ軸線方向に重ねて取付け、その際、各シール部材のシールリップ位置でのボールねじ軸のボールねじ溝は位相がずれているので、夫々の位相に合わせて各シール部材をボールねじナットに固定できるように、各シール部材に取付けの目印用の穴が形成されている。また、下記特許文献2では、同じく各シール部材の位相を合わせられるように各シール部材に取付用の円周方向長穴が形成されている。また、下記特許文献3では、同じく各シール部材の位相を合わせられるように各シール部材の外周部に屈曲部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−364726号公報
【特許文献2】特開2006−300192号公報
【特許文献3】特開2010−007851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記各特許文献に記載されるボールねじ用シール部材は、何れも位相合わせが難しい上に、重ねた状態でのボールねじナットへの取付けが非常に不便である。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、位相合わせが容易で且つ重ねた状態でのボールねじナットへの取付けが容易なボールねじ用シール部材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のボールねじ用シール部材は、ボールねじ軸線方向に二以上重ねてボールねじナットのボールねじ軸線方向端部に取付けられ且つシール基体の内周に設けられたシールリップの内側先端部がボールねじ軸の外形面に接触するボールねじ用シール部材であって、予め設定された所定位相だけずれた状態で互いに係合する複数の係合部をシール基体のボールねじ軸線方向端面に形成したことを特徴とするものである。
【0006】
また、前記係合部は互いに位置関係を規制する凸部と凹部との組合せからなり、ボールねじ軸のリードをL、隣合うシールリップの内側先端部のボールねじ軸線方向距離をD、前記シールリップの内側先端部がボールねじ軸の溝底に接触する位相を溝底中心位相としたとき、当該溝底中心位相からボールねじ円周方向の何れか一定の方向に(1/2×D)/L×360°ずれた位相を基準位相とし、その基準位相からボールねじ円周方向両側に夫々所定位相Y°ずらした位置に前記凸部又は凹部を形成し、前記シールリップの内側先端部はシール基体の厚さの中央に位置することを特徴とするものである。
【0007】
この場合の位置関係とは、ボールねじ軸回りの位相方向、径方向、軸方向を意味する。
また、前記シール基体の厚さAが前記隣合うシールリップの内側先端部のボールねじ軸線方向距離Dと同等であることを特徴とするものである。
また、前記凸部及び凹部をシール基体のボールねじ軸線方向の何れか一方の端面にのみ形成し、前記シールリップがボールねじ軸線垂直面に対して傾斜角度を有することを特徴とするものである。
【0008】
また、前記凸部及び凹部をシール基体のボールねじ軸線方向両端面に形成し、前記シールリップがボールねじ軸線垂直面に対して傾斜角度を有することを特徴とするものである。
また、本発明のボールねじは前記ボールねじ用シール部材を組合せて装着したものである。
【発明の効果】
【0009】
而して、本発明のボールねじ用シール部材によれば、予め設定された所定位相だけずれた状態で互いに係合する複数の係合部をボールねじ軸線方向端面に形成したことにより、例えば予め設定された所定位相を、隣合うシールリップの内側先端部のボールねじ軸線方向距離をボールねじ軸のリードで除した値とすれば、係合部同士を係合して隣合わせに重ね合わせたシール基体のシールリップはボールねじ軸のリードに応じた分だけ位相がずれるから、位相合わせが容易であり、その重ね合わせて係合したシール基体をボールねじナットに固定すれば容易に取付けることができる。
【0010】
また、係合部を互いに位置関係を規制する凸部と凹部との組合せとし、溝底中心位相からボールねじ円周方向の何れか一定の方向に(1/2×D)/L×360°ずれた位相を基準位相とし、その基準位相から夫々所定位相Y°ずらした位置に凸部又は凹部を形成し、シールリップの内側先端部はシール基体の厚さの中央に位置したことにより、係合部同士を係合して隣合わせに重ね合わせたシール基体のシールリップがボールねじ軸のリードに応じた分だけ位相がずれる。
【0011】
また、シール基体の厚さAを隣合うシールリップの内側先端部のボールねじ軸線方向距離Dと同等とすることにより、シール基体同士を重ね合わせ、係合部同士を係合し合えば、重ね合わせたシール基体のシールリップ同士が自動的に位相合わせされる。
また、凸部及び凹部をシール基体のボールねじ軸線方向の何れか一方の端面にのみ形成し、シールリップがボールねじ軸線垂直面に対して傾斜角度を有する構成とすることにより、2つのシール基体同士を逆向きに重ね合わせればそれらのシールリップの傾斜角度が逆向きとなる。
【0012】
また、凸部及び凹部をシール基体のボールねじ軸線方向両端面に形成し、シールリップがボールねじ軸線垂直面に対して傾斜角度を有する構成とすることにより、3つ以上のシール基体同士を重ね合わせることができ、シールリップの傾斜角度も自在に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のボールねじ用シール部材を適用したボールねじの第1実施形態を示す構成図である。
【図2】図1のシール部材の詳細図である。
【図3】図2のシール部材の係合部の詳細図である。
【図4】図2のシール部材の係合部同士を係合した状態の説明図である。
【図5】図2のシール部材同士をボルト・ナットで締結した状態の説明図である。
【図6】図2のシール部材のシール基体とシールリップの詳細図である。
【図7】図2のシール部材のシールリップの詳細図である。
【図8】図2のシール部材の重ね合わせ形態の説明図である。
【図9】本発明のボールねじ用シール部材の第2実施形態を示すシール部材の詳細図である。
【図10】図9のシール部材同士を重ね合わせた状態の説明図である。
【図11】本発明のボールねじ用シール部材の第3実施形態を示すシール部材の詳細図である。
【図12】図11のシール部材同士を重ね合わせた状態の説明図である。
【図13】図9のシール部材と図11のシール部材を重ね合わせた状態の説明図である。
【図14】本発明のボールねじ用シール部材の第4実施形態を示すシール部材の詳細図である。
【図15】図14のシール部材同士を重ね合わせてボールねじナットに取付けた状態を示す縦断面図である。
【図16】図14のシール部材同士を重ね合わせてボールねじナットに取付けた状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明のボールねじ用シール部材及びボールねじの実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態を示すボールねじの構成図であり、図1aは縦断面図、図1bは右側面図である。図中の符号1はボールねじ軸、符号2はボールねじナットであり、ボールねじ軸1には雄ボールねじ溝3が、ボールねじナット2には雌ボールねじ溝4が形成され、雌雄ボールねじ溝3、4の間に図示しない複数のボールが介装されている。なお、図1aのボールねじナット2の内部、及び図1bではボールねじ軸1を省略している。例えばボールねじナット2の回転を規制しながらボールねじ軸1を回転するとボールねじナット2が直動する。このとき、雌雄ボールねじ溝3、4間に介装されているボールが転動するため、滑らかな回転−直動運動が達成される。
【0015】
本実施形態では、ボールねじナット2の軸線方向図示両端部に二つ(二枚)ずつ薄板状シール部材5を重ねて取付ける。ボールねじナット2の図1aの図示左方端部では、ボールねじナット2の外周面からねじ穴を形成し、そのねじ穴にねじ込んだ六角穴付き止めねじとがり先6で二枚重ねたシール部材5のうちの軸線方向外側のシール部材5を固定する。一方、ボールねじナット2の図1aの図示右方端部では、フランジ11が設けられているため、外周面からねじ穴を形成するのが困難である。そのため、本実施形態では、フランジ11の端面にねじ穴を形成し、二枚重ねたシール部材5の軸線方向外側のシール部材5に座金7をあてがい、座金7の内穴に六角穴付きボルト8を挿通してねじ穴にねじ込み、それらのシール部材5を固定する。なお、図中の符号9は雌雄ボールねじ溝3、4を潤滑するための潤滑油の給油穴、符号10は廃油穴である。
【0016】
本実施形態のシール部材5は、例えば図2に示すように、全てのシール部材5が同形である。図2aはシール部材5の正面図、図2cはシール部材5の背面図、図2bは図2cのZ−O−Z断面図である。シール部材5は、心材を兼ねる外周側のリング状のシール基体12と、シール基体12の内周に設けられたシールリップ13を備えて構成される。シールリップ13の内側先端部がボールねじ軸1の雄ボールねじ溝3内を含む外形面に接触してシールする。本実施形態では、2枚重ねたシール部材5のうち、ボールねじナット2の軸線方向内側に取付けられるシール部材5でボールねじナット2内の潤滑油を密封し、ボールねじナット2の軸線方向外側に取付けられるシール部材5で外部からの塵芥・異物の侵入を防止する。なお、図2cの□部は刻印部であり、この刻印部のある面を裏面、刻印部のない面を表面とも記す。
【0017】
シール部材5はボールねじナット2の軸線方向端面に取付けられる、つまりボールねじ軸1の雄ボールねじ溝3に対して軸線方向の所定位置に固定され、ボールねじ軸1の雄ボールねじ溝3にはリードがあるから、シールリップ13の内側先端部は、ボールねじ軸1の外周面や雄ボールねじ溝3の溝内、或いは溝底などに接触することになり、そのためシールリップ13の内側先端部は、例えば図2a、図2cに示すような形状となる。このシールリップ13の内側先端部の形状、即ちボールねじ軸1の軸直角断面形状は、軸線方向のどこで切断しても、位相は違っても形状は同じである。従って、同形のシール部材5でも位相合わせしてボールねじナット2の軸線方向端面に取付ければ、夫々のシール部材5のシールリップ13はボールねじ軸1の外形面に接触する。
【0018】
シール基体12は、シール部材5の心材をなし、金属又は樹脂で構成される。金属製の場合、切削加工で形成してもよいが、コスト的にはダイカスト成形やMIM(Metal Injection Molding:金属粉末射出成形)が望ましい。樹脂製の場合は、シールリップ13と同一素材とすることも、別素材とすることもできる。樹脂製シール基体12をシールリップ13と同一素材とする場合は、シール基体12のゴム硬さをデュロメータAで70以上とするとボールねじナット2への固定後の固定具の緩みが少なく、望ましい。また、樹脂製シール基体12をシールリップ13と別素材とする場合は、心材であるシール基体12にガラスファイバーなどを20〜30%程度含有させ、シールリップ13のインサート成形圧力に耐えうる強度とすることが望ましい。なお、本実施形態では、シール基体12の外周面の軸線方向端部角隅部には、所謂C面取りが施されている。
【0019】
シールリップ13の素材は、フッ素ゴムやニトリルゴムなどのゴムでも、エステル系やオレフィン系のエラストマーでもよい。オレフィン系の場合は、動的架橋型など、耐油性を向上させたものが望ましい。シールリップ13の素材がゴムの場合は、ゴム硬さをデュロメータAで65前後とすると、ボールねじ軸1とのシールがよく密着し、望ましい。また、シールリップ13の素材がエラストマーの場合も、ゴム硬さをデュロメータAで65前後とするのが望ましい。なお、シールリップ13の素材がエラストマーの場合は、エラストマーは一般的に金属や樹脂と接着されないので、図6に示すように、シール基体12のエラストマー製シールリップ13を保持するためのアンカー穴14を等配に設けることが望ましい。図6aは、シール基体12とシールリップ13の接合部の詳細図であり、図6bは、図6aのB−B断面図である。また、シールリップ13の内側先端部の断面形状は、図7に示すように、とがり先でも、方形でも、R形(球状)でもよい。シールリップ13の内側先端部が軸線方向に傾斜していない場合は、シール基体12の厚さの中央にシールリップ13の内側先端部が位置していれば、シール部材5を表、裏関係なく組み付けることができる。なお、本実施形態では、シールリップ13は、前記アンカー穴14の部分だけが径方向外側に膨出しており、外形は波状になっている。
【0020】
前述したように、例えばシールリップ13の内側先端部がシール基体12の厚さの中央に位置し、隣合うシールリップ13の軸線方向距離Dがシール基体12の厚さAと等しく、シール基体12同士が接触するようにシール部材5を重ね合わせるとき、両者のシールリップ13の内側先端部がボールねじ軸1の外形面に接触するために必要な当該シールリップ13の位相差は一定であり、その値は、ボールねじ軸1の雄ボールねじ溝3のリードをLとした場合、D/L×360°(=A/L×360°)である。本実施形態では、シールリップ13の内側先端部がボールねじ軸1の雄ボールねじ溝3の溝底に接触する位相を溝底中心位相Cとしたとき、当該溝底中心位相Cからボールねじ円周方向の何れか一定の方向(図では反時計回り方向)に、この位相差の半分、即ち1/2×D/L×360°だけずらした位相を基準位相Jとし、その基準位相Jから更に所定位相Y°=90°だけ、ボールねじ円周方向両側にずらした位置に係合部15を設けた。この係合部15は、例えば図3aに示す凸部16と、図3bに示す凹部17の組合せからなり、凸部16と凹部17は図4に示すように互いに嵌合するなどしてシール部材5の位置関係を規制するものであり、例えば図2aに示す表面の下部のE部には凸部16を、図2aの表面の上部のF部には凹部17を、図2cに示す裏面の左部のG部は凸部16を、図2cの裏面の右部のH部には凹部17を形成した。なお、図4は、図2aの表面同士を向かい合わせにして凸部16と凹部17を嵌合させて係合部15同士を係合したものであり、図4aは正面図、図4bは縦断面図である。
【0021】
本実施形態では、前記所定位相Y°を90°としたため、径方向に対向する前記凸部16と凹部17の組合せからなる係合部15同士で嵌め合いを構成することができる。即ち、例えばリング状のシール基体12の中心から凸部16までの径方向の距離をシール基体12の中心から凹部17までの径方向の距離よりも短くしたり、長くしたりすることで、両者の嵌め合いを締まり嵌めにしたり、隙間嵌めにしたり、或いは中間嵌めにしたりすることができる。後述するように、係合部15を構成する凸部16と凹部17を互いに係合して重ね合わせたシール部材5のシール基体12同士を固定しておくためには、凸部16と凹部17の径方向の距離の組合せの嵌め合いを締まり嵌め又は中間嵌めとするのが望ましいが、例えばシールリップ13の内側先端部がボールねじ軸1の外形面に対して締め代を有する場合には、シール部材5の位置関係を規制する目的では隙間嵌めであっても有効である。また、凸部16と凹部17の径方向の距離の組合せの嵌め合いが隙間嵌めであっても、例えば図5に示すように、重ね合わせたシール部材5同士をボルト101とナット102で固定することも可能である。また、重ね合わせたシール部材5のシール基体12同士の固定力を高めるためには、シール基体12同士を接着剤で接着してもよい。なお、所定位相Y°は90°以外の角度であってもよい。また、凸部16と凹部17自体の嵌め合いを締まり嵌め又は中間嵌めとすることによっても同様の効果が得られる。
【0022】
図8は、図2のシール部材5の重ね合わせ形態のバリエーションである。図8aは、図2のシール部材5の表面と裏面を重ね合わせて係合部15同士を係合して固定した状態を示す。また、図8bは、図2のシール部材5の表面同士を重ね合わせて係合部15同士を係合して固定した状態を示す。また、図8cは、図2のシール部材5を3枚重ね合わせて係合部15同士を係合して固定した状態を示す。また、図8dは、図2のシール部材5を4枚重ね合わせて係合部15同士を係合して固定した状態を示す。なお、後述するように、互いに係合部15を係合して重ね合わせたシール部材5は、シールリップ13の位相がずれるのであるが、図4aに示すように本実施形態では重ね合わせたシール部材5のシールリップ13の位相ずれが180°となっているので、図4bに示すようにシールリップ13の位相がずれていないように見える縦断面図となっている。
【0023】
図2のシール部材5は、シール基体12の表面同士を重ね合わせて係合部15を係合しても、裏面同士を重ね合わせて係合部15を係合しても、表面と裏面を重ね合わせて係合しても、隣合うシールリップ13はD/L×360°(=A/L×360°)だけ、位相がずれる。この位相ずれは、重ね合わせたシール部材5のシールリップ13位置におけるボールねじ軸1の軸直角断面の位相差に等しく、即ちボールねじ軸1の外形面に接触するシールリップ13の位相差に等しい。従って、係合部15を係合して重ね合わせた2枚のシール部材5の何れか一方のシールリップ13の位相をボールねじ軸1の外形面の位相に合わせれば、自動的に他方のシールリップ13の位相は該当するボールねじ軸1の外形面の位相に合う。重ね合わせたシール部材5が3枚以上であっても同じである。
【0024】
本実施形態では、図1に示すように、重ね合わせた2枚のシール部材5のうち、ボールねじナット2の軸線方向内側に位置するシール部材5の凸部16が嵌入する凹部をボールねじナット2のシール部材収納端面に形成し、この凹部にシール部材5の凸部16を嵌入させれば、軸線方向内側に位置するシール部材5のシールリップ13の位相が自動的に合うようにした。前述のように、重ね合わせた2枚のシール部材5のうちの何れか一方のシール部材5のシールリップ13の位相をボールねじ軸1の外形面に合わせれば、他方のシール部材5のシールリップ13の位相は該当するボールねじ軸1の外形面に自動的に合うので、軸線方向内側に位置するシール部材5のシールリップ13の位相を合わせれば、軸線方向外側に位置するシール部材5のシールリップ13の位相は自動的に合う。なお、ボールねじナット2とシール部材5の位相合わせは、例えばボールねじナット2の軸線方向端面に打ち込んだピン(凸部)をシール基体12の嵌合部15の凹部17に嵌入することでおこなうようにしてもよい。
【0025】
このように本実施形態のボールねじ用シール部材では、予め設定された所定位相だけずれた状態で互いに係合する複数の係合部15をボールねじ軸線方向端面に形成したことにより、予め設定された所定位相を、隣合うシールリップ13の内側先端部のボールねじ軸線方向距離Dをボールねじ軸1のリードLで除した値とすれば、係合部15同士を係合して隣合わせに重ね合わせたシール基体12のシールリップ13はボールねじ軸1のリードに応じた分だけ位相がずれるから、位相合わせが容易であり、その重ね合わせて係合したシール基体12をボールねじナット2に固定すれば容易に取付けることができる。
【0026】
また、係合部15を互いに位置関係を規制する凸部16と凹部17との組合せとし、溝底中心位相Cからボールねじ円周方向の何れか一定の方向に(1/2×D)/L×360°ずれた位相を基準位相Jとし、その基準位相Jから夫々所定位相Y°ずらした位置に凸部16又は凹部17を形成し、シールリップ13の内側先端部はシール基体12の厚さの中央に位置したことにより、係合部15同士を係合して隣合わせに重ね合わせたシール基体12のシールリップ13がボールねじ軸1のリードに応じた分だけ位相がずれる。
【0027】
また、シール基体12の厚さAを隣合うシールリップ13の内側先端部のボールねじ軸線方向距離Dと同等とすることにより、シール基体12同士を重ね合わせ、係合部15同士を係合し合えば、重ね合わせたシール基体12のシールリップ13同士が自動的に位相合わせされる。
また、凸部16及び凹部17をシール基体12のボールねじ軸線方向両端面に形成し、シールリップ13がボールねじ軸線垂直面に対して傾斜角度を有することとすれば、3枚以上のシール基体12同士を重ね合わせることができ、シールリップ13の傾斜角度も自在に設定することができる。
【0028】
次に、本発明のボールねじ用シール部材の第2実施形態について、図9、図10を用いて説明する。図9aはシール部材5の正面(表面)図、図9cはシール部材5の背面(裏面)図、図9bは図9cのZ−O−Z断面図である。本実施形態のシール部材5は、前記第1実施形態のシール部材5に類似している。そのため、同等の構成には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。本実施形態では、シールリップ13に刻印のあるシール基体12の表面にのみ係合部15を設けた。具体的には、シール部材5の裏面を示す図9cの左部のG部に凸部16を形成し、右部のH部に凹部17を形成した。このシール部材5のシール基体12の裏面同士を重ね合わせ、凸部16を凹部17に嵌入して嵌合部15同士を嵌合し、ボールねじナット2の軸線方向端面に固定したのが図10である。
【0029】
このように、本実施形態のボールねじ用シール部材では、凸部及び凹部をシール基体のボールねじ軸線方向の何れか一方の端面にのみ形成し、シールリップがボールねじ軸線垂直面に対して傾斜角度を有することとすれば、2枚のシール基体同士を逆向きに重ね合わせればそれらのシールリップの傾斜角度が逆向きとなる。
次に、本発明のボールねじ用シール部材の第3実施形態について、図11、図12を用いて説明する。図11aはシール部材5の背面(裏面)図、図11cはシール部材5の正面(表面)図、図11bは図11cのZ−O−Z断面図である。本実施形態のシール部材5は、前記第1実施形態のシール部材5に類似している。そのため、同等の構成には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。本実施形態では、前記第2実施形態と同様に軸線方向一方の端面にのみ凸部16及び凹部17からなる係合部15が予め形成されたシール基体12をシールリップ用射出成形金型にセットしてインサート成形する際、シール基体12の表面と裏面を第2実施形態の場合と反対にセットし、シールリップ13をインサート成形したものである。そのため、第2実施形態と同じシール基体12を用いてシールリップ13の内側先端部の軸線方向への傾きを逆向きにすることができる。このシール部材5のシール基体12の表面同士を重ね合わせ、凸部16を凹部17に嵌入して嵌合部15同士を嵌合し、ボールねじナット2の軸線方向端面に固定したのが図12である。このため、重ね合わせたシール部材5のシールリップ13の内側先端部の傾きを図10と逆向きにすることができる。シール基体12の表面と裏面を反対にして金型にセットする際には、シール基体12に形成された凸部16の逃げを金型に形成すればよい。
【0030】
更に、図9に示す第2実施形態のシール部材5の裏面と図11に示す第3実施形態のシール部材5の表面を重ね合わせれば、図13に示すようなシールリップ13の形態を得ることもできる。また、第1実施形態のように係合部15を構成する凸部16及び凹部17が両面に形成されたシール基体12を第3実施形態のようにシールリップ用射出成形金型に表裏反対にセットすることも可能である。
【0031】
次に、本発明のボールねじ用シール部材の第4実施形態について、図14〜図16を用いて説明する。図14aはシール部材5の背面(裏面)図、図14cはシール部材5の正面(表面)図、図14bは図14aのZ−O−Z断面図である。本実施形態のシール部材5は、前記第3実施形態のシール部材5に類似している。そのため、同等の構成には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。本実施形態では、前記第2実施形態と同様に軸線方向一方の端面にのみ凸部16及び凹部17からなる係合部15が予め形成されたシール基体12をシールリップ用射出成形金型にセットしてインサート成形する際、シール基体12の表面と裏面を第2実施形態の場合と反対にセットし、シールリップ13をインサート成形したものである。そのため、図にE部、F部で夫々示す凸部16及び凹部17からなる係合部15はシール部材5の表面にのみ形成され、その形成位置などは前記第3実施形態と同様である。
【0032】
但し、本実施形態のシール部材5は、シール基体12の形状もシールリップ13の形状も、前記第1〜第3実施形態のシール部材5とは少し異なる。まず、シール基体12については、外周面の軸線方向端部角隅部に面取りが施されていない。また、シールリップ13については、前記第1〜第3実施家板では、シール基体12のアンカー穴14の部分だけが径方向外側に膨出していたのに対し、シールリップ13の外径そのものが大きくなってアンカー穴14を覆うようになっている。つまり、シールリップ13の外形が波状ではなく、円形になっている。
【0033】
図15は、前記図14のシール部材5の表面同士を向き合わせて凸部16及び凹部17からなる係合部15を互いに係合し、前記図1aの図示右方の固定方法と同様に、座金7及び六角穴付きボルト8を用いてボールねじナット2に取付けた状態を示している。また、図16は、前記図14のシール部材5の表面同士を向き合わせて凸部16及び凹部17からなる係合部15を互いに係合し、前記図1aの図示左方の固定方法と同様に、六角穴付き止めねじとがり先6を用いてボールねじナット2に取付けた状態を示している。このように本実施形態のシール部材5も、前記第1〜第3実施形態のシール部材5と同様にボールねじナット2に取付けることができる。
【0034】
なお、前記実施形態では、シール基体12の厚さAを隣合うシールリップ13の内側先端部のボールねじ軸線方向距離Dと同等としたが、シール基体12の厚さAは隣合うシールリップ13の内側先端部のボールねじ軸線方向距離Dと同等でなくてもよい。その場合には、隣合うシール部材5のシール基体12の間に、隣合うシールリップ13の内側先端部のボールねじ軸線方向距離があるべき軸線方向距離Dの整数倍となる間座を挿入すればよい。
【符号の説明】
【0035】
1はボールねじ軸
2はボールねじナット
3は雄ボールねじ溝
4は雌ボールねじ溝
5はシール部材
6は六角穴付き止めねじとがり先
7は座金
8は六角穴付きボルト
9は給油穴
10は廃油穴
11はフランジ
12はシール基体
13はシールリップ
14はアンカー
15は係合部
16は凸部
17は凹部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールねじ用シール部材及びボールねじに関するものであり、特にボールねじナットの軸線方向端部に二以上重ねて取付けられて使用されるボールねじ用シール部材に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
ボールねじは、ボールねじ軸に雄ボールねじ溝を形成すると共に、ボールねじナットに雌ボールねじ溝を形成し、それら雌雄ボールねじ溝間にボール(鋼球)を介装し、ボールが転動することにより滑らかな回転−直動運動を可能とするものである。ボールと雌雄ボールねじ溝との間に異物が介入すると滑らかな回転−直動運動を確保できないので、例えばボールねじナットの軸線方向端部にシール部材を取付け、シール基体の内周に設けられたシールリップの内側先端部を雄ボールねじ溝の内部を含めてボールねじ軸の外形面に接触させ、もって異物の侵入を防止する場合もある。同様に、ボールねじナットの軸線方向端部にシール部材を取付け、例えばボールねじナットの内部に供給された潤滑剤の外部への漏れを防止し、内部に密封する場合もある。そのため、下記特許文献1では、ボールねじナットの軸線方向端部に二以上のシール部材をボールねじ軸線方向に重ねて取付け、その際、各シール部材のシールリップ位置でのボールねじ軸のボールねじ溝は位相がずれているので、夫々の位相に合わせて各シール部材をボールねじナットに固定できるように、各シール部材に取付けの目印用の穴が形成されている。また、下記特許文献2では、同じく各シール部材の位相を合わせられるように各シール部材に取付用の円周方向長穴が形成されている。また、下記特許文献3では、同じく各シール部材の位相を合わせられるように各シール部材の外周部に屈曲部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−364726号公報
【特許文献2】特開2006−300192号公報
【特許文献3】特開2010−007851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記各特許文献に記載されるボールねじ用シール部材は、何れも位相合わせが難しい上に、重ねた状態でのボールねじナットへの取付けが非常に不便である。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、位相合わせが容易で且つ重ねた状態でのボールねじナットへの取付けが容易なボールねじ用シール部材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のボールねじ用シール部材は、ボールねじ軸線方向に二以上重ねてボールねじナットのボールねじ軸線方向端部に取付けられ且つシール基体の内周に設けられたシールリップの内側先端部がボールねじ軸の外形面に接触するボールねじ用シール部材であって、予め設定された所定位相だけずれた状態で互いに係合する複数の係合部をシール基体のボールねじ軸線方向端面に形成したことを特徴とするものである。
【0006】
また、前記係合部は互いに位置関係を規制する凸部と凹部との組合せからなり、ボールねじ軸のリードをL、隣合うシールリップの内側先端部のボールねじ軸線方向距離をD、前記シールリップの内側先端部がボールねじ軸の溝底に接触する位相を溝底中心位相としたとき、当該溝底中心位相からボールねじ円周方向の何れか一定の方向に(1/2×D)/L×360°ずれた位相を基準位相とし、その基準位相からボールねじ円周方向両側に夫々所定位相Y°ずらした位置に前記凸部又は凹部を形成し、前記シールリップの内側先端部はシール基体の厚さの中央に位置することを特徴とするものである。
【0007】
この場合の位置関係とは、ボールねじ軸回りの位相方向、径方向、軸方向を意味する。
また、前記シール基体の厚さAが前記隣合うシールリップの内側先端部のボールねじ軸線方向距離Dと同等であることを特徴とするものである。
また、前記凸部及び凹部をシール基体のボールねじ軸線方向の何れか一方の端面にのみ形成し、前記シールリップがボールねじ軸線垂直面に対して傾斜角度を有することを特徴とするものである。
【0008】
また、前記凸部及び凹部をシール基体のボールねじ軸線方向両端面に形成し、前記シールリップがボールねじ軸線垂直面に対して傾斜角度を有することを特徴とするものである。
また、本発明のボールねじは前記ボールねじ用シール部材を組合せて装着したものである。
【発明の効果】
【0009】
而して、本発明のボールねじ用シール部材によれば、予め設定された所定位相だけずれた状態で互いに係合する複数の係合部をボールねじ軸線方向端面に形成したことにより、例えば予め設定された所定位相を、隣合うシールリップの内側先端部のボールねじ軸線方向距離をボールねじ軸のリードで除した値とすれば、係合部同士を係合して隣合わせに重ね合わせたシール基体のシールリップはボールねじ軸のリードに応じた分だけ位相がずれるから、位相合わせが容易であり、その重ね合わせて係合したシール基体をボールねじナットに固定すれば容易に取付けることができる。
【0010】
また、係合部を互いに位置関係を規制する凸部と凹部との組合せとし、溝底中心位相からボールねじ円周方向の何れか一定の方向に(1/2×D)/L×360°ずれた位相を基準位相とし、その基準位相から夫々所定位相Y°ずらした位置に凸部又は凹部を形成し、シールリップの内側先端部はシール基体の厚さの中央に位置したことにより、係合部同士を係合して隣合わせに重ね合わせたシール基体のシールリップがボールねじ軸のリードに応じた分だけ位相がずれる。
【0011】
また、シール基体の厚さAを隣合うシールリップの内側先端部のボールねじ軸線方向距離Dと同等とすることにより、シール基体同士を重ね合わせ、係合部同士を係合し合えば、重ね合わせたシール基体のシールリップ同士が自動的に位相合わせされる。
また、凸部及び凹部をシール基体のボールねじ軸線方向の何れか一方の端面にのみ形成し、シールリップがボールねじ軸線垂直面に対して傾斜角度を有する構成とすることにより、2つのシール基体同士を逆向きに重ね合わせればそれらのシールリップの傾斜角度が逆向きとなる。
【0012】
また、凸部及び凹部をシール基体のボールねじ軸線方向両端面に形成し、シールリップがボールねじ軸線垂直面に対して傾斜角度を有する構成とすることにより、3つ以上のシール基体同士を重ね合わせることができ、シールリップの傾斜角度も自在に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のボールねじ用シール部材を適用したボールねじの第1実施形態を示す構成図である。
【図2】図1のシール部材の詳細図である。
【図3】図2のシール部材の係合部の詳細図である。
【図4】図2のシール部材の係合部同士を係合した状態の説明図である。
【図5】図2のシール部材同士をボルト・ナットで締結した状態の説明図である。
【図6】図2のシール部材のシール基体とシールリップの詳細図である。
【図7】図2のシール部材のシールリップの詳細図である。
【図8】図2のシール部材の重ね合わせ形態の説明図である。
【図9】本発明のボールねじ用シール部材の第2実施形態を示すシール部材の詳細図である。
【図10】図9のシール部材同士を重ね合わせた状態の説明図である。
【図11】本発明のボールねじ用シール部材の第3実施形態を示すシール部材の詳細図である。
【図12】図11のシール部材同士を重ね合わせた状態の説明図である。
【図13】図9のシール部材と図11のシール部材を重ね合わせた状態の説明図である。
【図14】本発明のボールねじ用シール部材の第4実施形態を示すシール部材の詳細図である。
【図15】図14のシール部材同士を重ね合わせてボールねじナットに取付けた状態を示す縦断面図である。
【図16】図14のシール部材同士を重ね合わせてボールねじナットに取付けた状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明のボールねじ用シール部材及びボールねじの実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態を示すボールねじの構成図であり、図1aは縦断面図、図1bは右側面図である。図中の符号1はボールねじ軸、符号2はボールねじナットであり、ボールねじ軸1には雄ボールねじ溝3が、ボールねじナット2には雌ボールねじ溝4が形成され、雌雄ボールねじ溝3、4の間に図示しない複数のボールが介装されている。なお、図1aのボールねじナット2の内部、及び図1bではボールねじ軸1を省略している。例えばボールねじナット2の回転を規制しながらボールねじ軸1を回転するとボールねじナット2が直動する。このとき、雌雄ボールねじ溝3、4間に介装されているボールが転動するため、滑らかな回転−直動運動が達成される。
【0015】
本実施形態では、ボールねじナット2の軸線方向図示両端部に二つ(二枚)ずつ薄板状シール部材5を重ねて取付ける。ボールねじナット2の図1aの図示左方端部では、ボールねじナット2の外周面からねじ穴を形成し、そのねじ穴にねじ込んだ六角穴付き止めねじとがり先6で二枚重ねたシール部材5のうちの軸線方向外側のシール部材5を固定する。一方、ボールねじナット2の図1aの図示右方端部では、フランジ11が設けられているため、外周面からねじ穴を形成するのが困難である。そのため、本実施形態では、フランジ11の端面にねじ穴を形成し、二枚重ねたシール部材5の軸線方向外側のシール部材5に座金7をあてがい、座金7の内穴に六角穴付きボルト8を挿通してねじ穴にねじ込み、それらのシール部材5を固定する。なお、図中の符号9は雌雄ボールねじ溝3、4を潤滑するための潤滑油の給油穴、符号10は廃油穴である。
【0016】
本実施形態のシール部材5は、例えば図2に示すように、全てのシール部材5が同形である。図2aはシール部材5の正面図、図2cはシール部材5の背面図、図2bは図2cのZ−O−Z断面図である。シール部材5は、心材を兼ねる外周側のリング状のシール基体12と、シール基体12の内周に設けられたシールリップ13を備えて構成される。シールリップ13の内側先端部がボールねじ軸1の雄ボールねじ溝3内を含む外形面に接触してシールする。本実施形態では、2枚重ねたシール部材5のうち、ボールねじナット2の軸線方向内側に取付けられるシール部材5でボールねじナット2内の潤滑油を密封し、ボールねじナット2の軸線方向外側に取付けられるシール部材5で外部からの塵芥・異物の侵入を防止する。なお、図2cの□部は刻印部であり、この刻印部のある面を裏面、刻印部のない面を表面とも記す。
【0017】
シール部材5はボールねじナット2の軸線方向端面に取付けられる、つまりボールねじ軸1の雄ボールねじ溝3に対して軸線方向の所定位置に固定され、ボールねじ軸1の雄ボールねじ溝3にはリードがあるから、シールリップ13の内側先端部は、ボールねじ軸1の外周面や雄ボールねじ溝3の溝内、或いは溝底などに接触することになり、そのためシールリップ13の内側先端部は、例えば図2a、図2cに示すような形状となる。このシールリップ13の内側先端部の形状、即ちボールねじ軸1の軸直角断面形状は、軸線方向のどこで切断しても、位相は違っても形状は同じである。従って、同形のシール部材5でも位相合わせしてボールねじナット2の軸線方向端面に取付ければ、夫々のシール部材5のシールリップ13はボールねじ軸1の外形面に接触する。
【0018】
シール基体12は、シール部材5の心材をなし、金属又は樹脂で構成される。金属製の場合、切削加工で形成してもよいが、コスト的にはダイカスト成形やMIM(Metal Injection Molding:金属粉末射出成形)が望ましい。樹脂製の場合は、シールリップ13と同一素材とすることも、別素材とすることもできる。樹脂製シール基体12をシールリップ13と同一素材とする場合は、シール基体12のゴム硬さをデュロメータAで70以上とするとボールねじナット2への固定後の固定具の緩みが少なく、望ましい。また、樹脂製シール基体12をシールリップ13と別素材とする場合は、心材であるシール基体12にガラスファイバーなどを20〜30%程度含有させ、シールリップ13のインサート成形圧力に耐えうる強度とすることが望ましい。なお、本実施形態では、シール基体12の外周面の軸線方向端部角隅部には、所謂C面取りが施されている。
【0019】
シールリップ13の素材は、フッ素ゴムやニトリルゴムなどのゴムでも、エステル系やオレフィン系のエラストマーでもよい。オレフィン系の場合は、動的架橋型など、耐油性を向上させたものが望ましい。シールリップ13の素材がゴムの場合は、ゴム硬さをデュロメータAで65前後とすると、ボールねじ軸1とのシールがよく密着し、望ましい。また、シールリップ13の素材がエラストマーの場合も、ゴム硬さをデュロメータAで65前後とするのが望ましい。なお、シールリップ13の素材がエラストマーの場合は、エラストマーは一般的に金属や樹脂と接着されないので、図6に示すように、シール基体12のエラストマー製シールリップ13を保持するためのアンカー穴14を等配に設けることが望ましい。図6aは、シール基体12とシールリップ13の接合部の詳細図であり、図6bは、図6aのB−B断面図である。また、シールリップ13の内側先端部の断面形状は、図7に示すように、とがり先でも、方形でも、R形(球状)でもよい。シールリップ13の内側先端部が軸線方向に傾斜していない場合は、シール基体12の厚さの中央にシールリップ13の内側先端部が位置していれば、シール部材5を表、裏関係なく組み付けることができる。なお、本実施形態では、シールリップ13は、前記アンカー穴14の部分だけが径方向外側に膨出しており、外形は波状になっている。
【0020】
前述したように、例えばシールリップ13の内側先端部がシール基体12の厚さの中央に位置し、隣合うシールリップ13の軸線方向距離Dがシール基体12の厚さAと等しく、シール基体12同士が接触するようにシール部材5を重ね合わせるとき、両者のシールリップ13の内側先端部がボールねじ軸1の外形面に接触するために必要な当該シールリップ13の位相差は一定であり、その値は、ボールねじ軸1の雄ボールねじ溝3のリードをLとした場合、D/L×360°(=A/L×360°)である。本実施形態では、シールリップ13の内側先端部がボールねじ軸1の雄ボールねじ溝3の溝底に接触する位相を溝底中心位相Cとしたとき、当該溝底中心位相Cからボールねじ円周方向の何れか一定の方向(図では反時計回り方向)に、この位相差の半分、即ち1/2×D/L×360°だけずらした位相を基準位相Jとし、その基準位相Jから更に所定位相Y°=90°だけ、ボールねじ円周方向両側にずらした位置に係合部15を設けた。この係合部15は、例えば図3aに示す凸部16と、図3bに示す凹部17の組合せからなり、凸部16と凹部17は図4に示すように互いに嵌合するなどしてシール部材5の位置関係を規制するものであり、例えば図2aに示す表面の下部のE部には凸部16を、図2aの表面の上部のF部には凹部17を、図2cに示す裏面の左部のG部は凸部16を、図2cの裏面の右部のH部には凹部17を形成した。なお、図4は、図2aの表面同士を向かい合わせにして凸部16と凹部17を嵌合させて係合部15同士を係合したものであり、図4aは正面図、図4bは縦断面図である。
【0021】
本実施形態では、前記所定位相Y°を90°としたため、径方向に対向する前記凸部16と凹部17の組合せからなる係合部15同士で嵌め合いを構成することができる。即ち、例えばリング状のシール基体12の中心から凸部16までの径方向の距離をシール基体12の中心から凹部17までの径方向の距離よりも短くしたり、長くしたりすることで、両者の嵌め合いを締まり嵌めにしたり、隙間嵌めにしたり、或いは中間嵌めにしたりすることができる。後述するように、係合部15を構成する凸部16と凹部17を互いに係合して重ね合わせたシール部材5のシール基体12同士を固定しておくためには、凸部16と凹部17の径方向の距離の組合せの嵌め合いを締まり嵌め又は中間嵌めとするのが望ましいが、例えばシールリップ13の内側先端部がボールねじ軸1の外形面に対して締め代を有する場合には、シール部材5の位置関係を規制する目的では隙間嵌めであっても有効である。また、凸部16と凹部17の径方向の距離の組合せの嵌め合いが隙間嵌めであっても、例えば図5に示すように、重ね合わせたシール部材5同士をボルト101とナット102で固定することも可能である。また、重ね合わせたシール部材5のシール基体12同士の固定力を高めるためには、シール基体12同士を接着剤で接着してもよい。なお、所定位相Y°は90°以外の角度であってもよい。また、凸部16と凹部17自体の嵌め合いを締まり嵌め又は中間嵌めとすることによっても同様の効果が得られる。
【0022】
図8は、図2のシール部材5の重ね合わせ形態のバリエーションである。図8aは、図2のシール部材5の表面と裏面を重ね合わせて係合部15同士を係合して固定した状態を示す。また、図8bは、図2のシール部材5の表面同士を重ね合わせて係合部15同士を係合して固定した状態を示す。また、図8cは、図2のシール部材5を3枚重ね合わせて係合部15同士を係合して固定した状態を示す。また、図8dは、図2のシール部材5を4枚重ね合わせて係合部15同士を係合して固定した状態を示す。なお、後述するように、互いに係合部15を係合して重ね合わせたシール部材5は、シールリップ13の位相がずれるのであるが、図4aに示すように本実施形態では重ね合わせたシール部材5のシールリップ13の位相ずれが180°となっているので、図4bに示すようにシールリップ13の位相がずれていないように見える縦断面図となっている。
【0023】
図2のシール部材5は、シール基体12の表面同士を重ね合わせて係合部15を係合しても、裏面同士を重ね合わせて係合部15を係合しても、表面と裏面を重ね合わせて係合しても、隣合うシールリップ13はD/L×360°(=A/L×360°)だけ、位相がずれる。この位相ずれは、重ね合わせたシール部材5のシールリップ13位置におけるボールねじ軸1の軸直角断面の位相差に等しく、即ちボールねじ軸1の外形面に接触するシールリップ13の位相差に等しい。従って、係合部15を係合して重ね合わせた2枚のシール部材5の何れか一方のシールリップ13の位相をボールねじ軸1の外形面の位相に合わせれば、自動的に他方のシールリップ13の位相は該当するボールねじ軸1の外形面の位相に合う。重ね合わせたシール部材5が3枚以上であっても同じである。
【0024】
本実施形態では、図1に示すように、重ね合わせた2枚のシール部材5のうち、ボールねじナット2の軸線方向内側に位置するシール部材5の凸部16が嵌入する凹部をボールねじナット2のシール部材収納端面に形成し、この凹部にシール部材5の凸部16を嵌入させれば、軸線方向内側に位置するシール部材5のシールリップ13の位相が自動的に合うようにした。前述のように、重ね合わせた2枚のシール部材5のうちの何れか一方のシール部材5のシールリップ13の位相をボールねじ軸1の外形面に合わせれば、他方のシール部材5のシールリップ13の位相は該当するボールねじ軸1の外形面に自動的に合うので、軸線方向内側に位置するシール部材5のシールリップ13の位相を合わせれば、軸線方向外側に位置するシール部材5のシールリップ13の位相は自動的に合う。なお、ボールねじナット2とシール部材5の位相合わせは、例えばボールねじナット2の軸線方向端面に打ち込んだピン(凸部)をシール基体12の嵌合部15の凹部17に嵌入することでおこなうようにしてもよい。
【0025】
このように本実施形態のボールねじ用シール部材では、予め設定された所定位相だけずれた状態で互いに係合する複数の係合部15をボールねじ軸線方向端面に形成したことにより、予め設定された所定位相を、隣合うシールリップ13の内側先端部のボールねじ軸線方向距離Dをボールねじ軸1のリードLで除した値とすれば、係合部15同士を係合して隣合わせに重ね合わせたシール基体12のシールリップ13はボールねじ軸1のリードに応じた分だけ位相がずれるから、位相合わせが容易であり、その重ね合わせて係合したシール基体12をボールねじナット2に固定すれば容易に取付けることができる。
【0026】
また、係合部15を互いに位置関係を規制する凸部16と凹部17との組合せとし、溝底中心位相Cからボールねじ円周方向の何れか一定の方向に(1/2×D)/L×360°ずれた位相を基準位相Jとし、その基準位相Jから夫々所定位相Y°ずらした位置に凸部16又は凹部17を形成し、シールリップ13の内側先端部はシール基体12の厚さの中央に位置したことにより、係合部15同士を係合して隣合わせに重ね合わせたシール基体12のシールリップ13がボールねじ軸1のリードに応じた分だけ位相がずれる。
【0027】
また、シール基体12の厚さAを隣合うシールリップ13の内側先端部のボールねじ軸線方向距離Dと同等とすることにより、シール基体12同士を重ね合わせ、係合部15同士を係合し合えば、重ね合わせたシール基体12のシールリップ13同士が自動的に位相合わせされる。
また、凸部16及び凹部17をシール基体12のボールねじ軸線方向両端面に形成し、シールリップ13がボールねじ軸線垂直面に対して傾斜角度を有することとすれば、3枚以上のシール基体12同士を重ね合わせることができ、シールリップ13の傾斜角度も自在に設定することができる。
【0028】
次に、本発明のボールねじ用シール部材の第2実施形態について、図9、図10を用いて説明する。図9aはシール部材5の正面(表面)図、図9cはシール部材5の背面(裏面)図、図9bは図9cのZ−O−Z断面図である。本実施形態のシール部材5は、前記第1実施形態のシール部材5に類似している。そのため、同等の構成には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。本実施形態では、シールリップ13に刻印のあるシール基体12の表面にのみ係合部15を設けた。具体的には、シール部材5の裏面を示す図9cの左部のG部に凸部16を形成し、右部のH部に凹部17を形成した。このシール部材5のシール基体12の裏面同士を重ね合わせ、凸部16を凹部17に嵌入して嵌合部15同士を嵌合し、ボールねじナット2の軸線方向端面に固定したのが図10である。
【0029】
このように、本実施形態のボールねじ用シール部材では、凸部及び凹部をシール基体のボールねじ軸線方向の何れか一方の端面にのみ形成し、シールリップがボールねじ軸線垂直面に対して傾斜角度を有することとすれば、2枚のシール基体同士を逆向きに重ね合わせればそれらのシールリップの傾斜角度が逆向きとなる。
次に、本発明のボールねじ用シール部材の第3実施形態について、図11、図12を用いて説明する。図11aはシール部材5の背面(裏面)図、図11cはシール部材5の正面(表面)図、図11bは図11cのZ−O−Z断面図である。本実施形態のシール部材5は、前記第1実施形態のシール部材5に類似している。そのため、同等の構成には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。本実施形態では、前記第2実施形態と同様に軸線方向一方の端面にのみ凸部16及び凹部17からなる係合部15が予め形成されたシール基体12をシールリップ用射出成形金型にセットしてインサート成形する際、シール基体12の表面と裏面を第2実施形態の場合と反対にセットし、シールリップ13をインサート成形したものである。そのため、第2実施形態と同じシール基体12を用いてシールリップ13の内側先端部の軸線方向への傾きを逆向きにすることができる。このシール部材5のシール基体12の表面同士を重ね合わせ、凸部16を凹部17に嵌入して嵌合部15同士を嵌合し、ボールねじナット2の軸線方向端面に固定したのが図12である。このため、重ね合わせたシール部材5のシールリップ13の内側先端部の傾きを図10と逆向きにすることができる。シール基体12の表面と裏面を反対にして金型にセットする際には、シール基体12に形成された凸部16の逃げを金型に形成すればよい。
【0030】
更に、図9に示す第2実施形態のシール部材5の裏面と図11に示す第3実施形態のシール部材5の表面を重ね合わせれば、図13に示すようなシールリップ13の形態を得ることもできる。また、第1実施形態のように係合部15を構成する凸部16及び凹部17が両面に形成されたシール基体12を第3実施形態のようにシールリップ用射出成形金型に表裏反対にセットすることも可能である。
【0031】
次に、本発明のボールねじ用シール部材の第4実施形態について、図14〜図16を用いて説明する。図14aはシール部材5の背面(裏面)図、図14cはシール部材5の正面(表面)図、図14bは図14aのZ−O−Z断面図である。本実施形態のシール部材5は、前記第3実施形態のシール部材5に類似している。そのため、同等の構成には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。本実施形態では、前記第2実施形態と同様に軸線方向一方の端面にのみ凸部16及び凹部17からなる係合部15が予め形成されたシール基体12をシールリップ用射出成形金型にセットしてインサート成形する際、シール基体12の表面と裏面を第2実施形態の場合と反対にセットし、シールリップ13をインサート成形したものである。そのため、図にE部、F部で夫々示す凸部16及び凹部17からなる係合部15はシール部材5の表面にのみ形成され、その形成位置などは前記第3実施形態と同様である。
【0032】
但し、本実施形態のシール部材5は、シール基体12の形状もシールリップ13の形状も、前記第1〜第3実施形態のシール部材5とは少し異なる。まず、シール基体12については、外周面の軸線方向端部角隅部に面取りが施されていない。また、シールリップ13については、前記第1〜第3実施家板では、シール基体12のアンカー穴14の部分だけが径方向外側に膨出していたのに対し、シールリップ13の外径そのものが大きくなってアンカー穴14を覆うようになっている。つまり、シールリップ13の外形が波状ではなく、円形になっている。
【0033】
図15は、前記図14のシール部材5の表面同士を向き合わせて凸部16及び凹部17からなる係合部15を互いに係合し、前記図1aの図示右方の固定方法と同様に、座金7及び六角穴付きボルト8を用いてボールねじナット2に取付けた状態を示している。また、図16は、前記図14のシール部材5の表面同士を向き合わせて凸部16及び凹部17からなる係合部15を互いに係合し、前記図1aの図示左方の固定方法と同様に、六角穴付き止めねじとがり先6を用いてボールねじナット2に取付けた状態を示している。このように本実施形態のシール部材5も、前記第1〜第3実施形態のシール部材5と同様にボールねじナット2に取付けることができる。
【0034】
なお、前記実施形態では、シール基体12の厚さAを隣合うシールリップ13の内側先端部のボールねじ軸線方向距離Dと同等としたが、シール基体12の厚さAは隣合うシールリップ13の内側先端部のボールねじ軸線方向距離Dと同等でなくてもよい。その場合には、隣合うシール部材5のシール基体12の間に、隣合うシールリップ13の内側先端部のボールねじ軸線方向距離があるべき軸線方向距離Dの整数倍となる間座を挿入すればよい。
【符号の説明】
【0035】
1はボールねじ軸
2はボールねじナット
3は雄ボールねじ溝
4は雌ボールねじ溝
5はシール部材
6は六角穴付き止めねじとがり先
7は座金
8は六角穴付きボルト
9は給油穴
10は廃油穴
11はフランジ
12はシール基体
13はシールリップ
14はアンカー
15は係合部
16は凸部
17は凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールねじ軸線方向に二以上重ねてボールねじナットのボールねじ軸線方向端部に取付けられ且つシール基体の内周に設けられたシールリップの内側先端部がボールねじ軸の外形面に接触するボールねじ用シール部材であって、予め設定された所定位相だけずれた状態で互いに係合する複数の係合部をシール基体のボールねじ軸線方向端面に形成したことを特徴とするボールねじ用シール部材。
【請求項2】
前記係合部は互いに位置関係を規制する凸部と凹部との組合せからなり、ボールねじ軸のリードをL、隣合うシールリップの内側先端部のボールねじ軸線方向距離をD、前記シールリップの内側先端部がボールねじ軸の溝底接触する位相を溝底中心位相としたとき、当該溝底中心位相からボールねじ円周方向の何れか一定の方向に(1/2×D)/L×360°ずれた位相を基準位相とし、その基準位相からボールねじ円周方向両側に夫々所定位相Y°ずらした位置に前記凸部又は凹部を形成し、前記シールリップの内側先端部はシール基体の厚さの中央に位置することを特徴とする請求項1に記載のボールねじ用シール部材。
【請求項3】
前記シール基体の厚さAが前記隣合うシールリップの内側先端部のボールねじ軸線方向距離Dと同等であることを特徴とする請求項2に記載のボールねじ用シール部材。
【請求項4】
前記凸部及び凹部をシール基体のボールねじ軸線方向の何れか一方の端面にのみ形成し、前記シールリップがボールねじ軸線垂直面に対して傾斜角度を有することを特徴とする請求項2又は3に記載のボールねじ用シール部材。
【請求項5】
前記凸部及び凹部をシール基体のボールねじ軸線方向両端面に形成し、前記シールリップがボールねじ軸線垂直面に対して傾斜角度を有することを特徴とする請求項2又は3に記載のボールねじ用シール部材。
【請求項6】
前記請求項1乃至5の何れか一項に記載のボールねじ用シール部材を組合せて装着したボールねじ。
【請求項1】
ボールねじ軸線方向に二以上重ねてボールねじナットのボールねじ軸線方向端部に取付けられ且つシール基体の内周に設けられたシールリップの内側先端部がボールねじ軸の外形面に接触するボールねじ用シール部材であって、予め設定された所定位相だけずれた状態で互いに係合する複数の係合部をシール基体のボールねじ軸線方向端面に形成したことを特徴とするボールねじ用シール部材。
【請求項2】
前記係合部は互いに位置関係を規制する凸部と凹部との組合せからなり、ボールねじ軸のリードをL、隣合うシールリップの内側先端部のボールねじ軸線方向距離をD、前記シールリップの内側先端部がボールねじ軸の溝底接触する位相を溝底中心位相としたとき、当該溝底中心位相からボールねじ円周方向の何れか一定の方向に(1/2×D)/L×360°ずれた位相を基準位相とし、その基準位相からボールねじ円周方向両側に夫々所定位相Y°ずらした位置に前記凸部又は凹部を形成し、前記シールリップの内側先端部はシール基体の厚さの中央に位置することを特徴とする請求項1に記載のボールねじ用シール部材。
【請求項3】
前記シール基体の厚さAが前記隣合うシールリップの内側先端部のボールねじ軸線方向距離Dと同等であることを特徴とする請求項2に記載のボールねじ用シール部材。
【請求項4】
前記凸部及び凹部をシール基体のボールねじ軸線方向の何れか一方の端面にのみ形成し、前記シールリップがボールねじ軸線垂直面に対して傾斜角度を有することを特徴とする請求項2又は3に記載のボールねじ用シール部材。
【請求項5】
前記凸部及び凹部をシール基体のボールねじ軸線方向両端面に形成し、前記シールリップがボールねじ軸線垂直面に対して傾斜角度を有することを特徴とする請求項2又は3に記載のボールねじ用シール部材。
【請求項6】
前記請求項1乃至5の何れか一項に記載のボールねじ用シール部材を組合せて装着したボールねじ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−255535(P2012−255535A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157824(P2011−157824)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
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