説明

ボールねじ用循環部品、ボールねじ

【課題】合成樹脂製で本体部と一対の脚部とからなるボールねじ用循環部品の強度を保持しながら、取付状態での本体部の突出量を低く抑える。
【解決手段】軌道内をボールが転動することでナットがねじ軸に対して相対移動するボールねじの、ボール戻し経路を形成する循環部品であって、合成樹脂製で、ナットの外側平坦面に接触配置される本体部31と、外側平坦面に設けられた二個一組の循環孔に挿入される一対の脚部32とからなり、本体部31が外側平坦面に接触する側において、本体部31と脚部32との内側境界部34を丸く形成し、本体部31の下面(ナット1の外側平坦面12との接触面)31bを形成する部分36の厚さTを、ボールの直径の5%以上50%以下にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、本体部と一対の脚部とからなる合成樹脂製のボールねじ用循環部品と、これを備えたボールねじに関する。
【背景技術】
【0002】
ボールねじは、内周面に螺旋溝が形成されたナットと、外周面に螺旋溝が形成されたねじ軸と、ナットの螺旋溝とねじ軸の螺旋溝で形成される軌道の間に配置されたボールと、ボールを軌道の終点から始点に戻すボール戻し経路とを備え、前記軌道内をボールが転動することで前記ナットがねじ軸に対して相対移動する装置である。ボールねじのボール戻し経路としては、組み立てが容易である点から、リターンチューブ方式を採用することが多い。
【0003】
しかし、従来のリターンチューブ方式のボールねじでは、最近のボールねじの高回転化に伴って、ボールがリターンチューブに衝突するスピードが速くなり、衝突エネルギーが大きくなることで、リターンチューブやねじ溝(ねじ溝の両肩部などを含む)が損傷し易くなる。この損傷を防止するために、ねじ軸の接線方向且つねじ溝のリード角方向にボールをすくい上げるようにすると、リターンチューブの形状が複雑になる。
【0004】
そのため、金属製のリターンチューブに代えて、合成樹脂製で本体部と一対の脚部とからなる循環部品を使用することが提案されている。この循環部品は、例えば、ボールの移動方向を示すラインに沿って分割された2個の分割体を、合成樹脂の射出成形により形成し、これらの分割体を結合することで組み立てられる。この循環部品の脚部を、ナットの外側平坦面に設けられた二個一組の循環孔(軸方向に対して略垂直に延びる貫通孔)に挿入し、本体部を前記外側平坦面に接触配置することで、ボールねじのボール戻し経路が形成される。
【0005】
特許文献1には、合成樹脂製で本体部と一対の脚部とからなる循環部品に関し、ボール循環経路(ボール戻し経路)の内周側に増肉部を設けること(本体部と脚部との内側境界部を丸く形成して、この部分の肉厚を増すこと)が記載されている。これにより、循環部品の大型化を招くことなく、ボール循環経路の曲げR寸法を大きくでき、循環部品の強度低下も防止できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−125580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された発明では、本体部と脚部との内側境界部の肉厚を増すことにより循環部品の強度を確保しているが、これに伴って、取付状態でナットの外側平坦面からの本体部の突出量が大きくなり過ぎることを避ける必要がある。
この発明の課題は、合成樹脂製で本体部と一対の脚部とからなるボールねじ用循環部品の強度を保持しながら、取付状態での本体部の突出量を低く抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は、内周面に螺旋溝が形成されたナットと、外周面に螺旋溝が形成されたねじ軸と、ナットの螺旋溝とねじ軸の螺旋溝で形成される軌道の間に配置されたボールと、ボールを軌道の終点から始点に戻すボール戻し経路とを備え、前記軌道内をボールが転動することで前記ナットがねじ軸に対して相対移動するボールねじの、前記ボール戻し経路を形成する循環部品であって、合成樹脂製で、前記ナットの外側平坦面に接触配置される本体部と、前記外側平坦面に設けられた二個一組の循環孔に挿入される一対の脚部とからなり、前記本体部が前記外側平坦面に接触する側において、前記本体部と脚部との境界部を丸く形成し、前記本体部の厚さをボール直径の5%以上50%以下にしたことを特徴とする。
この発明の循環部品の前記脚部を、前記ナットの外側平坦面に設けられた二個一組の循環孔に挿入し、前記本体部を前記外側平坦面に接触配置することで、前記ボールねじに前記ボール戻し経路を形成することができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明のボールねじ用循環部品によれば、必要な強度を保持しながら、取付状態での本体部の突出量を低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施形態に相当するボールねじを示す平面図である。
【図2】図1のA矢視図である。
【図3】実施形態のボールねじを説明する図であって、ナットの断面を示し、ねじ軸は断面にせず、循環部品を分割ラインに沿った断面で示す図である。
【図4】循環部品の分割体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施形態について説明する。
この実施形態のボールねじは、図1〜3に示すように、内周面に螺旋溝11が形成されたナット1と、外周面に螺旋溝21が形成されたねじ軸2と、ボール23と、循環部品3と、循環部品3をナット1に固定する取付部品4とで構成されている。ボール23は、ナット1の螺旋溝とねじ軸2の螺旋溝21で形成される軌道の間と、循環部品3により形成されたボール戻し経路35内に配置されている。
【0012】
ナット1の外周部の一部が凹部11とされ、その底面が循環部品3を取り付ける外側平坦面12となっている。ナット1の外側平坦面12に、二個一組の貫通孔(循環孔)13が形成されている。循環部品3は本体部31と一対の脚部32とからなる。本体部31の下面(脚部32側の面)31bがナット1の外側平坦面12に接触する面である。循環部品3は、ボールの移動方向を示すラインLに沿って分割された二個の分割体で構成されている。
【0013】
図4に示すように、循環部品3の分割体30は、本体部310と一対の脚部320とからなり、ボール戻し経路35に対応する溝350が形成されている。一方の脚部320の先端に、ボール掬いあげ用のタング部32aが形成されている。図4に示す同じ分割体30を結合することで循環部品3が組み立てられ、その内部に二つの溝350によるボール戻し経路35が形成される。
【0014】
図4に示すように、循環部品3の本体部31と脚部32との内側境界部34が、丸く形成されている。この部分を逃げる逃げ部が、ナット1の循環孔20の開口端に形成されている。本体部31の下面31bを形成する部分36の厚さTは、ボール23の直径の約30%になっている。
この実施形態の循環部品3によれば、本体部31と脚部32との内側境界部34が丸く形成されているだけでなく、本体部31の厚さTがボール23の直径の5%以上50%以下になっているため、必要な強度を保持しながら、ナット1の外側平坦面12に取り付けた状態での本体部31の突出量を低く抑えることができる。
【符号の説明】
【0015】
1 ナット
11 ナットの凹部
12 ナットの外側平坦面
13 ナットの貫通孔(循環孔)
2 ねじ軸
21 ねじ軸の螺旋溝
3 循環部品
31 循環部品の本体部
31b 本体部の下面(ナットの外側平坦面との接触面)
32 循環部品の脚部
32a タング部
34 本体部と脚部との内側境界部
35 ボール戻し経路
36 本体部の下面(外側平坦面との接触面)を形成する部分
30 循環部品の分割体
310 分割体の本体部
320 分割体の客部
350 ボール戻し経路を構成する溝
4 取付部品
5 ボルト
L ボールの移動方向を示すラインに相当する分割ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に螺旋溝が形成されたナットと、外周面に螺旋溝が形成されたねじ軸と、ナットの螺旋溝とねじ軸の螺旋溝で形成される軌道の間に配置されたボールと、ボールを軌道の終点から始点に戻すボール戻し経路とを備え、前記軌道内をボールが転動することで前記ナットがねじ軸に対して相対移動するボールねじの、前記ボール戻し経路を形成する循環部品であって、
合成樹脂製で、前記ナットの外側平坦面に接触配置される本体部と、前記外側平坦面に設けられた二個一組の循環孔に挿入される一対の脚部とからなり、
前記本体部が前記外側平坦面に接触する側において、前記本体部と脚部との境界部を丸く形成し、前記本体部の厚さをボール直径の5%以上50%以下にしたことを特徴とするボールねじ用循環部品。
【請求項2】
内周面に螺旋溝が形成されたナットと、外周面に螺旋溝が形成されたねじ軸と、ナットの螺旋溝とねじ軸の螺旋溝で形成される軌道の間に配置されたボールと、ボールを軌道の終点から始点に戻すボール戻し経路とを備え、前記軌道内をボールが転動することで前記ナットがねじ軸に対して相対移動するボールねじであって、
前記ボール戻し経路は、請求項1記載の循環部品の前記脚部が、前記ナットの外側平坦面に設けられた二個一組の循環孔に挿入され、前記本体部が前記外側平坦面に接触配置されることで形成されていることを特徴とするボールねじ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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