説明

ボールねじ装置

【課題】ボール通過周期の作動トルクの変動を低減してかかる作動トルクの変動に伴う不具合を極力低減できる内部循環方式のボールねじ装置を提供する。
【解決手段】ボールねじ装置1において、ねじ軸10は、水平状態に配置されて回転する。複数の循環こま40は、全てナット20の軸方向に一列に並べてナット20の内周面に配置される。ナット20は、軸方向に一列に並べて配置された複数の循環こま40の位相がほぼ上となるようにねじ軸10に外嵌される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ軸とナットとの間に介在された複数のボールを循環するようにした、内部循環方式のボールねじ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の内部循環方式のボールねじ装置として、例えば、図13に示すものが知られている(特許文献1参照)。
図13に示すボールねじ装置100は、ねじ軸101と、ナット102と、複数のボール103とを備えて構成されている。
ねじ軸101は、その外周面に、所定のリードを有する螺旋状のボール転動溝104が形成されている。ナット102は、略円筒状をなし、その内径はねじ軸101の外径よりも大きく形成され、ねじ軸101に所定の隙間をもって外装されている。ナット102は、一端部に案内対象と結合するフランジ122を有する。ナット102の内周面には、ねじ軸101のリードと等しいリードを有する螺旋状のボール転動溝105が形成されている。このボール転動溝105と対向するねじ軸101のボール転動溝104とによって断面略円状の軌道106が形成されている。そして、この軌道106内に複数のボール103が転動可能に充填配置される。そして、ナット102には、ボール103が循環できるように、軌道106の一端と他端とを連結し、軌道106を転がるボール103を一端から他端に戻す、ボール戻し溝113を有する複数の循環こま108が装着される。
【0003】
循環こま108のボール戻し溝113により、循環こま108に向かって軌道106を転がってくるボール3をねじ軸101の径方向にすくい上げ、ねじ軸101のねじ山を乗り越えさせ、一巻き手前(一リード手前)の軌道106に戻すことでボール103を循環可能になっている。そして、このボール戻し溝113及び軌道106によって形成される通路によってねじ軸101の外側に略円環状の無限循環路が形成される。これにより、ナット102に対するねじ軸101の相対的な回転に伴って、ボール103がボール転動溝104とボール転動溝105との間を転がり運動することによって、ナット102がねじ軸101に対してねじ軸101の軸方向に直線運動することを可能にしている。
なお、内部循環方式のボールねじ装置100においては、図14(a),(b)に示すように、複数の循環こま108を、ナット102の中心軸CLが延びる方向に位置をずらしてナット102の周方向に均等間隔に配置してある。この理由は、ナット102の中心軸CLに対する重量バランスが良好で回転時のアンバランスが抑制できるためである。
【0004】
しかしながら、複数の循環こま108を、ナット102の軸方向に位置をずらしてナット102の周方向に均等間隔に配置する内部循環方式のボールねじ装置100においては、循環こま108の位相の影響による作動性の低下(例えば、ボールが循環こまを通過するときの周期で生じる作動トルクの変動)というデメリットがある。
この循環こまの位相の影響による作動性の低下を含む作動トルク変動の低減を図る内部循環方式のボールねじ装置として、例えば、図15に示すもの(特許文献2参照)が知られている。
【0005】
図15に示すボールねじ装置200では、ねじ軸201に形成されたねじ溝202とこれに対向するナット203に形成されたねじ溝204とによって構成されるボール転動路205と、ナット203に取り付けられた循環こま206の循環溝207とで循環軌道を構成している。この循環軌道内には、複数のボール208と、隣り合うボール208同士の接触を阻止する、ボール208と同数のセパレータ209とが交互に配置されている。そして、ねじ軸201とナット203との相対回転に伴って、複数のボール208及びセパレータ209が循環軌道内を無限循環するようになっている。循環こま206は、ナット203の軸方向に位置をずらしてナット203の周方向に均等間隔に複数配置されている。そして、ボールねじ装置200においては、循環軌道を無限循環するボール208の個数を、ボール転動路205を軸方向に投影した円周上に配置可能な最大のボール数よりも1個乃至3個少ない個数とし、複数のセパレータ209の幅を、前記円周上に前記個数のボール208を等間隔に配置した場合における隣り合うボール208間の隙間の大きさに設定している。
【0006】
このように、セパレータ209によって、隣り合うボール208同士の接触を阻止することによって、ボール208が滑らかに転動し、作動トルク変動の低減を図ることができる。また、循環軌道に充填可能な最大のボール数に対し実際に充填されるボール208の個数の減少量が少ないため、負荷容量の低下が抑制される。さらに、複数のセパレータ209の幅を、隣り合うボール208間の隙間の大きさに設定し、それぞれ同幅としたため、即ち、ボールねじ装置200が1種類のセパレータ209を用いて構成されるため、部品管理が容易で組み付け工数の削減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−211898号公報
【特許文献2】特開2003−314658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この従来の図15に示した内部循環方式のボールねじ装置200にあっては、以下の問題点があった。
即ち、図15に示した内部循環方式のボールねじ装置200では、セパレータ209によって、ボールが循環こまを通過するときの周期で生じる作動トルクの変動(以下、ボール通過周期の作動トルクの変動という)を含む作動トルク変動の低減を図れる。しかし、金型加工などの高精度の加工に用いられる高精度工作機械においては、以前には問題とならなかった小さなボール通過周期の作動トルクの変動すらも低減したいという要請がある。
【0009】
図15に示した内部循環方式のボールねじ装置200をこの種の高精度工作機械に使用した場合には、未だボール通過周期の作動トルクの変動の低減効果が足りないということが発明者らの実験で分かった。
近年、高精度のマシニングセンターによる金型加工において金型の加工面に縞模様が発生してしまうという問題が発生し、発明者らはその原因を究明すべく種々の実験を行った。
【0010】
その実験の結果、金型の加工面に縞模様が発生する原因は作動トルクの変動が原因ということが分かった。実験の中で図15に示したセパレータ入りの内部循環方式のボールねじ装置200をマシニングセンターに使用して実験を行ったが、未だボール通過周期の作動トルクの変動の低減効果が足りず、金型の加工面に縞模様が未だに発生してしまった。
従って、本発明は上述の課題を解決すべくなされたものであり、その目的は、ボール通過周期の作動トルクの変動を低減してかかる作動トルクの変動に伴う不具合を極力低減できる内部循環方式のボールねじ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明のうち請求項1に係るボールねじ装置は、外周面に螺旋状の第1ボール転動溝を有するねじ軸と、該ねじ軸に外嵌して内周面に前記第1ボール転動溝に対向する第2ボール転動溝を有するナットと、前記第1ボール転動溝と前記第2ボール転動溝とによって形成される軌道内に転動可能に充填された複数のボールと、前記ナットに装着され、前記ボールを手前の軌道に戻すためのボール戻し溝を有する複数の循環こまとを備えたボールねじ装置において、前記ねじ軸が、水平状態に配置されて回転するとともに、前記複数の循環こまは、全て前記ナットの軸方向に一列に並べて前記ナットの内周面に配置され、前記ナットは、前記軸方向に一列に並べて配置された前記複数の循環こまの位相がほぼ上となるように前記ねじ軸に外嵌されることを特徴としている。
【0012】
また、本発明のうち請求項2に係るボールねじ装置は、請求項1記載のボールねじ装置において、前記軌道内に充填された複数のボールの充填率が70%以上80%以下であることを特徴としている。
更に、本発明のうち請求項3に係るボールねじ装置は、請求項1又は2記載のボールねじ装置において、前記軌道内に充填された複数のボールの隣接するボール間にスペーサボールを介在させたことを特徴としている。
また、本発明のうち請求項4に係るボールねじ装置は、請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載のボールねじ装置において、前記複数の循環こまを一体で形成した循環こま部材を備え、前記ナットの内周面に前記循環こま部材を収容する凹部を形成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明のうち請求項1に係るボールねじ装置によれば、ねじ軸が、水平状態に配置されて回転するとともに、複数の循環こまは、全てナットの軸方向に一列に並べてナットの内周面に配置され、ナットは、軸方向に一列に並べて配置された複数の循環こまの位相がほぼ上となるようにねじ軸に外嵌されるので、軸方向に一列に並べて配置された複数の循環こまの位相がほぼ上の状態が維持されてナットがねじ軸に外嵌されており、複数のボールが循環こまのボール戻し溝を転動する際に先頭のボールが押されて自重でボール戻し溝の出口まで移動することが可能となり、循環こまのボール戻し溝内に常に隙間が生じることになる。このため、ボールのつまり現象が生じないため、ボール通過周期の作動トルクの変動を極力抑制することができる。これにより、かかる作動トルクの変動に伴う不具合を極力低減できる内部循環方式のボールねじ装置を提供できる。
【0014】
また、本発明のうち請求項2に係るボールねじ装置によれば、請求項1記載のボールねじ装置において、前記軌道内に充填された複数のボールの充填率が70%以上80%以下であるので、作動トルクの変動の低減効果をより一層効果的に発揮できるとともに、負荷容量の低下をも回避することができる。
更に、本発明のうち請求項3に係るボールねじ装置によれば、請求項1又は2記載のボールねじ装置において、前記軌道内に充填された複数のボールの隣接するボール間にスペーサボールを介在させたので、ボール通過周期で生じる作動トルク変動の低減効果に加えて、負荷圏内の隣接するボール同士の競い合いに起因した長波長トルク変動の低減をも図ることができる。
【0015】
また、本発明のうち請求項4に係るボールねじ装置によれば、請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載のボールねじ装置において、前記複数の循環こまを一体で形成した循環こま部材を備え、前記ナットの内周面に前記循環こま部材を収容する凹部を形成したので、一体の循環こま部材をナットに形成された凹部に収容されることにより、複数の循環こまがナットの軸方向に一列に並べて配置されることになる。このため、各循環こまに相当する部分をナットに固定する必要はなく、複数の循環こまをナットに固定するための軸方向スペースを小さくできる。これにより、ナットの軸方向長さを小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るボールねじ装置の第1実施形態の斜視図である。
【図2】図1に示すボールねじ装置の主要部の断面図である。
【図3】図1に示すボールねじ装置に用いられる循環こまの斜視図である。
【図4】図1に示すボールねじ装置において、循環こまの配置を模式的に示す図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
【図5】図1に示したボールねじ装置の使用状態を説明するための図である。
【図6】複数の循環こまが全てナットの軸方向に一列に並べてナットの内周面に配置されているが、ナットが、複数の循環こまの位相が下となるようにねじ軸に外嵌されているとき(比較例)の、循環こまの内部のボールの状態を示し、(a)は負荷圏内でボールが転動する状態、(b)は1つめのボールが循環こま内に進入した状態、(c)は2つ目のボールが循環こま内に進入した状態,(d)は3つ目のボールが循環こま内に進入した状態、(e)は4つ目のボールが循環こま内に進入した状態、(f)は5つ目のボールが循環こま内に進入した状態、(g)は6つ目のボールが循環こま内に進入しようとする状態を示している。
【図7】複数の循環こまが全てナットの軸方向に一列に並べてナットの内周面に配置され、かつ、ナットが、複数の循環こまの位相が上となるようにねじ軸に外嵌されているとき(本発明例)の、循環こまの内部のボールの状態を示し、(a)は負荷圏内でボールが転動する状態、(b)は1つめのボールが循環こま内に進入した状態、(c)は2つ目のボールが循環こま内に進入した状態,(d)は3つ目のボールが循環こま内に進入した状態、(e)は4つ目のボールが循環こま内に進入する状態を示している。
【図8】本発明例(図7)のボールねじ装置の作動トルク変動の測定結果を示すグラフである。
【図9】比較例(図6)のボールねじ装置の作動トルク変動の測定結果を示すグラフである。
【図10】本発明に係るボールねじ装置の第2実施形態を説明するための図である。
【図11】本発明に係るボールねじ装置の第3実施形態を説明するための図である。図11においては、ねじ軸及びボールは省略してある。
【図12】図11に示すボールねじ装置に用いられる循環こま部材を示し、(a)は底面図、(b)は右側面図である。
【図13】従来例の内部循環方式のボールねじ装置を示す断面図である。
【図14】従来の内部循環方式のボールねじ装置における、循環こまの配置を模式的に示す図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
【図15】従来の他の例の内部循環方式のボールねじ装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明に係るボールねじ装置の第1実施形態の斜視図である。図2は、図1に示すボールねじ装置の主要部の断面図である。
図1に示す内部循環方式のボールねじ装置1は、工作機械や産業機械等の搬送や精密位置決めに用いられるものであり、特に、金型加工などの高精度の加工に用いられる高精度工作機械に好適に用いられる。
【0018】
このボールねじ装置1は、ねじ軸10と、ナット20と、複数のボール30と、複数の循環こま40とを備えて構成されている。ねじ軸10は、水平状態(中心軸CLが水平になる状態)に配置されて回転するようになっている。
ねじ軸10は、中心軸CLを中心とした円筒形状で、その外周面に、所定のリードを有する螺旋状の第1ボール転動溝11が形成されている。
【0019】
ナット20は、略円筒状をなし、その内径はねじ軸10の外径よりも大きく形成されており、ねじ軸10に所定の隙間をもって外嵌している。ナット20の一端部には、案内対象と結合するためのフランジ25が設けられている。ナット20の内周面には、ねじ軸10の第1ボール転動溝11と等しいリードを有し、第1ボール転動溝11と対向する第2ボール転動溝21が形成されている。そして、ねじ軸10の第1ボール転動溝11とナット20の第2ボール転動溝21とによって断面略円形状の軌道23が形成されている。この軌道23内に複数のボール30が転動可能に充填配置されている。
【0020】
また、ナット20の内周面には、図1及び図2に示すように、ボール30を手前の軌道23に戻すための複数の循環こま40が装着されている。各循環こま40には、軌道23の一端と一巻き手前の軌道23の他端とを連結するボール戻し溝42が形成されている。このボール戻し溝42により、各循環こま40に向かって軌道23を転がってくるボール30をねじ軸10の径方向にすくい上げ、さらに、ねじ軸10のねじ山12を乗り越えさせ、一巻き手前(一リード手前)の軌道23に戻すことでボール30を循環可能になっている。そして、このボール戻し溝42及び軌道23によってねじ軸10の外側に略円環状の無限循環路24が形成される。これにより、ナット20に対するねじ軸10の相対的な回転に伴って、複数のボール30が無限循環路24内を無限循環することによって、ナット20がねじ軸10に対してねじ軸10の軸方向に直線運動することが可能となる。
【0021】
次に、各循環こま40の詳細について図2及び図3を参照して説明する。図3は、図1に示すボールねじ装置に用いられる循環こまの斜視図である。
各循環こま40は、例えば焼結合金から形成されており、図3に示すように、その上面41が、細長い小判形の面をなし、ナット20の内周面をなす曲面に応じた曲率で湾曲している。そして、循環こま40の上面41は、ナット20に装着された際に、ナット20の内周面のねじ山22と同じ高さになる。そして、循環こま40の高さは、ボール30の直径よりも大きな寸法を有している。各循環こま40は、ナット20の内周面上に存在するので、ナット20の外径が小さくなり、コンパクトな構造の内部循環方式のボールねじ装置1とすることができる。
【0022】
そして、各循環こま40の上面41には、およそSの字を裏返した形のボール戻し溝42が形成されている。ボール戻し溝42は、循環こま40の一端にある出入り口43aから他端にある出入り口43bまで延び、出入り口43a側にある出入り通路44aと、出入り口43b側にある出入り通路44bと、出入り通路44aと出入り通路44bとをつなぐ中間通路45とを備えている。ボール戻し溝42の断面はU字形をなし、その底はボール30の球面に対応した曲面で構成されている。
【0023】
そして、循環こま40の出入り口43aは軌道23の一端に連なり、その一方、循環こま40の出入り口43bは一巻き手前の軌道23の他端に連なっている。軌道23の一端と一巻き手前の軌道23の他端までは、ねじ軸10の外周沿いにほぼ1旋回しており、出入り口43aと出入り口43bとの間には、ねじ軸10のねじ山12及びナット20のねじ山22が各1条存在している。中間通路45は、出入り口43aと出入り口43bとの間にあるねじ山12を乗り越えるように、ナット20の外周側へ緩やかに湾曲している。
【0024】
そして、軌道23の一端側へ移動したボール30ボール30は出入り口43aを通って出入り通路44aに入り、出入り通路44aに沿って進行を曲げて中間通路45に入る。中間通路45に入ったボール30は、中間通路45沿いにねじ山12を乗り越えて出入り通路44bへ入り、出入り通路44bに沿って進行方行を曲げて進み、出入り口43bを通って一巻き手前の軌道23の他端に戻るようになっている。ボールねじ装置1は、かかる軌道23と循環こま40内のボール戻し溝42とからなる無限循環路24を複数有している。
【0025】
ここで、循環こま40は複数(本実施形態にあっては6個)設けられ、複数の循環こま40は、図4に示すように、全て、ナット20の中心軸CLが延びる軸方向に一列に並べてナット20の内周面に配置されている。また、ナット20は、軸方向に一列に並べて配置された複数の循環こま40の位相がほぼ上(図4及び図7参照)となるようにねじ軸10に外嵌されている。ここで、「複数の循環こま40の位相がほぼ上」とは、図4(a)において、複数のこま40の位相が、水平なx軸に対して垂直なy軸上にある場合を最良とし、当該y軸に対して±45°以内であればよいことを意味する。
このように構成されたボールねじ装置1は、例えば、図5に示すような態様で使用される。
【0026】
図5において、ボールねじ装置1は、ねじ軸10を水平状態に配置し、ねじ軸10の両端を1対のサポートユニット50によって回転可能且つ軸方向移動不能に支持している。また、ナット20は、軸方向に一列に並べて配置された複数(本実施形態では6個だが、図5においては模式的に2個としている)の循環こま40の位相がほぼ上となるようにねじ軸10に外嵌されている。そして、ねじ軸10の一端部にはモータ52の出力軸が連結され、ねじ軸10はそのモータ52によって回転するようになっている。また、ナット20のフランジ25には移動テーブル51が固定され、この移動テーブル51は直動案内装置53によって案内されるようになっている。
【0027】
そして、ねじ軸10が回転すると、ナット20がねじ軸10の軸方向に移動し、これに伴って移動テーブル51が直動案内装置53によって案内される。この際に、ボールねじ装置1においては、ボール30が無限循環路24内を循環する。このとき、軸方向に一列に並べて配置された複数の循環こま40の位相がほぼ上の状態に維持されてナット20がねじ軸10に外嵌されているので、複数のボール30が循環こま40のボール戻し溝42を転動する際に先頭のボール30が押されて自重でボール戻し溝42の出口まで移動することが可能となり、循環こま40のボール戻し溝42内に常に隙間が生じることになる。このため、ボール30のつまり現象が生じないため、ボール通過周期の作動トルクの変動を極力抑制することができる。これにより、かかる作動トルクの変動に伴う不具合、例えば、工作機械の加工物表面に生じる縞模様の発生等の不具合を極力低減できる内部循環方式のボールねじ装置1を提供できる。
【0028】
次に、本発明例(軸方向に一列に並べて配置された複数の循環こまの位相が上の状態に維持されてナットがねじ軸に外嵌されているもの)が比較例(軸方向に一列に並べて配置された複数の循環こまの位相が下の状態に維持されてナットがねじ軸に外嵌されているもの)に対して作動トルクの変動の低減において有効であることを図6及び図7を参照して以下に説明する。
【0029】
先ず、図6を参照して、ナットが複数の循環こまの位相が下となるようにねじ軸に外嵌されているとき(比較例)の作動トルクの変動について説明する。
この場合、先ず、図6(a)に示すように、ねじ軸10が回転し、負荷圏内のボール30が転動する。このときには、循環こま40のボール戻し溝42内にボール30が存在しない。
【0030】
次いで、図6(b)に示すように、1つ目のボール30が循環こま40のボール戻し溝42内に進入する。このとき、ボール30は自重でボール戻し溝42の底部へ移動する。
更に、図6(c)に示すように、2つ目のボール30が循環コま40のボール戻し溝42内に進入する。このとき、この2つ目のボール30は自重でボール戻し溝42の下方に向けて移動し、1つ目のボール30に接触する。1つ目のボール30は2つ目のボール30に押されて前へ進む。1つ目のボール30はボール戻し溝42内で底部を超えて斜めに延びる上り傾斜の部分に位置し、2つ目のボール30は下り傾斜の部分に位置する。
【0031】
そして、図6(d)に示すように、3つ目のボール30が循環コま40のボール戻し溝42内に進入する。このとき、この3つ目のボール30は自重でボール戻し溝42の下方に向けて移動し、2つ目のボール30に接触する。2つ目のボール30、1つ目のボール30は順次押されて前へ進む。1つ目のボール30はボール戻し溝42内で上り傾斜の部分に位置し、2つ目のボール30はボール戻し溝42の底部に位置し、3つ目のボール30はボール戻し溝42の下り傾斜の部分に位置する。
【0032】
次いで、図6(e)に示すように、4つ目のボール30が循環コま40のボール戻し溝42内に進入する。このとき、この4つ目のボール30は自重でボール戻し溝42の下方に向けて移動し、3つ目のボール30に接触する。3つ目のボール30、2つ目のボール30、及び1つ目のボール30は順次押されて前へ進む。1つ目のボール30及び2つ目のボール30はボール戻し溝42内で上り傾斜の部分に位置し、3つ目のボール30及び4つ目のボール30はボール戻し溝42内の下り傾斜の部分に位置する。
【0033】
そして、図6(f)に示すように、5つ目のボール30が循環コま40のボール戻し溝42内に進入する。このとき、この5つ目のボール30は自重でボール戻し溝42の下方に向けて移動し、4つ目のボール30に接触する。4つ目のボール30、3つ目のボール30、2つ目のボール30、及び1つ目のボール30が順次押されて前へ進む。1つ目のボール30がボール戻し溝42の出口近傍に位置し、2つ目のボール30はボール戻し溝42内で上り傾斜の部分に位置し、3つ目のボール30はボール戻し溝42の底部に位置し、4つ目のボール30及び5つ目のボール30はボール戻し溝42内の下り傾斜の部分に位置する。
【0034】
次に、図6(g)に示すように、6つ目のボール30が循環こま40のボール戻し溝42内に入ろうとすると、ボール戻し溝内の5個のボール30を押すが、ボール戻し溝42の出口近傍に1つ目のボール30があるため、6つ目のボール30はボール戻し溝42内に入れない。このため、ボール30のつまりが発生し、ボールねじの作動トルクが瞬間的に増加する。しかし、ボール戻し溝42の出口側のボール30が負荷圏に移動することにより、作動トルクの増加が解消される。この作動トルクの増加と減少を繰り返すことによって、ボール通過周期の作動トルクの変動が発生する。
一方、ナットが複数の循環こまの位相が上となるようにねじ軸に外嵌されているとき(本発明例)の作動トルクの変動について図7を参照して説明すると、先ず、図7(a)に示すように、ねじ軸10が回転し、負荷圏内のボール30が転動する。このときには、循環こま40のボール戻し溝42内にボール30が存在しない。
【0035】
次いで、図7(b)に示すように、1つ目のボール30が循環こま40のボール戻し溝42内に進入する。このとき、ボール30は自重で循環こま40のボール戻し溝42の入り口近傍に留まる。
更に、図7(c)に示すように、2つ目のボール30が循環コま40のボール戻し溝42内に進入する。このとき、この2つ目のボール30は1つ目のボール30に接触して1つ目のボール30を押し上げる。1つ目のボール30はボール戻し溝42内で上り傾斜部分に位置し、2つ目のボール30はボール戻し溝42の入り口近傍に位置する。
【0036】
そして、図7(d)に示すように、3つ目のボール30が循環コま40のボール戻し溝42内に進入する。このとき、この3つ目のボール30は2つ目のボール30に接触して2つ目のボール30及び1つ目のボール30を押し上げる。1つ目のボール30はボール戻し溝42内で底部に位置し、2つ目のボール30はボール戻し溝42の上り傾斜部分に位置し、3つ目のボール30はボール戻し溝42の入り口近傍に位置する。
【0037】
次いで、図7(e)に示すように、4つ目のボール30が循環こま40のボール戻し溝42内に進入する。このとき、この4つ目のボール30は3つ目のボール30に接触して3つ目のボール30及び2つ目のボール30を押し上げ、1つ目のボール30は押されて自重でボール戻し溝42の出口まで移動する。このため、循環こま40のボール戻し溝42内に常に隙間が生じることになる。従って、ボール30のつまり現象が生じないため、ボール通過周期の作動トルクの変動を極力抑制できる。これにより、かかる作動トルクの変動に伴う不具合、例えば、工作機械の加工物表面に生じる縞模様の発生等の不具合を極力低減できる内部循環方式のボールねじ装置1を提供できる。
なお、ナットが複数の循環こまの位相が横となるようにねじ軸に外嵌されているときには、ボール30が下から上に上がる方向で循環こまの位相が下の場合と同じ現象になる。また、ボール30が上から下に下がる方向で循環こまの位相が上の場合と同じ現象になる。
【0038】
次に、ナットが複数の循環こまの位相が上となるようにねじ軸に外嵌されているとき(本発明例、図7)のボールねじ装置の作動トルク変動、及びナットが複数の循環こまの位相が下となるようにねじ軸に外嵌されているとき(比較例、図6)のボールねじ装置の作動トルク変動を測定した。
測定に使用したボールねじの仕様及び測定条件は下記の通りである。
ボールねじの仕様:ねじ軸の軸径70mm、リード12mm、ダブルナット予圧方式、回路数1巻×6列(×2)、予圧荷重3500N
測定条件:回転速度30min−1、ストローク36mm(3rev.)、ISO VG#68潤滑、50往復後
本発明例(図7)のボールねじ装置の作動トルク変動の測定結果を図8に、比較例(図6)のボールねじ装置の作動トルク変動の測定結果を図9に示す。
図8及び図9を参照すると、本発明例の方が比較例に比べて作動トルクの変動が著しく低減されていることがわかる。
【0039】
なお、循環こま40のボール戻し溝42内に常に隙間が生じるように、ナット20を、軸方向に一列に並べて配置された複数の循環こま40の位相がほぼ上となるようにねじ軸10に外嵌すると、ボール通過周期の作動トルクの変動を極力抑制できるが、ボール30の充填率が80%よりも大きいとボール通過周期の作動トルクの変動を抑制する効果がやや減少する。このため、ボール30の充填率を80%以下とすることが好ましい。また、ボール30の充填率を下げると、負荷を受けるボール30の数が減り、負荷容量の低下が懸念される。このため、ボール30の充填率は70%以上とすることが好ましい。ボール30の充填率を70%より下げると、負荷容量の低下が著しく懸念される。従って、ボール30の充填率は70%以上80%以下とすることが好ましい。なお、ボール30の充填率とは、無限循環路24内に入る最大のボール30の個数に対する充填したボール30の個数の割合をいう。
【0040】
次に、本発明に係るボールねじ装置の第2実施形態を図10を参照して説明する。図10は、本発明に係るボールねじ装置の第2実施形態を説明するための図である。
図10に示すボールねじ装置1は、図1乃至図4に示すボールねじ装置1と基本構成は同様であるが、軌道23内に充填された複数のボール30の隣接するボール30間にスペーサボール31を介在させた点で図1乃至図4に示すボールねじ装置1と異なっている。即ち、隣接するボール30間にスペーサボール31が交互に、すなわちボール30とスペーサ31の個数が1体1の割合で介在されている。
【0041】
このように、複数のボール30の隣接するボール30間にスペーサボール31を介在させることにより、ナット20を複数の循環こま40の位相が上となるようにねじ軸10に外嵌させてボール通過周期で生じる作動トルク変動の低減効果を図ることに加えて、負荷圏内のボール30同士の競い合いに起因した長波長トルク変動の低減が可能となる。
なお、スペーサボール31はボール30と交互に入れる他、ボール30の2つおきに1個、3つおきに1個等、スペーサボール31の介在の仕方に限定されない。少なくとも隣接する1組のボール30間に1個スペーサボール31が介在されていればよい。
ここで、スペーサボール31は、ボール30と同様の鋼製であり、その直径はボール30の直径よりも30μm程度小さくされている。
【0042】
更に、本発明に係るボールねじ装置の第3実施形態を図11及び図12を参照して説明する。図11は、本発明に係るボールねじ装置の第3実施形態を説明するための図である。図11においては、ねじ軸及びボールは省略してある。図12は、図11に示すボールねじ装置に用いられる循環こま部材を示し、(a)は底面図、(b)は右側面図である。
図11及び図12に示すボールねじ装置1は、図1乃至図4に示すボールねじ装置1と基本構成は同様であるが、図1乃至図4における複数(第1実施形態にあっては6個)の循環こま40を用いず、複数の循環こまを一体で形成した循環こま部材60を備えている点で異なっている。そして、ナット20の内周面には、循環こま部材60を収容する凹部26が形成されている。
【0043】
ここで、循環こま部材60は、例えば焼結合金から略直方体形状に形成され、図12(b)に示すように、その上面(図12(a)では下方を向いている)61が、ナット20の内周面をなす曲面に応じた曲率で湾曲している。そして、循環こま部材60の上面61は、ナット20に装着された際に、ナット20の内周面のねじ山22(図1及び図2参照)と同じ高さになる。そして、循環こま部材60の高さは、ボール30の直径よりも大きな寸法を有している。循環こま部材60は、ナット20の内周面上に存在するので、ナット20の外径が小さくなり、コンパクトな構造の内部循環方式のボールねじ装置1とすることができる。
【0044】
そして、循環こま部材60の上面61には、およそSの字を裏返した形の複数(本実施形態にあっては6個)のボール戻し溝62が形成されている。複数のボール戻し溝62は、図12(a)に示すように、循環こま部材60の長手方向(ナット20の軸方向と同一方向)に沿って所定ピッチで一列に並べて形成されている。また、循環こま部材60には、この循環こま部材60をナット20に取り付けるための複数のねじ孔63が形成されている。そして、各ボール戻し溝62は、循環こま部材60の一端にある出入り口64aから他端にある出入り口64bまで延び、出入り口64a側にある出入り通路65aと、出入り口64b側にある出入り通路65cと、出入り通路65aと出入り通路65cとをつなぐ中間通路65bとを備えている。各ボール戻し溝62の断面はU字形をなし、その底はボール30の球面に対応した曲面で構成されている。
【0045】
そして、循環こま部材60の出入り口64aは軌道23(図2参照)の一端に連なり、その一方、循環こま部材60の出入り口64bは一巻き手前の軌道23の他端に連なっている。軌道23の一端と一巻き手前の軌道23の他端までは、ねじ軸10の外周沿いにほぼ1旋回しており、出入り口64aと出入り口64bとの間には、ねじ軸10のねじ山12及びナット20のねじ山22が各1条存在している。中間通路65bは、出入り口64aと出入り口64bとの間にあるねじ山12を乗り越えるように、ナット20の外周側へ緩やかに湾曲している。
【0046】
そして、軌道23の一端側へ移動したボール30は出入り口64aを通って出入り通路65aに入り、出入り通路65aに沿って進行を曲げて中間通路65bに入る。中間通路65bに入ったボール30は、中間通路65b沿いにねじ山12を乗り越えて出入り通路65cへ入り、出入り通路65cに沿って進行方行を曲げて進み、出入り口64bを通って一巻き手前の軌道23の他端に戻るようになっている。ボールねじ装置1は、かかる軌道23と循環こま部材60内のボール戻し溝62とからなる無限循環路を複数有している。
【0047】
一方、ナット20の内周面に設けられる凹部26は、図11に示すように、ナット20の端面からナット20の中心軸CLが延びる軸方向に延びている。凹部26は、ナット20の端面から循環こま部材60を収容可能な形状に形成される。
循環こま部材60が凹部26内に収容されると、循環こま部材60の上面61が、ナット20の内周面のねじ山22(図1及び図2参照)と同じ高さになる。そして、循環こま部材60の各ボール戻し溝62の出入り口64aは軌道23の一端に連なり、その一方、循環こま部材60の各ボール戻し溝62の出入り口64bは一巻き手前の軌道23の他端に連なることになる。
【0048】
そして、ナット20は、軸方向に一列に並べて配置されたボール戻し溝62を有する(複数の循環こまを一体で形成した)循環こま部材60の位相がほぼ上(図4及び図7参照)となるようにねじ軸10に外嵌される。ここで、「循環こま部材60の位相がほぼ上」とは、循環こま部材60の位相が、水平なx軸(図4(a)参照)に対して垂直なy軸(図4(a)参照)上にある場合を最良とし、当該y軸に対して±45°以内であればよいことを意味する。
このように構成されたボールねじ装置1は、図1乃至図4に示すボールねじ装置1と同様に、例えば、図5に示すような態様で使用される。
【0049】
即ち、ボールねじ装置1は、ねじ軸10を水平状態に配置し、ねじ軸10の両端を1対のサポートユニット50によって回転可能且つ軸方向移動不能に支持している。また、ナット20は、循環こま部材60の位相がほぼ上となるようにねじ軸10に外嵌されている。そして、ねじ軸10の一端部にはモータ52の出力軸が連結され、ねじ軸10はそのモータ52によって回転するようになっている。また、ナット20のフランジ25には移動テーブル51が固定され、この移動テーブル51は直動案内装置53によって案内されるようになっている。
【0050】
そして、ねじ軸10が回転すると、ナット20がねじ軸10の軸方向に移動し、これに伴って移動テーブル51が直動案内装置53によって案内される。この際に、ボールねじ装置1においては、ボール30が無限循環路内を循環する。このとき、循環こま部材60の位相がほぼ上の状態に維持されてナット20がねじ軸10に外嵌されているので、複数のボール30が循環こま部材60のボール戻し溝62を転動する際に先頭のボール30が押されて自重でボール戻し溝62の出口まで移動することが可能となり、循環こま部材60のボール戻し溝62内に常に隙間が生じることになる。このため、ボール30のつまり現象が生じないため、ボール通過周期の作動トルクの変動を極力抑制することができる。これにより、かかる作動トルクの変動に伴う不具合、例えば、工作機械の加工物表面に生じる縞模様の発生等の不具合を極力低減できる内部循環方式のボールねじ装置1を提供できる。
【0051】
また、この第3実施形態に係るボールねじ装置1にあっては、軸方向に一列に並べて配置されたボール戻し溝62を有する(複数の循環こまを一体で形成した)循環こま部材60を備え、ナット20の内周面には、この循環こま部材60を収容する凹部26が形成されているので、複数の循環こま40を全てナット20の軸方向に一列に並べてナット20の内周面に配置した図1乃至図4に示す第1実施形態に係るボールねじ装置1と比べて以下の利点を有する。
【0052】
第1実施形態に係るボールねじ装置1のように、複数の循環こま40をナット20に一列に配置したものとすると、各循環こま40を固定するためのスペースがナット20に必要になる。このため、ナット20の円周方向に対して等配に複数の循環こまを配するものに比べ、回路数(軌道とボール戻し溝によって作られる無限循環路の数)を同じ数にすると、ナット20の軸方向長さが長くなってしまう。
【0053】
これに対して、第3実施形態に係るボールねじ装置1では、複数の回路(無限循環路)を設ける循環こまに相当する部分を一体とした循環こま部材60を備えたので、この一体の循環こま部材60をナット20に固定すればよく、各循環こまをそれぞれナット20に固定する必要はなく、各循環こまを固定するためのナット20の軸方向スペースを小さくすることができる。従って、ナット20の軸方向長さを短くすることができる。
【0054】
また、第1実施形態に係るボールねじ装置1のように、複数の循環こま40をナット20に一列に配置したものとすると、各循環こま40を固定するためのスペースがナット20に必要になる。このため、ねじピッチの短いねじの場合には、循環こま40によって作られた回路の軸方向隣りの軌道に回路を作ることができないことがある。この場合、ねじを1条分軸方向に離れた軌道に回路を作ることになるので、ナット20の軸方向長さが長くなってしまう。
【0055】
これに対して、第3実施形態に係るボールねじ装置1では、複数の回路(無限循環路)を設ける循環こまに相当する部分を一体とした循環こま部材60を備えたので、この一体の循環こま部材60をナット20に固定すればよく、各循環こまをそれぞれナット20に固定する必要はなく、ねじピッチが短いねじに対しても隣り合う軌道に回路を作ることができる。このため、ナット20の軸方向長さを短くすることができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
例えば、第1実施形態及び第2実施形態において、循環こま40は1つのナット20に6個設けられ、第3実施形態において、ボール戻し溝62は6個設けられているが、循環こま40及びボール戻し溝62の個数は2個以上あればよい。
また、第3実施形態において、ボール30の充填率を70%以上80%以下としてもよい。
更に、第3実施形態において、軌道23内に充填された複数のボール30の隣接するボール30間にスペーサボール31を介在させてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 ボールねじ装置
10 ねじ軸
11 第1ボール転動溝
12 ねじ山
20 ナット
21 第2ボール転動溝
22 ねじ山
23 軌道
24 無限循環路
25 フランジ
26 凹部
30 ボール
31 スペーサボール
40 循環こま
41 上面
42 ボール戻し溝
43a,43b 出入り口
44a,44b 出入り通路
45 中間通路
50 サポートユニット
51 移動テーブル
52 モータ
53 直動案内装置
60 循環こま部材
61 上面
62 ボール戻し溝
63 ねじ孔
64a,64b 出入り口
65a,65c 出入り通路
65b 中間通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に螺旋状の第1ボール転動溝を有するねじ軸と、該ねじ軸に外嵌して内周面に前記第1ボール転動溝に対向する第2ボール転動溝を有するナットと、前記第1ボール転動溝と前記第2ボール転動溝とによって形成される軌道内に転動可能に充填される複数のボールと、前記ナットに装着され、前記ボールを手前の軌道に戻すためのボール戻し溝を有する複数の循環こまとを備えたボールねじ装置において、
前記ねじ軸が、水平状態に配置されて回転するとともに、前記複数の循環こまは、全て前記ナットの軸方向に一列に並べて前記ナットの内周面に配置され、前記ナットは、前記軸方向に一列に並べて配置された前記複数の循環こまの位相がほぼ上となるように前記ねじ軸に外嵌されることを特徴とするボールねじ装置。
【請求項2】
前記軌道内に充填された複数のボールの充填率が70%以上80%以下であることを特徴とする請求項1記載のボールねじ装置。
【請求項3】
前記軌道内に充填された複数のボールの隣接するボール間にスペーサボールを介在させたことを特徴とする請求項1又は2記載のボールねじ装置。
【請求項4】
前記複数の循環こまを一体で形成した循環こま部材を備え、前記ナットの内周面に前記循環こま部材を収容する凹部を形成したことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載のボールねじ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−47333(P2012−47333A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287616(P2010−287616)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】