説明

ボールねじ装置

【課題】ポンプを用いることなくボールねじを冷却する。
【解決手段】ボールねじ装置は、ボールねじ軸の内部を貫通して形成され、冷却用流体を流動させるボールねじ軸内流路孔を構成する軸方向孔11及び径方向孔12を有し、軸方向孔11が、冷却用流体が流入する部位とされて流入配管に連通され、ボールねじ軸10の回転中心に配置されるボールねじ軸内流路孔の一端部を構成し、径方向孔12が、冷却用流体が流出する部位とされて流出用配管に連通され、ボールねじ軸10の回転中心から径方向にずれて配置されるボールねじ軸内流路孔の他端部を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、丸棒形状のボールねじ軸と、ボールねじ軸の外周面に螺合するボールねじナットと、を備えるボールねじ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のボールねじの冷却方法としては、外部のポンプを利用して中空ボールねじ軸に強制的に冷却水(油)を通し、ボールねじ軸を冷却する方法がある(例えば特 許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−24876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この方法は、外部にポンプや冷却装置が必要となり高価となる。さらに、冷却ポンプによっては、使用する流体の種類が限られる場合がある。この場合、例えば熱容量の大きい水が使用できないといった問題点がある。
本発明の課題は、ポンプを用いることなくボールねじを冷却することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明に係る請求項1に記載のボールねじ装置は、丸棒形状のボールねじ軸の外周面とボールねじナットの内周面との間に複数のボールを介在させ、前記ボールねじ軸を回転させて、前記ボールねじ軸の軸方向にボールねじナットを相対移動させるボールねじ装置において、前記ボールねじ軸の内部を貫通して形成され、冷却用流体を流動させるボールねじ軸内流路孔を備え、前記ボールねじ軸内流路孔は、一端部が冷却用流体が流入する部位とされて流入配管に連通され、他端部が冷却用流体が流出する部位とされて流出用配管に連通され、前記一端部は、前記ボールねじ軸の回転中心に配置され、前記他端部は、前記ボールねじ軸の回転中心から径方向にずれて配置され、前記ボールねじ軸を回転させるだけで、前記ボールねじ軸自体が前記冷却用流体を循環させるポンプの役割を果すことを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る請求項2に記載のボールねじ装置は、丸棒形状のボールねじ軸の外周面とボールねじナットの内周面との間に複数のボールを介在させ、前記ボールねじ軸を回転させて、前記ボールねじ軸の軸方向にボールねじナットを相対移動させるボールねじ装置において、前記ボールねじ軸の内部を貫通して形成され、冷却用流体を流動させるボールねじ軸内流路孔を備え、前記ボールねじ軸内流路孔は、一端部が冷却用流体が流入する部位とされて流入配管に連通され、他端部が冷却用流体が流出する部位とされて流出用配管に連通され、前記一端部は、前記ボールねじ軸の回転中心に配置され、前記他端部は、前記ボールねじ軸の回転中心から径方向にずれて配置され、前記ボールねじ軸内流路孔内には、前記他端部内の冷却用流体に作用する遠心力を増加させる遠心力増加手段を備え、前記ボールねじ軸内流路孔は、前記ボールねじ軸内流路孔の回転軸方向に延びた軸方向孔を有し、前記ボールねじ軸内流路孔の他端部は、前記ボールねじ軸の回転中心に向かって径方向に延びて前記軸方向孔と連結する複数の径方向孔であり、前記遠心力増加手段は、前記軸方向孔で前記他端部との連結部に設けられ、前記軸方向孔の連結部の周方向を複数分割して区画しつつその各区画室を複数の径方向孔のそれぞれに連通させる仕切り板であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、ボールねじ軸内流路孔の一端部がボールねじ軸の回転中心に配置される一方で、ボールねじ軸内流路孔の他端部がボールねじ軸の回転中心から径方向にずれて配置されることで、ボールねじ軸の回転時に該他端部内の冷却用流体に遠心力を発生させて、冷却用流体を流出用配管に流出させることができる。
これにより、ボールねじ軸を回転させただけで、ボールねじ軸内流路孔内を冷却用流体が自動的に流動するようになり、ボールねじ軸をポンプとして機能させることができる。
【0008】
この結果、ポンプを用いることなく、ボールねじを冷却できる。
また、請求項2に係る発明によれば、ボールねじ軸をポンプとして機能させることができることに加え、他端部内の冷却用流体に大きな遠心力を作用させることができ、効率良く冷却用流体を循環させることができると共に、簡単な構成で、かつ効率良く冷却用流体を循環させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態のボールねじの構成をボールねじ軸に沿って示す側断面図である。
【図2】第1の実施形態のボールねじの構成を示す側面図である。
【図3】図2のX−X方向のボールねじ軸の断面構造を示す断面図である。
【図4】図2のX−X方向のボールねじ軸の他の断面構造を示す断面図である。
【図5】軸端用シールユニットの形状を示す断面図である。
【図6】径方向孔用シールユニットの形状を示す断面図である。
【図7】第2の実施形態のボールねじの構成を示す側面図である。
【図8】第2の実施形態の他のボールねじの構成を示す側面図である。
【図9】排出ユニットの形状を示す断面図である。
【図10】第3の実施形態のボールねじの構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら説明する。
(第1の実施形態)
(構成)
第1の実施形態は、本発明を適用したボールねじである。図1は、ボールねじをボールねじ軸に沿って示す断面図である。
図1に示すように、ボールねじは、ボールねじ軸10及びボールねじナット2を有する。
【0011】
ボールねじ軸10は、螺旋状のボール転動溝を外周面に有する。このボールねじ軸10は、ハウジング3及び機台で支持されている。具体的には、ハウジング3にはボールねじブラケット3a,3bが形成されており、ボールねじ軸10の両端が、そのボールねじブラケット3a,3bにおいてボールベアリング4,5で回転自在にそれぞれ支承されている。
【0012】
ボールねじ軸10には1対のシールユニット20,20が取り付けられている。すなわち、ハウジング3のボールねじブラケット(図1の左側のブラケット)3aの外側に位置されるようにしてボールねじ軸10の端部に軸端用シールユニット20が取り付けられている。また、ハウジング3のボールねじブラケット(図1の右側のブラケット)3bの内側に径方向孔用シールユニット30が取り付けられている。軸端用シールユニット20及び径方向孔用シールユニット30の構造については後で詳述する。
【0013】
ボールねじナット2は、ボールねじ軸10の外周に取り付けられ、ボールんじ時く10のボール転動溝に対応するボール転動溝を内周面に有する。本実施形態では、2連のボールねじナット2a,2bがボールねじ軸10に取り付けられている。また、不図示のボールが、ボールねじ軸10のボール転動溝とボールねじナット2のボール転動溝との間に転動自在に介装されている。
【0014】
ボールねじナット2には、その上側に移動体6が取り付けられている。移動体6は、コラム、テーブルやサドル等である。
また、ボールねじ軸10で径方向孔用シールユニット30の取り付け側の端部は、ブラケット3bの外周面から突出している。このボールねじ軸10の端部bには、駆動プーリ7が取り付けられている。駆動プーリ7には、ボールねじ軸10を回転駆動するモータ等の駆動手段が取り付けられる。
【0015】
このような構成により、ボールねじは、ボールねじ軸10が回転しつつ、ボールねじ軸10の軸方向にボールねじナット10が相対移動するようになる。
図2は、ボールねじの側面図を示す。図2では、1個のボールねじナット2がボ ールねじ軸に取り付けられている例を示す。
図2に示すように、ボールねじ軸10には、その内部に軸方向孔11及び径方向孔12が形成されている。軸方向孔11は、ボールねじ軸10の軸端面で開口されて回転軸中心に沿って延びる孔として形成されている。
【0016】
図3は、図2のX−X方向のボールねじ軸10の断面図を示す。図3に示すように、径方向孔12は、ボールねじ軸10を径方向で貫通するように形成されている。具体的には、径方向孔12は、直交する2本の貫通孔により形成されている。そして、径方向孔12は、ボールねじ軸10の内部で、2本の貫通孔の公差部位(中心部)が軸方向孔11と連通している。図2に示すように、径方向孔12は、ボールねじ軸10において軸方向孔11の開口部とは反対側となる他方の軸端側寄りに形成されている。
【0017】
図4に示すように、軸方向孔11には、径方向孔12との連通部位に仕切り板13を配置することもできる。仕切り板13は、軸方向孔11の周方向を4分割して区画しつつその各区画室11a,11b,11c,11dを、径方向孔12を形成する4つの孔12a,12b,12c,12dに連通させる形状とされている。
以上のような軸方向孔11及び径方向孔12を軸端用シールユニット20及び径方向孔用シールユニット30によりシールしている。
【0018】
図5は、軸端用シールユニット20の形状を示す。図5に示すように、軸端用シールユニット20には、軸方向の各側面に配管取り付け部21とボールねじ軸端部取り付け部22とが形成されている。
配管取り付け部21は、後述の流入用配管41が取り付け可能な形状とされている。具体的には、配管取り付け部21は、流入用配管41(具体的にはそのニップル)と螺合するように雌ネジ形状とされている。また、ボールねじ軸端部取り付け部22は、ボールねじ軸10の端部が取り付け可能な形状とされている。
【0019】
配管取り付け部21とボールねじ軸端部取り付け部22とは軸端用シールユニット20内で連通している。その連通部の内周面にはシール23が設けられている。シール23は、ボールねじ軸10の端部面外周でシールするように配置されている。
また、軸端用シールユニット20には、ドレイン孔24が外周面からボールねじ軸端部取り付け部22に貫通して形成されている。また、軸端用シールユニット20には、ボールねじ軸10の軸端部にネジ止めするためのネジ用孔25,26が形成されている。
【0020】
図6は、径方向孔用シールユニット30の形状を示す。図6に支援すように、径 方向孔用シールユニット30は軸方向で貫通している。径方向孔用シールユニット30には、その貫通孔内の内周面であって軸方向の各側面側にシール31,32が設けられている。シール31,32は 、ボールねじ軸10の外周面(ねじ面)でシールするように配置されている。例えば、径方向孔用シールユニット30の貫通孔の内周面には、ボールねじ軸10と螺合する溝が形成されている。その螺合する溝にシール31,32が設けられている。このように径方向孔用シールユニット30のの軸方向の貫通孔において、2つのシール31,32の間は空隙部33として形成されている。
【0021】
また、径方向孔用シールユニット30には、軸方向における中間付近で、外周から軸中心(前記空隙部333)に貫通する配管取り付け部34が形成されている。配管取り付け部34は、後述の流出用配管42が取り付け可能な形状とされている。具体的には、配管取り付け部34は、流出用配管42(具体的にはそのニップル)と螺合するように雌ネジ形状とされている。
また、径方向孔用シールユニット30には、ドレイン孔35が外周面から貫通して形成されている。また、径方向孔用シールユニット30には、ブラケット3bに対して固定するためのネジ用孔36が形成されている。
【0022】
図1に示すように、径方向孔用シールユニット30は、ボールねじ軸10の外周に取り付けられている。このように取り付けられた状態で、径方向孔用シールユニット30の軸方向の中間部位(空隙部33の形成部位)には径方向孔12が位置される。そして、この状態を維持するように、径方向孔用シールユニット30はブラケット3bに対して固定されている。
以上のように構成されるボールねじに、図1に示すように、冷却液槽43が接続されている。
【0023】
具体的には、軸端用シールユニット20の配管取り付け部21には流入用配管41の一端(具体的にはそのニップル)が取り付けられている。また、径方向孔用シールユニット30の配管取り付け部34には流出用配管42の一端(具体的にはそのニップル)が取り付けられている。そして、流入用配管41及び流出用配管42それぞれの他端に冷却液槽(タンク)43が接続されている。すなわち、冷却液槽43を介して軸端用シールユニット20と径方向孔用シールユニット30とが連通している。これにより、冷却液相43、流入用配管41、軸方向孔41、径方向孔12及び流出用配管42が連結されて、冷却水が循環可能な流路が形成されている。
ここで、冷却液槽43は、ボールねじ、より詳しくは軸方向孔11及び径方向孔12よりも高い位置に配置されている。また、配管41,42は、例えば金属管やゴムチューブなどである。
【0024】
(動作及び作用)
冷却液槽43から液体として冷却水をボーねじ軸10に供給して軸方向孔11及び径方向孔12に冷却水を満たした状態でボールねじ軸10を回転させると、ボールねじ軸10(特に径方向孔12)内の冷却水に遠心力が作用する。これにより、冷却水が径方向孔12から排出されて流出用配管42を介して冷却液槽43に戻されるようになる。このとき、径方向孔用シールユニット30ないでは、径方向孔12から流出した冷却水が、空隙部33を介して配管取り付け部34から流出用配管42に流出する。
【0025】
そして、そのように戻された量の冷却水が、冷却液槽43から流入用配管41を介して軸方向孔11及び径方向孔12」に流れ込むようになる。
これにより、冷却液槽43、流入用配管41、軸方向孔11、径方向孔12及び流出用配管42で形成される流路を冷却水が循環するようになる。この結果、ボールねじ軸10を回転させるだけで、ボールねじ軸10が冷却水により冷却されるようになる。例えば、循環させる冷却水の体積は、ボールねじ軸10の体積の3倍以上にすることが好ましい。
以上のように、ボールねじ軸10を回転させるだけで、ボールねじ軸10自体が冷却水を循環させるポンプの役割を果たすようになる。
【0026】
(第1の実施形態の効果)
前述のように、ボールねじ軸10を回転させるだけで、ボールねじ軸10自体が冷却水を循環させるポンプの役割を果たすようになる。
これにより、ボールねじを冷却水で冷却できる。この結果、このボールねじを、ボールねじの発熱による軸の伸びを嫌う工作機械や、ボールねじの長寿命が求められる射出成形機に適用することで、それら機械の精度を向上させることができる。
【0027】
また、ボールねじ軸10自体が冷却水を循環させるポンプの役割を果すため、強制冷却装置や循環ユニットを持たずにボールねじを自ら冷却できる。この結果、安価で、装置や電力、設置場所が少なくて済むボールねじを提供できるようになる。
また、ボールねじ軸10も回転時(発熱時)のみ冷却水が循環するため、ボールねじが過冷却になってしまうことも防止できる。すなわち、ボールねじ軸10の回転による発熱だけを適切に除去できる。
【0028】
また、冷却水以外の流体を冷却用液体として用いることも可能ではある。しかし、ポンプを使用していないことから、ボールねじ軸10の錆にのみ注意すれば、熱容量が大きい流体を冷却用流体として用いることもできる。
また、冷却水は、冷却液槽43、流入用配管41、軸方向孔11、径方向孔12及び流出用配管42で形成される流路を循環されているだけであり、循環経路中で特に強制的に冷却水が冷却されているわけでもない。しかし、冷却水は、ボールねじ軸10に対して体積が大きく、熱容量が大きいため、そのような冷却水を用いることで、ボールねじ軸10の急激な温度上昇を効果的に防水できる。これは、ボールねじ軸10の大きさには変化はないが、ボールねじ軸10自体の熱容量が大きくしたことと等価である。
【0029】
また、冷却液槽43に貯蔵する冷却水の量(例えば冷却液槽43が貯蔵可能な容量)を調整することで、ボールねじ軸10の温度上昇を過不足なく適切に防止できる。
また、当然、温度管理を冷却装置で行っても良く、冷却水の昇温を、ボールねじ軸10外で効率良く行っても良い。
また、図4のような仕切り板13を設けることで、ボールねじ軸10の回転に伴い冷却水が回転し易くなるため、冷却水に確実に遠心力を発生させることができるようになる。この結果、効率良く冷却水を吐き出させて循環させることができ、冷却効率を高めることができる。
【0030】
すなわち、図3のように仕切り板13を設けていない構造とした場合でも、軸方向孔11内で冷却水がボールねじ軸10と一緒に回転すれば、冷却水には遠心力が作用するようになる。しかし、冷却水の粘性等が影響して冷却水と軸方向孔11の内周面との間で滑りが生じるような場合には、冷却水に遠心力が作用し難くなる。これに対して、仕切り板13を設けることで、ボールねじ軸10とともに冷却水を回転し易くして、冷却水に確実に遠心力を発生させることができる。
【0031】
なお、この実施形態では、丸棒形状のボールねじ軸と前記ボールねじ軸の外周面に螺合するボールねじナットとを備えるボールねじ装置を実現する。また、軸方向孔11及び径方向孔12は、前記ボールねじ軸の内部を貫通して形成され、冷却用流体を流動させるボールねじ軸内流路孔を実現する。また、軸方向孔11は、冷却用流体が流入する部位とされて流入配管に連通され、前記ボールねじ軸の回転中心に配置されるボールねじ軸内流路孔の一端部を実現する。また、径方向孔12は、冷却用流体が流出する部位とされて流出用配管に連通され、前記ボールねじ軸の回転中心から径方向にずれて配置されるボールねじ軸内流路孔の他端部を実現する。
【0032】
(第2の実施形態)
(構成)
第2の実施形態では、ボールねじ軸10からの冷却水の排出効率を高めるような構成になっている。
図7に示すように、第2の実施形態では、ボールねじ軸10における径方向孔12が形成されている部位14を周方向に拡大させている。具体的には、その部位14をフランジ形状にしている。これにより、径方向孔12の径方向距離を長くしている。又は、径方向孔12をボールねじ軸10の外周面から突出した位置に配置している。
また、この場合、径方向孔用シールユニット30の形状も変更する。すなわち、例えば、径方向孔用シールユニット30の空隙部33も径方向に拡大する。
【0033】
(動作及び作用)
冷却液槽43から冷却水をボールねじ軸10に供給して軸方向孔11及び径方向孔12に冷却水を満たした状態でボールねじ軸10を回転させると、冷却液槽43、流入用配管41、軸方向孔11、径方向孔12及び流出用配管42で形成される流路を冷却水が循環するようになる。このように、ボールねじ軸10を回転させるだけで、ボールねじ軸10自体が冷却水を循環させるポンプの役割を果すようになる。
【0034】
(第2の実施形態の効果)
第2の実施形態でも、前記第1の実施形態と同様に、ボールねじ軸10を回転させるだけで、ボールねじ軸10自体が冷却水を循環させるポンプの役割を果すようになる。
そして、第2の実施形態では、径方向孔12の径方向距離を長くすることで、ボールねじ軸10の回転時に径方向孔12で延長された部位の周速(回転角度)を大きくしている。これにより、冷却水に作用する遠心力を大きくすることができる。この結果、ボールねじ軸10からの冷却水の排出効率を高めることができ、効率良く冷却水を循環させることができる。
【0035】
(第2の実施形態の変形例)
この第2の実施形態では、ボールねじ軸10と一体として径方向に拡大している。これに対して、径方向の拡大部を個別の部品として設けることもできる。図8及び図9は、径方向の拡大部を排出ユニット50として設けたボールねじの構成を示す。図8は、ボールねじの側面図を示す。図9は、図8のY−Y方向の断面図を示す。
図8及び図9に示すように、ボールねじ軸10には、径方向孔12が形成されている部位の外周面に排出ユニッット50が取り付けられている。
【0036】
排出ユニット50は、中空のフランジ形状に形成されている。排出ユニット50の内部には、周方向を4分割して区画し、4つの区画室51a,51b,51c,51dが形 成されるように仕切り板53が設けられている。この排出ユニット50の周壁には、各区画室51a,51b,51c,51dに貫通するように排出孔52a,52b,52c,52dが形成されている。この排出ユニット50は、ボールねじ軸10と一体となって回転する。
また、このように排出ユニット50を備えることに対応して、径方向孔用シールユニット30の形状も変更する。すなわち、例えば、径方向孔用シールユニット30の空隙部33も、排出ユニット50の外形に合致させて径方向に拡大する。
【0037】
(第3の実施形態)
(構成)
第3の実施形態では、ボールねじ軸10が片持ちの場合に対応した構成になっている。
図10は、第3の実施形態のボールねじ軸10の構成を示す。
図10に示すように、ボールねじ軸10には、流体循環ユニット60が取り付けられている。流体循環ユニット60は、ボールねじ軸10の軸方向孔11に対する冷却水の流入及び流出が可能な形状とされている。この流体循環ユニット60は、流入用配管41からの冷却水を軸方向孔11に送り込む流入部70と、ボールねじ軸10の軸端面に取り付けられて軸方向孔11内の冷却水を排出する排出部80とで構成されている。
【0038】
排出部80は、中空でフランジ形状に形成されている。排出部80には、ボールねじ軸10の軸端面側の側壁にボールねじ軸連結孔81が形成されている。ボールねじ軸連結孔81は、ボールねじ軸10の軸方向孔11と連通するように該軸方向孔11と同径に形成されている。そして、ボールねじ軸連結孔81が形成される排出部80の側壁(ボールねじ軸連結孔81外周)には、シール82が設けられている。これにより、該側壁とボールねじ軸10の軸端面との間からの冷却水の漏れが防止される。
また、排出部80の外周面には、流出用孔84が形成されている。本実施形態では、流出用孔84が複数形成されている。
【0039】
流入部70は、細いパイプ形状をなしている。流入部70は、ボールねじ軸10の軸方向孔11内に挿通されつつ、その一端部70aが排出部80のボールねじ軸連結孔81内に挿通されている。そして、その一端部70aが、ボールねじ軸連結孔81が形成されている側壁と対向する側壁に接続されている。一方、側壁において、流入部70の一端部70aが接続される部位には、外方より流入用配管41が接続されている。これにより、流入部70の孔70bと流入用配管41とが連通される。そのため、排出部80の側壁には、流入用配管41の接続部位にシール83が設けられている。これにより、流入部70の孔70bと流入用配管41との間からの冷却水の漏れが防止される。
【0040】
また、流入部70は、その他端部70cがボールねじ軸10の軸方向孔11の閉塞端部側近傍まで延びている。この第3の実施形態では、第1及び第2の実施形態のような径方向孔12を設けていない。そのため、ボールねじ軸10には、軸方向に延びる軸方向孔11のみが形成されている。第3の実施形態では、このような軸方向孔11の内周面と流入部70の外周面との間に隙間15が形成され、その隙間15を介して流入部70の孔70bと排出部80の内部85とが連通されるようになる。
以上のような構成からなる流体循環ユニット60は、ボールねじ軸10に湖底される。これにより、流体循環ユニット60は、ボールねじ軸10と一体に回転する。
【0041】
そして、このような流体循環ユニット60を備えることで、冷却液槽53、流入用配管51、流入部70の孔70b、流入部70の外周面と軸方向孔11の内周面との間の隙間15、排出部80の内部85、流出用配管42により冷却水が循環する流路が形成されている。
なお、図示しないが、流出用孔84から流出される冷却水を流出用配管42に漏れなく戻すためのシールユニットを備えている。すなわち、ボールねじ軸10と一体に回転する流体循環ユニット60の排出部80の外周面(流出用孔84)と流出用配管42との漏れを防止可能な構造のシールユニットを備えている。
【0042】
(動作及び作用)
冷却液槽53からボールねじ軸10に冷却水を供給してボールねじ軸10を回転させると、冷却液槽53、流入用配管51、流入部70の孔70b、流入部70の外周面と軸方向孔11の内周面との間の隙間15、排出部80の内部85及び流出用配管42で形成れる流路を冷却水が循環するようになる。このように、ボールねじ軸10を回転させるだけで、ボールねじ軸10自体が冷却水を循環させるポンプの役割を果すようになる。
【0043】
(第3の実施形態の効果)
第3の実施形態でも、前記第1及び第2の実施形態と同様に、ボールねじ軸10を回転させるだけで、ボールねじ軸10自体が冷却水を循環させるポンプの役割を果すようになる。
そして、第3の実施形態でも、前記第2の実施形態と同様に、径方向に延びた形状の排出部80を設けることで、ボールねじ軸10の回転時に排出部80の周速(回転角速度)を大きくすることができる。これにより、冷却水に作用する遠心力を大きくできる。この結果、ボールねじ軸10からの冷却水の排出効率を高めることができ、効率良く冷却水を循環させることができる。
さらに、第3の実施形態では、ボールねじ軸10が片持ちの場合でも、流路を形成して、冷却水を循環させ、ボールねじ軸10を冷却することができる。
【符号の説明】
【0044】
2 ボールねじナット、10 ボールねじ軸、11 軸方向孔、12 径方向孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸棒形状のボールねじ軸の外周面とボールねじナットの内周面との間に複数のボールを介在させ、前記ボールねじ軸を回転させて、前記ボールねじ軸の軸方向にボールねじナットを相対移動させるボールねじ装置において、
前記ボールねじ軸の内部を貫通して形成され、冷却用流体を流動させるボールねじ軸内流路孔を備え、
前記ボールねじ軸内流路孔は、一端部が冷却用流体が流入する部位とされて流入配管に連通され、他端部が冷却用流体が流出する部位とされて流出用配管に連通され、
前記一端部は、前記ボールねじ軸の回転中心に配置され、前記他端部は、前記ボールねじ軸の回転中心から径方向にずれて配置され、前記ボールねじ軸を回転させるだけで、前記ボールねじ軸自体が前記冷却用流体を循環させるポンプの役割を果すことを特徴とするボールねじ装置。
【請求項2】
丸棒形状のボールねじ軸の外周面とボールねじナットの内周面との間に複数のボールを介在させ、前記ボールねじ軸を回転させて、前記ボールねじ軸の軸方向にボールねじナットを相対移動させるボールねじ装置において、
前記ボールねじ軸の内部を貫通して形成され、冷却用流体を流動させるボールねじ軸内流路孔を備え、
前記ボールねじ軸内流路孔は、一端部が冷却用流体が流入する部位とされて流入配管に連通され、他端部が冷却用流体が流出する部位とされて流出用配管に連通され、
前記一端部は、前記ボールねじ軸の回転中心に配置され、前記他端部は、前記ボールねじ軸の回転中心から径方向にずれて配置され、
前記ボールねじ軸内流路孔内には、前記他端部内の冷却用流体に作用する遠心力を増加させる遠心力増加手段を備え、
前記ボールねじ軸内流路孔は、前記ボールねじ軸内流路孔の回転軸方向に延びた軸方向孔を有し、前記ボールねじ軸内流路孔の他端部は、前記ボールねじ軸の回転中心に向かって径方向に延びて前記軸方向孔と連結する複数の径方向孔であり、
前記遠心力増加手段は、前記軸方向孔で前記他端部との連結部に設けられ、前記軸方向孔の連結部の周方向を複数分割して区画しつつその各区画室を複数の径方向孔のそれぞれに連通させる仕切り板であることを特徴とするボールねじ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−7493(P2013−7493A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−226279(P2012−226279)
【出願日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【分割の表示】特願2009−34562(P2009−34562)の分割
【原出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】