説明

ボールバルブのキャビティ乾燥システム及び方法

【課題】ボールバルブにおけるボール弁体の外周面とバルブ本体の内周面との間に形成されたキャビティ内をより効率的に乾燥させる。
【解決手段】バルブ本体61の流路内に回転自在に装着された貫通孔63を有するボール弁体64と、ボール弁体64に対して流路62の軸線方向両側から圧接される一対のシール機構65によりボール弁体64の外周面とバルブ本体61の内周面との間に設けられたキャビティ3とを備えるボールバルブ2を乾燥させる際に、キャビティ3と流路62とを遮断した状態で、当該キャビティ3内が大気圧未満となるようにガスを吸引する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールバルブにおけるボール弁体の外周面とバルブ本体の内周面との間に形成されたキャビティ内を乾燥させる上で好適なボールバルブのキャビティ乾燥システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷温水や空気、ガス等の配管のバルブ本体に装着されて流体の流れを開閉又は制御するためのボールバルブが広く用いられている。このボールバルブは、円筒状のバルブ本体と、該バルブ本体内に配置され、バルブ本体内の流路を開閉するためのボール状のボール弁体と、該ボール弁体にそのバルブ本体の軸線方向両側から圧接する一対の環状のシール機構とを備えている。このボール弁体は、バルブ本体の内径とほぼ等しい外径を有し、バルブ本体の軸線に直交する直交線の周りに回転可能に設けられている。ボール弁体には、貫通孔が形成されており、かかる貫通孔がバルブ本体の流路の軸線方向となるようにボール弁体を回転させることにより、バルブ本体内の流路を開くことができ、流体を通過させることが可能となる。また、ボール弁体の貫通孔がバルブ本体の流路の軸線方向と直交するようにボール弁体を回転させることにより、バルブ本体内の流路を閉めることができ、流体の通過を抑えることが可能となる(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0003】
また、ボール弁体の外周面には、上述したシール機構が常時圧接するようになっており、ボール弁体がシート部材に圧接した状態で回転できるようになっている。これにより、ボールバルブは、かかるシール機構によってボール弁体とバルブ本体との間のシール性を確保することができる。また、一対のシール機構を介してボール弁体の外周面とバルブ本体の内周面との間にはキャビティが設けられている。このキャビティも上述したシール機構によってシール性が確保されることから気密性を有するものとされている。
【0004】
ところで、このようなボールバルブでは、一般的にガス等の流体を通過させる前や、メンテナンス等を行う際には、ボールバルブ内を乾燥させて内部の湿気を抜くための処理を行う必要がある。この除湿処理時には、−45℃程度の露点温度となるまで乾燥させることが必要な場合もある。かかる場合に、窒素やアルゴン等の不活性ガスをボールバルブ内に吹き付けることにより、ボールバルブに付着した水分等を効果的に除去することが可能となる。
【0005】
しかしながら、上述したキャビティは、バルブ本体の流路とは遮断された密閉空間であることから、水分が溜まりやすい傾向がある。ボールバルブを半開状態にした場合には、このキャビティ内の高い湿気が流路内に拡散する結果、流路の湿度が上昇し、ひいては露点温度が上昇してしまうことになる。
【0006】
このため、このキャビティ内の湿気を充分に除去する必要があった。キャビティ内の湿気除去のためには、図5に示すようにボールバルブ7を半開状態にした上で、流路74中に不活性ガスを流すことにより乾燥させることになる。この半開状態では、ボール弁体71における貫通孔72をバルブ本体73の流路74の軸方向Pに対して傾斜させる。その結果、上下に設けられたキャビティ75が貫通孔72と連結することとなり、キャビティ75と流路74との遮断状態を解除することが可能となる。かかる半開状態で流路74に不活性ガスを流すことにより、キャビティ75に蓄積した湿気を取り除くことが可能となる。
【0007】
しかしながら、上述のような半開状態にする場合には、ボール弁体71を軸方向Pに対して傾斜させる作業を行うこととなり、このときにシール機構78にボール弁体71が接触し、或いは擦れるため、シール機構78のシート面に疵を付けてしまう虞があった。仮にシール機構78に疵が付いてしまった場合には、半開状態から元の遮断状態に戻した場合に、当該疵から湿気やガスが漏れてしまい、却ってボールバルブ7の機能を劣化させ、キャビティ75の密閉性の低下の原因にもなる。また半開状態を長時間に亘り保持しつつ大量の窒素ガスを流す必要があることから、シール機構78自体が劣化してしまう虞があった。
【0008】
更に、上述した従来の乾燥方法によれば、半開状態に保持した上で不活性ガスを長時間に亘り大量に流路74へ流す必要がある。このため、ボールバルブ7の除湿処理のために使用する不活性ガスの使用量が膨大なものとなり、ひいてはボールバルブ7の除湿処理を行う上でコストが増大してしまうという問題点があった。
【0009】
なお、従来においては、キャビティ75内の乾燥効率を向上させる観点から、いわゆるパックアンドブロー工法による乾燥方法が用いられている。このパックアンドブロー工法では、ボールバルブ7を半開状態にして、キャビティ75に対する不活性ガスの封入と排気を一度実行するだけでは足りず、かかる不活性ガスの封入と排気を何度も繰り返し実行する必要がある。このため、ボールバルブ7を半開状態にし、その後にキャビティ75と流路74とを遮断状態にする動作を繰り返し実行するため、かかる動作の都度、シール機構78とボール弁体71とが擦れることになり、シール機構78の劣化の原因にもなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平08−303614号公報
【特許文献2】特開2008−169954号公報
【特許文献3】特開2004−257399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
因みに特許文献3の開示技術では、シール機構の信頼性を長時間に亘り確実に機能させる観点から、キャビティ内に不活性ガスを注入することによりキャビティ内の気体圧力を調整する技術が開示されている。しかしながら、当該開示技術では、あくまでシール機構の劣化を調査し、シール機能の信頼性を向上させる点に重きをおいた技術であり、ボールバルブ内を乾燥させて内部の湿気を抜く除湿処理を念頭においたものではない。また、単にキャビティ内に不活性ガスを注入するのみでは内部をより効率的に乾燥させることができないという問題点もあった。
【0012】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、ボールバルブにおけるボール弁体の外周面とバルブ本体の内周面との間に形成されたキャビティ内をより効率的に乾燥させることが可能なボールバルブのキャビティ乾燥システム及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上述した課題を解決するために、ボールバルブにおけるボール弁体の外周面と上記バルブ本体の内周面との間に設けられたキャビティと、バルブ本体の流路とを遮断した状態で、当該キャビティ内が大気圧未満となるようにガスを吸引するボールバルブのキャビティ乾燥システムを発明した。
【0014】
第1の発明は、バルブ本体の流路内に回転自在に装着された貫通孔を有するボール弁体と、上記ボール弁体に対して上記流路の軸線方向両側から圧接される一対のシール機構により上記ボール弁体の外周面と上記バルブ本体の内周面との間に設けられたキャビティとを備えるのキャビティ乾燥システムにおいて、上記キャビティと上記流路とを遮断した状態で、当該キャビティ内が大気圧未満となるようにガスを吸引するガス吸引手段を備えることを特徴とする。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、上記ガス吸引手段は、上記キャビティ内が−0.08〜−0.06MPaとなるまでガスを吸引することを特徴とする。
【0016】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記ガス吸引手段によりガスが吸引された上記キャビティに対して不活性ガスを封入するガス封入手段を更に備えることを特徴とする。
【0017】
第4の発明は、第3の発明において、上記ガス吸引手段は、上記ガス封入手段により上記キャビティ内に封入された上記不活性ガスを、所定時間経過後に吸引し、上記ガス封入手段による上記不活性ガスの封入、上記ガス吸引手段によるガスの吸引を繰り返し実行することを特徴とする。
【0018】
第5の発明は、第3又は第4の発明において、予め決められたタイミングに基づいて、上記ガス吸引手段によるガスの吸引開始並びに吸引停止を自動的に制御するガス吸引制御手段と、予め決められたタイミングに基づいて、上記ガス封入手段による上記不活性ガスの封入開始並びに封入停止を自動的に制御するガス封入制御手段とを更に備えることを特徴とする。
【0019】
第6の発明は、バルブ本体の流路内に回転自在に装着された貫通孔を有するボール弁体と、上記ボール弁体に対して上記流路の軸線方向両側から圧接される一対のシール機構により上記ボール弁体の外周面と上記バルブ本体の内周面との間に設けられたキャビティとを備えるボールバルブのキャビティ乾燥方法において、上記キャビティと上記流路とを遮断した状態で、当該キャビティ内が大気圧未満となるようにガスを吸引するガス吸引ステップを有することを特徴とする。
【0020】
第7の発明は、第6の発明において、上記ガス吸引ステップでは、上記キャビティ内が−0.08〜−0.06MPaとなるまでガスを吸引することを特徴とする。
【0021】
第8の発明は、第6又は第7の発明において、上記ガス吸引ステップにおいてガスが吸引された上記キャビティに対して不活性ガスを封入するガス封入ステップを更に有することを特徴とする。
【0022】
第9の発明は、第8の発明において、上記ガス吸引ステップでは、上記ガス封入ステップにおいて上記キャビティ内に封入された上記不活性ガスを、所定時間経過後に吸引し、更に上記ガス封入ステップ、上記ガス吸引ステップとを繰り返し実行することを特徴とする。
【0023】
第10の発明は、第8又は第9の発明において、上記ガス吸引ステップでは、予め決められた発信されたタイミングに基づいて、ガスの吸引開始並びに吸引停止を自動的に制御し、上記ガス封入ステップでは、予め決められたタイミングに基づいて、上記不活性ガスの封入開始並びに封入停止を自動的に制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
上述した構成からなる本発明によれば、パックアンドブロー工法において、キャビティをより効率的に乾燥させることが可能となり、また窒素ガスの使用量をより低く抑えることが可能となり、ボールバルブの除湿処理を行う上でコストをより低減させることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明を適用した乾燥システムの構成図である。
【図2】ボールバルブの詳細な構成を示す図である。
【図3】ボールバルブの他の詳細な構成を示す図である。
【図4】本発明を適用した乾燥システムによる処理手順を示すフローチャートである。
【図5】従来技術の問題点について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態についてボールバルブのキャビティ乾燥システムについて、図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0027】
図1は、本発明を適用した乾燥システム1の構成を示している。この乾燥システム1は、ボールバルブ2におけるキャビティ3を乾燥させるためのシステムである。乾燥システム1は、図1に示すように、ボールバルブ2におけるキャビティ3に管11が連結され、この管11は、途中で第1の枝管12と、第2の枝間13とに分岐される構成とされている。管11には、第1の電磁弁21が中間に取り付けられ、管11内の流路が開閉自在とされている。管11の端部には、真空ポンプ31と、当該真空ポンプ31により管11、ひいてはキャビティ3内の圧力を計測するための負圧計32とが取り付けられている。第1の枝管12の中間には、バルブ41が取り付けられて第1の枝管12自体が開閉自在とされてなるとともに、その端部には、露点計42が設けられている。また第2の枝管13の中間には、第2の電磁弁51が中間に取り付けられ、第2の枝管13内の流路が開閉自在とされている。第2の枝管13の端部には、窒素ボンベ52が設けられている。
【0028】
更に、この第1の電磁弁21には、タイマー付きの継電器22が接続され、第2の電磁弁51には、タイマー付きの継電器55が接続されている。そして、これら継電器22、55には、電源56が接続されている。
【0029】
図2は、ボールバルブ2の詳細な構成を示している。このボールバルブ2は、バルブ本体61の流路62内に回転自在に装着された貫通孔63を有するボール弁体64と、ボール弁体64に対して流路62の軸線A方向両側から圧接される一対のシール機構65とを備えており、当該ボール弁体64には、ステム66の下端が係合されている。ステム66の周囲には更にシール部材69が当接するように設けられている。
【0030】
また、ボール弁体64の外周面とバルブ本体61の内周面との間には、シール機構65を介してキャビティ3が設けられている。即ち、このボール弁体64の外周面には、シール機構65が常時圧接するようになっており、ステム66を回転させることによりボール弁体64がシート部材に圧接した状態で回転できるようになっている。これにより、ボールバルブ2は、かかるシール機構65によってボール弁体64とバルブ本体61との間のシール性を確保することができ、ひいてはキャビティ3自体の気密性をも確保することが可能となる。その結果、キャビティ3内に流体が混入したり、或いはキャビティ3内の湿気や不純物が流路62内に混合するのを防止することが可能となる。また、ステム66を回転させることにより、図2に示すような開弁状態から、図3に示すような閉弁状態へと移行させることが可能となる。開弁状態は、貫通孔63の方向が軸線A方向とほぼ一致している場合である。これに対して、閉弁状態は、貫通孔63の方向が軸線A方向に対して直交する場合を意味している。なお、このキャビティ3には、貫通孔68が形成されている。そして、この貫通孔68の一端はキャビティ3内に連絡するものであり、他端は、管11に接続されている。
【0031】
管11は、例えば鋼管、ゴム管等のような、少なくとも気体を流すことが可能な管体である。この管11の一端は上述したように貫通孔68に連結されており、貫通孔68は、上述したようにキャビティ3へと繋がるものであることから、この管11は、キャビティ3へ直接つながっているものと考えることができる。このため、管11を通じてキャビティ3内に気体を直接導入することができ、また管11を通じてキャビティ3内の気体を吸引することが可能となる。管11は、第1の枝管12、第2の枝管13へと分岐するが、これら枝管12、13と間11の接続は、例えば金属製の分岐管を介して行うようにしてもよい。
【0032】
第1の枝管12も同様に例えば鋼管、ゴム管等のような、少なくとも気体を流すことが可能な管体で構成される。この第1の枝管12の中間に設けられたバルブ41は、第1の枝管12の管路を開閉自在にするための、ボールバルブ、グローブバルブ、ゲートバルブ等であり、作業員が手動によりこれを開閉させることが可能である。なお、このバルブ41としては、例えば電磁弁等に代替させてもよく、自動的に開閉させる構成としてもよい。なお、露点計42により頻繁にキャビティ3内の露点を計測する場合には、このバルブ41を常時開放するようにしてもよく、またこのバルブ41の構成を省略するようにしてもよい。第1の枝管12の末端に取り付けられた露点計42は、露点温度を測定することにより、湿度を求めるものであって、例えば静電容量の変化からかかる露点温度を求める。
【0033】
管11に取り付けられている負圧計32は、管11内、ひいてはこれに直接的につながっているキャビティ3内における、現時点の吸気圧力を測定する計器である。管11の端部に取り付けられている真空ポンプ31は、管11内の気圧を大気圧未満、ひいては真空状態となるまで管11内の気体を吸引し、これを排気する。管11の一端は、キャビティ3内へと続いていることから、真空ポンプ31により管11内の気体を吸引することによりキャビティ3内の気圧を大気圧未満、ひいては真空状態とすることが可能となる。
【0034】
第1の電磁弁21、並びに第2の電磁弁51は、例えば電磁石の磁力を用いてプランジャを動作させることにより弁を開閉させる構成となっている。第1の電磁弁21、並びに第2の電磁弁51は、外部から電気信号を受信した場合に開放状態となり、外部からの電気信号の送信が停止した場合に管路を閉塞する構成とされているが、電気信号のON/OFFと、弁の開閉状態とは、これと逆になっていてもよい。この第1の電磁弁21を開くことにより、真空ポンプ31によるキャビティ3の吸引動作を実現することができ、第2の電磁弁51を開くことにより、窒素ボンベ52からキャビティ3に窒素ガスを供給することが可能となる。
【0035】
継電器22、55は、接点を物理的に動作させることにより、電磁弁21、51への電流の供給を制御する。この継電器22、55には、タイマーが付加されているものであってもよい。各タイマーには、それぞれタイミングが予め設定されている。継電器22、55は、この予め設定されたタイミングが到来した場合に、接点を物理的に動作させ、電磁弁21、51への電流の供給を開始し、或いは停止させることになる。即ち、この継電器22、55は、予め決められたタイミングに基づいて電流のON/OFFを切り替えることが可能となる。なお、この継電器22、55のタイミングは予め自由に設定することもできるが、少なくとも継電器22がON状態である場合には、継電器55がOFF状態になっていることが必要であり、継電器55がON状態である場合には、継電器22がOFF状態になっていることが必要である。
【0036】
窒素ボンベ52は、窒素ガスが内部に充填されている。この窒素ボンベ52は、バルブが設けられているが、かかるバルブは常時開放させておき、窒素ガスの供給制御は、あくまで継電器55による制御の下で第2の電磁弁51のON/OFFを介して行うようにしてもよい。ちなみに、供給するガスとしては、窒素に限定されるものではなく、アルゴンガスを用いてもよいが、かかる場合には、この窒素ボンベ52の代替としてアルゴンボンベを用いることになる。また、窒素ガス、アルゴンガス以外でも、不活性ガスであればいかなるガスを用いてもよい。
【0037】
次に、本発明を適用した乾燥システム1の動作について、図4のフローチャートを用いて詳細に説明をする。
【0038】
乾燥システム1による動作開始時には、少なくとも図2、3に示すように、キャビティ3と流路62とが遮断されている状態となっていることが必要である。かかる状態の下で、先ずステップS11において、露点計42によりキャビティ3内の初期露点を計測する。ステップS11において測定する初期露点は、実際に乾燥処理を行う前におけるキャビティ3内の湿度状況を識別するために行うものであり、後述するステップS15において露点を測定する上での基準となるものである。露点計42による初期露点の測定を終了した後、ステップS12へと移行する。
【0039】
ステップS12では、真空ポンプ31によりキャビティ3内が大気圧未満となるようにガスを吸引する。このステップS12においては、キャビティ3内が少なくとも大気圧未満となるまで吸引すればよいが、望ましくは真空となるまで吸引することが望ましい。ここでいう真空のレベルは、低真空から超高真空までいかなる真空レベルであってもよいが、本発明を実施する上では、キャビティ3内が−0.08〜−0.06MPaとなるまでガスを吸引するようにしてもよい。このステップS12では、第1の電磁弁21を開放するように制御するとともに、第2の電磁弁51を閉めることにより、キャビティ3内のガスを真空ポンプ31により吸引させることができる。このステップS12を終了する場合には、第1の電磁弁21を閉める。ちなみに、真空ポンプ31による吸引後、キャビティ3内の低圧状態をある程度保持するようにしてもよい。この保持時間は、真空ポンプ31による吸引能力、期待しているキャビティ3内の圧力等に応じて予め決められている。本発明を適用した乾燥システム1では、このステップS12における真空ポンプ31による吸引から、上述した低圧状態の保持終了までの時間は、例えば5〜12分程度で行うようにしてもよい。
【0040】
ステップS13では、ガスが吸引された後のキャビティ3に対して窒素ガスを封入する。このときの窒素ガスが封入されたキャビティ3の圧力は、例えば0.1〜0.3MPa程度とされていてもよい。このステップS13では、第1の電磁弁21を閉めた状態となるように制御するとともに、第2の電磁弁51を開放することにより、キャビティ3内に窒素ガスを充填させる。このステップS13を終了する場合には、第2の電磁弁51を閉める。ちなみに、窒素ボンベ52によりキャビティ3内に窒素ガスを充填させた後、その状態でしばらく保持をしてもよい。この充填保持時間は、窒素ボンベ52における単位時間の送気量、キャビティ3の容積等に応じて予め決められていてもよい。本発明を適用した乾燥システム1では、このステップS13における窒素ガスの封入から充填保持終了までの時間は、例えば5〜12分程度で行うようにしてもよい。
【0041】
次にステップS14へ移行し、上述したステップS12、S13の処理を所定回数繰り返したか否か判別する。そして所定回数繰り返していない場合にはステップS12に戻り、上述した処理を実行し、所定回数繰り返した場合には、ステップS15へと移行する。ここでいう所定回数は、0回以上であれば自由に決められるものである。所定回数が0回の意味するところは、ステップS12、S13の処理を一度だけ行った後、そのままステップS15へ移行する場合である。
【0042】
ちなみに、このステップS12、13の処理は、1回以上繰り返すことが望ましい。ステップS12、S13の処理を一度だけ行った後、そのままステップS15へ移行する場合には、キャビティ3内に湿気が残存している可能性が高いことから、これらの処理を複数回に亘って行うことにより、キャビティ3内の湿気を徐々に取り除くことができ、ひいてはキャビティ3内の低湿度化をより効果的に実現することが可能となる。
【0043】
ステップS15へ移行した場合には、露点計42によりキャビティ3内の露点を測定する。このステップS15による露点の測定は、上述した処理を通じてキャビティ3内の湿度が所望レベルまで低減できているか否かを確認するために行うものである。ステップS15における露点測定の結果、キャビティ3内の湿度が所望レベルまで達していない場合には、再びステップS12、13の処理を行うようにしてもよい。
【0044】
このように本発明によれば、キャビティ3と流路62とを遮断した状態で、キャビティ3内が大気圧未満となるようにガスを吸引し、先ずキャビティ3内を低圧化させることにより、キャビティ3内に残存している水分を飛ばすことができ、キャビティ3内の湿度をある程度低減させることが可能となる。そして本発明では、ガスが吸引されたキャビティ3内に対して窒素ガスを封入する。この窒素ガスのキャビティ3内の封入を通じて、当該キャビティ3内の水分を更に除去することが可能となる。特にその前段階においてキャビティ3内を低圧化させていることにより、この窒素ガスを封入することよる水分除去効果をより相乗的に向上させることが可能となる。
【0045】
このため、本発明によれば、パックアンドブロー工法において、キャビティ3をより効率的に乾燥させることが可能となる。
【0046】
また、本発明では、窒素ガスを流しつづける従来の乾燥方法と比較して、窒素ガスの使用量をより低く抑えることが可能となり、ボールバルブ2の除湿処理を行う上でコストをより低減させることも可能となる。
【0047】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。上述した継電器22、55による制御の下、電磁弁21、51を介してキャビティ3からのガスの吸引、キャビティ3への窒素ガスの封入を自動的に行う場合のみならず、これを手動により行うようにしてもよい。
【0048】
更に本発明によれば、上述したステップS12とステップS13の双方を行うことは必須ではなく、ステップS13の工程を省略するようにしてもよい。かかる場合には、第2の枝管13、継電器55、電磁弁51、窒素ボンベ52の構成を省略することになる。ステップS13の工程を省略して、キャビティ3内の低圧化処理のみ行う場合であっても、かかるキャビティ3内の湿度を低減させることが可能となる。
【符号の説明】
【0049】
1 乾燥システム
2 ボールバルブ
3 キャビティ
11 管
12 第1の枝管
13 第2の枝間
21 第1の電磁弁
22、55 継電器
31 真空ポンプ
32 負圧計
41 バルブ
42 露点計
51 第2の電磁弁
52 窒素ボンベ
56 電源
61 バルブ本体
62 流路
63 貫通孔
64 ボール弁体
65 シール機構
66 ステム
68 貫通孔
69 シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブ本体の流路内に回転自在に装着された貫通孔を有するボール弁体と、上記ボール弁体に対して上記流路の軸線方向両側から圧接される一対のシール機構により上記ボール弁体の外周面と上記バルブ本体の内周面との間に設けられたキャビティとを備えるボールバルブのキャビティ乾燥システムにおいて、
上記キャビティと上記流路とを遮断した状態で、当該キャビティ内が大気圧未満となるようにガスを吸引するガス吸引手段を備えること
を特徴とするボールバルブのキャビティ乾燥システム。
【請求項2】
上記ガス吸引手段は、上記キャビティ内が−0.08〜−0.06MPaとなるまでガスを吸引すること
を特徴とする請求項1記載のボールバルブのキャビティ乾燥システム。
【請求項3】
上記ガス吸引手段によりガスが吸引された上記キャビティに対して不活性ガスを封入するガス封入手段を更に備えること
を特徴とする請求項1又は2記載のボールバルブのキャビティ乾燥システム。
【請求項4】
上記ガス吸引手段は、上記ガス封入手段により上記キャビティ内に封入された上記不活性ガスを、所定時間経過後に吸引し、
上記ガス封入手段による上記不活性ガスの封入、上記ガス吸引手段によるガスの吸引を繰り返し実行すること
を特徴とする請求項3記載のボールバルブのキャビティ乾燥システム。
【請求項5】
予め決められたタイミングに基づいて、上記ガス吸引手段によるガスの吸引開始並びに吸引停止を自動的に制御するガス吸引制御手段と、
予め決められたタイミングに基づいて、上記ガス封入手段による上記不活性ガスの封入開始並びに封入停止を自動的に制御するガス封入制御手段とを更に備えること
を特徴とする請求項3又は4記載のボールバルブのキャビティ乾燥システム。
【請求項6】
バルブ本体の流路内に回転自在に装着された貫通孔を有するボール弁体と、上記ボール弁体に対して上記流路の軸線方向両側から圧接される一対のシール機構により上記ボール弁体の外周面と上記バルブ本体の内周面との間に設けられたキャビティとを備えるボールバルブのキャビティ乾燥方法において、
上記キャビティと上記流路とを遮断した状態で、当該キャビティ内が大気圧未満となるようにガスを吸引するガス吸引ステップを有すること
を特徴とするボールバルブのキャビティ乾燥方法。
【請求項7】
上記ガス吸引ステップでは、上記キャビティ内が−0.08〜−0.06MPaとなるまでガスを吸引すること
を特徴とする請求項6記載のボールバルブのキャビティ乾燥方法。
【請求項8】
上記ガス吸引ステップにおいてガスが吸引された上記キャビティに対して不活性ガスを封入するガス封入ステップを更に有すること
を特徴とする請求項6又は7記載のボールバルブのキャビティ乾燥方法。
【請求項9】
上記ガス吸引ステップでは、上記ガス封入ステップにおいて上記キャビティ内に封入された上記不活性ガスを、所定時間経過後に吸引し、
更に上記ガス封入ステップ、上記ガス吸引ステップとを繰り返し実行すること
を特徴とする請求項8記載のボールバルブのキャビティ乾燥方法。
【請求項10】
上記ガス吸引ステップでは、予め決められた発信されたタイミングに基づいて、ガスの吸引開始並びに吸引停止を自動的に制御し、
上記ガス封入ステップでは、予め決められたタイミングに基づいて、上記不活性ガスの封入開始並びに封入停止を自動的に制御すること
を特徴とする請求項8又は9記載のボールバルブのキャビティ乾燥方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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