説明

ボールペン用インキ

【目的】 温度変化を伴う環境で、ペン先を空気に接した状態で、長期間静置していてもカスレが発生しにくいボールペン用インキを提供する。
【構成】 着色材と液媒体とジアミノアントラキノンとリン酸エステルとを含有するボールペン用インキ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インキを紙面等の被筆記面に転写するボールを、ボールホルダーの先端開口部から一部臨出させて回転自在に抱持したボールペンチップをペン先としたボールペンに収容されるボールペン用インキに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボールペン用インキは、染料や顔料などの着色材と、溶剤と、紙面への定着を主な目的とした樹脂と、必要に応じて粘度調整、流動特性調整、ボテを防止することを主な目的とした樹脂とからなっている。
【0003】
このボールペンによる筆記は、紙面などの被筆記面と接触して移動させられることによって回転するボールによって、ボールホルダーの内孔に流通したインキを紙面に転写させ、筆跡をつくりだすものである。ペン先を空気に接した状態で、長期間静置しておくと、インキ表面から溶剤が揮発し、着色剤や樹脂がインキ表面に高濃度に局在するようになる。さらに溶剤の揮発が進むと、着色剤や樹脂が析出し、硬い膜となり、再筆記時に、ボールの回転を阻害して、インキの転写がされなくなる、いわゆる初筆カスレが発生することがある。
【0004】
従来より、初筆カスレを防止する事は様々な研究がなされている。その具体的手段としては、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリエチレングリコールジオレエートを添加して、ボールの回転を円滑にしたもの(特許文献1参照)、蒸気圧の低い溶剤を添加して、溶剤の揮発を遅くしたもの(特許文献2参照)、アルキル基とポリオキシエチレン鎖を有するリン酸エステルの中和物を添加し、ボール表面で固まったインキ膜をはがれ易くしたもの(特許文献3参照)、テルペンフェノール樹脂を添加し、粘性と潤滑性を高めたもの(特許文献4参照)、ポリグリセリン脂肪酸エステルを添加し、ペン先に脆い膜を形成させて、溶剤の揮発を遅くしたもの(特許文献5、6参照)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭61−52872号公報(第1頁第1欄2行〜12行)
【特許文献2】特開平6−247093号公報(段落番号0004〜0007)
【特許文献3】特開2004−107592号公報(段落番号0007〜0010)
【特許文献4】特開2007−126528号広報(段落番号0004〜0005)
【特許文献5】特公昭62−34352号公報(第1頁第1欄2行〜20行)
【特許文献6】特開2002−53785号公報(段落番号0005〜0008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜4に記載の発明では、温度変化を伴う条件で長時間置いた場合には、溶剤の蒸発が抑えられず、カスレが発生してしまうことがある。
特許分文献5、6に記載の発明では、膜が形成されても、インキの熱膨張、熱収縮によって、インキの膜が剥離、破れて、溶剤の揮発を抑えられず、チップ内部のインキまで乾燥してインキが供給されずにカスレが発生してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、少なくとも着色材と液媒体とジアミノアントラキノンとリン酸エステルとを含有するボールペン用インキを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0008】
ジアミノアントラキノンは、芳香族の平面構造であり、それぞれ、重なり合うように結合するが、カルボニル基同士の静電的反発も受け、ゆるい結合状態の多量体となる。この多量体のアミノ基の一部はリン酸エステルのリン酸基と、互いに塩形成して結合した複合体を形成する。このとき、ジアミノアントラキノンの2つのアミノ基は、1つのアミノ基とリン酸基の結合が切れても、2つめのアミノ基とリン酸基がすぐに結合でき、見掛け上、切れにくい結合が形成される。
そして、1つの複合体を覆うリン酸エステルのアルキル基は、他の複合体を覆うリン酸エステルのアルキル基と疎水結合し、有機溶剤や水などの液媒体が揮発し複合体の濃度が高くなると、膜を形成する。尚、膜を形成するには、局所的に高濃度のジアミノアントラキノンが必要で、複合体であれば、局所的に高濃度という状態になりやすい。複合体がないと、局所的に高濃度の状態になるまでに時間がかかって、溶剤の蒸発が防げなかったり、局所的に高濃度の状態にために必要以上の溶剤が蒸発してしまったりする。
複合体が形成された状態で作られた膜は、カルボニル基同士の静電的反発の作用で柔軟性を維持し、かつ、複合体を形成しているリン酸基がチップやボールなどの金属に付着し、膜がはがれにくくなる。
複合体によって、柔軟性が維持されて、チップとボールに付着した膜は、インキが熱膨張、熱収縮しても破れにくく、それ以上のインキ乾燥を抑制するので、インキ乾燥による初筆カスレを抑制することができる。
筆記に際しては、カルボニル基同士の静電的反発の作用で柔軟な膜であるため、筆記の際のボールが回転しようとする荷重で容易に破られ、潤沢なインキを吐出できると、推察される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に発明を詳細に説明する。
着色剤は一般的に使用されている染料、顔料が使用可能である。染料の一例としては、SPILON BLACK GMH SPECIAL、SPILON RED C−GH、SPILON RED C−BH、SPILON BLUE C−RH、SPILON BLUE BPNH、SPILON YELLOW C−GNH、SPILON YELLOW C−2GH、SPILON VIOLET C−RH、S.P.T. ORANGE6、S.P.T. BLUE111、SOT Yellow−1、SOT Yellow−2、SOT Yellow−3、SOT Yellow−4、SOT Yellow−6、SOT Orange−1、SOT Orange−2、SOT Scarlet−1、SOT Red−1、SOT Red−2、SOT Red−3、SOT Pink−1、SOT Brown−1、SOT Brown−2、SOT Blue−1、SOT Blue−2、SOT Blue−3、SOT Blue−4、SOT Violet−1、SOT Green−1、SOT Green−2、SOT Green−3、SOT Brack−1、SOT Brack−2、SOT Brack−4、SOT Brack−5、SOT Brack−6、SOT Brack−8、ORIENT SPRIT BLACK AB、VALIFAST BLACK 3804、VALIFAST RED 1320、VALIFAST RED 1360、VALIFAST ORANGE 2210、VALIFAST BLUE 1605、VALIFAST VIOLET 1701、VALIFAST VIOLET 1731、VALIFAST BLUE 1601、VALIFAST BLUE 1603、VALIFAST BLUE 1621、VALIFAST BLUE 1631、VALIFAST BLUE 2601、VALIFAST YELLOW 1110、VALIFAST YELLOW 1171、VALIFAST YELLOW 3104、VALIFAST YELLOW 3105、VALIFAST YELLOW 1109、Oil Colors Yellow #101、Oil Colors Yellow 3G、Oil Colors Yellow GGS、Oil Colors Yellow #105、Oil Colors Yellow #107、Oil Colors Yellow #136、Oil Colors Yellow #140、Oil Colors Orange PS、Oil Colors Orange PR、Oil Colors Orange #201、Oil Colors Pink OP、Oil Colors Pink #312、Oil Colors Scarlet #308、Oil Colors Red RR、Oil Colors Red 5B、Oil Colors Red #330、Oil Colors Brown GR、Oil Colors Brown #416、Oil Colors Brown BB、Oil Colors Green BG、Oil Colors Green #502、Oil Colors Green #533、Oil Colors Blue BOS、Oil Colors Blue IIN、Oil Colors Blue #603、Oil Colors Blue #613、Oil Colors Violet #730、Oil Colors Violet #732、Oil Colors Black BY、Oil Colors Black BS、Oil Colors Black HBB、Oil Colors Black #803、Oil Colors Black EB、Oil Colors Black EX、ネオスーパーブルーC−555、ローダミンBベース、ソルダンレッド3R、メチルバイオレット2Bベース、ビクトリアブルーF4R、C.I.ダイレクトブラック17、同19、同22、同32、同38、同51、同71、ダイレクトレッド1、同4、同23、同31、同37、同39、同75、同80、同81、同83、同225、同226、同227、C.I.ダイレクトブルー1、同15、同41、同71、同86、同87、同106、同108、同199、C.I.ダイレクトイエロー4、同26、同44、同50、などの直接染料や、C.I.アシッドブラック1、同2、同24、同26、同31、同52、同107、同109、同110、同119、同154、C.I.アシッドレッド8、同9、同14、同18、同26、同27、同35、同37、同50、同51、同52、同57、同82、同83、同87、同91、同92、同93、同94、同95、同98、同111、同129、同131、同138、同186、同249、同254、同265、同276、C.I.アシッドイエロー1、同7、同17、同19、同23、同25、同29、同38、同42、同49、同61、同72、同78、同110、同127、同135、同141、同142、C.I.アシッドバイオレット15、同17、同49、C.I.アシッドブルー1、同7、同9、同15、同22、同23、同25、同40、同41、同43、同62、同78、同83、同90、同93、同100、同103、同104、同112、同113、同158、C.I.アシッドグリーン3、同9、同16、同25、同27、C.I.アシッドオレンジ56、C.I.アシッドブルー74、C.I.アシッドグリーン5などの酸性用染料、ソルベントイエロー2、同6、同14、同15、同16、同19、同21、同33、同56、同61、同62、同79、同80、同82、同83:1、同151、ソルベントオレンジ1、同2、同5、同6、同14、同37、同40、同41、同44、同45、同62、ソルベントレッド1、同3、同8、同23、同24、同25、同27、同30、同49、同81、同82、同83、同84、同89、同91、同100、同109、同121、同122、同127、同132、同218、ディスパースレッド9、ソルベントバイオレット8、同13、同14、同21、同21:1、同27、ディスパースバイオレット1、ソルベントブルー2、同4、同5、同11、同12、同25、同35、同36、同38、同44、同45、同55、同67、同70、同73、ソルベントグリーン3、ソルベントブラウン3、同5、同20、同28、同37、ソルベントブラック3、同5、同7、同22、同22:1、同23、同27、同29、同34、同43、同123が挙げられる。
【0010】
顔料の一例としては、カーボンブラックや不溶性アゾ顔料、アゾレーキ系顔料、縮合アゾ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、アントラキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、インジゴ系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、ペリノン、ペリレン系顔料等有機顔料などの従来公知の一般的な顔料が使用可能である。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組合せて調色して用いてもよい。
【0011】
カーボンブラックの一例としては、プリンテックス3、同25、同30、同35、同40、同45、同55、同60、同75、同80、同85、同90、同95、同300、スペシャルブラック4、同5、同100、同250、同550(以上、デグサヒュルスジャパン(株)製)、三菱カーボンブラック#2700、同#2650、同#2600、同#2400、同#2350、同#2300、同#2200、同#1000、同#990、同#980、同#970、同#960、同#950、同#900、同#850、同#750、同#650、同#52、同#50、同#47、同#45、同#45L、同#44、同#40、同#33、同#32、同#30、同#25、同#20、同#10、同#5、同#95、同#260、同CF9、同MCF88、同MA600、同MA77、同MA7、同MA11、同MA100、同MA100R、同MA100S、同MA220、同MA230(以上、三菱化学(株)製)、トーカブラック#8500/F、同#8300/F、同#7550SB/F、同#7400、同#7360SB/F、同#7350/F、同#7270SB、同#7100/F、同#7050(以上、東海カーボン(株)製)や、ダイヤモンドブラックN(玉億色材(株)製)などのアニリンブラックや、ボーンブラック(三重カラーテクノ(株)製)や、鉄化ブラックKN−320(日本鉄化(株)製)などの鉄黒が挙げられる。が挙げられる。青色顔料の一例としては、例えばC.I.Pigment Blue 2、同9、同15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:6、同16、同17、同28、同29、同36、同60、同68、同76、同80が挙げられる。赤色の顔料の一例としてはC.I.Pigment Red 2、同3、同5、同8、同14、同17、同22、同23、同31、同48:1、同48:2、同48:3、同48:4、同53:1、同53:2、同57:1、同112、同122、同144、同146、同149、同166、同170、同175、同176、同177、同179、同184、同185、同187、同188、同202、同207、同208、同209、同210、同211、同213、同214、同242、同253、同254、同255、同256、同257、同264、同266、同268、同270、同272が挙げられる。黄色の顔料の一例としてはC.I.Pigment Yellow 1、同3、同12、同13、同14、同16、同17、同55、同73、同74、同79、同81、同83、同93、同94、同95、同97、同109、同110、同111、同120、同128、同133、同136、同138、同139、同147、同151、同154、同155、同167、同173、同174、同175、同176、同180、同185、同191、同194、同213が挙げられる。橙色の顔料の一例としてはC.I.Pigment Orange5、同13、同16、同34、同36、同38、同43、同62、同68、同72、同74が挙げられる。緑色の顔料の一例としてはC.I.Pigment Green7、同36、同37が挙げられる。紫色の顔料の一例としてはC.I.Pigment Violet19、同23等が使用出来る。
【0012】
これらの染料および顔料の使用量はボールペン用インキ全量に対し1重量%以上40重量%以下が好適に使用でき、1重量%以上30重量%以下がより好ましい。使用量が1重量%より少ないと筆跡が薄すぎて判読がし難くなる。40重量%より多いと配合時の溶解不足や、経時的な沈降による目詰まりによる筆記不能やボールペン用インキ中の固形分の増加により書き味が重くなる不具合を生じやすくなる。
【0013】
ジアミノアントラキノンの具体的な商品名の一例としては、1,2‐ジアミノアントラキノン、1,4‐ジアミノアントラキノン、1,5‐ジアミノアントラキノン、2,6‐ジアミノアントラキノン(シグマ・アルドリッチ・ジャパン(株)製、または、東京化成工業(株)製)が挙げられる。ジアミノアントラキノンの総量はインキ全量に対し0.1重量%以上10重量%以下で使用することが好ましい。0.1重量%よりも少ないと、充分にカスレを抑制することができず、10重量%よりも多くなると、着色剤や樹脂の溶解性を低下させてしまうおそれがある。
【0014】
リン酸エステルの具体例としては、モノアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテルリン酸、ジアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンジアルキルエーテルリン酸が挙げられる。また、これらの物質を中和したり、溶液にしたりして使用することは何ら差し支えない。市販のものとしては、フォスファノールBH−650、SM−172、ED−200、GF−339、RA−600、GF199、ML−200、ML−220、ML−240、RD−510Y、GF−185、RS−410、RS−610、RS−710、RL−210、RL−310、RB−410、RP−710、AK−25、GF702、RS−610NA、SC−6103、RD−720、LP−700、LS−500、LB400(以上、東邦化学工業(株)製)や、プライサーフA208B、A219B、A208S、A212S、A215C(以上、第一工業製薬(株)製)、NIKKOL DLP−10、DOP−8N、DDP−2、DDP−4、DDP−6、DDP−8、DDP−10(以上、日光ケミカルズ(株)製)などが挙げられる。これらの化合物は、合計で0.1重量%よりも少ないと、充分にカスレを抑制することができず、20.0重量%よりも多いと、インキ中の水や有機溶媒の含有量が減ってしまい、染料や樹脂などインキ中の固形分の溶解性が不足し、文字掠れが生じやすくなるので、使用量は油性インキ全量に対し10.0重量%未満の使用が好ましい。
【0015】
更に、上記リン酸エステルが、インキ中の他成分と反応することでインキの状態が経時的に変化するようなことが起こらないようにするために、予め中和剤と混合して、リン酸基を中和してからインキに添加することもできる。中和剤としては、アミン化合物、アミド化合物、アミノ酸化合物やこれらの誘導体、両性界面活性剤などが用いられ、具体的には、アミート102、アミート105、アミート302、アミート308、アミート320などのポリオキシエチレンアルキルアミン類や、ファーミンCS、ファーミン08D、ファーミン20D、ファーミン80、ファーミン86T、ファーミンO、ファーミンT、ファーミンなどの脂肪アミン類(以上、花王(株)製)や、ナイミーンL−201、ナイミーンL−202、ナイミーンL207、ナイミーンF−215、ナイミーンS−202、ナイミーンS−204、ナイミーンS−210、ナイミーンS−215、ナイミーンS−220、ナイミーンT2−206、ナイミーンT2−210、ナイミーンT2−230、ナイミーンT2−260、ナイミーンDT−203、ナイミーンDT−208などのアルキルポリエーテルアミン類(以上、日本油脂(株)製)や、NIKKOLTAMNOS−5、TAMNOS−10,TAMNOS−15、TAMNO−5、TAMNO−15などのポリオキシエチレンアルキルアミン類や、TAMDS−4、TAMDS−15、TAMDO−5などのポリオキシエチレン脂肪酸アミド類や、NIKKOLAM−301、AM3130Nなどの両性界面活性剤(以上、日光ケミカルズ(株)製)や、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ジエチルイソプロパノールアミン、ブチルイソプロピルアミン、ブチルベンジルアミン、ブトキシプロピルアミン(以上、関東化学(株)製)などが挙げられる。
【0016】
本発明で使用する溶剤としては水、有機溶剤が使用できる。有機溶剤としては従来ボールペン用インキに使用されるものなら特に限定なく使用でき、特に、安全性や臭気の問題から、アルコール、グリコール、グリコールエーテルが好ましい。
有機溶剤の一例としては、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールターシャリブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、3−メチル−3−メトキシ−1−ブチルアセテート等のグリコールエーテル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、3−メチル−1,3ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール等のグリコール類、ベンジルアルコール、β−フェニルエチルアルコール、α−メチルベンジルアルコール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、3−メチル−3−メトキシペンタノール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソデシルアルコール、イソトリデシルアルコール等のアルコール類、メチルイソプロピルエーテル、エチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル、2−エチルヘキシルエーテル等のエーテル類、酢酸−2−エチルヘキシル、イソ酪酸イソブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類を挙げることができる。
これらの水、有機溶剤は単独あるいは組み合わせて使用でき、その使用量はインキ全量に対し10重量%以上90重量%以下が好ましい。
【0017】
上記成分の他に必要に応じて、潤滑剤や樹脂、防錆剤、防腐剤、消泡剤、受け座磨耗防止剤等の添加剤を併用することも可能である。
【0018】
潤滑剤は、ボールの回転を円滑にし、筆記感を向上させるために添加するものであり、一例としては、切削油類、高級脂肪酸類、リン酸エステル類、リン酸エステル類の中和物、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とこれらの誘導体、アシルアミノ酸類、チアゾール類、ポリエチレングリコール類、ポリオール変性シリコーン、が挙げることが出来る。
これらはインキ全量に対し0.2〜4.5重量%使用する。0.2重量%以下ではボール表面を濡らす効果が弱くなり、4.5重量%以上添加するとインキの表面張力が小さくなり、ペン先を下向きにして放置したときにインキが漏れ出す畏れがある。
【0019】
樹脂は、顔料などの固形物の分散、定着性向上、糸曳き性付与、筆跡の裏写り防止の他、粘度調整、染料の溶解促進の為に添加するものであり、一例としては、エステルガム、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、ポリビニルピロリドン、アクリル酸エステル系樹脂、メラミン系樹脂、セルロース系樹脂、シクロヘキサノン、アセトフェノン、尿素などのケトンとホルムアルデヒドとの縮合樹脂、シクロヘキサノンの縮合樹脂及びそれらを水素添加した樹脂、マレイン酸樹脂、スチレンとマレイン酸エステルとの共重合体、スチレンとアクリル酸又はそのエステルとの共重合体、重合脂肪酸とポリアミン類との縮合体であるポリアミド、エポキシ樹脂、ポリビニルアルキルエーテル、クマロン−インデン樹脂、ポリテルペン、ロジン系樹脂やその水素添加物、ロジン変性されたマレイン酸樹脂、ロジン変性されたフェノール樹脂、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合物、ポリメタクリル酸エステル、ポリオキシエチレン、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂が挙げられる。特に、ポリビニルブチラール樹脂は、造膜性がよく、本発明の複合体の膜形成の一助にもなりえる。ポリビニルブチラールの一例を挙げると、ヘキスト社製のMowitalB20H、B30B、B30H、B60T、B60H、B60HH、B70H、積水化学工業(株)製のエスレック BH−3、BL−1、BL−2、BL−L、BL−S、BM−1、BM−2、BM−5、BM−S、BL−2H、BL−SH、BX−10、BX−L、電気化学工業(株)製のデンカブチラール#2000−L、#3000−1、#3000−2、#3000−3、#3000−4、#3000−K、#4000−1、#5000−A、#6000−Cなどがある。これらの樹脂は単独あるいは混合して使用することができる。これらの樹脂の使用量はインキ全量に対して0.05〜30重量%が好ましい。
【0020】
受け座磨耗防止剤の一例としては、アルミナ、炭化珪素、酸化クロム、炭化ホウ素、ジルコン、セン晶石、ヒスイ石、フッ化カルシウム、タングステンカーバイド、シリカ、ダイヤ、ザクロ石、窒化アルミニウム、窒化珪素が挙げられる。
【0021】
本発明のインキは筆記先端部を上向き(正立状態)で放置した場合のインキの逆流を防止したりするために剪断減粘性を付与しても良い。剪断減粘性剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロースなどのセルロース誘導体、アラビアガム、トラガカントガム、グァーガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、カラギーナン、ゼラチン、カゼイン、キサンテンガム、デキストラン、ウェランガム、ラムザンガム、アルカガム、デンプングリコール酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ヒドロキシプロピル化グァーガム、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレンオキサイド、酢酸ビニルとポリビニルピロリドンの共重合体、アクリル樹脂塩、アクリル酸とアルキルメタクリレートの共重合体又はそれらの塩、ヒアルロン酸等の多糖類、ベンジリデンソルビトール、シリカ、ベントナイト系無機化合物、有機ベントナイトが挙げられる。
【0022】
本発明において顔料を分散するには通常一般的な方法で可能である。例えば、顔料と、溶剤と、分散剤とを混合し、プロペラ撹拌機等で均一に撹拌した後、分散機で顔料を分散する。ロールミル、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、ヘンシェルミキサー、ホモジナイザー、ニーダー等の分散機はインキの溶剤量や、顔料濃度によって適宜選択する。
【0023】
インキを製造するには、上記で分散した顔料と染料から選ばれる1種もしくは2種以上の色材と、樹脂と、溶剤をホモミキサー等の撹拌機にて充分に混合攪拌した後、他の成分、例えば粘度調整剤や、色調調整のための染料、潤滑剤等を混合し、更に均一になるまで溶解・混合することで得られるが、場合によって混合したインキをさらに分散機にて分散したり、得られたインキを濾過や遠心分離機に掛けて粗大粒子や不溶解成分を除いたりすることは何ら差し支えない。
【実施例】
【0024】
以下、実施例及び比較例に基づき更に詳細に説明する。尚、各実施例中単に「部」とあるのは「重量部」を表す。
(実施例1)
プリンテックス35(カーボンブラック、デグサヒュルスジャパン(株)製)
7.0部
VALIFAST VIOLET 1731(油性染料、オリエント化学工業(株)製) 15.0部
SPILON RED C−GH(油性染料、保土ヶ谷化学工業(株)製)
1.0部
OIL BLUE 613(油性染料、オリエント化学工業(株)製) 1.0部
SPILON YELLOW C−GNH(油性染料、保土ヶ谷化学工業(株)製) 1.0部
1,4‐ジアミノアントラキノン(東京化成工業(株)製) 1.5部
フォスファノールLP710(リン酸エステル、東邦化学工業(株)製)1.5部
ナイミーンL201(ポリエチレングリコール−1ラウリルアミン、日油(株)
製) 1.0部
エチレングリコールモノベンジルエーテル 33.0部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 15.0部
エチレングリコールモノイソプロピルエーテル 15.0部
エスレックBL−1(ポリビニルブチラール、積水化学工業(株)製) 2.0部
エスレックBH−3(ポリビニルブチラール、積水化学工業(株)製) 0.5部
ヒタノール1501(フェノール樹脂、日立化成工業(株)製) 1.0部
NIKKOL BL−9EX(ノナエチレングリコールモノドデシルエーテル、日光ケミカルズ(株)製) 2.0部
NIKKOL HCO−10(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、日光ケミカルズ(株)製) 1.5部
ユニオールD2000(ポリオキシプロピレングリコール、日油(株)製)
1.0部
上記成分のうち、エチレングリコールモノベンジルエーテルの全量と、エスレックBL−1の全量を室温で攪拌、混合溶解した後、プリンテックス35の全量を加えてさらに攪拌した後、ダイノーミル(ビーズミル、(株)シンマルエンタープライズ製)で直径0.3mmのジルコニアビーズを用い10回通しを行い黒色のペーストを得た。
次いで、このペーストに残りの材料の全量を加え、70℃で4時間攪拌して黒色のボールペン用インキを得た。
【0025】
(実施例2)
Paliogen Blau L6385(C.I.Pigment Blue 60、BASFジャパン(株)製) 6.0部
VALIFAST BLUE 1631(油性染料、オリエント化学工業(株)製) 8.0部
1,2‐ジアミノアントラキノン(シグマ・アルドリッチ・ジャパン(株)製)
0.5部
フォスファノールLB400(リン酸エステル、東邦化学工業(株)製)1.5部
ナイミーンL201(ポリエチレングリコール−1ラウリルアミン、日油(株)
製) 1.0部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 35.0部
エチレングリコールモノイソプロピルエーテル 6.0部
エチレングリコールモノフェニルエーテル 20.0部
エスレックBL−1(ポリビニルブチラール、積水化学工業(株)製) 2.0部
エスレックBH−3(ポリビニルブチラール、積水化学工業(株)製) 1.0部
ハイラック901(ケトン樹脂、日立化成工業(株)製) 10.0部
NIKKOL BL−9EX(ノナエチレングリコールモノドデシルエーテル、日光ケミカルズ(株)製) 3.0部
NIKKOL HCO−10(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、日光ケミカルズ(株)製) 3.0部
ユニオールD2000(ポリオキシプロピレングリコール、日油(株)製)
3.0部
上記成分のうち、ジエチレングリコールモノメチルエーテルとエチレングリコールモノイソプロピルエーテルの全量と、エスレックBL−1の全量を室温で攪拌、混合溶解した後、Paliogen Blau L6385の全量を加えてさらに攪拌した後、ダイノーミル(ビーズミル、(株)シンマルエンタープライズ製)で直径0.3mmのジルコニアビーズを用い10回通しを行い青色のペーストを得た。
次いで、このペーストに残りの材料の全量を加え、70℃で4時間攪して青色のボールペン用インキを得た。
【0026】
(実施例3)
ウォーターブラック#100L(C.I.ダイレクトブラック19、オリエント化学工業(株)製) 25.0部
1,5‐ジアミノアントラキノン(シグマ・アルドリッチ・ジャパン(株)製)
5.0部
プライサーフA208(リン酸エステル、第一工業製薬(株)製) 5.0部
ペプタイドFCP−A(ポリペプタイド、平均分子量5000、(株)ニッピ製)
1.0部
サルコシネートLH(N−アシルアミノ酸、日光ケミカルズ(株)製) 1.0部
イオン交換水 15.0部
エチレングリコール 30.0部
プロピレングリコール 17.0部
キサンタンガム 0.5部
1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン 0.2部
25%水酸化ナトリウム水溶液 0.3部
上記成分のうち、イオン交換水とエチレングリコールとプロピレングリコールを混合した中に染料を入れて、プロペラ攪拌機で2時間攪拌した。その中にキサンタンガムを入れ、プロペラ攪拌機で1時間攪拌した後、残りの成分を添加してプロペラ攪拌機で1時間攪拌した。1ミクロン糸巻きフィルターでろ過して黒色のボールペン用インキを得た。
【0027】
(実施例4)
FUJI Red 8800(C.I.Pigment Red 254、冨士色素(株)製) 5.5部
SPILON RED C−GH(油性染料、保土谷化学工業(株)製)
15.0部
SPILON YELLOW C−GNH 4.0部
2,6‐ジアミノアントラキノン(東京化成工業(株)製) 2.5部
プライサーフA208(リン酸エステル、第一工業製薬(株)製) 0.5部
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 18.0部
エチレングリコールモノイソプロピルエーテル 10.5部
エチレングリコールモノベンジルエーテル 32.1部
エスレックBL−1(ポリビニルブチラール、積水化学工業(株)製) 2.6部
NIKKOL BL−9EX(ノナエチレングリコールモノドデシルエーテル、日光ケミカルズ(株)製) 2.0部
EMALEX HC−20(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、日本エマルジョン(株)製) 10.0部
上記成分のうち、ジエチレングリコールモノエチルエーテルとエチレングリコールモノイソプロピルエーテルとエチレングリコールモノベンジルエーテルの全量と、エスレックBL−1の全量を70℃で攪拌、混合溶解した後、これを室温まで放冷してからFUJI Red 8800の全量を加えダイノーミル(ビーズミル、(株)シンマルエンタープライズ製)で直径0.3mmのジルコニアビーズを用い10回通しを行い赤色のペーストを得た。
次いで、このペーストに残りの材料の全量を加え、70℃で3時間攪拌して赤色のボールペン用インキを得た。
【0028】
(実施例5)
実施例1において、エチレングリコールモノベンジルエーテルを10.0部減じて、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル3.0部減じて、1,4‐ジアミノアントラキノンを6.5部加え、フォスファノールLP710を6.5部加えた以外は同様にして黒色のボールペン用インキを得た。
【0029】
(実施例6)
実施例1において、1,4‐ジアミノアントラキノンを1.0部減じて、エチレングリコールモノベンジルエーテルを0.5部減じて、フォスファノールLP710を1.5部加えた以外は同様にして黒色のボールペン用インキを得た。
【0030】
(実施例7)
実施例1において、フォスファノールLP710を1.0部減じて、エチレングリコールモノベンジルエーテルを0.5部減じて、1,4‐ジアミノアントラキノンを1.5部加えた以外は同様にして黒色のボールペン用インキを得た。
【0031】
(実施例8)
実施例1において、1,4‐ジアミノアントラキノンを1.0部減じて、フォスファノールLP710を1.0部減じて、エチレングリコールモノベンジルエーテルを2.0部加えた以外は同様にして黒色のボールペン用インキを得た。
【0032】
(比較例1)
実施例1において、フォスファノールLP710の全量に替えて、エチレングリコールモノベンジルエーテル1.5部を加えた以外は同様にして黒色のボールペン用インキを得た。
【0033】
(比較例2)
実施例1において、フォスファノールLP710を1.5部減じ、エチレングリコールモノベンジルエーテルを5.0部減じて、1,4‐ジアミノアントラキノン6.5部を加えた以外は同様にして黒色のボールペン用インキを得た。
【0034】
(比較例3)
実施例1において、1,4‐ジアミノアントラキノンの全量に替えて、エチレングリコールモノベンジルエーテル1.5部を加えた以外は同様にして黒色のボールペン用インキを得た。
【0035】
(比較例4)
実施例2において、1,2‐ジアミノアントラキノンの全量に替えて、2‐アミノキノン(東京化成工業(株)製)0.5部を加えた以外は同様にして青色のボールペン用インキを得た。
【0036】
(比較例5)
実施例2において、1,2‐ジアミノアントラキノンを0.5部減じ、ジエチレングリコールモノメチルエーテルを8.5部減じ、2‐アミノキノン(東京化成工業(株)製)9.0部を加えた以外は同様にして青色のボールペン用インキを得た。
【0037】
(比較例6)
実施例1において、1,4‐ジアミノアントラキノンの全量とフォスファノールLP710の全量に替えて、ヘキサエチレングリコールジオレエート2.0部とエチレングリコールモノベンジルエーテル1.0部を加えた以外は同様にして黒色のボールペン用インキを得た。
【0038】
(比較例7)
実施例2において、1,2‐ジアミノアントラキノンの全量と、フォスファノールLB400とエチレングリコールモノフェニルエーテルの全量に替えて、ユニオールTG−1000(ポリオキシプロピルトリオール、日本油脂(株)製)22.0部を加えた以外は同様にして青色のボールペン用インキを得た。
【0039】
(比較例8)
実施例3において、1,5‐ジアミノアントラキノンの全量、プライサーフA208の全量に替えて、RL−210(エチレンオキサイド付加モル数が2モルのステアリルアルコールとリン酸のモノエステル、ジエステル、及び微量なトリエステルからなる混合物、東邦化学工業(株)製)5.0部、ジブチルエタノールアミン1.0部、グリセリン4.0部を加えた以外は同様にして黒色のボールペン用インキを得た。
【0040】
(比較例9)
実施例4において、2,6‐ジアミノアントラキノンの全量とプライサーフA208の全量に替えて、ヘキサグリセリンジステアリル3.0部を加えた以外は同様にして赤色のボールペン用インキを得た。
【0041】
(比較例10)
実施例1において、1,4‐ジアミノアントラキノンの全量と、フォスファノールLP710の全量に替えて、YP−90L(テルペンフェノール樹脂、ヤスハラケミカル(株)製)ヘキサグリセリンジステアリル3.0部を加えた以外は同様にして黒色のボールペン用インキを得た。
【0042】
(試験用ボールペンの作製)
上記実施例1〜8及び比較例1〜10で得た各ボールペン用インキを市販のボールペン(.e(ドットイー)、ぺんてる(株)製、ペン先はステンレス製チップとφ0.7mmの超硬合金のボールとからなり、ボールを前方付勢するコイルスプリングなどの弾撥部材は使用していない、ノック式ボールペン)と同様の筆記具に0.3g充填し、試験サンプルとした。
【0043】
耐インキ漏れ・耐カスレ試験:
日々の温度変化をかけた試験として、上記で試験用ボールペンを作製した直後に、荷重150g、筆記速度7.0cm/秒、筆記角度70°で直線を10cm筆記後、ペン先を外装体内に収納した状態で、ペン先が空気以外の物質に接しないように、試験管立てにペン先が下向きになるように立て掛け、5℃12時間静置後30℃12時間静置を一週間繰り返し、上質紙に、荷重150g、筆記速度7.0cm/秒、筆記角度70°で直線を10cm筆記し、その書き始めから正常筆記できた筆跡の位置までの長さを測定した。試験サンプルの数はn=10本とし、測定結果の平均値を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例1〜8のボールペン用インキは、ジアミノアントラキノンとリン酸エステルを含有しているので、ボールペンチップのインキ吐出部で、金属に結合する柔らかい膜を形成し、温度変化による熱膨張、熱収縮でも破れることなく、インキが漏れ出すことと、それ以上の溶剤の蒸発を防ぎ、インキが固化せず、かすれの発生を抑えることができた。
実施例2のボールペン用インキは、より近くにアミノ基が隣接している1,2‐ジアミノアントラキノンなので、少ない添加量でも充分な効果を発揮できている。
実施例3〜4のボールペン用インキは、ジアミノアントラキノンの2つのアミノ基が比較的離れた構造となっているが、問題なく充分な効果を発揮している。
また、実施例3のボールペン用インキは、沸点の低い液媒体である水を添加しているものの、問題なく効果を発揮している。
実施例5のボールペン用インキは、ジアミノアントラキノンの量と、リン酸エステルの量が多く、インキ中の固形分の溶解度が低下しているものの、充分な効果を発揮している。
実施例6のボールペン用インキは、ジアミノアントラキノンの量が少なく、複合体を形成し、効率よく膜を形成しているので、充分な効果を発揮している。
実施例7のボールペン用インキは、リン酸エステルの量が少ないが、複合体を形成し、複数のリン酸基が複数の金属に、結合するので、局所的に強い結合となり、効率よく金属に結合するので、充分な効果を発揮している。
実施例8のボールペン用インキは、ジアミノアントラキノンと、リン酸エステルの量が少ないが、複合体による上記の効果の相乗効果で、充分な効果を発揮している。
また、実施例6のボールペン用インキは、ジアミノアントラキノンよりリン酸エステルが多く、実施例7のボールペン用インキは、ジアミノアントラキノンがリン酸エステルより多いが、ジアミノアントラキノンとリン酸エステルの比の違いは、複合体の形成に影響せず、充分な効果を発揮している。
【0046】
これに対して、比較例1〜2のボールペン用インキは、リン酸エステルを含有しておらず、比較例3〜5のボールペン用インキは、ジアミノアントラキノンを含有しておらず、比較例6〜10は、ジアミノアントラキノンとリン酸エステルを含有しておらず、ボールペンチップのインキ吐出部で、柔らかい金属に結合する膜が形成されず、インキが漏れ出したり、溶剤が蒸発によりインキが固化してかすれが発生したりしてしまう。
【0047】
以上、詳細に説明したように本発明は、温度変化を伴う環境で、ペン先を空気に接した状態で、長期間静置していても、カスレが発生しにくいボールペン用インキに関するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも着色材と液媒体とジアミノアントラキノンとリン酸エステルとを含有するボールペン用インキ。

【公開番号】特開2012−233026(P2012−233026A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100495(P2011−100495)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】