説明

ボールボンディング方法およびボールボンディング装置

【課題】 細線ワイヤをワークにボールボンディングする際に、ワークの特性を損傷させることなくボンディング可能とする。
【解決手段】 キャピラリから延出させた細線ワイヤ10の先端と放電電極との間で放電させ、細線ワイヤの先端部を溶融させて細線ワイヤの先端に接合用のボールを形成し、ボールをワーク20に押接することにより細線ワイヤをワークにボンディングするボールボンディング方法において、前記放電電極と細線ワイヤ10との間で放電させてボールを形成する際に、前記放電電極と細線ワイヤとの放電位置を、放電によってワークの特性が損傷を受けることがない距離以上にワークから離間した位置に設定して放電させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボールボンディング方法およびボールボンディング装置に関し、より詳細には、ワークを損傷させずにボンディングするボールボンディング方法およびボールボンディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボールボンディングは、細線ワイヤをワークに接合する際に、細線ワイヤの先端部を溶融してボール状とし、ボールをワークのボンディング位置に熱圧着あるいは超音波併用熱圧着によって接続する方法である。
このボールボンディングは、半導体チップの電極端子に電極突起(バンプ)を形成してフリップチップ接続用の半導体チップを製造する場合、あるいはハードディスクドライブのヘッドアセンブリ工程で、磁気ヘッドの電極とサスペンション電極とをボンディングによって接続するといった場合等に利用される。
【0003】
図6は、ボールボンディングの際に、細線ワイヤ10の先端に接合用のボール10aを形成する方法を示す。すなわち、細線ワイヤ10はボンディングツールのキャピラリ12を挿通して供給され、キャピラリ12の先端から細線ワイヤ10の先端部を延出させた状態で細線ワイヤ10と放電電極14との間で放電させることにより、細線ワイヤ10が溶融し(図6(a))、表面張力によって細線ワイヤ10の先端に接合用のボール10aが形成される(図6(b))。ボール10aの大きさは放電時の電圧値、電流値、放電時間によって制御され、通常、放電電極14と細線ワイヤ10との離間間隔が1mm〜1.5mm、放電電圧は4000〜5000Vである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図7は、半導体チップ等のワーク15にボールボンディング方法によってバンプ16を形成する方法を示す。ワーク15のボンディング位置の直上で細線ワイヤ10と放電電極14との間で放電させて細線ワイヤ10の先端にボール10aを形成し、キャピラリ12によりボール10aをワーク15に押接して接合した後、キャピラリ12を引き上げ、細線ワイヤ10を切断することによってバンプ16を形成する(図7(a))。ボール10aはキャピラリ12によって押圧されることにより扁平状となり、細線ワイヤ10を引き上げながら切断することによって、バンプ16の頂部に突起が形成される。
【0005】
このように、ボールボンディングでは、まず細線ワイヤ10と放電電極14との間で放電させ、細線ワイヤ10を溶融してボール10aを形成する。この場合、放電エネルギーの大半は、ボール10aを形成するエネルギーとして細線ワイヤ10の先端に集中するのであるが、放電電極14と細線ワイヤ10との間にはかなりの高電圧が印加されることと、大気中での放電によることから、ワーク15と放電電極14との距離、ワーク15の形状等の種々の条件によって、微弱な放電エネルギーがワーク15に向けて作用することがある。
【0006】
この場合、ワーク15の耐電圧が低い場合には、微弱な放電エネルギーであってもワーク15が損傷し、所要の特性が得られなくなってしまったり、抵抗値が変動してしまい、ワークが不良品になってしまうことがあるという問題が生じる。
そこで、本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、細線ワイヤを用いてワークにバンプを形成したり、細線ワイヤをボンディングしたりする際にワークを損傷することなく細線ワイヤをボンディングすることができるボールボンディング方法およびボールボンディング装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を備える。
すなわち、キャピラリから延出させた細線ワイヤの先端と放電電極との間で放電させ、細線ワイヤの先端部を溶融させて細線ワイヤの先端に接合用のボールを形成し、ボールをワークに押接することにより細線ワイヤをワークにボンディングするボールボンディング方法において、前記放電電極と細線ワイヤとの間で放電させてボールを形成する際に、前記放電電極と細線ワイヤとの放電位置を、放電によってワークの特性が損傷を受けることがない距離以上にワークから離間した位置に設定して放電させることを特徴とする。
【0008】
また、前記放電位置を、ボンディング操作の際に、ワークから所定距離離間した所定位置に固定して設けることを特徴とする。
また、前記放電位置を、ボンディング操作の際に、ボンディング装置のヘッド部が移動する移動位置に追随させて設けることにより、効率的なボンディングが可能になる。
また、前記放電位置を、ボンディング装置のヘッド部を移動させたまま、その移動経路中に設けることにより、さらに効率的なボンディングが可能になる。
また、前記ボンディング装置のヘッド部に風防部を設け、風圧による放電エラーを防止して放電することを特徴とする。
また、前記ボールボンディング方法を利用するボールボンディング装置により、ワークを損傷させることなく確実にボールボンディングすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るボールボンディング方法およびボールボンディング装置によれば、ワークの特性を損なうことなく確実にボンディングすることができ、製品不良の発生を抑えて、耐電圧の低いワーク等のボールボンディングを確実に行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明に係るボンディング方法を適用してワーク20に細線ワイヤをボンディングするボンディング装置の概30略構成を示す。ボンディング装置30は、ワーク20にボンディングする細線ワイヤ10を供給する細線ワイヤの供給部32と、細線ワイヤ10をワーク20にボンディングするヘッド部34と、ヘッド部34を所定位置に位置決めして移動させる移動機構部36と、供給部32、ヘッド部34および移動機構部36を制御する制御部38を備える。ヘッド部34にはキャピラリ12と放電電極14とが設けられ、制御部38ではキャピラリ12と放電電極14との放電タイミングも制御する。
【0011】
図2は、本発明に係るボールボンディング方法の第1の実施形態を示す説明図である。本実施形態では、ワーク20のボンディング位置Aにバンプを形成する際に、細線ワイヤ10と放電電極14との間で放電させて細線ワイヤ10の先端にボール10aを形成するための放電位置Bを、ワーク20から一定距離離間した位置に設定し、細線ワイヤ10と放電電極14との間で放電した際にワーク20の特性が損傷を受けないようにしてボンディングすることを特徴とする。
【0012】
なお、細線ワイヤを用いてワーク20にバンプを形成する方法は、図7に示す方法と同様であり、キャピラリ12から延出した細線ワイヤ10の先端部と放電電極14との間で放電させて細線ワイヤ10の先端にボール10aを形成し、キャピラリ12をボンディング位置まで降下させ、キャピラリ12によりボール10aをワーク20に押接して接合した後、キャピラリ12を引き上げ、細線ワイヤ10をバンプから引きちぎるようにする。
【0013】
ワーク20には所定間隔でボンディング位置Aが設定されているから、ボンディング装置30のヘッド部34を、各々のボンディング位置Aに位置合わせしながら、順次、バンプを形成していく。
本実施形態のボールボンディング方法は、放電位置Bをワーク20から所定距離離間させた所定位置に位置決めして、放電位置を固定する方法である。
【0014】
ボンディング装置30は、放電電極14をキャピラリ12とともに移動するように設けて、ボンディング操作ごとに、キャピラリ12とともに放電電極14を放電位置Bに戻して放電させるようにすることもできるし、放電電極14とキャピラリ12とを別体として、放電電極14を放電位置Bに固定しておき、キャピラリ12のみをボンディング位置と放電位置Bとの間で行き来させ、放電位置Bにキャピラリ12が戻ってきたところで、細線ワイヤ10と放電電極14とを放電させるようにすることもできる。
【0015】
本実施形態のボールボンディング方法では、細線ワイヤ10と放電電極14との間の放電位置Bを、細線ワイヤ10と放電電極14との間の放電によってワーク20が損傷を受けることがないようにワーク20から所定間隔離間した位置に設定しているから、放電操作によってワーク20が損傷したり、ワーク20の特性が変動したりすることがなく、ワーク20の品質に悪影響を及ぼすことなくボールボンディング方法することが可能となる。
なお、ワーク20と放電位置Bとの離間間隔、およびワーク20に対する放電位置Bの配置位置は、ワーク20の耐電圧やワーク20の形状等にしたがって、ボンディング装置30のヘッド部34の可動範囲内において適宜設定することが可能である。
【0016】
放電位置Bは、図のようにワーク20のボンディング面の直上に配置することもできるし、またワーク20の側方に離間した位置に配置することもできる。個々のワーク20の耐電圧等の個別の特性にもよるが、放電位置Bはワーク20の外面から少なくとも1mm以上離間させる配置とするのがよい。
【0017】
図3は、本発明に係るボールボンディング方法の第2の実施形態を示す説明図である。上述した第1の実施形態においては、放電位置Bを、ワーク20に対し所定の不動位置に設定したのに対して、本実施形態では、ワーク20のボンディング位置に合わせてボンディング装置30のヘッド部34を順次移動させる際に、同時に放電位置Bもヘッド部34とともに追随させるように移動させてボンディングすることを特徴とする。
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、細線ワイヤ10と放電電極14との間で放電させる放電位置Bは、ワーク20が放電によって損傷されないようにワーク20から所定距離離間した位置に設定する。
【0018】
図3に示すボールボンディングの操作では、ボール10aをワーク20に接合した後、ヘッド部34を次の隣接するボンディング位置の直上に移動させ、そのボンディング部の直上位置の放電位置Bで細線ワイヤ10と放電電極14とを放電させてボール10aを形成し、次いで、キャピラリ12を降下させてワーク20にボンディングする。
実際にはボンディング装置30のヘッド部34にキャピラリ12と放電電極14とを設け、キャピラリ12をワーク15に対して接離するように移動させる一方、放電電極14はワーク15と所定間隔を維持するようにして移動し、キャピラリ12が放電位置に戻ったところで細線ワイヤ10と放電電極14との間で放電するようにする。
【0019】
こうして、ワーク20のボンディング位置に沿ってヘッド部34が移動する動作に合わせて放電位置Bも、ワーク20との離間間隔を維持しながら移動してボンディングがなされる。
本実施形態のボールボンディング方法によれば、ワーク20に悪影響を与えることなくボンディングすることができ、また、ボンディング装置30のヘッド部34とともに放電位置Bが移動してボンディングされるから、効率的なボンディングを行うことが可能になる。なお、本実施形態ではボンディング装置30のヘッド部34は、ボンディング位置Aと放電位置Bとの間で直線的に移動する。
【0020】
図4は、本発明に係るボールボンディング方法の第3の実施形態を示す説明図である。本実施形態においても、第2の実施形態の場合と同様に、ワーク20のボンディング位置にボンディングするごとに、放電位置Bをボンディング位置とともに移動させて順次ボンディングする。ただし、第2の実施形態では、細線ワイヤ10と放電電極14とは停止した状態で放電させたのに対して、本実施形態ではボンディング装置のヘッド部34が移動している移動経路の途中で、ヘッド部34の移動を停止させずヘッド部34を動かしたまま放電させる。
【0021】
図4においては、ヘッド部34は隣接するボンディング位置A間でループ状の経路を描くようにして移動し、その移動経路の途中で、細線ワイヤ10と放電電極14との間で放電して次のボンディング位置にボンディングする動作を示している。
ヘッド部34を移動停止させずに細線ワイヤ10と放電電極14との間で放電させるから、その放電の際にワーク20が損傷を受けない位置、すなわちワーク20から所定距離以上離間した位置で放電させるように移動経路と放電タイミングを制御する。
【0022】
本実施形態の場合は、ヘッド部34を移動させたまま移動経路中で細線ワイヤ10と放電電極14との間で放電させてボール10aを形成するから、第2の実施形態と比較してさらに効率的にボンディングすることが可能である。
なお、このようにボンディング装置30のヘッド部34を移動させながら放電させる場合には、風圧によって放電方向が影響を受けることが起こり得る。図5は、風圧によって放電方向が影響を受けないようにヘッド部34に風防部18を設けた例を示す。
【0023】
この図5に示す風防部18は、キャピラリ12の移動方向に開口する円筒状の防風板をヘッド部34に取り付け、放電電極14と細線ワイヤ10との間の放電領域を遮蔽するように設けた例を示す。このような風防部18を設けることにより、ボンディング装置30のヘッド部34を移動させながら放電させる際に、風圧によって放電方向がワーク20に向かうことを防止し、確実に放電電極14と細線ワイヤ10との間で放電させることが可能となる。
【0024】
なお、上述した実施形態ではワーク20にボールボンディングによってバンプを形成する例について説明したが、本発明に係るボールボンディング方法はボール状の接続部を形成する場合に限らずワイヤボンディング等の他の接続形態においても利用できるものであり、ワイヤボンディング等の際にも、本発明方法を利用することによってワークに損傷を与えることなくボンディングすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ボールボンディング装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】ボールボンディング方法の第1の実施形態を示す説明図である。
【図3】ボールボンディング方法の第2の実施形態を示す説明図である。
【図4】ボールボンディング方法の第3の実施形態を示す説明図である。
【図5】放電電極に防風板を設けた例を示す説明図である。
【図6】細線ワイヤの先端にボールを形成する方法を示す説明図である。
【図7】基板にバンプを形成する方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0026】
10 細線ワイヤ
10a ボール
12 キャピラリ
14 放電電極
15 ワーク
16 バンプ
18 風防部
20 ワーク
30 ボンディング装置
34 ヘッド部
38 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャピラリから延出させた細線ワイヤの先端と放電電極との間で放電させ、細線ワイヤの先端部を溶融させて細線ワイヤの先端に接合用のボールを形成し、ボールをワークに押接することにより細線ワイヤをワークにボンディングするボールボンディング方法において、
前記放電電極と細線ワイヤとの間で放電させてボールを形成する際に、前記放電電極と細線ワイヤとの放電位置を、放電によってワークの特性が損傷を受けることがない距離以上にワークから離間した位置に設定して放電させることを特徴とするボールボンディング方法。
【請求項2】
前記放電位置を、ボンディング操作の際に、ワークから所定距離離間した所定位置に固定して設けることを特徴とする請求項1記載のボールボンディング方法。
【請求項3】
前記放電位置を、ボンディング操作の際に、ボンディング装置のヘッド部が移動する移動位置に追随させて設けることを特徴とする請求項1記載のボールボンディング方法。
【請求項4】
前記放電位置を、ボンディング装置のヘッド部を移動させたまま、その移動経路中に設けることを特徴とする請求項3記載のボールボンディング方法。
【請求項5】
前記ボンディング装置のヘッド部に風防部を設け、風圧による放電エラーを防止して放電することを特徴とする請求項4記載のボールボンディング方法。
【請求項6】
前記請求項1〜5の何れか一項記載のボールボンディング方法を利用することを特徴とするボールボンディング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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