説明

ボールミル

【課題】小径のボールであってもドラムからの飛び出しを防止することが可能なボールミルの提供。
【解決手段】略水平な軸線回りに回転する円筒状のドラム2内に砕石とボールとが一端の投入口より投入され、他端の排出口より排出されるボールミルであって、ドラム2の排出口2bに、砕石を通過させ、ボールの排出を防止するリング状のボール止め部材22と、中央に開口部23bを有し、ボール止め部材22の内周縁にボール止め部材22のドラム2の内側面22cよりさらにドラム2の内側に向かって傾斜したリング状のボール返し部材23とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転するドラム内に砕石とボールとを投入し、砕石とボールとを接触させることにより、砕石の角取りおよび表面研磨加工を行うボールミルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、従来、ボールミルは、軸線回りに回転される水平な円筒状を呈し、供給口を設けた端壁により一端が、また、排出口を設けた端壁により他端が閉塞されたドラムと、ドラムの排出口に設けられたボール排出防止用のグレートとを備えている。この種のボールミルでは、ボールを収容して回転するドラム内に被粉砕物を供給口から供給することにより、被粉砕物が、ドラムの回転に伴って持ち上げられて落下するボールの衝撃力によって粉砕され、排出口側へ移動して排出口に至り、グレートの目開きより小粒径の粉砕物(製品)のみがグレートを通過してドラム外に排出される一方、グレートの目開きより直径の大きなボールは排出されないものである。
【0003】
しかし、従来のボールミルは、所望の製品粒度よりはるかに大きな直径のボールミルを用いて被粉砕物を粉砕する場合にのみ適用できるものであり、被粉砕物がボールの直径と似通った粒度の場合にはボールが機外へ排出されてしまうという問題がある。そこで、例えば特許文献1では、ドラムの排出口に、先端に向かって縮径するテーパ状の排出トロンメルを備えることで、被粉砕物の粉砕に従って被粉砕物と一緒に排出口を経て排出トロンメル内へ移動してきたボールを、排出トロンメルの傾斜によってドラム内へ返送されるようにしている。
【0004】
また、例えば特許文献2には、ボールの出口側の集積またはボールの機外への排出を抑制または阻止するため、ドラムの内周に連続または断続する螺旋状の帯板からなるボール移動抑制・阻止手段を備えたボールミルが開示されている。また、例えば特許文献3には、ドラムの排出口に、円周が5分割された扇形形状のスリット部材が5枚連接された外径部と、1枚の円板状の砂利止め部材によって形成された内径部とからなり、中央に略円形状の開口部が形成された仕切り目板を備えたボールミルが開示されている。
【0005】
また、例えば特許文献4には、シェル本体の排出口の位置に、円形の外形形状を有し、全体に板状を呈するとともに、中央には、円形の開口部が設けられた仕切り板を有する見る装置が開示されている。この仕切り板は、その中央から外周側にいくに従い、背面側に湾曲する形状または直線状を呈しており、この仕切り板に押し寄せられたボールは仕切り板により押し返されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−340301号公報(段落0012,0014、図1)
【特許文献2】特開2004−298834号公報(段落0009、図1)
【特許文献3】特開平11−319605号公報(段落0022,0025、図5、図6)
【特許文献4】特開2004−181367号公報(段落0089,0108,0111,図4、図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1に記載のボールミルでは、排出口から排出トロンメルに移動してきたボールは実際にはドラム内へうまく返送されずに、排出トロンメル内に留まってしまい、ドラム内での被粉砕物の粉砕に利用されなくなってしまうという問題がある。また、特許文献2に記載のボールミルでは、ボールだけでなく被粉砕物の移動までもが帯板によって阻止されていまい、被粉砕物の粉砕がうまくできなくなるという問題がある。
【0008】
また、従来のボールミルは、120mm程度の大径のボールを用いて砕石を破砕することにより砂を製造するものであるが、本発明者らは特許文献3,4に記載のボールミルを応用し、30mm以上90mm以下の小径のボールを用いることにより砕石の破砕を少なくし、砕石の角取りおよび表面研磨を行おうと試みたところ、30mm以上90mm以下の小径のボールを使用すると、仕切り板の中央の開口部からボールが飛び出してしまうという問題が発生した。
【0009】
本発明者らは、この現象について鋭意研究した結果、ドラムが回転する際に、ドラム内のボールは上方に持ち上げられて下方に投下され、直下に位置する砕石に衝突することにより、砕石の角取りおよび表面研磨を行うが、小径のボールは軽量であるため、大径のものと比較してドラム内での跳ね返りが大きく、仕切り板の中央の開口部から飛び出していることが分かった。
【0010】
特許文献3に記載のボールミルでは、ドラムの排出口に外径部と内径部とからなる円板状の仕切り目板が設けられているが、これは単にドラムの軸線に対して直角な平板状であり、ドラム内で跳ね返って仕切り板に衝突したボールは仕切り板の表面に沿ってスリップし、中央の開口部から飛び出すことになる。また、特許文献4に記載のミル装置では、中央から外周側にいくに従い、背面側に湾曲する形状または直線状を呈した仕切り板を備えているが、この仕切り板はドラムの下方で排出口に向かって砕石とともに移動してくるボールを押し返すだけであり、ドラム内で跳ね返って仕切り板に衝突したボールは仕切り板の表面に沿ってスリップし、特許文献3に記載のボールミルと同様に、中央の開口部から飛び出すことになる。
【0011】
そこで、本発明においては、小径のボールであってもドラムからの飛び出しを防止することが可能なボールミルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のボールミルは、略水平な軸線回りに回転する円筒状のドラム内に砕石とボールとが一端の投入口より投入され、他端の排出口から排出されるボールミルであって、ドラムの排出口に、砕石を通過させ、ボールの排出を防止するリング状のボール止め部材と、中央に開口部を有し、ボール止め部材の内周縁にボール止め部材のドラムの内側面よりさらに内側に向かって傾斜したリング状のボール返し部材とを備えたものである。
【0013】
本発明のボールミルによれば、ドラム内に投入された砕石とボールとがドラムの回転により攪拌され、ボールが砕石と接触することにより、砕石の表面研磨が行われる。そして、砕石はドラムの排出口から排出され、ドラム内のボールは、リング状のボール止め部材により排出が防止される。また、ドラム内で跳ね返ってボール止め部材に衝突したボールは、ボール止め部材の表面に沿ってスリップしたとしても、このボール止め部材の内周縁には、このドラムの内周面よりさらに内側に向かって傾斜したリング状のボール返し部材が備えられているため、このボール返し部材によりドラムの内側に向かって跳ね返されるので、ボール返し部材の中央の開口部からの飛び出しが防止される。
【0014】
ここで、ボール返し部材の傾斜角は、ドラムの軸線に対して5〜75°、より好ましくは10〜60°、さらに好ましくは15〜45°、さらに好ましくは20〜30°であることが望ましい。これにより、ボール止め部材の表面に沿ってスリップするボールを、より効果的にドラムの内側に向かって跳ね返すことができ、ドラムからの飛び出しが防止されるようになる。なお、この傾斜角が5°未満の場合には、ボール止め部材の表面に沿ってスリップするボールがそのままボール返し部材の表面に沿ってスリップする可能性がある。また、この傾斜角が75°超の場合には、ドラムの内側面から跳ね返ってきたボールが直接開口部内に侵入する可能性がある。
【0015】
また、ボール返し部材の幅は、50mm以上であることが望ましい。これにより、ドラム内のボールがボール返し部材によって効果的にドラムの内側へ導かれるようになり、さらにドラムからの飛び出しが防止されるようになる。なお、幅が50mm未満では、ボールのドラム内側へうまく導かれない可能性がある。
【0016】
また、本発明のボールミルは、ドラムの内壁面にドラムの排出口より外側まで突出して設けられ、その突出部に砕石を通過させるスリットを有するライナを備えたものであることが望ましい。これにより、角取りおよび表面研磨が行われた砕石がこのライナのスリットからも排出されるようになる。
【0017】
また、本発明のボールミルは、ボール止め部材の外周縁とドラムの排出口との間に、砕石を通過させるスリットを有するリングを備えたものであることが望ましい。これにより、角取りおよび表面研磨が行われた砕石が、このリングのスリットからも排出されるようになる。
【0018】
また、本発明のボールミルのドラム内に投入される砕石の粒径は、0mm超25mm以下であり、ドラム内に投入されるボールの粒径は、30mm以上90mm以下であることが望ましい。これにより、流動性を良くし、砕石の破砕は少なくして、砕石の角取りおよび表面研磨を効果的に行うことができるようになる。本発明のボールミルでは、この30mm以上90mm以下の小径のボールであっても、前述のようにボール止め部材の表面に沿ってスリップしたボールが、ボール返し部材によりドラムの内側に向かって跳ね返されるので、ボール返し部材の中央の開口部からの飛び出しが防止される。
【発明の効果】
【0019】
(1)ドラムの排出口に、砕石を通過させ、ボールの排出を防止するリング状のボール止め部材と、中央に開口部を有し、ボール止め部材の内周縁にボール止め部材のドラムの内側面よりさらに内側に向かって傾斜したリング状のボール返し部材とを備えたことにより、小径のボールであっても、ボール止め部材に衝突し、ボール返し部材の表面に沿ってスリップしたボールは、ボール返し部材によりドラムの内側に向かって跳ね返されるので、ドラムからの飛び出しが防止される。これにより、生産効率良く、小径のボールで砕石の角取りおよび表面研磨を行うことが可能となり、粒形判定実積率の高い砕石を得ることができる。
【0020】
(2)ボール返し部材の傾斜角が、ドラムの軸線に対して5〜75°であることにより、ボール止め部材の表面に沿ってスリップするボールを、より効果的にドラムの内側に向かって跳ね返すことができ、ドラムからの飛び出しがさらに防止されるので、さらに生産効率が向上する。
【0021】
(3)ボール返し部材の幅が、50mm以上であることにより、ドラム内のボールがボール返し部材によって効果的にドラムの内側へ導かれるようになり、ドラムからの飛び出しがさらに防止され、生産効率が向上する。
【0022】
(4)ドラムの内壁面にドラムの排出口より外側まで突出して設けられ、その突出部に砕石を通過させるスリットを有するライナを備えたものであることにより、角取りおよび表面研磨が行われた砕石がこのライナのスリットからも排出されるようになり、砕石の排出が促進されるので、砕石の投入量を増やして生産量を向上することができる。
【0023】
(5)ボール止め部材の外周縁とドラムの排出口との間に、砕石を通過させるスリットを有するリングを備えたものであることにより、角取りおよび表面研磨が行われた砕石が、このリングのスリットからも排出されるようになり、砕石の排出が促進されるので、砕石の投入量を増やして生産量を向上することができる。
【0024】
(6)ドラム内に投入される砕石の粒径が、0mm超25mm以下であり、ドラム内に投入されるボールの粒径が、30mm以上90mm以下であることにより、流動性を良くし、砕石の破砕は少なくして、砕石の表面研磨を効果的に行い、製粒することが可能となり、粒形判定実積率の高い砕石を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態におけるボールミルの縦断面図である。
【図2】図1のA−A矢視図である。
【図3】図2のB−B断面図である。
【図4】本実施形態におけるボールミルの使用状態を示す図2のB−B断面図である。
【図5】本発明の別の実施形態を示す図2のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は本発明の実施の形態におけるボールミルの縦断面図、図2は図1のA−A矢視図、図3は図2のB−B断面図、図4は本実施形態におけるボールミルの使用状態を示す図2のB−B断面図である。
【0027】
図1において、本発明の実施の形態におけるボールミル1は、略水平な軸線回りに回転する円筒状のドラム2と、ドラム2の一端の投入口2aへ原材料である0mm超25mm以下の砕石を投入するシュート3と、ドラム2を回転させる駆動装置4と、ドラム2の他端の排出口2bから排出される砕石を分級する分級装置としてのトロンメル5とを備えている。ドラム2の側胴部には投入口2a側および排出口2b側にそれぞれ外輪体6a,6bが周設されている。これらの外輪体6a,6bは、タイヤ4a,4bに圧接されており、駆動装置4のタイヤ4a,4bが回転駆動されると、その動きに応じて回転し、ドラム2に回転力を伝達する。
【0028】
ドラム2は、投入口2aから排出口2bへ向かって直径が緩やかに細くなるように小さなテーパで形成され、途中からさらに直径が急に細くなるように大きなテーパで形成されたシェル20と、中央部が投入口2aとして開口された略円板状の側壁21と、排出口2bに設けられたボール止め部材22およびボール返し部材23とから構成されている。
【0029】
また、シェル20の内壁面には、金属製やゴム製等のライナ24が、投入口2aから排出口2bまで設けられている。なお、このライナ24は、ドラム2の排出口2bから100mm外側へ突出するように設けられている。また、このライナ24の突出部24aには、図3に示すように、ドラム2の軸線方向のスリット24bが多数形成されている。このスリット24bは、粒径30mm超のボールは排出させず、砕石を通過させるために30mm幅としている。
【0030】
図2および図3に示すようにボール止め部材22は、略円板状に形成され、中央部が開口されてリング状に形成された部材であり、中央部側をドラム2の内側に向かって若干傾斜させたものである。ボール止め部材22には、回転方向に長い多数のスリット22aが形成されている。スリット22aの幅は30mmであり、粒径30mm超のボールを排出させずに砕石を通過させるようになっている。
【0031】
ボール止め部材22は、放射状に接合部材22bが溶接などによって固着されており、この接合部材22bを介して、ドラム2の排出口2b端部から突出するブラケット2cにボルトによって締結され、固定されている。ブラケット2cの長さは、ライナ24との間に30mmの隙間Wが形成されるように調整されており、ボール止め部材22は、この隙間Wから粒径30mm超のボールを排出させずに砕石を通過させるようになっている。
【0032】
ボール返し部材23は、略円板状に形成され、中央部が開口されてリング状に形成された部材である。ボール返し部材23は、ドラム2の軸線に対して20°の傾斜角となるように、ボール止め部材22のドラム2の内側面22cよりさらに内側に向かって傾斜させたものである。ボール返し部材23には、放射状に接合部材23aが溶接などにより固着されている。ボール返し部材23は、この接合部材23aがボール止め部材22の接合部材22bにボルトによって締結され、ボール止め部材22の内周縁に固定されている。また、ボール返し部材23のリング部分の幅は、100mmとしている。
【0033】
トロンメル5は、金網によって略円筒状に形成されたものである。トロンメル5は、ドラム2にボルトによって締結されて固定されており、ドラム2とともに回転する。ドラム2から排出された砕石は、最終的にトロンメル5によって、金網を通過可能な粒径のものと、通過不可能な粒径のものとに分級される。なお、本実施形態においては、金網の目開き寸法は23mmとしている。
【0034】
次に、上記構成のボールミル1による砕石の製造について説明する。まず、ボールミル1のドラム2内には、粒径90〜70mm、70〜50mmおよび50〜30mmの複数の大きさの鉄鋼製のボールM1,M2,M3が2:3:5の割合で投入されている。ボールM1,M2,M3は、投入口2a側が最も粒径が大きく、排出口2b側が最も小さくなるようにし、小径のボールM3の比率が最も高くなるようにする。なお、ボールM1,M2,M3は、ボールミル1の運転中に徐々に摩耗していくが、粒径が小さくなるにつれてシェル20の内径の小さい方、すなわち排出口2b側へ移動していく。また、ボールM1は、運転中に投入口2a側へ適宜追加される。
【0035】
そして、原材料である0mm超25mm以下の砕石がシュート3に供給されると、シュート3によりドラム2の投入口2aからシェル20内に投入される。また、このシュート3にはバルブ3aを通じて一定水量の水が供給される。続いて、駆動装置4によってタイヤ4a,4bを回転駆動すると、外輪体6a,6bを介してドラム2が回転駆動される。これにより、ドラム2内のボールM1,M2,M3はライナ24の働きによって上方に持ち上げられて下方に投下され、直下に位置する砕石に接触する。
【0036】
ここで、本実施形態におけるボールミル1のドラム2内に投入される砕石の粒径が0mm超25mm以下と小さく、ボールM1,M2,M3の粒径も30mm以上90mm以下と通常のボールミルのボールの粒径よりも小さいので、砕石はほとんど破砕されず、角取り(製粒)および表面研磨されることになる。そして、図4に示すように角取りおよび表面研磨が行われた砕石Sは、30mm幅のスリット22a,24bおよび隙間Wを通過してトロンメル5へ排出され、トロンメル5により分級される。
【0037】
このとき、徐々に摩耗して排出口2b側へ移動してきたボールMは、ボール止め部材22により排出が防止されるとともに、ドラム2の回転によって上方に持ち上げられて下方に投下されるなどした際にドラム2内で跳ね返り、ボール止め部材22およびボール返し部材23に衝突する。ボール止め部材22に衝突したボールMは、ボール止め部材22の表面に沿ってスリップするが、このボール止め部材22の内周縁には、このボール止め部材22の内側面22cよりさらに内側に向かって傾斜したボール返し部材23が備えられているため、このボール返し部材23によりドラム2の内側に向かって跳ね返され、ボール返し部材23の中央の開口部23bから飛び出さない。
【0038】
また、このボール返し部材23は、ボール止め部材22の内側面22cよりもさらにドラム2の内側に向かって傾斜しているため、このボール返し部材23に直接衝突したボールMもドラム2の内側に向かって跳ね返され、ボール返し部材23の中央の開口部23bから飛び出さない。なお、粒径30mm未満まで摩耗したボールMは、スリット22a,24bおよび隙間Wを通過してトロンメル5へ排出される。
【0039】
以上のように、本実施形態におけるボールミル1では、ドラム2の排出口2bに、砕石をスリット22aおよび隙間Wより通過させ、ボールMの排出を防止するリング状のボール止め部材22と、中央に開口部23bを有し、ボール止め部材22の内周縁にボール止め部材22のドラム2の内側面22cよりさらに内側に向かって傾斜したリング状のボール返し部材23とを備えたことにより、小径のボールであっても、ボール止め部材22に衝突し、ボール返し部材23の表面に沿ってスリップしたボールは、ボール返し部材23によりドラム2の内側に向かって跳ね返されるので、ドラム2からの飛び出しが防止される。これにより、小径のボールで砕石の角取りおよび表面研磨を行うことが可能となり、粒形判定実積率の高い砕石を得ることができる。
【0040】
なお、本実施形態においては、ドラム2内に投入される砕石の粒径を0mm超25mm以下とし、ドラム2内に投入されるボールの粒径を30mm以上90mm以下とすることにより、砕石の破砕は少なくして、砕石の角取りおよび表面研磨を効果的に行うことが可能となっているが、本実施形態におけるボールミル1に使用することが可能な砕石の粒径およびボールの粒径はこれに限られない。なお、ライナ24のドラム2の排出口2bからの突出幅、ボール止め部材22のスリット22aの幅、ボール止め部材22とライナ24との隙間Wや、ライナ24のスリット24bの幅は、砕石の粒径に応じて適宜変更することが可能である。
【0041】
また、本実施形態におけるボールミル1では、ドラム2の内壁面にドラム2の排出口2bより外側まで突出して設けられたライナ24にスリット24bが形成されているため、角取りおよび表面研磨が行われた砕石Sが、このスリット24bからも排出されるようになり、砕石Sの排出が促進されるので、砕石の投入量を増やして生産量を向上させることが可能となっている。
【0042】
同様に、本実施形態におけるボールミル1では、ボール止め部材22とライナ24との隙間Wや、ボール止め部材22のスリット22aにより同様に砕石Sの排出を促進して、生産量を向上させており、従来比で2倍の生産量を実現できる。
【0043】
また、本実施形態におけるボールミル1では、ボール返し部材23の傾斜角をドラム2の軸線に対して20°としているが、この傾斜角は、ドラム2の軸線に対して5〜75°、より好ましくは10〜60°、さらに好ましくは15〜45°、さらに好ましくは20〜30°の範囲で変更することができる。これにより、ボール止め部材22の表面に沿ってスリップするボールを、より効果的にドラム2の内側に向かって跳ね返すことができ、ドラム2からの飛び出しがさらに防止される。
【0044】
さらに、本実施形態におけるボールミル1では、ボール返し部材23のリング部分の幅を100mmとしているが、この幅は50mm以上とすることも可能である。なお、この幅に上限はないが、150mm以下や200mm以下とすることができる。これにより、ドラム2内のボールMがボール返し部材23によって効果的にドラム2の内側へ導かれるようになり、さらにドラム2からの飛び出しがさらに防止される。
【0045】
なお、砕石の排出量を増やすために、図5に示すようにボール止め部材22の外周縁にスリットリング25を設けることも効果的である。図5は本発明の別の実施形態を示す図2のB−B断面図である。
【0046】
スリットリング25は、円筒状に形成された部材であり、ボール止め部材22の外周縁に溶接などにより固着されている。スリットリング25には、図5に示すように、粒径30mm超のボールを排出させずに砕石を通過させる30mm幅の多数のスリット25aが形成されている。このスリットリング25と前述のライナ24との間に30mmの隙間Wが形成されるように、ブラケット2cの長さが調整される。なお、この隙間Wや、スリットリング24のスリット24aの幅は、砕石の粒径に応じて適宜変更することが可能である。
【0047】
このように、ボール止め部材22の外周縁とドラム2との間にスリットリング25を備えたボールミル1では、角取りおよび表面研磨が行われた砕石Sが、このスリットリング25のスリット25aからも排出されるようになり、砕石Sの排出が促進されているので、砕石の投入量を増やして生産量を向上させることが可能となる。
【実施例】
【0048】
本発明の実施の形態におけるボールミル1により製造された粒径5mm以上20mm以下の砕石について粒形判定実積率の試験を行った。砕砂の粒形判定実積率試験は、日本工業規格JIS A5005(2009)、砕石の粒形判定実積率試験は、日本工業規格JIS A1104(2009)による。試料の詰め方は棒つき試験である。表1に試験結果を示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1から分かるように、実施例1,2の砕石の粒形判定実積率は61.4%となった。従来の砕石の粒形判定実積率は59%であり、従来と比較して極めて高い粒形判定実積率を実現できていることが確認できた。
【0051】
次に、本発明の実施の形態におけるボールミル1により製造された砕石を使用したコンクリート(実施例)と、従来のボールミルにより製造された砕石を使用したコンクリート(比較例)について性状の比較を行った。使用材料を表2に示す。なお、表2中、「ボールミル砕石2005」が実施例であり、「インペラ砕石2005」が比較例である。
【0052】
【表2】

【0053】
配合は、スランプ、空気量を変化させず、ワーカビリチーが同じとなるように粗骨材嵩容積を定めた。比較例(インペラ砕石2005)の配合を表3に、実施例(ボールミル砕石2005)の配合を表4にそれぞれ示す。
【表3】

【表4】

【0054】
試験練り結果を表5に示す。
【表5】

【0055】
表5から分かるように、実施例と比較例とでは、まだ固まらないコンクリートの比較において、ワーカビリチーを同じにした場合、単位水量が約4%減少した。この結果は、粒形判定実積率の単なる上昇のみではなく、表面研磨の効果が相乗したものと思われる。この単位水量の減少により、乾燥収縮量が減少すると考えられる。また、強度試験結果において、実施例と比較例とでは大きな差はない。よって、実施例の砕石を使用したコンクリートは耐久性が大きく改善されるものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のボールミルは、砕石の角取りおよび表面研磨加工を行う装置として有用であり、特に、小径のボールにより砕石の角取りおよび表面研磨を行い、粒形判定実積率の高いコンクリート骨材としての砕石を得る装置として好適である。
【符号の説明】
【0057】
1 ボールミル
2 ドラム
2a 投入口
2b 排出口
3 シュート
4 駆動装置
4a,4b タイヤ
5 トロンメル
6a,6b 外輪体
20 シェル
21 側壁
22 ボール止め部材
23 ボール返し部材
24 ライナ
25 スリットリング
22a,24b,25a スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略水平な軸線回りに回転する円筒状のドラム内に砕石とボールとが一端の投入口より投入され、他端の排出口から排出されるボールミルであって、
前記ドラムの排出口に、前記砕石を通過させ、前記ボールの排出を防止するリング状のボール止め部材と、中央に開口部を有し、前記ボール止め部材の内周縁に前記ボール止め部材の前記ドラムの内側面よりさらに内側に向かって傾斜したリング状のボール返し部材とを備えたボールミル。
【請求項2】
前記ボール返し部材の傾斜角は、前記ドラムの軸線に対して5〜75°である請求項1記載のボールミル。
【請求項3】
前記ボール返し部材の幅は、50mm以上である請求項1または2に記載のボールミル。
【請求項4】
前記ドラムの内壁面に前記ドラムの排出口より外側まで突出して設けられ、その突出部に前記砕石を通過させるスリットを有するライナを備えた請求項1から3のいずれかに記載のボールミル。
【請求項5】
前記ボール止め部材の外周縁と前記ドラムの排出口との間に、前記砕石を通過させるスリットを有するリングを備えた請求項1から4のいずれかに記載のボールミル。
【請求項6】
前記ドラム内に投入される砕石の粒径は、0mm超25mm以下であり、
前記ドラム内に投入されるボールの粒径は、30mm以上90mm以下である
請求項1から5のいずれかに記載のボールミル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate