説明

ポインティングデバイス

【課題】内部への異物侵入を確実に防止できるとともに、異物混入防止を大型化せずに実現できるポインティングデバイスの提供を目的とする。
【解決手段】リングキー10とセンターキー11との間には、隙間20を横断するように配置されかつ前記センターキー11が基準位置にあるときの隙間20よりも大きい寸法からなる弾性変形可能な防塵リブ21が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯情報端末に搭載する薄型アナログポインティングデバイスに適用されて、内部への異物の侵入を防ぐ防塵構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のアナログポインティングデバイスとしては、例えば特許文献1及び2に示される構成が示されている。
【0003】
特許文献1に示されるキーボードの防水ポインティング装置では、筐体ボードの穴の下の筐体ボードの下に設けられたプラスチック製のペデスタルと、これら筐体ボードとペデスタルとの間に設けられ、筐体ボードの穴の下に位置する穴を有する弾性パッドと、ペデスタルに垂直に固定され、弾性パッド及び筐体ボードの穴を通して突出する制御棒とからなる構成が示されている。
特許文献2に示される携帯型電子機器では、ポインティングデバイスを電子機器上筐体1の上面に設けられた凹部に載置し、さらにそれを上からシール材が取り付けられたパームレスト部材で覆うようにした構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−242417号公報
【特許文献2】特開2001−147741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の防水ポインティング装置では、制御棒の周囲に弾性パッドが設けられる構造であり、また、特許文献2の携帯型電子機器では、凹部内のポインティングデバイスの上方からシール材が配置される構造であり、これらの構造においてはシール効果が発揮される。しかしながら、平面方向にスライド又は下方に押し込むような三次元的な動きをするアナログポインティングデバイスでは、上述した特許文献1・2の技術を採用したとしても、隙間が生じる可能性があり、十分なシール性が発揮できない。
【0006】
また、平面方向にスライド又は下方に押し込むことにより入力操作信号を出力する形式のアナログポインティングデバイスでは、防塵構造のサイズが大きく携帯情報端末に搭載することができないという問題もあった。このようなアナログポインティングデバイスの例を図4及び図5に示す。
【0007】
図5は携帯情報端末の全体を示す斜視図であり、図4(a)(b)は図5の携帯情報端末に採用されたポインティングデバイス50を示す図である。
図4(a)はポインティングデバイス50の平面図、図4(b)は図4(a)のb−b線に沿う断面図である。これらの図において、符号51はセンターキー、符号52はリングキーであり、これらの間に隙間52が存在している。このため、センターキー51とリングキー52の間に異物が入り込み、該センターキー51の動きを阻害してしまう。なお、図4(b)において、符号54はフレーム、符号55は筐体、符号56はキーFPC、符号57はキーラバー、符号58はメタルドーム、符号59はマグネット、符号60はホールIC、であるが、これら構成要素の詳細は後述する。
【0008】
このようなポインティングデバイス50では、センターキー51が平面方向にスライド又は下方に押し込むような三次元的な動きをする構造であり、小型化、薄型化を優先するため、摺動部への異物の混入を防ぐための完全な構造を形成することができず、ユーザーが使用している間に隙間から埃や砂などの異物が侵入することを完全に防止することが困難である。そして、異物が侵入すると、ポインティングデバイスの動きを阻害し、操作性の悪化や、操作時の引っかかり、ストロークの減少といった問題の原因となることがあった。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、内部への異物侵入を確実に防止できるとともに、異物混入防止を大型化せずに実現することができるポインティングデバイスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。すなわち、本発明のポインティングデバイスでは、フレーム上に実装されたキーラバーと、該キーラバーに取り付けられたセンターキーと、該センターキーに隙間を介して重ねられ、該センターキーに対して、前記キーラバーの変形により平面方向へのスライド及び押し下げる方向への移動を許容するリングキーと、該センターキーの動きを検知するセンサ部と、を具備し、前記リングキーとセンターキーとの間には、前記隙間を横断するように配置されかつ前記センターキーが基準位置にあるときの隙間よりも大きい寸法からなる弾性変形可能な防塵リブが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポインティングデバイスによれば、リングキーとセンターキーとの間には、これらリングキーとセンターキーとの隙間を横断する防塵リブが設けられていることから、該防塵リブにより隙間が塞がれ、該隙間を通じて外部からポインティングデバイス内への異物の混入が阻止される。
また、該防塵リブは、これらリングキーとセンターキーとの隙間を横断するように配置されかつ前記センターキーが基準位置にあるときの隙間よりも大きい寸法からなる弾性変形可能な形状に設けられているので、該防塵リブの存在により、センターキーのスライド及び押し下げ動作が阻害されることはない。特に、センターキーの押し下げ動作された場合にも、前記センターキーが基準位置にあるときの隙間よりも大きい寸法からなる弾性変形可能な防塵リブが追従して伸張することで、該隙間が開くことはなく、該隙間を通じて外部からポインティングデバイス内への異物の混入が継続して阻止される。
また、リングキーとセンターキーとの間に、これらの隙間を横断するように配置されかつ前記センターキーが基準位置にあるときの隙間よりも大きい寸法からなる弾性変形可能な防塵リブが設けるという簡易な構成が採用されているので、小型化を保ちつつ高い防塵性を確保することができる。
また、前記防塵リブは、リングキーの円形開口部の内側に沿うように配置することによって、外観上見えない箇所に配置されることになり、デザイン性を損なうことなく高い防塵性を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態である薄型アナログポインティングデバイスの正断面図である。
【図2】図1に示す薄型アナログポインティングデバイスを矢印B方向にスライドさせた場合の正断面図である。
【図3】図1に示す薄型アナログポインティングデバイスを矢印C方向に押圧した場合の正断面図である。
【図4】図4(a)はポインティングデバイスの平面図、図4(b)は図4(a)のb−b線に沿う断面図である。
【図5】一般的な携帯情報端末の全体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る、携帯情報端末に搭載される磁気センサを用いた薄型アナログポインティングデバイスの実施形態について、図1〜図3を参照して詳細に説明する。
図1は図4のb−b断面に対応するポインティングデバイス100の中心に沿って切断した断面図であって、この図において、符号1はベースとなるフレームであり、符号2は該フレーム1と一定の間隔をおいて設けられた筐体である。なお、これらフレーム1及び筐体2は各種エンジニアリングプラスチックが使用される。
【0014】
このフレーム1上には両面テープ(図示略)を介して配線基板であるキーFPC3が配置され、該キーFPC3上にはシート状のキーラバー4が配置されている。
このキーラバー4は、その下部位置に、センターキー11(後述する)にクリック感を与えるためのドーム状でかつ弾性変形可能な複数のメタルドーム5が一体に設けられている。
【0015】
前記筐体2は円形開口部2Aを有しており、前記筐体2には該円形開口部2A内に露出するようにリングキー10が配置されている。
このリングキー10は中央部に円形開口部10Aを有し、かつ全体としてリング状に形成されたものであって、その下面が前記キーラバー4の上面に固定されている。なお、このリングキー10として、一般的なアルミニウム合金が使用される。
【0016】
前記リングキー10の円形開口部10A内にはセンターキー11が配置されている。このセンターキー11は全体として円盤状に形成されたものであって、その下面が前記キーラバー4の上面に固定されている。
前記リングキー10が設けられる前記キーラバー4上の取付位置は、該キーラバー4が断面視クランク状となった撓み部4A内にある。そして、このような撓み部4の存在により、該センターキー11の平面方向(矢印A−B方向)のスライドを許容かつ可能にするとともに、操作のための外力が加えられない場合に、前記キーラバー4の弾性力により前記センターキー11を円形開口部10Aの中央に位置する基準位置(図1で示される位置)に位置させるようにしている。なお、前記センターキー11として、一般的なアルミニウム合金が使用される。
【0017】
また、前記センターキー11は、図1中下方(矢印C方向)に操作のために押圧力が加えられた場合に、同方向に移動することになる。ここで前記センターキー11は前記メタルドーム5を有するキーラバー4上に位置しているために、図1中下方(矢印C方向)への操作のため外力が加えられなくなった場合には、前記メタルドーム5の弾性力により、前記センターキー11が、図1で示される基準位置に押し戻されることになる。
【0018】
前記センターキー11内にはマグネット6が設けられ、前記キーFPC3の下面には前記マグネット6の位置を検出するホールIC7が設けられている。そして、これらマグネット6及びホールIC7によりセンサ部8が構成されている。
【0019】
図1に示されるように、前記リングキー10とセンターキー11との間には、隙間20が形成されており、該隙間20を横断するように防塵リブ21が設けられている。この防塵リブ21は、図1に示すように断面視した場合、下端に向うに従い薄厚に形成されるとともに、前記センターキー11が基準位置(図1に示す位置)にあるときの隙間20よりも大きい寸法からなるシリコンゴムなどの弾性変形可能な材料で形成されている。
また、この防塵リブ21は、リングキー10の円形開口部10Aの内側でかつ円形開口部10Aに沿うように配置されており、平面視した場合にはリング状に形成されている。また、この防塵リブ21の下端はセンターキー11の周縁上面部に接するように配置されており、該センターキー11が矢印A−B方向にスライドした場合には、該センターキー11の上面に接しつつ摺動する。
【0020】
次に、前記防塵リブ21を含むリングキー10の動作について、図2及び図3を参照して説明する。
図2に示すように、操作のための外力が加えられて、リングキー10が一水平方向である矢印B方向にスライドした場合には、これらリングキー10とセンターキー11との隙間20を横断する弾性変形可能な防塵リブ21の下端が、センターキー11の矢印B方向へのスライドに伴って該センターキー11の上面に接しつつ摺動する。これにより、防塵リブ21により隙間20が塞がれた状態が保持され、該隙間20を通じて外部からポインティングデバイス内への異物の混入が阻止される。
また、操作のための外力(矢印B方向への力)が加えられなくなった場合に、前記キーラバー4の弾性力により、前記センターキー11は円形開口部10Aの中央に位置する基準位置(図1で示される位置)に戻ることになる。
【0021】
図3に示すように、センターキー11が押されて、該センターキー11に対して下方(矢印C方向)への押圧力が加えられた場合に、前記隙間21が拡大する方向(つまり本例では矢印C方向)に移動することになる。ここで、前記防塵リブ21は、これらリングキー10とセンターキー11との隙間20を横断するように配置されかつ前記センターキー11が基準位置(図1に示す位置)にあるときの隙間20よりも大きい寸法からなる弾性変形可能な形状に設けられているので、センターキー11の押圧動作がなされた場合にも、該隙間20よりも大きい寸法からなる弾性変形可能な防塵リブ21が追従して伸張することで、該隙間20が開くことはなく、該隙間20を通じて外部からポインティングデバイス内への異物の混入が継続して阻止される。
また、前記センターキー11は、メタルドーム5を有するキーラバー4上に位置しているために、操作のための外力(矢印C方向への力)が加えられなくなった場合には、メタルドーム5の弾性力により、前記リングキー10が、図1で示される基準位置に押し戻されることになる。
【0022】
以上詳細に説明したように、本実施形態に示される携帯情報端末に搭載される磁気センサを用いた薄型アナログポインティングデバイス100では、リングキー10とセンターキー11との間には、これらリングキー10とセンターキー11との隙間20を横断する防塵リブ21が設けられていることから、該防塵リブ21により隙間20が塞がれ、該隙間20を通じて外部からポインティングデバイス内への異物の混入が阻止される。
また、該防塵リブ21は、これらリングキー10とセンターキー11との隙間20を横断するように配置され、かつ前記センターキー11が基準位置にあるときの隙間20よりも大きい寸法からなる弾性変形可能な形状に設けられているので、該防塵リブ21の存在により、センターキー11の矢印A−B方向へのスライド及び矢印C方向への押し下げ動作が阻害されることはない。特に、センターキー11の押し下げ動作された場合にも、前記隙間20よりも大きい寸法からなる弾性変形可能な防塵リブ21が追従して伸張することで、該隙間20が開くことはなく(図3参照)、該隙間20を通じて外部からポインティングデバイス内への異物の混入が継続して阻止される。
【0023】
また、リングキー10とセンターキー11との間に、これらの隙間20を横断するように配置されかつ前記センターキー11が基準位置にあるときの隙間20よりも大きい寸法からなる弾性変形可能な防塵リブ21が設けるという簡易な構成が採用されているので、小型化を保ちつつ高い防塵性を確保することができる。
また、前記防塵リブ21は、リングキー10の円形開口部10Aの内側に沿うように配置することによって、外観上見えない箇所に配置されることになり、デザイン性を損なうことなく高い防塵性を実現できる。
【0024】
なお、上記実施形態において、センターキー11を構成する4方向キーをPCなどの樹脂成形品で構成することができる。この場合、キーラバー4を構成するシリコンラバー部はPC樹脂との2色成形で形成され、これらキーラバー4とセンターキー11のPC樹脂が化学的に結合するため十分な接着強度を確保することができる。
また、上記実施形態では、リングキー10側に防塵リブ21を設けたが、これに限定されず、センターキー11の周縁上部に設置することで、隙間20を閉鎖しても良い。
【0025】
以上のように本発明の薄型アナログポインティングデバイスについて実施例を示して説明したが、本願発明はこの実施例に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変更して実施することが可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、携帯情報端末に搭載する薄型アナログポインティングデバイスに関する。
【符号の説明】
【0027】
1 フレーム
2 筐体
4 キーラバー
5 メタルドーム
6 マグネット
7 ホールIC
8 センサ部
10 リングキー
10A 円形開口部
11 センターキー
20 隙間
21 防塵リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム上に実装されたキーラバーと、
該キーラバーに取り付けられたセンターキーと、
該センターキーに隙間を介して重ねられ、該センターキーに対して、前記キーラバーの変形により平面方向へのスライド及び押し下げる方向への移動を許容するリングキーと、
該センターキーの動きを検知するセンサ部と、を具備し、
前記リングキーとセンターキーとの間には、前記隙間を横断するように配置されかつ前記センターキーが基準位置にあるときの隙間よりも大きい寸法からなる弾性変形可能な防塵リブが設けられていることを特徴とするポインティングデバイス。
【請求項2】
前記防塵リブはシリコンゴムにより形成されることを特徴とするポインティングデバイス。
【請求項3】
前記センターキーは、前記リングキーの円形開口部から露出するように配置され、前記防塵リブは、前記リングキーの円形開口部の内側に沿うように配置されることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載のポインティングデバイス。
【請求項4】
前記防塵リブは先端に向うに従い薄厚に形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポインティングデバイス。
【請求項5】
前記センサ部は、前記センターキー内に設けられたマグネットと、前記マグネットの位置を検出するホールICとからなることを特徴とする請求項1に記載のポインティングデバイス。
【請求項6】
前記キーラバーは、前記センターキーの押し下げ方向への移動に対抗して該センターキーを基準位置に押し戻す弾性変形自在なメタルドームが一体に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のポインティングデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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