説明

ポタージュスープ用粉末製造法

【課題】ポタージュスープ用粉末の、お湯への溶解性をアップさせることができ、さらには、生産容易性、コスト低減化を図ることができるポタージュスープ用粉末製造法を提供する。
【解決手段】多糖類からなる粉末とポタージュスープ用原料粉末を粉砕処理して粉砕粉を形成し、さらに、前記粉砕粉を流動層造粒処理してポタージュスープ用粉末を製造するポタージュスープ用粉末製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インスタント型ポタージュスープ用粉末製造法に関するものである。とりわけ、ポタージュスープ用粉末の溶解性をアップさせるポタージュスープ用粉末製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インスタントスープ用粉末は、カップにインスタントスープ用粉末を入れ、お湯を注いでインスタントスープを作るカップ型のもの(I)と、鍋等にインスタントスープ用粉末とお湯を入れ、調理してインスタントスープを作る調理型のもの(II)とがある。さらに、このインスタントスープ用粉末の製造方法は、コンソメ型スープ用粉末の製造方法と、ポタージュ型スープ用粉末の製造方法とに大別される。なお、「お湯」とは、一般に40〜100℃の状態のものをいう。
【0003】
このコンソメ型スープ粉末の製造方法としては、原料を液状化させてスプレードライヤーで乾燥させ、得られた乾燥粉末を、流動層造粒機などで造粒して、顆粒状の粉末製品に成形することが行われている。
【0004】
一方、ポタージュ型スープ用粉末の製造方法では、前述のコンソメ型スープ粉末の製造方法のように原料を液状化させてスプレードライヤーで乾燥する処理を行わずに、異なる製造方法が用いられる。すなわち、スープ本来の旨さの決めてとして、とろみをつけた食感が求められるポタージュスープでは、そのとろみ付けをするために、多糖類をその他のポタージュスープ原料に混合してポタージュ型スープ用粉末を製造する。さらに、具材(たとえば、クルトン、乾燥野菜、きのこ類、魚介類、畜肉類等)を加えて、インスタント型ポタージュスープを完成させることが一般に行われる。
【0005】
また、従来のポタージュ型スープ粉末の製造方法では、多糖類をその他のポタージュスープ原料に混合してポタージュ型スープ用粉末を製造するものであったため、とろみ付けができても、お湯に十分に溶けにくいといった問題がある。このように、お湯に十分に溶けにくいポタージュ型スープ用粉末では、スープ本来の風味を十分に味わい難い。また、溶け難いポタージュ型スープ用粉末では、何度も攪拌等させながら飲用させることを強いることにもなり、結果的に、ポタージュ型スープ粉末の、製品価値を著しく損なうものとなっている。
【0006】
ところで、インスタントスープ用粉末の製造方法に関連して、下記特許文献1及び2がある。
【0007】
特許文献1及び2では、従来からの、スプレードライ方式で製造されている粉末飲食品が、発泡して、外観、風味、食感等が低下し、元の液状の飲食品には復元し難いという欠点を克服することを目的とする。この目的を実現するために、液体飲食品に、必要に応じて賦形剤を添加し、噴霧乾燥を行った後、粉末粒子に対して粉砕、破壊、圧縮の少なくともひとつの処理を行うこと、を特徴とする粉末飲食品の製造法が、同特許文献1及び2に開示されている。具体的には、特許文献1及び2には、復元に際して泡立ちが少なく且つ溶解性を有する粉末飲食品の製造法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−360229号公報
【特許文献2】特許第4429550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1及び2の粉末飲食品の製造法は、噴霧乾燥処理を行った噴霧乾燥処理品に特化するものである。すなわち、噴霧乾燥により生じた問題を解決するものである。そのため、ポタージュスープ用粉末の原料である市販品を使用する場合には適用できず、汎用性に劣るものとなっている。たとえば、市販品として見られる澱粉等は噴霧乾燥処理を行わないのが一般的であるが、特許文献1及び2によれば、このような市販品を使用する場合にも、液状化させて噴霧乾燥処理を行う必要があるが、澱粉液は高粘度の為噴霧出来ず、薄める必要があり、生産コストを増大させることになる。さらに、同文献1によれば、「必要に応じて」とはあるものの、「噴霧乾燥時に賦形剤を添加」することもあるため、そのような場合には、より生産コストを増大させるだけでなく、賦形剤の影響で風味が損なわれる。特に、特許文献1及び特許文献2の製造方法では、インスタントコーヒ或いはインスタントのお茶を製造する場合には適用できるし、コンソメ型スープ用粉末の製造にも適用できる可能性もある。しかし、ポタージュ型スープ用粉末の製造には適用できない。その理由は、特許文献1及び特許文献2の製造方法では、スープにトロミを出すために澱粉を添加するため、粘度が高すぎて噴霧乾燥処理ができないからである。
【0010】
このように、お湯への溶解性、生産容易性、及びコスト低減化という点において、特許文献1及び2では、十分なものに至っておらず、更なる改良が求められる。
【0011】
本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、多糖類からなる粉末とポタージュスープ用原料粉末を粉砕処理して粉砕粉を形成し、さらに、前記粉砕粉を流動層造粒処理してポタージュスープ用粉末を製造するポタージュスープ用粉末製造法を用いることにより、ポタージュスープ用粉末の、お湯への溶解性をアップさせることができ、さらには、生産容易性、コスト低減化を図ることができるポタージュスープ用粉末製造法を提供するものである。とりわけ、ポタージュスープ用粉末の原料が有する風味を損なわないポタージュスープ用粉末製造法を提供するものである。
【0012】
また、多糖類からなる粉末とポタージュスープ用原料粉末を粉砕する前に、予め一緒に混合して混合粉を形成した後に、前記混合粉を粉砕処理して前記粉砕粉を形成して、ポタージュスープ用粉末を製造するポタージュスープ用粉末製造法を用いることにより、粉砕処理を1回で行うことができる。そのため、コスト軽減化を容易にすることができる。
【0013】
また、多糖類からなる粉末とポタージュスープ用原料粉末を別々に粉砕して粉砕粉を夫々形成し、前記粉砕粉の夫々を一緒に流動層造粒処理して、ポタージュスープ用粉末を製造するポタージュスープ用粉末製造法を用いることにより、異なる粉末の特性に応じて粉砕処理を行うことができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明により、以下のポタージュスープ用粉末製造法が提供される。
【0015】
[1] 多糖類からなる粉末とポタージュスープ用原料粉末を粉砕処理して粉砕粉を形成し、さらに、前記粉砕粉を流動層造粒処理してポタージュスープ用粉末を製造するポタージュスープ用粉末製造法。
【0016】
[2] 前記多糖類からなる粉末が、澱粉、加工澱粉、グリコーゲン、セルロース、キチン、アガロース、カラギーナン、ヘパリン、ヒアルロン酸、ペクチン、及びキシログルカンからなる群から選択される少なくとも1種である[1]に記載のポタージュスープ用粉末製造法。
【0017】
[3] 前記多糖類からなる粉末と前記ポタージュスープ用原料粉末を粉砕する前に、予め一緒に混合して混合粉を形成した後に、前記混合粉を粉砕処理して前記粉砕粉を形成する[1]又は[2]に記載のポタージュスープ用粉末製造法。
【0018】
[4] 前記多糖類からなる粉末と前記ポタージュスープ用原料粉末を別々に粉砕して前記粉砕粉を夫々形成し、前記粉砕粉の夫々を一緒に流動層造粒処理する[1]又は[2]に記載のポタージュスープ用粉末製造法。
【0019】
[5] 前記多糖類からなる粉末が、多糖類からなる粉末とポタージュスープ用原料粉末の全質量に対して、質量比で5〜40%含まれる[1]〜[4]のいずれかに記載のポタージュスープ用粉末製造法。
【0020】
[6] 前記多糖類からなる粉末と前記ポタージュスープ用原料粉末の平均粒径が1〜2000μmであり、前記粉砕粉の平均粒径が、1〜500μmである[1]〜[5]のいずれかに記載のポタージュスープ用粉末製造法。
【0021】
[7] 前記流動層造粒した後の、前記ポタージュスープ用粉末の平均粒径が10〜1500μmである[1]〜[6]のいずれかに記載のポタージュスープ用粉末製造法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ポタージュスープ用粉末の、お湯への溶解性をアップさせることができ、さらには、生産容易性、コスト低減化を図ることができるポタージュスープ用粉末製造法を提供できるといった優れた効果を奏することができる。とりわけ、ポタージュスープ用粉末の原料が有する風味を損なわないポタージュスープ用粉末製造法を提供できる。
【0023】
また、多糖類からなる粉末とポタージュスープ用原料粉末を粉砕する前に、予め一緒に混合して混合粉を形成した後に、前記混合粉を粉砕処理して前記粉砕粉を形成して、ポタージュスープ用粉末を製造するポタージュスープ用粉末製造法を用いることにより、粉砕処理を1回で行うことができる。そのため、コスト軽減化を容易にすることができる。
【0024】
また、多糖類からなる粉末とポタージュスープ用原料粉末を別々に粉砕して前記粉砕粉を夫々形成し、前記粉砕粉の夫々を一緒に流動層造粒処理して、ポタージュスープ用粉末を製造するポタージュスープ用粉末製造法を用いることにより、異なる粉末の特性に応じて粉砕処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実験1を行った後の、実施例1のポタージュスープ用粉末の状態を示す写真である。
【図2】実験1を行った後の、比較例1のポタージュスープ用粉末の状態を示す写真である。
【図3】実験1を行った後の、実施例1のポタージュスープ用粉末の粒子表面の状態を示す写真である。
【図4】実験1を行った後の、比較例1のポタージュスープ用粉末の粒子表面の状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明のポタージュスープ用粉末製造法ついて具体的に説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備えるポタージュスープ用粉末製造法を広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0027】
[1]本発明におけるポタージュスープ用粉末製造法:
本発明におけるポタージュスープ用粉末製造法は、多糖類からなる粉末とポタージュスープ用原料粉末を粉砕処理して粉砕粉を形成し、さらに、前記粉砕粉を流動層造粒処理してポタージュスープ用粉末を製造するポタージュスープ用粉末製造法である。
【0028】
なお、本発明のポタージュスープ用粉末製造法は、後述のように主として、粉砕処理工程後に、流動層造粒処理工程を行うことにより行われる。ただし、本発明のポタージュスープ用粉末製造法には、前述の粉砕処理工程の前に混合処理工程を行うもの、或いは、粉前述の砕処理工程を経た後、流動層造粒処理工程中に一緒に混合処理工程を行うものも含まれる。
【0029】
たとえば、本発明のポタージュスープ用粉末製造法として、多糖類からなる粉末とポタージュスープ用原料粉末を混合し、混合粉を形成する混合処理工程(S1)を行った後、前記混合粉を粉砕して粉砕粉を形成する粉砕処理工程(S2)を行い、その後、前記粉砕粉を流動層造粒して造粒処理する流動層造粒処理工程(S3)行って、ポタージュスープ用粉末を製造するものが挙げられる。また、本発明のポタージュスープ用粉末製造法として、多糖類からなる粉末とポタージュスープ用原料粉末を別々に粉砕して前記粉砕粉を夫々形成する粉砕処理工程(T1)を経た後、前記粉砕粉の夫々を一緒に流動層造粒処理する流動層造粒処理工程(T2)を経て、ポタージュスープ用粉末を製造するものでもよい。
【0030】
前者の混合処理工程(S1)、粉砕処理工程(S2)、及び流動層造粒処理工程(S3)を経て、ポタージュスープ用粉末を製造する場合には、混合処理を予めした後に、混合された混合粉を粉砕処理する。さらに、流動層造粒処理工程(S3)でも、流動層造粒処理を行う過程で、混合処理される。そのため、製造工程内で粉末を確実に混合でき、品質の均一性を向上できる。また、後者の場合には、流動層造粒処理工程(T2)での、流動層造粒処理をする過程で混合処理も行われるため、前者に比べて混合処理を1回で終わらせることができる。そのため、生産コストを低減でき、粉砕処理も別々に行うため、多糖類からなる粉末とポタージュスープ用原料粉末の特性にあった粉砕を行える。たとえば、原料によっては、その粒径や硬さ等が異なるため、粉砕処理工程を別々に行った方がよい場合もあるためである。ただし、混合を十分にするという意味でより好ましいのは、前者の方である。
【0031】
[1−1]多糖類からなる粉末とポタージュスープ用原料粉末:
本実施形態における多糖類からなる粉末とポタージュスープ用原料粉末とは、ポタージュスープ用粉末の原料となる粉末であり、混合処理を経る前、及び粉砕処理工程を経る前の粉末を意味する。この「多糖類からなる粉末」には、澱粉、加工澱粉(たとえば、アセチル化澱粉、部分α化澱粉、尿素燐酸澱粉等)、グリコーゲン、セルロース、キチン、アガロース、カラギーナン、ヘパリン、ヒアルロン酸、ペクチン、及びキシログルカンからなる群から選択される少なくとも1種が含まれる。また、「ポタージュスープ用原料粉末」には、スィートコーン、たまねぎ、じゃがいも、にんじん、セロリ、ねぎ、かぼちゃ、とまと、食用油脂、砂糖、デキストリン、食塩、乳糖、全粉乳、チーズ、加糖脱脂練乳、バター、酵母エキス、チキンエキス、香辛料、たまねぎエキス、クルトン、パセリ、ひらたけ、まいたけ、ほうれん草、ブドウ糖、ベーコン、醤油、チーズクルトン、キャベツ、アミノ酸などの調味料、脱脂粉乳、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、たんぱく質濃縮ホエイパウダー、脱脂濃縮乳、マッシュルーム、ボルチーニ、乳たん白、ソルビトール、ビタミンEなどの酸化防止剤、酸味料、野菜エキス、バターオイル、グァーガム、カラメル色素などの粉末が含まれる。このように、本実施形態では、これらの多糖類からなる粉末とポタージュスープ用原料粉末とから、ポタージュスープ用粉末原料が構成されている。ただし、これらに限定されるものではなく、ポタージュスープ用粉末の原料に適した素材からなる粉末は、本製造方法に使用できる。
【0032】
好ましくは、「多糖類からなる粉末」が、澱粉からなる粉末であることである。多糖類からなる粉末としての澱粉を使用する場合には、澱粉からなる粉末が製造された時点からの時間の経過により、或いは、ポタージュスープ用粉末の製造工程を経ているうちに、粉末の粒子表面の乾燥が進行し、粉末表面(粉末の粒子の表面)が殻状となって固くなってしまう。そのため、お湯に対しての溶解性が悪くなる傾向が高い。したがって、粉砕処理を行うことにより、新たな粉末表面(粉末の粒子の表面)を、澱粉からなる粉末(粉末の粒子表面)に創出させて、流動層造粒処理した後も、ポタージュスープ用粉末のお湯に対しての溶解性をアップさせることができる。
【0033】
ここで、前述の澱粉には、(1)馬鈴薯澱粉、(2)タピオカ澱粉、(3)ワキシーコンスターチ、(4)甘藷澱粉、(5)小麦澱粉、(6)とうもろこし澱粉(コンスターチともいう。)、(7)ハイアミローコンスターチ、(8)小麦澱粉、(9)米澱粉、(10)豆類、の澱粉などが含まれる。中でも、入手のしやすさ、加工性、さらには、ポタージュスープ用粉末としての糊化温度ととろみの観点から、前述する(1)〜(4)からなる澱粉が好ましく、さらに入手性とインスタント粉末の粒度から、(1)馬鈴薯澱粉が最も好ましい。
【0034】
たとえば、澱粉からなる粉末として、馬鈴薯澱粉からなる粉末として使用する場合には、次のような工程を経たものを例示できる。具体的には、馬鈴薯を粉砕して、脱汁機(デカンターともいう。)で、固形分(澱粉と粕)と水分を分離させた後、篩にかけ、澱粉乳と澱粉粕とを分離させる。さらに、分離機(セパレータ)にかけて、澱粉を濃縮して固形分と水分を分離し、精製する。その後、真空脱水機とフラッシュドライヤー(気流乾燥機)により、脱水乾燥処理を行い、さらに製粉機にかけて澱粉からなる粉末とするものを挙げることができる。ただし、これに限定されるものではない。
【0035】
さらに、前記澱粉は、噴霧処理以外の乾燥方法により粉末化されたものであることがより好ましい。噴霧処理による乾燥方法により粉末化された澱粉の場合は、澱粉液の粘度が高すぎて噴霧出来ずに、澱粉液を薄めるなどの操作が必要となり、乾燥コストが増大し、市場競争力がないため、スープ原料として適さない。さらに、とろみが出にくいことから、舌触り、喉越し等の点でも劣る製品となりやすい。したがって、澱粉は、噴霧処理以外の乾燥方法、たとえば、真空脱水機とフラッシュドライヤー(気流乾燥機)により、脱水乾燥処理を行う等の乾燥方法により粉末化されたものが好ましい。
【0036】
さらに、前記多糖類からなる粉末(とりわけ、澱粉)が、多糖類からなる粉末とポタージュスープ用原料粉末の全質量に対して、質量比で5〜40%含まれることが好ましい。多糖類からなる粉末(とりわけ、澱粉)が、多糖類からなる粉末とポタージュスープ用原料粉末の全質量に対して、質量比で5〜40%含まれると、ポタージュスープにトロミが出て口当たりが良い。さらに、お湯を加えてポタージュスープにした際の、舌触り、喉越し等も損なわない。この点、特許文献1(特開2002−360229号公報)に開示される粉末飲食品の製造法では、噴霧乾燥処理が行われるため、多糖類からなる粉末が、上記所望範囲内であると粘土が高くなってしまい、ポタージュスープ用粉末を製造することができない。
【0037】
また、多糖類からなる粉末(とりわけ、澱粉)が、多糖類からなる粉末とポタージュスープ用原料粉末の全質量に対して、質量比で5%未満であると、お湯に対してのポタージュスープ用粉末の溶解性が良くなるが、ポタージュスープのいわゆるトロミが無くなり、口当たりが十分でなくなる。そのため、ポタージュスープとしての食感が損なわれる。一方、多糖類からなる粉末(とりわけ、澱粉)が、多糖類からなる粉末とポタージュスープ用原料粉末の全質量に対して、質量比で40%超であると、お湯に対してのポタージュスープ用粉末の溶解性が悪くなるだけでなく、ポタージュスープのいわゆるトロミが強くなりすぎてしまい、口当たりが十分でなくなる。また、舌触り、喉越し等も損なうことになる。多糖類からなる粉末(とりわけ、澱粉)の味が強すぎてスープとしての味が劣る。そのため、ポタージュスープとしての食感が損なわれる。
【0038】
[1−2]混合処理(S1):
前述のように、本実施形態における混合処理は、多糖類からなる粉末とポタージュスープ用原料粉末を、混合するために行われるものであって、粉砕処理後に、流動層造粒処理工程(T2)で流動層造粒処理と一緒に行われる混合処理は除かれる。この粉砕処理工程前に行われる場合には、この混合処理は、たとえば、混合層がV型又は円筒型の自転式の混合機、或いは、円錐型又は円筒型で、内部攪拌羽を備える混合機等によって行われるとよい。
【0039】
[1−3]粉砕処理(S2/T1):
本実施形態における粉砕処理は、多糖類からなる粉末とポタージュスープ用原料粉末を予め混合する場合には、混合粉を粉砕する処理にあたる(S2)。また、多糖類からなる粉末とポタージュスープ用原料粉末を予め混合しない場合には、多糖類からなる粉末とポタージュスープ用原料粉末を夫々粉砕処理するものにあたる。このような粉砕処理を行うのは、多糖類からなる粉末とポタージュスープ用原料粉末を使用する場合には、とりわけ、多糖類からなる粉末としての澱粉を使用する場合には、その製造時点からの時間の経過により、或いは、ポタージュスープ用粉末の製造工程を経ているうちに、粉末の粒子表面の乾燥が進行する。そのため、粉末表面(粉末の粒子の表面)が殻状となって固くなってしまい、お湯に対しての溶解性が悪くなる。したがって、粉砕処理を行うことによって、乾燥が進行し硬くなった粉末の粒子表面を壊して、新たな粉末表面(粉末の粒子の表面)を澱粉からなる粉末(粉末の粒子表面)に創出させることにより、流動層造粒処理した後も、ポタージュスープ用粉末のお湯に対しての溶解性をアップさせている。
【0040】
ここで、粉砕処理の粉砕条件としては、粉砕前の粒子径が1μm〜2000μmの範囲であって、粉砕後の粒子径が1μm〜500μmの範囲であることが好ましい。さらに、粉砕前の平均粒子径が10〜800μmであり、粉砕後の平均粒子径が3〜300μmであることがより好ましい。このような範囲であると、後述する造粒処理後に、ポタージュスープ用粉末の粒径を経ても、最終製品の粉末の粒子の大きさ等を揃えることができる。さらに、粉末表面(粉末の粒子表面)の殻を壊して、新たな粉末表面(粉末の粒子の表面)を澱粉からなる粉末(粉末の粒子表面)に創出させることにより、流動層造粒処理後に、お湯溶けを妨げる殻がない状態、或いは殻を壊した状態の、新たな粉末表面(粉末の粒子の表面)を有した状態の粉末を形成することができる。より好ましいのは、粉砕前の粒子径が5μm〜600μmの範囲であって、粉砕後の粒子径が3μm〜300μmの範囲である。さらに、粉砕前の平均粒子径が30〜300μmであり、粉砕後の平均粒子径が10〜200μmであることが、最も好ましい。このような粉砕条件とすることにより、後処理工程における流動層造粒処理工程を経ても、適度な大きさ、硬さの粒子からなる粉末を形成することができる。さらに、表面の殻が十分に壊わされて、新たな粉末表面(粉末の粒子の表面)を澱粉からなる粉末(粉末の粒子表面)に創出させることができるため、お湯溶けしやすいポタージュスープ用粉末を製造できる。
【0041】
一方、粉砕前の粒子径が1μm未満であると、細かすぎて破砕できない。また、粉砕前の粒子径が2000μm超であると、粉砕処理を行った後も粒子が大きすぎてしまい、流動層造粒処理がし難くなる。そのため、お湯溶けし難いものとなってしまう虞がある。さらに、舌触り、喉越し等も悪くなる。同様に、粉砕後の粒子径が1μm未満であると、流動化不良で造粒できない。粉砕後の粒子径が500μm超であると、粉砕処理を行った後も粒子が大きすぎてしまい、流動層造粒処理がし難くなる。そのため、お湯溶けし難いものとなってしまう虞がある。さらに、舌触り、喉越し等も悪くなる。
【0042】
このような粉砕処理としては、たとえば、微粉砕機、摩砕機等を用いて行うことが好ましく、特に、微粉砕機を用いることが好ましい。また、この微粉砕機には、衝撃式粉砕機、ジェット粉砕機が含まれるが、衝撃式粉砕機がより好ましい。この衝撃式粉砕機を用いて粉砕処理を行う場合には、たとえば、衝撃式粉砕機の回転数が1000〜10000rpm、処理速度を10〜1000kg/h、動力1〜30kWで、行うとよい。ただし、これに限定されるものではなく、公知の衝撃式粉砕機等を用いて、本発明のポタージュスープ用粉末製造法を行ってもよい。
【0043】
[1−4]流動層造粒処理:
前述のように、本実施形態における流動層造粒処理は、粉砕処理(S2/T1)によって、粉砕された粉砕粉を流動層造粒するものである。このように流動層造粒処理を行うことによりお湯溶けしやすく、粉末の形状、粒径等を揃えることができる。さらに、最終製品であるポタージュスープ用粉末の均質化を図ることができる。なお、この流動層造粒処理段階では、既に、混合処理を経て粉砕処理をした粉砕粉は、混合されているため、さらに十分に混合させながら流動層造粒を行う処理工程ともいえる。また、混合処理を経ずに、多糖類からなる粉末とポタージュスープ用原料粉末を、別々に粉砕処理した粉砕粉を使用する場合には、この流動層造粒処理にて、流動層造粒しながら混合処理も同時に行われる処理工程ともいえる。
【0044】
すなわち、多糖類からなる粉末とポタージュスープ用原料粉末を別々に粉砕して前記粉砕粉を夫々形成し、前記粉砕粉の夫々を一緒に流動層造粒処理する場合には、多糖類からなる粉末とポタージュスープ用原料粉末を粉砕して、形成した粉砕の夫々を、流動層造粒処理装置に送り込むことも好ましい。
【0045】
このような流動層造粒処理の造粒条件としては、造粒前の(粉砕後の)粒子径が1μm〜500μmの範囲であって、造粒後の粒子径が10μm〜1500μmであることが好ましい。さらに、造粒前の(粉砕後の)平均粒子径が3〜300μmであり、造粒後の平均粒子径が30〜1000μmであることがより好ましい。このような範囲であると、粉末表面の殻を壊しながら、お湯溶けしやすい粒径に揃えることができる。さらに、ポタージュスープ特有の、所謂トロリとした食感が持たせながら、喉越しが良いポタージュスープ用粉末を製造できる。より好ましいのは、造粒前の(粉砕後の)粒子径が3μm〜300μmの範囲であって、造粒後の粒子径が30μm〜1000μmの範囲である。さらに、造粒前の(粉砕後の)平均粒子径が10〜200μmであり、造粒後の平均粒子径が100〜700μmであることが最も好ましい。このような造粒条件とすることにより、最終製品であるポタージュスープ用粉末を、適度な大きさ、及び硬さ等の粒子からなる粉末を形成することができる。さらに、前述の粉砕処理工程により、新たな粉末表面(粉末の粒子の表面)が創出され、流動層造粒処理を経ても、その創出された状態のままに維持できるため、お湯溶けしやすいポタージュスープ用粉末を製造できる。したがって、ポタージュスープ特有の、所謂トロリとした食感が持たせながら、喉越しが良くいポタージュスープ用粉末を製造できる。
【0046】
一方、造粒前の粒子径が1μm未満であると、流動層造粒装置では、流動化不良で実用的な造流ができない。また、造粒前の粒子径が500μm超であると、造粒処理後に形成される粉末の粒子が大きすぎて、お湯溶けし難いものとなってしまう。同様に、造粒後の粒子径が10μm未満であると、粒子が細かいため、お湯に入れると凝集して大きな塊(いわゆる「ままこ」)となってしまう。また、造粒後の粒子径が1500μm超であると、粉末の粒子が大きすぎて、お湯溶けし難いものとなってしまう虞がある。さらに、舌触り、喉越し等も悪くなる。
【0047】
このような流動層造粒処理としては、流動層造粒装置等などを用いて行うことが好ましい。流動層造粒装置を用いて造粒処理を行う場合には、次のようなものを挙げることができる。たとえば、流動層造粒装置の、造粒前の粉砕粉の入口熱風温度が40℃〜100℃、流動層出口排気温度が20〜80℃になるよう設定し、スプレー液を水又は共液で行う。液量条件としては1〜1000ml/min、風量条件として0.1〜200m/minに設定するとよい。さらに、仕込み量0.1〜1000kg/1バッチで行い、1〜180min/1バッチ程度で、造粒処理するものを例示できる。ただし、これに限定されるものではない。
【0048】
[2]本発明のポタージュスープ用粉末製造法により製造されたポタージュスープ用粉末の使用方法:
本発明のポタージュスープ用粉末製造法により製造されたポタージュスープ用粉末は、前述の、カップ型(I)、又は調理型(II)として使用できる。たとえば、カップ型(I)であれば、本発明のポタージュスープ用粉末製造法により製造されたポタージュスープ用粉末をカップに入れる。さらに、そのカップにお湯を注いでインスタントスープを作るとよい。さらに、好みにあわせて、クルトン、調理された乾燥野菜、きのこ類、魚介類、畜肉類等を入れてもよい。また、たとえば、調理型(II)であれば、お湯を入れ(或いはお湯を沸かし)た、鍋等に、本発明のポタージュスープ用粉末製造法により製造されたポタージュスープ用粉末を入れる。そして、そのまま調理してインスタントスープを作るとよい。さらに、好みにあわせて、乾燥野菜、きのこ類、魚介類、畜肉類等を入れてもよい。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
ポタージュスープ用原料粉末3200gと、馬鈴薯澱粉粉末800gを粉砕する前に、混合機により予め一緒に混合して混合粉を4000g形成した。その後、前記混合粉を衝撃式粉砕機により、回転数3000rpm、処理速度200kg/h、動力3.7kWの条件下で、粉砕処理して前記粉砕粉を形成した。さらに、粉砕粉を流動層造粒装置により、流動層造粒処理してポタージュスープ用粉末を製造した。流動層造粒装置は、流動層入り口熱風温度70℃、流動層出口排気温度50℃、スプレー液を水(飲料水)として、液量100ml/minに設定するとともに、風量2m/min、仕込み量3.5kg/1バッチ、時間20min/1バッチに設定した。このようにして得られたポタージュスープ用粉末を実施例1とし、この製造した実施例1のうち、ポタージュスープ用粉末を18g使用して下記実験を行った。
【0051】
(実施例2)
ポタージュスープ用原料粉末3200gと、馬鈴薯澱粉粉末800gを別々に衝撃式粉砕機により粉砕して、粉砕粉を夫々形成した。衝撃式粉砕機は、回転数3000rpm、処理速度200kg/h、動力3.7kWの条件に設定した。さらに、粉砕粉の夫々を、流動層造粒装置により、一緒に流動層造粒処理してポタージュスープ用粉末を製造した。流動層造粒装置は、流動層入り口熱風温度70℃、流動層出口排気温度50℃、スプレー液を水(飲料水)として、液量100ml/minに設定するとともに、風量2m/min、仕込み量3.5kg/1バッチ、時間20min/1バッチに設定した。このようにして得られたポタージュスープ用粉末を実施例2とし、この製造した実施例2のうち、ポタージュスープ用粉末を18g使用して下記実験を行った。
【0052】
(比較例1)
ポタージュスープ用原料粉末3200gと、馬鈴薯澱粉粉末800gを混合機により混合して、混合粉を形成し、この混合粉を粉砕しないで、直接、流動層造粒処理してポタージュスープ用粉末を製造した。流動層造粒装置は、流動層入り口熱風温度70℃、流動層出口排気温度50℃、スプレー液を水(飲料水)として、液量100ml/minに設定するとともに、風量2m/min、仕込み量3.5kg/1バッチ、時間20min/1バッチに設定した。このようにして得られたポタージュスープ用粉末を比較例1とし、この製造した比較例1のうち、ポタージュスープ用粉末を18g使用して下記実験を行った。
【0053】
以上のように得られた実施例1、実施例2、及び比較例1について、下記のような実験を行った。
【0054】
(実験1)
実施例1、実施例2、及び比較例1のポタージュスープ用粉末を夫々18g用意し、さらに、95℃の温水を、150CC入れたカップを3つ用意した。そして、実施例1、実施例2、及び比較例1のポタージュスープ用粉末を、カップの温水の中に夫々に入れて、パドラー攪拌により攪拌した。この時の攪拌回数は5回とした。さらに、攪拌後、15分間静置した後、温水を捨てて、カップ底に残った、ポタージュスープ用粉末の溶解しなかった残量を計量した。なお、インスタントスープとして、お湯に溶けやすいと一般的に感じられるのは、前述の残量が20g以下であるといわれている。そのため、溶解性については、この残量を基準として評価した。
【0055】
(実験2)
上記実施例1、及び比較例1のポタージュスープ用粉末を、実験1を行った後、500倍に設定した光学顕微鏡で、粒子表面の状態を観察した。
【0056】
(考察)
実験1では、比較例1のポタージュスープ用粉末は、25.9g残量があった。この残量の状態を示した図2からも明らかなように、比較例1では、カップ底に残った、ポタージュスープ用粉末の残量が多く付着しており、十分な溶解性がないことが確認された。一方、実施例1では、ポタージュスープ用粉末は、11.9g残量があり、実施例2では、ポタージュスープ用粉末は、14.8g残量があった。この結果から、実施例1及び2は、比較例1と比較して、十分な溶解性があることが裏づけられた。なお、図1は、実施例1の、カップ底に残った、ポタージュスープ用粉末の残量の状態を示す写真であるが、この写真からも本発明が十分な効果を得るものであることが実証されている。
【0057】
また、実験2において、実験1を行った後の、実施例1、及び比較例1のポタージュスープ用粉末の、粒子表面の状態を観察したところ、図4に示されるように、比較例1は、粒子状態の表面が球形状あるいは球形に近似する状態のものが多数確認された。これは、粒子表面に殻状の硬い層が形成されているためであり、このような殻状の硬い表面層により、温水に溶けずにカップ底に残ったと考えられる。一方、図3に示されるように、実施例1は、形状が十分に破壊され、不規則形状の表面を有していることが確認できた。すなわち、粉末の粒子表面に、粉砕等により十分に新たな表面が創出されたため、比較例1と比べて、温水に溶けやすいものとなったと考えられる。このような観察から、本発明の製造方法が、従来のものより十分な溶解性を備えていることが実証された。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のポタージュスープ用粉末製造法によれば、ポタージュスープ用粉末の、お湯への溶解性をアップさせることができ、さらには、生産容易性、コスト低減化を図ることができるポタージュスープ用粉末製造法を提供できるといった優れた効果を奏することができる。とりわけ、ポタージュスープ用粉末の原料が有する風味を損なわないポタージュスープ用粉末製造法を提供できる。また、多糖類からなる粉末とポタージュスープ用原料粉末を粉砕する前に、予め一緒に混合して混合粉を形成した後に、前記混合粉を粉砕処理して前記粉砕粉を形成して、ポタージュスープ用粉末を製造するポタージュスープ用粉末製造法を用いることにより、粉砕処理を1回で行うことができる。そのため、コスト軽減化を容易にすることができる。また、多糖類からなる粉末とポタージュスープ用原料粉末を別々に粉砕して前記粉砕粉を夫々形成し、前記粉砕粉の夫々を一緒に流動層造粒処理して、ポタージュスープ用粉末を製造するポタージュスープ用粉末製造法を用いることにより、異なる粉末の特性に応じて粉砕処理を行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多糖類からなる粉末とポタージュスープ用原料粉末を粉砕処理して粉砕粉を形成し、
さらに、前記粉砕粉を流動層造粒処理してポタージュスープ用粉末を製造するポタージュスープ用粉末製造法。
【請求項2】
前記多糖類からなる粉末が、澱粉、加工澱粉、グリコーゲン、セルロース、キチン、アガロース、カラギーナン、ヘパリン、ヒアルロン酸、ペクチン、及びキシログルカンからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載のポタージュスープ用粉末製造法。
【請求項3】
前記多糖類からなる粉末と前記ポタージュスープ用原料粉末を粉砕する前に、予め一緒に混合して混合粉を形成した後に、前記混合粉を粉砕処理して前記粉砕粉を形成する請求項1又は2に記載のポタージュスープ用粉末製造法。
【請求項4】
前記多糖類からなる粉末と前記ポタージュスープ用原料粉末を別々に粉砕して前記粉砕粉を夫々形成し、前記粉砕粉の夫々を一緒に流動層造粒処理する請求項1又は2に記載のポタージュスープ用粉末製造法。
【請求項5】
前記多糖類からなる粉末が、多糖類からなる粉末とポタージュスープ用原料粉末の全質量に対して、質量比で5〜40%含まれる請求項1〜4のいずれか1項に記載のポタージュスープ用粉末製造法。
【請求項6】
前記多糖類からなる粉末と前記ポタージュスープ用原料粉末の平均粒径が1〜2000μmであり、前記粉砕粉の平均粒径が、1〜500μmである請求項1〜5のいずれか1項に記載のポタージュスープ用粉末製造法。
【請求項7】
前記流動層造粒した後の、前記ポタージュスープ用粉末の平均粒径が10〜1500μmである請求項1〜6のいずれか1項に記載のポタージュスープ用粉末製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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