説明

ポテトチップスの油含有量を減少させる方法

ポテトチップスの油含有量を減少させる方法が開示される。この方法は、フライヤにジャガイモスライス片を初めに入れて比較的急激かつ急速に温度を低下させ、その後に低温に長期間さらし、その後に標準的なフライ温度に上昇させることにより、ポテトチップスの油含有量が減少することを教示する。本発明はさらに、油含有量の減少をもたらす、高温水槽内へジャガイモを浸漬することを伴う前処理方法を開示する。本発明は、さらに、油含有量をより減少させる、過熱蒸気にポテトチップスをさらすことを伴う後処理方法を開示する。これら2つの前処理方法および後処理方法を、油含有量を減少させる一次的温度スキーム方法と組み合わせることにより、油含有量が大幅に減少したポテトチップスが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油含有量を減少させたポテトチップスを製造するための改良された方法に関し、より詳細には、フライヤ内における油吸収量を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポテトチップスの商業的製造においては、典型的には連続生産方式(以下、「連続製法」という)が利用される。この連続製法では、スライスされたジャガイモが、約185℃(約365°F)以上の温度のフライ油が入った槽の中に連続的に入れられ、パドルまたは他の手段によって油内を運ばれ、約2分半から3分フライした後に無端コンベヤベルトによって油から取り出される。この時、チップスの水分含有量は、約2重量%以下にまで減少させられている。最終的に得られる製品は、概して、典型的な商業的製造による連続製法ポテトチップスとして消費者により通常は認識され得る食感上および風味上の特性を有する。
【0003】
ケトルフライヤにおいてバッチ生産方式(以下、「バッチ製法」という)により製造されるポテトチップスは、連続製法にて典型的な商業的製造により製造されるポテトチップスとは明らかに異なることが消費者により通常は認識され得る食感上および風味上の特性を有する。その名称が示唆するように、バッチ方式のポテトチップスのケトルフライ製法は、高温油、例えば約150℃(約300°F)の油の入ったケトル内に、ジャガイモスライス片の一群を配置することを含む。ケトルスタイルのチップスの製造において使用される従来のケトルフライヤにおいては、調理油の温度は、本発明と同一の譲受人に譲渡され、本願明細書に援用する、特許文献1の図5に示されるような、概してU字型の時間対温度プロファイルに倣う。油内にジャガイモスライス片を入れると、油の温度は、典型的には、約28℃(50°F)以上も非常に急速に低下する。この図により示唆されるように、油の温度は、約4分の低点時間の間に、約116℃(約240°F)の低点温度まで低下する。次いで、ケトルに対する熱が急速に高められると、油の温度が徐々に上昇し始め、約149〜150℃(約300°F)の初期フライ温度程度に達する。結果的に得られるポテトチップスは、1.5重量%〜1.8重量%の水分含有量を有する。しかし、バッチ製法のフライ用途のみを扱うヘンソン(Henson)による特許文献1とは異なり、本発明は、フライ温度プロファイルに関するいくつかの発見を利用することにより、フライ製品における油吸収量を実際に制御するための方法を提供する。
【0004】
バッチ製法でフライされたチップスは、概して、連続製法でフライされたチップスよりも硬く、歯ごたえがあり、連続製法でフライされた典型的な市販のチップスよりも魅力的であると一部の消費者に受け取られる風味を有する。当技術分野においては、U字型の温度/時間プロファイルによって、ケトルスタイルのチップスの強烈な風味および独特な歯ごたえの特性が与えられると考えられている。しかしながら、市販のケトルフライヤは、火力および熱伝達性能により著しく制約を受ける、比較的高度でない設備である。したがって、観察されるU字型の温度/時間プロファイルは、従来型のケトル設備では不可避のものである。これは、このようなシステムが、生のジャガイモスライス片の一群の追加により生じる大きな温度低下を解消するに十分な速さで熱を供給することができないためである。油量、初期フライ温度、またはバッチあたりのポテト重量を変更することによって、温度プロファイルおよび最終製品特性において変化を与えることとなる。したがって、所望のケトルスタイル特性を有するポテトチップスを製造するためには、U字型の温度/時間プロファイルが実現されるように、プロセスのパラメータを調節することが必要となる。
【0005】
バッチ方式のケトルフライヤを使用する場合の生産速度は、使用される設備に応じて異なる。バッチ製法において使用される最新型のケトルは、一般的にはステンレス鋼で製造され、その寸法および容量は多様である。典型的には、これらのケトルは、ケトル底の直下に配置されたガスバーナによって加熱される。フライヤの性能は、1時間当たり約27.2キログラム(60ポンド)の少量から最大で1時間当たり約226.8キログラム(500ポンド)まで(最終製品基準による)の範囲に及ぶが、殆どのバッチ製法のフライ作業においては、1時間当たり約56.7キログラム(125ポンド)〜約90.7キログラム(200ポンド)のチップスを製造可能なケトルフライヤが使用される。所与の寸法のバッチ方式のケトルフライヤを効率的に使用するためには、所望のフライ温度を達成するように、油の体積当たりのジャガイモスライス片の特定の「負荷」、すなわち量を維持することが必要である。これらのおよび他の制約によって、バッチ方式のケトルフライヤを使用する場合のスループット量において限界が生じる。これとは対照的に、連続製法によって製造されるポテトチップスでは、1時間当たり約453.6キログラム〜約2268キログラム(1,000ポンド〜5,000ポンド)の最終製品を製造可能な連続方式のフライヤを使用することが可能である。したがって、ケトル製法またはバッチ製法は、連続製法よりも非経済的である。
【0006】
ケトルスタイルのチップスの製造においては、その特有の風味および食感の幾分かが、(洗浄済みスライス片とは対照的な)無洗スライス片の使用に起因すると考えられている。洗浄されると、風味に寄与し得る表面の澱粉および他の成分の幾分かが取り除かれる。しかし、これらのスライス片は、表面に澱粉が存在することに起因する粘着性を防ぐために、通常はフライ中に攪拌される。したがって、ケトルスタイルの食感および味に寄与すると考えられている表面の澱粉を残しつつも、粘着性を低下させるように補助することが望ましい。
【0007】
非常に重要な製品変数の1つが、油含有量である。油含有量が低いことは、栄養学的理由から望ましいが、過度に低い油含有量は、味および食感の低下をまねく。低い油含有量は、さらに別の理由により、すなわち販売促進上の理由から望ましい。スナック食品産業においては、スナック食品のより健康的な選択肢を消費者に提供することがトレンドになっている。多くの消費者は、従来のスナック食品に代わる、より健康的なスナック食品を好む。その結果、より健康的なスナック食品に対する大きな需要が存在する。従来のポテトチップスをより健康的なものに変える1つの選択肢は、チップスの油含有量を減少させることによるものである。
【0008】
連続フライ製法によって製造される従来のポテトチップスは、典型的には、約34〜38重量%の範囲の油含有量を有する。従来のバッチ方式でフライされるケトルチップスは、約30%の油含有量を有する。興味深いことには、連続製法により製造されたケトルスタイルのポテトチップス(「連続フライされたケトルチップス」、「連続ケトルフライ製法のチップス」、または「CKFチップス」としても知られている)は、約20〜約23重量%の、比較的低い油含有量範囲を示すことが発見された(特許文献2、第15頁)。従来の(または標準的な)ポテトチップスと、バッチ方式でフライされるケトルチップスと、連続方式でフライされるケトルチップスとの間の他の違いとしては、調理速度の違い、加熱速度の違い、および水分放出速度の違いが挙げられる。例えば、標準的なポテトチップスは、通常は約185℃(約365°F)以上にて2〜3分間フライされ、バッチ方式でフライされるケトルスタイルのポテトチップスは、典型的には約110℃(約230°F)から約200℃(約400°F)を超過しない温度までの温度範囲内において、約7〜9分間フライされる。
【0009】
油含有量を減少させるための複数の既知の方法が存在する。例えば、特許文献3は、水性ポリビニルピロリドンによりジャガイモをコーティングする方法を開示している。しかしながら、コーティングされたチップスは、約4重量%の水分含有量を示し、これは貯蔵安定性を大幅に低下させる。
【0010】
やはり本発明と同一の譲受人に譲渡される特許文献4は、油含有量を減少させるために比較的分厚いジャガイモスライス片を用いることを教示している。さらに、同文献は、フライされたチップスを、過剰な油を除去する熱空気流にさらすことを教示している。残念ながら、熱空気は、油の酸化を促進し、貯蔵寿命を短縮させる。
【0011】
最後に、特許文献5は、フライされたチップスを飽和蒸気にさらすことを開示している。しかし、特許文献3と同様に、この方法は、水分含有量を上昇させ、コストがかかるその後の乾燥工程を要する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,643,626号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0019007号
【特許文献3】米国特許第4,917,919号明細書
【特許文献4】米国特許第4,537,786号明細書
【特許文献5】米国特許第4,721,625号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように、いくつかの前処理方法および後処理方法が当技術分野において知られているが、これらは全て、能力に限界があり、重大な欠点を有する。さらに、フライヤ内における油吸収量を低減させるための方法は、事実上全く知られていない。したがって、フライヤ内にある間のポテトチップスの油吸収量を減少させる必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
提案される本発明は、フライされた典型的なポテトチップスと比較して油含有量を減少させたポテトチップスを製造するために、ポテトチップスの油含有量を制御するための方法を提供する。より詳細には、本発明は、ポテトチップスなどのフライ製品が調理油内に浸漬される際に示す油吸収量を制御するための方法を提供する。一実施形態によれば、フライヤにジャガイモスライス片を初めに入れて温度を比較的急激かつ急速に低下させ、その後に約104℃(約220°F)〜約127℃(約260°F)の低温に比較的長期間さらし(すなわち「低温調理期間」)、その後に標準的なフライ温度に上昇させることで、ポテトチップスの油含有量を減少させる。
【0015】
従来のフライされるポテトチップス(「主力」製品)が、しばしば最大で35重量%の油含有量を有してフライヤから排出される一方で、バッチ方式のケトルフライ製法のポテトチップスは、約30重量%以下の、比較的低い油含有量を有する。さらに、バッチ方式および連続方式のフライ用途において、とりわけCKFスタイルの製品を製造する際に、フライ中のチップスの温度プロファイルを操作することによって、結果的に得られる油含有量を、約20〜22重量%に制限することが可能となることが判明した。例えば、本発明によるフライ方法の一実施形態においては、a)約160℃(約320°F)の初期温度の調理油体を収容する調理油フライヤの中に、完全には調理されていない、かつ好ましくは無洗であるジャガイモスライス片を入れる工程と、b)約3分未満から約5分の間、フライヤ内の油の温度を、約160℃(約320°F)の初期温度から、約104℃〜約127℃(約220°F〜約260°F)の低下させた温度まで、低下させる工程と、c)少なくともジャガイモスライス片の近傍において、少なくとも3分の滞留時間にわたって、約127℃(約260°F)未満に油の温度を維持する工程と、d)該ジャガイモスライス片の温度を標準的なフライ温度まで上昇させる工程とによって、フライヤ内にある間のポテトチップスの油含有量を減少させる。
【0016】
一実施形態においては、ポテトチップスの油含有量は、ジャガイモが、完全な温度浸透を達成するために十分な実質的時間量の間、約54℃(約130°F)の水槽中に浸漬される、前処理「高温ジャガイモ効果」によってさらに制限される。この高温ジャガイモ効果は、油含有量/油吸収量をさらに低減させる/制限することが可能である。一実施形態においては、ポテトチップスの油含有量は、後処理である、約149℃(約300°F)の過熱蒸気の吹き付けによって、さらに減少させられる。この過熱蒸気による後処理は、油含有量をさらに減少させる。開示されるこれらの前処理方法および後処理方法の両方を本発明の改変された温度スキームと組み合わせて、CKF製法において使用すると、加工されたポテトチップスは18重量%未満の最終油含有量を示すことが可能である。
【0017】
本発明の特徴と見なされる新規の特徴が、添付の特許請求の範囲に記載される。しかしながら、本発明自体、ならびに本発明の好ましい使用形態、本発明の他の目的、および本発明の他の利点は、例示の実施形態についての以下の詳細な説明を添付の図面と組み合わせて読む場合に、最もよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態における、連続方式でケトルスタイルのポテトチップスを製造するために使用される装置の概略図。
【図2】複数の温度対時間プロファイル、および、ジャガイモスライス片の試験群をフライする際に記録されたフライされた製品の油含有量を比較するグラフ。
【図3】図2と同一のデータ点を含むが、2つの例示的な傾向線を伴うグラフ。1つの傾向線は、相対的に高温のプロファイルの中の1つを通って引かれ、1つの傾向線は、相対的に低温のプロファイルの中の1つを通って引かれる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の目的は、ポテトチップス中の油含有量を効果的に減少させるための手段を提供することである。図1は、フライヤ内にある間の油含有量を減少させる一次的方法に加えて、前処理方法、および後処理方法を利用する、連続製法でケトルチップスを製造するための好ましい一実施形態を示す。その結果、図1の実施形態により製造されるポテトチップスは、18重量%未満の油含有量を有することが可能となる。図2は、複数の温度対時間プロファイル、および、ジャガイモスライス片の試験群をフライする際に記録されたフライ製品の油含有量を比較するグラフである。図3は、図2と同一のデータ点を含むが、2つの例示的な傾向線を伴うグラフであり、1つの傾向線が、相対的に高温のプロファイルの中の1つを通って引かれ、1つの傾向線が、相対的に低温のプロファイルの中の1つを通って引かれる。図1は、連続製法でケトルチップスを製造する一実施形態を示し、図2および図3は、フライ工程について好ましい複数の相対的に低温のプロファイルを示すが、本発明は、その自明な変形形態を含めて、ケトルスタイルおよび従来の連続製法のポテトチップスのバッチ製法および連続製法の両方に適用することが可能である。
【0020】
(前処理)
前処理方法は、「高温ジャガイモ」法と呼ばれる新規の方法に関する。この高温ジャガイモ法は、完全な温度浸透が可能となるために必要な期間、温水中に皮をむいた丸ごとのジャガイモを浸漬することを含む。温度は、約54℃(約130°F)〜約60℃(約140°F)とすべきである。
【0021】
高温ジャガイモ法は、複数の利点を有する。これは、スライスする際の表面損傷を低減させ、結果として平滑なスライス片表面が得られると考えられている。関連する特許文献2は、一実施形態(図2)において、無洗のスライスされたジャガイモを高温油に入れる製法を開示している。連続方式のケトルフライ(CKF)製法およびバッチ方式のケトル製法において、スライスした後にスライス片を無洗のままとすることは、最終製品の食感を向上させることが判明しているため、好ましい点に留意されたい。
【0022】
高温ジャガイモ法により、スライスする際のスライスの表面澱粉保持率が向上する。対照群のジャガイモと「高温ジャガイモ」の、スライス後における遊離澱粉を観察するために実験を行った。その結果は、対照群のジャガイモがスライスされる際には、かなりの量の遊離澱粉が、破壊された細胞壁から放出されたことを示している。しかし、「高温ジャガイモ」スライス片では、遊離澱粉は微量または皆無であり、スライス片表面は、比較的平滑かつ比較的堅固となるようであり、細胞壁の比較的大部分が無傷の状態であった。したがって、この高温ジャガイモ法もまた、最終製品の食感を向上させると考えられる。
【0023】
高温ジャガイモ法の第2の利点は、この方法により、フライ中の製品の油吸収量を減少させる(または制御する)ことが可能となり、したがって、油含有量が減少したフライ製品を製造することが可能となる点である。「油含有量が減少した」という表現は、所与の最終水分含有量を達成する工程を通して生じる油吸着(しばしば通称的に「吸収」と呼ばれる)の量(または度合いまたは割合)が比較的低いことを意味する。高温ジャガイモ法により、澱粉がゼラチン化され、ペクチンの構造が変えられることによって、最終製品の油含有量が減少すると考えられる。これにより、スライス片表面上において選択透過性の化合物または基質の形成が促進されると考えられる。この基質は、Ca2+とペクチンメチルエステラーゼ(PME)との間における相互作用によって形成されると考えられる。この基質は、約48℃〜約71℃(120°F〜160°F)の温度において容易に形成されるが、さらに高い温度においては破壊される。水透過性の基質により、初期フライ段階の間に油がスライス片の内部に浸透することを防ぎつつ、水分がスライス片から離れることが可能となる。対照群のジャガイモと「高温ジャガイモ」についての比較を行った。両群をフライした後に、油含有量データを収集した。実際に、高温ジャガイモ法により製造されたチップスは、少ない油含有量を示した。
【0024】
(後処理)
後処理方法は、約149℃(300°F)の過熱蒸気を利用する。過熱蒸気は、飽和蒸気または熱空気といった他の選択肢が重大な欠点を有するため、飽和蒸気または熱空気に代えて使用される。例えば、飽和蒸気は凝結を生じさせ、これがチップス上の水分含有量を著しく増加させることになる。熱空気は、油の酸化を促進する。これらの両欠点は、貯蔵寿命を著しく短縮させる。過熱蒸気の使用により、飽和蒸気および熱空気に付随する欠点が軽減される。蒸気がより高温であり、フライされるチップスの質量当たりの蒸気流量がより大きいほど、形成される凝縮物の量は減少する。これにより、高価な乾燥機の必要性が低下する。説明されるこの方法では、水分含有量は約2%となり、油吸収量をさらに減少させる。
【0025】
(フライヤ処理)
油含有量は、フライヤにおいて温度/時間プロファイルを操作することによって調節することの可能な製品特性である。より詳細には、本願の発明者らは、実に驚くべきことに、フライヤにジャガイモスライス片を初めに入れて比較的急激かつ急速な温度低下を生じさせ、その後に比較的低い温度に比較的長期間さらし、その後に標準的なフライ温度まで上昇させることによって、油含有量を減少させることが可能であることを発見した。したがって、温度プロファイルを操作することにより、ポテトチップスの油含有量を制御することが可能となる。
【0026】
ポテトチップスを製造する際に、比較的急激かつ急速な温度/時間プロファイルを辿り、その後に、約104℃(約220°F)〜約127℃(約260°F)の温度範囲に少なくとも約3分から約8分までの間という比較的長時間さらすことによって、油含有量を減少させることができる。
【0027】
次に、図1を参照して、本発明の一実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態における、連続製法でケトルスタイルのポテトチップスを製造するために使用される装置の概略図である。特に明記しない限り、全ての図面にわたって、同一の対応する要素を特定するために同一の符号が使用される。図1は、ケトルスタイルのポテトチップスを製造する連続製法の一例であるが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明は、ケトルチップスおよび従来の連続製法のポテトチップスの両方、ならびに総じて他のフライされるポテト製品を製造するための、バッチ製法および連続製法の両方において、油含有量を減少させるために使用することができる。
【0028】
ジャガイモは、初めに皮を剥かれ、次いで水槽22中に完全に浸漬される。水槽22の温度は、約54℃(約130°F)〜約60℃(約140°F)の間で変更することができる。この水槽中におけるジャガイモの滞留時間は、約5分〜約2時間の間で変更することができるが、好ましい範囲は約20分〜約80分である。必要となる実時間は、ジャガイモの完全な温度浸透が可能となるために必要な時間に応じて決定することができる。この装置は、例えばアーシェル社(Urschel)製の厚さ可変スライサ1を使用して、皮が剥かれたジャガイモを約1.47mm(0.058インチ)〜約1.63mm(約0.064インチ)厚にスライスするための、スライサ1を含む。ジャガイモスライス片(好ましくは無洗の)は、単層分散させるために高速フラットワイヤベルト21などのベルト21の上に落とされ、次いで、ジャガイモスライス片同士のくっつきを防ぐように、実質的に単層配置にて油樋3の上流端に送られる。これらのスライス片は、単体および単層のスライス片が樋に送られるように、高速ベルト21の上に落下し、このベルト21によって運び去られる。これにより、集塊化が最低限に抑えられ、全てのスライス片が均一に高温油にさらされるようになり、したがって、軟質の中心部が形成される可能性が最低限に抑えられる。加熱用油は、約149℃〜約160℃(約300°F〜約320°F)の樋油温度で第1油入口41にて樋3の上流部分に進入する。本明細書において使用される際に、加熱用油とは、約149℃(約300°F)を上回る温度を有する調理油として定義される。ジャガイモスライス片は、約15秒〜約20秒の滞留時間にわたって樋の中に位置する。この滞留時間は、フライヤ内において製品同士がくっつくことを防ぐために、表面の澱粉を固化することを助ける。一実施形態においては、樋3は、スライス片同士の分離を確実にするために、複数の樋攪拌器5によって攪拌される。樋攪拌器5は、往復動式パドル、回転式フィンガ、または当技術分野において公知の他の混合要素を含むことができる。さらに、樋3により、以下においてさらに詳細に説明されることとなる図2および図3において示されるU字型温度/時間プロファイルの最も左側において示されるような、ジャガイモスライス片の初期温度が設定される。
【0029】
樋3の深さは、樋区域において浅く保たれるため(この深さは、例えばフライヤ40の主要部分内へ通じる樋排出部などにて、堰部の高さによって制御することが可能である)、比較的大きな表面積/体積比となる。したがって、フライヤ40の樋区域は、樋3およびジャガイモスライス片に熱を迅速に伝達することができ、または、樋3およびジャガイモスライス片から熱を迅速に吸収することができるため、ジャガイモスライス片から表面水分を高速で蒸発させて取り除くことを可能にする。しかし、概して、樋における温度低下は(もしあるとしても)、数度程度の最低限のものとなる。
【0030】
ジャガイモスライス片が樋3を通って下流に進む際には、複数の振動式フィンガ・パドル(時計の振り子に非常に似て前後に移動するパドル)、回転式フィンガ・パドル、ドラム・パドル、ダンカ、および/または、回転式パドル・ホイール13を使用して、これらのスライス片を樋3およびフライヤ40の主要部分を通して連続的に運ぶことが可能である。このような振動式および/または回転式部材は、集塊化(3つ以上のポテトチップスが互いにくっつくことと定義する)を制御するために、かつ、バッチ製法のケトルチップスに典型的な非均一な外観を与えるために、使用される。これらの振動式および/または回転式部材は、好ましくは、前後運動の速度および期間についての調節が可能である。
【0031】
次いで、ジャガイモスライス片および樋3は、フライヤ40の上流部分に出る。本明細書において使用される際に、フライヤ40の上流部分とは、大まかには第2入口25と第3入口35との間の区域として定義される。この望ましい効果は、油温度が、主フライヤ40の上流部分において低調理温度範囲に(ある時点では、最低温度に)急速に低下する点である。噛み応えのある硬いケトルスタイルのポテトチップスの製造において重要な要素は、低調理温度範囲および滞留時間である。さらに、先述のように、曲線の勾配、すなわち低調理温度範囲に到達する速度が、油含有量の減少における重要な要素となる。本明細書において使用される際に、低温滞留時間とは、ジャガイモスライス片が、a)フライヤ40の上流部分におけるおおよその時点〔このとき、フライヤの油温度の低下はほぼ止まっている(典型的には、フライヤ内における最低油温度から11℃(20°F)以内であり、例えば図2および図3においては、これは、およそ30秒および約127℃(約260°F)、すなわち、およそ120秒において発生する約116℃(約240°F)である低温から約11℃(約20°F)となる時点である)〕、から、b)フライヤの油温度がフライヤ内における最低油温度を著しく上回って上昇した、フライヤ内におけるおおよその時点〔一貫性を保つために、低温を約11℃(約20°F)上回るものとして定義することが可能であり、例えば図2および図3においては、これは、修正された温度/プロファイル実験において約300〜360秒にて発生するおよそ127℃(260°F)である〕まで移動するのに要する、おおよその時間量として定義される。本明細書において使用される際に、低調理温度範囲には、フライヤの上流部分において測定された最低油温度から約11℃(約20°F)以内の温度範囲内(例えば、実質的にはU字型温度/時間プロファイルの谷部分)の任意の温度を含む。例えば図2および図3において示される修正された温度プロファイル実験の結果においては、低温滞留時間は、約270〜330秒であった。低調理温度および低温滞留時間は、主フライヤの上流部分に冷却用油を送るまたは注入することにより、比較的良好に制御することが可能である。本明細書において使用される場合に、冷却用油とは、約121℃(約250°F)未満の温度を有する調理油として定義される。冷却用油は、周囲温度の新しい油、または高温油冷却器48から排出される油を含む(ただし、それらに限定されない)、複数の供給源から得られるものであってよい。
【0032】
一実施形態においては、第1出口44からの高温油は、フライヤ40の上流部分にある第2入口25に送られる前に、高温油冷却器48に汲み上げられ、この高温油冷却器48において約49℃(約120°F)の温度まで冷却される。上記の温度範囲は、例示のために提示されるものであって、本発明を限定するものではない。高温油冷却器48から出て第2入口25に進入する高温油の最適温度または最適温度範囲は、製品流(例えばフライヤ内のジャガイモスライス片の時間当たりの重量)、フライヤ40および樋3における油流、ならびに、樋3に供給される第1油入口41における油温度に基づいて決定することができる。高温油冷却器48を使用することにより、ジャガイモスライス片は、約3分〜約4分の低温滞留時間の間に、約38℃(約100°F)〜約127℃(約260°F)、より好ましくは約49℃(約120°F)〜約71℃(約160°F)の低調理温度に達することが可能となる。これらの低温により、油がジャガイモスライス片に浸透する能力を一時的に妨げ、したがって、油吸収量(または「油吸着量」)を減少させる、水透過性基質の形成が可能となる。したがって、高温油冷却器48の出口温度を、この基質の形成を制御するように、ひいては結果的に得られる製品の油含有量を変更するように、調節することができる。高温油冷却器48は、冷却媒体として、冷却水または任意の他の所望の流体を使用することができる。必要に応じて、設定/所定出口温度を実現するために、高温油冷却器48を補助するように、または高温油冷却器48と調和するように、周囲温度の新しい油を使用することも可能である。本明細書において使用される際に、周囲温度の新しい油とは、樋またはフライヤ以外の供給源から供給される調理油として定義される。高温油冷却器48からの冷却用油により、ジャガイモスライス片をさらに乾燥させるべく主フライヤ内の温度を上昇させるために加熱用油を追加するまでの間において、所望の低温滞留時間にわたって、確実に所望の低調理温度にしておくことが可能となる。
【0033】
ジャガイモスライス片が、所望の低温滞留時間の間に所望の低調理温度に達すると、フライヤの残りの部分50の油は、バッチ製法の温度/時間プロファイルを模倣するように、再加熱される。このようにして、フライヤの残りの部分50の温度は、ジャガイモスライス片が下流に移動するにつれて上昇する。本明細書において使用される際に、フライヤの残りの部分50とは、第3入口35、すなわち冷却用油の注入後に初めに加熱用油が注入される位置の概ね下流側の区域として定義される。この再加熱は、複数の油出口44、54、64を介してより低温のフライヤ油を排出すると同時に、複数の入口35、45、55、65を介してフライヤに加熱された高温油をさらに追加することによって、効率的に実現することが可能である。一実施形態においては、油入口は、追加されたばかりの高温油の排出を避けるように、油出口の下流に配置される。より低温の油が除去されることにより、再加熱される総油体積が少なくなる。必要に応じて、加熱用油は、所望の温度/時間プロファイルを得るために望ましい温度範囲にて、第3入口35から進入してもよい。第1入口41、第2入口25、第3入口35、第4入口45、第5入口55、および第6入口65における調理用油の温度は、当業者により認識可能な多数の方法にて制御することができる。例えば、これらの入口温度は、主熱交換器78、トリム熱交換器58、および冷却用熱交換器48を含む、熱交換器の出口温度を操作することによって、変更することができる。一実施形態においては、主熱交換器78およびトリム熱交換器58は、加熱媒体として蒸気を使用する。一実施形態においては、主熱交換器78は、約176.7℃(約350°F)〜約204.4℃(400°F)の出口油温度を有する。このような高温は、低点温度の後のフライヤ内の油の比較的良好な再加熱が可能となるように駆動力(driving force)を上昇させることが可能である。一実施形態においては、トリム熱交換器58が使用されない。入口油温度は、周囲温度の新しい油、高温油冷却器48から排出される油、または、加熱された油が熱交換器58、78から出ている状態における、熱交換器58、78を迂回するバイパスラインからの油を含む(ただし、それらに限定されない)、冷却用油を混合することによって制御することもできる。
【0034】
ジャガイモスライス片が、所望の低温滞留時間の間に所望の低調理温度に達すると、ジャガイモスライス片は、2重量%を下回る、さらに好ましくは約1.5重量%を下回る、ジャガイモスライス片出口水分含有量にまで乾燥される。本明細書において使用される際に、ジャガイモスライス片出口水分含有量とは、フライヤから出た後のジャガイモスライス片の水分含有量として定義される。一実施形態においては、油入口35、45、55、65のうち少なくとも1つの温度は、出口無端コンベヤベルト19の近傍に配置された水分測定デバイス90によって測定されたジャガイモスライス片の出口水分含有量に基づいて、調整される。例えばインフラレッド・エンジニアリング社(Infrared Engineering)[米国カリフォルニア州アーウィンデール(Irwindale)所在]から入手可能なデバイスモデルFL710などを、水分測定デバイスについて使用することができる。
【0035】
油流、油温度、および浸漬器17の速度は、ジャガイモスライス片出口水分含有量を制御するために、それぞれ別個に、または同時に、変更することが可能である。例えば、一実施形態においては、水分制御ストラテジーには、主熱交換器78の出口油温度を制御するために、カスケード型プロセス制御方法を含む。水分制御アルゴリズムは、3つのカスケード制御ループを含む。カスケード型の方法を用いることにより、プロセス制御制約条件に合致させるように各制御ループを最適に調整することが可能となり、したがって、可能な限り最良の全体制御性能が得られる。最外ループは、水分制御ループである。中間制御ループは、設定点が外側制御ループの出力によって生成され、かつプロセス制御変数として主熱交換器78の出口の温度を利用する、温度制御装置である。最内制御ループは、中間制御ループの出力により生成される設定点に基づいて、主熱交換器78にて蒸気流制御弁を制御し、プロセス変数として、(主熱交換器において油を加熱する)蒸気圧力を使用する。蒸気が好ましい加熱媒体であるが、ガス、熱流体などの他の熱供給源を利用することも可能である。この制御されるカスケードは、レシピにより決定される(recipe−driven)製品水分設定点を使用し、制御プロセス変数として水分計測読取値を利用する。このプロセスに付随する長いデッドタイムにより、従来のPIDループの代わりに、モデル予測先行制御ソフトウェアパッケージを使用した。モデル予測先行制御ソフトウェアは、フィッシャー・ローズマウント社(Fisher−Rosemount)[米国テキサス州オースティン(Austin)所在]、またはハネウェル・インダストリアル・オートメーション・アンド・コントロール社(Honeywell Industrial Automation & Control)[米国アリゾナ州フェニックス(Phoenix)所在]から購入することが可能である。従来の制御ループでは、このような場合に、通常はプロセス・ラグを補償するためにデチューンする必要があり、したがって、プロセス制御性能を犠牲にすることとなる。先行制御ソフトウェアは、より積極的で最適なプロセス制御を可能にする。例えば、主熱交換器78から出る油の出口温度は、フライヤから排出されるジャガイモスライス片の水分含有量を約0.8重量%〜約2重量%に保つように、継続的に調節される。水分含有量設定点が1.4%であり、水分含有量が約1.4重量%を上回るように上昇する場合には、主熱交換器78の温度制御装置に信号が送信され(中間ループ)、次いでこの温度制御装置が、主熱交換器78内へ入る蒸気圧力を調整する制御弁に信号を送信し(内側ループ)、次いでこの制御弁が、主熱交換器78内へ入る蒸気流を制御する。本発明による水分制御は、樋に進入する油の温度(樋油温度)、または低温区域に進入する冷却された油の温度(冷却用油温度)に影響を及ぼすことなく、主熱交換器の高温油温度の調整によって実現することが可能である。この例は、どのようにしてフライヤの最後の3つの区域にわたる水分制御を、油温度の変更のみによって(油流および浸漬器速度を一定に維持しつつ)それぞれ別個に制御することが可能であるかを示すが、当業者は、上述の説明に基づき、それぞれ別個に、または、油温度、油流、および浸漬器速度を組み合わせて、チップスの水分を制御することも可能である点に留意されたい。
【0036】
一実施形態においては、樋3の温度は、例えば、加熱された油が熱交換器78から排出されている状態において、熱交換器78を迂回するバイパスラインなどからの冷却用油流の割合を増減させることによって、それに応じて調節することが可能である。したがって、高温油温度を、最後の3つの入口45、55、65における流量を実質的に変化させることなく操作することができる。同様に、油流を、最後の3つの入口45、55、65における温度を実質的に変化させることなく操作することができる。
【0037】
ジャガイモスライス片がフライ装置を通って下流に進む際に、複数の回転式フィンガ・パドル、ドラム・パドル、パドル・ホイール、ダンカ13、および/または、浸漬コンベヤ17を用いて、スライス片間挙動を制御する、すなわち、スライス片の分離および単層配置を保つために油およびジャガイモスライス片を攪拌する、または、ジャガイモスライス片が約2%未満の、より好ましくは約1.5%未満の水分含有量まで乾燥されるように、効率およびスループットを向上させるようジャガイモスライス片を回収および浸漬することができる。浸漬器17の前では、ジャガイモスライス片は、依然として幾分の粘着性を有するため、油およびスライス片は、スライス片が互いにくっつくまたは凝集することを防ぐために、パドル・ホイール13によって攪拌されて単層配置状態になされる。これらのスライス片の外層が十分に調理され、粘着性がなくなると、スライス片は、スループットを上昇させるために、例えば浸漬コンベヤ17などにより層状にされることが可能となる。ドラム・パドル13の速度または浸漬コンベヤ17の速度を変更して、フライヤ内のジャガイモスライス片の滞留時間を増減させることができる。一実施形態においては、ドラム・パドル13の速度および/または浸漬コンベヤ17の速度は、出口無端コンベヤベルト19の上方に配置された水分測定デバイス90によって測定されるジャガイモスライス片の出口水分含有量に基づいて調節される。好ましい実施形態においては、浸漬コンベヤ17の速度および最後の2つの入口55、65の温度の両方が、2%未満の、好ましくは約1.4%の出口水分含有量を達成するために、スマート制御ソフトウェアによって自動的に変更される。
【0038】
スライサ1内のジャガイモスライス片がスライサ1から出て無端取出コンベヤ19に至るまでの合計滞留時間は、約7分〜約9分である。上述の製法によって製造されるポテトチップスの油含有量は、約26重量%〜約30重量%であり、これは、従来のバッチ方式のフライ製法において製造されるケトルスタイルのチップスよりも低くなり得る。高温ジャガイモ法は、約2〜5重量%のさらなる減少を可能にする。したがって、高温ジャガイモ効果および修正された温度/時間プロファイルが組み合わされる場合には、約20重量%〜約23重量%程度の低さの最終油含有量レベルを実現することが可能となる。
【0039】
最終的には、フライされたポテトチップスは、所望に応じて、油含有量をさらに減少させるために、フライ後処理を施してもよい。好ましい一実施形態においては、全部のプロセスが、このフライ後処理を含む。コンベヤ19は、別のコンベヤ23に連結される。別のコンベヤ23は、蒸気を通すことが可能なベルトを有する。このベルトは、穴を有するプラスチック材料、粗目織布、または鎖で連結された材料で作製することができる。コンベヤ23は、チップスをフライ後処理フード24内に運ぶ。フード24の内部にて、チップスは、約149℃(約300°F)の過熱蒸気を吹き付けられる。この蒸気の流量および温度は、特定の油含有量および水分含有量を得るために、調節することができる。この蒸気は、チップスから過剰な油を回収および除去する。この蒸気および凝縮物は、コンベヤ23を通って流れ、回収ボックス27内に回収される。回収ボックス27において凝縮物および除去された油が分離され、次いで余分な蒸気が蒸気加熱器26内で再加熱され、蒸気は、フライ後処理フード24内に再注入される。このフライ後処理により、油含有量をさらに約4〜5%減少させることができる。
【0040】
図1に示される連続方式のフライシステムにより、フライ油温度を正確に制御すること、および、それぞれ異なる区域においてそれぞれ異なる温度を維持することが可能となる。したがって、これは、特定の所望されるおよび/または所定の温度対時間プロファイルに従って、ポテトチップスおよび/またはポテトクリスプをフライするための、効果的なツールである。
【0041】
(実施例)
図2は、9つの温度対時間プロファイル(各温度プロファイルは、CELL1、CELL2、等〜CELL9として示され、対応するデータ点が、セル番号のみによって、すなわち1、2、等〜9によって表される)、および、ジャガイモスライス片の試験群をフライする際に記録されたフライ製品の最終的な油含有量を比較するグラフである。図3は、図2と同一のデータ点を含むが、2つの例示的な傾向線を伴うグラフであって、1つの傾向線Y5が、相対的に高温のプロファイルの中の1つを通って引かれ、1つの傾向線Y7が、相対的に低温のプロファイルの中の1つを通って引かれる。
【0042】
図2および図3を参照すると、5つのより高温側の温度プロファイル(CELL1〜CELL5)は、標準的なケトルスタイルのバッチフライ製法に従ってフライされた生のジャガイモスライス片の5つの対照試験群に対応する。4つの低温側の温度プロファイル(CELL5〜CELL9)は、修正された(すなわち、ジャガイモスライス片が低温側の温度プロファイルの条件に従うように修正された)ケトルスタイルのバッチフライ製法に従ってフライされた生のジャガイモスライス片の4つの実験群に対応する。特徴的なU字型が、全ての温度プロファイルにおいて、すなわち高温側の温度プロファイル(CELL1〜CELL5)および低温側の温度プロファイル(CELL6〜CELL9)において、現れたことに留意されたい。時間は、秒単位で水平方向軸に沿って表され、調理油/フライ油の温度は、華氏で表される。さらに、比較のために、複数の温度/時間データ点が、例示のCKF(連続方式のケトルフライ)製法について示される。破線の垂直線は、浸漬時間(または浸漬点)を示している。浸漬時間(または浸漬点)とは、すなわち、ジャガイモスライス片が、浸漬器の下方において層状の製品として集まるように、例えば図1において図示されるように浸漬器/浸漬コンベヤ17などを用いることによって、完全に浸漬される時点(示される例示のCKF製法の際には約420秒にて)をいう。この点より前では、スライス片は、粘着性を有しており、または依然として粘着性を有したままである場合があり、したがって、望ましくないことに、互いにくっついたり共に凝集したりする傾向があるため、浸漬することができない。
【0043】
対照サンプルについての高温側の温度プロファイルは、ジャガイモスライス片が、約160℃(約320°F)の、概して154℃(310°F)〜163℃(325°F)の範囲内のフライヤに進入することを示すことに留意されたい。対照サンプルにおけるフライヤ油温度は、約45秒から約300秒までにおいて約127℃(約260°F)〜約138℃(約280°F)の低調理温度範囲に達してこれを維持するまでの間において、急速に低下する。なお、最低温度は、約110秒にて(または110秒〜120秒の範囲内のどこかにおいて)発生する。次いで、この温度は、所望の高点温度に達する時点に応じて、300秒または300秒の直前から(約110秒における最低温度からゆっくりと上昇する)、450秒またはさらには500秒までにおいて、低調理温度範囲から安定的に上昇する。概して、対照サンプルを囲むフライ油/調理油は、約450秒(または約420秒〜約480秒までの間)にて、約160℃(約320°F)の高点温度に達した。対照サンプルは、1.14重量%の平均水分含有量に達するために、約8分(すなわち480秒)の平均フライ時間を要した。対象サンプルにおいて結果的に得られたフライされたポテトチップスは、約38重量%の平均油含有量を有し、最少油含有量は約35%、最大油含有量は約41%であり、標準偏差は約2%であった。
【0044】
修正された低温側の温度プロファイルおよびその最終製品の特徴に関しては、実験サンプルの低温側の温度プロファイルは、ジャガイモスライス片が、約160℃(約320°F)の、概して154℃(310°F)〜163℃(325°F)の範囲内のフライヤにやはり進入することを示すことに留意されたい。実験サンプルにおけるフライヤ油温度は、約30秒から約350秒までにおいて、127℃(240°F)の直前〜約121℃(約250°F)の低調理温度範囲に達してこれを維持するまでの間において、非常に急速に低下する。なお、114℃(238°F)などの最低温度は、約110秒にて(または110秒〜120秒の範囲内のどこかにおいて)発生する。次いで、この温度は、所望の高点温度に達する時点に応じて、350秒または350秒の直前から(約110秒における最低温度からゆっくりと上昇する)、500〜540秒までおよびそれ以上までにおいて、低調理温度範囲から安定的に上昇する。概して、実験サンプルを囲むフライ油/調理油は、約540秒(または約500秒〜約540秒の間)にて、約160℃(約320°F)の高点温度に達した。実験サンプルは、1.16重量%の平均水分含有量に達するために、約10.5分(すなわち630秒)の平均フライ時間を要した。実験サンプルにおいて結果的に得られたフライされたポテトチップスは、約28〜29重量%の平均油含有量を有し、最少油含有量は約27%、最大油含有量は約32%であり、標準偏差は約2%であった。
【0045】
高温側の温度プロファイルの低調理温度範囲と低温側の温度プロファイルの低調理温度範囲(すなわち、127℃(260°F)〜138℃(280°F)と、127℃(240°F)手前〜約121℃(250°F))を比較すると、低調理温度範囲の全体にわたって約6℃(約10°F)〜約22℃(約40°F)の範囲のおおよその温度差がある。実際に、高温側の温度プロファイルと低温側の温度プロファイルをさらに確認すると、この約6℃〜22℃(10〜40°F)の差は、高点油温度に実質的に達する前のほぼ全時間において、または、連続ケトルフライ製法におけるフライヤの本体内でのジャガイモスライス片の浸漬の前のほぼ全時間において現れることが分かる。
【0046】
対照サンプル(修正されないケトルスタイルのバッチフライ製法の製品)の特徴と、実験サンプル(修正されたケトルスタイルのバッチフライ製法の製品)の特徴とを比較すると、修正された方法および修正されない方法が、概ね同じ水分含有量(約1.1%〜約1.2%)を達成する一方で、修正された方法を示す低温側の温度プロファイルが、最終製品において著しく低い油吸収量をもたらすことが、すなわち、平均油含有量が対照サンプルにおいては37.79重量%であるのに対して、実験サンプルにおいては28.63重量%となることが分かる。したがって、U字型温度プロファイルの約6〜22℃(10〜40°F)の下方へのシフトは、油吸収量における24%の減少(平均油含有量の減少量を、対照群の平均油含有量で除算)に対応する。
【0047】
U字型温度プロファイルのこのかなり大きな下方シフトは、図3に示されるように、データセットについての最良適合(傾向線)多項式曲線を比較することによって、定量化することが可能である。例えば、第5の対照群(CELL5)の温度は、温度(y)が時間(x)の関数として表される[数1]の関数に対して、Rの2乗(R^2)値である0.9977と相関関係にある。
【0048】
【数1】

第2の実験群(CELL7)の温度は、温度(y)が時間(x)の関数として表される[数2]の関数に対して、Rの2乗(R^2)値である0.9981と相関関係にある。
【0049】
【数2】

両関数は、実験群(CELL7)の関数が、対照群の関数の定数よりも約19℃(約35°F)低い定数を有する(275.95対310.74)ことを除いては、非常に類似する特徴を、すなわち各多項式度について比較的同一桁の係数を呈する。対照サンプルについての最良適合関数の定数は、301.75〜318.37の範囲にあり、実験サンプルについての最良適合関数の定数は、267.35〜279.91の範囲にあった。したがって、対照群の中の任意の1つの関数の定数を実験群の中の任意の1つの関数の定数と比較すると、それらの間の差は、21.84〜51.02の範囲であり、これは、U字型温度プロファイルの視覚的に明らかな約6℃〜22℃(10〜40°F)の下方シフトと強い相関関係がある。
【0050】
図2および図3における全ての温度プロファイルについての最良適合関数は、以下の通りとなる(CELL1〜CELL9)。
対照群−修正されない温度プロファイル
【0051】
【数3】

実験群−修正された温度プロファイル
【0052】
【数4】

最良適合関数の全てが、[数5]の一般特性を共有する。
【0053】
【数5】

ここで、温度yは時間xの関数であり、A、B、C、D、およびEは係数であり、Fは定数である。さらに具体的には、係数Aは、代替的にE−11と表される10^(−11)の桁を有する負数であり、係数Bは、E−08の桁を有する正数であり、係数Cは、E−05の桁を有する負数であり、係数Dは、E−03の桁を有する正数であり、係数Eは、1の桁を有する負数であり、定数Fは、100の桁を有する正数である。
【0054】
本発明の好ましい実施形態による修正されたフライ油温度プロファイルにおいては、定数Fは、200代の高い方であるが300未満の範囲の、より好ましくは約267〜280の範囲の、正数である。
【0055】
複数の実験が、高温ジャガイモ前処理(例えば、皮が剥かれた丸ごとのジャガイモを1時間にわたって約54℃〜60℃(130°F〜140°F)の中に浸すなど)、修正された(下げられた)U字型フライ温度プロファイル、および、フライ後過熱蒸気処理などの、油吸収量低減ストラテジーを組み合わせることの累積効果を[表1]に示す。
【0056】
【表1】

高温ジャガイモ前処理の後に、前述のように修正された温度プロファイル(U字型であり、初めの2分以内、すなわち60秒〜120秒の間において低調理温度に達する)を実現するような態様でフライし(バッチ方式、または連続方式のいずれであってもよい)、次いで最終的にフライヤ後の過熱蒸気処理と組み合わされることにより(この組合せは、この場合には、油含有量においてさらに4〜5重量%の減少をもたらす)、18重量%程度の低さの油含有量を有するフライされたポテトチップスを製造することが可能となるはずである。さらには、図1に図示される連続式フライヤシステムを使用して、製品の油吸収量を制御するために、上述したような、特定の温度プロファイルに従って製品をフライすることができる。
【0057】
したがって、好ましい実施形態においては、連続式フライヤシステム(図1に図示される)において、調理油のための加熱用および冷却用の入口および出口が使用され、上述の好ましい温度プロファイルに倣うように調節される。例えば、一実施形態においては、加熱用および冷却用の入口および出口に接続される熱交換油循環経路を用いることにより、様々な温度の油流が連続式フライヤに供給され、複数の油温度監視/制御ループは、温度/時間関数、すなわちy=−2E−11x^5+2E−08x^4−1E−05x^3+0.003x^2−0.4043x+267.35; R2=0.9994による温度プロファイルに倣うように、フライヤの長さ全体(樋セクションおよび本体を含む)にわたり様々な温度設定点を与えられる。さらに一般的には、連続フライヤは、そのフライヤにおける時間の関数、すなわち[数6]として定義される温度プロファイルを確立するために、用いられる。
【0058】
【数6】

ここで、温度yは時間xの関数であり、A、B、C、D、およびEは係数であり、Fは定数であり、係数AはE−11の桁を有する負数であり、係数BはE−08の桁を有する正数であり、係数CはE−05の桁を有する負数であり、係数DはE−03の桁を有する正数であり、係数Eは1の桁を有する負数であり、係数Fは200代の高い方であるが300未満の範囲の、より好ましくは約267〜280の範囲の正数である。
フライ装置における任意の所与の下流位置にて(とりわけ油入口および油出口において)必要な適切な油温度を決定するためには、製品がその特定の位置に到達するまで製品がフライヤ内に滞留する平均時間長さを決定する必要がある(連続定常流と仮定する場合には、フライヤ内における製品の長手方向位置は、滞留時間と非常に相関関係があることとなる)。次いで、この位置に関するこの特定の滞留時間は、この特定の位置に関する適切な温度設定点を決定するために、温度対時間関数に入れられることとなる。
【0059】
好ましい一実施形態に関して本発明を詳細に図示し、説明してきたが、当業者であれば、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態および詳細に様々な変更をなし得ることが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライヤ内にある間のポテトチップスの油吸収量を減少させるための方法であって、
a)約160℃(約320°F)の初期温度を有する調理油体の中に無洗ジャガイモスライス片を入れる工程と、
b)約3分未満から約5分以内に、約160℃(約320°F)の初期温度から、約104℃〜約127℃(約220°F〜約260°F)の低下した温度まで、油の温度を低下させる工程と、
c)少なくともジャガイモスライス片の近傍において、少なくとも3分の滞留時間にわたって、約127℃(約260°F)未満に油の温度を維持する工程と、
d)ジャガイモスライス片の温度を標準的なフライ温度まで上昇させる工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記調理油体はバッチ製法の一部である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記調理油体は連続製法の一部である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポテトチップスはケトルスタイルのチップスである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポテトチップスは従来の連続製法ポテトチップスである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポテトチップスは、約20重量%から約23重量%の油含有量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ポテトチップスは、20重量%未満の油含有量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記工程b)に記載される低下した温度および前記工程c)に記載される滞留時間は、油含有量をさらに変更するために、自動的かつリアルタイムで調節される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記工程b)に記載される低下した温度は、116℃(240°F)直前〜127℃(約260°F)の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記工程c)の滞留時間は約400秒である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
調理油フライヤは、連続式フライヤであり、該連続式フライヤの長さ全体にわたって分布された複数の油入口および油出口を有し、
連続式フライヤは、複数の油入口および油出口に接続される複数の熱交換油再循環経路を有し、
連続式フライヤは、熱交換油再循環経路を調整するための、複数の油温度監視/制御ループを有し、
油温度監視/制御ループは、以下の関係、すなわち
y=Ax^5+Bx^4+Cx^3+Dx^2+Ex+F
であって、ここで、各温度設定点yは滞留時間xの関数であり、
A、B、C、D、およびEは係数であり、Fは定数であり、
係数AはE−11の桁を有する負数であり、
係数BはE−08の桁を有する正数であり、
係数CはE−05の桁を有する負数であり、
係数DはE−03の桁を有する正数であり、
係数Eは1の桁を有する負数であり、
係数Fは200代の高い方であるが300未満の正数である、
関係に従って複数の温度設定点を割り当てられる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
油の量を減少させたポテトチップスをフライヤにおいて製造するための方法であって、
a)丸ごとのジャガイモを、約54℃〜約60℃(約130°F〜約140°F)の水槽内に、完全な温度浸透が可能となるために必要な時間だけ浸漬する工程と、
b)少なくとも1つのジャガイモスライス片を形成するために丸ごとのジャガイモを切断する工程と、
c)ジャガイモスライス片をフライヤ内の調理油体の中に入れる工程と、
d)フライヤ内の調理油の温度を、初めの120秒の間に、約160℃(約320°F)の初期温度から約104℃(約220°F)の低下した温度にまで低下させる工程と、
e)少なくともジャガイモスライス片の近傍において、少なくとも3分の滞留時間にわたって、約127℃(約260°F)未満に調理油を維持する工程と、
f)少なくともジャガイモスライス片の近傍において、調理油の温度を標準的なフライ温度まで上昇させる工程と、
g)ジャガイモスライス片を標準的なフライ温度にてフライする工程と、
h)フライヤからジャガイモスライス片を取り出す工程と、
i)ジャガイモスライス片に過熱蒸気を吹き付ける工程と
を含み、それにより油を減少させたポテトチップスを製造する、方法。
【請求項13】
前記油の量を減少させたポテトチップスは、約18重量%未満の油含有量を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記浸漬する工程は約20分〜約80分継続される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記浸漬する工程により、ジャガイモスライス片上で生じる遊離澱粉の量が減じられる、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記吹き付ける工程は、約149℃(約300°F)の過熱蒸気を利用する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記ポテトチップスが2重量%未満の水分含有量を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記ポテトチップスが1.3重量%の水分含有量を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記フライヤがバッチ製法の一部である、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記フライヤが連続製法の一部である、請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−533492(P2010−533492A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517064(P2010−517064)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/069089
【国際公開番号】WO2009/012064
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(500208519)フリト−レイ ノース アメリカ インコーポレイテッド (51)
【氏名又は名称原語表記】FRITO−LAY NORTH AMERICA,INC.
【Fターム(参考)】