説明

ポリ−TLRアンタゴニスト

マイコバクテリウムw又はその成分が、TLRリガンドの多様性によって誘導TLRsに対してポリTRLアンタゴニスト活性を有することが分かった。阻害効果が見られる誘導TLRとしては、TLR3,4,5,6,7,8,9が含まれる。それらは、TLRリガンドの効果に対してアンタゴニスト活性も示す。それらは、敗血症、多発性硬化症、視神経炎、慢性閉塞性肺疾患、多発性骨髄腫などのようなTLRsが過剰発現している疾患の処置に有用でもある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイコバクテリウムwまたはその成分を用いた、誘導されたTLR活性の低下手段、およびマイコバクテリウムwまたはその成分を用いた、TLRアンタゴニストに関連する疾患の処置を提供する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、ポリ−トール様受容体(TLR)を提供する。トール様受容体(TLR)は、タンパク質ファミリーである。自然免疫系は病原体を認識し、TLRを介して有効かつ適切な反応を開始する。TLRは、IL-1R、IL-18Rを含む、より大きなIL-1R/TLRスーパーファミリーの一員であり、オーファン受容体の一群である。このファミリーは、細胞質トール様IL-1抵抗(TIR)ドメインの存在によって規定されるが、このドメインは下流シグナル伝達の媒介に関与する。今までのところ、13個のTLRが同定され、TLR1〜9はマウスとヒトに共通しており、一方TLR10はヒトにおいてのみ機能的であり、TLR11、12および13はマウスでのみ発見されている。全てではないがこれらの受容体の多くは、特定の病原体関連分子(PAM)の初期検出における役割を果たし、これらの分子に反応する。
【0003】
マクロファージおよび好中球において、これは、炎症および殺菌活性の誘導等の自然免疫反応を促進し、一方、樹上細胞上に発現されるTLRの活性化により、IL-12および共刺激分子の誘導を通して、適応免疫が開始する。
【0004】
TLRは体の保護システムの一部であるが、その過剰発現は、種々の疾患に関係している。敗血症はそのような疾患の一つである。米国において感染による敗血症の発症は年間約750,000件であり、平均死亡率は約30%と推定されている(アングス (Angus)ら、Crit. Care Med. 29巻、(2001年)、1303-1310頁)。エンドトキシン、またはグラム陰性細菌の細胞壁の主要成分であるリポ多糖類(LPS)は、グラム陰性敗血症の原因物質である。エンドトキシンは、感染した宿主において、主にトール様受容体4(TLR4)を通して自然免疫反応を誘導し(メジトフ(Medzhitov)ら、Nature 388(6640)巻、(1997年)、394-397頁)、それにより体は細菌感染を通告され、宿主の免疫系による抗菌的攻撃がもたらされる。このような免疫反応は、通常、感染した宿主において有益であるが、エンドトキシンに対する高度の免疫反応は病的となる可能性があり、全身性炎症反応症候群(SIRS)、臓器不全、様々な敗血症、そして場合によっては敗血症ショックおよび死亡の原因となる。これらの疾患の症状としては、発熱、全身性炎症、並びに播種性血管内凝固症候群(DIC)、低血圧、急性腎不全、急性呼吸促拍症候群(ARDS)、肝細胞破壊、および心不全等のより重篤な疾患が挙げられる。
【0005】
LPSによって発現されるトール様受容体としてはは、TLR4に加えて、TLR2、9等が挙げられる。エンドトキシン自体が非常に不均一の分子である一方、エンドトキシンの多くの毒性の発現は、高度に保存された疎水性脂質A部分に起因する。TLR4アンタゴニストとして作用し、この脂質Aの保存構造のアンタゴニストである有効な薬剤として、E5564が知られている(化合物1287、SGEAおよびエリフォラン(Eriforan)としても知られている)(ムルラルキイ(Mullarkey)ら、J. Pharmacol. Exp. Ther. 304 (3)巻: 1093-1102頁、2003年)。この薬剤は、米国特許5,681,824号において化合物1として記載されており、国際特許WO/2004/071465号(内毒素血症の診断および治療における使用のための方法およびキット)は、トール様受容体4(TLR4)アンタゴニストによる治療で患者が利益を得るか否か、または利益が継続するか否かの決定方法を記載している。また、エリトラン(eritoran)によるトール様受容体4の阻害が、心筋虚血再環流傷害を減じることも知られている。Circulation 114(補遺1)巻、(2006年)、I270-4頁
【0006】
1以上のTLRが過剰発現している他の疾患として以下を挙げることができるが。これらに限定されるものではない。
1.潜在または活性ウイルス感染の増悪(例えば、HIV、サイトメガロウイルス、単純ヘルペス、およびインフルエンザウイルスの感染)
2.肺の細菌感染に対する先天的または後天的素因
3.肺浮腫を伴う鬱血性心不全
4.慢性閉塞性肺疾患
5.多発性骨髄腫
6.SLE
7.狼瘡
8.潰瘍性大腸炎
9.クローン病
10.自己免疫疾患
11.リウマチ性疾患
12.慢性肝炎
13.マラリア(熱帯性マラリア原虫)
14.多発性硬化症
15.視神経炎
16.ウイルス性脳炎(西ナイル)
17.カンジダ症
18.アテローム性動脈硬化症
【0007】
これらの疾患のいくつかには通常の療法が有効であるが、一方、大多数の疾患には決定的治療法がない。
【0008】
選択された抗菌、抗炎症、および免疫賦活補助療法を、重篤な敗血症および敗血性ショックの患者において調査した。
【0009】
【表1】

【0010】
これらすべての療法にもかかわらず、敗血症に関連する死亡率は下がっていない。従って、このような疾患に対するより良い治療の選択肢を提供する必要がある。
【0011】
マイコバクテリウムwは、非病原性で、培養可能な異形マイコバクテリウムであり、マイコバクテリアのRunyonの分類IV群に属するものと類似の生化学的性質および迅速発育特性を有する。抗原がハンセン菌(Micobacterium leprae)および結核菌(Micobacterium tuberculosis)と共通であることが分かっている。ヒトにおいて、レプロミン陰性個体をレプロミン陽性に変換することによって、ハンセン病の予防法を提供することが分かっている。また、動物における結核の予防法を提供することも分かっている。ハンセン病において、多剤療法と併用した際には、殺菌、クリアランスおよび臨床的治癒のための治療期間が短縮されることも分かっている。マイコバクテリウムWを含有する医薬組成物は、インドでは1998年よりヒトへの使用が認可されている。
【0012】
このことは、多くの特許および出版物に記載されている。熱殺菌されたマイコバクテリウムwは、インドでは市販製剤として入手可能である。この製剤は、医薬組成物0.1ml当り、マイコバクテリウムwの熱殺菌した細胞0.5x109個を含有する。
【発明の概要】
【0013】
本発明の目的は、マイコバクテリウムwまたはその成分を用いて、誘導されたTLR活性を低下させることである。
【0014】
本発明の別の目的は、CPG、ODN等の既知の合成TLRアゴニストまたはリポ多糖類等の天然由来TLRアゴニストによって誘導された場合の、マイコバクテリウムまたはその成分のポリTLRアンタゴニスト活性を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、リポ多糖類、大腸菌等のTLRリガンドの効果に対する、マイコバクテリウムwおよびその成分のアンタゴニスト活性を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、TLRが過剰発現している疾患の処理管理におけるマイコバクテリウムwまたはその成分の有用性を提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、敗血症、多発性骨髄腫、マラリア、多発性硬化症、視神経炎、慢性閉塞性肺疾患等の疾患の処置において、マイコバクテリウムwまたはその成分を提供して、それらに関連する罹患率及び死亡率を改善することである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】LPS誘導TLRに対する、マイコバクテリウムwの効果
【図2】誘導されたTLRにおけるポリTLRリガンドに対する、マイコバクテリウムwの効果
【図3】誘導された発熱におけるLPSリガンドに対するマイコバクテリウムwの効果(発熱試験)
【図4】大腸菌により誘導された敗血症に対する、マイコバクテリウムw含有組成物の効果(腹腔内+高用量抗生物質)
【図5】大腸菌により誘導された敗血症に対する、マイコバクテリウムw含有組成物の効果(腹腔内+低用量抗生物質)
【図6】大腸菌により誘導された敗血症に対する、マイコバクテリウムw含有組成物の効果(静脈内)
【発明を実施するための形態】
【0019】
マイコバクテリウムwおよび/またはその成分を含有する医薬組成物は、Th1反応を提供することが知られている。また、それら医薬組成物は、抗原がハンセン菌および結核菌と共通であることも知られている。それらは、ハンセン病の処置において有用であることが分かっており、殺菌および体の菌体のクリアランスを改善し、治癒を早める。それらは、結核およびハンセン病の予防法としても有用であることが分かっていた。
【0020】
驚くべきことに、それらはTLR活性を低下させるという特異的性質を有することも観察される。それらの阻害/アンタゴニスト作用は、少なくともTLR3、4、5、6、9に対して見られる。TLR活性の低下は、TLRが種々のTLRリガンドによって発現する際に、インビトロおよびインビボで観察される。また、リポ多糖類(例えば、サイトカインおよびピロキシア(pyroxia))等のTLRリガンドによって誘導される疾患の処置においても有用であることが分かる。また、敗血症、多発性骨髄腫、マラリア、多発性硬化症、視神経炎、慢性閉塞性肺疾患等の、種々のトール様レセプターが過剰発現している疾病の処置においても有用であることがわかる。
【0021】
本発明を以下の実施例によって説明するが、本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0022】
I.本発明に従って、医薬組成物の組成、製造方法、HPLC特性、安全性および耐性、使用方法および治療結果を、以下の実施例において記載する。以下は本発明の説明のための例であって、それらによって本発明の範囲を制限すべきではない。
【0023】
実施例1 医薬組成物:
A.治療薬0.1mlの各投与量は以下を含有する:
マイコバクテリウムw(熱殺菌済) 0.50 x 109
塩化ナトリウム(腹腔内) 0.90% w/v
Tween 80 0.1% w/v
チオメロサール(腹腔内) 0.01% w/v(防腐剤として)
注射用水(腹腔内) 全量で0.1ml
【0024】
B.治療薬0.1mlの各投与量は以下を含有する:
マイコバクテリウムw(熱殺菌済) 0.50 x 109
塩化ナトリウム(腹腔内) 0.90% w/v
Triton X100 0.1% w/v
チオメロサール(腹腔内) 0.01% w/v(防腐剤として)
注射用水(腹腔内) 全量で0.1ml
【0025】
C.治療薬0.1mlの各投与量は以下を含有する:
マイコバクテリウムw(熱殺菌済) 0.50 x 109
塩化ナトリウム(腹腔内) 0.90% w/v
チオメロサール(腹腔内) 0.01% w/v(防腐剤として)
注射用水(腹腔内) 全量で0.1ml
【0026】
D.治療薬0.1mlの各投与量は以下を含有する:
1x1010個のマイコバクテリウムwの超音波処理後のマイコバクテリウムw抽出物
塩化ナトリウム(腹腔内) 0.90% w/v
チオメロサール(腹腔内) 0.01% w/v(防腐剤として)
注射用水(腹腔内) 全量で0.1ml
【0027】
E.治療薬0.1mlの各投与量は以下を含有する:
1x1010のマイコバクテリウムwのメタノール抽出物
塩化ナトリウム(腹腔内) 0.90% w/v
チオメロサール(腹腔内) 0.01% w/v(防腐剤として)
注射用水(腹腔内) 全量で0.1ml
【0028】
F.治療薬0.1mlの各投与量は以下を含有する:
1x1010のマイコバクテリウムwのクロロホルム抽出物
塩化ナトリウム(腹腔内) 0.90% w/v
チオメロサール(腹腔内) 0.01% w/v(防腐剤として)
注射用水(腹腔内) 全量で0.1ml
【0029】
G.治療薬0.1mlの各投与量は以下を含有する:
1x1010のマイコバクテリウムwのアセトン抽出物
塩化ナトリウム(腹腔内) 0.90% w/v
チオメロサール(腹腔内) 0.01% w/v(防腐剤として)
注射用水(腹腔内) 全量で0.1ml
【0030】
H.治療薬0.1mlの各投与量は以下を含有する:
1x1010のマイコバクテリウムwのエタノール抽出物
塩化ナトリウム(腹腔内) 0.90% w/v
チオメロサール(腹腔内) 0.01% w/v(防腐剤として)
注射用水(腹腔内) 全量で0.1ml
【0031】
I.治療薬0.1mlの各投与量は以下を含有する:
1x1010のマイコバクテリウムwのリチカーゼ抽出物
塩化ナトリウム(腹腔内) 0.90% w/v
チオメロサール(腹腔内) 0.01% w/v(防腐剤として)
注射用水(腹腔内) 全量で0.1ml
【0032】
J.治療薬0.1mlの各投与量は以下を含有する:
マイコバクテリウムw(熱殺菌済) 0.5 x 107
1x103個のマイコバクテリウムwの破砕、溶媒抽出または酵素抽出で得られるマイコバクテリウムw抽出物
塩化ナトリウム(腹腔内) 0.90% w/v
チオメロサール(腹腔内) 0.01% w/v(防腐剤として)
注射用水(腹腔内) 全量で0.1ml
【0033】
実施例2 医薬組成物の製造方法
A.マイコバクテリウムwの培養
i)培地の調製
マイコバクテリウムwを、LJ培地等の固形培地、またはミドルブルック培地またはソートン液体培地等の液体培地で培養する。
より良い収率のため、ミドルブルック培地を改良する。好ましくは、グルコース、バクトトリプトン、およびBSAの添加によって改善し得る。これらは、好ましくは20:30:2の割合で用いる。改良した培地をミドルブルック培地に添加する。好ましくは、15:1〜25:1の割合、より好ましくは20:1の割合で添加する。
【0034】
ii)バイオリアクター操作
a)容器の調製:
容器の内部接触部分(ジョイント、メカニカルシール、Oリング/ガスケット溝等)は適切に洗浄し、あらゆる汚染を回避すべきである。容器を0.1N NaOHで満たし、24時間程放置して、発熱物質および他の混入物を除去する。次に、容器を、最初に酸性水で、次に通常の水で洗浄する。最後に、培地の調製前に、容器を蒸留水でリンスする(3回)。
【0035】
b)バイオリアクターの滅菌
蒸留水9Lを入れたバイオリアクターを生蒸気(間接的)で滅菌する。同様にバイオリアクターをミドルブルック培地でもう一度滅菌する。他の添加瓶、注入口/排出口エアフィルター等は、オートクレーブで121℃で15分間滅菌する(2回)。使用前に、これらを50℃のオーブンで乾燥する。
【0036】
c)環境因子
i. 温度:37±0.5℃
ii. pH:当初6.7〜6.8
【0037】
B.採取および濃縮
代表的には、無菌状態下で、培養後6日目の終わりに行う。細胞の濃縮(パレチゼーション)は遠心分離によって行う。
【0038】
C.細胞の洗浄
このように得られたパレットを、生理食塩水で最低3回洗浄する。任意の他の液体、好ましくは等張の液体で洗浄できる。
【0039】
D.薬学的に許容される担体の添加
発熱物質を含まない生理食塩水をパレットに加える。発熱物質を含まない任意の他の等張液を、医薬担体として使用し得る。最終形態において有効成分が所望の濃度となるような量の担体を添加する。
【0040】
E.防腐剤の添加
保存期間の間、製品を他の汚染バクテリアのない状態にしておくため、防腐剤を添加する。好ましい防腐剤はチオメソール(thiomesol)であり、0.01 % w/vの最終濃度で使用する。
【0041】
F.最終滅菌
最終滅菌は、加熱または電離放射線または滅菌濾過等の種々の物理的方法によって行うことができる。
熱は乾式加熱又は湿式加熱の形態の何れでもよい。また、煮沸またはパスツーリゼーションの形態でもよい。電離放射線は、紫外線またはγ線またはマイクロ波または電離放射線の任意の他の形態でもよい。最終製品をオートクレーブで処理することが好ましい。これは、最終の包装に充填する前後に行うことができる。
【0042】
G.品質管理
i. 材料は、純度、無菌性を評価する。
ii. グラム染色後、微生物の抗酸性を調べる。
iii. 不活化試験:LJ培地上で製品を培養してあらゆる生物を見出すことによって行う。
iv. 病原性および/または病原体の混入。
培養した微生物をBalb/cマウスに感染させる。
マウスは一匹も死なず、全て健康なままで、体重が増えるべきである。
処置後8週間までに動物を解剖した場合、肝、肺、脾臓または任意の他の臓器に、肉眼的または顕微鏡的病変が見られるべきではない。
v. 生化学試験:
微生物を以下の生化学試験に付す:
a)ウレアーゼ
b)Tween 80加水分解
c)ナイアシン試験
d)硝酸塩還元試験
微生物は、ウレアーゼ、Tween80加水分解およびナイアシン試験において陰性の結果となる。硝酸塩還元試験では陽性である。
【0043】
H.マイコバクテリウムwの成分の製造
マイコバクテリウムwの成分は、以下によって本発明の目的のために製造できる:
I. 細胞破壊
II. 溶媒抽出
III. 酵素抽出
【0044】
細胞破壊は、超音波処理法または高圧分別機の使用により、または浸透圧勾配の適用によって行うことができる。
溶媒抽出は、クロロホルム、エタノール、メタノール、アセトン、フェノール、イソプロピルアルコール、酢酸、尿酸、ヘキサン等の任意の有機溶媒によって行うことができる。
【0045】
酵素抽出は、細胞壁/膜を消化し得る酵素によって行うことができる。酵素は、代表的には本来的にタンパク質分解性である。酵素リチカーゼおよびプロナーゼが好ましい酵素である。本発明の目的のためには、マイコバクテリウムwの細胞成分は、マイコバクテリウムw微生物の代わりに単独で使用することができ、またはマイコバクテリウムwを含有する製品に添加することができる。
細胞成分の添加により、製品の効能が向上する。
【0046】
全ての実施例において、使用されるマイコバクテリウムwは実施例1cに記載された通りであり、0.1ml当り0.50 x 109の熱殺菌したマイコバクテリウムwを含有する。
【0047】
II. 本発明の医薬組成物を用いた、誘導されたTLRの低下を実証する実施例
実施例1
所定のTLRを発現するHEK293細胞においてNF-κβ活性化を評価することによって、TLR刺激を試験する。生理食塩水0.1ml中に熱殺菌したマイコバクテリウムwの細胞0.5 x 109を含有する医薬組成物のアンタゴニスト活性を、ヒトTLR:2、3、4、5、7、8および9について試験する。
【0048】
試験で使用されるTLRリガンド:
hTLR2: HKLM (熱殺菌リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes))
1ml当り2 x107、1 x107、2 x106および1 x106細胞
hTLR3: ポリ(I:C)、20および10 ng/ml
hTLR4: 大腸菌K12 LPS、2および1 ng/ml
hTLR5: サルモネラ・ティフィリウム(S. typhimurium)フラゲリン、20および10 ng/ml
hTLR7: ロキソリビン、1および0.5 mM
hTLR8: ssRNA40、5および3 μg/mL
hTLR9: CpG ODN 2006、50および20 ng/ml
【0049】
一般的方法
分泌されたアルカリホスファターゼ・レポーターは、転写因子NF-kBによって誘導されるプロモータの支配下にある。スクリーニングにおけるTLR刺激を、所定のTLRを発現するHEK293細胞においてNF-kB活性化を評価することによって試験する。このリポーター遺伝子は、NF-kBの活性化に基づいて、TLRによるシグナル伝達のモニタリングを可能にする。適切なHEK293細胞を入れた96穴プレート(総容量200μL)(細胞25,000〜50,000個/ウエル)のウエルに、20μLの熱殺菌したマイコバクテリウムwとTLRリガンドを加える。ウエルに加えられる培地は、NF-kB により誘導されるSEAP発現を検出するように設計する。16〜20時間のインキュベーションの後、ベックマン・コルター(Beckman Coulter)AD 340C吸光度検出器において650nmでのODにより、誘導されたNF-kB活性を調べる。
【0050】
結果は以下の通り表の形式で示す。(A)列は、TLRリガンドによって誘導された活性を示す。(B)列は、マイコバクテリウムw(Mw)含有組成物の存在下でTLRリガンドによって誘導された活性を示す。最後の列は、TLRリガンド単独に関して、マイコバクテリウムwによって誘導されるアンタゴニスト作用を%で示す。
【0051】
【表2】

【0052】
TLR3、4、5、7、8、9についてはTLRリガンドで刺激する場合、結果はTLRアンタゴニスト作用を示唆する。この実験では、TLR2についてアンタゴニスト作用は見られない。
【0053】
実施例2
8〜10週のマウスを解剖し、脾臓から脾臓細胞を単離した。脾臓細胞を種々の濃度のLPSおよびLPSとマイコバクテリウムw熱殺菌細胞との組み合わせと共に培養した。細胞は、RPMI 1640培地で培養した。
【0054】
48時間後、細胞を採取し、種々のTLRの発現を調べる。TLRの発現は、TLR特異的プライマー(R&Sシステムズ社)を用いて、細胞溶解物由来の特異的mRNAを増幅することによって調べる(細胞-cDNA IIキット、アンビオン社(Ambion))。
【0055】
増幅産物は、1.5%アガロースゲル上でエチジウムブロマイド染色を用いて調べる。
細胞が、LPS単独と比較してマイコバクテリウムw+LPSに接触する場合に、TLR3、4、5、6および9の発現が低下することが観察された。TLR1に対しては、効果が見られない(図1)。従って、マイコバクテリウムw含有医薬組成物は、LPSによるTLR3、4、5、6および9の誘導に対するアンタゴニスト活性を示す。LPS誘導TLR1に対する効果は無い。
【0056】
実施例3
ポリTLRリガンドをマウスに投与することにより、7日後に採取および分析した際に、脾臓細胞においてTLR1、3、5、6、9が発現している。
TLR1、3、5、6、9を発現する脾臓細胞は、インビトロで、0.5 x 105以上の熱殺菌されたマイコバクテリウムwで48時間刺激した場合に、TLR3、5および6は発現しない。(TLR3、5および6の発現において100%の低下)結果を図2に示す。
このように、上記の実施例は、本発明の医薬組成物によって、誘導されたTLRが低下したことを示す。
【0057】
III. TLRリガンドの作用に対するアンタゴニスト活性を示す実施例
実施例1 LPS誘導サイトカインに対する効果
8〜10週のマウスを解剖し、脾臓から脾臓細胞を単離した。脾臓細胞を種々の濃度のLPSおよびLPSとマイコバクテリウムw熱殺菌細胞との組み合わせと共に培養した。細胞は、RPMI 1640培地で培養した。
【0058】
上清を、TNR-αおよびIFN-γ等のサイトカインについて分析した。
インビトロの研究では、マイコバクテリウムwは、リポ多糖類(LPS)と併用した場合、LPSで誘導されたTNF-αを低下させ、またIFN-γの分泌も低下させる。観察される阻害量は有意であり、基礎レベルと同等である(完全阻害)。
【0059】
実施例2 LPSが誘導する発熱に対する効果
ウサギを発熱試験用に準備し、体温をモニターした。
ウサギに大腸菌溶解物を静注投与して、エンドトキシン/リポ多糖類が誘導する発熱を模倣した。2時間後、ウサギを対照群と処置群に分けた。処置群には、0.1ml当り熱殺菌したマイコバクテリウムw細胞0.5 x 109を含有する医薬組成物2mlを注射した。結果は3回再現された。処置群の動物は、体温の下降を示し、一方、対象群は、体温の上昇が続いた。実験終了まで持続した効果を図3に表す。
【0060】
このように、上述の実施例は、本発明の医薬組成物による、TLRリガンドの効果に対するアンタゴニスト作用を示す。
【0061】
IV TLRの過剰発現が知られている疾患における有用性を示す実施例
(A) マウスの大腸菌誘導敗血症における生存率の改善:
非経口経路によるマウスへの生大腸菌の注射により、死亡率100%の敗血症となる。このマウスのモデルにおいて、熱殺菌したマイコバクテリウムw細胞0.5 x 109を含有する本発明の医薬組成物の効能について、(Mw)を評価した。
【0062】
動物には、大腸菌の懸濁液を投与した後、マイコバクテリウムwをデキサメタゾンおよびアモキシシリンと併用または非併用の種々の組み合わせでIVまたはID経路で投与した。マイコバクテリウムwと糖質コルチコイドおよびアモキシシリンとの併用で処置した動物において、生存率が最も高く改善されることが観察される。
【0063】
実験1(腹腔内)
マウスに、生大腸菌(20 OD)1mlを腹腔内投与した。マウスは、アモキシシリン(500 mG)およびデキサメタゾン(2.0 mgm)療法の種々の組み合わせで処置した(図2)。動物は、各群10例であった。対照群では、全ての動物が48時間以内に死亡した(I群)。処置群では、生存率が改善した(II〜VII群)。デキサメタゾン+アモキシシリンをマイコバクテリウムw0.1mlの皮内投与と組み合わせた場合(IV群)、生存率は100%であった。同じ薬剤で、マイコバクテリウムwを静脈内投与した場合(V群)も同様であった。結果を図2にグラフで示す。
【0064】
実験2(腹腔内)
第二の実験では、アモキシシリンの投与量を500mg/kgから70mg/kgに減量した(図3)。マイコバクテリウムwの皮内投与をステロイドおよび抗生物質と併用した場合に(II群)、再度、最高の結果が見られ、次に静脈内経路III群であった。結果を図3にグラフで示す。
【0065】
実験1および2の比較により、抗生物質の量が重要であることが分かる。このことは、敗血症が抗生物質の大量投与によって処置され、他の感染症の処置に用いる常用量では管処置れないことから、臨床的意義がある。
【0066】
実験3(静脈内)
第三の実験では、静脈内経路によって敗血症を誘導し、デキサメタゾン値を2mg/kgから0.5mg/kgに減量した。結果から、ステロイド+抗生物質+マイコバクテリウムwの組み合わせが(VII群)生存率を改善することが示唆される。これら3つの実験により、マイコバクテリウムwの使用が、敗血症において生存率を改善することが示された。結果を図4にグラフで示す。
【0067】
(B)マラリアのP.ベルゲイ(berghei)モデル
熱帯性マラリア(P. Falciparum malaria)環境における免疫系の調節異常は、敗血症様症候群を引き起こすことが知られている。P.ベルゲイ(berghei)ANKA株によって引き起こされる劇症型マラリアを感染した動物において、同様の状態が見られる。IISc.、バンガロールでの準備作業において、アルトエーテルまたは偽薬のみの単剤投与の対照群が0%であることと対照して、マイコバクテリウムw+アルトエーテルの投与による生存率が70%であることが観察される。従って、マイコバクテリウムwは、マラリア感染において引き起こされる敗血症様症候群を回復させる能力を有する。
【0068】
このように、上記の例(IV-AおよびIV-B)は、TLRが過剰発現する動物の疾患における、本発明の医薬組成物の有用性を示す。
【0069】
(C)ヒト敗血症
慢性感染症の処置に有用な、先導的製品が見出された。また、それは、ステロイド抵抗性肉芽腫、胸水、水気胸、視神経炎等の消散にも有用であることが分かった。
それは、敗血症の処置においても評価されている。
【0070】
例1
難治性骨髄腫の65歳の高齢男性患者において、敗血症を罹患していることが分かり、6週間、人工呼吸器を付けた。彼は、処置のために、高用量の抗生物質(ペネム系)、EPO、GM CSFの毎日の血小板輸血を受けた。これらにも拘らず、彼はCD4数が進行的に減少し、下り坂であった。彼の三角筋に0.2mlのマイコバクテリウムwを2分割して皮内投与した。48時間以内に、彼は人工呼吸器を外した。彼は血小板輸血を全く必要としなかった。
【0071】
例2
過去に肺結核を患った虚弱な若年男性が、肺の細菌感染を発症し、敗血症になった。彼は通常の治療法では効果が無かった。彼に、5日間、マイコバクテリウムw 5mlを静脈内投与した。
【0072】
その結果、敗血症および感染症が治癒し、退院した。彼は、6週間後、再発することなく、安定していた。この両方の例から、マイコバクテリウムwは、ヒト敗血症の処置に有用であることが示唆される。
【0073】
(D)視神経炎
視神経炎を患う56歳の男性患者は、メチルプレドニゾロン1mg/日の静脈内投与で3日間治療した後、視覚障害の後遺症を有することが分かった。視力は、右目および左目それぞれ、6/36および6/18で安定していた。彼に、5mlのマイコバクテリウムw(本発明により調製)を生理食塩水500mlで再度、静脈内注入により投与した。視力は改善し、治療開始から10日で、右目および左目はそれぞれ、6/12および6/9に達した。
【0074】
(E)多発性硬化症
28歳の女性患者は、多発性硬化症(筋力グレード:0)により、両下肢に麻痺があった。これは、6ヶ月にわたる治療に反応しなかった。彼女はこの期間、他の治療を全く受けなかった。
彼女に、毎日2mlのマイコバクテリウムwを生理食塩水100mlで3日間、静脈内投与した。15日後に評価した際、彼女は回復の兆候を示し、両下肢の筋力グレードはIIであった。
【0075】
(F)慢性閉塞性肺疾患
慢性閉塞性疾患の処置において、マイコバクテリウムwを含有する医薬組成物の使用により、分泌が減少し、感染率が減少し、入院を要する悪化件数が低下するが、以下の例によりFEV1およびPEFRに対する効果を実証する。
【0076】
実験1
慢性閉塞性肺疾患の患者に、0.1mlのマイコバクテリウムwを14日間に一度、2ヶ月間、皮内投与した。その結果、患者9例中5例で、1秒間努力呼気容量(FEV1)が50%超改善し、残りの例では25%超改善した。また、最大呼気速度(PEFR)も同様のパターンで改善した。
【0077】
実験2
慢性閉塞性肺疾患の患者16例において、熱殺菌したマイコバクテリウムwの細胞0.5 x 109を1mlの生理食塩水に懸濁した後、筋肉内投与した。
単回の注射の後、患者16例のうち13例において、15日目の注射の後に試験した際には、FEV1の改善が見られた(50%超7例、25%超6例)。この改善は、4〜6週間でピークに達した。患者16例中11例で、PEFRにおいて類似の改善が見られた。
【0078】
実験3
慢性閉塞性肺疾患の患者6例において、熱殺菌したマイコバクテリウムwの細胞0.5 x 109を、鼻腔用スプレー(0.1ml)で鼻粘膜に適用した。患者6例中5例で、FEV1の25%超の改善が見られ、3例では50%超に達した。
【0079】
患者6例中4例で、PEFRの25%超の改善が見られ、うち2例では50%超の改善に達した。
【0080】
実験4
慢性閉塞性肺疾患の患者10例において、熱殺菌したマイコバクテリウムwの細胞0.5 x 109を、3mlの希釈剤中に懸濁して、噴霧により肺に単回投与した。患者10例全てで、FEV1の改善(25%超)が見られた。
効果は6週間超、持続すると考えられる。PEFRの改善は、患者8例において25%超であり、うち4例では50%超の改善に達した。
【0081】
(G)多発性骨髄腫
骨髄腫の70歳の女性は、通常の治療法では効果が無くなり、病気が進行していた。彼女は激しい骨痛があった。痛みが非常に激しかったため、彼女は歩けなかった。0.1mlのマイコバクテリウムwを毎月、皮内投与した。病気の寛解を得た。治療3ヶ月後、彼女は症状が無くなり、自由に歩けた。彼女のヘモグロビンは、5.5 gm%から7.5 gm%に改善した。
このように、上記の実施例(IV-C〜IV-G)は、TLRが過剰に発現するヒトの疾病の処置における本発明の医薬組成物の陽性の効果を示す。
【0082】
実施例(例II-1〜III-3)は、CPG、ODN等の公知の合成TLRアゴニストまたはリポ多糖類等の天然TLRアゴニストによって誘導された場合の、マイコバクテリウムまたはその成分のポリTLRアンタゴニスト活性を示す。実施例(例II-1〜II-2)はさらに、リポ多糖類、大腸菌等のTLRリガンドの効果に対する、マイコバクテリウムwおよびその成分のアンタゴニスト活性を示す。実施例(IV-a、IV-b)はさらに、TLRが過剰に発現している疾患の処置におけるマイコバクテリウムwまたはその成分の有用性を示す。実施例(例IV-c、IV-d)はさらに、敗血症、視神経炎、多発性硬化症、慢性閉塞性肺疾患、多発性骨髄腫等の疾患の処置における、マイコバクテリウムwまたはその成分の陽性の効果を示す。
【0083】
参考文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイコバクテリウムwまたはその成分を用いて、誘導されたTLR活性を低下させる手段。
【請求項2】
請求項1に記載の誘導されたTLRは、TLR3、4、5、6、7、8、9を含む。
【請求項3】
請求項1に記載のマイコバクテリウムwまたはその成分による誘導されたTLRの低下は、疾患において誘導される。
【請求項4】
請求項1に記載のマイコバクテリウムwまたはその成分による誘導されたTLRの低下は、TLRリガンドによって誘導される。
【請求項5】
請求項3に記載のTLRリガンドは、微生物、リポ多糖類、エンドトキシン等の天然由来であるか、またはCPG、ODN等の合成物質である。
【請求項6】
マイコバクテリウムwを用いる疾病過程の存在下でのTLR活性の低下手段は、マイコバクテリウムwまたはその成分を含有する医薬組成物の治療量の投与を含む。
【請求項7】
請求項1に記載のマイコバクテリウムwまたはその成分による誘導されたTLRの低下は、敗血症において誘導される。
【請求項8】
請求項1に記載のマイコバクテリウムwまたはその成分による誘導されたTLRの低下は、肺浮腫を伴う鬱血性心不全において誘導される。
【請求項9】
請求項1に記載のマイコバクテリウムwまたはその成分による誘導されたTLRの低下は、慢性閉塞性肺疾患において誘導される。
【請求項10】
請求項1に記載のマイコバクテリウムwまたはその成分による誘導されたTLRの低下は、多発性骨髄腫において誘導される。
【請求項11】
請求項1に記載のマイコバクテリウムwまたはその成分による誘導されたTLRの低下は、SLEにおいて誘導される。
【請求項12】
請求項1に記載のマイコバクテリウムwまたはその成分による誘導されたTLRの低下は、狼瘡において誘導される。
【請求項13】
請求項1に記載のマイコバクテリウムwまたはその成分による誘導されたTLRの低下は、潰瘍性大腸炎において誘導される。
【請求項14】
請求項1に記載のマイコバクテリウムwまたはその成分による誘導されたTLRの低下は、クローン病において誘導される。
【請求項15】
請求項1に記載のマイコバクテリウムwまたはその成分による誘導されたTLRの低下は、自己免疫疾患において誘導される。
【請求項16】
請求項1に記載のマイコバクテリウムwまたはその成分による誘導されたTLRの低下は、リウマチ様疾患において誘導される。
【請求項17】
請求項1に記載のマイコバクテリウムwまたはその成分による誘導されたTLRの低下は、慢性肝炎において誘導される。
【請求項18】
請求項1に記載のマイコバクテリウムwまたはその成分による誘導されたTLRの低下は、カンジダ症において誘導される
【請求項19】
請求項1に記載のマイコバクテリウムwまたはその成分による誘導されたTLRの低下は、マラリアにおいて誘導される。
【請求項20】
請求項1に記載のマイコバクテリウムwまたはその成分による誘導されたTLRの低下は、多発性硬化症において誘導される。
【請求項21】
請求項1に記載のマイコバクテリウムwまたはその成分による誘導されたTLRの低下は、視神経炎において誘導される。
【請求項22】
請求項1に記載のマイコバクテリウムwまたはその成分による誘導されたTLRの低下は、アテローム性動脈硬化症において誘導される。
【請求項23】
請求項1に記載のマイコバクテリウムwまたはその成分による誘導されたTLRの低下は、ウイルス性脳炎において誘導される。
【請求項24】
敗血症の処置における、治療量のマイコバクテリウムwまたはその成分の使用。
【請求項25】
慢性閉塞性肺疾患の処置における、治療量のマイコバクテリウムwまたはその成分の使用。
【請求項26】
多発性骨髄腫の処置における、治療量のマイコバクテリウムwまたはその成分の使用。
【請求項27】
マラリアの処置における、治療量のマイコバクテリウムwまたはその成分の使用。
【請求項28】
多発性硬化症の処置における、治療量のマイコバクテリウムwまたはその成分の使用。
【請求項29】
視神経炎の処理における、治療量のマイコバクテリウムwまたはその成分の使用。

【図4】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−510303(P2010−510303A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537713(P2009−537713)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【国際出願番号】PCT/IB2007/003581
【国際公開番号】WO2008/062288
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(507421393)カディラ ファーマシューティカルズ リミテッド (7)
【Fターム(参考)】