説明

ポリアセタール共重合体

【課題】生産性に優れ、かつ結晶化速度が向上した、剛性、強度、熱安定性のバランスに優れるポリアセタール共重合体を提供する。
【解決手段】繰り返し単位として、下記一般式(I)、(II)を含むポリアセタール共重合体。
(I)−OCH
(II)−CR-CR
ここで、(I)、(II)の繰り返し単位のモル比は、(I)100モルに対して、(II)0.001以上10モル以下である。(ただし、R〜Rは水素、ハロゲン基、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基から選ばれる少なくとも一種類であり、かつホルマール基を有さない)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産性に優れ、かつ結晶化速度が向上した、剛性、強度、熱安定性のバランスに優れたポリアセタール共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタールは剛性、強度、靭性、耐クリープ寿命、耐疲労性、耐薬品性及び摺動性、耐熱性等のバランスに優れ、且つその加工性が容易であることから、エンジニアリングプラスチックスとして、電気機器や電気機器の機構部品、自動車部品及びその他の機構部品を中心に広範囲にわたって用いられている。
現在、市場に展開されているポリアセタールの分子骨格には、オキシメチレンユニットからなるホモポリマーと、オキシメチレンユニットとオキシエチレンユニット等炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの共重合からなるコポリマーが存在する。それぞれを比較すると、ホモポリマーは機械的物性が、コポリマーは熱安定性が優れる特徴をもち、それぞれの特徴を生かした用途、部品に使用されている。さらに連鎖移動剤をブロック成分としてもちいたブロックコポリマーも一部市場に展開されている。
【0003】
近年、より多様化する用途、市場要求に対応するために、ポリアセタールの分子骨格を最適化し、より性能、機能を高める試みもなされている。
従来、コポリマーにおいて、オキシエチレンユニット以外のコモノマーを使用した分子骨格を持つコポリマーは各種検討がなされている(例えば非特許文献1から4など)。より具体的には、例えば、トリオキサンとエチレンオキシドや1,3−ジオキソラン等の環状エーテル化合物、さらに、グリシジルフェニルエーテル、スチレンオキシド、グリシジルナフチルエーテルから選ばれた少なくとも一つを共重合させたポリアセタール共重合体が報告されている(特許文献5)。その結果、結晶化速度が上昇し、より高い機械的物性となり、成形時間の短縮が可能となったといわれている。しかしながらこれらの環状エーテルのなかにはモノマー中の不純物やその化学的構造上の問題から、開環重合の反応性に乏しい場合があり、重合条件によっては所望の物性を得ることが困難な場合があった。
【0004】
さらに、ポリアセタールの末端を、特定のエチレン性不飽和結合を有する一価の有機基で変性した末端変性ポリアセタールが報告されている(特許文献6)。その結果、他の樹脂、化合物との反応性、相溶性に優れた特性を得られるようになったといわれている。本文献では、分子骨格を最適化するに当り、エチレン性不飽和基を末端に持つ直鎖状のホルマール化合物が用いられている。該技術によると、末端のエチレン不飽和基は反応性を有していることから、その反応機構としては、直鎖状のホルマール結合部と、オキシエチレン結合部によるトランスアセタール反応によって分子骨格が変化していると推測される。しかしながら末端の修飾は、分子量との兼ね合いでその量が決定されるために、他の樹脂との反応性の観点では制限される場合があった。
【0005】
さらに、トリオキサンと環状エーテル類、芳香族系多官能オレフィンを共重合させたポリアセタール共重合体が報告されている(特許文献7)。その結果、より剛性に優れたポリアセタールが得られたといわれている。本文献では、従来技術と異なり多官能のオレフィン部が反応性に寄与し、架橋すると推測される。このような芳香族系多官能オレフィン化合物は一般には反応性に優れるため、モノマーとしては反応安定剤が多量に含まれる場合があったり、また構造異性体の混合物であったりする。そのため、工業化におけるモノマー取り扱い上の問題や、得られる重合体の熱安定性などの物性や、そのばらつきなどの品質といった観点でより改善を求められる場合があった。
このように従来技術では、ポリアセタールの分子骨格に関する開発は進められているが、使用するコモノマーの取り扱い、重合プロセスへの適用等の生産上の課題、得られるポリマーの収率や得られる物性面、特に熱安定性の観点で改善が求められる場合があり、より生産性に優れ、剛性、強度、熱安定性により優れたポリアセタール共重合体が求められていた。
【0006】
【非特許文献1】K.Weibermel,E.Fischer,K.Gutweiler、Zur CopolymerisationdesTrioxanans、ドイツ、Kunstoffe、1964、54,p410−p415
【非特許文献2】Von Volker Jaacks、AnomalienbeiderkationischenCopolymerisationvonTrioxan、ドイツ、Die Makromolekulare Chemie、1967、101、p33−p57
【非特許文献3】T.Higashimura,A.Tanaka,T.Miki,S.Okamura、Copolymerization of Trionane with Styrene Catalyzed by BF3・O(C2H5)2、Journal of Polymer Science:Part A−1、1967、5、p1927−1936
【非特許文献4】R.J.V.Hojfors,P.H.Geil、Solution Grown Crystals of Poly(oxymethylene) Copolymers、J.Macromol.Sci.−Phys.、1974、B10(1)、p169−175
【特許文献5】特開平3−170526号公報
【特許文献6】特開平8−245738号公報
【特許文献7】特開2003−147038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、生産性に優れ、かつ結晶化速度が向上した、剛性、強度、熱安定性のバランスに優れたポリアセタール共重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリアセタールの分子骨格を特定構造に最適化し、さらに使用するコモノマーを選択することによって、生産性に優れ、結晶化速度が向上した、剛性、強度、熱安定性のバランスに優れたポリアセタール共重合体が得られることを見出し、本発明を完成するにいたった。
すなわち、本発明は、
(1)繰り返し単位として、下記一般式(I)、(II)を含むポリアセタール共重合体、
(I)−OCH
(II)−CR-CR
ここで、(I)、(II)の繰り返し単位のモル比は、(I)100モルに対して、(II)0.001以上10モル以下である(ただし、R〜Rは水素、ハロゲン基、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基から選ばれる少なくとも一種類であり、かつホルマール基を有さない)、
(2)繰り返し単位として、下記一般式(I)、(II)、(III)を含むポリアセタール共重合体、
(I)−OCH
(II)−CR-CR
(III)−O(CH
ここで、(I)、(II)、(III)の繰り返し単位のモル比は、(I)100モルに対して、(II)0.001以上10モル以下、(III)0.001以上10モル以下である(ただし、Xは2以上10以下の整数であり、R〜Rは水素、ハロゲン基、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基から選ばれる少なくとも一種類であり、かつホルマール基を有さない)、
(3)(II)式中、R〜Rの少なくとも一つが芳香族炭化水素基であることを特徴とする上記(1)または(2)に記述のポリアセタール共重合体、
(4)(II)式中、R〜Rの少なくとも一つがフェニル基およびその誘導体であることを特徴とする上記(1)から(3)いずれかに記述のポリアセタール共重合体、
(5)(II)式中、R〜Rが水素であることを特徴とする上記(1)から(4)記述のポリアセタール共重合体、
(6)(A)ホルムアルデヒド、環状エーテル、環状ホルマールから選ばれた少なくとも一種類100モルに対して、(B)一般式CR=CR(ただし、R〜Rは水素、ハロゲン基、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基およびそれらから選ばれる少なくとも一種類であり、かつホルマール基を有さない)で表されるオレフィン化合物0.001以上10モル以下を重合して得られる上記(1)から(5)いずれかに記述のポリアセタール共重合体、
(7)(B)式中、R〜Rの少なくとも一つが芳香族炭化水素基であることを特徴とする上記(6)に記述のポリアセタール共重合体、
(8)(B)式中、R〜Rの少なくとも一つがフェニル基であることを特徴とする上記(6)または(7)に記述のポリアセタール共重合体、
(9)(B)式中、R〜Rが水素であることを特徴とする上記6から8いずれかに記述のポリアセタール共重合体、
(10)(B)が、スチレンおよび/またはスチレン誘導体であることを特徴とする上記(6)から(9)いずれかに記述のポリアセタール共重合体、
(11)(A)がトリオキサンおよびトリオキサンを除いた環状エーテル、環状ホルマールから選ばれた少なくとも一種類であることを特徴とする上記(6)から(10)いずれかに記述のポリアセタール共重合体、
(12)重合触媒として、カチオン性重合触媒を用いることを特徴とする上記(6)から(11)いずれかに記述のポリアセタール共重合体、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリアセタール共重合体は、生産性に優れ、かつ結晶化速度が向上した、剛性、強度、熱安定性のバランスに優れる効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明のポリアセタール共重合体は、繰り返し単位として、下記一般式(I)、(II)を含むポリアセタール共重合体である。
(I)−OCH
(II)−CR-CR
ここで、(I)、(II)の繰り返し単位のモル比は、(I)100モルに対して、(II)0.001以上10モル以下である(ただし、R〜Rは水素、ハロゲン基、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基およびから選ばれる少なくとも一種類であり、かつホルマール基を有さない)。
【0011】
また、本発明では、より熱安定性や機械的物性の観点から、好ましい繰り返し単位として、下記一般式(I)、(II)、(III)を含むポリアセタール共重合体であってもよい。
(I)−OCH
(II)−CR-CR
(III)−O(CH
ここで、(I)、(II)、(III)の繰り返し単位のモル比は、(I)100モルに対して、(II)0.001以上10モル以下、(III)0.001以上10モル以下である(ただし、Xは2以上10以下の整数であり、R〜Rは水素、ハロゲン基、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基およびから選ばれる少なくとも一種類であり、かつホルマール基を有さない)。
【0012】
このとき、(I)、(II)、(III)の繰り返し単位のモル比において、ポリアセタール共重合体の熱安定性や機械的物性の観点から、(I)100モルに対して、(II)は好ましくは0.005以上5モル以下であり、さらに好ましくは0.01以上3モル以下であり、最も好ましくは0.03以上1モル以下である。同様の理由から、(III)は好ましくは0.01以上5モル以下であり、さらに好ましくは0.1以上3モル以下であり、最も好ましくは0.3以上1モル以下である。
また、本発明中の(III)におけるXは2以上10以下の整数であるが、得られるポリアセタール共重合体の機械的物性の観点から、好ましくは2以上8以下であり、さらに好ましくは2以上5以下であり、最も好ましくは2以上4以下である。
ここで、本発明では、ホルマール基とは、−OCHO−基を示している。該構造が含まれた場合、本発明の製造方法によって得られるポリアセタール共重合体の熱安定性や機械的特性といった観点で問題となる場合がある。
【0013】
本発明では、(I)、(II)、(III)の繰り返し単位それぞれが形成する繰り返し構造のシーケンス長は限定されない。また、(II)、(III)の繰り返し構造がブロック、ランダムのいずれの構造をとっていてもよく、これらが入り混じった構造であってもよい。例えば、
(ア)−OCHOCHOCH−CR−CR−OCHOCH−O(CH−CR−CR−OCH
(イ)−OCHOCHOCH−CR−CR−CR−CR−O(CH−O(CH
(ウ)−OCHOCHOCH−CR−CR−−CR−CR−OCH−O(CH−OCH−CR−CR−OCHOCH−CR−CR
のように、(I)が形成する繰り返し構造の間に、(II)または(III)が、(ア)ランダム構造、(イ)ブロック構造、(ウ)ランダム構造とブロック構造が入り混じった構造、を取っていても良い。よい。上記(ア)から(ウ)は一種類であっても二種類以上が混合していてもよい。また得られる共重合体において、上記R〜Rが結合する炭素の立体配置としてはシス体、トランス体が存在するが、これらはシス体、トランス体それぞれ、またはこれらの入り混じった共重合体であってもよい。また、本発明で得られる共重合体は、高分子末端には二重結合を有さないことが好ましい。
【0014】
本発明の(II)式中のR〜Rは、水素、ハロゲン基、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基から選ばれる少なくとも一種類であるが、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基においてその一部の水素がさらにハロゲン基や水酸基、カルボキシル基、ニトリル基等の公知の置換基で置換されていてもよく、公知のものであれば、特に限定されるものではない。このようなR〜Rとしては例えば、水素基、フッ素基、クロロ基などのハロゲン基、メチルエステル基、エチルエステル基などのエステル基、メチルエーテル基、エチルエーテル基などのエーテル基、カルボキシル基、ニトリル基、エチル基、メチル基、t−ブチル基などの飽和炭化水素基、ビニル基、ブタジエン基などの不飽和炭化水素基、フェニル基、ピリジン基、N−カルバゾール基などの芳香族炭化水素基およびこれら誘導体をあげることができる。)これらのR〜Rは、同一の一種類であってもよいし、異なる基であっても差し支えない。さらに、例えば−CR−CRα−と−CR−CRβ−(ただしRαとRβは異なる基を示す)が混合して存在してもよい。またRとRは環状につながっていても良い。
【0015】
これらのうち、ポリアセタール共重合体の機械的特性や熱安定性の観点から、R〜Rとしては、水素基、フッ素基、クロロ基などのハロゲン基、カルボキシル基、ニトリル基、飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基が好ましく、フッ素基、クロロ基などのハロゲン基、カルボキシル基、ニトリル基、芳香族炭化水素基がさらに好ましく、芳香族炭化水素基が最も好ましい。同様の理由から、芳香族炭化水素基のなかでもフェニル基、ナフチル基およびこれらの誘導体であることが好ましく、フェニル基およびその誘導体であることがこの好ましい。
ここで、得られるポリアセタール共重合体の結晶化速度が速く、結晶モルフォロジーがより微細で、機械的物性に優れるといった観点から、好ましい構造としては(II)式中のR〜Rの少なくとも一つが芳香族炭化水素基であり、さらに好ましくはフェニルおよびその誘導体である。同様の理由から、R〜Rが水素であることが好ましい。
本発明のポリアセタール共重合体の構造を確認する手段としては、公知のポリマーの一般的分析手法を用いることができる。具体的には得られたポリアセタール共重合体5mgを1N塩酸水溶液に加えて90℃で8時間ポリマーの分解を行い、その溶液をクロロホルム/水などにて抽出作業をおこなう。その後、それぞれの相に含まれる成分をプロトン核磁気共鳴法によってその定性、定量分析を行なう方法をあげることができる。特に、本発明において、(II)式中のR〜Rに分子構造に、芳香族基や長鎖の脂肪族基を含む場合には、塩酸水溶液による加水分解液において、不溶成分としてそれらのユニットを含む成分が残渣として得られる場合がある。その場合はこの残渣が溶解するように溶媒を選択し、液/液による抽出作業を行い、構造確認を行なう必要がある。
【0016】
本発明のポリアセタール共重合体のメルトフローインデックスMFI(ASTM−D1238で測定)は特に限定されるものではないが、加工性の観点から、好ましくは0.1g/10分〜150g/10分、さらに好ましくは0.5g/10分〜130g/10分、最も好ましくは1g/10分〜100g/10分である。
本発明のポリアセタール共重合体において、好ましい結晶化速度としては、温度150度の時に、35秒以下であり、さらに好ましくは25秒以下であり、最も好ましくは20秒以下である。概結晶化速度は、5mgのペレットを熱プレスすることによってフィルム状とし、DSC測定装置(パーキンエルマー社製DSC−2C)を用いて室温から200℃まで昇温し、そのまま2分間保持することによって熱歪みを取り除き、80℃/分の速度で150℃まで冷却しこの温度を維持し、150℃到達時間から数えて結晶化発熱ピーク頂点の観察されるまでの時間を求める。上記範囲であればポリアセタール共重合体は微結晶構造となり、得られる成形品の機械的物性や、収縮率に優れる傾向にある。また本発明のポリアセタール共重合体の好ましい融点としては、155℃〜180℃であり、さらに好ましくは160℃〜170℃であり、最も好ましくは163℃〜168℃である。上記範囲内であればポリアセタール共重合体は成型加工性に優れると共に、機械的物性においても優れる特性をもつ。
【0017】
本発明のポリアセタール共重合体は、成形、加工時等の熱安定性の観点から、窒素気流下、220℃において、下記計算式で表される3つの時間帯それぞれにおいて、ホルムアルデヒド発生速度が25ppm/min.以下であることが好ましく、20ppm/min.以下がより好ましく、15ppm/min.以下であることがもっとも好ましい。ここで、上記ホルムアルデヒド発生速度の測定を具体的に記すと、窒素気流下(50NL/hr)において、ポリアセタール共重合体を220℃に加熱溶融し、発生するホルムアルデヒドを水に吸収した後、亜硫酸ソーダ法により滴定する。その際、加熱開始から2分後までのホルムアルデヒド発生量(ppm)をY、同10分後までをY10、同30分をY30、同50分をY50、同90分をY90としたときに、2分〜10分の発生速度(Y10−Y)/8(ppm/min.)10分〜30分の発生速度(Y30−Y10)/20(ppm/min.)50分〜90分の発生速度(Y90−Y50)/40(ppm/min.)として算出する。これらの値はそれぞれ、ポリアセタールに付着したホルムアルデヒド起因、ポリアセタールの末端分解によって生じるホルムアルデヒド起因、ポリアセタールの主鎖分解によって生じるホルムアルデヒド起因といわれて、これらの値が小さいほど熱安定性に優れている。
【0018】
本発明のポリアセタール共重合体を得るための原料であるモノマー類は、本発明の骨格構造を有する共重合体が得られる範囲であれば特に限定されるものではなく、公知のモノマー類を使用することができる。なかでも、コモノマーのコストや、取り扱い、重合プロセスへの適用等の生産面、得られるポリマーの収率の観点から、好ましいモノマー類としては、(A)ホルムアルデヒド、環状エーテル、環状ホルマールおよび(B)一般式CR=CR(ただし、R〜Rは水素、ハロゲン基、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基から選ばれる少なくとも一種類であり、かつホルマール基を有さない)で表されるオレフィン化合物をあげることができる。(B)は本発明で得られる共重合体中で、式(II)で示される構造を示すモノマーである。
【0019】
ここで、使用するモノマー類は得られるポリアセタール共重合体が本発明の範囲の構造となるように配合され、用いられる。具体的には(A)ホルムアルデヒド、環状エーテル、環状ホルマールから選ばれた一種類以上の化合物100モルに対して、(B)一般式CR=CR(ただし、R〜Rは水素、ハロゲン基、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基から選ばれる一種類以上の置換基であり、かつホルマール基を有さない)で表されるオレフィン0.001以上10モル以下を重合して本発明のポリアセタール共重合体を得ることができる。また、(A)ホルムアルデヒド、環状エーテル、環状ホルマールから選ばれた一種類以上の化合物100モルに対し、好ましい(B)の配合量は、0.005以上5モル以下、さらに好ましくは0.01以上3モル以下、最も好ましくは0.03以上1モル以下である。
【0020】
上記(A)において、環状エーテル、環状ホルマールとは、炭素−酸素結合を有する環状構造で、かつ重合能を有する公知の化合物であれば特に限定されるものではない。例えば、ホルムアルデヒドの3量体であるトリオキサンや4量体のテトラオキサンをあげることができる。またエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,3−ジオキソランや1,4−ブタンジオールホルマールなどのグリコールやジグリコールの環状ホルマール等の環状エーテルをあげることができる。これらは一種または二種類以上の混合物で用いてもよい。
【0021】
上記(B)とは、(B)一般式CR=CR(ただし、R〜Rは水素、ハロゲン基、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基から選ばれる少なくとも一種類であり、かつホルマール基を有さない)で表される公知のオレフィン化合物であれば特に限定されるものではない。例えば、R〜Rが水素であるビニル化合物、R、Rが水素であるビニリデン化合物、R、Rが水素であるビニレン化合物、さらにRとRが環状につながった環状不飽和化合物をあげることができる。さらに、官能基を有するアクリル酸およびその誘導体、アクリロニトリルおよびその誘導体などをあげることができる。より具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、4−メチル−ペンテン、1−フッ化エチレン、フルオロエチレン、塩化ビニル、1,1−ジフルオロエチレン、1,1−ジクロロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフオロエエチレン、スチレン、α−メチルスチレン、パラクロロスチレン、酢酸ビニル、1−ビニル−2−ピロリドン、メチルビニルエーテル、アクリル酸エチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシルエチル、メタクル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アクリロニトリル、N−ビニルカルバゾール、2−ビニルピリジン、1,3−ブタジエンをあげることができる。これらは一種または二種類以上の混合物で用いてもよい。
【0022】
上記のうち、重合の収率や得られるポリアセタール共重合体の機械的特性のバランスに優れるといった観点から、好ましくは、ハロゲン化オレフィン、スチレンおよびその誘導体、スチレン以外の芳香族ビニル化合物、ヘテロ環状化合物、酢酸ビニル、アクリロニトリルであり、さらに好ましくは、スチレンおよびその誘導体、ヘテロ環状化合物であり、最も好ましくはスチレンおよびその誘導体である。
本発明のポリアセタール共重合体を得るための重合触媒としては、公知のものであれば特に限定されるものではないが、重合収率や工業的な観点から、好ましい重合触媒として、カチオン性重合触媒をあげることができる。該カチオン性重合触媒としては公知のものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ルイス酸、プロトン酸及びそのエステル又は無水物等をあげることができる。より具体的には、ルイス酸としては、ホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモンのハロゲン化物である三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化アンチモン及びその錯化合物、プロトン酸、そのエステルまたは無水物としては、パークロル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸−3級ブチルエステル、アセチルパークロラート、トリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェート、さらにはヘテロポリ酸、イソポリ酸等が挙げられる。これらのうち、より好ましいカチオン性重合触媒としては、パークロル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテルをあげることができる。また原料として、ホルムアルデヒドを用いる場合には四級アンモニウム塩などのアニオン性重合触媒を用いることもできる。
【0023】
本発明のポリアセタール共重合体の製造方法は公知のポリアセタールの製造方法をとることができ、特に限定されるものではない。例えば、(A)トリオキサンおよび、1,3−ジオキソランと、(B)ビニル化合物、さらに分子量調整用としてメチラール化合物のごとき連鎖移動剤をシクロヘキサンのような有機溶媒中に導入し、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体のようなカチオン性重合触媒を用いて重合した後、触媒の失活と末端基の安定化をおこなうことによる製造方法、あるいは溶媒を全く使用せずに、コニーダー、2軸スクリュー式連続押出混錬機、2軸パドル型連続混合機等のセルフクリーニング型押出混錬機の中へモノマー類、共重合成分、分子量調整用の連鎖移動剤および触媒を導入して塊状重合した後さらに水酸化コリン蟻酸塩等の第4級アンモニウム化合物を添加して不安定末端を分解除去して製造する方法等をあげることができる。
【0024】
ここで、熱安定性に優れる好ましいポリアセタール共重合体を得る方法として、ポリアセタール共重合体を下記式で表される少なくとも一種の第4級アンモニウム化合物を用いて、熱的に不安定な末端を処理して安定化させる方法をあげることができる。
[R−n
(式中、R、R、R、Rは、各々独立して、炭素数1から30の非置換アルキル基または置換アルキル基、炭素数6から20のアリール基、炭素数1から30の非置換アルキル基または置換アルキル基が少なくとも1個の炭素数6から20のアリール基で置換されたアラルキル基、又は炭素数6から20のアリール基が少なくとも1個の炭素数1から30の非置換アルキル基または置換アルキル基で置換されたアルキルアリール基を表し、非置換アルキル基または置換アルキル基は直鎖状、分岐状、または環状である。上記非置換アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基は水素原子がハロゲンで置換されてもよい。nは1から3の整数を表す。Xは水酸基、又は炭素数1から20のカルボン酸、水素酸、オキソ酸無機チオ酸もしくは炭素数1から20の有機チオ酸の酸残基を表す)
【0025】
上記一般式において、好ましいR〜Rは、各々独立して、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であり、さらに好ましくは、RからRの少なくとも1つが、ヒドロキシエチル基である。より具体的には、テトラメチルアンモニウム、テトエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、1,6−ヘキサメチレンビス(トリメチルアンモニウム)、デカメチレン−ビス−(トリメチルアンモニウム)、トリメチル−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリプロピル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリ−n−ブチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリプロピルベンジルアンモニウム、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、トリメチル−2−オキシエチルアンモニウム、モノメチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、モノエチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、オクダデシルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、テトラキス(ヒドロキシエチル)アンモニウム等の水酸化物;塩酸、臭酸、フッ酸などの水素酸塩;硫酸、硝酸、燐酸、炭酸、ホウ酸、塩素酸、よう素酸、珪酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸等のオキソ酸塩;チオ硫酸などのチオ酸塩;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、シュウ酸などのカルボン酸塩等が挙げられる。中でも、水酸化物、硫酸、炭酸、ホウ酸、カルボン酸の塩が好ましい。さらにカルボン酸において、蟻酸、酢酸、プロピオン酸が特に好ましい。これら第4級アンモニウム化合物は、単独で用いてもよいし、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
このとき、上記第4級アンモニウム化合物の添加量は、ポリアセタール共重合体と第4級アンモニウム化合物の合計質量に対する下記式で表される第4級アンモニウム化合物由来の窒素の量に換算して0.05〜50質量ppm、好ましくは1〜30質量ppmである。
P×14/Q
(式中、Pは第4級アンモニウム化合物のポリアセタール共重合体に対する濃度(質量ppm)を表し、14は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を表す)
このとき、第4級アンモニウム化合物の添加量が0.05質量ppm未満であると不安定末端部の分解除去速度が低下する傾向にあり、50質量ppmを超えると不安定末端部分解除去後のポリアセタール共重合体の色調が低下する傾向にある。
【0027】
上記安定化させる方法として、好ましくは上記第4級アンモニウム化合物とポリアセタール共重合体をポリアセタール共重合体の融点以上260℃以下の樹脂温度で押出機、ニーダーなどを用いて熱処理を行うものである。ここで、260℃を超えると着色の問題、およびポリマー主鎖の分解(低分子量化)の問題が生ずる恐れがある。また、第4級アンモニウム化合物の添加方法は、特に制約はなく、重合触媒を失活する工程にて水溶液として加える方法、共重合体パウダーに吹きかける方法などがある。いずれの添加方法を用いても、ポリアセタール共重合体を熱処理する工程で添加されていれば良く、押出機の中に注入したり、樹脂ペレットに該化合物を添着し、その後の配合工程で不安定末端の分解を実施してもよい。不安定末端の分解は、重合で得られたポリアセタール共重合体中の重合触媒を失活させた後に行うことも可能であるし、また重合触媒を失活させずに行うことも可能である。
本発明において、本発明の目的を損なわない範囲で、更に適当な公知の添加剤を必要に応じて配合することができる。具体的には、酸化防止剤、熱安定剤、耐侯(光)安定剤、離型剤、摺動性付与剤、潤滑剤、結晶核剤、無機充填材、導電材、熱可塑性樹脂、および熱可塑性エラストマー、顔料などをあげることができる。
【0028】
本発明のポリアセタール共重合体は、生産性に優れ、かつ結晶化速度が向上した、剛性、強度、熱安定性に優れる特徴を有しており、工業製品としてさまざまな用途の部品に使用することができる。例えば、ギア、カム、スライダー、レバー、アーム、クラッチ、フェルトクラッチ、アイドラギアー、プーリー、ローラー、コロ、キーステム、キートップ、シャッター、リール、シャフト、関節、軸、軸受け及び、ガイド等に代表される機構部品、アウトサート成形の樹脂部品、インサート成形の樹脂部品、シャーシ、トレー、側板、プリンター及び複写機に代表されるオフィスオートメーション機器用部品、VTR、ビデオムービー、デジタルビデオカメラ、カメラ及び、デジタルカメラに代表されるカメラ、またはビデオ機器用部品、カセットプレイヤー、DAT、LD、MD、CD〔CD−ROM、CD−R、CD−RWを含む〕、DVD〔DVD−ROM、DVD−R、DVD−RW、DVD−RAM、DVD−Audioを含む〕、その他光デイスクドライブ、MFD、MO、ナビゲーションシステム及びモバイルパーソナルコンピュータに代表される音楽、映像または情報機器、携帯電話およびファクシミリに代表される通信機器用部品、電気機器用部品、電子機器用部品、自動車用の部品として、ガソリン燃料およびディーゼル燃料タンク、フュエルポンプモジュール、バルブ類、ガソリンタンクフランジ等に代表される燃料廻り部品、ドアロック、ドアハンドル、ウインドウレギュレータ、スピーカーグリル等に代表されるドア廻り部品、シートベルト用スリップリング、プレスボタン等に代表されるシートベルト周辺部品、コンビスイッチ部品、スイッチ類及び、クリップ類の部品、さらにシャープペンシルのペン先及び、シャープペンシルの芯を出し入れする機構部品、洗面台及び、排水口及び、排水栓開閉機構部品、自動販売機の開閉部ロック機構及び、商品排出機構部品、衣料用のコードストッパー、アジャスター及び、ボタン、散水用のノズル及び、散水ホース接続ジョイント、階段手すり部及び、床材の支持具、電動シャッター構造部品など建築用品、使い捨てカメラ、玩具、パチンコ、パチスロ等の遊戯台関連、ファスナー、チェーン、コンベア、バックル、スポーツ用品、自動販売機、家具、楽器及び、住宅設備機器に代表される工業部品などとして好適に使用できる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に制限されるものではない。なお、以下の実施例、比較例において記載した評価は、以下の方法により実施した。
(1)重合収率
下記式によって重合収率を算出した。
重合収率%=(ニーダー重合機から排出された不安定末端部分除去前のポリアセタール共重合体の粉末質量)/(ニーダー重合機に連続的に添加されたモノマーの総質量)×100
(2)メルトフローインデックス(MFI:g/10min.)
ASTM−D1238により東洋精機(株)製のMELT INDEXERを用いて190℃、2160gの条件下で測定した。
(3)結晶化速度測定
5mgのペレットを熱プレスすることによってフィルム状とし、DSC測定装置(パーキンエルマー社製DSC−2C)を用いて室温から200℃まで昇温し、そのまま2分間保持することによって 熱歪みを取り除き、80℃/分の速度で150℃まで冷却しこの温度を維持し、150℃到達時間から数えて結晶化発熱ピーク頂点の観察されるまでの時間を求めた。
【0030】
(4)ホルムアルデヒド発生速度(ppm/min.)の測定
あらかじめ140℃で1時間乾燥処理を施したポリアセタール共重合体のペレット3gを、窒素気流(50NL/hr)下、220℃に加熱溶融し、発生するホルムアルデヒドを水に吸収した後、亜硫酸ソーダ法により滴定した。その際、加熱開始から2分後までのホルムアルデヒド発生量(ppm)をY、同10分後までをY10、同30分をY30、同50分をY50、同90分をY90としたときに、
2〜10分の発生速度(Y10−Y)/8(ppm/min.)
10分〜30分の発生速度(Y30−Y10)/20(ppm/min.)
50分〜90分の発生速度(Y90−Y50)/40(ppm/min.)
として算出した。これらの値はそれぞれ、ポリアセタールに付着したホルムアルデヒド起因、ポリアセタールの末端分解によって生じるホルムアルデヒド起因、ポリアセタールの主鎖分解によって生じるホルムアルデヒド起因であり、これらの値が小さいことは、熱安定性に優れることを示す。
(5)ポリアセタール共重合の物性
射出成形機(住友重機械工業(株)製SH―75)を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度70℃に設定し、射出15秒、冷却25秒の射出成形条件で評価用ダンベル片、短冊片を得て、曲げ弾性率(GPa)および曲げ強度(MPa)をASTM D790に準じて行った。
【0031】
また、実施例、比較例には下記成分を用いた。
<共重合成分1>
(b−1)スチレン(アルドリッチ、試薬)
<共重合成分2>
(c−1)2−ベンジル−1,3−ジオキソラン(東京化成、試薬)
(c−2)2−フェニル−1,3−ジオキソラン(アルドリッチ、試薬)
(c−3)2,3−エポキシプロピルベンゼン(アルドリッチ、試薬)
(c−4)スチレンオキシド(アルドリッチ、試薬)
(c−5)1,2−エポキシ−3−フェニロキシプロパン(アルドリッチ、試薬)
【0032】
[実施例1]
熱媒を通すことができるジャッケット付きの2軸セルフクリーニングタイプのパドル型連続混合機(以下重合機と呼ぶ)を75℃に調整し、トリオキサン3.5kg/hr、1,3−ジオキソラン43.2g/h、共重合成分として(b−1)スチレン1.2g/h、(トリオキサン100molに対して、1,3−ジオキソラン1.5mol、スチレン0.03mol)を連続的に添加した。また同時に、分子量調整剤として、メチラールをトリオキサン100molに対して0.1mol、重合触媒として三フッ化硼素ジ−n−ブチルエーテラートをトリオキサン100molに対して2.0×10−3mol連続的に添加することによってポリアセタール共重合体の粉末を得た。重合機から排出された概粉末はすぐさま多量のトリエチルアミン0.1%水溶液中に投入することで重合触媒の失活、重合停止を行った。その後、遠心分離機でろ過した後、粉末100質量部に対して、第4級アンモニウム化合物として水酸化コリン蟻酸塩(トリエチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムフォルメート)を含有した水溶液1質量部を添加して、均一に混合した後120℃で乾燥した。このとき、水酸化コリン蟻酸塩の添加量は、添加する水酸化コリン蟻酸塩を含有した水溶液中の水酸化コリン蟻酸塩の濃度を調整することにより行い、窒素量に換算して20質量ppmとした。乾燥後のポリアセタール共重合体に、酸化防止剤(チバスペシャルティケミカルズ(株)製IRGANOX245、ポリアセタール共重合体100質量部に対して0.35質量部)、熱安定剤(ポリアミド66粉末、ポリアセタール共重合体100質量部に対して0.25質量部)を加え、ベント付き2軸スクリュー式押出機に供給し、押出機設定温度200℃、押出機における滞留時間7分で不安定末端部分の分解除去を行い、ポリアセタール共重合体を得た。評価結果を表1に示す。また、重合直後のポリアセタール共重合体5mgを1N塩酸水溶液に加えて90℃で8時間ポリマーの分解を行なった。その後、クロロホルム/水にて抽出を行ない、クロロホルム相は、重クロロホルム溶媒、水相はヘキサフルオロイソプロパノールd2溶媒へ溶解させ、プロトン核磁気共鳴法によってその組成を確認したところ、請求項に記載した範囲の組成であることが確認できた。評価結果を表1に示す。
【0033】
[実施例2]
トリオキサン3.5kg/hr、1,3−ジオキソラン43.2g/h、共重合成分として(b−1)スチレン4.1g/h(トリオキサン100molに対して、1,3−ジオキソラン1.5mol、スチレン0.1mol)を連続的に添加する以外は実施例1同様に重合を行った。評価結果を表1に示す。
【0034】
[実施例3]
トリオキサン3.5kg/hr、1,3−ジオキソラン43.2g/h、共重合成分として(b−1)スチレン20.3g/h(トリオキサン100molに対して、1,3−ジオキソラン1.5mol、スチレン0.5mol)を連続的に添加する以外は実施例1同様に重合を行った。評価結果を表1に示す。
【0035】
[実施例4]
トリオキサン3.5kg/hr、1,3−ジオキソラン43.2g/h、共重合成分として(b−1)スチレン60.8g/h、(トリオキサン100molに対して、1,3−ジオキソラン1.5mol、スチレン.5mol)を連続的に添加する以外は実施例1同様に重合を行った。評価結果を表1に示す。
【0036】
[実施例5]
トリオキサン3.5kg/hr、1,3−ジオキソラン28.8g/h、共重合成分として(b−1)スチレン4.1g/h(トリオキサン100molに対して、1,3−ジオキソラン1.0mol、スチレン0.1mol)を連続的に添加する以外は実施例1同様に重合を行った。評価結果を表1に示す。
【0037】
[実施例6]
トリオキサン3.5kg/hr、1,3−ジオキソラン120.9g/h、共重合成分として(b−1)スチレン4.1g/h(トリオキサン100molに対して、1,3−ジオキソラン4.2mol、スチレン0.1mol)を連続的に添加する以外は実施例1同様に重合を行った。評価結果を表1に示す。
【0038】
[比較例1]
トリオキサン3.5kg/hr、1,3−ジオキソラン43.2g/h、共重合成分として(c−1)2−ベンジル−1,3−ジオキソラン6.4g/h(トリオキサン100molに対して、1,3−ジオキソラン1.5mol、2−ベンジル−1,3−ジオキソラン0.1mol)を連続的に添加する以外は実施例1同様に重合を行った。評価結果を表2に示す。
【0039】
[比較例2]
トリオキサン3.5kg/hr、1,3−ジオキソラン43.2g/h、共重合成分として(c−2)2−フェニル−1,3−ジオキソラン5.8g/h(トリオキサン100molに対して、1,3−ジオキソラン1.5mol、2−フェニル−1,3−ジオキソラン0.1mol)を連続的に添加する以外は実施例1同様に重合を行った。評価結果を表2に示す。
【0040】
[比較例3]
トリオキサン3.5kg/hr、1,3−ジオキソラン43.2g/h、共重合成分として(c−3)2,3−エポキシプロピルベンゼン6.4g/h(トリオキサン100molに対して、1,3−ジオキソラン1.5mol、2,3−エポキシプロピルベンゼン0.1mol)を連続的に添加する以外は実施例1同様に重合を行った。評価結果を表2に示す。
【0041】
[比較例4]
トリオキサン3.5kg/hr、1,3−ジオキソラン43.2g/h、共重合成分として(c−4)スチレンオキシド4.7g/h、(トリオキサン100molに対して、1,3−ジオキソラン1.5mol、スチレンオキシド0.1mol、)を連続的に添加する以外は実施例2同様に重合を行った。評価結果を表1に示す。
【0042】
[比較例5]
トリオキサン3.5kg/hr、1,3−ジオキソラン43.2g/h、共重合成分として(c−5)1,2−エポキシ−3−フェニロキシプロパン5.8g/h(トリオキサン100molに対して、1,3−ジオキソラン1.5mol、1,2−エポキシ−3−フェニロキシプロパン0.1mol)を連続的に添加する以外は実施例1同様に重合を行った。評価結果を表2に示す。
【0043】
[比較例6]
トリオキサン3.5kg/hr、共重合成分として、1,3−ジオキソラン43.2g/h(トリオキサン100molに対して、1,3−ジオキソラン1.5mol)を連続的に添加する以外は実施例1同様に重合を行った。評価結果を表2に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のポリアセタール共重合体は、生産性に優れ、かつ結晶化速度が向上した、剛性、強度、熱安定性のバランスに優れるため、自動車、電気電子、その他工業などの分野で好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り返し単位として、下記一般式(I)、(II)を含むポリアセタール共重合体。
(I)−OCH
(II)−CR-CR
ここで、(I)、(II)の繰り返し単位のモル比は、(I)100モルに対して、(II)0.001以上10モル以下である(ただし、R〜Rは水素、ハロゲン基、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基から選ばれる少なくとも一種類であり、かつホルマール基を有さない)。
【請求項2】
繰り返し単位として、下記一般式(I)、(II)、(III)を含むポリアセタール共重合体。
(I)−OCH
(II)−CR-CR
(III)−O(CH
ここで、(I)、(II)、(III)の繰り返し単位のモル比は、(I)100モルに対して、(II)0.001以上10モル以下、(III)0.001以上10モル以下である(ただし、Xは2以上10以下の整数であり、R〜Rは水素、ハロゲン基、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基から選ばれる少なくとも一種類であり、かつホルマール基を有さない)。
【請求項3】
(II)式中、R〜Rの少なくとも一つが芳香族炭化水素基であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリアセタール共重合体。
【請求項4】
(II)式中、R〜Rの少なくとも一つがフェニル基およびその誘導体であることを特徴とする請求項1から3いずれかに記載のポリアセタール共重合体。
【請求項5】
(II)式中、R〜Rが水素であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のポリアセタール共重合体。
【請求項6】
(A)ホルムアルデヒド、環状エーテル、環状ホルマールから選ばれた少なくとも一種類100モルに対して、(B)一般式CR=CR(ただし、R〜Rは水素、ハロゲン基、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基およびそれらから選ばれる少なくとも一種類であり、かつホルマール基を有さない)で表されるオレフィン化合物0.001以上10モル以下を重合して得られる請求項1から5いずれかに記載のポリアセタール共重合体。
【請求項7】
(B)式中、R〜Rの少なくとも一つが芳香族炭化水素基であることを特徴とする請求項6に記載のポリアセタール共重合体。
【請求項8】
(B)式中、R〜Rの少なくとも一つがフェニル基であることを特徴とする請求項6または7に記載のポリアセタール共重合体。
【請求項9】
(B)式中、R〜Rが水素であることを特徴とする請求項6から8いずれかに記載のポリアセタール共重合体。
【請求項10】
(B)が、スチレンおよび/またはスチレン誘導体であることを特徴とする請求項6から9いずれかに記載のポリアセタール共重合体。
【請求項11】
(A)がトリオキサンおよびトリオキサンを除いた環状エーテル、環状ホルマールから選ばれた少なくとも一種類であることを特徴とする請求項6から10いずれかに記載のポリアセタール共重合体。
【請求項12】
重合触媒として、カチオン性重合触媒を用いることを特徴とする請求項6から11いずれかに記載のポリアセタール共重合体。

【公開番号】特開2007−262108(P2007−262108A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−84925(P2006−84925)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】