説明

ポリアセタール樹脂を主成分とする成形品を製造する方法

【課題】ポリアセタール樹脂を主成分とする溶媒に対して膨潤性を有する成形品を提供する。
【解決手段】ポリアセタール樹脂とポリ乳酸樹脂の合計を100重量部としたときに、ポリアセタール樹脂1重量部以上40重量部未満及びポリ乳酸樹脂99重量部以下60重量部超を配合してなる樹脂組成物からなる成形品から、ポリ乳酸樹脂を除去することにより、ポリアセタール樹脂または、ポリアセタール樹脂とポリ乳酸樹脂を含有してなる樹脂組成物からなる成形品であり、かつクロロホルム、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、トルエン、メタノール、エタノール、アセトン、ピリジンから選ばれた1種の溶媒に対して膨潤性を有する成形品を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアセタール樹脂を主成分とする樹脂組成物からなる成形品であり、かつ溶媒に対して膨潤性を有することを特徴とする成形品を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は、機械特性、成形性、耐薬品性に優れた樹脂であり、射出成形品として広く用いられている。しかしながら、ポリアセタール樹脂は、結晶化速度が極めて速いために、フイルムや繊維に加工するのは難しく、利用は限定されたものであり、例えば、膜として利用する場合、結晶化速度が極めて速いために、微細な空孔を有する膜を作ることは困難であった。
【0003】
また、ポリアセタール樹脂は多くの有機溶媒に膨潤しないため、例えば、高分子固体電解質として用いることは困難であった。高分子固体電解質としては、ポリエチレンオキシド成分を多く含むポリマー類が広く検討されているが、本質的に吸水性が高く、例えばリチウム電池に要求される非水系化レベルの含水量とすることが著しく困難である上、得られるポリマーのフィルム強度は低いものであった。特許文献1などには、高分子電解質の1例として、ポリアセタール樹脂が記載されているが、具体的な利用方法や特性については一切記載されていない。
【特許文献1】特開平11−144760号公報(第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ポリアセタール樹脂またはポリアセタール樹脂を主成分にした樹脂組成物からなる成形品であり、かつ溶媒に対して膨潤性を有することを特徴とする、極めて特異的な特性を有する成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ポリアセタール樹脂を主成分にした樹脂組成物からなる成形品であり、かつ溶媒に対して膨潤性を有することを特徴とする成形品が優れた特性を有することを見い出し、その製造方法を見い出した。
【0006】
すなわち、本発明は、
1.ポリアセタール樹脂とポリ乳酸樹脂の合計を100重量部としたときに、ポリアセタール樹脂1重量部以上40重量部未満及びポリ乳酸樹脂99重量部以下60重量部超を配合してなる樹脂組成物からなる成形品から、ポリ乳酸樹脂を除去することにより、ポリアセタール樹脂または、ポリアセタール樹脂とポリ乳酸樹脂を含有してなる樹脂組成物からなる成形品であり、かつクロロホルム、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、トルエン、メタノール、エタノール、アセトン、ピリジンから選ばれた1種の溶媒に対して膨潤性を有する成形品を製造する方法。
2.ポリアセタール樹脂は溶解しないが、ポリ乳酸樹脂を溶解する溶媒で抽出することにより、ポリ乳酸樹脂を取り除くこと特徴とする1記載の成形品を製造する方法。
3.ポリアセタール樹脂は溶解しないが、ポリ乳酸樹脂を溶解する溶媒がクロロホルムである2記載の成形品を製造する方法。
4.ポリアセタール樹脂とポリ乳酸樹脂の合計を100重量部としたときに、ポリアセタール樹脂1重量部以上40重量部未満及びポリ乳酸樹脂99重量部以下60重量部超を配合してなる樹脂組成物からなる成形品から、ポリ乳酸樹脂を除去することにより、形状を保った成形品を得ることを特徴とする1〜3のいずれか1項に記載の成形品を製造する方法。
5.得られる成形品が、ポリアセタール樹脂または、ポリアセタール樹脂とポリ乳酸樹脂の合計を100重量部としたときに、ポリアセタール樹脂60重量部以上およびポリ乳酸樹脂40重量部以下を含有してなる樹脂組成物からなる成形品である1〜4のいずれか1項に記載の成形品を製造する方法。
6.得られる成形品が、ポリアセタール樹脂または、ポリアセタール樹脂とポリ乳酸樹脂の合計を100重量部としたときに、ポリアセタール樹脂80重量部以上、ポリ乳酸樹脂20重量部以下を含有してなる樹脂組成物からなる成形品である5記載の成形品を製造する方法。
7.得られる成形品が、内部に微細な空孔を有することを特徴とする1〜6のいずれか1項に記載の成形品を製造する方法。
8.内部の微細な空孔の孔径が1μm以下である7記載の成形品を製造する方法。
9.得られる成形品が、フィルム、シート、または繊維の形状を有するものであることを特徴とする1〜8のいずれか1項に記載の成形品を製造する方法。
10.得られる成形品が、実質的に透明であることを特徴する1〜9のいずれか1項に記載の成形品を製造する方法。
11.得られる成形品の光線透過率が80%以上であることを特徴とする1〜10のいずれか1項に記載の成形品を製造する方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、ポリアセタール樹脂を主成分としながら、溶媒に対して膨潤性を有する成形品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明に用いられるポリアセタール樹脂は、オキシメチレン単位を主たる繰り返し単位とするポリマーであり、ホルムアルデヒドもしくはトリオキサンを主原料として、重合反応によって得られる、いわゆるポリアセタールホモポリマーであっても、主としてオキシメチレン単位からなり、主鎖中に2〜8個の隣接する炭素原子を有するオキシアルキレン単位を15重量%以下含有するいわゆるポリアセタールコポリマーのいずれであってもよく、また他の構成単位を含有するコポリマー、即ち、ブロックコポリマー、ターポリマー、架橋ポリマーの何れであっても良く、これらは1種または2種以上で用いることができる。
【0010】
他の構成単位の具体例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、スチレンオキシド、オキセタン、3,3−ビス(クロルメチル)オキセタン、テトラヒドロフラン、トリオキセパン、1,3−ジオキソラン、プロピレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、トリエテレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,5−ペンタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマールなどを挙げることができる。
【0011】
なかでも、ポリアセタールコポリマーが好ましく、主鎖中に2個の隣接する炭素原子を有するオキシアルキレン単位を20重量%以下含有するポリアセタールコポリマーまたは主鎖中に4個の隣接する炭素原子を有するオキシアルキレン単位を15重量%以下含有するポリアセタールコポリマーがさらに好ましく、主鎖中に2個の隣接する炭素原子を有するオキシアルキレン単位を7重量%以下0.2%以上含有するポリアセタールコポリマーまたは主鎖中に4個の隣接する炭素原子を有するオキシアルキレン単位を10重量%以下0.5%以上含有するポリアセタールコポリマーが特に好ましい。
【0012】
本発明におけるポリアセタール樹脂の製造方法は特に制限はなく、公知の方法により製造できる。ポリアセタールホモポリマーの代表的な製造方法の例としては、高純度のホルムアルデヒドを有機アミン、有機あるいは無機の錫化合物、金属水酸化物のような塩基性重合触媒を含有する有機溶媒中に導入して重合し、重合体を濾別した後、無水酢酸中、酢酸ナトリウムの存在下で加熱してポリマー末端をアセチル化して製造する方法などが挙げられる。
【0013】
また、代表的なポリアセタールコポリマーの製造方法としては高純度のトリオキサンおよび、エチレンオキシドや1,3−ジオキソランなどの共重合成分をシクロヘキサンのような有機溶媒中に導入し、三弗化ホウ素ジエチルエーテル錯体のようなルイス酸触媒を用いてカチオン重合した後、触媒の失活と末端基の安定化を行うことによる製造法、あるいは溶媒を全く使用せずに、セルフクリーニング型攪拌機の中へトリオキサン、共重合成分、および触媒を導入して塊状重合した後、さらに不安定末端を分解除去して製造する方法などが挙げられる。
【0014】
これらポリマーの粘度は、成形材料として使用できる程度のものであれば特に制限はないが、190℃の温度、2160g荷重の条件で、ASTM D1238法によるメルトインデックス(MI)が測定可能であり、MFRが1.0〜70g/10分の範囲のものが好ましく、1.5〜35g/10分のものが特に好ましい。
【0015】
本発明に用いられるポリ乳酸樹脂とは、L−乳酸及び/またはD−乳酸を主たる構成成分とするポリマーであるが、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。他のモノマー単位としては、エチレングリコール、ブロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノ−ルA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、カプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどのラクトン類を挙げることができる。このような共重合成分は、全単量体成分中、通常30モル%以下の含有量とするのが好ましく、10モル%以下であることが好ましい。本発明において、ポリ乳酸樹脂として乳酸成分の光学純度は特に限定されるものではない。
【0016】
ポリ乳酸樹脂の製造方法としては、既知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法、ラクチドを介する開環重合法などを挙げることができる。
【0017】
ポリ乳酸樹脂の分子量や分子量分布は、実質的に成形加工が可能であれば、特に制限されるものではないが、重量平均分子量としては、通常1000以上、好ましくは5000以上、好ましくは2万以上、さらに4万以上であることが好ましい。上限としては、100万以下が好ましい。ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミテーションクロマトグラフィーで測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の分子量をいう。
【0018】
本発明に用いられるポリ乳酸樹脂はポリアセタール樹脂と相溶性を有し、本発明の成形品を製造するのに適している。ここでいう「相溶性」とは、分子レベルで非晶相内に均一相を形成する重合体の混合物を説明するために用いられる。配合物の一方または両方が結晶相及び非晶相の両方を形成する場合、相溶性とは、非晶相が分子レベルで混合していることを意味する。
【0019】
配合物中の相溶性の判断は、いくつかの方法で行うことができる。
【0020】
相溶性について判断する最も一般的な方法は、ガラス転移温度で判断する方法である。相溶性配合物中では、ガラス転移温度が各々単独のものより変化し、多くの場合、単一のガラス転移温度を示す。ポリアセタール樹脂とその他の樹脂の配合物でも、この方法を用いることができ、本発明では、樹脂組成物はポリ乳酸樹脂単独のガラス転移温度よりも低い温度を示す。ガラス転移温度の測定方法としては、差動走査熱量計(DSC)で測定する方法、動的粘弾性試験により測定する方法のいずれも用いることができる。
【0021】
しかしながら、ポリアセタール樹脂は高結晶性であるために、ポリアセタール樹脂の含有量が多い場合には、ガラス転移温度が不明確になるという問題がある。この場合、相溶性の判断としては、ポリアセタール樹脂の結晶化温度を用いることができる。ポリアセタール樹脂がそれ自体よりも結晶化速度の遅い樹脂と相溶性配合物を形成した場合、ポリアセタール樹脂の結晶化速度が単体の場合よりも低下する。この結晶化速度の低下を、DSCで測定した降温時の結晶化温度で判断することができる。
【0022】
本発明の樹脂組成物では、樹脂組成物中のポリアセタール樹脂の降温時の結晶化温度が、ポリアセタール樹脂単独の結晶化温度よりも低い温度を示す。好ましい結晶化温度の低下は、DSCにより降温速度20℃/分で測定した値が0.2℃以上であることが好ましく、0.5℃以上であることがさらに好ましく、1℃以上であることが特に好ましい。
【0023】
本発明では、ポリアセタール樹脂と相溶性である樹脂として、ポリ乳酸樹脂を使用する。
【0024】
本発明の製造方法で得られる成形品は、ポリアセタール樹脂または、ポリアセタール樹脂とポリ乳酸樹脂からなる樹脂組成物からなることを特徴とする。ポリアセタール樹脂とポリ乳酸樹脂からなる樹脂組成物において組成物中のポリアセタール樹脂の割合は高いほど好ましい。具体的には、ポリアセタール樹脂とポリ乳酸樹脂の合計を100重量部としたときに、ポリアセタール樹脂60重量部以上、ポリ乳酸樹脂40重量部以下であること好ましく、ポリアセタール樹脂ポリ乳酸樹脂の合計を100重量部としたときに、ポリアセタール樹脂80重量部以上、ポリ乳酸樹脂20重量部以下であることがさらに好ましく、ポリアセタール樹脂ポリ乳酸樹脂の合計を100重量部としたときに、ポリアセタール樹脂90重量部以上、ポリ乳酸樹脂10重量部以下であることが特に好ましく、ポリアセタール樹脂ポリ乳酸樹脂の合計を100重量部としたときに、ポリアセタール樹脂95重量部以上、ポリ乳酸樹脂5重量部以下であることがさらに好ましい。
【0025】
本発明の製造方法で得られる成形品を形成する樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で各種添加剤、例えば、充填剤(ガラス繊維、炭素繊維、天然繊維、有機繊維、セラミックスファイバー、セラミックビーズ、アスベスト、ワラステナイト、タルク、クレー、マイカ、膨潤性マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイトおよび白土など)、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤等)、滑剤、離形剤、可塑剤、耐電防止剤、難燃剤(臭素系難燃剤、リン酸エステルなどのリン系難燃剤)、染料および顔料を含む着色剤などを含有することができる。
【0026】
通常、ポリアセタール樹脂からなる成形品は、溶媒に対する膨潤性をほとんど示さないが、本発明の製造方法で得られる成形品は、溶媒に対して膨潤性を有することを特徴としている。ここでいう膨潤性を有するとは、溶媒に12時間含浸した後に成形品内部への十分な量の溶媒の浸入が認められることであり、成形品の実質的な重量、体積、面積の増加を伴うことである。
【0027】
成形品の膨潤性を表す指標として膨潤率を用いることができ、膨潤率は成形品全体を溶媒に含浸した後、12時間放置した後の成形品の重量変化から下記式のように求めることができる。
膨潤率(%)=(膨潤後の重量/膨潤前の重量)x100
【0028】
通常成形品の膨潤率を求めるためには、含浸後の成形品の表面に付着した溶媒を除いた後、重量を測定するが、成形品が微少である場合や繊維の場合には、含浸後に遠心分離を行い、上澄液をデカンテーションした後に重量を測定することで求めることができる。
【0029】
本発明野製造方法で得られる成形品の膨潤率は、110%以上であることが好ましく、120%以上であることが好ましく、130%以上であることが特に好ましい。
【0030】
また、成形品の膨潤性を表す別の指標として、体積膨潤率を使用することができる。ここでいう体積膨潤率とは、溶媒に12時間含浸した後の体積変化であり、下記式で示すものである。
体積膨張率(%)=(膨潤後の体積/膨潤前の体積)x100
【0031】
本発明における成形品の体積膨張率は、110%以上であることが好ましく、120%以上であることが好ましく、130%以上であることが特に好ましい。
【0032】
また、成形品がフィルムやシートの場合には、有機溶媒に対する膨潤性を、面積膨張率で表すことができる。ここでいう面積膨張率とは、溶媒に1時間含浸した後の面積の変化であり、下記式で示すものである。
面積膨潤率(%)=(膨潤後の面積/膨潤前の面積)x100
【0033】
本発明の製造方法で得られる成形品の膨潤率は、110%以上であることが好ましく、120%以上であることが好ましく、130%以上であることが特に好ましい。
【0034】
上記膨潤率、体積膨潤率、面積膨潤率を有する成形品は、例えば、ポリアセタール樹脂と、ポリアセタール樹脂と相溶性を有するポリ乳酸樹脂を含有する樹脂組成物からなる成形品から、ポリ乳酸樹脂を除去することにより得ることができる。
【0035】
本発明において、成形品が膨潤性を有する溶媒とは、ポリアセタール樹脂を完全溶解しないものであって、ポリアセタール樹脂単独を溶融成形したのみの成形品に対しては、成形品内部への十分な量の浸入が認められず、成形品の実質的な重量、体積、面積の実質的な増加を伴わない、実質的に膨潤性を持たない溶媒であり、具体例としては、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ポリエチレングリコールなどのエーテル系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、トルエン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒、アセトンなどのケトン系溶媒、ピリジン、アニリンなどのアミン系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどの炭酸エステル系溶媒、γ−ブチロラクトン、プロピロラクトン等のラクトン系溶媒から選ばれた1種であることが好ましく、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、トルエン、メタノール、エタノール、アセトン、ピリジンから選ばれた1種であることがさらに好ましく、クロロホルムであることが特に好ましい。
【0036】
なお、ここで実質的に膨潤しないとは、膨潤率が107%以下であることを意味し、実質的に膨潤するとは、膨潤率が107%超であることを意味する。
【0037】
溶媒にクロロホルムを用いた場合、膨潤率は120%以上であることが好ましく、150%以上であることがさらに好ましく、180%以上でることが特に好ましい。上記膨潤率を有する成形品は、例えば、ポリアセタール樹脂と、ポリ乳酸樹脂含有する樹脂組成物からなる成形品から、ポリ乳酸樹脂を除去することにより得ることができる。
【0038】
本発明の製造方法で得られる成形品の別の特徴としては、内部に微細な空孔を有することを挙げることができる。ここでいう微細な空孔とは、孔径が1μm以下の空孔であり、さらに好ましくは100nm以下の空孔であり、さらに好ましくは50nm以下の空孔であり、特に好ましくは20nm以下の空孔である。上記空孔以外に、孔径が1μm以上の空孔を有していてもかまわないが、使用する用途によっては1μm以上の空孔は極力少ないことが好ましい場合がある。本発明の成形品における平均空孔径は特に限定するものではないが、1μm以下が好ましく、100nm以下がさらに好ましく、50nm以下がさらに好ましく、20nm以下が特に好ましい。成形品の平均空孔径は、水銀ポロシメーターによる測定や電子顕微鏡による観察により算出することができる。
【0039】
通常、ポリアセタール樹脂単独を溶融成形したのみの成形品は、結晶化度が高くかつ微細な空孔を有しないため、各種溶媒に対して膨潤性を示さないが、本発明の成形品においては、微細な空孔を有するため、通常ポリアセタール樹脂が膨潤しない溶媒に対しても高い膨潤性を有するものと考えられる。
【0040】
成形品の空孔率は、溶媒の膨潤性の点から10%以上であることが好ましく、20%以上であることがさらに好ましく、50%以上であることが特に好ましい。上限については、95%以下であることが成形品の強度の点から好ましい。成形品の空孔率の測定には、水銀ポロシメーターで測定方法や成形品の密度から算出する方法などを用いることができる。
【0041】
本発明の製造方法で得られる成形品の密度については、特に限定されるものではないが、ポリアセタール樹脂とその他の樹脂の合計が100重量部に対して、その他の樹脂が10重量部以下の場合には、0.5〜1.5であることが好ましく、1〜1.45であること更に好ましく、1.1〜1.4であることが特に好ましい。
【0042】
上記、空孔率や密度を有する成形品は、例えば、ポリアセタール樹脂と、ポリアセタール樹脂と相溶性を有する樹脂を少なくとも一つ含有する樹脂組成物からなる成形品から、ポリアセタール樹脂と相溶性を有する樹脂を除去することにより得ることができる。
【0043】
また、本発明の製造方法で得られる成形品は、実質的に透明であってもよい。ここでいう透明とは、成形品を通して成形品の反対側の物体が認知できることをいう。透明材料としての利用や電解質としての利用の点から成形品の一部または全部の光線透過率が50%以上であることが好ましく、60%以上が好ましく、80%以上がさらに好ましく、90%以上が特に好ましい。また、透明材料としての利用や電解質としての利用の点から成形品の一部または全部のヘイズ値が50%以下であることが好ましく、30%以下であることが好ましく、20%以下であることが特に好ましい。上記の光線透過率並びにヘイズ値は、JISK6714に準じた方法で測定することができる。
【0044】
本発明の製造方法では、ポリアセタール樹脂とポリ乳酸樹脂の合計を100重量部としたときに、ポリアセタール樹脂1重量部以上40重量部未満及びポリ乳酸樹脂99重量部以下60重量部超を配合してなる樹脂組成物からなる成形品から、ポリ乳酸樹脂を除去することにより得ることができる。
【0045】
本発明の製造方法で得られる成形品におけるポリアセタール樹脂の結晶化度は特に限定するものではないが、耐熱性や機械特性の点から、10%以上であることが好ましく、30%以上であることがさらに好ましく、50%以上であることが特に好ましい。ポリアセタール樹脂の結晶度は、DSCによるポリアセタール樹脂の結晶融解熱や広角X線回折により求めることができる。
【0046】
本発明の製造方法で得られる成形品におけるポリアセタール樹脂またはポリアセタール樹脂とポリ乳酸樹脂からなる樹脂組成物の結晶融解熱は、20J/g以上であることが好ましく、60J/g以上であることがさらに好ましく、100J/g以上であることがさらに好ましく、140J/g以上であることが特に好ましい。
【0047】
上記のような結晶化度、結晶融解熱を有する成形品は、例えば、ポリアセタール樹脂と、ポリ乳酸樹脂を含有する樹脂組成物からなる成形品から、ポリ乳酸樹脂を除去することにより得ることができる。
【0048】
本発明の製造方法で得られる成形品の形状は、特に限定されるものではなく、フィルム状、シート状、繊維状、板状、箱状、球状、粉状、塊状など各種形状のものを製造することができるが、繊維、フィルム、シートの形状のものが好ましい。
【0049】
また、本発明の製造方法で得られる成形品は単独の成形品として用いることもできるが、本発明の製造方法で得られる成形品を一部に含有した成形品として用いることもできる。
【0050】
本発明の製造方法で得られる成形品においては、電解質やゲルとして利用するために内部に上記に記載したような溶媒を含んでいてもよく、さらに電解質として利用するためには、LiClO、LiBF、LiPF、LiAsF、LiCFSO、LiCSO、LiN(CFSO)などの各種無機塩などをさらに含んでいても良い。また、成形品中に溶媒を含ませるには、例えば、溶媒中に成形品を含浸すればよい。
【0051】
本発明の成形品の製造方法は、ポリアセタール樹脂及びポリ乳酸樹脂からなる樹脂組成物を成形して成形品(プレ成形品)とした後に、ポリ乳酸樹脂の一部または全部を取り除き形状を保った成形品を得る方法を好ましく用いることができる。
【0052】
プレ成形品の製造方法は特に限定されるものではないが、ポリアセタール樹脂、ポリ乳酸樹脂および必要に応じてその他の添加剤を予めブレンドした後、融点以上において、1軸または2軸押出機で均一に溶融混練する方法や溶液中で混合した後に溶媒を除く方法などにより得られた樹脂組成物を、射出成形や押出成形などの方法によって、各種成形品に加工する方法が好ましい。
【0053】
プレ成形品の形状は特に限定されるものではなく、フィルム状、シート状、未繊維状、板状、箱状、球状、粉状、塊状など各種形状のものを用いることができる。また、フィルム・シートの場合には、未延伸、延伸のいずれでもよく、繊維の場合も、未延伸、延伸のどちらでもよい。
【0054】
本発明の成形品の製造方法においては、プレ成形品を形成する樹脂組成物におけるポリアセタール樹脂とポリ乳酸樹脂の配合組成によって、得られる成形品の透明性や機械特性などの特性が異なる成形品が得られる。ポリアセタール樹脂とポリ乳酸樹脂の合計を100重量部としたときに、ポリアセタール樹脂1重量部以上40重量部未満及びその他の樹脂99重量部以下60重量部超、特に、ポリアセタール樹脂1重量部以上30重量部以下及びその他の樹脂99重量部以下70重量部以上を配合してなる樹脂組成物を用いた場合には、透明性や、膨潤性の高い成形品を得ることができる。また、空孔率が大きく、空孔の大きさも極めて小さな成形品が得られる。
【0055】
本発明の成形品の製造方法においては、プレ成形品中でポリアセタール樹脂が3次元的に繋がったマトリックス構造やネットワーク構造を取っていることが好ましく、このような構造を取ることで、ポリ乳酸樹脂を取り除いた後も成形品の形状を保つことができる。上記構造を有するプレ成形品は、ポリアセタール樹脂と相溶性を有するポリ乳酸樹脂を用いることにより得ることができる。例えば、ポリアセタール樹脂とポリ乳酸樹脂からなる組成物を使用した場合には、ポリアセタール樹脂とポリ乳酸の合計を100重量部としたときに、ポリアセタール樹脂が40重量部以下であっても、ポリ乳酸樹脂を取り除いた後に成形品の形状を保つことができる。
【0056】
本発明の成形品の製造方法においてプレ成形品からその他の樹脂を除去する方法として抽出法や分解法などの各種の方法が使用できるが、具体的には、ポリアセタール樹脂は溶解しないが、その他の樹脂の少なくとも一部を溶解する溶媒で抽出する方法を挙げることができる。通常は、1種の溶媒で一定温度、圧力で抽出するが、溶媒は2種以上混合してもよく、抽出の途中で溶媒を変えてもよい。また、抽出する温度や圧力は特に限定するものではなく、一定の条件で行っても、途中で条件を変えても構わない。
【0057】
その他の樹脂を除去する別の方法としては、ポリアセタール樹脂は分解しないが、その他の樹脂は分解する条件で、その他の樹脂を分解除去する方法も挙げられる。分解する条件は各種条件を使用することができるが、ポリアセタール樹脂が融解しない温度や圧力で行うことが好ましい。
【0058】
溶媒で抽出する方法を採用する場合、溶媒としてクロロホルムを用いて抽出する方法が溶媒に対する膨潤性が大きな成形品が得られる点で好ましく、クロロホルムに1時間以上含浸することがさらに好ましい。さらに、ポリ乳酸樹脂をアルカリ条件で加水分解除去する方法も好ましく、60℃以上120℃以下の温度で加水分解除去するのがさらに好ましい。
【0059】
ポリ乳酸樹脂の除去は、プレ成形品を無固定で行っても固定して行ってもよく、途中で固定、無固定を変更して行ってもよい。また、ポリ乳酸樹脂を除去しながら、延伸や架橋などを行うこともできる。
【0060】
本発明においては、上記のようにして得られる成形品に対し、その空孔部に他の樹脂を含ませることが可能である。例えば、本発明の製造方法で得られる成形品を膨潤する溶媒に他の樹脂を溶解させ、その溶媒を成形品に含浸した後に溶媒を取り除く方法や、成形品の孔の中に前記したような熱硬化性樹脂のモノマーを含浸し、硬化させる方法などを挙げることができる。
【0061】
本発明の製造方法で得られる成形品は、膨潤性を有する性質、もしくは内部に有する微細な空孔を有する特徴を活かし、バルク、フィルム、繊維、分離膜、高分子電解質などとして、電池などの電気・電子部品用途、医薬品キャリアーなどの医薬・医療用途、自動車部品用途、建築・土木用途、機械部品用途、水処理用途、衣料用途、工業材料用途、日用品などとして利用することができる。
【実施例】
【0062】
次に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0063】
実施例1、2、比較例1〜3
温度190℃、荷重2160gでASTM D1238により測定したメルトインデックス値が27g/10分であり融点が170℃であるポリアセタールコポリマー(東レ株式会社製アミラスS731)及びD体の含有量が1.2%であり、PMMA換算の重量平均分子量が16万であるポリL乳酸樹脂を表1に示した割合で配合し、40mm径の1軸押出機で、温度210℃、回転数50rpmの条件で溶融混練を行い、樹脂組成物を得た。
【0064】
得られた樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)及びポリアセタール樹脂の降温時の結晶化温度(Tc)を差動走査熱量計(DSC)(セイコー電子社製)を用い、昇降温速度20℃/分で測定した。結果を表1に示す。
【0065】
また、得られた組成物を200℃で2分間加熱後、プレスを行い、その後氷水中で冷却することで、厚みが100μmのフィルムを得た。得られたフィルムの透明性を目視で観察した。
【0066】
得られたフィルムを2cm×10cmの短冊状に切断した後、クロロホルムに24時間含浸し、ポリ乳酸樹脂を抽出した。その後、新しいクロロホルムに24時間含浸し洗浄した後、40℃で24時間真空乾燥し、得られたフィルムの組成を核磁気共鳴装置(NMR)を用いて測定するとともに、透明性を目視で観察した。
【0067】
次に、得られたフィルムのTg、結晶融解熱(ΔH)、ポリアセタール樹脂の降温時のTcをDSCを用い、昇降温速度20℃/分で測定した。また、得られたフィルムの光線透過率をJIS−K6714に準じ、積分球式H.T.Rメーター(日本電色製)を用いて測定した。また、得られたフィルムの密度を水置換法により測定し、空孔率を算出した。結果を表2に示す。
【0068】
次に、得られたフィルムを表2に示す溶媒50mLに12時間含浸した後、取り出したフィルムの表面に付着した溶媒を拭き取り、フィルムの重量を測定した。以下の式に基づいて、膨潤率を算出した。
膨潤率(%)=(膨潤後の重量/膨潤前の重量)x100
【0069】
結果を表2に示す。
【0070】
また、実施例1で得られたフィルム並びにそのフィルムがクロロホルムで膨潤した場合の写真を図1に示す。図1は上記フィルムの写真であり、左側のフィルムがポリ乳酸樹脂を抽出した後、乾燥させたフィルムであり、右側のフィルムが、該フィルムをクロロホルムに含浸し、膨潤させたフィルムである。両方のフィルムとも透明であり、また右側のフィルムが左側のフィルムよりも大きくなっており、クロロホルムにより膨潤していることがわかる。
【0071】
また、実施例1で得られたフィルムについて、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、分解能0.14μm)により表面を観察したところ、明確な空孔が観察されず、分解能よりも小さな微細な空孔が形成されているものと考えられる。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
実施例3、比較例4〜6
温度190℃、荷重2160g、ASTM D1238法で測定したメルトインデックス値が2.5g/10分であり融点が170℃であるポリアセタールコポリマー(東レ株式会社製アミラスS781)及びD体の含有量が2%であり、PMMA換算の重量平均分子量が12万であるポリL乳酸樹脂を表3の割合で配合した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物のTg、組成物のポリアセタール樹脂のTcを実施例1と同様にして測定した。結果を表3に示す。
【0075】
また、得られた組成物から実施例1と同様にして、プレス、クロロホルム抽出、乾燥を行い、フィルムを作成し、組成、透明性を測定した。
【0076】
次に、得られたフィルムのTg、結晶融解熱(ΔH)、ポリアセタール樹脂の降温時のTc、光線透過率を実施例1と同様にして測定した。結果を表4に示す。
【0077】
次に、得られたフィルムをクロロホルムを溶媒に用い、実施例1と同様にして膨潤率を算出した。結果を表4に示す。
【0078】
【表3】

【0079】
【表4】

【0080】
実施例4
190℃,2160g荷重、ASTM D1238法で測定したメルトインデックス値が9g/10分であり融点が170℃であるポリアセタールコポリマー(東レ株式会社製アミラスS761)20重量部およびD体の含有量が1.2%であり、PMMA換算の重量平均分子量が18万であるポリL乳酸樹脂80重量部を40mm径の一軸押出機で、温度200℃、回転数50rpmの条件で溶融混練を行い、樹脂組成物を得た。
【0081】
得られた樹脂組成物のTg、組成物のポリアセタール樹脂のTcを実施例1と同様にして測定した。結果を表5に示す。なお、用いたポリアセタール樹脂単独のTcは140℃であった。
【0082】
次に、得られた樹脂組成物を、200℃で一軸押出機よりTダイ口金温度200℃でフィルム状に押し出し、20℃に冷却したドラム上にキャストして未延伸フィルムを作成した。連続して85℃の加熱ロール間で長手方向に3倍延伸して、しかる後に80℃で幅方向に3倍延伸した後、140℃で熱処理して、厚さ20μmの2軸延伸フィルムを得た。
【0083】
次に、得られた延伸フィルムを実施例1と同様にして、クロロホルム抽出、乾燥を行い、フィルム状成形品を作成し、組成を測定した。
【0084】
次に、得られたフィルムのTg、結晶融解熱(ΔH)、ポリアセタール樹脂の降温時のTcを実施例1と同様にして測定した。結果を表6に示す。
【0085】
次に、得られたフィルムをクロロホルムを溶媒に用い、実施例1と同様にして膨潤率を算出した。結果を表6に示す。
【0086】
実施例5
190℃で測定したメルトインデックス値が9g/10分であり融点が170℃であるポリアセタールコポリマー(東レ株式会社製アミラスS761)20重量部およびD体の含有量が2%であり、PMMA換算の重量平均分子量が16万であるポリL乳酸樹脂80重量部を40mm径の一軸押出機で、温度200℃、回転数50rpmの条件で溶融混練を行い、樹脂組成物を得た。
【0087】
得られた樹脂組成物のTg、組成物のポリアセタール樹脂のTcを実施例1と同様にして測定した。結果を表5に示す。なお、用いたポリアセタール樹脂単独のTcは140℃であった。
【0088】
次に、得られた樹脂組成物を、紡糸温度210℃、ドラフト比180、紡糸速度2000m/分で溶融紡糸を行った後、延伸温度90℃、熱セット温度110℃、延伸倍率2.5倍で延伸し、繊維を得た。
【0089】
次に、得られた繊維を実施例1と同様にして、クロロホルム抽出、乾燥を行い、繊維状成形品を作成し、組成を測定した。
【0090】
次に、得られた繊維のTg、結晶融解熱(ΔH)、ポリアセタール樹脂の降温時のTcを実施例1と同様にして測定した。結果を表6に示す。
【0091】
次に、得られた繊維をクロロホルム50mLに12時間含浸した後、遠心分離し、上澄み液を取り除いた後、表面に付着した溶媒を拭き取り、繊維の重量を測定し、膨潤率を算出した。結果を表6に示す。
【0092】
実施例6
190℃で測定したメルトインデックス値が27g/10分であり融点が170℃であるポリアセタールコポリマー(東レ株式会社製アミラスS731)20重量部およびD体の含有量が2%であり、PMMA換算の重量平均分子量が16万であるポリL乳酸樹脂80重量部を40mm径の一軸押出機で、温度200℃、回転数50rpmの条件で溶融混練を行い、樹脂組成物を得た。
【0093】
得られた樹脂組成物のTg、組成物のポリアセタール樹脂のTcを実施例1と同様にして測定した。結果を表5に示す。なお、用いたポリアセタール樹脂単独のTcは140℃であった。
【0094】
次に、得られた樹脂組成物を、シリンダー温度210℃、金型温度30℃で、射出成形を行い、厚さ1mmのダンベル状成形品を得た。
【0095】
次に、得られた射出成形品を実施例1と同様にして、クロロホルム抽出、乾燥を行い、成形品を作成し、組成を測定した。
【0096】
次に、得られた成形品のTg、結晶融解熱(ΔH)、ポリアセタール樹脂の降温時のTcを実施例1と同様にして測定した。結果を表6に示す。
【0097】
次に、得られた成形品をクロロホルムを溶媒に用い、実施例1と同様にして膨潤率を算出した。結果を表6に示す。
【0098】
実施例7
190℃で測定したメルトインデックス値が22g/10分であり融点が180℃であるポリアセタールホモポリマー(旭化成株式会社製テナック5010)20重量部およびD体の含有量が8%であり、PMMA換算の重量平均分子量が14万であるポリL乳酸樹脂80重量部をヘキサフルオロイソプロパノールに溶解後、メタノールで再沈し、樹脂組成物を得た。
【0099】
得られた樹脂組成物のTg、組成物のポリアセタール樹脂のTcを実施例1と同様にして測定した。結果を表5に示す。なお、用いたポリアセタール樹脂単独のTcは146℃であった。
【0100】
また、得られた組成物から実施例1と同様にして、プレス、クロロホルム抽出、乾燥を行い、フィルムを作成し、組成を測定した。
【0101】
次に、得られたフィルムのTg、結晶融解熱(ΔH)、ポリアセタール樹脂の降温時のTcを実施例1と同様にして測定した。結果を表6に示す。
【0102】
次に、得られたフィルムをクロロホルムを溶媒に用い、実施例1と同様にして膨潤率を算出した。結果を表6に示す。
【0103】
実施例8
温度190℃、荷重2160gで測定したメルトインデックス値が2.5g/10分であり融点が170℃であるポリアセタールコポリマー(東レ株式会社製アミラスS781)20重量部及びD体の含有量が2%であり、PMMA換算の重量平均分子量が12万であるポリL乳酸樹脂80重量部を配合し、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物のTg、組成物のポリアセタール樹脂のTcを実施例1と同様にして測定した。結果を表5に示す。なお、用いたポリアセタール樹脂単独のTcは137℃であった。
【0104】
また、得られた組成物から実施例1と同様にして、プレスを行いフィルムを作成した。次いで、得られたフィルムを2cm×10cmの短冊状に切断した後、10%の水酸化ナトリウム水溶液中、80℃で24時間処理してポリ乳酸樹脂を分解除去した。その後、水洗を繰り返した後、50℃で24時間真空乾燥し、得られたフィルムの組成をNMRを用いて測定した。
【0105】
次に、得られたフィルムのTg、結晶融解熱(ΔH)、ポリアセタール樹脂の降温時のTcを実施例1と同様にして測定した。結果を表6に示す。
【0106】
次に、得られたフィルムをクロロホルムを溶媒に用い、実施例1と同様にして膨潤率を算出した。結果を表6に示す。
【0107】
比較例7
温度190℃、荷重2160gで測定したメルトインデックス値が27g/10分であり融点が170℃であるポリアセタールコポリマー(東レ株式会社製アミラスS731)50重量部及び ポリビニルフェノール樹脂(丸善石油化学株式会社マルカリンカーM)50重量部を配合し、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物のTg、組成物のポリアセタール樹脂のTcを実施例1と同様にして測定した。結果を表5に示す。なお、用いたポリアセタール樹脂単独のTcは140℃であった。
【0108】
また、得られた組成物から実施例1と同様にして、プレス、クロロホルム抽出、乾燥を行い、フィルムを作成し、組成を測定した。
【0109】
次に、得られたフィルムのTg、結晶融解熱(ΔH)、ポリアセタール樹脂の降温時のTcを実施例1と同様にして測定した。結果を表6に示す。
【0110】
次に、得られたフィルムをクロロホルムを溶媒に用い、実施例1と同様にして膨潤率を算出した。結果を表6に示す。
【0111】
【表5】

【0112】
【表6】

【0113】
比較例8
温度190℃、荷重2160gで測定したメルトインデックス値が27g/10分であり融点が170℃であるポリアセタールコポリマー(東レ株式会社製アミラスS731)30重量部及びPMMA樹脂(住友化学株式会社性スミペックスLG35)70重量部を配合し、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物のポリアセタール樹脂のTcは140℃と、用いたポリアセタール樹脂単独のTcと同じ温度であった。
【0114】
また、得られた組成物から実施例1と同様にして、プレス、クロロホルム抽出を行ったところ、フィルムの形状を保つことはできず、フィルム状の成形品を得ることはできなかった。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】実施例1で作成したポリ乳酸抽出後、乾燥させたフィルム(左側)並びに該フィルムをクロロホルムに含浸し、膨潤させたフィルムの写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアセタール樹脂とポリ乳酸樹脂の合計を100重量部としたときに、ポリアセタール樹脂1重量部以上40重量部未満及びポリ乳酸樹脂99重量部以下60重量部超を配合してなる樹脂組成物からなる成形品から、ポリ乳酸樹脂を除去することにより、ポリアセタール樹脂または、ポリアセタール樹脂とポリ乳酸樹脂を含有してなる樹脂組成物からなる成形品であり、かつクロロホルム、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、トルエン、メタノール、エタノール、アセトン、ピリジンから選ばれた1種の溶媒に対して膨潤性を有する成形品を製造する方法。
【請求項2】
ポリアセタール樹脂は溶解しないが、ポリ乳酸樹脂を溶解する溶媒で抽出することにより、ポリ乳酸樹脂を取り除くこと特徴とする請求項1記載の成形品を製造する方法。
【請求項3】
ポリアセタール樹脂は溶解しないが、ポリ乳酸樹脂を溶解する溶媒がクロロホルムである請求項2記載の成形品を製造する方法。
【請求項4】
ポリアセタール樹脂とポリ乳酸樹脂の合計を100重量部としたときに、ポリアセタール樹脂1重量部以上40重量部未満及びポリ乳酸樹脂99重量部以下60重量部超を配合してなる樹脂組成物からなる成形品から、ポリ乳酸樹脂を除去することにより、形状を保った成形品を得ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形品を製造する方法。
【請求項5】
得られる成形品が、ポリアセタール樹脂または、ポリアセタール樹脂とポリ乳酸樹脂の合計を100重量部としたときに、ポリアセタール樹脂60重量部以上およびポリ乳酸樹脂40重量部以下を含有してなる樹脂組成物からなる成形品である請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形品を製造する方法。
【請求項6】
得られる成形品が、ポリアセタール樹脂または、ポリアセタール樹脂とポリ乳酸樹脂の合計を100重量部としたときに、ポリアセタール樹脂80重量部以上、ポリ乳酸樹脂20重量部以下を含有してなる樹脂組成物からなる成形品である請求項5記載の成形品を製造する方法。
【請求項7】
得られる成形品が、内部に微細な空孔を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の成形品を製造する方法。
【請求項8】
内部の微細な空孔の孔径が1μm以下である請求項7記載の成形品を製造する方法。
【請求項9】
得られる成形品が、フィルム、シート、または繊維の形状を有するものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の成形品を製造する方法。
【請求項10】
得られる成形品が、実質的に透明であることを特徴する請求項1〜9のいずれか1項に記載の成形品を製造する方法。
【請求項11】
得られる成形品の光線透過率が80%以上であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の成形品を製造する方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−111139(P2008−111139A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22035(P2008−22035)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【分割の表示】特願2003−41842(P2003−41842)の分割
【原出願日】平成15年2月19日(2003.2.19)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】