説明

ポリアセタール樹脂組成物及びそれからなる樹脂成形品

【課題】艶消し性に優れ、機械的物性にも優れたポリアセタール樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、ポリアセタール樹脂、熱可塑性ポリウレタン及びイソシアネート化合物との反応物(B)1〜120質量部を含有することを特徴とするポリアセタール樹脂組成物による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリアセタール樹脂組成物及びそれから成る樹脂成形品に関する。詳しくは、成形品の艶消し性に優れ、ポリアセタール樹脂の分解に由来するホルムアルデヒドの発生が少なく、機械的物性低下が抑制されているポリアセタール樹脂組成物及びそれから成る成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は、機械的物性(耐摩擦性・磨耗性、耐クリープ性、寸法安定性等)のバランスに優れ、また極めて優れた耐疲労性を有している。また、この樹脂は耐薬品性にも優れており、かつ吸水性も少ない。従って、ポリアセタール樹脂は、これらの特性を生かして、エンジニアリングプラスチックとして、自動車内装部品、家屋の内装部品(熱水混合栓等)、衣料部品(ファスナー、ベルトバックル等)、建材用途(配管・ポンプ部品等)、機械部品(歯車等)等に幅広く利用され、需要も伸びている。
【0003】
しかしながら、ポリアセタール樹脂は、他の樹脂に比べ表面光沢が良好であり、光を反射するため、例えば、自動車用内装部品等の用途においては、他の材料との調和感や、また高級感を醸しだすために、光沢の少ない、艶消し性が要求される場合が多い。
成形品の艶消しには、表面にシボ加工を施した成形金型にて成形する方法があるが、これでは充分な艶消し効果は得られない。
【0004】
樹脂材料自体を艶消しにする方法も、従来より提案されており、ポリアセタール樹脂にアクリル架橋粒子等の有機フィラーを添加する方法や、ポリアセタール樹脂に炭酸カルシウム、タルク等の無機フィラーを添加する方法等が知られている(特許文献1参照)。
しかし、前者の方法では、光沢低減の効果が低いのみならず、有機フィラーとポリアセタール樹脂との溶融混練時および成形時に樹脂が分解し、機械的物性が低下しやすいという問題点を有している。また、後者の方法では、望ましい艶消し効果を得るためには、炭酸カルシウム等の無機フィラーを多量に配合する必要があり、これは成形品の伸度や靱性等の機械的物性の低下を引き起こす。また、ポリアセタール樹脂の分解を促進するためホルムアルデヒドの発生が非常に多く、後記するホルムアルデヒドキャッチャーによるホルムアルデヒド捕捉効果を損なうという欠点を有している。
【0005】
ポリアセタール樹脂は、樹脂の製造時や加工成形時等における熱履歴によって、僅かながら熱分解する。その結果、極めて微量ながらもホルムアルデヒドが発生し、成形金型の汚染や、成形作業時の労働(衛生)環境を悪化させる可能性がある。
このため、ポリアセタール樹脂に各種添加剤を配合することにより、ペレットや成形品からのホルムアルデヒド発生を抑制することが提案されており、ホルムアルデヒドの吸着剤として、アジピン酸ジヒドラジドや1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸ヒドラジド化合物等の脂肪族ジヒドラジド化合物(特許文献2)が提案されている。
【0006】
しかし、前記した炭酸カルシウム等の塩類の存在下では、ポリアセタール樹脂の分解が促進され、このようなヒドラジド系化合物等のホルムアルデヒドキャッチャーのホルムアルデヒド捕捉効果を阻害してしまうという欠点を有している。
そのため、成形品の艶消し性に優れ、ポリアセタール樹脂の分解が抑制され、ホルムアルデヒドの発生が少なく、機械的物性低下が抑制されているポリアセタール樹脂組成物の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1−170641号公報
【特許文献2】特開平6−80619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の様に、ポリアセタール樹脂成形品の艶消し方法は種々検討されているが、未だ満足すべき方法は見出されていない。
また、炭酸カルシウム等の配合は、ポリアセタール樹脂の機械的物性を低下させるばかりか、他の添加剤によるホルムアルデヒド捕捉効果を低下させる。従って、ポリアセタール樹脂の艶消しと、ホルムアルデヒド発生量及び機械的物性低下の抑制ならびに成形性の向上とを両立させる方法が求められている。
本発明の目的は、成形品の艶消し性に優れ、ホルムアルデヒドの発生が少なく、機械的物性低下が抑制されたポリアセタール樹脂組成物及びこれからなる樹脂成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ポリアセタール樹脂に、ポリアセタール樹脂、熱可塑性ポリウレタン及びイソシアネート化合物との反応物を配合したものが、艶消し性に優れ、機械的物性低下も抑制されることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、ポリアセタール樹脂、熱可塑性ポリウレタン及びイソシアネート化合物との反応物(B)1〜120質量部を含有することを特徴とするポリアセタール樹脂組成物が提供される。
【0011】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記反応物(B)が、ポリアセタール樹脂、熱可塑性ポリウレタン、イソシアネート化合物及び3価以上の多価アルコールとの反応物であることを特徴とするポリアセタール樹脂組成物が提供される。
【0012】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、さらに、ホルムアルデヒド反応性窒素を含有する安定剤(C)を、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、0.01〜1質量部含有することを特徴とするポリアセタール樹脂組成物が提供される。
【0013】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、さらに、紫外線吸収剤(D)を、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、0.01〜5質量部含有することを特徴とするポリアセタール樹脂組成物が提供される。
【0014】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、さらに、ヒンダードアミン系光安定剤(E)を、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、0.01〜5質量部含有することを特徴とするポリアセタール樹脂組成物が提供される。
【0015】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、さらに、立体障害性フェノール化合物(F)を、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、0.01〜1質量部含有することを特徴とするポリアセタール樹脂組成物が提供される。
【0016】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、さらに、無機及び有機顔料から選ばれる着色剤(G)を、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、0.01〜5質量部含有することを特徴とするポリアセタール樹脂組成物が提供される。
【0017】
さらに、本発明の第8の発明によれば、第3〜7のいずれかの発明において、前記ホルムアルデヒド反応性窒素を含有する安定剤(C)が、ナフタレンジカルボヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド及びドデカン二酸ジヒドラジドより成る群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするポリセタール樹脂組成物が提供される。
【0018】
また、本発明の第9の発明によれば、第1〜8のいずれかの発明において、さらに、ポリアミド樹脂及びアミノ当量が100〜10,000であるアミノ基含有シロキサン化合物より成る群から選ばれる少なくとも1種(H)を、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、0.01〜3質量部含有することを特徴とするポリアセタール樹脂組成物が提供される。
【0019】
また、本発明の第10の発明によれば、第9の発明において、前記ポリアミド樹脂が、融点又は軟化点が180℃以下であるという物性か、アミン価が2mgKOH/g以上であるという物性の少なくとも一方を備えるポリアミド樹脂(H1)又はポリエーテルエステルアミド樹脂(H2)であることを特徴とするポリアセタール樹脂組成物が提供される。
【0020】
また、本発明の第11の発明によれば、第9又は10の発明において、前記ポリアミド樹脂が、ポリアミド12、ポリアミド6/66共重合体、ポリアミド6/12共重合体、ポリアミド6/66/610三元共重合体、ポリアミド6/66/610/12四元共重合体及びダイマー酸ポリアミド樹脂より成る群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするポリアセタール樹脂組成物が提供される。
【0021】
また、本発明の第12の発明によれば、第9又は10の発明において、前記ポリアミド樹脂が、ダイマー酸ポリアミド樹脂であることを特徴とするポリアセタール樹脂組成物が提供される。
【0022】
また、本発明の第13の発明によれば、第10の発明において、前記ポリエーテルエステルアミド樹脂(H2)のアミド部分が、ポリアミド12又はダイマー酸ポリアミド樹脂であることを特徴とするポリアセタール樹脂組成物が提供される。
【0023】
また、本発明の第14の発明によれば、第10又は13の発明において、前記ポリエーテルエステルアミド樹脂(H2)のエーテル部分がポリオキシエチレングリコールであることを特徴とするポリアセタール樹脂組成物が提供される。
【0024】
また、本発明の第15の発明によれば、第7の発明において、前記着色剤(G)が、チタンイエロー、チタンホワイト、ペリノン系顔料、フタロシアニン系顔料及びカーボンブラックより成る群から選ばれたものであることを特徴とするポリアセタール樹脂組成物が提供される。
【0025】
さらに、本発明の第16の発明によれば、第1〜15のいずれかの発明のポリアセタール樹脂組成物を成形してなる成形品が提供される。
【発明の効果】
【0026】
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、成形品の艶消し性に優れ、高級感にも優れ、ホルムアルヒドの発生量も少なく、引張降伏応力、引張破壊呼び歪み等の機械的物性に優れている。また、特に、ホルムアルデヒド反応性窒素を含有する安定剤を含有させた場合、艶消し剤の配合によるホルムアルデヒド捕捉効果の低下を起こすことなく、ホルムアルデヒドの発生量をより効果的に低減することができる。さらに、紫外線吸収剤やヒンダードアミン系光安定剤を配合させた場合は、耐候性をより効果的に向上させることができる。従って、本発明のポリアセタール樹脂組成物を成形してなる成形品は、自動車内装部品、家屋等の内装部品等に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[1.発明の概要]
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、ポリアセタール樹脂と熱可塑性ポリウレタン及びイソシアネート化合物との反応物(B)を1〜120質量部を含有することを特徴とする。
以下、本発明の内容について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。
本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0028】
[2.ポリアセタール樹脂(A)]
本発明に用いるポリアセタール樹脂(A)は、−(−O−CRH−)−(但し、Rは水素原子、有機基を示す。)で示されるアセタール構造の繰り返しを有する高分子であり、通常は、Rが水素原子であるオキシメチレン基(−CHO−)を主たる構成単位とするものである。本発明に用いるポリアセタール樹脂(A)は、このオキシメチレン単位のみからなるホモポリマー以外に、オキシメチレン単位以外の構成単位を含むコポリマー(ブロックコポリマー)やターポリマー等であってもよく、更には線状構造のみならず分岐、架橋構造を有していてもよい。
オキシメチレン単位以外の構成単位としては、オキシエチレン基(−CHCHO−)、オキシプロピレン基(−CHCHCHO−)、オキシブチレン基(−CHCHCHCHO−)等の炭素数2〜10の、分岐していてもよいオキシアルキレン基が挙げられる。これらのなかでも、炭素数2〜4の分岐していてもよいオキシアルキレン基が好ましく、特にオキシエチレン基が好ましい。ポリアセタール樹脂に占めるオキシメチレン基以外のオキシアルキレン基の含有量は、通常は0.1〜20質量%である。
【0029】
ポリアセタール樹脂(A)の製造方法は公知であり、本発明ではそのいずれの方法で製造されたポリアセタール樹脂も用いることができる。
例えば、オキシメチレン基と、炭素数2〜4のオキシアルキレン基を構成単位とするポリアセタール樹脂の製造方法としては、ホルムアルデヒドの3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のオキシメチレン基の環状オリゴマーと、エチレンオキサイド、1,3−ジオキソラン、1,3,6−トリオキソカン、1,3−ジオキセパン等の炭素数2〜4のオキシアルキレン基を含む環状オリゴマーとを共重合することによって製造することができる。ポリアセタール樹脂としては、トリオキサンやテトラオキサン等の環状オリゴマーと、エチレンオキサイド又は1,3−ジオキソランとの共重合体を用いるのが好ましく、トリオキサンと1,3−ジオキソランとの共重合体を用いるのが特に好ましい。
ポリアセタール樹脂(A)のメルトインデックス(ASTM−D1238規格:190℃、2.16Kg)は通常1〜100g/10分であるが、0.5〜80g/10分が好ましい。
【0030】
[3.ポリアセタール樹脂と熱可塑性ポリウレタン及びイソシアネート化合物との反応物(B)]
本発明に使用する(B)成分は、ポリアセタール樹脂(B1)、熱可塑性ポリウレタン(B2)及びイソシアネート化合物(B3)の反応により生成する反応物であり、ポリアセタール樹脂(B1)が、熱可塑性ポリウレタン(B2)とイソシアネート化合物(B3)を介して結合した共重合体である。
【0031】
上記(B)成分を製造するためのポリアセタール樹脂(B1)は、−(−O−CRH−)−(但し、Rは水素原子、有機基を示す。)で示されるアセタール構造の繰り返しを有する高分子であり、通常は、Rが水素原子であるオキシメチレン基(−CHO−)を主たる構成単位とするものである。オキシメチレン単位以外の構成単位としては、オキシエチレン基(−CHCHO−)、オキシプロピレン基(−CHCHCHO−)、オキシブチレン基(−CHCHCHCHO−)等の炭素数2〜10の、分岐していてもよいオキシアルキレン基が挙げられる。
これらのなかでも、炭素数2〜4の分岐していてもよいオキシアルキレン基が好ましく、特にオキシエチレン基が好ましい。オキシメチレン基以外のオキシアルキレン基の含有量は、通常は0.1〜20質量%であるまた、ポリアセタール樹脂(B1)は線状構造を有するもののみならず、分岐構造や架橋構造を有するものであってもよい。
【0032】
ポリアセタール樹脂(B1)としては、全末端基の中に適度の水酸基末端を有するものが好ましく、末端基全体に対する水酸基末端の割合が50〜100モル%、より好ましくは70〜100モル%のものを用いるのが好ましい。また、末端基全体に占める末端水酸基の割合は、重合時に水や多価アルコールの使用量により調整することができる。
さらに、ポリアセタール(B1)は、メルトインデックス(ASTM−D1238規格:190℃、2.16Kg)が通常1〜100g/10分であるが、0.5〜80g/10分が好ましい。
【0033】
上記成分(B)を製造するために用いる熱可塑性ポリウレタン(B2)としては、芳香族及び/又は脂肪族ポリイソシアネート化合物と、水酸基を2個以上有するポリオール、更に、所望により、連鎖延長剤を用いて製造された分子構造内にウレタン結合を有するポリウレタンエラストマーを意味する。熱可塑性ポリウレタンは、公知の方法に従って、換言すれば、公知のウレタン化反応技術に従って製造することができる。なお、一般に、水酸基に対するイソシアネート基の比率は、0.5〜2の範囲で選ばれるが、より好ましくは0.9〜1.5の範囲で選ばれる。
【0034】
熱可塑性ポリウレタンを構成する芳香族、或いは、および、脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、P,P´−ペンチジンイソシアネート、デュレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネ−ト、及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、4,4´−メチレン−ビス−(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−ビス−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂肪族ジイソシアネートの中から適宜に選択することができ、2種以上を混合して用いてもよい。好ましくは、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、4,4´−メチレン−ビス−(シクロヘキシルイソシアネート)の中から選択されるものである。反応性、耐候性の点においては芳香族ポリイソシアネートが、艶消し性の点では脂肪族ポリイソシアネートが好ましい。
【0035】
また、熱可塑性ポリウレタンを構成するポリオールとしては、水酸基を2個以上有する化合物であれば特に制限はないが、好ましくはポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等があげられ、より好ましくは、分子構造の末端に水酸基を有するポリエーテルジオール、ポリエーテルエステルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール等である。これらのポリオールは、2種以上を混合して用いてもよい。ポリオールの数平均分子量は、好ましくは500〜5,000、より好ましくは1,000〜3,000である。
【0036】
ここで、ポリエーテルジオールとしては、ポリエチレンエーテルグリコール、ポリプロピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコールなどの炭素数2〜12のアルカンジオールから誘導される重合体、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリテトラヒドロフランなどの炭素数2〜12の環状エーテルから誘導される重合体等が好ましく用いられる。
【0037】
ポリエーテルエステルジオールとは、ポリエーテルジオールとジカルボン酸無水物と環状エーテルとを重合して得たものを意味する。ポリエーテルジオールとしては、上記のポリエーテルジオールが、ジカルボン酸無水物としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸等が、環状エーテルとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン等が含まれる。
【0038】
ポリエステルジオールとは、二価アルコールとジカルボン酸から重合されるもの、或いは、ポリラクトンジオールを意味する。二価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチルプロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の炭素数2〜12のアルカンジオールが、ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の炭素数4〜12の脂肪族、もしくは、芳香族ジカルボン酸が好ましく用いられる。ポリラクトンジオールとしては、ポリカプロラクトングリコール、ポリプロピオラクトングリコール、ポリバレロラクトングリコールなどが好ましく用いられる。
【0039】
ポリカーボネートジオールとしては、上記の二価アルコールと炭酸ジフェニルもしくはホスゲンを作用させて重合させて得たものを意味する。
【0040】
連鎖延長剤としては、脂肪族、脂環族、或いは、芳香族ジオール、もしくは、ジアミンが用いられる。ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、ハイドロキノンジエチロールエーテル、1,4−ビスヒドロキシエチルベンゼン、レゾルシンジエチロールエーテル、水素化されたビスフェノール−A、或いは、これらの誘導体が使用される。ジアミンとしては、ヒドラジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、1,4−ジアミノジフェニルメタン、或いは、これらの誘導体が用いられる。連鎖延長剤の分子量は500以下であることが好ましい。
【0041】
上記成分(B)を製造するために用いるイソシアネート化合物(B3)としては、芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネート化合物が好ましく使用できる。
例えば、m−又はp−フェニレンジイソシアネート、m−又はp−キシリレンジイソシアネート、水素化されたm−又はp−キシリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)等の脂環族ジイソシアネート化合物、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート化合物が、好ましく例示でき、これらイソシアネート化合物の2量体、3量体、これらイソシアネート化合物のカルボジイミド変性体、これらイソシアネート化合物と多価アルコールとのプレポリマー及びこれらイソシアネート化合物をフェノール、第一級アルコール、カプロラクタム等のブロック剤で封鎖したプロックドイソシアネート化合物であってもよい。
また、トリフェニルメタン−4,4´,4´´−トリイソシアネートなどの3官能のポリイソシアネート化合物も使用することができる。これらのイソシアネート化合物は、2種以上を併用してもよい。
【0042】
これらのイソシアネート化合物のうち、トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート等)や末端イソシアネートプレポリマーを用いることが好ましい。
なお、イソシアネート化合物は、予めポリアセタール樹脂(B1)もしくは、熱可塑性ポリウレタン(B2)に溶融混合したものを使用してもよい。
【0043】
本発明に使用する(B)成分は、ポリアセタール樹脂(B1)、熱可塑性ポリウレタン(B2)及びイソシアネート化合物(B3)の反応により生成する反応物であるが、より積極的に三次元架橋構造を形成させるために、さらに、3価以上の多価アルコール(B4)を配合し反応させて得られた反応物であることが好ましい。
3価以上の多価アルコール(B4)としては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、トリエタノールアミン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、テトラエタノールエチレンジアミン、メチルグルコジット、芳香族ジアミン−テトラエタノール付加物、ソルビトール、ジペンタエリスリトール、シクロデキストリン、シュガー等の中から適宜に選択することができる。なお、多価アルコールとして、フェノキシ樹脂、或いは、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリビニルアルコールのような分子内に3以上の水酸基を有する高分子化合物やオリゴマー化合物を選択することもできる。多価アルコール(B4)としては、3又は4価の多価アルコールであることが好ましい。
これらの多価アルコールは、適宜に1種を選んでもよいが、2種以上を選んで適宜の割合の混合物として使用してもよい。なお、この多価アルコールは、予めポリアセタール樹脂(B1)もしくは、熱可塑性ポリウレタン(B2)に溶融混合したものを使用することが可能である。
【0044】
成分(B1)、成分(B2)、成分(B3)及び所望により成分(B4)を反応させて成分(B)を得るには、溶媒の存在下又は非存在下で行うことができ、溶媒としては、反応に不活性な種々の有機溶媒、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ニトロベンゼンなどのニトロ化合物、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、アニソール等のエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が使用できる。
反応は、例えば130〜200℃、好ましくは150〜190℃程度の温度で行うことができ、反応終了後、溶媒を除去することにより得ることができる。
溶媒の非存在下での前記成分の反応は溶融混練系で行うことができ、連続式、バッチ式等の何れの方法でも可能である。溶融混練系での反応は、均一な溶融物が生成する適度な温度、例えば、温度160〜230℃、好ましくは170〜220℃程度の範囲で、公知の装置、例えばニーダー、一軸又は二軸押出機などの溶融混練機を用いて行うことができる。
【0045】
各成分の配合割合は、成分(B1)〜(B3)の合計を100質量%とした場合、好ましくは、成分(B1)/成分(B2)/成分(B3)=40〜95/1〜60/0.1〜10質量%であり、より好ましくは成分(B1)/成分(B2)/成分(B3)=60〜90/10〜40/0.5〜5質量%である。また、成分(B4)を使用する場合は、成分(B1)〜(B4)の合計を100質量%とした場合、好ましくは、成分(B1)/成分(B2)/成分(B3)/成分(B4)=40〜95/1〜60/0.1〜10/0.01〜5質量%、より好ましくは、成分(B1)/成分(B2)/成分(B3)/成分(B4)=60〜90/10〜40/0.5〜5/0.1〜3質量%である。このような割合とすることにより、機械的物性が低下することなく、艶消し効果をより優れたものとすることができる。
【0046】
このポリアセタール樹脂(B1)と熱可塑性ポリウレタン(B2)及びイソシアネート化合物(B3)との反応物(B)の配合量は、前記ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、1〜120質量部であり、より好ましくは5〜100質量部、さらに好ましくは7〜80質量部、特に好ましくは10〜40質量部である。1質量部未満では、艶消し性の改善効果が不十分であり、120質量部を超えると、ポリアセタール樹脂(A)の機械的物性を損なってしまう。
この反応物(B)は、ポリアセタール樹脂(A)と、相溶性が良いため、艶消し性の改良効果と、ポリアセタール樹脂(A)の優れた機械的物性を低下させないという点において極めて好ましいものである。
【0047】
[4.ホルムアルデヒド反応性窒素を含有する安定剤(C)]
本発明においては、ホルムアルデヒド反応性窒素を含有する安定剤(C)を配合することが好ましい。
ホルムアルデヒド反応性窒素を含む安定剤の例としては、アミド化合物、アミノ置換トリアジン化合物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドの付加物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドの縮合物、尿素、尿素誘導体、イミダゾール化合物、イミド化合物、ヒドラジン誘導体を挙げることができる。
【0048】
アミド化合物の具体例としては、イソフタル酸ジアミドなどの多価カルボン酸アミド、アントラニルアミドが挙げられる。
【0049】
アミノ置換トリアジン化合物とは、下記一般式(1)で示される構造を有するアミノ置換トリアジン類、又はこれとホルムアルデヒドとの初期重縮合物である。
【0050】
【化1】

【0051】
一般式(1)において、R、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、炭素数1〜10のアルキル基、アルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜12のアリール基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は置換されていてもよいアミノ基を示すが、R〜Rのうち少なくとも一つは置換されていてもよいアミノ基を示す。
【0052】
アミノ置換トリアジン化合物の具体例としては、例えばグアナミン、メラミン、N−ブチルメラミン、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N,N−ジアリルメラミン、N,N´,N´´−トリフェニルメラミン、N,N´,N´´−トリメチロールメラミン、ベンゾグアナミン(2,4−ジアミノ−6−フェニル−sym−トリアジン)、2,4−ジアミノ−sym−トリアジン、アセトグアナミン(2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン)、2,4,6−トリアミノ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ベンジルオキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブトキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−シクロヘキシル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−クロロ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メルカプト−sym−トリアジン、アメリン(N,N,N´,N´−テトラシアノエチルベンゾグアナミン)が挙げられる。
【0053】
アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの付加物の具体例としては、N−メチロールメラミン、N,N´−ジメチロールメラミン、N,N´,N”−トリメチロールメラミンを挙げることができる。
アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの縮合物の具体例としては、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物を挙げることができる。
【0054】
尿素誘導体の例としては、N−置換尿素、尿素縮合体、エチレン尿素、ヒダントイン化合物、ウレイド化合物を挙げることができる。N−置換尿素の具体例としては、アルキル基等の置換基が置換したメチル尿素、アルキレンビス尿素、アリール置換尿素を挙げることができる。尿素縮合体の具体例としては、尿素とホルムアルデヒドの縮合体等が挙げられる。
【0055】
ヒダントイン化合物の具体例としては、ヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントイン、5,5−ジフェニルヒダントイン等が挙げられる。
ウレイド化合物の具体例としては、アラントイン等が挙げられる。
イミド化合物の具体例としてはスクシンイミド、グルタルイミド、フタルイミドを挙げることができる。
【0056】
ヒドラジン誘導体としてはヒドラジド化合物を挙げることができ、本発明においては、ホルムアルデヒド反応性窒素を含有する安定剤(C)として、ジヒドラジド化合物を使用するのが好ましい。
特に、ジヒドラジド化合物として、芳香族ジヒドラジド化合物及び20℃における水100gに対する溶解度が1g未満の脂肪族ジヒドラジド化合物より成る群から選ばれたジヒドラジド化合物を用いるのが好ましい。
芳香族ジヒドラジド化合物とは、2個のカルボン酸基やスルホン酸基を有する芳香族化合物のそれぞれの酸基にヒドラジンが反応した化合物で、例えば、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、1,5−ナフタレンジカルボヒドラジド、1,8−ナフタレンジカルボヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボヒドラジド、1,5−ジフェニルカルボノヒドラジド、2,4−トルエンジスルホニルヒドラジド、4,4´−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド等が挙げられる。
【0057】
また、20℃における水100gに対する溶解度(以下、水溶解度という場合がある。)が1g未満の脂肪族ジヒドラジド化合物としては、例えば、シュウ酸ジヒドラジド(水溶解度0.2g以下)、セバシン酸ジヒドラジド(同0.01g以下)、1,12−ドデカンジカルボヒドラジド(同0.01g以下)、1,18−オクタデカンジカルボヒドラジド(同0.1g以下)等が挙げられる。水溶解度が1g以上の脂肪族ジヒドラジド化合物は、ポリアセタール樹脂組成物からのホルムアルデヒド発生抑制効果が十分でない傾向がある。
【0058】
ジヒドラジド化合物のなかでも好ましいものとしては、2,6−ナフタレンジカルボヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、1,12−ドデカンジカルボヒドラジド等が挙げられる。特にセバシン酸ジヒドラジド、1,12−ドデカンジカルボヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド等を用いるのが好ましい。
ジヒドラジド化合物の含有量はポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜1質量部であるのが好ましい。含有量が0.01質量部未満では成形品からのホルムアルデヒドの発生を低減させる効果が不十分で、逆に1質量部を超えると射出成形時の金型付着物が増加し、成形を効率的に行えなくなりやすい。ジヒドラジド化合物のより好ましい含有量は0.03〜0.3質量部であり、さらに好ましくは、0.05〜0.15質量部である。
【0059】
ホルムアルデヒド反応性窒素を含有する安定剤(C)としては、前記したようにアミド化合物が使用できるが、また他に、アクリルアミド及びその誘導体、アクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとの共重合体も挙げることができ、例えばアクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとを金属アルコラートの存在下で重合して得られたポリ−β−アラニン共重合体を挙げることができる。
【0060】
[5.紫外線吸収剤(D)]
本発明においては、紫外線吸収剤(D)を配合することが好ましい。
本発明において使用される紫外線吸収剤(D)は、紫外線を吸収する作用を有する化合物である。好ましくは、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、芳香族ベンゾエート系化合物、シアノアクリレート系化合物、及び、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤の中から選ばれる。
【0061】
紫外線吸収剤(D)の具体例としては、
2−(2´−ヒドロキシ−5´−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、
2,2´−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]、
2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、
2−(2´−ヒドロキシ−3´,5´−ジ−イソアミル−フェニル)ベンゾトリアゾール、
2−〔2´−ヒドロキシ−3´,5´−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、
2−(2´−ヒドロキシ−4´−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、
2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、
2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、
2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、
2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、
2,2´−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、
2,2´−ジヒドロキシ−4,4´−ジメトキシベンゾフェノン、
2−ヒドロキシ−4−オキシベンジルベンゾフェノン、
2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、
p−t−ブチルフェニルサリシレート、
p−オクチルフェニルサリシレート、
2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3´−ジフェニルアクリレート、
エチル−2−シアノ−3,3´−ジフェニルアクリレート、
N−(2−エトキシ−5−t−ブチルフェニル)シュウ酸ジアミド、
N−(2−エチルフェニル)−N´−(2−エトキシフェニル)シュウ酸ジアミドなどが挙げられる。
【0062】
これらの紫外線吸収剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤であり、特に好ましくは、20℃における蒸気圧が1×10−8Pa以下のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である。
具体的には、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、
2,2´−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]が挙げられる。
【0063】
紫外線吸収剤の好ましい含有量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜5質量部である。含有量が0.1質量部未満では十分な耐候性が得られにくく、5質量部を超えると機械物性の低下が顕著となりやすい。紫外線吸収剤の好ましい含有量は、0.01〜3質量部であり、さらに好ましくは0.03〜2質量部である。
本発明のポリアセタール樹脂組成物に、紫外線吸収剤(D)と後述のヒンダードアミン系光安定剤(E)を含有させることによって、優れた熱安定性と成形性やホルムアルデヒド発生抑制効果に加えて、ペレットや成形品の耐候性を向上させることができる。
【0064】
[6.ヒンダードアミン系光安定剤(E)]
本発明においては、ヒンダードアミン系光安定剤(E)を配合することが好ましい。
ヒンダードアミン系光安定剤は、下記一般式(2)で示されるピペリジン構造を有するアミンである。
【0065】
【化2】

【0066】
一般式(2)において、Xは、窒素原子との結合部が炭素原子である有機基を示し、Yは、酸素原子または窒素原子を介してピペリジル基と結合する有機基または水素原子を示す。
好ましいXとしては、炭素数1〜10のアルキル基等が挙げられる。Xがアルキル基の場合は、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等の炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基が挙げられ、特にメチル基が好ましい。また、ヒンダードアミン系光安定剤は、分子中に複数のピペリジン構造を有することができるが、全てのピペリジン構造が、N−炭素原子−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル構造であることが好ましい。
【0067】
好ましいヒンダードアミン系光安定剤(E)の具体例として、以下の化合物を挙げることができる。
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート
1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン
テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル及びトリデシル−1,2,3,4ブタンテトラカルボキシレート(ブタンテトラカルボキシレートの4つのエステル部の一部が1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル基で他がトリデシル基である化合物の混合物)
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β,β−テトラメチル−3,9(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウデンカン)−ジエタノールとの縮合物
コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの縮合物
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート
N,N´,N´´,N´´´−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート
【0068】
ヒンダードアミン系光安定剤(E)の好ましい含有量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜5質量部である。含有量が0.01質量部未満では十分な耐候性(クラック発生時間の遅延効果)が得られにくく、5質量部を超えると機械物性の低下が著しく、金型汚染も多くなりやすい。ヒンダードアミン系光安定剤(F)のより好ましい含有量は0.01〜3質量部であり、さらに好ましくは0.03〜2質量部である。
【0069】
[7.立体障害性フェノール化合物(F)]
本発明においては、耐熱安定性を向上させるために、立体障害性フェノール化合物(F)を配合することが好ましい。
立体障害性フェノール(ヒンダードフェノール)化合物とは、下記一般式(3)で示されるフェノール性水酸基のオルト位に置換基を有する構造を分子内に少なくとも一個有する化合物をいう。
【0070】
【化3】

【0071】
一般式(3)において、R及びRは、各々独立して、置換又は非置換のアルキル基を示す。またフェノール性水酸基に対しメタ位及び/又はパラ位に、任意の置換基Rを有していてもよい。nは0〜3の整数であり、好ましくは0又は1である。
、Rが示すアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基等炭素数1〜6のものが挙げられる。なかでもt−ブチル基のような嵩高い分岐アルキル基が好ましく、R、Rのうちの少なくとも一つはこのような分岐アルキル基であるのが好ましい。アルキル基の置換基としては塩素等のハロゲン原子が挙げられる。
としては、炭素数4以上のものが好ましい。また、この置換基Rは、芳香環の炭素原子と炭素−炭素結合により結合していてもよく、炭素以外の原子を介して結合していてもよい。
【0072】
本発明に用いる立体障害性フェノール化合物(F)としては、例えば2,2´−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4´−メチレン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルジメチルアミン、ジステアリル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、ジエチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、2,6,7−トリオキサ−1−ホスファ−ビシクロ〔2,2,2〕−オクト−4−イル−メチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル−3,5−ジステアリル−チオトリアジルアミン、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N´−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリト−ル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2´−チオジエチル−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等が挙げられる。
【0073】
これらのなかでも好ましいのは,N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)のような下記式(4)で示される構造を有する化合物である。
【0074】
【化4】

【0075】
一般式(4)において、R及びRは、それぞれ、一般式(3)と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0076】
また、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリトール−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2´−チオジエチル−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等のような、3−位に3,5−ジアルキルー4−ヒドロキシフェニル基を有するプロピオン酸と多価アルコールのエステルも好ましい。
【0077】
立体障害性フェノール化合物(F)の含有量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し0.01〜1質量部であることが好ましい。含有量が0.01質量部未満では熱分解抑制効果が低く、その結果成形品からのホルムアルデヒド発生を抑制する効果が小さい。逆に1質量部を超えると成形品表面からのブリード物が顕著になる。より好適な含有量は0.01〜0.5質量部である。
【0078】
[8.着色剤(G)]
本発明においては、無機及び有機顔料から選ばれる着色剤を配合してもよい。
着色剤(G)を構成する無機及び有機顔料としては、「顔料便覧(日本顔料技術協会編)」に記載されている一般的な無機顔料や有機顔料を用いることができる。そのいくつかを例示すると、無機顔料としては酸化チタン、チタンイエロー等のチタンを含む(複合)金属酸化物、酸化亜鉛、酸化鉄、カーボンブラック、群青、硫化亜鉛、三酸化アンチモン等が挙げられる。有機顔料はフタロシアニン系、アンスラキノン系、キナクリドン系、アゾ系、イソインドリノン系、キノフタロン系、ペリノン系、ペリレン系等の顔料が挙げられる。
【0079】
本発明のポリアセタール樹脂組成物における着色剤(G)の含有量は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜5質量部である。含有量が0.01質量部未満では有意に着色することはできない。着色剤の含有量は、より好ましくは、0.05質量部以上であり、さらに好ましくは0.1質量部以上である。含有量の上限は、3質量部以下がより好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。着色剤を5質量部以下とすることにより、ホルムアルデヒドの発生を抑制しやすい傾向にある。
なお着色剤(G)の配合に際しては、分散助剤や展着剤を配合してもよい。分散助剤としては、アミドワックス、エステルワックス、オレフィンワックス等が、また展着剤としては、流動パラフィン等が挙げられる。また顔料に染料を併用して所望の色目に仕上げてもよい。
【0080】
[9.ポリアミド樹脂、アミノ当量が100〜10,000であるアミノ基含有シロキサン化合物(H)]
本発明においては、ホルムアルデヒドの発生を効果的に抑制するために、ポリアミド樹脂及び、アミノ当量が100〜10,000であるという物性を有するアミノ基含有シロキサン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種(H)を配合することが好ましい。このホルムアルデヒド発生の抑制効果は、前述の着色剤(G)を含む場合に、より顕著である。
【0081】
[9.1]ポリアミド樹脂
ポリアミド樹脂としては、脂肪族ポリアミド樹脂、脂環族ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂のいずれも使用することができる。
また、ポリアミド樹脂は一種類の構成単位から成るものでも、複数種の構成単位から成るものであってもよい。ポリアミド樹脂の原料としてはω−アミノ酸、好ましくは炭素原子数6〜12の直鎖ω−アミノ酸及びそのラクタム;アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘプタデカンジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸やそのジメチルエステル;ヘキサメチレンジアミン等のジアミン類が挙げられる。複数種の構成単位から成る共重合ポリアミドの場合には、共重合比率、共重合形態(ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、架橋ポリマー)等は任意に選択することができる。
本発明においては、ポリアミド樹脂として、ポリアミド12、ポリアミド6/12共重合体、ポリアミド6/66/610共重合体、ポリアミド6/66/610/12共重合体等を用いるのが好ましい。
【0082】
ポリアミド樹脂としては、融点又は軟化点が180℃以下であるという物性か、または、アミン価が2mgKOH/g以上であるという物性の少なくとも一方を備えるポリアミド樹脂(H1)を配合するのが好ましい。このようなポリアミド樹脂を配合することにより、ホルムアルデヒドの発生を効果的に抑制することができる。
より好ましい融点又は軟化点は、175℃以下であり、さらに好ましくは170℃以下である。このようなポリアミド樹脂を用いることにより、ポリアセタール樹脂と混練する温度においてポリアミド樹脂が溶融状態となるため、ポリアミド樹脂の分散性がより向上するという利点がある。
【0083】
なお、この際の融点とは、示差走査熱量測定(DSC)法により観測される吸熱ピークのピークトップの温度である。吸熱ピークとは、試料を一度加熱溶融させ熱履歴による結晶性への影響をなくした後、再度昇温した時に観測される吸熱ピークとする。具体的には、ポリアミド12の場合は、例えば、次の要領で求めることができる。
30〜210℃まで10℃/minの速度で昇温し、210℃で2分間保持した後、50℃まで20℃/minの速度で降温する。更に、10℃/minの速度で210℃まで昇温し、昇温時に観測される吸熱ピークのピークトップから融点を求める。昇温時の最高温度は、予想されるポリアミド樹脂の融点に応じて適宜調整すればよく、通常は融点+50℃までの範囲で選択する。
また、軟化点とは、JIS K2207規格に準拠して測定される温度である。
【0084】
また、ポリアミド樹脂としては、アミン価が2mgKOH/g以上のポリアミド樹脂も好ましい。このような末端にアミノ基を多く持つポリアミド樹脂は、ホルムアルデヒドが酸化されて生成するギ酸による酸性を中和し、ポリアセタール樹脂の分解を抑制する効果を有する。
アミン価は、好ましくは2.5mgKOH/g以上、より好ましくは、3mgKOH/g以上、さらに好ましくは、5mgKOH/g以上、特に好ましくは、8mgKOH/g以上である。
アミン価を2mgKOH/g以上とすることにより、ポリアセタール樹脂の分解抑制がより効果的に奏される。アミン価の上限は特に定めるものではないが、通常、100mgKOH/g以下、好ましくは80mgKOH/g以下である。
なお、アミン価とは、単位質量あたりの分子中に含有される全塩基性成分を中和するのに必要な過塩素酸と等量の水酸化カルシウム(KOH)の質量で定義したものである。アミン価は、例えば、試料3gをm−クレゾールに溶解し、過塩素酸メタノール溶液で電位差滴定法により滴定し、KOHのmgに換算することで求められる。
【0085】
ポリアミド樹脂のアミン価の調整は、ジカルボン酸とジアミンの仕込み比率を調整して重合したり、重合して得られたポリアミド樹脂とアミン等の末端調整剤とを加熱して反応させることにより行うことができる。末端調整剤として用いられるアミンとしては、炭素原子数6〜22のものが好ましく、例えば、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、ベヘニルアミン等の脂肪族第一級アミンが挙げられる。
【0086】
また、ダイマー酸を用いるのも好ましい。ダイマー酸は周知のように、オレイン酸やリノール酸、エルカ酸等の不飽和脂肪酸を2量化したもので、その代表的なものの一つは炭素数36の二塩基酸及び/又はその水素添加物を主体とし、他に少量の炭素数18の一塩基酸(モノマー)や炭素数54の三塩基酸(トリマー)を含有している。ダイマー酸とジアミンとを反応させて得られるダイマー酸ポリアミド樹脂は、軟化点(JIS K2531―1960規格)が180℃以下であり、好適に用いることができる。
【0087】
本発明においては、ポリアミド樹脂として、ポリエーテルエステルアミド樹脂(H2)を配合することも好ましい。このようなポリエーテルエステルアミド樹脂を配合することにより、ホルムアルデヒドの発生をより効果的に抑制することができる。
【0088】
ポリエーテルエステルアミド樹脂(H2)は、典型的には、ポリアミド単位とポリオキシアルキレングリコール単位とから主として構成される。通常は、ポリアミド単位15〜90質量%とポリオキシアルキレングリコール単位85〜10質量%とから主として構成される。本発明で用いられるポリエーテルエステルアミド樹脂は、セグメント化共重合体であることが好ましい。
【0089】
ポリエーテルエステルアミド樹脂(H2)を構成するポリアミド単位は、アミド結合を有する重合体であって、(1)ラクタムの開環重縮合体、(2)アミノカルボン酸重縮合体、(3)ジカルボン酸とジアミンの重縮合体のいずれでもよい。(1)のラクタムとしては、カプロラクタム、エナントラクタム、ラウロラクタム、ウンデカノラクタム等が挙げられる。(2)のアミノカルボン酸としては、ω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナント酸、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノペンゴン酸、ω−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等が挙げられる。(3)のジカルボン酸としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジ酸、ドデカンジ酸、イソフタル酸、重合脂肪酸等が挙げられ、またジアミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン等が挙げられる。これらのポリアミド単位の分子量は300〜15,000、好ましくは800〜5,000である。なお、上記アミド単位形成モノマーとして例示したものは2種類以上併用してもよい。ポリアミド単位として好ましいものは、ラウロラクタムを開環重縮合したポリアミド(ポリアミド12)や、主として重合脂肪酸とジアミンの重縮合反応より得られるダイマー酸ポリアミドである。なお、重合脂肪酸とは不飽和脂肪酸の重合体、あるいはかかる重合体を水素添加して不飽和度を下げたものである。本発明で使用される重合脂肪酸としては、例えば10〜24程度の炭素数を有し、二重結合又は三重結合を一個以上有する一塩基性脂肪酸の二量体(ダイマー酸)及び/又はその水素添加物が好ましい。ダイマー酸としては、例えば、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸等の二量体が挙げられる。その代表的なものの一つは、炭素数36の二塩基酸及び/又は水素添加物を主体とし、他に少量の炭素数18の一塩基酸(モノマー)や炭素数54の三塩基酸(トリマー)を含有しているものである。
【0090】
ポリエーテルエステルアミド樹脂(H2)を構成するポリオキシアルキレングリコール単位とは、炭素数2〜4のオキシアルキレン単位からなり、200〜8,000の分子量を有するものであって、具体的にはポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシブチレングリコール等が挙げられるが、これらのうち、好ましいものはポリオキシエチレングリコールである。
【0091】
これらのポリエーテルエステルアミド樹脂(H2)とその製造法は知られており、例えば、ポリエーテルとジカルボン酸からなる縮合ポリエステルプレポリマーの存在下に陰イオン触媒を用いてラクタムを開環重合させる方法(米国特許第3993709号公報)、ラクタム又はω−アミノカルボン酸、ジカルボン酸及びポリオールを加熱重合させる方法(西独国特許公開第2712987号及び同第2936976号公報)、分子鎖末端にカルボキシル基を有するジカルボン酸アミドとポリオールとをチタン酸塩系触媒を用いて縮合させる方法(米国特許第4230838号公報)等がある。
【0092】
ポリエーテルエステルアミド樹脂(H2)は、融点又は軟化点は、好ましくは175℃以下であり、より好ましくは170℃以下である。このようなポリエーテルエステルアミド樹脂を用いることにより、ポリアセタール樹脂と混練する温度においてポリエーテルエステルアミド樹脂が溶融状態となるため、ポリエーテルエステルアミド樹脂の分散性がより向上するという利点がある。
【0093】
また、本発明においては、アミン価が2mgKOH/g以上のポリエーテルエステルアミド樹脂も好ましい。このような末端にアミノ基を多く持つポリエーテルエステルアミド樹脂は、ホルムアルデヒドが酸化されて生成するギ酸による酸性を中和し、ポリアセタール樹脂の分解を抑制する効果を有する。アミン価は好ましくは2.5mgKOH/g以上、より好ましくは3mgKOH/g以上、さらに好ましくは、5mgKOH/g以上、特に好ましくは、8mgKOH/g以上である。アミン価を2mgKOH/g以上とすることにより、ポリアセタール樹脂の分解抑制がより効果的に奏される。アミン価の上限は特に定めるものではないが、通常、100mgKOH/g以下、好ましくは80mgKOH/g以下である。なお、アミン価とは、単位質量あたりの分子中に含有される全塩基性成分を中和するのに必要な過塩素酸と等量の水酸化カルシウム(KOH)の質量で定義したものである。アミン価は、例えば、試料3gをm−クレゾールに溶解し、過塩素酸メタノール溶液で電位差滴定法により滴定し、KOHのmgに換算することで求められる。
【0094】
ポリエーテルエステルアミド樹脂(H2)のアミン価の調整は、反応成分の仕込み比率を調整して重合したり、ポリエーテルエステルアミド樹脂を構成するポリアミド単位とアミン等の末端調整剤とを加熱して反応させたり、重合して得られたポリエーテルエステルアミド樹脂とアミン等の末端調整剤とを加熱して反応させることにより行うことができる。末端調整剤として用いられるアミンとしては、炭素数6〜22のものが好ましく、例えば、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、ベヘニルアミン等の脂肪族第一級アミンが挙げられる。
【0095】
本発明で好ましく使用することができるポリエーテルエステルアミド樹脂(H2)として、例えば特開平11−228691号公報等によって示される方法で製造される高アミン価のポリエーテルエステルアミド樹脂を挙げることができる。また、本発明では、ポリエーテルエステルアミド樹脂として特開2002−146212号公報に記載されるポリエーテルエステルアミド樹脂も好ましく使用することができる。
【0096】
ポリアミド樹脂の重量平均分子量は任意であるが、通常は500〜100,000、好ましくは1,000〜50,000である。なお、重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によって測定された、ポリスチレン換算の値を言う。
【0097】
ポリアセタール樹脂がホルムアルデヒドを発生すると、ホルムアルデヒドが酸化してギ酸となり、このギ酸による酸性は、ポリアセタール樹脂の分解をさらに促進させることになる。本発明においては、末端にアミノ基を多く持つポリアミド樹脂を配合することにより、ホルムアルデヒドが酸化されて生成するギ酸による酸性を中和し、ポリアセタール樹脂の分解を抑制することがき、しかも、驚くべきことに、ホルムアルデヒド反応性窒素を含有する安定剤(C)によるホルムアルデヒド捕捉効果を阻害しないという効果をも奏する。特に、後記する着色剤(G)を含有する場合、着色剤によりポリアセタール樹脂が分解しやすく、ホルムアルデヒドの発生量も増えるため、着色剤を含有する場合の上記のホルムアルデヒド発生の抑制効果は顕著である。
【0098】
ポリアミド樹脂の含有量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜3質量部であることが好ましい。2種類以上用いる場合は、その合計量が上記範囲となる。含有量が0.01質量部未満では、成形品からのホルムアルデヒド発生量を低減させる効果が充分とはいえない場合があり、逆に3質量部を超えると、ポリアセタール樹脂組成物の成形品の機械的強度が低下しやすい傾向にある。より好ましいポリアミド樹脂の含有量は、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、0.05質量部、特には0.1質量部以上であり、また、その上限は、2質量部以下、更には1質量部以下であることが好ましい。
【0099】
[9.2]アミノ当量が100〜10,000のアミノ基含有シロキサン化合物
本発明においては、アミノ当量が100〜10,000であるアミノ基含有シロキサン化合物(H3)(以下、単に「アミノ基含有シロキサン化合物」と略記する場合がある。)を配合することも好ましい。
【0100】
アミノ基含有シロキサン化合物(H3)とは、アミノ基を含有するシロキサン化合物であれば、特に制限はないが、例えば、下記一般式(5)〜(9)で示される化合物から選ばれる少なくとも1種のアミノ基含有ポリオルガノシロキサン化合物が好ましい。
【0101】
【化5】

【0102】
一般式(5)〜(9)において、R、R´はそれぞれ同一か又は異なっていてもよく、線状又は分岐状の炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数6〜18のアリーレン基、炭素数7〜24のアルキルアリーレン基、炭素数7〜24のアリールアルキレン基、炭素数6〜18のシクロアルキレン基を表し、R、Rはそれぞれ同一か又は異なっていてもよく、線状もしくは分岐状の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜24のアルキルアリール基、炭素数7〜24のアリールアルキル基、炭素数7〜24のアラルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基を表す。POAは、炭素数2〜10のポリアルキレンオキシド基を表す。なお1分子中のRは、全て同一の必要はない。R、R、R´、POAに関しても同様である。
n、mは3以上の整数、xは0以上の整数、y、zは1以上の整数、pは0〜10の整数である。
【0103】
としては、エチレン基、プロピレン基、ベンチレン基等のアルキレン基、フェニレン基、シクロヘキシレン基が好ましく、プロピレン基がより好ましい。
、Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、クロロメチル基、1,1,1−トリフルオロプロピル基等のハロアルキル基等が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
R´としては、エチレン基、プロピレン基、ベンチレン基等のアルキレン基、フェニレン基、シクロヘキシレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
【0104】
POAで表されるポリアルキレンオキシド基としては、炭素数2〜6のポリアルキレンオキシド基が好ましく、炭素数2〜3のポリアルキレンオキシド基がより好ましい。
【0105】
前記一般式(5)、(6)及び(9)において、n、mは10〜3,000が好ましく、15〜2,000がより好ましく、20〜1,500がさらに好ましい。前記一般式(7)において、x+yは、10〜3,000が好ましく、15〜2,000がより好ましく、20〜1,500がさらに好ましい。前記一般式(8)において、x+y+zは、10〜3,000が好ましく、15〜2,000がより好ましく、20〜1,500がさらに好ましい。zは、1〜1,000が好ましく、2〜600がより好ましく、3〜300がさらに好ましい。前記一般式(7)〜(9)において、pは0〜5が好ましく、0〜2がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0106】
これらの中でも、ポリアセタール樹脂分解抑制効果が優れる点から、一般式(7)において、Rが炭素数2〜4のアルキル基、Rがメチル基、p=0であるアミノ基含有シロキサン化合物が特に好ましい。
【0107】
なお、本発明におけるアミノ当量とは、次式で定義される値である。
(アミノ当量)=1/(アミノ基濃度)=(試料質量)/(アミノ基モル数)
【0108】
上記式よりアミノ当量を求める一般的な測定方法としては、通常の溶液適定法を採用できる。具体的には、例えば、以下の方法が挙げられる。
フラスコにアミノ基含有シロキサン化合物1gを量りとり、イソプロピルアルコールを25ml加えよく攪拌し溶解する。指示薬としてブロムフェノールブルーを用い、0.1mol/Lの塩酸で中和滴定する。アミノ当量は、以下の式で計算される。
(アミノ当量)=
(試料質量/g)×10/{(塩酸ファクター)×(塩酸滴定量/ml)}
【0109】
アミノ当量は好ましくは100〜9,000、より好ましくは100〜8,000、さらに好ましくは200〜7,000である。アミノ当量が100未満ではポリアセタール樹脂を分解しホルムアルデヒド発生量が増加しやすく、10,000を超えると本発明の十分な効果が得られにくい。
【0110】
アミノ基含有シロキサン化合物の動粘度は任意であるが、通常は100mm/s以上、好ましくは300mm/s以上、より好ましくは500mm/s以上である。動粘度が100mm/s未満であると、成形加工時にブリードアウトしやすい傾向にある。なお、アミノ基含有シロキサン化合物の動粘度とは、回転粘度計を用い25℃で測定された値を言う。
【0111】
アミノ基含有シロキサン化合物の製造方法及びアミノ当量の調整方法は、従来より公知であり、例えば、上記一般式(5)の化合物は、ヘキサメチルシクロトリシロキサンの非平衡重合で得られた片末端ケイ素原子結合水素原子含有ポリジメチルシロキサンとアリルアミンのシリル化物との付加反応後、脱シリル化によって製造することができる(特開平2−42090号公報参照。)。また、上記一般式(6)〜(9)の化合物は、例えば、特開平7−11000号公報、特開平7−41677号公報、特開昭53−98499号公報、特開平2−42090号公報等に記載の方法により、必要な原料を用いて、製造、アミノ当量の調整をすることができる。
【0112】
ポリアセタール樹脂に着色剤(G)を配合すると、ポリアセタール樹脂が分解しやすくなり、ホルムアルデヒドが発生しやすくなる。このホルムアルデヒドは酸化されるとギ酸となり、このギ酸による酸性は、ポリアセタール樹脂の分解をさらに促進させることになる。本発明においては、特定量のアミノ基を有するシロキサン化合物を配合することにより、ホルムアルデヒドが酸化されて生成するギ酸による酸性を中和し、ポリアセタール樹脂の分解を抑制することがき、しかも、驚くべきことに、ホルムアルデヒド反応性窒素を含有する安定剤(C)によるホルムアルデヒド捕捉効果を阻害しないという効果をも奏する。
【0113】
アミノ基含有シロキサン化合物(H3)の含有量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜3質量部が好ましい。2種類以上用いる場合は、その合計量が上記範囲となる。含有量が0.01質量部未満では、成形品からのホルムアルデヒド発生量を低減させる効果が低い場合がある。逆に3質量部を超えると、ポリアセタール樹脂組成物の成形品の機械的強度が低下しやすい傾向にある。アミノ基含有シロキサン化合物の含有量は、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、0.05質量部以上、特に0.1質量部以上であることが好ましい。また、その上限は2質量部以下、更には1質量部以下であることが好ましい。
【0114】
[10.その他の成分]
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、更にアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩又はアルコキシド等を配合してもよい。例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の水酸化物、炭酸塩、燐酸塩、ケイ酸塩、ほう酸塩等の無機酸塩、メトキシド、エトキシド等のアルコキシドを配合する。特に、アルカリ土類金属化合物を配合するのが好ましく、なかでも水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、又は炭酸マグネシウムを配合するのが好ましい。アルカリ土類金属化合物を配合する場合は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下の割合で含有させる。
【0115】
また、本発明のポリアセタール樹脂組成物には、上記の成分の他に、本発明の目的を損なわない範囲内で公知の種々の添加剤や充填材を配合してもよい。
添加剤としては、例えば酸化防止剤、滑剤、核剤、離型剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤等が挙げられ、また充填材としては、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、タルク、マイカ、チタン酸カリウムウィスカー等が、さらに、カーボンブラック、顔料等が挙げられる。
【0116】
[11.ポリアセタール樹脂組成物の製造方法]
本発明のポリアセタール樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、上記の(A)〜(B)成分、及び必要に応じて好ましくは上記(C)〜(H)成分、及び必要に応じて添加されるその他の成分を、任意の順序で混合、混練することによって製造することができる。
混合・混練の温度、圧力等の条件は、従来公知のポリアセタール樹脂組成物の製造方法に鑑みて適宜選択すればよい。例えば、混練はポリアセタール樹脂の溶融温度以上で行えばよいが、通常は180℃以上で行うのが好ましい。製造装置としても従来からこの種の樹脂組成物の製造に用いられている混合、混練装置を用いればよい。
【0117】
具体的には、例えば、ポリアセタール樹脂(A)に対して、ポリアセタール樹脂、熱可塑性ポリウレタン及びイソシアネート化合物との反応物(B)、さらに好ましくはホルムアルデヒド反応性窒素を含有する安定剤(C)、紫外線吸収剤(D)、さらにヒンダードアミン系光安定剤(E)の所定量を、同時に又は任意の順序で配合し、所望により更に他の添加剤等を配合した後、タンブラー型ブレンダー等によって混合する。次いで得られた混合物を1軸又は2軸押出し機で溶融混練してストランド状に押出し、ペレット化することにより、所望の組成のポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。
【0118】
また、別法として、ポリアセタール樹脂(A)に対して、成分(B)、成分(C)、成分(D)および成分(E)を混合した後、溶融混練してペレット化する。これに無機及び有機顔料から選ばれた着色剤を添加した後、再度混合、溶融混練してペレット化することにより、所望の色調のポリアセタール樹脂組成物を得ることもできる。
またペレットを経由せずに、押出機で溶融混練された樹脂を直接、射出成形品、ブロー成形品あるいは押出成形品等にすることもできる。
【0119】
[12.成形加工法]
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、公知のポリアセタール樹脂の成形加工法に従って、成形加工することができる。流動性、加工性の観点から、射出成形が好ましい。
本発明の樹脂組成物からなる成形品としては、ペレット、丸棒、厚板等の素材、シート、チューブ、各種容器、機械、電気、自動車、建材その他の各種部品等の製品が挙げられる。特には、シートベルトガイド等の自動車用内装部品や、スウィッチ、シフトレバー関係部品、ギヤチェンジフック等の自動車用部品に特に好適である。
【実施例】
【0120】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は、以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0121】
実施例及び比較例で使用した原料、及び測定法を以下に示す。
(A)ポリアセタール樹脂:
コモノマーとして1,3−ジオキソランを樹脂に対して4.2質量%となるように用いて製造したアセタールコポリマー、メルトインデックス(ASTM−D1238規格:190℃、2.16Kg)10.5g/10分
【0122】
(B)ポリアセタール樹脂/熱可塑性ポリウレタン/イソシアネート化合物との反応物:
(B−1)前記の(A)ポリアセタール樹脂と芳香族熱可塑性ポリウレタンと4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネートとトリメチロールエタンとを、77:20:2:1の質量比で反応させて得られた化合物。なお、ここでいう芳香族熱可塑性ポリウレタンは、アジピン酸、1,4−ブタンジオール、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネートを反応させて得られたものである。
(B−2)前記の(A)ポリアセタール樹脂と脂肪族熱可塑性ポリウレタンと1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートとペンタエリスリトールとを、77:20:2:1の質量比で反応させて得られた化合物。なお、ここでいう脂肪族熱可塑性ポリウレタンは、アジピン酸、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを反応させて得られたものである。
(B−3)前記の(A)ポリアセタール樹脂と芳香族熱可塑性ポリウレタンと4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネートを、78:20:2の質量比で反応させて得られた化合物。なお、ここでいう芳香族熱可塑性ポリウレタンは、アジピン酸、1,4−ブタンジオール、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネートを反応させて得られたものである。
【0123】
(B´)その他の艶消し剤:
(B´−1)アクリル架橋微粒子、平均粒子径8.0μm
(B´−2)炭酸カルシウム、平均粒子径1.3μm
(B´−3)ガラスバルーン、平均粒子径10.0μm)
【0124】
(C)ホルムアルデヒド反応性窒素を含有する安定剤:
(C−1)ドデカン二酸ジヒドラジド 日本ファインケム工業社製、商品名「N12」
(C−2)アミノ置換トリアジン化合物 三井化学社製、商品名「メラミン」
(D)紫外線吸収剤:
2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール (20℃における蒸気圧2.0×10−10Pa)、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「チヌビン234」
【0125】
(E)ヒンダードアミン系光安定剤
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、 三共ライフテック社製、商品名「サノールLS−765」
(F)立体障害性フェノール化合物:
トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガノックス245」
(G)着色剤:
カーボンブラック;Pigment Black 7、エボニックデグサジャパン社製、商品名「プリンテックス」
(H)ポリアミド樹脂:
ポリアミド6/66/610共重合体、東レ社製、商品名「アミランCM4000」、融点140℃、アミン価3.0mgKOH/g
なお、アミン価は、ポリアミドを3g秤量し、m−クレゾール80mlに溶解させた溶液について、京都電子工業社製「AT−500N」を用い、滴定液として0.05mol/lの過塩素酸メタノール溶液を用いて電位差適定法により滴定を行い、KOHのmgに換算することにより求めた。
【0126】
(実施例1)
上記ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、上記ポリアセタール樹脂/熱可塑性ポリウレタン/イソシアネート化合物/多価アルコール反応物(B−1)25質量部、立体障害性フェノール化合物(F)0.1質量部を秤取り、川田製作所社製スーパーミキサーを用いて均一に混合したのち、常法に従って2軸押出機(池貝鉄工社製PCM−30、スクリュー径30mm)を用いて、スクリュー回転数120rpm、シリンダー設定温度190℃の条件下に、溶融混練したのち、ペレット化した。
得られたペレットを、温度80℃の熱風乾燥機を用いて4時間乾燥させ、下記の方法で試験片の成形を行い、後述の評価方法を行うことにより、表1に示す結果を得た。
【0127】
[平板試験片の作成]
日精樹脂工業社製射出成形機PS−40を用い、シリンダー温度215℃、金型温度80℃にて100mm×40mm×2mmのプレートを成形した。
[ISO多目的ダンベル片の作成]
住友重機械工業社製射出成形機SG75MIIIを用い、シリンダー温度195℃、金型温度80℃にて、ISO9988−2規格に準拠してISO多目的ダンベル片を成形した。
【0128】
(実施例2〜4)
実施例1において、成分(B−1)の配合量を表1に示すとおりにした以外は、全て実施例1と同様に処理して、表1に示す結果を得た。
【0129】
(実施例5)
実施例1において、さらに上記ジヒドラジド化合物(C−1)を、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し0.1質量部配合した以外は、全て実施例1と同様に処理して、表1に示す結果を得た。
【0130】
(実施例6)
実施例1において、さらに上記ジヒドラジド化合物(C−1)及び上記アミノ置換トリアジン化合物(C−2)を、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、それぞれ0.1質量部配合した以外は、全て実施例1と同様に処理して、表1に示す結果を得た。
【0131】
(実施例7)
実施例1において、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、さらに上記ジヒドラジド化合物(C−1)及び上記アミノ置換トリアジン化合物(C−2)を、それぞれ0.1質量部、上記着色剤(G)を1質量部配合した以外は、全て実施例1と同様に処理して、表1に示す結果を得た。
【0132】
(実施例8)
実施例1において、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、さらに上記ジヒドラジド化合物(C−1)及び上記アミノ置換トリアジン化合物(C−2)を、それぞれ0.1質量部、上記着色剤(G)を1質量部、ポリアミド樹脂(H)を0.5質量部配合した以外は、全て実施例1と同様に処理して、表1に示す結果を得た。
【0133】
(比較例1)
実施例1において、上記ポリアセタール樹脂/熱可塑性ポリウレタン/イソシアネート化合物/多価アルコール反応物(B−1)を配合しなかった以外は、全て実施例1と同様に処理して、表1に示す結果を得た。
【0134】
(比較例2)
実施例1において、上記成分(B−1)を配合せず、代わりにその他の艶消し剤として上記アクリル架橋微粒子(B´−1)を10質量部配合した以外は、全て実施例1と同様に処理して、表1に示す結果を得た。
【0135】
(比較例3)
実施例1において、上記成分(B−1)を配合せず、代わりにその他の艶消し剤として上記炭酸カルシウム(B´−2)を10質量部配合した以外は、全て実施例1と同様に処理して、表1に示す結果を得た。
【0136】
(比較例4)
実施例1において、上記成分(B−1)を配合せず、代わりにその他の艶消し剤として上記ガラスバルーン(B´−3)を10質量部配合した以外は、全て実施例1と同様に処理して、表1に示す結果を得た。
【0137】
(比較例5)
実施例1において、上記成分(B−1)を配合せず、代わりにその他の艶消し剤として、上記アクリル架橋微粒子(B´−1)を25質量部配合し、さらに上記ジヒドラジド化合物(C−1)をポリアミド樹脂(A)100質量部に対し0.1質量部配合した以外は、全て実施例1と同様に処理して、表1に示す結果を得た。
【0138】
(実施例9)
実施例1において、さらに上記紫外線吸収剤(D)を、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し0.35質量部配合した以外は、全て実施例1と同様に処理して、表2に示す結果を得た。
【0139】
(実施例10)
実施例1において、さらに上記紫外線吸収剤(D)及び上記ヒンダードアミン系光安定剤(E)を、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、それぞれ0.35質量部配合した以外は、全て実施例1と同様に処理して、表2に示す結果を得た。
【0140】
(実施例11)
実施例1において、上記成分(B−1)のかわりに上記成分(B−2)を配合し、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、さらに上記紫外線吸収剤(D)及び上記ヒンダードアミン系光安定剤(E)を、それぞれ0.35質量部配合した以外は、全て実施例1と同様に処理して、表2に示す結果を得た。
【0141】
(実施例12)
実施例1において、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、さらに上記ジヒドラジド化合物(C−1)及び上記アミノ置換トリアジン化合物(C−2)を、それぞれ0.1質量部、上記紫外線吸収剤(D)及び上記ヒンダードアミン系光安定剤(E)を、それぞれ0.35質量部配合した以外は、全て実施例1と同様に処理して、表2に示す結果を得た。
【0142】
(実施例13)
実施例1において、上記成分(B−1)のかわりに上記成分(B−3)を配合し、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、さらに上記ジヒドラジド化合物(C−1)及び上記アミノ置換トリアジン化合物(C−2)を、それぞれ0.1質量部、上記紫外線吸収剤(D)及び上記ヒンダードアミン系光安定剤(E)を、それぞれ0.35質量部配合した以外は、全て実施例1と同様に処理して、表2に示す結果を得た。
【0143】
[測定及び評価方法]
測定及び評価は、以下の方法で行った。
(a)光沢度:
前記した平板試験片(100mm×40mm×2mm)を使用して、日本電色工業社製光沢計(Gloss Meter VG2000)にて、反射角60度で測定した。
【0144】
(b)艶消し評価(1):
前記平板試験片に、蛍光灯の光を反射させ、その際の光源のぼやけ具合を、目視で確認し、以下の4段階で判定を行った。
・光源が原形を留めない程ぼやけて反射する→◎
・光源がぼやけて反射する →○
・光源の輪郭がうっすらとぼやけて反射する→△
・光源がくっきりと反射する →×
【0145】
(c)艶消し評価(2):
前記平板試験片にて、前記(b)艶消し評価(1)において、「◎」、「○」及び「△」の評価が得られているものに対し、表面のきめ細やかさを目視で確認し、以下の3段階で判定を行った。なお、艶消し評価(1)で評価が「×」であったものに関しては評価を行わなかった。
表面の凹凸が目視ではっきり確認でき、きめが粗い →1
表面の凹凸が目視でかろうじて確認できる →2
表面の凹凸が目視で確認できないほど、きめが細かい→3
【0146】
(d)ホルムアルデヒド発生量
前記平板試験片を、その成形翌日に、ドイツ自動車工業組合規格VDA275(自動車室内部品−改訂フラスコ法によるホルムアルデヒド放出量の定量)に記載された方法に準拠して、下記の方法によりホルムアルデヒド量を測定した。
ポリエチレン容器中に蒸留水50mlを入れ、試験片を空中に吊るした状態で蓋を閉め、密閉状態で60℃にて、3時間加熱し、ついで、室温で60分間放置後、試験片を取り出し、ポリエチレン容器内の蒸留水中に吸収されたホルムアルデヒド量を、UVスペクトロメーターにより、アセチルアセトン比色法で測定した。
なお、ホルムアルデヒド発生量は、比較例1のホルムアルデヒド発生量を1.00とした場合の、相対値で評価した。
【0147】
(e )機械特性:
前記したISO多目的ダンベル片を試験片として、引張降伏応力及び引張破壊呼び歪を、それぞれISO−527規格に準拠して、測定した。なお、比較例2〜5の樹脂組成物は、引張試験において試験片が降伏しなかったため、破断応力及び破壊歪の値として記載した(表1中の「※」部分)。
【0148】
(f)耐候性試験
前記平板試験片を使用して、スガ試験機社製サンシャインウェザーメーターS80にて、83℃(ブラックパネル温度)、雨なし、光フィルター:#255の試験環境で、60時間ごとに、試験片の表面を40倍のマイクロスコープで観察し、クラックの有無を確認した。成形品表面にクラックが観察され始めるまでの時間をクラック発生時間とし、耐候性の指標とした。クラック発生時間が長いほど耐候性に優れていることを示す。
また、その試験片について、試験前と、240時間後の試験片の色差(ΔE)を下記の方法にて測定した。
分光測色色差計(日本電色工業社製、SE2000)を使用し、耐候性試験前と、240時間耐光性試験後の色差(ΔE)を次式で評価した。
ΔE=((ΔL+(Δa+(Δb1/2
ΔEが小さいほど変色性が小さく、耐候性に優れているといえる。
【0149】
【表1】

【0150】
【表2】

【0151】
表1、2より明らかなとおり、本発明のポリアセタール樹脂組成物は、成形品の艶消し性に優れるという効果を奏する。また、ホルムアルデヒド反応性窒素を含有する安定剤(C)を含有させた場合は、ポリアセタール樹脂の分解を抑えられ、ホルムアルデヒド発生をより効果的に抑制できるという効果を同時に奏する。さらに、紫外線吸収剤(D)やヒンダードアミン系光安定剤(E)を含有させた場合は、耐候性をも向上させることができる。
一方、艶消し剤として、本発明のポリアセタール樹脂/熱可塑性ポリウレタン/イソシアネート化合物との反応物(B)を含有しない場合や、その他の艶消し剤を含有させた場合(比較例1〜5)では、艶消し性が劣るだけでなく、ポリアセタール樹脂の劣化が促進され、ホルムアルデヒド発生量が多く、機械的強度も低下することが分かる。特に、艶消し剤として、本発明のポリアセタール樹脂/熱可塑性ポリウレタン/イソシアネート化合物との反応物(B)を含有せず、代わりにその他の艶消し剤を含有させた場合は、ホルムアルデヒド反応性窒素を含有する安定剤(C)を含有させても、ホルムアルデヒドの発生量が多く、ホルムアルデヒド捕捉剤としての機能を十分に発揮できないことが分かる(比較例5)。
【産業上の利用可能性】
【0152】
このようにして得られた本発明のポリアセタール樹脂組成物は、高い艶消し性を有しており、ホルムアルデヒドの発生量も少なく、機械的強度にも優れている。さらに、特定の安定剤を含有させることにより、ホルムアルデヒドの発生をより効果的に抑制し、耐候性をも向上させることができる。
従って、本発明のポリアセタール樹脂組成物は、その成形品を自動車内装部品、家屋等の内装部品等に好適に使用することができ、産業上の利用性は非常に高いものがある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、ポリアセタール樹脂、熱可塑性ポリウレタン及びイソシアネート化合物との反応物(B)1〜120質量部を含有することを特徴とするポリアセタール樹脂組成物。
【請求項2】
前記反応物(B)が、ポリアセタール樹脂、熱可塑性ポリウレタン、イソシアネート化合物及び3価以上の多価アルコールとの反応物であることを特徴とする請求項1に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、ホルムアルデヒド反応性窒素を含有する安定剤(C)を、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、0.01〜1質量部含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、紫外線吸収剤(D)を、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、0.01〜5質量部含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、ヒンダードアミン系光安定剤(E)を、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、0.01〜5質量部含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、立体障害性フェノール化合物(F)を、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、0.01〜1質量部含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、無機及び有機顔料から選ばれる着色剤(G)を、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、0.01〜5質量部含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項8】
前記ホルムアルデヒド反応性窒素を含有する安定剤(C)が、ナフタレンジカルボヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド及びドデカン二酸ジヒドラジドより成る群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項3〜7のいずれか1項に記載のポリセタール樹脂組成物。
【請求項9】
さらに、ポリアミド樹脂及びアミノ当量が100〜10,000であるアミノ基含有シロキサン化合物より成る群から選ばれる少なくとも1種(H)を、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、0.01〜3質量部含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項10】
前記ポリアミド樹脂が、融点又は軟化点が180℃以下であるという物性か、アミン価が2mgKOH/g以上であるという物性の少なくとも一方を備えるポリアミド樹脂(H1)又はポリエーテルエステルアミド樹脂(H2)であることを特徴とする請求項9に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項11】
前記ポリアミド樹脂が、ポリアミド12、ポリアミド6/66共重合体、ポリアミド6/12共重合体、ポリアミド6/66/610三元共重合体、ポリアミド6/66/610/12四元共重合体及びダイマー酸ポリアミド樹脂より成る群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項9又は10に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項12】
前記ポリアミド樹脂が、ダイマー酸ポリアミド樹脂であることを特徴とする請求項9又は10に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項13】
前記ポリエーテルエステルアミド樹脂(H2)のアミド部分が、ポリアミド12又はダイマー酸ポリアミド樹脂であることを特徴とする請求項10に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項14】
前記ポリエーテルエステルアミド樹脂(H2)のエーテル部分がポリオキシエチレングリコールであることを特徴とする請求項10又は13に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項15】
前記着色剤(G)が、チタンイエロー、チタンホワイト、ペリノン系顔料、フタロシアニン系顔料及びカーボンブラックより成る群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項7に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物を成形してなる成形品。

【公開番号】特開2011−246566(P2011−246566A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120052(P2010−120052)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】