説明

ポリアミドイミド樹脂の製造方法

【課題】
製造されるポリアミドイミド樹脂の分子量のばらつきが低減されるポリアミドイミド樹脂の製造方法を提供すること。
【解決手段】
脂環式ジアミン又は芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン及びシロキサンジアミンと、無水トリメリット酸とを有機溶媒中で反応させて、一般式(1a)で表されるジイミドジカルボン酸又は(1b)で表されるジイミドジカルボン酸、一般式(1c)で表されるジイミドジカルボン酸、及び一般式(1d)で表されるジイミドジカルボン酸の混合物を得る第1工程と、該ジイミドジカルボン酸の混合物とジイソシアネート化合物とを反応させる第2工程とを備えるポリアミドイミド樹脂の製造方法であって、上記有機溶媒が含窒素系有機溶媒及びメチルエチルケトンを含む、ポリアミドイミド樹脂の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミドイミド樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドイミド樹脂をイソシアネート法で合成する場合、ジアミン化合物と無水カルボン酸化合物を反応させて中間体であるジイミドジカルボン酸を合成し、その後、ジイソシアネート化合物を反応させてポリアミドイミド樹脂が合成される。この際、ジイミドジカルボン酸を合成する溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略す)等の非プロトン性極性溶媒、及びトルエン等の芳香族炭化水素系溶媒が一般的に用いられる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−59602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ポリアミドイミド樹脂等の樹脂を商品化しようとする際には、できる限り製品間での分子量のばらつきを低減することが好ましい。しかしながら、特許文献1に記載の方法等を適用した場合には、理由は定かではないが、製造されるポリアミドイミド樹脂の分子量のばらつきが大きいという問題があることを本発明者らは見出した。
【0005】
そこで本発明は、製造されるポリアミドイミド樹脂の分子量のばらつきが低減されるポリアミドイミド樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記問題について鋭意検討した結果、従来の方法では、ジアミン化合物と無水カルボン酸化合物を反応させて中間体であるジイミドジカルボン酸を合成する段階と、ジイソシアネート化合物を反応させてポリアミドイミド樹脂を得る段階との間の時間等が変化すると、分子量のばらつきがさらに大きくなることを見出した。しかしながら、生産工程においてこのような時間を厳密に制御することは困難である。さらに、たとえ厳密に時間を制御することができたとしても、分子量のばらつきは生じ得る。
【0007】
これに対して、本発明者らは、下記構成を有する本発明のポリアミドイミド樹脂の製造方法によれば、このような問題を解決できることを見出した。
すなわち本発明は、脂環式ジアミン又は芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン及びシロキサンジアミンと、無水トリメリット酸とを有機溶媒中で反応させて、一般式(1a)で表されるジイミドジカルボン酸又は(1b)で表されるジイミドジカルボン酸、一般式(1c)で表されるジイミドジカルボン酸、及び一般式(1d)で表されるジイミドジカルボン酸の混合物を得る第1工程と、該混合物とジイソシアネート化合物とを反応させる第2工程とを備えるポリアミドイミド樹脂の製造方法であって、上記有機溶媒が含窒素系有機溶媒及びメチルエチルケトンを含む、ポリアミドイミド樹脂の製造方法を提供する。
【化1】


[式(1a)中、Zは脂環式ジアミン残基を示し、
式(1b)中、Zは芳香族ジアミン残基を示し、
式(1c)中、Zは脂肪族ジアミン残基を示し、
式(1d)中、Zはシロキサンジアミン残基を示す。]
【0008】
上記有機溶媒はさらに芳香族炭化水素系溶媒を含むことが好ましい。
【0009】
上記脂環式ジアミン残基は下記一般式(2a)、(2b)、(2c)又は(2d)で表される2価の有機基であり、上記脂肪族ジアミン残基は下記一般式(3)で表される2価の有機基であり、且つ、上記シロキサンジアミン残基は下記一般式(4)で表される2価の有機基であることが好ましい。
【化2】


[式(2c)中、Xは炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜3のハロゲン化脂肪族炭化水素基、スルホニル基、エーテル基、カルボニル基又は単結合を示し、R、R及びRは、各々独立に、水素原子、水酸基、メトキシ基、メチル基又はハロゲン化メチル基を示す。]
【化3】


[式(3)中、R13はアルキレン基を示し、n3は1〜70の整数を示す。]
【化4】


[式(4)中、R及びRは、各々独立に2価の有機基を示し、R、R10、R11及びR12は各々独立に炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜18のアリール基を示し、n2は1〜50の整数を示す。]
【0010】
上記ジイソシアネート化合物は下記一般式(5)で表される化合物であることが好ましい。
【化5】


[式(5)中、R14は、下記式(6a)、(6b)、(6c)、(6d)又は(6e)で表される2価の有機基を示す。]
【化6】

【0011】
上記第1工程における含窒素系有機溶媒の添加量は、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、シロキサンジアミン及び無水トリメリット酸の総量100質量部に対して、150〜200質量部であり、且つ、メチルエチルケトンの添加量は、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、シロキサンジアミン及び無水トリメリット酸の総量100質量部に対して、50〜100質量部であることが好ましい。さらに、上記第1工程における芳香族炭化水素系溶媒の添加量は、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、シロキサンジアミン及び無水トリメリット酸の総量100質量部に対して、35〜75質量部であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリアミドイミド樹脂の製造方法によれば、製造されるポリアミドイミド樹脂の分子量のばらつきを低減することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本明細書中、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定され、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線により換算されたものをいう。また、化学式中の*で示される箇所は結合位置を示す。
【0014】
本発明のポリアミドイミド樹脂の製造方法は、脂環式ジアミン又は芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン及びシロキサンジアミンと、無水トリメリット酸とを有機溶媒中で反応させて、一般式(1a)で表されるジイミドジカルボン酸又は(1b)で表されるジイミドジカルボン酸、一般式(1c)で表されるジイミドジカルボン酸、及び一般式(1d)で表されるジイミドジカルボン酸の混合物(以下、単に「ジイミドジカルボン酸の混合物」ともいう。)を得る第1工程と、該ジイミドジカルボン酸の混合物とジイソシアネート化合物とを反応させる第2工程とを備える。
【0015】
上記脂環式ジアミンとしては、芳香族ジアミン化合物を公知の還元方法、例えば種々の触媒の存在下で、水素を作用させる方法で還元することにより得られるものを好適に用いることができる。脂環式ジアミンの具体例としては、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルメタン、2,5(2,6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミンが挙げられる。これらは単独又は2種以上の組み合わせで使用される。これらの中で、安価で容易に入手可能な(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルメタンが好ましい。
【0016】
上記芳香族ジアミンとしては、例えば、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(以下、BAPPと略す)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキシルフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニルが挙げられる。これらは単独又は2種類以上の組み合わせで使用される。これらの中で特性バランスの維持及び低価格である観点からBAPPが好ましい。
【0017】
上記脂肪族ジアミンとしては、例えば、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンが挙げられる。これらは単独又は2種類以上の組み合わせで使用される。これらの中で特性の強靭性を向上させる観点からポリオキシプロピレンジアミンが好ましい。
【0018】
上記シロキサンジアミンとしては、シロキサン系両末端アミンであるアミノ変性シリコーンオイルのような公知のものを使用することができる。その具体例としては、X−22−161AS(アミン当量450)、X−22−161A(アミン当量840)、X−22−161B(アミン当量1500)(以上、信越化学工業株式会社製商品名)、BY16−853(アミン当量650)、BY16−853B(アミン当量2200)(以上、東レダウコーニングシリコーン株式会社製商品名)が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上の組み合わせで使用される。
【0019】
第1工程における脂環式ジアミン又は芳香族ジアミン(1)、脂肪族ジアミン(2)及びシロキサンジアミン(3)の添加量の比は、(1)/(2)/(3)=(0.1〜20)/(10〜89.9)/(10〜89.9)(各数値の単位はモル%であり、(1)、(2)及び(3)の合計量を100モル%とする。)であることが好ましい。
【0020】
第1工程における無水トリメリット酸の添加量は、脂環式ジアミン又は芳香族ジアミン(1)、脂肪族ジアミン(2)及びシロキサンジアミン(3)の合計モル数に対し1.80〜2.20倍モル量とすることが好ましい。
【0021】
上記ジイソシアネート化合物としては、例えば、一般式(5)で示されるジイソシアネート化合物が挙げられる。その具体例としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略す)、2,4−トリレンジイソシアネート(以下、TDIと略す)、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、2,4−トリレンダイマーが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上組み合わせて使用される。可とう性付与及び結晶性防止の見地から、MDIとTDIを併用するのが好ましい。また、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイシシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートを上記芳香族ジイソシアネートに対して5〜10モル%程度で併用することができる。
【0022】
第2工程におけるジイソシアネート化合物の添加量は、脂環式ジアミン又は芳香族ジアミン(1)、脂肪族ジアミン(2)及びシロキサンジアミン(3)の合計モル数に対して、1/1〜1.25/1であると好ましく、1.05/1〜1.2/1であるとより好ましい。
【0023】
上記有機溶媒は、含窒素系有機溶媒及びメチルエチルケトンを含み、好適には含窒素系有機溶媒、メチルエチルケトン及び芳香族炭化水素系溶媒を含む。
【0024】
上記含窒素系有機溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、NMPが挙げられる。これらの中で、イミド化反応には、高温を要するため沸点の高いNMPが好ましい。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。含窒素系有機溶媒は、ジイソシアネート化合物の溶解度が高いので、含窒素系有機溶媒を含む有機溶媒は、本反応の溶媒として好適に使用することができる。
【0025】
上記芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、ベンゼン、キシレン、エチルベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素が挙げられる。これらの中で、特に沸点が比較的低く、作業環境上有害性の少ないトルエンが好ましい。芳香族炭化水素系溶媒は、水と共沸可能であるので、上記有機溶媒が芳香族炭化水素系溶媒を含むことにより、反応系中で生成する水を効率的に除去することができる。
【0026】
なお、上記有機溶媒は、本発明の特性を損ねない程度に、メチルエチルケトン以外のケトン系溶媒を含んでいてもよい。このようなケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルイソブチルケトンが挙げられる。
【0027】
第1工程における含窒素系有機溶媒の添加量は、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、シロキサンジアミン及び無水トリメリット酸の総量100質量部に対して、150〜200質量部であることが好ましい。
【0028】
第1工程におけるメチルエチルケトンの添加量は、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、シロキサンジアミン及び無水トリメリット酸の総量100質量部に対して、50〜100質量部であることが好ましい。
【0029】
第1工程における芳香族炭化水素系溶媒の添加量が、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、シロキサンジアミン及び無水トリメリット酸の総量100質量部に対して、35〜75質量部であることが好ましい。
【0030】
また、第1工程における芳香族炭化水素系溶媒の添加量は、含窒素系有機溶媒の添加量100質量部に対して、20〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは還流温度が120〜160℃になるように添加量を調整する。例えば、含窒素系有機溶媒にNMPを芳香族炭化水素系溶媒にトルエンを用いた場合、NMP100質量部に対してトルエンを25〜45質量部添加することが好ましい。
【0031】
本実施形態のポリアミドイミド樹脂の製造方法は、より好適には下記の工程を含む。
脂環式ジアミン、脂肪族ジアミン、シロキサンジアミン、含窒素系有機溶媒及びメチルエチルケトン(以下、MEKと略す)の混合物に無水トリメリット酸(以下、TMAと略す)を加え、例えば70〜90℃で溶解させ、芳香族炭化水素系溶媒を添加し、140〜180℃で4〜6時間還流脱水させることにより、上述のジイミドジカルボン酸の混合物を得る(第1工程に相当)。これにジイソシアネート化合物を添加し、140〜170℃で2〜5時間反応させることによりポリアミドイミド樹脂が生成する(第2工程に相当)。
【0032】
本実施形態のポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量は、例えばプリント基板用接着材料として用いる場合などは、低すぎても高すぎても接着性が低下する傾向にあるため、最も高い接着性を得るには60,000〜80,000であることが好ましい。
【0033】
また、本実施形態で合成されるポリアミドイミド樹脂は、エポキシ系樹脂を硬化剤成分として組み合わせることによりアミド基とエポキシ基が熱等によって反応し、熱硬化性樹脂組成物として用いることができる。エポキシ系樹脂としては特に制限されるものではないが、例えばビスフェノ−ルA型、ビスフェノ−ルF型等の液状エポキシ樹脂を用いることができる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0034】
また、熱硬化性樹脂組成物として用いる場合は、硬化促進剤を使用することが好ましい。上記硬化促進剤としては、エポキシ樹脂と反応するもの、又は、硬化反応を促進させるものであれば特に制限はなく、例えば、アミン類、イミダゾール類が使用できる。これらは単独で又は2種類以上組み合わせて使用される。上記アミン類としては、例えば、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、グアニル尿素等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上組み合わせて使用される。上記イミダゾール類としては、例えば、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のアルキル基置換イミダゾール、ベンゾイミダゾール等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上組み合わせて使用される。
【0035】
また、熱硬化性樹脂組成物を接着剤組成物として接着剤層を形成する場合は、例えば、熱硬化性樹脂組成物を支持基材に塗布後、加熱によって乾燥させ作製することができる。この際の加熱条件は、熱硬化性接着剤組成物の反応率が0〜10%になるような条件とする。通常、乾燥温度は120℃〜150℃とすることが好ましい。また、接着剤層を単独で取り出す場合は、離型処理した支持基材を用いることができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、表1における材料の配合量の単位は重量部である。
【0037】
(実施例A1)
還流冷却器を連結したコック付き25mlの水分定量受器、温度計、撹拌器を備えた1リットルのセパラブルフラスコに、脂環式ジアミンとして(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルメタン(ワンダミンMH:新日本理化株式会社製商品名)、脂肪族ジアミンとしてポリオキシプロピレンジアミン(ジェファーミンD−2000:サンテクノケミカル株式会社製商品名)、シロキサンジアミンとしてX−22−161A(信越化学工業株式会社製商品名)、非プロトン性極性溶媒のNMPとMEKをそれぞれ表1に示した配合量で仕込み、4時間(時間A)放置した。その後、TMAを表1に示した配合量で仕込み、80℃で30分間撹拌した。そして、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてTLを表1に示した配合量で投入して、溶液中のMEKを除去しながら、1時間(時間B)かけて溶液を160℃まで昇温し、さらに生成する水を除去しながら5時間還流させた。
【0038】
次いで、水の流出が見られなくなったことを確認し、溶液を190℃まで昇温してトルエンを除去した。その後、溶液を室温に戻し、ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略す)と2,4−トリレンジイソシアネート(以下、TDIと略す)を表1に示した配合量で投入し、160℃で3時間反応させ、実施例A1のポリアミドイミド樹脂を得た。
【0039】
(実施例A2)
上記時間Aを4時間から8時間に、上記時間Bを1時間から2時間に変更したこと以外は実施例A1と同様にして、実施例A2のポリアミドイミド樹脂を得た。
【0040】
(実施例A3)
上記時間Aを4時間から12時間に、上記時間Bを1時間から3時間に変更したこと以外は実施例A1と同様にして、実施例A3のポリアミドイミド樹脂を得た。
【0041】
(実施例A4)
上記時間Aを4時間から12時間に変更したこと以外は実施例A1と同様にして、実施例A4のポリアミドイミド樹脂を得た。
【0042】
(実施例A5)
上記時間Bを1時間から3時間に変更したこと以外は実施例A1と同様にして、実施例A4のポリアミドイミド樹脂を得た。
【0043】
(実施例B1)
還流冷却器を連結したコック付き25mlの水分定量受器、温度計、撹拌器を備えた1リットルのセパラブルフラスコに、芳香族ジアミンとして2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(BAPP:和歌山精化工業株式会社製商品名)、脂肪族ジアミンとしてジェファーミンD−2000(サンテクノケミカル株式会社製商品名)、シロキサンジアミンとしてX−22−161A(信越化学工業株式会社製商品名)、非プロトン性極性溶媒としてNMP及びMEKをそれぞれ表1に示した配合比で仕込み、4時間(時間A)放置した。その後、TMAを表1に示した配合量で仕込み、80℃で30分間撹拌した。そして、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてTLを表1に示す配合量で投入してから、溶液中のMEKを除去しながら、1時間(時間B)かけて溶液を160℃まで昇温し、さらに生成した水を除去しながら5時間還流させた。
【0044】
次いで、水の流出が見られなくなったことを確認し、溶液を190℃まで昇温してトルエンを除去した。その後、溶液を室温に戻し、ジイソシアネートとしてMDIとTDIを表1に示した配合量で投入し、160℃で3時間反応させ、実施例B1のポリアミドイミド樹脂を得た。
【0045】
(実施例B2)
上記時間Aを4時間から8時間に、上記時間Bを1時間から2時間に変更したこと以外は実施例B1と同様にして、実施例B2のポリアミドイミド樹脂を得た。
【0046】
(実施例B3)
上記時間Aを4時間から12時間に、上記時間Bを1時間から3時間に変更したこと以外は実施例B1と同様にして、実施例B3のポリアミドイミド樹脂を得た。
【0047】
(比較例a1〜a5)
MEKを用いないこと以外は実施例A1〜A5と同様の方法により、比較例a1〜a5のポリアミドイミド樹脂を得た。
【0048】
(比較例a6〜a8)
MEKに代えてメチルイソブチルケトン(以下、MIBKと略す。)75重量部を用いた他は実施例A1〜A3と同様の方法により、比較例a6〜a8のポリアミドイミド樹脂を得た。
【0049】
(比較例b1〜b3)
MEKを用いないこと以外は実施例B1〜B3と同様の方法により、比較例b1〜b3のポリアミドイミド樹脂を得た。
【0050】
実施例A1〜A5、実施例B1〜B3、比較例a1〜a8及び比較例b1〜b3で得られたポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を表1に示す。なお、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定され、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線により換算されたものである。
【0051】
また、重量平均分子量のばらつき(%)を以下の計算方法により算出した。その結果を表1に示す。
(1)n3又はn5で合成したポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量の平均値を算出(AMw)
(2)n3又はn5中、重量平均分子量の最大値を抽出(Mw(max))
(2)n3又はn5中、重量平均分子量の最小値を抽出(Mw(min))
重量平均分子量のばらつき(%)=[Mw(max)−Mw(min)/AMw]×100
(「n3」又は「n5」とは、上記時間A及び時間B等の時間の条件のみを変えた実施例を3回又は5回行ったことを意味する。)
【0052】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂環式ジアミン又は芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン及びシロキサンジアミンと、無水トリメリット酸とを有機溶媒中で反応させて、一般式(1a)で表されるジイミドジカルボン酸又は(1b)で表されるジイミドジカルボン酸、一般式(1c)で表されるジイミドジカルボン酸、及び一般式(1d)で表されるジイミドジカルボン酸の混合物を得る第1工程と、
該ジイミドジカルボン酸の混合物とジイソシアネート化合物とを反応させる第2工程と、を備えるポリアミドイミド樹脂の製造方法であって、
前記有機溶媒が含窒素系有機溶媒及びメチルエチルケトンを含む、ポリアミドイミド樹脂の製造方法。
【化1】


[式(1a)中、Zは脂環式ジアミン残基を示し、
式(1b)中、Zは芳香族ジアミン残基を示し、
式(1c)中、Zは脂肪族ジアミン残基を示し、
式(1d)中、Zはシロキサンジアミン残基を示す。]
【請求項2】
前記有機溶媒がさらに芳香族炭化水素系溶媒を含む、請求項1に記載のポリアミドイミド樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記脂環式ジアミン残基は下記一般式(2a)、(2b)、(2c)又は(2d)で表される2価の有機基であり、前記脂肪族ジアミン残基は下記一般式(3)で表される2価の有機基であり、且つ、前記シロキサンジアミン残基は下記一般式(4)で表される2価の有機基である、請求項1又は2に記載のポリアミドイミド樹脂の製造方法。
【化2】


[式(2c)中、Xは炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜3のハロゲン化脂肪族炭化水素基、スルホニル基、エーテル基、カルボニル基又は単結合を示し、R、R及びRは、各々独立に、水素原子、水酸基、メトキシ基、メチル基又はハロゲン化メチル基を示す。]
【化3】


[式(3)中、R13はアルキレン基を示し、n3は1〜70の整数を示す。]
【化4】


[式(4)中、R及びRは、各々独立に2価の有機基を示し、R、R10、R11及びR12は各々独立に炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜18のアリール基を示し、n2は1〜50の整数を示す。]
【請求項4】
前記ジイソシアネート化合物が下記一般式(5)で表される化合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアミドイミド樹脂の製造方法。
【化5】


[式(5)中、R14は、下記式(6a)、(6b)、(6c)、(6d)又は(6e)で表される2価の有機基を示す。]
【化6】

【請求項5】
前記第1工程における含窒素系有機溶媒の添加量が、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、シロキサンジアミン及び無水トリメリット酸の総量100質量部に対して、150〜200質量部であり、且つ、メチルエチルケトンの添加量が、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、シロキサンジアミン及び無水トリメリット酸の総量100質量部に対して、50〜100質量部である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリアミドイミド樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記第1工程における芳香族炭化水素系溶媒の添加量が、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、シロキサンジアミン及び無水トリメリット酸の総量100質量部に対して、35〜75質量部である、請求項5に記載のポリアミドイミド樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2012−184317(P2012−184317A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47930(P2011−47930)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】