説明

ポリアミドオリゴマー及びその使用

本発明は、直鎖又は分岐鎖構造を有し、800〜5000g/molの数平均モル質量を有するポリアミドオリゴマーであって、少なくとも一部がNH2末端基である塩基性末端基とカルボキシル末端基とを有し、ポリアミドを生成するモノマーの縮合により製造され、NH2末端基の濃度がせいぜい300mmol/kgであり、該末端基がカルボキシル末端基に対する比率で過剰に存在するポリアミドオリゴマーに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特殊なポリアミドオリゴマー及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
分子中で同一の又は異なる種類のごく僅かな構成単位が繰返し互いに結合しており、1種又はそれ以上の構成単位を付加又は除去することによりモル質量(molar mass)を変化させると、その物理特性が著しく変化するようなオリゴマー化合物と称されるものがある。同様に存在する末端基は、非環状オリゴマーの化学的及び物理的特性に実質的な影響を及ぼす。鎖末端が官能基化されたこのようなオリゴマーは、構造及び官能価に応じて、ブロックコポリマー製造用のマクロモノマー、テレケリック分子(telechels)又は反応性オリゴマーとして機能し得るため、高分子調製の際の化学的性質を考慮する上で非常に重要である。
【0003】
オリゴマー又はプレポリマーと称されるこのような化合物は、例えば、ポリマー合成の際の中間工程で生成し、そのため常に反応性の鎖末端又は末端基を有する。
【0004】
前記オリゴマーには、同様に、ポリアミド6及び66の製造過程における重縮合平衡において必然的に形成される環状及び鎖状の二量体、三量体、四量体及びその高級同族体が含まれる。
【0005】
更に、オリゴマー化合物は特別に製造されるが、これらのオリゴマー化合物がその最も多様な機能を引継げるように特定の構成単位が一緒に使用される。
【0006】
このような特定の機能は、例えば表面に対する良好な湿潤性及び粘着性、プラスチック又は粘着性配合物における架橋反応であってもよいが、活性物質の特別な固定化(fixing)及び放出(release)でもあってもよい。
【0007】
モノマー化合物に対する主な相違点は、良好な拡散活性を依然として有するが概して非常に低下した揮発性を有する点であり、このことは多くの用途において、オリゴマーをモノマー化合物と有利に区別化している。
【0008】
従って、熱可塑性材料において用いられるオリゴマー化合物は、例えば以下のように細分化される:
【0009】
a)例えば、充填剤及び補強材材料又は被覆される表面の湿潤性等の特定の役割を、熱可塑性材料を成形する際の中間工程において引継ぎ、その結果単独で又はポリマー材料成分と予め組み合わせて使用される反応性オリゴマーであり、そのような材料は、引き続き反応することができ、例えば熱及びしばしば真空の影響下、更には放射線の影響下でも、粘性低下又は架橋に影響を与えることができる。縮合活性なオリゴマーの例が、例えばEP 0261020 B1に記載されている。
【0010】
b)高反応性の種類のオリゴマーがEP0272695B2に記載されている。アセトアミド末端基の比率が高いと、好ましい脱離基を有するためにトランスアミノ化反応が非常に大きく促進されるため、該オリゴマーが添加された高分子量のポリアミドが、8000g/mol未満の平均モル質量を有し、低分子量で高流動性の溶融物に押出工程で分解される。
【0011】
c)多くのポリマー配合物と同じように、オリゴマーはその分子量が特別に制限されたため、ポリアミドオリゴマーの場合には、例えば末端基としてカルボキシル、即ち-COOH、又はアミノ、即ち-NH2をそれぞれ有する。このようなオリゴマーは、その製造過程で、直鎖長制御により分子量が特別に調節されるが、官能性の鎖末端を有することから、この目的に適する熱可塑性配合物に導入される過程では依然として縮合活性である。
【0012】
d)更には、その鎖末端が、これ以上縮合反応に関与できないラジカルRを含み、例えば芳香環系であるようなポリアミドオリゴマーがあり、これはヘテロ原子を含んでいてもよく、又は特に例えば炭素数1-44のアルキルラジカルであり、後者は分岐していてもよく、へテロ原子、例えば酸素橋(oxygen bridges)を一緒に含んでいてもよい。
【0013】
通常の粘性安定なポリアミドオリゴマーの使用は、例えばWO 02/083345 A1,US 5744433及びUS 5154881に記載されており、異なる構造の構成を有し、反応しない鎖末端を有するポリアミドオリゴマーに、重量比で例えば0.2から10重量%の金属粉混合物が微粒子の形態で添加され、その後「熱圧縮プロセス」中、高圧及び熱作用の下で高密度が達成されている。これらの出願では、かなりの割合のCOOH末端基が存在していても、負の効果は生じない。実際、WO 2002/083346 A1に記載されるように、遊離の酸もまた特別に添加されている。
【発明の開示】
【0014】
従って、本発明の目的は、ポリアミド組成物中でこの種のポリアミドオリゴマーを使用した結果、該ポリアミドの特性が特に影響され得るように、残存する反応性末端基の割合が小さくなるよう特別に構成される有効なポリアミドオリゴマーを製造することにある。
【0015】
前記目的は、本特許請求項1の特徴により達成される。従属項は有利な開発内容を示す。請求項14〜20は、本発明によるポリアミドオリゴマーの使用法を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、800〜5000g/molの範囲のモル質量(molar mass)を有する特定のポリアミドオリゴマーを含み、該オリゴマーは、そのモル質量が厳密に制御され、故に溶融物中で長期間安定であり、また該オリゴマーは、本発明の特定の測定法によれば、依然遊離しているCOOH基濃度が低く、存在するNH2官能基の比率−mmol/kgで表わされるその濃度−がCOOH基の残存率よりも常に大きいという点で特徴付けられる。従って、本発明のポリアミドオリゴマーは、殆ど反応しない末端基に加えて、所定濃度のNH2末端基を有する。本発明によれば、NH2末端基の濃度は、オリゴマー分子量の関数として最大で300mmol/kgであり、好ましくは100mmol/kg未満である。よって、NH2及びCO2H末端基の合計は、存在する全ての末端基濃度よりも常に少ないことが必要である。末端基の濃度の測定法は、最先端技術において知られている。該アミノ及びカルボキシル末端基の濃度は、電位差滴定法により測定される。アミノ末端基の場合には、本発明の目的のために、0.2〜1.0gのポリアミド又はポリアミドオリゴマーをm-クレゾール50mlとイソプロパノール25mlの混合物中に50〜90℃にて溶解させ、アミノカプロン酸を添加した後、0.05モルの過塩素酸溶液で滴定される。COOH末端基を測定する場合には、測定すべき試料の0.2〜1.0gを、溶解度に従って、ベンジルアルコール中に又はo-クレゾールとベンジルアルコールとの混合物中に、50〜100℃にて溶解させ、安息香酸を添加した後、0.1Mの水酸化テトラ-n-ブチルアンモニウム溶液で滴定される。
【0017】
任意のポリアミドオリゴマーの末端基の総濃度は、式1に従い数平均モル質量の関数として算出される。f値は、線状ポリアミドオリゴマーの場合はf=2となり、分岐オリゴマーの場合はf>2となるように、該オリゴマー中の平均鎖末端数を示す。総末端基濃度は、式2に従い算出される。
【0018】
【数1】

【0019】
【数2】

【0020】
total:mmol/kgで表わされる全ての末端基の濃度
NH2: mmol/kgで表わされるNH2末端基の濃度
COOH:mmol/kgで表わされるカルボキシル末端基の濃度
R: mmol/kgで表わされ、殆ど縮合しない残存末端基の濃度
f: 官能価;オリゴマー1分子当たりの平均鎖末端数
n: g/molで表わされる数平均モル質量
【0021】
好ましい態様においては、差(Ctotal−CR)は400未満であり、特に好ましくは300又は200mmol/kg未満である。よって、NH2及びCOOH末端基濃度の合計はしかしながら存在する全末端基濃度よりも常に低くなる。
【0022】
分岐度の増加に従ってfもまた増加するため、分岐オリゴマーは、末端基の総濃度に対し縮合可能な末端基の濃度が低く、このことは例えばポリアミドとの混合物中で架橋が起こる危険を低減する。
【0023】
ある態様においては、ポリアミドオリゴマーは、50未満のCOOH末端基濃度を有し、好ましくは25未満であり、特に好ましくは5mmol/kg未満の濃度を有する。
【0024】
R3N,R2NH,RNH2等のアミン官能基と、更にカルボキシレート、即ち脱プロトン化されたカルボキシル官能基の両者は、鎖末端に又はオリゴマー構造中に位置してよく、それにより塩基性の成分として使用される。
【0025】
これに対応して、本発明のポリアミドオリゴマーは、ごくわずかの反応性末端基のみを依然有し、その結果、モノマー、オリゴマー又はポリマー等の官能化された他の構成単位とは、これ以上殆ど縮合しない。既知の反応性ポリアミドオリゴマーとは対照的に、本発明のオリゴマーは、純物質として及びポリアミド成形コンパウンドとの適切な混合物中において、分解に対し非常に安定であり、溶融物中のこのような成形コンパウンドの分解を大規模に停止させることができる。
【0026】
高品質を要する多くの用途に適切な本発明の新規オリゴマーは、特にそれとは対照的に、残存する反応性末端基の比率が小さくなるように構成され、更に本発明によれば、COOH基の比率が塩基性官能基の合計よりも小さいことが必要となる。
【0027】
ポリアミドは、多様な特定の末端基をも有し得るように、多様なモノマー構成単位から構成され得る。このような広い変動範囲もまた、本発明のポリアミドオリゴマーに当てはまる。既知のポリアミド構成単位を、遊離体(educts)として選択し組合せてモル質量を特別に調節することにより、結晶化度、融点又はガラス転移点、基質に対する親和性及び含水量等の特性、即ちオリゴマーの基本的な特徴が特別に調節される。
【0028】
純粋な直鎖状構造に加えて、特別に分岐したオリゴマーも製造することができる。例えばEP 0345645 B1において明らかにされるように、ポリアミドに適用される規定は、ポリアミドオリゴマーの場合、特にそのモル質量が800g/molを超える場合でも、分岐構造の説明に適用される。よって、分岐構造を有するポリアミドオリゴマーは後に再生産可能であり、構造を形成する構成単位に加えてアミノ酸及び/又はラクタムが専ら基本的なモノマーである場合には、反応器内で沈殿物を生成させずに再現性よく製造され得る。
【0029】
従って、新規なポリアミドオリゴマーに関する本発明の関連する特徴は、構成単位及びその組成自体を特別に選択することではなく、該オリゴマーの縮合活性な末端基が少ないことであり、特に、縮合反応の後に残存する、酸性末端基に対するNH2官能基の比率が1よりも大きく、好ましくは2よりも大きいことである。
【0030】
更に好ましい態様においては、第一級アミノ末端基の濃度が、アミノ末端基とカルボキシル末端基の比率が少なくとも2となるように調節される。よって、第一級アミノ末端基(NH2-)の最大濃度は300mmol/kgである。その上、更なるアミノ末端基が存在する場合には、これらはそれほど又は全く縮合しない第二級又は第三級アミノ末端基である。末端位置にある第二級又は第三級アミノ基の置換基は、好ましくは4個を超える炭素原子、特には4〜44個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル又はアリールラジカルである。
【0031】
本発明のポリアミドオリゴマーは、プラスチック材料の熱可塑化処理の際に優れた効果を示し、例えば溶融物の流動性が改善され、結晶化速度が増加し、離型性が実質的に改善される場合が多いということが特に重要である。COOH含有材料について知られるような、加水分解的な鎖開裂という意味での分解効果は、それにより殆ど排除され、処理設備に何ら腐食は生じない。
【0032】
本発明のポリアミドオリゴマーが、それ自体で又は高分子量のポリアミドとの混合物中で分解に対して安定であるためには、塩基性末端基の合計濃度が、少なくとも20、好ましくは少なくとも50mmol/kgである必要がある。
【0033】
本発明のオリゴマーをも含むポリアミド成形コンパウンドは、使用されるオリゴマーが塩基性基を本発明の濃度−mmol/kgで表わされる−で含む場合には、驚くべきことに優れた加水分解安定性及び耐候安定性を示す。最も有利なことには、連鎖停止反応に使用される化合物が、縮合活性な-NH2又はCOOH基とは別に、例えば式(I),(II)及び(IV)の化合物等におけるような、立体障害のあるアミノ基(第二級又は第三級アミン)を共に含有する場合には、これらはオリゴマー構造中に組み込まれる。遊離体(educts)としてのこのような特定の連鎖停止(chain-terminating)構造要素は、例えばココプロピレンジアミン(cocopropylene diamine)又は炭素数16〜22のアルキルプロピレンジアミン(アクゾ社製デュオミン(Duomeen)M)、3-シクロ-ヘキシルアミノプロピレンジアミン等の例えばN-アルキル化ジアミンであるが、特にはトリアセトンジアミンである。これに対応して構成されたポリアミドオリゴマーをポリアミド成形コンパウンドに添加することにより、例えば特別な添加を要する所謂HALS型等の高価な安定剤を使用せずとも、その加水分解安定性及び耐候安定性が改善される。
【0034】
【化1】

【0035】
更に、オリゴマーの製造には、モノマー構成単位を一緒に使用することが可能であり、該モノマー構成単位は、分子中に立体障害のあるフェノール構造を共に含む。結果として、このようなオリゴマーは、プラスチック材料、特にポリアミド成形コンパウンドに添加する際に、更にその熱安定性を向上させる。実施例として挙げられる対応するモノカルボン酸は、式(III)の3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製イルガノック(Irganox)1310)である。よって、ポリアミドオリゴマーが、その可能性に従いそのモル質量を制御され、その結果、一方の鎖末端に立体障害のあるアミン官能基を含み、他方の鎖末端に立体障害のあるフェノール基を含む場合には、特にポリアミド成形コンパウンドに適切に添加されることで、それは、後者が同時に優れた加水分解安定性、耐候安定性及び熱安定性を有するという効果を示す。
【0036】
鎖長の制御については、当然ながら、所望される効果により、最も多様な組み合わせが可能である。例えば、市販のステアリン酸が共に使用され、一部のみが立体障害のあるアミンであり、残りが例えば12〜20個の炭素原子を有する市販の脂肪族アミンであり得るという点で、例えばカルボン酸の一部のみが立体障害のあるフェノール官能基を有していてもよく、残りの成分はモノアルキルであってもよい。このような特定の組合せにより、ポリアミドオリゴマーは同時にその安定化効果を発揮させ、更に潤滑剤及び離型剤として優れた作用を示すことが保証される。
【0037】
本発明のポリアミドオリゴマーを製造するためのモノマーは、例えば直鎖及び分岐鎖ジアミン並びに2〜44個の炭素原子を有するジカルボン酸であり、更に例えば、1,3-或いは1,4-ビスアミノメチルシクロヘキサン又はm-及びp-キシレンジアミン等の脂肪族アミン官能基を有する環状の縮合活性なジアミンであり、二環式の及びそれにより繰返し置換されたジアミン、例えば3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン又は3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノジシクロヘキシルプロパンでもあり、更には所謂TCD-ジアミン(3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)-トリシクロ[5.2.1.026]デカン)又はノルボルナン構造を有するジアミン等でもある。更には、適切なジカルボン酸は、二量化された脂肪酸である1,2-、1,3-、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸であり、イソフタル酸及びテレフタル酸並びにナフタレンジカルボン酸でもある。
【0038】
塩基性の鎖末端の合計が少なくとも50mmol/kgの濃度を有するように、例えば、選択された数のモノマー構成単位に、依然釣合う官能基として、一方の鎖末端にモノアミンを、他方の鎖末端にモノカルボン酸を、例えばステアリルアミンとステアリン酸とを各々約1:1のモル比であるが、僅かにアミンが過剰に結合させるように、モル質量の制御が実施される。
【0039】
モル質量及び末端基を制御するための更に優れた可能性は、二官能又は多官能の縮合活性化合物を前記オリゴマー分子中に特別に組み込むことであり、それにより生成する一方の種類の各官能性末端基については、例えば不揮発性のエーテルジアミンなどの他の種類の単官能化合物を、前記オリゴマー構造中で構成単位として使用することであり、前記鎖末端については、2個のステアリン酸を使用することである。
【0040】
オリゴマー構成単位がアミノ酸及び/又はラクタムの場合には、主要な構成単位は、例えばトリメシン酸又はエチレンジアミンテトラプロピオン酸を有する三官能又は更に多官能であってもよい。末端構造には、例えばステアリルアミン等のモノアミンが3又は4当量必要とされる。プロセスは、所定の過剰のアミノ官能基が残存し、立体障害のあるアミン官能基又は立体障害のあるフェノール官能基を更に一緒に含むような化合物を、特定の効果を得るために特別に一緒に使用するようにして実施される。
【0041】
更には、分岐構造を持つオリゴマーの製造に特に適する化合物の種類は、分子中に例えば5〜10個の無水マレイン酸基(MA)を有する所謂スチレン無水マレイン酸樹脂である。該MA基は、後にカルボキシル末端化される「オリゴマーの腕(oligomer arm)」のための成長開始剤として、溶融物中でアミン官能基と各々反応してイミドを形成し、前記構成単位はアミノ酸であるか又はラクタムであることができ、連鎖停止反応はモノアミンを使用することにより実施される。このような分岐の特徴を有するアミノ酸及び/又はラクタムに基づくオリゴマーは、更に、比較的大きいモル質量と共に優れた流動性を有し、その結果、光沢に優れた表面を有する高充填のポリアミド配合物に特に適する。
【0042】
該オリゴマーの技術的な製造は、通常のポリアミドの製造に使用されるような反応槽中で実施でき、本質的なPA合成について知られている規定に本質的に従う。
【0043】
主に使用されるモノマーが、ジアミンをジカルボン酸と組合せたものである場合には、プロセスはその塩から開始するか、又は、オートクレーブ或いは調製用の所謂ソリュタイザー(solutiser)にアミン及び酸が適量の水の共存下で各々供給され、塩の形成が起こり、続いてPA合成によくあるようなプロセスが実施される。ラクタム、特にラクタム12が共存するか、又は単独のモノマーである場合には、モノマーの損失を回避し、化学量論的な規定を満たすために、水と熱の作用を伴う所謂縮合段階(compression phase)を必要とし、モノマー系に適合させた調製用の縮合段階が常に推奨される。
【0044】
しかし、オリゴマーの技術的な製造の際のポリアミドとの主な相違点は、特定の分子量に制限されているために、熱供給及び放熱が著しく促進され、加速された方法で起こる用に、溶融物が常に低粘度を維持し、非常に容易に撹拌できる点である。
【0045】
しかし、縮合活性な鎖末端の低い濃度により特徴付けられる、オリゴマーに必要な安定性の規定に関しては、必要とされる末端構造が広範囲に形成されるまで、前記縮合反応が継続されることが必要である。このような溶融物は、その後例えば数日にわたるように非常に安定である。
【0046】
このようなポリアミドを固体材料として製造するためには、特定の排出方法を要することが示された。モル質量が5000g/mol未満の場合には、プロセスは例えば以下のように実施できる。
【0047】
・溶融噴出物(melt jet)は、激しく撹拌した水浴中に供給される。それにより、迅速な固化が起こり、形成する球状粒子が容易に濾別され得る。
【0048】
・溶融物は、多孔板を通して例えば水等の液体冷却媒体に圧入され、後に液体から分離される球状粒子(rounded particle)が形成され得るように、それぞれ回転羽根によりノズル表面から分離される。この目的には、例えばキサンテン(Xanten)D-46509にあるガラ(Gala)社、又は更にミュンスター(Munster)D-48157にあるBKG社により販売用に提供されるような市販の装置がある。
【0049】
・更には、例えば窒素等の好ましくは不活性雰囲気下において、前記溶融物の噴霧及びそれによる冷却が可能であり、その結果、該溶融物が同様に直接、規定された粒子の形態となる。
【0050】
・該溶融物は、同様に所謂ペレッティングベルト(pelleting belt)により排出させ、冷却させることができ、規定された形状寸法を有するペレットが製造される。このような装置は、例えばルツェルン(Lucerne)CH-6002にあるサンドビック(Sandvik)社により販売用に提供される。
【0051】
それらが比較的小さいモル質量を有するため、このように形成される粗粒子は、後に例えば液体窒素で冷却することにより超微粒粉にうまく粉砕され得る。
【0052】
超微粒粉としてのオリゴマーは、例えばセラミック又は金属粉混合物に添加する結合樹脂又は結合システム(binding systems)として適切であり、例えば粉末射出成形、熱圧縮又は冷間圧縮プロセス等のこの目的用に知られる方法により、その加工(processing)及び成形(shaping)を改善する。
【0053】
更に、これらはプラスチック材料配合物の加工性を改善するのに最適であり、モノマー加工助剤を使用する場合によくあるような、揮発性でなく、また鎖開裂が生じない。これらが適切に構成される場合には、これらは、配合物の末端特性、例えばその加水分解安定性、耐候安定性及び熱安定性等も改善する。
【0054】
これらはマスターバッチキャリアー(MB carriers)としても特に適切であり、以下の可能性が強調される:
【0055】
A)これらは該MBキャリアーを直接的に且つ専ら生成し、添加剤を低粘性の溶融物中に混ぜ込み、その後記載された方法の1つに従って、得られるMBを排出させ、それにより適切な粒子形態に変換させる。
【0056】
B)本発明のポリアミドオリゴマーは、関連する種類の熱可塑性樹脂、例えば関連する種類のポリアミドと共にMBキャリアーを形成する。
【0057】
C)オリゴマーは、これら熱可塑性材料の用途特性を改善するために、熱可塑性材料に特別に添加するための適切な形態を、ペレット形態単独で、又は該方法に必要な低比率の添加剤数種のみと共に既に形成している。
【0058】
D)マスターバッチの条件としては、例えばマトリックス中での添加剤の分散を改善するのに役立つ特定のアクリレートを共に使用することが特に推奨される。著しく異なる分子量及び構成を有するこのようなアクリレートは、例えば株式会社カネカ及びローム・アンド・ハース社により「押出助剤(extrusion aids)」と総称されて販売用に提供されている。
【0059】
しかし、更なる加工又は特性関連の添加剤、例えば、追加の安定剤(熱、加工、耐候)、有機染料及び顔料、トレーサー(tracers)、殺虫剤又は更には耐衝撃性改良剤及び/又は防炎加工剤並びに用途に適するようにこれらの添加剤を各々組合せたもの等が、熱可塑性樹脂、特にポリアミド溶融物にオリゴマーを取り込む時と同時に、直接的に一緒に使用される場合には、それは特に重要である。
【0060】
特に有利であると判明したことは、前記オリゴマーを末端停止させるラジカルRが、例えば酸素橋(oxygen bridges)又は第二級若しくは第三級アミン官能基、更にはカルボキシレート基を低比率で取り込むことにより、それらの特性、特にそれらの湿潤性(wetting activity)の点で、MBキャリアーとしての要求に特別に適合させることができ、該ラジカルRは線状、分岐状又は環状及び芳香族であっても良いことである。
【0061】
官能性末端基が、例えばmmol/kgで表わされるような塩基性末端基の数が酸性末端基-COOHの数より大きくないという規定を直接には満たさないようなオリゴマーが使用可能な場合には、残存する酸性末端基は単一のプロセス工程においてそのカルボキシレートの形態に変換され得る。例えば、水酸化マグネシウム又は酸化カルシウム或いは水酸化カルシウム、又は更に超微粒子である活性酸化亜鉛等の超微粒子塩基性金属塩が、この目的のために適切である。また、所謂HALS安定剤の形態でも使用されることが多いアミン、特に第三級アミンが、依然存在するCOOH基の脱プロトン化に適切である。
【0062】
全体として、COOH末端基の脱プロトン化に適する多くの有機及び無機塩基が存在する。例えば沈殿した水酸化マグネシウムの場合のように、無機塩が超微粒子の形態で存在し、後に大きな活性表面積(例えば10m2/g)を有する場合には有利である。有機化合物、例えば、好ましくは第二級の又は特には第三級の構造を有するモノアミン又はポリアミンの場合には、これらが拡散活性(diffusion active)で、それ程揮発性でないことが重要である。
【0063】
前記オリゴマーが使用前に既に脱プロトン化された形態で存在することは、必須ではない。ポリアミドの場合において、該オリゴマーを例えば超微粒子粉の形態で使用する場合には、例えば水酸化マグネシウムとの適切な混合物もまた可能であり、溶融及び組み込み工程(incorporating process)中で、カルボキシレートへの脱プロトン化が直接起こる。
【0064】
更に適切な可能性は、製造後オートクレーブから排出される前に、塩基をオリゴマー溶融物中に混ぜ込むことにより、COOH末端基の残存成分の脱プロトン化を実施することである。
しかし、脱プロトン化工程を前記マスターバッチの製造に含めることが特に重要である。
【0065】
適切な脱プロトン化剤の添加は、選択されたMB配合物に直接組み込まれ、それにより、溶融体中にMBが製造される過程で中和工程が実施される。塩基、例えば水酸化マグネシウムをおおよそ過剰量で一緒に用いる場合には、このような特定のマスターバッチをポリアミド配合物に添加する際に、ポリアミド中に依然存在する任意のカルボキシル基を脱プロトン化することも同様に可能であり、このことは加工安定性、加水分解安定性及び耐候安定性に対し更なるプラスの効果を示す。
【0066】
このようなポリアミドオリゴマーを使用することにより、特にポリアミド成形コンパウンドは、例えば熱可塑性樹脂の成形中に起こる変色に対する安定剤としての追加的なリン化合物、例えばイルガフォス(Irgafos)168及びイルガフォス(Irgafos)12等を共に含み、その溶融状態における粘度安定性が著しく改善される。
【0067】
前記オリゴマー中のCOOH末端基を脱プロトン化すること、及びその後に適切な追加の塩基度(basicity)をポリアミド成形コンパウンドに導入することは、本発明の更なる、及び好ましい態様を示す。
【0068】
本発明は、以下の図面及び以下の実施例を参照してより詳細に説明される。
【実施例】
【0069】
実施例1
初めに本発明の典型的なポリアミドオリゴマーの構造の構成及び製造について説明する。この目的のために選択されるオリゴマーは、主要な構成単位としてジアミンを有し、ここにおいては、統計的な平均として7個のアミノ酸構成単位が縮合しており、アミノ酸構成単位の縮合が続く(condensing-on)ため、オリゴマーの構造は常にアミンで末端化されているという法則に従っている。選択された基本的な構造は、結果として、末端基にアルキルラジカルが十分残存するように、その両側がモノカルボン酸により変換される。
【0070】
この目的のために、以下が使用される。
a)ジアミンとして、220g/molのモル質量を有する4,7,10-トリオキサトリデカン-1,13-ジアミン(TRI)(製造メーカー:BASF、ルートウィヒスハーフェン)。
【0071】
b)モノカルボン酸として、商業的に一般に使用される、イタリアのジェノバにあるFACI社による商品名SSのモノカルボン酸混合物であり、分子量(molecular mass)が275g/molであり、主成分としてステアリン酸が63wt%、パルミチン酸が31wt%であり、更に残りの部分はより短い及びより長いモノカルボン酸である。
【0072】
c)主な構造要素として、モル質量197g/molのラクタム12(LC12)として配合物に導入されたポリアミド12の構成単位を、ジアミンとモノカルボン酸との間に統計的に配置し、該ラクタム環は選択され記載された反応条件下で開環され、それによりアミノ酸の序列が、既知の反応機構に従って前記オリゴマー構造中に挿入される。
【0073】
上述した化合物は、TRI:SS:LC12=1:2:7のモル比で使用された。更に、少なくとも20mmol/kgのアミン官能基(NH2基)が過剰に残存するような方法で計算値の補正が考慮された。よって、PAオリゴマーは、約2200g/molの数平均モル質量を有する。
【0074】
半工業的な規模で前記オリゴマーを製造するために、130リットルの反応槽が使用され、ここに45kgの原料が記載されたモル比で供給された。更に、縮合段階(compression phase)で起こるラクタムの既知の開環のために水が添加され、この反応を促進するために0.02wt%の亜リン酸が添加された。オートクレーブの内容物は不活性化された後加熱され、生成した溶融物の撹拌下で縮合段階が開始され、該縮合段階は293℃で20barの圧力下にて5時間維持された。その後、減圧し窒素を通過させて、撹拌下にて、5時間以内でゆっくりと220℃まで冷却し、溶融物中に所望のオリゴマー構造が形成された。次いで、流動性の溶融物を、細い噴流(thin jet)として、激しく撹拌しつつ、水を満たした容器に排出し、該オリゴマーは小滴状の形態で迅速に固化し、次いで濾過により水から分離された。続いて、オリゴマーは、含水量が0.2wt%未満となるまで、60℃で真空下にて乾燥された。
【0075】
結果として得られたオリゴマー粉末は、以下のような固有値を有する:
・DSC融解曲線の最大値としての融点が160℃
・室温における密度が1.0g/cm3
・室温での平衡含水比及び100%相対湿度が0.78wt%、並びに官能性末端基の残存量は次の通り:NH2 50mmol/kg,COOH 20mmol/kg
【0076】
溶融状態のオリゴマーの安定性を試験するために、オリゴマーを不活性ガス下180℃にて溶融させ、溶融状態に維持し、溶融した試料を除去して次の表に従って評価し、その官能性末端基についても滴定により確認した。その結果を表1に要約する。
【0077】
【表1】

【0078】
溶融物は全期間を通して変化することなく流動性を維持し、全く変色しなかった。動粘性率の測定試験によれば、前記オリゴマーは融点をわずかに超えた温度、例えば170℃において、既に非常に低粘度であるため、純粋なプロフィール依存(profile-dependent)の測定は不可能であった。該オリゴマーの融点をわずかに超えた161℃においては、図1に従う粘度曲線が得られた。
【0079】
実施例2〜27
本発明の粘性安定なポリアミドオリゴマーが生成され得る広い変動範囲を示すために、対応する配合物を製造し、35g規模で、不活性ガスの下、ガラス製の縮合管(condensation tube)中で反応させ、以下の一般的な規定に従い操作を実施した。
【0080】
基本的な構成単位と選択された制御系(control system)を各々表に従うモル比で混合し、少量の追加の水と共に反応管に移し、続いて得られた溶融物の温度をゆっくりと且つ段階的に上昇させて各配合物に適合させた。特別に添加した少量の水により、初めに塩の形成が促進される。加熱する過程では、まず過剰の水が蒸発し、約180℃より、アミドへの縮合反応が水による開裂と共に開始される。各オリゴマーの融点にそれぞれ適合させて温度を段階的に上昇させ、オリゴマーの融点を超えた後は、該オリゴマーの生成が殆ど終了するまでその温度が維持される。縮合管を覆う加熱ブロック(heating block)の末端温度は、最低値に維持され250℃であった。
【0081】
11,12,610又は612等の所謂「長鎖」モノマー系に基づくオリゴマーは、多くの場合特に重要である。長鎖モノカルボン酸及びモノアミンを使用して構造を制御することが、本発明では特に適切であり、多くの場合、エーテルジアミンTRIが不揮発性のジアミンとして一緒に使用された。
【0082】
6,66,6I,6T又はMXD 6等の少ない炭素数を有する「短鎖」モノマーが、基本的な構成単位として選択される場合には、例えば安息香酸と更には例えばラウリン酸を連鎖反応を停止する酸として有利に使用すべきである。
【0083】
極性を高めるエーテル基を有するジアミンTRIは、交換すべきでない。
表2及び3には、使用されたモノマー及び制御剤(controller)の名称が示される。
【0084】
【表2】

【0085】
【表3】

【0086】
請求項の式I〜IVで示されるような、モル質量を同様に制御する特定の構成単位であって、その使用の際にオリゴマーに特別な特性をもたらすような構成単位が共に使用される場合には、例えば11,12,610又は612等の長鎖モノマー構成単位が有利に使用できる。
【0087】
記載された通常の縮合反応にそれぞれ必要とされるのは官能価(functionality)である。
実施した実験室試験を以下の表4に要約し、その後更に詳細に記載した。
【0088】
実施例2〜5
本実施例は、アミノラウリン酸を含むオリゴマー配合物、ポリアミド12のための縮合活性な構成単位、及び実施例1におけるのと同じ種類の構造制御に関し、モノマー構成単位の数は段階的に増加させた。DSC測定により比較された溶融挙動は、以下を示す:
【0089】
・融点は、基本的な構成単位の数nが増加するにつれて上昇し、最終的には40のnを有するポリアミド12の通常の融点に到達する。
・構成単位の数が少ない、例えば4の場合には、関連した低いモル質量の範囲においては、次々に生成するオリゴマーの構造は互いに著しく異なるため、多くの追加の融解ピークが現れる。数nが7以上になると、この効果は無視できるようになる。
【0090】
実施例6,7及び8
本実施例では、基本的な構成単位はアミノラウリン酸であるが、異なる制御系(control systems)が使用される。二官能性の作用制御剤(acting controller)(実施例6:C10、実施例8:TRI)は、実施例6及び8においては、オリゴマーの構造に組み込まれ、更に結果として生じる反応性末端基は、実施例6では完全に、また実施例8では半分を僅かに超える程度にステアレートで末端化される。
【0091】
結果として、実施例8における塩基度(basicity)が特に増加し、通常の末端基測定法により、予想された280mmol/kgのアミン官能基が検出された。実施例6及び8での融点は、各々168℃で殆ど一致している。実施例7においては、オリゴマー鎖が乱されないように構造制御剤(structural controllers)が組み合わされ、これにより該オリゴマーの結晶化が容易となる。これには、より高い融点を有するという効果もある。
【0092】
実施例9〜11
これらの実施例においては、実施例1〜5で既に使用したような構造制御系(structural controller system)を維持しながら、基本的な構成単位がそれぞれ別々に選択された。DSCにおいては、該構成単位が結合するポリアミドの場合よりも、予期した通り各々幾分低い融点が得られる。
【0093】
実施例12〜16
これらの実施例は、今度は全く異なる構成単位を含むが、各々6〜8個の少ない炭素数を有し、これに対し、制御系(controller system)TRI/BZが適合された。ここで該構成単位に適合された制御剤(control)は、非常に系相溶性(system-compatible)であることが判明した。DSCにおける溶融挙動が示すように、これらオリゴマーはその特性が著しく異なる。例えば、実施例14のオリゴマーは、約55℃のガラス転移点を有し、アモルファス状に軟化するが、一方オリゴマー15及び16は、各々有意なガラス転移段階(glass transition step)を示し、その後幅広い溶融領域が続く。
【0094】
実施例17〜19
これらの実施例は、既出の実施例12〜16におけるのと同様の基本的構成単位に基づくが、構造の制御に関しては、SSと比較し、より単鎖のラウリン酸LSをTRIと一緒に組合せている。この制御系(controller system)は、単鎖の基本的なモノマーと相溶性でもある。これらオリゴマーの鎖末端もアルキルラジカルを有し、ここでは11個の炭素原子を有し、該オリゴマー中のその重量比率は20%を超える。これらの異なる構造は、実施例12〜16と比較して、既に該オリゴマーの特性に著しい影響を与えている。特にDSC測定は、十分形成された融解帯(melting band)を示し、これは恐らく、鎖末端に線状アルキルラジカルが存在するために、連鎖移動(chain movement)が増加したためである。
【0095】
実施例20〜23
これらの実施例は、1回及び繰返し分岐した構造のオリゴマーであって、アルキル鎖末端を各々有し、SSから生じるオリゴマーの製造を含み、基本的な構成単位としてアミノ酸が専ら使用されたことから、この製造が可能であることが判明した。流動活性な鎖末端の数が増加したため、例えば高充填のポリアミド成形コンパウンドの流動性が著しく向上し、これにより最終的に、改善された表面品質を持つ射出成形品が得られる。制御系(controller system)の成分のモル比を特別に選択した結果、非常に塩基性のオリゴマーが各々生成し、このオリゴマーは、ポリアミド成形コンパウンド中で加工助剤(processing aids)として使用される過程で、その加水分解安定性及び耐候安定性を向上させる。配合物22及び23は、イルガコール(Irgacor) L 190(ICOR)が主要な制御剤(controller)構成単位であるが、この分子は更に3個の立体障害のあるアミン官能基を含むため特に重要であり、これは再アミド化効果(reamidation effects)を可能とせずとも塩基度(basicity)を著しく向上させる。
【0096】
実施例24〜27
これらの実施例は、特に高い使用価値のある本発明のオリゴマーを含み、該オリゴマーは専ら、単官能的に作用する酸とアミンを組合せることにより製造され、塩基に対する酸のモル比が1:1となるよう等量に制御される。特定のカルボン酸と特定のアミンの各々が一緒に使用され、これによりポリアミド成形コンパウンドに著しい安定化効果を示す構造要素が一緒に含まれる。酸がMOXの場合には、ポリアミド成形コンパウンドの熱安定性を向上させるのは立体障害のあるフェノール基であり、アミンがTACの場合には、耐候安定化に有効であると当技術で既知なのは立体障害のあるアミン構造(HALS)である。TACは、酸捕収剤(acid collector)としての更なる効果を有し、このようなオリゴマーを使用すると加水分解安定性も改善される。
【0097】
本発明のこれらのオリゴマーは、高い流動性と良好な離型性のために共通してアルキル基を含み、熱安定性を改善するために立体障害のあるフェノール基を含み、特に改善された耐候安定性及び加水分解安定性のために立体障害のあるアミン構造を含む。この特定の構造をもつ構成のために、有利な塩基度(basicity)が、高比率で、且つ使用中に分解効果が生じることなく達成される。
【0098】
比較例28並びに実施例29,30及び31
これらの実施例においては、PA-12溶融物の挙動が比較され、実施例1に記載されたように該溶融物は基本的な構造のPA12オリゴマーを含む。
【0099】
実施例は次の表5に要約され、使用されるポリアミド及び添加剤は以下の通りである:
a)連鎖反応制御剤(chain-controller)を使用せずに製造され、末端基としてCOOH 30mmol/kg、NH2 23mmol/kgを有する高粘性PA-12
b)アミノ末端基が僅かに過剰となるよう、COOH 20mmol/kg、NH2 50mmol/kgに調節された高粘性PA-12
【0100】
c)5mmol/kg未満のCOOHと69mmol/kgのNH2を有する本発明のPA-12オリゴマー
d)50mmol/kgのCOOHと20mmol/kgのNH2を有する通常のPA-12オリゴマー
【0101】
全ての配合物は、0.3wt%のイルガノックス(Irganox) 245及び0.2wt%のイルガフォス (Irgafos) 168(バーゼルにあるチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba SC)(株)による安定剤)の各々により熱安定化された。混合物は、コリン(Collin)社の実験用押出機、ティーチライン(Teachline)により、材料温度250℃及び回転速度150rpm及び押出量各3kg/hで配合され、続いて粒質物は含水量が0.18wt%となるよう調節された。その後、m-クレゾール中0.5%溶液にて、標準的な規格に従い相対溶液粘度が決定された。
【0102】
続いて、該粒質物は275℃にて、5kgの荷重によりMVR測定に使用され、4分及び20分の融解時間の後に各MVR値が決定された。熱負荷によるポリマーの分解を特徴付けるため、付随の溶融コーン(melting cone)により相対粘度も測定された。
【0103】
結果は以下の通りである。
比較例28においては、オリゴマーが、残留率50mmol/kgのカルボキシル末端基と共に使用され、高分子量のPA12が著しく分解するが、これはMVR値の劇的な増加と相対粘度値の著しい低下により示される。対照的に、実施例29〜31においては、過剰のアミノ基を持つ本発明のポリアミドオリゴマーが使用され、分解は20分の融解時間の後でさえ僅かである。MVR及び相対粘度は高い含水量にもかかわらず、殆ど変化しない。実施例29,30,31及び比較例28の成形コンパウンドから、衝撃引張強さの試験片が射出成形により作られ、続いて水中130℃にて加水分解試験を実施した。比較例28からの衝撃引張試験片上には、加水分解によるかなりの分解が生じていた。672時間(28日間に相当)保存した後、衝撃引張強さは依然として88kJ/m2であり、これは初期値のたった13%に相当する。対照的に、実施例29〜31からの試験体は、水中130℃において同じ期間保存した後は、加水分解による分解はかなり小さいものであった(表5)。
【0104】
本発明の配合物は、以下のように異なる:実施例29では、本発明のPA12オリゴマーが、重量比率の小さい水酸化マグネシウムと共に通常のポリアミドに添加され、実施例30では、ポリアミド12と、アミノ末端基を過剰に有するオリゴマーが使用され、実施例31では、この配合物は更にある種の水酸化マグネシウムを含む。
【0105】
これら実施例の結果は、適切なポリアミド配合物中で本発明のポリアミドオリゴマーを一緒に使用することにより、増大した使用価値があり、加工に適した成形コンパウンドが分解せずに生じることを見事に証明している。
【0106】
【表4】

【0107】
実施例32,33及び34

実施例1のような半工業的規模での製造

比率

32:TRI:SS:LC6=1:2:12
33:TRI:SS:LC6=1:2:5
34:TRI:SS:LC6=1:2:7
【0108】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】図1は、本発明のポリアミドオリゴマーの粘度曲線をダイアグラムの形式で示すものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直鎖又は分岐鎖構造を有し、800〜5000g/molの数平均モル質量(molar mass)を有し、少なくとも一部がNH2末端基である塩基性末端基とCO2H末端基とで部分的に形成される末端基を有し、ポリアミドを生成するモノマーの縮合により製造可能なポリアミドオリゴマーであって、NH2末端基の濃度が最大で300mmol/kgであり、これらの末端基がカルボキシル末端基に対する比率で過剰に存在し、但し、NH2及びCO2H末端基濃度の合計が全ての末端基の濃度よりも低いことを特徴とするポリアミドオリゴマー。
【請求項2】
NH2末端基の前記濃度が最大で100mmol/kgであることを特徴とする請求項1記載のポリアミドオリゴマー。
【請求項3】
塩基性末端基の前記濃度が少なくとも20mmol/kgであることを特徴とする請求項1又は2記載のポリアミドオリゴマー。
【請求項4】
塩基性末端基の前記濃度が少なくとも50mmol/kgであることを特徴とする請求項3記載のポリアミドオリゴマー。
【請求項5】
カルボキシル末端基に対するNH2末端基の比率が少なくとも2:1であることを特徴とする請求項1ないし4の少なくとも1項に記載のポリアミドオリゴマー。
【請求項6】
前記塩基性末端基が、第一級アミノ末端基、第二級アミノ末端基、第三級アミノ末端基又はカルボキシレートから選択されることを特徴とする請求項1ないし5の少なくとも1項に記載のポリアミドオリゴマー。
【請求項7】
ポリアミドを形成するモノマー、ジアミン及び/又はジカルボン酸及び/又はアミノ酸及び/又はラクタムに加えて、更に、縮合反応に関して単官能的に作用し、アミン及び/又はカルボン酸から選択される構造要素が、これら単官能性の構造要素により、前記末端基が合計で少なくとも50%になるまで形成されるように使用されることを特徴とする請求項1ないし6の少なくとも1項に記載のポリアミドオリゴマー。
【請求項8】
単官能性の構造要素により60〜80%の末端基が形成されることを特徴とする請求項7記載のポリアミドオリゴマー。
【請求項9】
前記構造要素がヒンダードアミン及び/又は立体障害のあるフェノールであることを特徴とする請求項7又は8記載のポリアミドオリゴマー。
【請求項10】
前記構造要素が式I〜IVにより定義されることを特徴とする請求項9記載のポリアミドオリゴマー。
【化1】

【請求項11】
前記オリゴマーを塩基に適用する前又は適用する間に、存在する可能性のある遊離のカルボキシル基がカルボキシレート基に脱プロトン化されたことを特徴とする請求項1ないし10の少なくとも1項に記載のポリアミドオリゴマー。
【請求項12】
アルカリ又はアルカリ土類水酸化物、特には水酸化マグネシウムが塩基として使用されたことを特徴とする請求項11記載のポリアミドオリゴマー。
【請求項13】
ポリアミド樹脂等の追加の熱可塑性樹脂と共にマスターバッチキャリアーを形成することを特徴とする請求項1ないし12の少なくとも1項に記載のポリアミドオリゴマー。
【請求項14】
マスターバッチを製造するためのマスターバッチキャリアーとしての、請求項1ないし13の少なくとも1項に記載のポリアミドオリゴマーの使用。
【請求項15】
前記マスターバッチが、低粘性の溶融物中に混ぜ込まれた添加剤を含有することを特徴とする請求項14記載の使用。
【請求項16】
前記マスターバッチが、塩基的に作用する化合物(basically acting compounds)、安定化剤、加工助剤、着色剤及び顔料、及び抗菌性添加剤等の、実用時に重要な追加の化合物を含有することを特徴とする請求項14又は15の1項に記載の使用。
【請求項17】
プラスチック材料成形コンパウンド、特にはポリアミド成形コンパウンド中の添加剤としての、請求項1ないし13の1項に記載のポリアミドオリゴマーの使用。
【請求項18】
前記添加剤が、流動性向上剤、加水分解、熱及び紫外線に対する安定剤、並びに/又は加工薬剤として機能することを特徴とする請求項17記載の使用。
【請求項19】
粉末、特に超微粒粉末の形態における、請求項1ないし13の少なくとも1項に記載のポリアミドオリゴマーの使用。
【請求項20】
前記粉末が、粉末射出成形において、セラミックス及び/又は金属用のバインダーシステム(binder system)又は結合樹脂(binding resin)として使用されることを特徴とする請求項19記載の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2008−540780(P2008−540780A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511581(P2008−511581)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【国際出願番号】PCT/EP2006/003753
【国際公開番号】WO2006/122633
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(507233291)エムズ−ヒェミー・アクチェンゲゼルシャフト (6)
【Fターム(参考)】