説明

ポリアミド系多層フィルム

【課題】熱に対する寸法安定性に優れ、かつ乾燥状態及び湿潤状態においても各層間の接着性に優れるポリアミド系多層フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】スルホン基含有ポリエステル層(C1層)、ポリアミド系共重合体層(B1層)及び脂肪族ポリアミド層(A層)の少なくとも3層をこの順に有するポリアミド系多層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱に対する寸法安定性及び乾燥状態、湿潤状態においても各層間の接着性に優れるポリアミド系多層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からナイロン樹脂を含むポリアミド系多層フィルムは、ガスバリア性、強靭性、耐ピンホール性等を有するフィルムとして各方面で多用されている。
【0003】
このポリアミド系多層フィルムは、上記の様な優れた特性を有するものの、例えば、食品等の包装フィルムに用いた場合には、内容物の臭いが漏れたり、水との接触により吸湿して包装フィルムの寸法が変化したりする問題を有していた。これでは、内容物の変質や商品価値の低下につながり好ましくない。
【0004】
そのため、包装フィルムには、高い保香性、吸湿に対する寸法安定性、防湿性等が要求される。特に、より過酷なボイル処理及びレトルト処理用の包装フィルムとして用いる場合には、より高い防湿性、吸湿に対する寸法安定性及び熱に対する寸法安定性が要求される。
【0005】
このような要求品質を満たすものとして、ポリアミド層とポリエステル層の間にスルホン基含有ポリエステルからなる接着層を設けるポリアミド系多層フィルムが開示されている。
【0006】
しかし、開示されているポリアミド系多層フィルムは、熱寸法安定性及び吸湿寸法安定性に優れているものの、ボイル処理及びレトルト処理時における水中及び超高湿度下において、接着層とポリアミド層との間で層間強度が低下し、容易にはがれる不具合があった。
【特許文献1】特開2008−100496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、熱に対する寸法安定性に優れ、かつ乾燥状態及び湿潤状態においても各層間の接着性に優れるポリアミド系多層フィルムを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記問題に鑑み、鋭意研究を行った結果、スルホン基含有ポリエステル層(C1層)、ポリアミド系共重合体層(B1層)及び脂肪族ポリアミド層(A層)の少なくとも3層をこの順に有することにより、上記課題が解決されたポリアミド系多層フィルムが得られることを見出した。本発明はこのような知見に基づき、完成されたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、以下のポリアミド系多層フィルム、包装用袋及び包装物に係る。
【0010】
項1.スルホン基含有ポリエステル層(C1層)、ポリアミド系共重合体層(B1層)及び脂肪族ポリアミド層(A層)の少なくとも3層をこの順に有するポリアミド系多層フィルム。
【0011】
項2.結晶性ポリエステル層(D1層)、スルホン基含有ポリエステル層(C1層)、ポリアミド系共重合体層(B1層)及び脂肪族ポリアミド層(A層)の少なくとも4層をこの順に有するポリアミド系多層フィルム。
【0012】
項3.結晶性ポリエステル層(D1層)、スルホン基含有ポリエステル層(C1層)、ポリアミド系共重合体層(B1層)、脂肪族ポリアミド層(A層)、ポリアミド系共重合体層(B2層)及びスルホン基含有ポリエステル層(C2層)の少なくとも6層をこの順に有するポリアミド系多層フィルム。
【0013】
項4.結晶性ポリエステル層(D1層)、スルホン基含有ポリエステル層(C1層)、ポリアミド系共重合体層(B1層)、脂肪族ポリアミド層(A層)、ポリアミド系共重合体層(B2層)、スルホン基含有ポリエステル層(C2層)及び結晶性ポリエステル層(D2層)の少なくとも7層をこの順に有するポリアミド系多層フィルム。
【0014】
項5.前記ポリアミド系多層フィルムの総厚みが10〜80μmである、項1〜4のいずれかに記載のポリアミド系多層フィルム。
【0015】
項6.ポリアミド層((A)層、(B1層)及び(B2層))の総厚みが、ポリアミド系多層フィルムの総厚みに対して30〜95%である、項1〜5のいずれかに記載のポリアミド系多層フィルム。
【0016】
項7.項1〜6のいずれかに記載のポリアミド系多層フィルムを2軸延伸することにより得られるポリアミド系多層フィルム。
【0017】
項8.項1〜7のいずれかに記載のポリアミド系多層フィルムの一方の面に、シール層をラミネートしてなる包装用フィルム。
【0018】
項9.項8に記載の包装用フィルムを袋状にして、シール層面同士をヒートシールして得られる包装用袋。
【0019】
項10.項9に記載の包装用袋に内容物を充填してなる包装物。
【発明の効果】
【0020】
本発明のポリアミド系多層フィルムは、熱に対する寸法安定性に優れ、かつ、乾燥状態及び湿潤状態における各層間の接着性に優れている。このような優れた特徴を有する本発明のポリアミド系多層フィルムは、包装用フィルムとして好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
1.ポリアミド系多層フィルム
以下、本発明のポリアミド系多層フィルムの各構成について詳述する。なお、以下、ポリアミド系多層フィルムを単に多層フィルムと略記することがある。
【0022】
本発明のポリアミド系多層フィルムは、スルホン基含有ポリエステル層(C1層)、ポリアミド系共重合体層(B1層)及び脂肪族ポリアミド層(A層)の少なくとも3層をこの順に有する。なお、この3層のみを有するのではなく、他の層を有していてもよい。
【0023】
3層フィルム
<(A)層>
(A)層は、本発明の多層延伸フィルムに、熱に対する寸法安定性等の機能を付与するものである。
【0024】
(A)層は、後述のポリアミド系共重合体を除く脂肪族ポリアミドを主成分として含有する。(A)層において、脂肪族ポリアミドは必須成分であるが、本発明の効果を損なわない範囲内において、他のポリアミド成分(ポリアミド系共重合体、芳香族ポリアミド等)、公知の耐屈曲性改良剤、無機又は有機添加剤等を配合することもできる。
【0025】
脂肪族ポリアミドとは、脂肪族鎖骨格を主とするポリアミドである。脂肪族ポリアミドの製法としては限定されないが、ジアミンと二塩基酸との重縮合、ラクタムの開環重合、アミノカルボン酸の重縮合等によって得ることができる。脂肪族ポリアミドとしては、具体的には、ポリカプラミド(ナイロン−6)、ポリ−ω−アミノヘプタン酸(ナイロン−7)、ポリ−ω−アミノノナン酸(ナイロン−9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン−11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン−12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン−2,6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン−4,6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン−6,10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン−6,12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン−8,6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン−10,8)等を例示できる。これらの脂肪族ポリアミドは、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0026】
これらのなかでも、ナイロン−6、ナイロン−6,6等が好ましく、ナイロン−6がより好ましい。
【0027】
また、他のポリアミド成分であるポリアミド系共重合体は、ナイロン−6等の脂肪族ナイロンと他の成分との共重合体等が挙げられる。好ましくは、ナイロン−6と他のナイロン成分との共重合体である、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン−6/12)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸共重合体(ナイロン−6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン−6/6,6)、エチレンアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン−6/6,6/6,10)等である。具体例としては、UBEナイロン5023B(宇部興産(株)製)、UBETERPALEX6434B(宇部興産(株)製)等が挙げられる。
【0028】
脂肪族ポリアミドとポリアミド系共重合体とを組み合わせる場合、(A)層は脂肪族ポリアミド(特にナイロン−6又はナイロン−6,6、なかでもナイロン−6)を主成分として含有するが、(A)層中には脂肪族ポリアミドが60〜100重量%程度、好ましくは70〜100重量%程度、より好ましくは80〜100重量%程度含有している。また、(A)層中にはポリアミド系共重合体が0〜40重量%程度、好ましくは0〜30重量%程度、より好ましくは0〜20重量%程度含有している。
【0029】
また、他のポリアミド成分である芳香族ポリアミドとしては、例えば、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン等の芳香族ジアミンと、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる結晶性芳香族ポリアミドが挙げられる。好ましくは、ポリメタキシレンアジパミド(MXD−ナイロン)等の結晶性芳香族ポリアミドである。具体例としては、S−6007、S−6011(いずれも三菱ガス化学(株)製)が例示される。
【0030】
或いは、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンとテレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等のジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる非晶性芳香族ポリアミド(アモルファスナイロン)が挙げられる。好ましくはヘキサメチレンジアミン−テレフタル酸−ヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸の共重合体等である。具体例としてはシーラーPA3426(三井・デュポンポリケミカル(株)製)、ノバミッドX21(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)等が例示される。
【0031】
好ましい脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドの組み合わせとしては、ナイロン−6とMXD−ナイロンの組み合わせ、ナイロン−6と非晶性芳香族ポリアミド(アモルファスナイロン)の組み合わせが挙げられる。
【0032】
脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドとを組み合わせる場合、(A)層は脂肪族ポリアミド(特にナイロン−6又はナイロン−6,6、なかでもナイロン−6)を主成分として含有するが、(A)層中には脂肪族ポリアミドが75〜100重量%程度、好ましくは80〜100重量%程度、より好ましくは85〜100重量%程度含有している。また、(A)層中には芳香族ポリアミドが0〜25重量%程度、好ましくは0〜20重量%程度、より好ましくは0〜15重量%程度含有している。
【0033】
<(B1)層>
(B1)層は、本発明の多層延伸フィルムに、後述する(C1)層との接着性等の機能を付与するものである。
【0034】
(B1)層は、ポリアミド系共重合体を主成分として含有する。(B1)層において、ポリアミド系共重合体は必須成分であるが、本発明の効果を損なわない範囲内において、他のポリアミド成分、公知の耐屈曲性改良剤、無機又は有機添加剤等を配合することもできる。
【0035】
ポリアミド系共重合体としては、ナイロン−6等の脂肪族ナイロンと他の成分との共重合体等が挙げられる。好ましくは、ナイロン−6と他のナイロン成分との共重合体である、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン−6/12)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸共重合体(ナイロン−6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン−6/6,6)、エチレンアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン−6/6,6/6,10)等である。具体例としては、UBEナイロン5023B(宇部興産(株)製)、UBETERPALEX6434B(宇部興産(株)製)等が挙げられる。これらのポリアミド系共重合体は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0036】
また、他のポリアミド成分としては、上記の<(A)層>で説明したナイロン−6、ナイロン−6,6等が使用できる。
【0037】
(B1)層は、ポリアミド系共重合体(特にナイロン−6と他のナイロン成分との共重合体、なかでもナイロン−6/6,6)を主成分として含有するが、(B1)層中には、ポリアミド系共重合体が80〜100重量%程度、好ましくは90〜100重量%程度含有していることが好ましい。
【0038】
<(C1)層>
(C1)層は、スルホン基含有ポリエステルを主成分として含有する。スルホン基含有ポリエステルを用いることにより、熱に対する寸法安定性及び(B1)層との接着性が飛躍的に向上する。
【0039】
スルホン基含有ポリエステルとは、例えば、ポリエステルを重縮合する時に、スルホン基を含有しないジカルボン酸及びジオールに加えて、スルホン基を含有するジカルボン酸及び/又はスルホン基を含有するジオールとを重縮合させることにより得られるものが挙げられる。
【0040】
この時用いられるジカルボン酸としては、例えば、o−フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、デカメチレンカルボン酸、これらの無水物及び低級アルキルエステル、5−スルホイソフタル酸、2−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、3−スルホフタル酸、5−スルホイソフタル酸ジアルキル、2−スルホイソフタル酸ジアルキル、4−スルホイソフタル酸ジアルキル、3−スルホイソフタル酸ジアルキル、これらのナトリウム塩及びカリウム塩等のスルホン基含有ジカルボン酸等が挙げられる。
【0041】
ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール)、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2、4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール類;2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロへキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロへキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール類;1,3−ジヒドロキシブタンスルホン酸、1,4−ジヒドロキシブタンスルホン酸等のスルホン基含有ジオール等が挙げられる。
【0042】
スルホン基含有ポリエステルの具体例としては、ジカルボン酸に由来する成分がテレフタル酸(99.5〜90モル%)及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸(0.5〜10モル%)で、ジオールに由来する成分がエチレングリコールであるスルホイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。スルホン基含有ポリエステルにおける、スルホン基を含有するジカルボン酸及び/又はジオールの共重合比率は、全ジカルボン酸及び/又はジオール成分に対して0.5〜20モル%、好ましくは1〜10モル%である。また、その極限粘度は、0.2〜0.9dl/g、好ましくは0.3〜0.8dl/gである。なお、スルホン基含有ポリエステルは市販されているものを用いてもよいし、当業者が容易に製造することもできる。
【0043】
なお、(C1)層には、本発明の効果に悪影響を与えない範囲で、必要に応じ上記のスルホン基含有ポリエステルと相溶性のある他の樹脂を含有していても良い。スルホン基含有ポリエステルと相溶性のある樹脂としては、例えば、スルホン基を含有しないポリエステル樹脂等が挙げられる。この場合、他の樹脂の含有量は、(C1)層の重量に対し50重量%未満が好ましい。また、スルホン基含有ポリエステルの含有量は、(C1)層の重量に対し50重量%以上、好ましくは80重量%以上である。
【0044】
4層フィルム
本発明のポリアミド系多層フィルムは、上記の(C1)層、(B1)層及び(A)層の3層のみからなる構成としてもよいが、さらに他の層を有していてもよい。
【0045】
例えば、(C1)層の外側に結晶性ポリエステル層(D1層)を設け、(D1)層/(C1)層/(B1)層/(A)層からなる4層フィルムとしてもよい。なお、この4層のみを有するのではなく、他の層を有していてもよい。このように、(D1)層を設けることで、熱に対する寸法安定性、湿潤状態における各層間の接着性をさらに向上させることができる。
【0046】
<(D1)層>
(D1)層は、結晶性ポリエステルを主成分として含有する。
【0047】
(D1)層を構成する結晶性ポリエステルとは、例えば、スルホン基を含有しないジカルボン酸とスルホン基を含有しないジオールとを重縮合させることにより得られるもの等が挙げられる。
【0048】
スルホン基を含有しないジカルボン酸としては、例えば、o−フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、デカメチレンカルボン酸、これらの無水物及び低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0049】
スルホン基を含有しないジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール)、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2、4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール類;2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロへキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロへキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール類等が挙げられる。
【0050】
これらの中でもジカルボン酸としてテレフタル酸、ジオールとしてエチレングリコールからなるポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
【0051】
なお、(D1)層には、本発明の効果に悪影響を与えない範囲で、必要に応じ上記の結晶性ポリエステルと相溶性のある他の樹脂を含有していても良い。結晶性ポリエステルと相溶性のある樹脂としては、例えば、非晶性ポリエステル等が例示できる。非晶性ポリエステルとは、JIS K 7121に基づく示差走査熱量測定において、融解熱量が観察されないポリエステル等である。このような特性を有するポリエステルであれば特に限定されないが、具体例としては、ジカルボン酸に由来する成分がテレフタル酸、ジオールに由来する成分がエチレングリコール(20〜80モル%)及びシクロヘキサンジメタノール(80〜20モル%)であるポリエステル;ジカルボン酸に由来する成分がテレフタル酸(20〜80モル%)及びイソフタル酸(80〜20モル%)、ジオールに由来する成分がエチレングリコールであるポリエステル等が好適である。この場合、他の樹脂の含有量は、(D1)層の重量に対し50重量%未満が好ましい。また、上記結晶性ポリエステル(特にPET)の含有量は、(D1)層の重量に対し50重量%以上、好ましくは80重量%以上である。
【0052】
(D1)層は通常最外層となるため、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、公知の無機または有機添加剤等を適宜配合することができる。無機または有機添加剤としては、アンチブロッキング剤、核剤、撥水剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、染料等を適宜配合することができる。
【0053】
6層フィルム
上記の4層フィルムにおいて、(A)層の外側に、さらに、ポリアミド系共重合体層(B2層)及びスルホン基含有ポリエステル層(C2層)をこの順に設け、(D1)層/(C1)層/(B1)層/(A)層/(B2)層/(C2)層からなる6層フィルムとしてもよい。なお、この6層のみを有するのではなく、他の層を有していてもよい。このように、(B2)層及び(C2)層を設けることで、カールしにくい構造とすることができる。
【0054】
なお、(B2)層を構成する具体例や配合量等は(B1)層と同様のものとすることができ、(C2)層を構成する具体例や配合量等は(C1)層と同様のものとすることができる。また、(B1)層と(B2)層、(C1)層と(C2)層の樹脂の種類や配合量等は、同じであっても違っていてもよい。通常、多層フィルム製造の簡便さの点から、B1)層と(B2)層、(C1)層と(C2)層では、同一種類及び同一割合の樹脂を用いることが好ましい。
【0055】
7層フィルム
上記の6層フィルムにおいて、(C2)層の外側に、さらに、結晶性ポリエステル層(D2層)を設け、(D1)層/(C1)層/(B1)層/(A)層/(B2)層/(C2)層/(D2)層からなる7層フィルムとしてもよい。なお、この7層のみを有するのではなく、他の層を有していてもよい。このように、(D2)層を設けることで、熱に対する寸法安定性、湿潤に対する寸法安定性をさらに改善できるだけでなく、フィルム構成を対称とすることで、よりカールしにくい構造とすることができる。また、両表面が結晶性ポリエステルとなることから、耐熱性の点から好ましい。
【0056】
層構成
本発明のポリアミド系多層フィルムの総厚みは、10〜80μm程度、好ましくは、12〜60μm程度である。かかる範囲では、フィルムの生産性、販売単価が良好となる点で好ましい。
【0057】
3層フィルムにおいて、各層の厚みは、(C1)層(1〜20μm)/(B1)層(0.5〜10μm)/(A)層(8.5〜75m)とすることが好ましい。
【0058】
4層フィルムにおいて、各層の厚みは、(D1)層(1〜20μm)/(C1)層(0.5〜10μm)/(B1)層(0.5〜10μm)/(A)層(8〜75μm)とすることが好ましい。
【0059】
6層フィルムにおいて、各層の厚みは、(D1)層(1〜20μm)/(C1)層(0.5〜10μm)/(B1)層(0.5〜10μm)/(A)層(6.5〜75μm)/(B2)層(0.5〜10μm)/(C2)層(1〜10μm)とすることが好ましい。
【0060】
7層フィルムにおいて、各層の厚みは、(D1)層(1〜20μm)/(C1)層(0.5〜10μm)/(B1)層(0.5〜10μm)/(A)層(6〜75μm)/(B2)層(0.5〜10μm)/(C2)層(0.5〜10μm)/(D2)層(1〜20μm)とすることが好ましい。
【0061】
3層フィルム、4層フィルム、6層フィルム及び7層フィルムのいずれにおいても、ポリアミド層((A)層、(B1)層及び(B2)層)の総厚みが、ポリアミド系多層フィルムの総厚みに対して30〜95%程度、好ましくは40〜90%程度である。
【0062】
本発明の多層延伸フィルムでは、各層の厚みを上記の範囲にすることにより、熱に対する寸法安定性並びに乾燥状態及び湿潤状態における各層間の接着性において優れたフィルムを得ることができる。
【0063】
2.ポリアミド系多層フィルムの製造方法
本発明のポリアミド系多層フィルムの製造方法は特に指定されないが、例えば、各層の原料を180〜290℃のシリンダー温度に設定された押出機で溶融混錬し、各層の順になるようにTダイより冷却水が循環するチルロール上に共押出せしめ、フラット状の多層フィルムを得る。
【0064】
得られたフィルムは、一軸延伸又は二軸延伸(同時二軸延伸、逐次二軸延伸)しても良い。延伸倍率は例えば、縦延伸(MD)2.5〜4.5倍、横延伸(TD)2.5〜5.0倍である。
【0065】
例えば、逐次二軸延伸の場合、50〜80℃のロール延伸機により2.5〜4.5倍に縦延伸し、更に50〜150℃の雰囲気のテンター延伸機により2.5〜5.0倍に横延伸せしめ、引き続いて同テンターにより100〜240℃雰囲気中で熱処理して得ることができる。本発明の多層延伸フィルムは、同時二軸延伸、逐次二軸延しても良く、得られた多層延伸フィルムは、必要ならばその両表面又は片表面にコロナ放電処理を施すこともできる。
【0066】
3.ポリアミド系多層フィルムの特徴
上記のようにして製造される本発明のポリアミド系多層フィルムは、優れた熱に対する寸法安定性並びに乾燥状態及び湿潤状態における各層間の優れた接着性を有している。そのため、包装用フィルムとして好適に用いられる。
【0067】
本発明のポリアミド系多層フィルムは、乾燥状態及び湿潤状態における各層間の優れた接着性を有している。幅10mmでフィルムを切り出し、乾燥下は23℃×65%RHの条件下で保管後、湿潤下は23℃の水中にて24時間保管後に切り出したフィルムが濡れた状態にて、(B1)層と(C1)層との界面及び(B2)層と(C2)層との界面(ポリアミド系共重合体層とスルホン基含有ポリエステル層との界面)で、23℃×65%RHの条件下にて、速度200mm/分でT字剥離試験を行う。この場合の剥離強度(N/cm)は、1.0N/cm以上、好ましくは1.5N/cm以上である。
【0068】
また、本発明のポリアミド系多層フィルムは優れた熱寸法安定性を有する。MD×TD=100mm×100mmの本発明のポリアミド系多層フィルムを、沸騰水に浸漬してボイル処理した後の熱収縮率が、MD方向で2.0%未満、さらに1.6%未満であり、TD方向で2.0%未満、さらに1.6%未満であるという特徴を有する。
【0069】
本発明のポリアミド系多層フィルムは、上記の特徴を有しているため、包装用フィルムとして好適に用いられる。ポリアミド系多層フィルムの一方の面に、シール層をラミネートして、包装用フィルムを製造する。これを、シール層を内側に向けて袋状にして、シール層面同士をヒートシールして袋状に加工して包装用袋を製造する。
【0070】
ここで、シール層としては、ヒートシール性を有する樹脂フィルムであればよく、例えば、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、CPP(無延伸ポリプロピレン)、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)等のポリオレフィンが挙げられる。ポリアミド系多層フィルムとシール層とをラミネートする方法は、公知の方法を採用することができる。また、ヒートシールする方法も公知の方法を採用することができる。
【0071】
得られた包装用袋に内容物を充填して包装物を得る。包装する内容物は特に限定は無いが、特に、スープ、蒟蒻、漬物等の水物系の食品や、餅、ウィンナー、調味料等の重量のある食品、詰め替え用のシャンプー、リンス、ボディソープ、洗剤等の重量のある液体を包装する場合に、本発明の効果が顕著に発揮される。
【0072】
包装用袋の形態としては、例えば、3方シール形、封筒形、カゼット形、平底形等の袋状形態、スパウトパウチ、詰替えパウチ等が例示される。
【0073】
さらに、本発明の多層フィルムは、高い透明性を有しているため、包装物としたとき内容物の目視が容易である。
【実施例】
【0074】
次に本発明を、以下の実施例及び比較例によって更に詳述するが、これに限定されるものではない。
【0075】
実施例1
(A)層として脂肪族ポリアミドであるナイロン−6「UBEナイロン−1022FDX23」(宇部興産(株)製)を用い、(B1)層としてポリアミド系共重合体であるナイロン6/6,6「UBEナイロン−5023B」(宇部興産(株)製)を用い、(C1)層としてスルホン基含有ポリエステルであるスルホイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート「ジカルボン酸に由来する成分がテレフタル酸(95モル%)及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸(5モル%)、ジオールに由来する成分がエチレングリコールであるポリエステル(極限粘度:0.50dl/g)」を用い、(D1)層として結晶性ポリエステルであるポリエチレンテレフタレート「ベルペットEFG6C」((株)ベルポリエステルプロダクツ製)を用いた。
【0076】
各層を構成する樹脂を、(A)層及び(B1)層を基材層、(C1)層及び(D1)層を表面層とし、(D1)層/(C1)層/(B1)層/(A)層の順序になるように、Tダイスより冷却水が循環するチルロール上に共押出しせしめて、フラット状の4層フィルムを得た。この4層フィルムを、65℃のロール延伸機により2.7倍に縦延伸し、次いで110℃の雰囲気のテンター延伸機により4.0倍に横延伸し、さらに同テンターにより210℃の雰囲気中で熱処理して厚さ15μmの4層フィルムを得た。各層の厚さは表1に記載した通りである。
【0077】
実施例2
(A)層として脂肪族ポリアミドであるナイロン−6「UBEナイロン−1022FDX23」(宇部興産(株)製)を用い、(B1)層としてポリアミド系共重合体であるナイロン6/6,6「UBEナイロン−5023B」(宇部興産(株)製)を用い、(C1)層としてスルホン基含有ポリエステルであるスルホイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート「ジカルボン酸に由来する成分がテレフタル酸(95モル%)及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸(5モル%)、ジオールに由来する成分がエチレングリコールであるポリエステル(極限粘度:0.50dl/g)」を用いた。
【0078】
各層を構成する樹脂を、(A)層及び(B1)層を基材層、(C1)層を表面層とし、(C1)層/(B1)層/(A)層の順序になるように、Tダイスより冷却水が循環するチルロール上に共押出しせしめて、フラット状の3層フィルムを得た。この3層フィルムを、65℃のロール延伸機により2.7倍に縦延伸し、次いで110℃の雰囲気のテンター延伸機により4.2倍に横延伸し、さらに同テンターにより210℃の雰囲気中で熱処理して厚さ15μmの3層フィルムを得た。各層の厚さは表1に記載した通りである。
【0079】
実施例3
(A)層として脂肪族ポリアミドであるナイロン−6「UBEナイロン−1022FDX23」(宇部興産(株)製)を用い、(B1)層及び(B2)層としてポリアミド系共重合体であるナイロン6/6,6「UBEナイロン−5023B」(宇部興産(株)製)を用い、(C1)層及び(C2)層としてスルホン基含有ポリエステルであるスルホイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート「ジカルボン酸に由来する成分がテレフタル酸(95モル%)及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸(5モル%)、ジオールに由来する成分がエチレングリコールであるポリエステル(極限粘度:0.50dl/g)」を用い、(D1)層及び(D2)層として結晶性ポリエステルであるポリエチレンテレフタレート「ベルペットEFG6C」((株)ベルポリエステルプロダクツ製)を用いた。
【0080】
各層を構成する樹脂を、(A)層、(B1)層及び(B2)層を基材層、(C1)層及び(D1)層を表面層、(C2)層及び(D2)層を裏面層とし、(D1)層/(C1)層/(B1)層/(A)層/(B2)層/(C2)層/(D2)層の順序になるように、Tダイスより冷却水が循環するチルロール上に共押出しせしめて、フラット状の7層フィルムを得た。この7層フィルムを、65℃のロール延伸機により2.7倍に縦延伸し、次いで110℃の雰囲気のテンター延伸機により4.0倍に横延伸し、さらに同テンターにより210℃の雰囲気中で熱処理して厚さ15μmの7層フィルムを得た。各層の厚さは表1に記載した通りである。
【0081】
実施例4
(A)層として脂肪族ポリアミドであるナイロン−6「UBEナイロン−1022FDX23」(宇部興産(株)製)を用い、(B1)層及び(B2)層としてポリアミド系共重合体であるナイロン6/6,6「UBEナイロン−5023B」(宇部興産(株)製)を用い、(C1)層及び(C2)層としてスルホン基含有ポリエステルであるスルホイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート「ジカルボン酸に由来する成分がテレフタル酸(95モル%)及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸(5モル%)、ジオールに由来する成分がエチレングリコールであるポリエステル(極限粘度:0.50dl/g)」を用い、(D1)層として結晶性ポリエステルであるポリエチレンテレフタレート「ベルペットEFG6C」((株)ベルポリエステルプロダクツ製)を用いた。
【0082】
各層を構成する樹脂を、(A)層、(B1)層及び(B2)層を基材層、(C1)層及び(D1)層を表面層、(C2)層を裏面層とし、(D1)層/(C1)層/(B1)層/(A)層/(B2)層/(C2)層の順序になるように、Tダイスより冷却水が循環するチルロール上に共押出しせしめて、フラット状の6層フィルムを得た。この6層フィルムを、65℃のロール延伸機により2.7倍に縦延伸し、次いで110℃の雰囲気のテンター延伸機により4.0倍に横延伸し、さらに同テンターにより210℃の雰囲気中で熱処理して厚さ15μmの6層フィルムを得た。各層の厚さは表1に記載した通りである。
【0083】
実施例5
各層の厚みを表1に記載した通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして4層フィルムを製造した。
【0084】
実施例6
各層の厚みを表1に記載した通りに変更したこと以外は、実施例3と同様にして7層フィルムを製造した。
【0085】
比較例1
(A)層として脂肪族ポリアミドであるナイロン−6「UBEナイロン−1022FDX23」(宇部興産(株)製)を用い、(C1)層としてスルホン基含有ポリエステルであるスルホイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート「ジカルボン酸に由来する成分がテレフタル酸(95モル%)及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸(5モル%)、ジオールに由来する成分がエチレングリコールであるポリエステル(極限粘度:0.50dl/g)」を用い、(D1)層として結晶性ポリエステルであるポリエチレンテレフタレート「ベルペットEFG6C」((株)ベルポリエステルプロダクツ製)を用いた。
【0086】
各層を構成する樹脂を、(A)層を基材層、(C1)層及び(D1)層を表面層とし、(D1)層/(C1)層/(A)層の順序になるように、Tダイスより冷却水が循環するチルロール上に共押出しせしめて、フラット状の3層フィルムを得た。この3層フィルムを、65℃のロール延伸機により2.7倍に縦延伸し、次いで110℃の雰囲気のテンター延伸機により4.0倍に横延伸し、さらに同テンターにより210℃の雰囲気中で熱処理して厚さ15μmの3層フィルムを得た。各層の厚さは表1に記載した通りである。
【0087】
比較例2
(A)層として脂肪族ポリアミドであるナイロン−6「UBEナイロン−1022FDX23」(宇部興産(株)製)を用い、(B1)層としてポリアミド系共重合体であるナイロン6/6,6「UBEナイロン−5023B」(宇部興産(株)製)を用い、(D1)層として結晶性ポリエステルであるポリエチレンテレフタレート「ベルペットEFG6C」((株)ベルポリエステルプロダクツ製)を用いた。
【0088】
各層を構成する樹脂を、(A)層及び(B1)層を基材層、(D1)層を表面層とし、(D1)層/(B1)層/(A)層の順序になるように、Tダイスより冷却水が循環するチルロール上に共押出しせしめて、フラット状の3層フィルムを得た。この3層フィルムを、65℃のロール延伸機により2.7倍に縦延伸し、次いで110℃の雰囲気のテンター延伸機により4.0倍に横延伸し、さらに同テンターにより210℃の雰囲気中で熱処理して厚さ15μmの3層フィルムを得た。各層の厚さは表1に記載した通りである。
【0089】
比較例3
(B1)層としてポリアミド系共重合体であるナイロン6/6,6「UBEナイロン−5023B」(宇部興産(株)製)を用い、(C1)層及び(C2)層としてスルホン基含有ポリエステルであるスルホイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート「ジカルボン酸に由来する成分がテレフタル酸(95モル%)及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸(5モル%)、ジオールに由来する成分がエチレングリコールであるポリエステル(極限粘度:0.50dl/g)」を用い、(D1)層及び(D2)層として結晶性ポリエステルであるポリエチレンテレフタレート「ベルペットEFG6C」((株)ベルポリエステルプロダクツ製)を用いた。
【0090】
各層を構成する樹脂を、(B1)層を基材層、(C1)層及び(D1)層を表面層、(C2)層及び(D2)層を裏面層とし、(D1)層/(C1)層/(B1)層/(C2)層/(D2)層の順序になるように、Tダイスより冷却水が循環するチルロール上に共押出しせしめて、フラット状の5層フィルムを得た。この5層フィルムを、65℃のロール延伸機により2.7倍に縦延伸し、次いで110℃の雰囲気のテンター延伸機により4.2倍に横延伸し、さらに同テンターにより210℃の雰囲気中で熱処理して厚さ18μmの5層フィルムを得た。各層の厚さは表1に記載した通りである。
【0091】
【表1】

【0092】
試験例
実施例1〜6及び比較例1〜3で得られたポリアミド系多層フィルムについて、以下に示す試験項目について測定を行った。その結果を表2に示す。
【0093】
[層間強度試験]
表面層と基材層との界面、基材層と裏面層との界面で剥離し、幅10mmでフィルムを切り出した。乾燥下(23℃×65%RHの雰囲気下で24時間保管後)及び湿潤下(23℃の水中にて24時間保管後)の条件にて、速度200mm/分でT字剥離試験を行った結果を表2に示す。
【0094】
[熱寸法安定性試験]
MD×TD=100mm×100mmのサンプルを熱処理し、98℃×60分にてボイル処理後の収縮率(%)を測定した。結果を表2に示す。
【0095】
【表2】

【0096】
実施例1〜6のポリアミド系多層フィルムは、乾燥下及び湿潤下のいずれにおいても、層間強度が優れていることがわかる。一方、(B1)層を有さない比較例1の多層延伸フィルムでは、湿潤下において層間強度が充分ではなかった。また、(C1)層を有さない比較例2の多層延伸フィルムでは、乾燥下及び湿潤下ともに、層間強度が充分ではなかった。
【0097】
また、実施例1〜6のポリアミド系多層フィルムは、熱収縮率が小さく、熱に対する寸法安定性に優れることがわかる。一方、(A)層を有さない比較例3は、熱収縮率が大きく、好ましくなかった。なお、(C1)層を有さない比較例2の多層延伸フィルムは、ボイル処理中に層間剥離してしまったために熱収縮率を測定できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホン基含有ポリエステル層(C1層)、ポリアミド系共重合体層(B1層)及び脂肪族ポリアミド層(A層)の少なくとも3層をこの順に有するポリアミド系多層フィルム。
【請求項2】
結晶性ポリエステル層(D1層)、スルホン基含有ポリエステル層(C1層)、ポリアミド系共重合体層(B1層)及び脂肪族ポリアミド層(A層)の少なくとも4層をこの順に有するポリアミド系多層フィルム。
【請求項3】
結晶性ポリエステル層(D1層)、スルホン基含有ポリエステル層(C1層)、ポリアミド系共重合体層(B1層)、脂肪族ポリアミド層(A層)、ポリアミド系共重合体層(B2層)及びスルホン基含有ポリエステル層(C2層)の少なくとも6層をこの順に有するポリアミド系多層フィルム。
【請求項4】
結晶性ポリエステル層(D1層)、スルホン基含有ポリエステル層(C1層)、ポリアミド系共重合体層(B1層)、脂肪族ポリアミド層(A層)、ポリアミド系共重合体層(B2層)、スルホン基含有ポリエステル層(C2層)及び結晶性ポリエステル層(D2層)の少なくとも7層をこの順に有するポリアミド系多層フィルム。
【請求項5】
前記ポリアミド系多層フィルムの総厚みが10〜80μmである、請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド系多層フィルム。
【請求項6】
ポリアミド層((A)層、(B1層)及び(B2層))の総厚みが、ポリアミド系多層フィルムの総厚みに対して30〜95%である、請求項1〜5のいずれかに記載のポリアミド系多層フィルム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のポリアミド系多層フィルムを2軸延伸することにより得られるポリアミド系多層フィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のポリアミド系多層フィルムの一方の面に、シール層をラミネートしてなる包装用フィルム。
【請求項9】
請求項8に記載の包装用フィルムを袋状にして、シール層面同士をヒートシールして得られる包装用袋。
【請求項10】
請求項9に記載の包装用袋に内容物を充填してなる包装物。

【公開番号】特開2010−149380(P2010−149380A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329633(P2008−329633)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】