説明

ポリアミド繊維の染色

本発明は、天然又は合成ポリアミドから成る繊維材料の染色方法であって、アルコキシル化されそして四級化された不飽和脂肪酸アミン、好適にはオレイルアミンが均染剤として用いられる染色方法に関する。本発明における化合物は均一染色をもたらしそして低濃度で効果的である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、均一な染色物を得るために均染剤の助けを借りて天然又は合成ポリアミドあるいはポリアミド含有材料を染色する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
均染剤又は均染助剤は、染色される繊維/繊維混合物を十分に濡らすことおよび染色処理の間に不均整(むら)に至らしめ得る染料の過剰に速い吸収を防止するという任務を有する、通常は表面活性布地染色助剤である。適した均染助剤としては、オレイルスルフォネート、脂肪アルコールスルフォネート、脂肪酸縮合生成物、アルキルおよびアルキルアリールポリグリコールエーテルおよび表面活性化学品一般が挙げられる。
【0003】
不均整は、
・ 繊維への染料の高いそして変動する親和性
・ 染料に対する繊維の高いそして変動する親和性
・ 布地又は繊維上での染料溶液の不均一拡散
・ 布地又は繊維上での温度差
によってひきおこされる。
【0004】
不十分な均整さは適した染色技術(布地内での溶液の拡散の改善、pH調整を含む)を用いそして均染助剤を利用して防止し得る。
均染助剤は主として染色速度を減らし、布地内での染料の移動速度を増加させそして染料の適合性を改善する。
同様に、均染助剤は、染料−繊維間への直接的な影響を持たない他の影響があり得るが、それでも染色へのプラスの影響を及ぼし得る。これらには改良された染料の溶解性又は染料の拡散安定性が挙げられる。
【0005】
均染助剤は上記の2つ以上の影響を同時に及ぼし得る。
均染助剤は、繊維との親和性を有するものと染料との親和性を有するものとの2つのグループに分けることができる。
染料との親和性を有する均染助剤は、その安定性が濃度依存的でありかつ通常は温度の上昇に伴って低下する、染料との付加化合物を形成する。
そのために、溶液中の染料と繊維内の染料との間の染料の分布平衡は溶液中の染料にシフトする。染料溶液中の染料濃度の増加は、染料の移動の結果として不均整に染色された布地の領域をならすことを可能とする。
【0006】
効果的な均染助剤は、吸収速度を減らすか又は移動速度を速めるのに十分な染料への親和性を有している。同様に、異種の染料の吸収作用が相違すると、染料混合物内の複数の染料が一定速度で作動することが可能であるように、平準化され得る。
また、染料との親和性を有する助剤は既に染色済みの材料を均染化するために用いられ得る。繊維との親和性を有する助剤は染料と競合して繊維に作動する。この競合反応は吸収速度を下げかつ移動速度を上げる。
【0007】
ポリアミドに重要な染料親和性均染助剤の種類は非イオン界面活性剤、カチオン化合物又はエトキシ化化合物である。
ポリアミドに重要な繊維親和性均染助剤の種類はカチオン化合物である。
ポリアミドに用いられる均染助剤は、例えば、EP−A−135198、EP−A−305858又はEP−A−593392に開示されているように、しばしばエトキシ化される部分的に四級化されたアミン化合物である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、さらに効果的な均染助剤についての必要性が依然として存続している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
意外にも、不飽和脂肪酸に基く特定の四級化され且つエトキシ化されたアミン化合物がポリアミドの均染助剤として非常に有用であることが見出された。
従って、本発明は、天然又は合成ポリアミドから成る繊維材料の染色方法であって、式(I)
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、Rは不飽和が1つ又は2つの炭素原子数12〜24のアルケニル、Xはアニオン、そして(n+m)は14〜29の範囲内の平均値を有する。)
の化合物の1種以上が均染剤の活性物質として用いられることを特徴とする方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
上記の方法は、Rがオレイン酸、リノール酸又はリノレン酸から誘導される基で、Xが塩化物、臭化物、沃化物、メトスルフェート、スルフェート、ホスフェート又はアセテートで、(n+m)が17〜19の範囲内の平均値を有するときに有利である。
【0013】
好適には、活性物質は、式(II)
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、(n+m)は17〜19の範囲内の平均値を有する。)
の化合物である。
【0016】
有利には、活性物質は、濃度が15重量%〜35重量%の範囲内である水溶液として用いられる。
水溶液中の活性物質の濃度が25重量%〜35重量%の範囲内でありそして0.1重量%〜5重量%の泡止め物質が追加の添加剤として含有されるときに特に有利である。
染色は、通常は2〜9の範囲内、好適には3〜8の範囲内、特に4〜7の範囲内のpHで行われる。
【0017】
液比が、バッチ染色の場合は3:1〜50:1の範囲内、好適には5:1〜20:1の範囲内であり、連続染色の場合は5:1〜500:1の範囲内、好適には20:1〜300:1の範囲内であるときにさらに有利である。
は無機又は有機のアニオン、例えばハライド(塩化物、臭化物、沃化物)、スルフェート、スルフォネート、メトスルフェート、エチルスルフェート、ヒドロキシド、ホスフェート、ホスフォネート又はアセテートである。塩化物が好適である。
【0018】
本発明における活性物質は、周知(CAS No.747377−35−1および133189−76−1)であり、そして対応する脂肪アミンのアルコキシル化によって簡単に調製できる。また、アルコキシル化は、不規則にあるいはブロックとして、エチレンオキサイドに代えてプロピレンオキサイド又はエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドを用いて行われ得るが、エトキシ化されたアミンだけが良好な結果をもたらす。さらに、この発明では、スルフォネート化されていないおよびスルフェート化されていない種類も良い効果を示すが、得られたアルコキシレートは完全に又は部分的にスルフォネート化された又はスルフェート化されたアルコキシレートであり得る。活性物質は一般的に15〜30のエチレンオキサイド(EO)単位、好適には17〜19個のEOを含む。特に、活性物質は、好適には1個のEOで四級化され、そして対イオンとして塩化物を含む17〜19個のEOを有するオレイルアミンである。
【0019】
上記の泡止め物質に加え、さらなる添加剤、例えば、殺生物質、必要に応じて又は必要なら拡散助剤又は湿潤剤、例えばスルフォネート化された又はスルフェート化されたアルキル、アルケニル又はアリールポリグリコールエーテル、スルフォネート化された又はスルフェート化されたアルキル、アルケニル又はアリールアミンポリグリコールエーテル、そして必要に応じて又は必要ならばシリコンオイルあるいはミネラルオイルに基いた消泡剤が用いられ得る。泡止め物質として2−エチルヘキシルイソノナンアミドおよび追加的な泡止め効果とともに湿潤成分として8個のエチレンオキサイドおよび4個のプロピレンオキサイド単位を持つC12−15のアルコールを用いることが好ましい。
【0020】
以下の実施例は本発明を説明するものである。特記しない限り、部および%は重量部および重量%である。
【実施例】
【0021】
試験方法
当業者に周知のいくつかの試験方法をここに説明する。
ロスマイルス(Ross−Miles)泡試験
一定の高さから一定量の液体が注がれた直後、そして1分間の待ち時間の後にも泡の量が測定される。
【0022】
内径60mmで内部の高さ430mmの1000mLメスシリンダーが用いられる。試験の液体はシリンダーの床面上の毛細管の出口から測定して600mmの高さから、長さ70mmそして内径2mmの毛細管を通じて2Lの分液漏斗から注ぎ出すことが可能である。
試験される500mLの溶液が分液漏斗中に入れられそして毛細管制御された流出速度約0.17L/分でメスシリンダー中に流出することを可能とする。全溶液が流出してすぐに、ストップウオッチをスタートさせそして全量(泡量+溶液量)がシリンダー目盛りを読み取られる。読み取りは1分後に繰り返される。
アルカリ泡特性が、12g/LのNaOH固体に相当する2°Be-NaOH又は30mL/Lの36°BeNaOHを使った、脱塩水中2°Be-NaOH液1L中2gの界面活性剤の濃度を用いて試験される。試験温度は20〜25℃の範囲内である。
【0023】
連続流れによる泡試験
材料: 1個のトールメスシリンダー、ぜん動ポンプ、ゴムホース、2個のガラス管、1個の長い方は、シリンダーの底上1cmから端部に達していて且つ、典型的なロスマイルス装置の平板に位置している短い第2のガラス管に、ポンプを通るゴムホースによって接続されている。
濃度: 中性又はアルカリ性の媒体中2g/Lの界面活性剤の試験溶液
【0024】
手順:1.00gの界面活性剤が正確に500mLの脱塩水に室温(常に全く同じ)で溶解されそして均一な溶液又は混合物が得られるまで混合される。この混合物は、泡が形成されないように注意深く1Lのメスシリンダー(予め脱塩水ですすいだ)中に導入される。1個のガラス管でぜん動ポンプによって液体をシリンダーの底(1cm上)からゴムホースを通って第2のガラス管に運び、液体はシリンダー中に落ちる。溶液は連続的に180mL/分で連続的に再循環される。1分後、5分後および10分後の泡高が書き留められる。10分後にポンプが止められる。ポンプのスイッチを切って1分後に泡高が同様に書き留められる。
【0025】
酸染料を使ったポリアミドへの均染効果:カラム試験
材料
ナイルスース(Nylsuisse)編み物 N66 Art.2044
染色装置
特定のカラム用挿入物を使ったカラースター(Colorstar)
液比
15:1;脱塩水
【0026】
染料、緩衝液
アゾ又はアントラキノンを基剤としたモノおよびジスルフォネート化された種々の濃度の酸染料、例えば、酸ブルー40、酸ブルー72、酸ブルー280、酸レッド57、酸レッド266、酸レッド299、酸オレンジ127、酸オレンジ156又はその混合物(クラリアント社の登録商標ナイロサン(Nylosan)Eおよび登録商標ナイロサン(Nylosan)N)を用いて染色を行った。
【0027】
染色液: 緩衝液pH5
(均染剤なしおよび0%、5%、1%、1.5%、2%の濃度シリーズ)
溶液循環
35mL/分、(5L/分kg=1/3循環/分)
染色手順
染色装置に溶液を導入して、流れが安定した後に繊維材料を続けて導入する。室温にて全出力で98℃まで加熱後、布地を98℃で15分間加熱し、次いで70℃まで冷却し戻した後に冷水で10分間すすぐ。
【0028】
評価
布地カラムを以下に示す:
用いた試料: 布地カラムを4等分に分ける。カラムから採取する試料:底部、次の
1/4、1/2、3/4そして上端。
評価: 基材カラムの浸透を評価する。評価は比較する製品と対照して視覚的
に行う。
【0029】
発明組成物(以下P1と呼ぶ)の組成:
【0030】
【表1】

【0031】
以下の生成物を同様に試験した:
P2: 14個のEOを有し、1個のEOで四級化され、対イオンがアセテートのオレ
イルアミン
P3: 15個のEOを有し、四級化されていないオレイルアミン
P4: 8個のEOの獣脂脂肪アミン
P5: 7個のEOを有し、1個のEOで四級化され、対イオンが塩化物の獣脂脂肪ア
ミン
【0032】
従来技術の比較製品:
V1: エトキシ化されたベヘニルアミンプロピルアミン(クラリアント社の登録商標
サンドゲン(Sandogen)NH)
V2: エトキシ化されそしてスルフォネート化された長鎖(C20〜C22)脂肪ア
ミンと同様に長鎖四級化した脂肪アミンとの混合物
【0033】
結果:
記号の意味:+++++=一番上の均整;++++=均整;+++=比較的均整;++=なお許容でき る;+=不均整;0=比較的不均整;-=非常に不均整;-----=全く不均整
泡試験において、最初の報告値は10分間循環後に得られた値でありそしてカッコ内の値はポンプが1分間停止後に得られた泡値を示す。
【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

【0036】
試験結果は、0.5%の少量の発明組成物がポリアミドカラムの浸透を確かにする、つまり布地試料が、助剤なしではあり得ないか達成されない均整に染色されるということを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然又は合成ポリアミドから成る繊維材料の染色方法であって、式(I)
【化1】

(式中、Rは不飽和が1つ又は2つの炭素原子数12〜24のアルケニル、Xはアニオン、そして(n+m)は14〜29の範囲内の平均値を有する。)
の化合物の1種以上が均染剤の活性物質として用いられることを特徴とする方法。
【請求項2】
Rがオレイン酸、リノール酸又はリノレン酸から誘導される基で、Xが塩化物、臭化物、沃化物、メトスルフェート、スルフェート、ホスフェート又はアセテートで、そして(n+m)が17〜19の範囲内の平均値を有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
活性物質が、式(II)
【化2】

(式中、(n+m)は17〜19の範囲内の平均値を有する。)
の化合物である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
活性物質が、その濃度が15重量%〜35重量%の範囲内である水溶液として用いられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
水溶液中の活性物質の濃度が25重量%〜35重量%の範囲内でありそして0.1重量%〜5重量%の泡止め物質が追加の添加剤として含有されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
染色が、2〜9の範囲のpHで行われる請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
液比が、バッチ染色の場合は3:1〜50:1の範囲内であり、連続染色の場合は5:1〜500:1の範囲内である請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
液比が、バッチ染色の場合は5:1〜20:1の範囲内であり、連続染色の場合は20:1〜300:1の範囲内である請求項7に記載の方法。

【公表番号】特表2009−511757(P2009−511757A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533966(P2008−533966)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【国際出願番号】PCT/EP2006/066549
【国際公開番号】WO2007/042379
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(596033657)クラリアント インターナショナル リミティド (48)
【Fターム(参考)】