説明

ポリアルケニル無水コハク酸の調整プロセス

【課題】 潤滑油組成物に添加された際に優れた分散特性を示す油溶性ヒドロカルビルコハク酸イミドを製造するのに特に適した、ポリイソブテニル無水コハク酸を提供する。
【解決手段】 まずポリアルケンを熱・エン反応で不飽和有機酸と反応させ、それに続いて追加量の不飽和有機酸性試薬の存在下でハロゲンガスに暴露させるという二段階のプロセスで、ポリアルケニル無水コハク酸を、少量の樹脂性の副産物あるいは塩素化された副産物とともに調製する。このプロセスにより、ポリイソブテニル骨格基に対する無水コハク酸官能基の比率の高いポリイソブテニル無水コハク酸を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、石油製品添加剤を調整するための中間化合物およびそのような中間化合物から作られる石油製品添加剤として好適なポリアルケニル無水コハク酸の化学合成に関連する。
【発明の背景および要約】
【0002】
ポリアルケニル無水コハク酸は、ヒドロカルビルポリアルケニルコハク酸イミド生成のための前駆体化合物として、石油製品業界で広く使用されている。ヒドロカルビルポリアルケニルコハク酸イミドは、燃料混合物中ではエンジンデポジットを減少させるために洗浄剤として、また潤滑油組成物中ではさらに潤滑油組成物の流動性を調整する特性を持った粒状物質の懸濁を助けるために分散剤として使用されてもよい。潤滑油添加剤を作るための、このような前駆体化合物として好適なポリアルケニル無水コハク酸の例に、ポリイソブテニル無水コハク酸(PIBSA)がある。PIBSAは通常、以下に挙げる二種類の従来型のプロセスのいずれかによって生成される。便宜上、PIBSAの生成プロセスを引例とするが、本開示は、PIBSAだけではなく、すべてのヒドロカルビルポリアルケニル/酸化合物の生成プロセスに関連することを意図している。
【0003】
第一のプロセスは無水マレイン酸とポリイソブテン(PIB)の間の直接的熱縮合反応からなり、当技術分野ではしばしば「熱・エン」反応と呼ばれる。この熱・エン反応では、炭素・炭素結合が、不飽和有機酸性試薬上のアルファ炭素とポリアルケンの末端のビニル炭素の間で形成される。望ましい反応収率を得るため、通常約1時間から約48時間にわたり、150℃以上の高温への持続的な暴露が要される。しかしながら、一般的に反応温度が高いと堆積樹脂(sedimentous resin)の形成の原因となるが、これは無水マレイン酸の重合および/または分解の結果であると考えられている。そのような不溶性の樹脂あるいは堆積物がかなりの量で形成されるため、PIBSAがヒドロカルビルコハク酸イミドのような他の生成物の調整において添加剤あるいは中間体として使用されるようになる前に、ろ過の段階が必要となる。さらに米国特許第5,644,001号によると、生成物中の望ましくない樹脂は、マレイン化生成物(樹脂化したおよび/または未反応の無水マレイン酸の存在に起因する)中での現実のサクシニル化と外見上のサクシニル化の間に顕著な相違を示すだけでなく、このような添加剤の線形特性に悪影響を及ぼす。
【0004】
第二のタイプのプロセスでは、まずPIBの塩素化が行われ、次に無水マレイン酸によって塩素化されたPIBの縮合が続く。このプロセスは、熱・エン反応プロセスよりも低い温度で、高収率を得ながら、多量の堆積物を形成することなく実行することができる。しかしこのプロセスによって得られたPIBSAには、残留塩素が含まれる。塩素含有物質や、内燃エンジン内でよく見られる条件下で発生するダイオキシンのような有害な副産物の形成の可能性にまつわる環境への懸念により、二番目のプロセスの使用は望ましくないものとなる。さらに塩素は、排気ガス処理システム用に使用される触媒に対し、すなわち触媒コンバータ中で、有毒であることも知られている。
【0005】
前述の、従来のPIBSA調製方法は、それ以上の処理が行われる前にPIBSAから分離されていなくてはならない、タール、樹脂、あるいはハロゲン化された副産物などを生成する副反応を伴う傾向がある。望ましくない樹脂性の副産物や、還元生成物のコハク酸化は、高温でエン反応が行われた場合や、ポリアルケニル化合物の数平均分子量が約1200以上である場合により多く見られる。従って、反応の経過の中で望ましくない副産物を生成せず、長時間の加熱や高圧、あるいは強酸の存在などのような過酷な条件を必要としない、比較的数平均分子量が高く、比較的高度にコハク酸化されたポリアルケニル無水コハク酸の向上された合成プロセスが引き続き必要となる。
【0006】
第一の態様に基づき、本開示の例示的実施例は、PIBSAのようなポリアルケニル無水コハク酸の作成プロセスを提供する。反応性の高いPIBと無水マレイン酸の混合物を、PIBの少なくとも約50重量%がPIBSAに転換されるまで加熱する。望ましくない、樹脂性の副産物あるいは塩素化された副産物の形成を妨げるのに十分な条件下で、少なくともいくらかの未反応のPIBをPIBSAに転換するため、追加量の無水マレイン酸を、後に塩素ガスと接触するこの混合物に加える。
【0007】
第二の態様に基づき、本開示の別の実施例では、前述のプロセスによって生成されたPIBSAから作られたヒドロカルビルコハク酸イミドが提供される。
【0008】
第三の態様に基づき、本開示のさらなる実施例は、上述のプロセスにより生成されたPIBSAから作られたヒドロカルビルコハク酸イミドを含む、潤滑剤成分を提供する。
【0009】
本明細書に記載されるように、本開示は、PIBSAのようなポリアルケニル無水コハク酸の、終局的な産物のポリアルケニル官能基に対するコハク酸官能基の比率が比較的高く、また望ましくない汚染物質のレベルが比較的低い、二段階の調製プロセスを提供する。この新規のプロセスはまた、数平均分子量が約1000以上から約3000未満のPIBSAの合成を可能にする。数平均分子量がより大きかったり、PIBSAのような化合物中でのポリアルケニル基に対するコハク酸基の比率がより高いと、分散剤が潤滑油混合物と組み合わされたときに、PIBSAから作られた分散剤の分散特性が向上される。従って、多量の潤滑油組成物に対してより少量の分散剤を使用することができ、その結果環境への影響が低減されると共に、潤滑剤組成物の生成コストが低減される。
【例示的実施例の詳細な説明】
【0010】
分散性の潤滑剤添加物としての使用に適した油溶性ヒドロカルビルコハク酸イミドの生成は、ポリアルケニル無水コハク酸の生成から始まる。本開示において、ポリアルケニル無水コハク酸は、数平均分子量が比較的高く、かつポリアルケニル基に対するコハク酸の比率の比較的高い生成物を生成することのできる二段階の反応プロセスで合成される。この反応プロセスの第一の段階は、約50重量%のポリアルケンが誘導体化されるまで、ポリアルケン化合物と不飽和有機酸性試薬の間の熱・エン反応を使用する。続いて、少なくともいくらかの誘導体化されなかったポリアルケンが、反応プロセスの第二段階でさらにポリアルケニル無水コハク酸に転換されるまで、追加量の不飽和有機酸性試薬と少量のハロゲンガスが反応に加えられる。
【0011】
このような目的のため、PIBがポリアルケン化合物として適切に使用される。末端二重結合の含有量が50モル%以上のPIBが、この反応に特に好適であることがわかっている。このようなPIBはまた、反応性の高いPIB(HR−PIB)とも呼ばれる。本開示の実施例での使用には、数平均分子量が約800から約5000のHR−PIBが特に適している。
【0012】
本開示の例示的実施例には、数平均分子量が約1000から約3000のHR−PIBが特に適している。このようなHR−PIBは市販されているし、またボーツェル(Boerzel)、その他による米国特許第4,152,499号、およびガトー(Gateau)、その他による米国特許第5,739,355号に記載されるように、三フッ化ホウ素のような塩素化されていない触媒の存在下でのイソブテンの重合によって合成することもできる。前述の熱・エン反応において使用された場合、HR−PIBは、反応性の増加により、堆積物の形成量を低下させるとともに、反応の転換率を高める原因となり得る

【0013】
開示されたプロセスの不飽和有機酸性試薬とは、不飽和置換カルボン酸試薬あるいは不飽和非置換カルボン酸試薬、例えば以下の化学式で表されるマレイン酸反応物あるいはフマル酸反応物のことを指す。
【0014】
【化1】

【0015】
式中、XおよびX’は、XおよびX’の少なくとも一つがアルコールをエステル化する、アンモニアまたはアミンでアミドまたはアミンを形成する、反応金属または塩基的に反応する金属化合物で金属塩を形成する、あるいはさもなければアシル化剤として機能することのできる木であるという条件で、同一あるいは異なったものである。一般的にXおよび/またはX’は−−OH、−−O−ヒドロカルビル、−−NHであり、総合するとXおよびX’は無水物を形成するように−−O−−であり得る。望ましくは、XおよびX’は、両方のカルボン酸の機能がアシル化反応を開始することのできるようなものである。
【0016】
無水マレイン酸は特に好適な不飽和酸性反応物である。その他の好適な不飽和酸性反応物として、モノフェニル無水マレイン酸のような電子不足のオレフィン;モノメチル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸、N−フェニルマレイミドおよびその他の置換マレイミド;イソマレイミド;フマル酸、マレイン酸、マレイン酸水素アルキルおよびフマル酸水素アルキル、フマル酸ジアルキルおよびマレイン酸ジアルキル、フマロニル酸およびマレアニン酸;そしてマレイン酸ニトリルおよびフマル酸ニトリルなどが挙げられる。
【0017】
プロセスの第二段階で必要となるハロゲンガスは、フッ素、塩素、臭素、あるいはヨウ素からなる群から選択されたガスであり得る。例示的な実施例において、塩素ガスは使用された好適なハロゲンガスである。プロセスの第二段階で使用されるハロゲンガスの量は比較的広範囲内で変化する。しかしながら、HR−PIBあるいは酸性反応物1モルにつき約0.25モルから1.5モルのモル比のハロゲンガスを使用することが望ましい。
【0018】
本開示の実施例において、プロセスの第一段階中に少量のルイス酸が使用されることもある。ルイス酸は熱・エン反応の触媒としては作用しないが、デゴニア(DeGonia)、その他による米国特許第5,071,919号に記載されるように、不飽和有機酸性試薬が自己重合して不溶性の樹脂となるのを疎外するように作用する。本開示での使用に適したルイス酸には、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、塩化鉄(III)、およびそれらの類似物が含まれる。本開示で必要とされる微量とは、ルイス酸の、約20ppmから約200ppmの濃度であり得る。
【0019】
現在開示しているプロセスの第一段階で、約1モルのHR−PIBに対して約2モルの無水マレイン酸の比率でのHR−PIBと無水マレイン酸の混合物、および微量の塩化アルミニウムが、約1時間から約48時間に及ぶ期間、約50重量%のHR−PIBが無水マレイン酸により誘導体化されるまで、約150℃から約250℃の間の高温に暴露される。
【0020】
当プロセスの第二段階では、追加量の無水マレイン酸がこの混合物と結合する。第二段階で混合物と結合する無水マレイン酸の量は、当プロセスで使用される無水マレイン酸の
総量の約0%から約50%である。追加量の無水マレイン酸は、約50重量%のHR−PIBが誘導体化された後に混合物と結合する。当プロセスの第二段階の間に、混合物中の1モルのHR−PIBにつき約0.25モルから約1.5モルの塩素ガスが混合物中に通され、HClガスが形成されるにつれて移行され除去される。
【0021】
当プロセスの第二段階は、少なくともいくらかの未反応のHR−PIBもまた無水マレイン酸によって誘導体化されるまで継続される。このようなプロセスにより、無水コハク酸(SA)のPIBに対する比率が少なくとも約1.5以下であるようなPIBSAが提供されることが分かっている。例5で立証されているように、当プロセスで使用されるHR−PIBの数平均分子量が約1600以上のときでさえも、SAのPIBに対するこのような比率を達成することが可能である。
【0022】
上記のプロセスによって生成されるPIBSAは、油溶性コハク酸イミドへの転換用に好適であり、特に潤滑油組成物用の分散剤として有用である。PIBSAのコハク酸イミドへの転換は当技術分野では周知のことであり、ポリアミンのPIBSAとの反応を通して達成することができ、米国特許第3,215,707号および米国特許第4,234,435号に記載されているように、当該ポリアミンはその化合物中に少なくとも一つの塩基性窒素を有している。好適なポリアミンは少なくとも3つの窒素原子、また約4から約20の炭素原子を有することがある。一つ以上の酸素原子もまた当ポリアミン中に存在し得る。
【0023】
本開示での使用に特に適したポリアミンは、アルキレンジアミンを含むポリアルキレンポリアミン群である。このようなポリアルキレンポリアミンには、約2つから約12の窒素原子、および約2つから約24の炭素原子が含有される。望ましくは、このようなポリアルキレンポリアミンのアルキレン基には約2つから約6つの炭素原子、より望ましくは約2つから約4つの炭素原子が含有される。
【0024】
特に好適なポリアルキレンポリアミンは、化学式:HN−−(RNH)−−Hで表されるもので、式中、Rは約2つから約6つの炭素原子、望ましくは約2つから約4つの炭素原子、最も望ましくは約2つの炭素原子を有する、直鎖または分岐鎖のアルキレン基、すなわちエチレン(−−CHCH−−)であり、aは1から約10までの整数、望ましくは1から約4、またもより望ましくは約3である。
【0025】
好適なポリアルキレンポリアミンの例としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、イソプロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンチレンジアミン、ヘキシレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジイソプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン、ジ−sec−ブチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、トリプロピレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジメチルアミノプロピルアミン、およびそれらの混合物などが含まれるが、これらに限定はされない。
【0026】
特に好適なポリアルキレンポリアミンは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、およびテトラエチレンペンタミンなどである。最も好適なのは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、およびトリエチレンテトラアミンである。
【0027】
本開示での使用に適したポリアミンの多くは市販されているが、それ以外のものは当技術分野で周知の方法によって調整される。例えば、アミンの調製方法およびそれらの反応については、1966年、オクスフォード、クラレンドン出版社発行、シジウィック著、「窒素の有機化学」(Sidgewick’s“The Organic Chemis
try of Nitrogen”,Clarendon Press,Oxford,1966);1957年、フィラデルフィア、サウンダース社発行、ノラー著、「有機化合物の化学」第2版(Noller’s“Chemistry of Organic Compounds”,Saunders,Philadelphia,2nd Ed.,1957);およびカーク−オスマー著、「化学技術の百科事典」第2版、特に第2巻99−116ページ(Kirk−Othmer’s“Encyclopedia of Chemical Technology”,2nd Ed.,especially Volume 2,pp.99−116)に詳述されている。
【0028】
上記のプロセスによって作られたPIBSAから生成されるヒドロカルビルコハク酸イミドは、従来のプロセスによって作られたPIBSAから生成されるその他のヒドロカルビルコハク酸イミドに比べ、数平均分子量が大きく、またコハク酸イミド官能連鎖のポリアルケン骨格基に対する比率も高い。従って、現在開示しているヒドロカルビルコハク酸イミドを潤滑剤組成物中に含有することにより、SAのPIBに対する比率が低い、あるいは数平均分子量が小さいヒドロカルビルコハク酸イミドを含有する潤滑剤組成物の分散特性に比べて、より優れた分散特性を潤滑剤にもたらすことができる。
【例】
【0029】
以下の非限定的な例は、SAのPIBに対する比率の高いPIBSAの生成における、従来のプロセスに比べた、現在開示しているプロセスの一つ以上の利点を比較例証している。以下の例において、例3および例5は、本明細書に記載の二段階のプロセスに基づいて作られており、SAのPIBに対する比率が比較的高いHR−PIBから比較的高い収率でPIBSA生成物を提供している。例1および例6は、反応性の高くないPIB(非−HR−PIB)を使用して作った生成物を例証する。また、例2および例4は、HR−PIBを使用し、一段階の熱・エン反応で作られたものである。
【0030】
【表1】

【0031】
第一の例において、数平均分子量が約1250の、従来の(すなわち反応性の高くない)PIBを、現在開示している二段階のPIBSA生成プロセスを用いて反応させ、SA:PIBが1.37、活性が68.1%である生成物を得た。
【0032】
例2において、数平均分子量が約1250のHR−PIBをPIBSA生成の熱・エンプロセスのみを使用して反応させ、SA:PIBが1.5、活性が88.1%である生成
物を得た。
【0033】
例3において、数平均分子量が約1300のHR−PIBを、現在開示している二段階のPIBSA生成プロセスを用いて反応させ、SA:PIBが1.8、活性が92.0%である生成物を得た。
【0034】
例4において、数平均分子量が約2100のHR−PIBをPIBSA生成の熱・エンプロセスのみを使用して反応させ、SA:PIBが1.5、活性が80.1%である生成物を得た。
【0035】
例5において、数平均分子量が約2100のHR−PIBを、現在開示している二段階のPIBSA生成プロセスを用いて反応させ、SA:PIBが1.8、活性が91.5%である生成物を得た。
【0036】
例6において、数平均分子量が約2100のPIBを、was reacted using a 塩素化とそれに続く熱反応を用いて反応させ、SA:PIBが1.6、活性が89.1%である生成物を得た。
【0037】
前述の例によって実証されているように、HR−PIBを使用して、開示された二段階のプロセスによって作られたPIBSAは、従来のプロセスあるいは反応性の高くないPIBを使用したプロセスに比べ、SA:PIBが約1.5以上であり、活性のより高い生成物をもたらす。開示されたプロセスの別の利点は、望ましくない副産物を増加させることなく、高分子量のポリアルケニル化合物を使用してもかまわないという点である。
【0038】
本明細書の全体を通した多くの箇所で、多数の米国特許が参照されている。このような引用文献はすべて、完全に説明されたものとして本開示に明白に組み込まれている。
【0039】
前述の実施例はその実行においてかなり変化する余地がある。従って当実施例は、上記に述べられた特定の例証に制限されることを意図したものではない。むしろ前述の実施例は、法律的に使用可能なそれらの対応範囲を含む、添付の請求項の精神および範囲内にある。
【0040】
当特許権者は、開示された実施例のいずれをも一般に提供することは意図しておらず、また開示された修正または変更は、それらがすべて完全に請求項の範囲内に収まらない状態になるまで、均等論により当実施例の一部であると見なされる。
【0041】
本発明の主な特徴及び態様を挙げれば以下のとおりである。
1.ポリアルケニルコハク酸または無水物の調製プロセスであり、
−反応性の高いポリアルケン化合物と不飽和酸性試薬との混合物を、約50重量パーセン
トのポリアルケン化合物が反応する熱・エン反応温度まで加熱し;
−続いてその混合物をハロゲンガスの存在下で追加量の不飽和酸性試薬と接触させ、混合
物中の未反応ポリアルケン化合物の少なくとも一部分を、ポリアルケニルコハク酸ま
たは無水物に転換させること
を含む、ポリアルケニルコハク酸または無水物の調製プロセス。
2.反応性の高いポリアルケン化合物に、末端二重結合の含有量が50モル%以上であるポリアルケンが含まれる、上記1に記載のプロセス。
3.反応性の高いポリアルケン化合物に、数平均分子量が約800から約5000のポリアルケンが含まれる、上記1に記載のプロセス。
4.反応性の高いポリアルケン化合物に、末端二重結合の含有量が50モル%以上であるポリイソブテンが含まれ、また当該のポリイソブテンの数平均分子量が約1000から約
3000である、上記1に記載のプロセス。
5.不飽和酸性試薬が、無水マレイン酸、モノフェニル無水マレイン酸、モノメチル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸、N−フェニルマレイミド、置換マレイミド、イソマレイミド、フマル酸、マレイン酸、マレイン酸水素アルキル、フマル酸水素アルキル、フマル酸ジアルキル、マレイン酸ジアルキル、フマロニル酸、マレアニン酸、マレイン酸ニトリル、およびフマル酸ニトリルからなる群から選択されたものである、上記1に記載のプロセス。
6.加熱段階に、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、および塩化鉄(III)からなる群から選択されたルイス酸を添加することがさらに含まれる、上記1に記載のプロセス。7.ルイス酸が約20ppmから約200ppmの濃度で存在する濃度で存在する、上記6に記載のプロセス。
8.温度が約150℃から約250℃である、上記1に記載のプロセス。
9.混合物に未反応ポリアルケン、未反応不飽和酸性試薬、および不飽和酸性試薬のポリアルケニル誘導体が含まれる、上記1に記載のプロセス。
10.ハロゲンガスが、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素からなる群から選択されたものである、上記1に記載のプロセス。
11.反応性の高いポリアルケン化合物1モルにつき、ハロゲンガスが約0.25モルから約1.5モル存在する、上記1に記載のプロセス。
12.上記1に記載のプロセスによって生成される、ポリアルケニル無水コハク酸化合物。
13.上記1に記載のプロセスによって生成される、ポリイソブテニル無水コハク酸化合物。
14.無水コハク酸のポリイソブテンに対する比率が約1.5から約2.0である、上記13に記載のポリイソブテニル無水コハク酸。
15.ポリイソブテニル無水コハク酸と、少なくとも一つの塩基性窒素原子を有するポリアミンとを反応させることを含む、上記13に記載のポリイソブテニル無水コハク酸からヒドロカルビルコハク酸イミドを作る方法。
16.上記14に記載のヒドロカルビルコハク酸イミドを含む、潤滑剤の成分。
17.分散性の潤滑剤添加物を作る方法であり、
−反応性の高いポリアルケン化合物と不飽和酸性試薬との混合物を、約50重量パーセン
トのポリアルケン化合物が反応する熱・エン反応温度まで加熱し;
−続いてその混合物をハロゲンガスの存在下で追加量の不飽和酸性試薬と接触させ、混合
物中の未反応ポリアルケン化合物の少なくとも一部分を、ポリアルケニルコハク酸ま
たは無水物に転換させること;また
−ポリイソブテニルコハク酸または無水物と、少なくとも一つの塩基性窒素原子を有する
ポリアミンとを反応させること
を含む、分散性の潤滑剤添加物を作る方法。
18.反応性の高いポリアルケン化合物に、末端二重結合の含有量が50モル%以上であるポリアルケンが含まれる、上記17に記載の方法。
19.反応性の高いポリアルケン化合物に、数平均分子量が約800から約5000のポリアルケンが含まれる、上記17に記載の方法。
20.反応性の高いポリアルケン化合物に、末端二重結合の含有量が50モル%以上であるポリイソブテンが含まれ、また当該のポリイソブテンの数平均分子量が約1000から約3000である、上記17に記載の方法。
21.不飽和酸性試薬が、無水マレイン酸、モノフェニル無水マレイン酸、モノメチル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸、N−フェニルマレイミド、置換マレイミド、イソマレイミド、フマル酸、マレイン酸、マレイン酸水素アルキル、フマル酸水素アルキル、フマル酸ジアルキル、マレイン酸ジアルキル、フマロニル酸、マレアニン酸、マレイン酸ニトリル、およびフマル酸ニトリルからなる群から選択されたものである、上記17に記載の方法。
22.加熱段階に、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、および塩化鉄(III)からなる群から選択されたルイス酸を添加することがさらに含まれる、上記17に記載の方法。23.ルイス酸が約20ppmから約200ppmの濃度で存在する、上記22に記載の方法。
24.温度が約150℃から約250℃である、上記17に記載の方法。
25.混合物に未反応ポリアルケン、未反応不飽和酸性試薬、および不飽和酸性試薬のポリアルケニル誘導体が含まれる、上記17に記載の方法。
26.ハロゲンガスが、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素からなる群から選択されたものである、上記17に記載の方法。
27.反応性の高いポリアルケン化合物1モルにつき、ハロゲンガスが約0.25モルから約1.5モル存在する、上記17に記載の方法。
28.上記17に記載の分散性の潤滑剤添加物を含む、潤滑剤組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアルケニルコハク酸または無水物の調製プロセスであり、
−反応性の高いポリアルケン化合物と不飽和酸性試薬との混合物を、約50重量パーセン
トのポリアルケン化合物が反応する熱・エン反応温度まで加熱し;
−続いてその混合物をハロゲンガスの存在下で追加量の不飽和酸性試薬と接触させ、混合
物中の未反応ポリアルケン化合物の少なくとも一部分を、ポリアルケニルコハク酸ま
たは無水物に転換させること
を含む、ポリアルケニルコハク酸または無水物の調製プロセス。
【請求項2】
反応性の高いポリアルケン化合物に、末端二重結合の含有量が50モル%以上であるポリアルケンが含まれる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
反応性の高いポリアルケン化合物に、数平均分子量が約800から約5000のポリアルケンが含まれる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
不飽和酸性試薬が、無水マレイン酸、モノフェニル無水マレイン酸、モノメチル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸、N−フェニルマレイミド、置換マレイミド、イソマレイミド、フマル酸、マレイン酸、マレイン酸水素アルキル、フマル酸水素アルキル、フマル酸ジアルキル、マレイン酸ジアルキル、フマロニル酸、マレアニン酸、マレイン酸ニトリル、およびフマル酸ニトリルからなる群から選択されたものである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
加熱段階に、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、および塩化鉄(III)からなる群から選択されたルイス酸を添加することがさらに含まれる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
温度が約150℃から約250℃である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
無水コハク酸のポリイソブテンに対する比率が約1.5から約2.0である、請求項1に記載のポリイソブテニル無水コハク酸。
【請求項8】
分散性の潤滑剤添加物を作る方法であり、
−反応性の高いポリアルケン化合物と不飽和酸性試薬との混合物を、約50重量パーセン
トのポリアルケン化合物が反応する熱・エン反応温度まで加熱し;
−続いてその混合物をハロゲンガスの存在下で追加量の不飽和酸性試薬と接触させ、混合
物中の未反応ポリアルケン化合物の少なくとも一部分を、ポリアルケニルコハク酸ま
たは無水物に転換させること;また
−ポリイソブテニルコハク酸または無水物と、少なくとも一つの塩基性窒素原子を有する
ポリアミンとを反応させること
を含む、分散性の潤滑剤添加物を作る方法。
【請求項9】
反応性の高いポリアルケン化合物に、末端二重結合の含有量が50モル%以上であるポリアルケンが含まれる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項8に記載の分散性の潤滑剤添加物を含む、潤滑剤組成物。

【公開番号】特開2008−189665(P2008−189665A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5566(P2008−5566)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(391007091)アフトン・ケミカル・コーポレーション (123)
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
【Fターム(参考)】