説明

ポリイソシアネート組成物およびポリウレタン樹脂

【課題】低粘度であり、かつ、イソシアネート基濃度が高いポリイソシアネート組成物、および、そのポリイソシアネート組成物が用いられるポリウレタン樹脂を提供すること。
【解決手段】実質的に溶剤を含まず、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート化反応により得られ、イソシアネート基濃度が25質量%を超過し、28質量%以下であるポリイソシアネート組成物を調製する。このポリイソシアネート組成物は、低粘度であり、かつ、高いイソシアネート基濃度を有する。そのため、このポリイソシアネート組成物が用いられるポリウレタン樹脂は、各種産業分野において、広範に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソシアネート組成物およびポリウレタン樹脂に関し、詳しくは、各種産業分野において用いられるポリイソシアネート組成物およびポリウレタン樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は、通常、ポリイソシアネート組成物と活性水素化合物との反応により製造されており、例えば、塗料、接着剤、エラストマーなどとして、各種産業分野において広範に使用されている。
近年、環境負荷の観点から、有機溶剤の使用を低減することが望まれており、有機溶剤の使用を抑制することのできるポリイソシアネート組成物として、低粘度のポリイソシアネート組成物が望まれている。
【0003】
そのようなポリイソシアネート組成物として、例えば、脂肪族・脂環族ジイソシアネートの少なくとも1種から誘導される、溶剤を含まない状態で、イソシアヌレート3量体濃度が60質量%から95質量%であり、モノアルコールから誘導されるアロファネート基/イソシアヌレート基の官能基数比率が1から20%であり、ウレトジオン2量体濃度が2から25質量%であり、ジイソシアネートモノマー濃度が1質量%以下であり、25℃における粘度が150から800mPa・sであり、イソシアネート基濃度が22から25質量%である、架橋性と貯蔵安定性が優れたポリイソシアネート組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2007−112936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、各種産業分野では、ポリウレタン樹脂の製造において、ポリイソシアネート組成物の使用量を低減しても、十分な機械物性を満足すべく、特許文献1に記載されるよりもイソシアネート基濃度の高いポリイソシアネート組成物も望まれている。
本発明の目的は、低粘度であり、かつ、イソシアネート基濃度が高いポリイソシアネート組成物、および、そのポリイソシアネート組成物が用いられるポリウレタン樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明のポリイソシアネート組成物は、実質的に溶剤を含まず、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート化反応により得られ、イソシアネート基濃度が25質量%を超過し、28質量%以下であることを特徴としている。
また、本発明のポリイソシアネート組成物は、イソシアヌレート化反応では、炭素数が1〜20のアルコールと、ペンタメチレンジイソシアネートとを反応させることが好適である。
【0006】
また、本発明のポリイソシアネート組成物は、スルホンアミド基を含有する化合物を、10〜5000ppm含有することが好適である。
また、本発明のポリウレタン樹脂は、上記ポリイソシアネート組成物と、活性水素化合物とを反応させることにより得られることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリイソシアネート組成物は、低粘度であり、かつ、高いイソシアネート基濃度を有する。
そのため、本発明のポリイソシアネート組成物は、使用量を低減しても十分な機械物性を満足することができる。そのため、本発明のポリイソシアネート組成物が用いられるポリウレタン樹脂は、各種産業分野において、広範に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のポリイソシアネート組成物は、実質的に溶剤を含まないポリイソシアネート組成物であって、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)のイソシアヌレート化反応により得ることができる。
本発明において、ペンタメチレンジイソシアネートとしては、例えば、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,4−ペンタメチレンジイソシアネート、1,3−ペンタメチレンジイソシアネート、または、これらの混合物が挙げられる。産業上、入手の容易さから、好ましくは、1,5−ペンタメチレンジイソシアネートが挙げられる。1,5−ペンタメチレンジイソシアネートは、1,5−ジアミノペンタンから、ホスゲン法やノンホスゲン法などの公知の方法により製造することができ、例えば、特開2003−212835号、特開2003−252846号、特開2004−262892号、あるいは、国際公開第2008/015134号に記載される方法により製造することができる。
【0009】
1,5−ジアミノペンタンは、例えば、化学大辞典(編集者;化学大辞典編集委員会、発行所;共立出版株式会社、1987年2月15日 第30刷発行)に記載されるように、カダベリンとも呼ばれており、リジンを原料として製造される。
ペンタメチレンジイソシアネートは、加水分解性塩素の濃度(HC)が上昇しやすい傾向にあるため、ホスゲン法を採用する場合において、HCを低減する必要がある場合には、例えば、ホスゲン化反応させ、脱溶剤させた後、留去させたペンタメチレンジイソシアネートを、例えば、窒素などの不活性ガスを通気しながら、例えば、150℃〜200℃、好ましくは、160〜190℃で、例えば、1〜8時間、好ましくは、3〜6時間加熱処理する。その後、精留処理することによって、ペンタメチレンジイソシアネートのHCを著しく低減することができる。
【0010】
本発明において、ペンタメチレンジイソシアネートの加水分解性塩素の濃度は、例えば、100ppm以下、好ましくは、80ppm以下、より好ましくは、60ppm以下、さらに好ましくは、50ppm以下である。
なお、加水分解性塩素の濃度は、例えば、JIS K−1556(2000)の附属書3に記載されている加水分解性塩素の試験方法に準拠して測定することができる。
【0011】
加水分解性塩素の濃度が100ppmを超過すると、イソシアヌレート化の反応速度が低下し、多量のイソシアヌレート化触媒(後述)を必要とする場合があり、イソシアヌレート化触媒を多量に用いると、得られるポリイソシアネート組成物の黄変度が高くなる場合や、数平均分子量が高くなり、粘度が高くなる場合がある。
本発明において、ポリイソシアネート組成物を得る方法としては、例えば、ペンタメチレンジイソシアネートとアルコール類とを反応させ、次いでイソシアヌレート化触媒の存在下にイソシアヌレート化反応させた後、未反応のペンタメチレンジイソシアネートを除去する方法、例えば、ペンタメチレンジイソシアネートのみをイソシアヌレート化した後、未反応のペンタメチレンジイソシアネートを除去し、得られたポリイソシアヌレートとアルコール類とを反応させる方法などが挙げられる。
【0012】
好ましくは、ペンタメチレンジイソシアネートとアルコールとを反応させ、次いでイソシアヌレート化触媒の存在下にイソシアヌレート化反応させた後、未反応のペンタメチレンジイソシアネートを除去する方法により、ポリイソシアネート組成物を得る。
本発明において、アルコール類としては、例えば、1価アルコール、2価アルコール、3価アルコール、4価以上のアルコールなどが挙げられる。
【0013】
1価アルコールとしては、例えば、直鎖状の1価アルコール、分岐状の1価アルコールなどが挙げられる。
直鎖状の1価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、n−ノナノール、n−デカノール、n−ウンデカノール、n−ドデカノール(ラウリルアルコール)、n−トリデカノール、n−テトラデカノール、n−ペンタデカノール、n−ヘキサデカノール、n−ヘプタデカノール、n−オクタデカノール(ステアリルアルコール)、n−ノナデカノール、エイコサノールなどが挙げられる。
【0014】
分岐状の1価アルコールとしては、例えば、イソプロパノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、イソペンタノール、イソヘキサノール、イソヘプタノール、イソオクタノール、イソノナノール、イソデカノール、5−エチル−2−ノナノール、トリメチルノニルアルコール、2−ヘキシルデカノール、3,9−ジエチル−6−トリデカノール、2−イソヘプチルイソウンデカノール、2−オクチルドデカノール、その他の分岐状アルカノール(C(炭素数、以下同様)5〜20)などが挙げられる。
【0015】
2価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、その他の直鎖状のアルカン(C7〜20)ジオールなどの直鎖状の2価アルコール、例えば、1,2−プロパンジオール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,2−トリメチルペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオール、その他の分岐状のアルカン(C7〜20)ジオールなどの分岐状の2価アルコール、例えば、1,3−または1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、1,3−または1,4−シクロヘキサンジオールおよびそれらの混合物、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAなどが挙げられる。
【0016】
3価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
4価以上のアルコールとしては、例えば、テトラメチロールメタン、D−ソルビトール、キシリトール、D−マンニトールなどが挙げられる。
また、これらアルコール類は、分子中に1つ以上のヒドロキシ基を有していれば、それ以外の分子構造は、本発明の優れた効果を阻害しない限り、特に制限されず、例えば、分子中に、エステル基、エーテル基、シクロヘキサン環、芳香環などを有することもできる。このようなアルコール類としては、例えば、上記1価アルコールとアルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなど)との付加重合物(2種類以上のアルキレンオキサイドのランダムおよび/またはブロック重合物)であるエーテル基含有1価アルコール、上記1価アルコールとラクトン(例えば、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトンなど)との付加重合物であるエステル基含有1価アルコールなどが挙げられる。
【0017】
これらアルコール類は、単独使用または2種類以上併用することができる。
アルコール類として、好ましくは、1価および2価アルコールが挙げられ、1価および2価アルコールとして、好ましくは、炭素数が1〜20の1価および2価アルコール、より好ましくは、炭素数が1〜15の1価および2価アルコール、さらに好ましくは、炭素数が1〜10の1価および2価アルコール、とりわけ好ましくは、炭素数が2〜6の1価および2価アルコールが挙げられる。また、1価および2価アルコールとして、好ましくは、分岐状の1価および2価アルコールが挙げられる。ポリイソシアネート組成物の粘度をより下げるために、最も好ましくは、1価アルコールが挙げられる。
【0018】
アルコール類は、得られるポリイソシアネート組成物において、その平均官能基数が2以上となるように使用され、その配合割合は、ペンタメチレンジイソシアネート100重量部に対して、アルコール類が、例えば、0.1〜5重量部、好ましくは、0.2〜3重量部である。
また、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアネート化反応においては、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、必要に応じて、上記したアルコール類と、例えば、チオール類、オキシム類、ラクタム類、フェノール類、βジケトン類などの活性水素化合物とを併用することができる。
【0019】
そして、本発明においては、ペンタメチレンジイソシアネートとアルコール類とを、得られるポリイソシアネート組成物において、そのイソシアネート基濃度が25質量%を超過し、28質量%以下となるように反応させる。
イソシアネート基濃度が上記範囲となるように、ペンタメチレンジイソシアネートとアルコール類とを反応させるには、ペンタメチレンジイソシアネートとアルコール類とを反応させた後、イソシアヌレート化触媒の存在下において、所定の反応条件でイソシアヌレート化反応させる。
【0020】
かかるイソシアヌレート化触媒としては、イソシアヌレート化に有効な触媒であれば、特に限定されず、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドやその有機弱酸塩、例えば、トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウムなどのトリアルキルヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドやその有機弱酸塩、例えば、酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸などのアルキルカルボン酸のアルカリ金属塩、例えば、上記アルキルカルボン酸の錫、亜鉛、鉛などの金属塩、例えば、アルミニウムアセチルアセトン、リチウムアセチルアセトンなどのβ−ジケトンの金属キレート化合物、例えば、塩化アルミニウム、三フッ化硼素などのフリーデル・クラフツ触媒、例えば、チタンテトラブチレート、トリブチルアンチモン酸化物などの種々の有機金属化合物、例えば、ヘキサメチルシラザンなどのアミノシリル基含有化合物などが挙げられる。
【0021】
具体的には、例えば、Zwitter ion型のヒドロキシアルキル第4級アンモニウム化合物などが挙げられ、より具体的には、例えば、N−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム−2−エチルヘキサノエート、N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチル−N−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム・ヘキサノエート、トリエチル−N−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム・ヘキサデカノエート、トリメチル−N−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム・フェニルカーボネート、トリメチル−N−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム・フォーメートなどが挙げられる。
【0022】
これらイソシアヌレート化触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
イソシアヌレート化触媒として、好ましくは、N−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム−2−エチルヘキサノエートが挙げられる。
イソシアヌレート化触媒の添加割合は、ペンタメチレンジイソシアネート100質量部に対して、例えば、0.001〜0.1質量部、好ましくは、0.002〜0.05質量部である。
【0023】
また、イソシアヌレート化を調節するために、例えば、特開昭61−129173号公報に記載されているような有機亜リン酸エステルなどを、助触媒として使用することもできる。
有機亜リン酸エステルとしては、例えば、有機亜リン酸ジエステル、有機亜リン酸トリエステルなどが挙げられ、より具体的には、例えば、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジフェニル(トリデシル)ホスファイトなどのモノフォスファイト類、例えば、ジステアリル・ペンタエリスリチル・ジホスファイト、ジ・ドデシル・ペンタエリスリトール・ジホスファイト、ジ・トリデシル・ペンタエリスリトール・ジホスファイト、ジノニルフェニル・ペンタエリスリトール・ジホスファイト、テトラフェニル・テトラ・トリデシル・ペンタエリスリチル・テトラホスファイト、テトラフェニル・ジプロピレングリコール・ジホスファイト、トリペンタエリスリトール・トリホスファイトなどの多価アルコールから誘導されたジ、トリあるいはテトラホスファイト類、さらに、例えば、炭素数が1〜20のジ・アルキル・ビスフェノールA・ジホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ・トリデシル)ホスファイトなどのビスフェノール系化合物から誘導されたジホスファイト類、水添ビスフェノールAホスファイトポリマー(分子量2400〜3000)等のポリホスファイト類、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスファイトなどが挙げられる。
【0024】
また、この反応では、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、例えば、2,6−ジ(tert-ブチル)−4−メチルフェノール、イルガノックス1010、イルガノックス1076、イルガノックス1135、イルガノックス245(以上、チバ・ジャパン社製、商品名)などの安定剤を添加することもできる。
所定の反応条件としては、例えば、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気、常圧(大気圧)下において、反応温度が、例えば、30〜100℃、好ましくは、40〜80℃であり、反応時間が、例えば、0.5〜10時間、好ましくは、1〜5時間である。
【0025】
また、この反応において、ペンタメチレンジイソシアネートとアルコール類とは、アルコール類のヒドロキシ基に対する、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、例えば、30以上、好ましくは、40以上、より好ましくは、60以上、通常、1000以下となる配合割合にて、配合される。
所定のイソシアネート基濃度に到達した後、上記したイソシアヌレート化触媒を添加して、イソシアヌレート化反応させる。
【0026】
この反応における、イソシアネート基の転化率は、例えば、5〜35質量%、好ましくは、5〜20質量%である。転化率が35質量%を超過すると、得られるポリイソシアネート組成物の数平均分子量が高くなり、溶解性、相溶性、NCO含量(イソシアネート基濃度)が低下し、粘度が高くなる場合がある。
なお、イソシアネート基の転化率は、例えば、高速GPC装置を用いた方法、NMR法などにより測定することができる。
【0027】
また、この反応では、必要により、公知の反応溶媒を配合してもよく、さらに、任意のタイミングで公知の触媒失活剤(例えば、リン酸、モノクロル酢酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ベンゾイルクロリドなど)を添加することもできる。
そして、反応終了後、未反応のペンタメチレンジイソシアネートは、必要により、蒸留などの公知の除去方法により、除去する。
【0028】
また、ポリイソシアネート組成物を得る方法として、ペンタメチレンジイソシアネートのみをイソシアヌレート化した後、未反応のペンタメチレンジイソシアネートを除去し、得られたポリイソシアネートとアルコール類とを反応させる方法(上記の後者の方法)を採用する場合においては、ポリイソシアネートとアルコール類との反応は、一般的なウレタン化反応である。このようなウレタン化反応の反応条件は、例えば、室温〜100℃、好ましくは、40〜90℃である。
【0029】
また、上記ウレタン化反応においては、必要に応じて、例えば、アミン類や有機金属化合物などの公知のウレタン化触媒を添加してもよい。
アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N−メチルモルホリンなどの3級アミン類、例えば、テトラエチルヒドロキシルアンモニウムなどの4級アンモニウム塩、例えば、イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類などが挙げられる。
【0030】
有機金属化合物としては、例えば、酢酸錫、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ラウリル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジメチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジメルカプチド、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジネオデカノエート、ジオクチル錫ジメルカプチド、ジオクチル錫ジラウリレート、ジブチル錫ジクロリドなどの有機錫系化合物、例えば、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛などの有機鉛化合物、例えば、ナフテン酸ニッケルなどの有機ニッケル化合物、例えば、ナフテン酸コバルトなどの有機コバルト化合物、例えば、オクテン酸銅などの有機銅化合物、例えば、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマスなどの有機ビスマス化合物などが挙げられる。
【0031】
さらに、ウレタン化触媒として、例えば、炭酸カリウム、酢酸カリウム、オクチル酸カリウムなどのカリウム塩が挙げられる。
これらウレタン化触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
また、本発明のポリイソシアネート組成物には、例えば、スルホンアミド基を含有する化合物を含有させることもできる。
【0032】
本発明において、スルホンアミド基を含有する化合物としては、例えば、芳香族スルホンアミド類、脂肪族スルホンアミド類などが挙げられる。
芳香族スルホンアミド類としては、例えば、ベンゼンスルホンアミド、ジメチルベンゼンスルホンアミド、スルファニルアミド、o−およびp−トルエンスルホンアミド、ヒドロキシナフタレンスルホンアミド、ナフタレン−1−スルホンアミド、ナフタレン−2−スルホンアミド、m−ニトロベンゼンスルホンアミド、p−クロロベンゼンスルホンアミドなどが挙げられる。
【0033】
脂肪族スルホンアミド類としては、例えば、メタンスルホンアミド、N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、N,N−ジメチルエタンスルホンアミド、N,N−ジエチルメタンスルホンアミド、N−メトキシメタンスルホンアミド、N−ドデシルメタンスルホンアミド、N−シクロヘキシル−1−ブタンスルホンアミド、2−アミノエタンスルホンアミドなどが挙げられる。
【0034】
これらスルホンアミド基を含有する化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
スルホンアミド基を含有する化合物として、好ましくは、芳香族スルホンアミド類が挙げられ、より好ましくは、o−またはp−トルエンスルホンアミドが挙げられる。
また、ポリイソシアネート組成物に、スルホンアミド基を含有する化合物を含有させる場合には、スルホンアミド基を含有する化合物を、ポリイソシアネート組成物に対して、例えば、10〜5000ppm、好ましくは、50〜4000ppm、より好ましくは、100〜3000ppm含有させる。
【0035】
スルホンアミド基を含有する化合物の含有量が5000ppmより多いと、ポリイソシアネート組成物の貯蔵工程、および、後述するポリウレタン樹脂の製造工程において、イソシアネート基濃度が変化する場合がある。一方、スルホンアミド基を含有する化合物の含有量が10ppm未満であると、ポリイソシアネート組成物の貯蔵工程、および、後述するポリウレタン樹脂の製造工程において、粘度、色相が大きく変化する場合がある。
【0036】
スルホンアミド基を含有する化合物の濃度は、例えば、H−NMR測定などによって求めることができる。なお、スルホンアミド基を含有する化合物は、その一部がイソシアネート基と反応するが、スルホンアミド基におけるN−H結合のプロトンに着目したNMR測定では、スルホンアミド基を含有する化合物として、スルホンアミド基を含有する化合物単体と、スルホンアミド基を含有する化合物およびポリイソシアネート組成物の反応物との総量を求めることができる。
【0037】
スルホンアミド基を含有する化合物を、ポリイソシアネート組成物に含有させる方法としては、特に制限されず、例えば、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート化反応において、ペンタメチレンジイソシアネートおよびアルコール類とともに、スルホンアミド基を含有する化合物を添加する方法、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート化反応により得られるポリイソシアネート組成物に、スルホンアミド基を含有する化合物を添加する方法などが挙げられる。
【0038】
このようにして得られるポリイソシアネート組成物は、イソシアネート基濃度が、25質量%を超過し、28質量%以下であり、好ましくは、25質量%を超過し、27質量%以下、より好ましくは、25質量%を超過し、26.5質量%以下である。
また、このようにして得られるポリイソシアネート組成物においては、イソシアネートモノマー濃度(未反応のペンタメチレンジイソシアネートの濃度)が、例えば、1質量%以下、好ましくは、0.7質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。
【0039】
また、このようにして得られるポリイソシアネート組成物の、25℃における粘度は、例えば、100〜5000mPa・s、好ましくは、200〜4000mPa・s、より好ましくは、200〜3000mPa・s、さらに好ましくは、200〜1000mPa・sである。
このようにして得られるポリイソシアネート組成物は、溶剤で希釈することなく、塗料、接着剤、その他、数多くの工業的用途に使用できるが、必要であれば、各種有機溶剤に溶解させて使用することもできる。
【0040】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、例えば、アセトニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのアルキルエステル類、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなどのグリコールエーテルエステル類、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、例えば、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、臭化メチル、ヨウ化メチレン、ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素類、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミドなどの極性非プロトン類などが挙げられる。
【0041】
さらに、有機溶剤としては、例えば、非極性溶剤(非極性有機溶剤)が挙げられ、これら非極性溶剤としては、脂肪族、ナフテン系炭化水素系有機溶剤を含む、アニリン点が、例えば、10〜70℃、好ましくは、12〜65℃の、低毒性で溶解力の弱い非極性有機溶剤や、ターペン油に代表される植物性油などが挙げられる。
かかる非極性有機溶剤は、市販品として入手可能であり、そのような市販品としては、例えば、ハウス(シェル化学製、アニリン点15℃)、スワゾール310(丸善石油製、アニリン点16℃)、エッソナフサNo.6(エクソン化学製、アニリン点43℃)、ロウス(シェル化学製、アニリン点43℃)、エッソナフサNo.5(エクソン製、アニリン点55℃)、ペガゾール3040(モービル石油製、アニリン点55℃)などの石油炭化水素系有機溶剤、その他、メチルシクロヘキサン(アニリン点40℃)、エチルシクロヘキサン(アニリン点44℃)、ガムテレピンN(安原油脂製、アニリン点27℃)などのターペン油類などが挙げられる。
【0042】
本発明のポリイソシアネート組成物は、これら有機溶剤と、任意の割合で混合することができる。
本発明のポリイソシアネート組成物は、低粘度であり、かつ、高いイソシアネート基濃度を有する。そのため、本発明のポリイソシアネート組成物は、使用量を低減しても、十分な機械強度を満足することができる。そのため、本発明のポリイソシアネート組成物が用いられるポリウレタン樹脂は、各種産業分野において、広範に用いることができる。
【0043】
本発明のポリウレタン樹脂は、上記ポリイソシアネート組成物と、活性水素化合物とを反応させることにより、得ることができる。
本発明において、活性水素化合物としては、例えば、ポリオール成分(水酸基を2つ以上有するポリオールを主として含有する成分)、ポリアミン成分(アミノ基を2つ以上有するポリアミンを主として含有する化合物)などが挙げられる。
【0044】
本発明において、ポリオール成分としては、低分子量ポリオールおよび高分子量ポリオールが挙げられる。
低分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量400未満の化合物であって、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,2−トリメチルペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、アルカン(C7〜20)ジオール、1,3−または1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、1,3−または1,4−シクロヘキサンジオールおよびそれらの混合物、水素化ビスフェノールA、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオール、ビスフェノールA、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの2価アルコール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール、例えば、キシリトールなどの5価アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール、例えば、ペルセイトールなどの7価アルコール、例えば、ショ糖などの8価アルコールなどが挙げられる。
【0045】
高分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量400以上の化合物であって、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、および、ビニルモノマー変性ポリオールが挙げられる。
【0046】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
ポリプロピレングリコールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールまたは芳香族/脂肪族ポリアミンを開始剤とする、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドの付加重合物(2種以上のアルキレンオキサイドのランダムおよび/またはブロック共重合体を含む。)が挙げられる。
【0047】
ポリテトラメチレンエーテルグリコールとしては、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合により得られる開環重合物や、テトラヒドロフランの重合単位に上記した2価アルコールを共重合した非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールと多塩基酸とを、公知の条件下、反応させて得られる重縮合物が挙げられる。
【0048】
多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、1,1−ジメチル−1,3−ジカルボキシプロパン、3−メチル−3−エチルグルタール酸、アゼライン酸、セバシン酸、その他の飽和脂肪族ジカルボン酸(C11〜13)、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、その他の不飽和脂肪族ジカルボン酸、例えば、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、その他の芳香族ジカルボン酸、例えば、ヘキサヒドロフタル酸、その他の脂環族ジカルボン酸、例えば、ダイマー酸、水添ダイマー酸、ヘット酸などのその他のカルボン酸、および、それらカルボン酸から誘導される酸無水物、例えば、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水2−アルキル(C12〜C18)コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、さらには、これらのカルボン酸などから誘導される酸ハライド、例えば、シュウ酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、セバシン酸ジクロライドなどが挙げられる。
【0049】
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、ヒドロキシル基含有植物油脂肪酸(例えば、リシノレイン酸を含有するひまし油脂肪酸、12−ヒドロキシステアリン酸を含有する水添ひまし油脂肪酸など)などのヒドロキシカルボン酸を、公知の条件下、縮合反応させて得られる植物油系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0050】
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、上記した低分子量ポリオール(好ましくは、2価アルコール)を開始剤として、例えば、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン類を開環重合して得られる、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、さらには、それらに上記した2価アルコールを共重合したラクトン系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0051】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオール(好ましくは、2価アルコール)を開始剤とするエチレンカーボネートの開環重合物や、例えば、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールや1,6−ヘキサンジオールなどの2価アルコールと、開環重合物とを共重合した非晶性ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
【0052】
また、ポリウレタンポリオールは、上記により得られたポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよび/またはポリカーボネートポリオールを、イソシアネート基(NCO)に対する水酸基(OH)の当量比(OH/NCO)が1を超過する割合で、ポリイソシアネートと反応させることによって、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリウレタンポリオール、あるいは、ポリエステルポリエーテルポリウレタンポリオールなどとして得ることができる。
【0053】
エポキシポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールと、例えば、エピクロルヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリンなどの多官能ハロヒドリンとの反応により得られるエポキシポリオールが挙げられる。
植物油ポリオールとしては、例えば、ひまし油、やし油などのヒドロキシル基含有植物油などが挙げられる。例えば、ひまし油ポリオール、または、ひまし油脂肪酸とポリプロピレンポリオールとの反応により得られるエステル変性ひまし油ポリオールなどが挙げられる。
【0054】
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、ポリブタジエンポリオール、部分ケン価エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
アクリルポリオールとしては、例えば、ヒドロキシル基含有アクリレートと、ヒドロキシル基含有アクリレートと共重合可能な共重合性ビニルモノマーとを、共重合させることによって得られる共重合体が挙げられる。
【0055】
ヒドロキシル基含有アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2−ジヒドロキシメチルブチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシアルキルマレエート、ポリヒドロキシアルキルフマレートなどが挙げられる。好ましくは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0056】
共重合性ビニルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート(炭素数1〜12)、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル、例えば、(メタ)アクリロニトリルなどのシアン化ビニル、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などのカルボキシル基を含むビニルモノマー、または、そのアルキルエステル、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート、例えば、3−(2−イソシアネート−2−プロピル)−α−メチルスチレンなどのイソシアネート基を含むビニルモノマーなどが挙げられる。
【0057】
そして、アクリルポリオールは、これらヒドロキシル基含有アクリレート、および、共重合性ビニルモノマーを、適当な溶剤および重合開始剤の存在下において共重合させることにより得ることができる。
また、アクリルポリオールには、例えば、シリコーンポリオールやフッ素ポリオールが含まれる。
【0058】
シリコーンポリオールとしては、例えば、上記したアクリルポリオールの共重合において、共重合性ビニルモノマーとして、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのビニル基を含むシリコーン化合物が配合されたアクリルポリオールが挙げられる。
フッ素ポリオールとしては、例えば、上記したアクリルポリオールの共重合において、共重合性ビニルモノマーとして、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンなどのビニル基を含むフッ素化合物が配合されたアクリルポリオールが挙げられる。
【0059】
ビニルモノマー変性ポリオールは、上記した高分子量ポリオールと、ビニルモノマーとの反応により得ることができる。
高分子量ポリオールとして、好ましくは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールから選択される高分子量ポリオールが挙げられる。
【0060】
また、ビニルモノマーとしては、例えば、上記したアルキル(メタ)アクリレート、シアン化ビニルまたはシアン化ビニリデンなどが挙げられる。これらビニルモノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、アルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
そして、ビニルモノマー変性ポリオールは、これら高分子量ポリオール、および、ビニルモノマーを、例えば、ラジカル重合開始剤(例えば、過硫酸塩、有機過酸化物、アゾ系化合物など)の存在下などにおいて反応させることにより得ることができる。
【0061】
これらポリオール成分は、単独使用または2種類以上併用することができる。
ポリオール成分として、好ましくは、高分子量ポリオール、さらに好ましくは、ポリエステルポリオール、アクリルポリオールが挙げられる。
ポリアミン成分としては、例えば、芳香族ポリアミン、芳香脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、脂肪族ポリアミン、アミノアルコール、第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物、ポリオキシエチレン基含有ポリアミンなどが挙げられる。
【0062】
芳香族ポリアミンとしては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、トリレンジアミンなどが挙げられる。
芳香脂肪族ポリアミンとしては、例えば、1,3−または1,4−キシリレンジアミンもしくはその混合物などが挙げられる。
脂環族ポリアミンとしては、例えば、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(別名:イソホロンジアミン)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2,6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ジアミノシクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,3−および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよびそれらの混合物などが挙げられる。
【0063】
脂肪族ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン(水和物を含む。)、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,2−ジアミノエタン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノペンタンなどが挙げられる。
【0064】
アミノアルコールとしては、例えば、N−(2−アミノエチル)エタノールアミンなどが挙げられる。
第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物としては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシリル基含有モノアミン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0065】
ポリオキシエチレン基含有ポリアミンとしては、例えば、ポリオキシエチレンエーテルジアミンなどのポリオキシアルキレンエーテルジアミンが挙げられる。より具体的には、例えば、日本油脂製のPEG#1000ジアミンや、ハンツマン社製のジェファーミンED―2003、EDR−148、XTJ−512などが挙げられる。
これらポリアミン成分は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0066】
なお、本発明では、必要に応じて、公知の添加剤、例えば、可塑剤、ブロッキング防止剤、耐熱安定剤、耐光安定剤、酸化防止剤、離型剤、触媒、さらには、顔料、染料、滑剤、フィラー、加水分解防止剤などを添加することができる。これら添加剤は、各成分の合成時に添加してもよく、あるいは、各成分の混合・溶解時に添加してもよく、さらには、合成後に添加することもできる。
【0067】
そして、本発明のポリウレタン樹脂は、例えば、塗料、接着剤、エラストマー、シーラント、フォームなどとして、各種産業分野において広範に使用することができる。
本発明のポリウレタン樹脂を、例えば、塗料および接着剤として用いる場合には、本発明のポリウレタン樹脂は、上記ポリイソシアネート組成物と、上記活性水素化合物とを、それぞれ調製し、それらを使用時に配合する、二液硬化型ポリウレタン樹脂として調製する。
【0068】
二液硬化型ポリウレタン樹脂は、好ましくは、二液硬化型塗料および/または二液硬化型接着剤として用いられ、具体的には、まず上記活性水素化合物を用意し、その活性水素化合物とは別途、ポリイソシアネート組成物を調製して、使用直前に、活性水素化合物とポリイソシアネート組成物とを混合して、二液硬化型ポリウレタン樹脂を調製し、その二液硬化型ポリウレタン樹脂を、被塗物または被着物に塗布する。
【0069】
なお、本発明のポリウレタン樹脂を二液硬化型ポリウレタン樹脂として製造する場合においても、必要に応じて、さらに、公知の添加剤、例えば、塗料組成物としては、着色顔料、染料、紫外線吸収剤、硬化促進剤、光安定剤、つや消し剤など、接着剤組成物としては、塗膜の付着性向上のためのリンの酸素酸またはその誘導体やシランカップリング剤などを、適宜の割合で配合することができる。
【0070】
着色顔料、染料としては、例えば、耐候性の良好なカーボンブラック、酸化チタンなどの無機顔料、例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドンレッド、インダンスレンオレンジ、イソインドリノン系イエローなどの有機顔料、染料などが挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、シアノアクリレート系の紫外線吸収剤が挙げられ、より具体的には、チヌビン213、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン571(以上、チバ・ジャパン社製、商品名)などが挙げられる。
【0071】
硬化促進剤としては、例えば、ジブチル錫ジラウレートなどが挙げられる。
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤(例えば、アデカスタブLA62、アデカスタブLA67(以上、アデカアーガス化学社製、商品名)、チヌビン765、チヌビン144、チヌビン770、チヌビン622(以上、チバ・ジャパン社製、商品名)など)、ブレンド系光安定剤(例えば、チヌビンB75、チヌビンPUR866(以上、チバ・ジャパン社製、商品名)など)などが挙げられる。
【0072】
つや消し剤としては、例えば、超微粉合成シリカなどが挙げられる。つや消し剤を配合すれば、優雅な半光沢、つや消し仕上げの塗膜を形成することができる。
リンの酸素酸またはその誘導体において、リンの酸素酸としては、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リン酸などのリン酸類、例えば、メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリン酸などの縮合リン酸類などが挙げられる。
【0073】
また、リンの酸素酸の誘導体としては、例えば、ナトリウム、カリウムなどのリン酸塩または縮合リン酸塩、例えば、オルトリン酸モノメチル、オルトリン酸モノエチル、オルトリン酸モノプロピル、オルトリン酸モノブチル、オルトリン酸モノ−2−エチルヘキシル、オルトリン酸モノフェニル、亜リン酸モノメチル、亜リン酸モノエチル、亜リン酸モノプロピル、亜リン酸モノブチル、亜リン酸モノ−2−エチルヘキシル、亜リン酸モノフェニルなどのモノエステル類、例えば、オルトリン酸ジ−2−エチルヘキシル、オルトリン酸ジフェニル、オルトリン酸トリメチル、オルトリン酸トリエチル、オルトリン酸トリプロピル、オルトリン酸トリブチル、オルトリン酸トリ−2−エチルヘキシル、オルトリン酸トリフェニル、亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジプロピル、亜リン酸ジブチル、亜リン酸ジ−2−エチルヘキシル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリプロピル、亜リン酸トリブチル、亜リン酸トリ−2−エチルヘキシル、亜リン酸トリフェニルなどのジ、トリエステル類、または、縮合リン酸とアルコール類とから得られるモノ、ジ、トリエステル類などが挙げられる。
【0074】
リンの酸素酸またはその誘導体は、上記した各種リンの酸素酸またはその誘導体を、単独使用または複数種類併用することができる。
シランカップリング剤は、例えば、構造式R−Si≡(X)またはR−Si≡(R’)(X)(式中、Rは、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、イミノ基、イソシアネート基またはメルカプト基を有する有機基を示し、R’は炭素数1〜4の低級アルキル基を示し、Xはメトキシ基、エトキシ基またはクロル原子を示す。)で示される。
【0075】
シランカップリング剤として、具体的には、例えば、ビニルトリクロルシランなどのクロロシラン、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ジ(γ−グリシドキシプロピル)ジメトキシシランなどのエポキシシラン、例えば、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−プロピルメチルジメトキシシラン、n−(ジメトキシメチルシリルプロピル)エチレンジアミン、n−(トリエトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン、例えば、ビニルトリエトキシシランなどのビニルシラン、例えば、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシランなどのイソシアナトシランなどが挙げられる。
【0076】
シランカップリング剤は、上記した各種シランカップリング剤を、単独使用または複数種類併用することができる。
これら機能性配合剤および添加剤は、予め、上記ポリイソシアネート組成物および/または活性水素化合物に配合してもよく、あるいは、ポリイソシアネート組成物および活性水素化合物の配合後の二液硬化型ポリウレタン樹脂に配合することもできる。
【0077】
本発明のポリウレタン樹脂を二液硬化型ポリウレタン樹脂として製造する場合には、使用時において、ポリイソシアネート組成物と活性水素化合物とを配合して、二液硬化型ポリウレタン樹脂を調製し、それを被塗物または被着物に塗布する。
ポリイソシアネート組成物および活性水素化合物の配合割合は、例えば、活性水素化合物中の活性水素基に対する、ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基の当量比(NCO/活性水素基)として、例えば、0.5〜1.5、好ましくは、0.8〜1.2となる割合である。
【0078】
そして、このように二液硬化型ポリウレタン樹脂として製造された本発明のポリウレタン樹脂によれば、機械物性に優れる塗膜を得ることができる。
なお、二液硬化型ポリウレタン樹脂は、被塗物または被着物に対して、特に制限されず、例えば、スプレー塗装、エアスプレー塗装、はけ塗り、浸漬法、ロールコーター、フローコーターなどの任意の塗装方法により、塗装することができる。
【0079】
また、被塗物としては、特に制限されず、例えば、コンクリート、自然石、ガラスなどの無機物、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、真鍮、チタンなどの金属、例えば、プラスチック、ゴム、接着剤、木材などの有機物が挙げられる。
また、被着物としては、特に制限されず、例えば、各種建材および各種積層フィルムが挙げられる。
【0080】
より具体的には、プラスチックフィルム、金属箔、金属蒸着フィルムなどの包装材料、FRP、鋼材などの土木材料などが挙げられる。
さらに、本発明のポリウレタン樹脂は、二液硬化型ポリウレタン樹脂として製造する以外に、例えば、エラストマーなどの用途では、例えば、バルク重合や溶液重合などの重合方法により製造する。
【0081】
バルク重合では、例えば、窒素気流下において、ポリイソシアネート組成物を撹拌しつつ、これに、活性水素化合物を加えて、反応温度50〜250℃、さらに好ましくは50〜200℃で、0.5〜15時間程度反応させる。
溶液重合では、上記した有機溶剤に、ポリイソシアネート組成物、活性水素化合物を加えて、反応温度50〜120℃、さらに好ましくは50〜100℃で、0.5〜15時間程度反応させる。
【0082】
さらに、上記重合反応においては、必要に応じて、例えば、アミン類や有機金属化合物などの、上記した公知のウレタン化触媒を添加してもよく、また、(未反応の)ポリイソシアネート組成物を、例えば、蒸留や抽出などの公知の除去手段により除去してもよい。
バルク重合および溶液重合では、例えば、ポリイソシアネート組成物と活性水素化合物とを、活性水素化合物中の活性水素基(水酸基、アミノ基)に対するポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基の当量比(NCO/活性水素基)が、例えば、0.75〜1.3、好ましくは、0.9〜1.1となるように配合する。
【0083】
また、上記重合反応をより工業的に実施する場合には、ポリウレタン樹脂は、その用途に応じて、例えば、ワンショット法およびプレポリマー法などの公知の方法により、得ることができる。また、その他の方法により、ポリウレタン樹脂を、例えば、水系ディスパージョン(PUD)などとして得ることもできる。
ワンショット法では、例えば、ポリイソシアネート組成物と活性水素化合物とを、活性水素化合物中の活性水素基(水酸基、アミノ基)に対するポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基の当量比(NCO/活性水素基)が、例えば、0.75〜1.3、好ましくは、0.9〜1.1となるように処方(混合)した後、例えば、室温〜250℃、好ましくは、室温〜200℃で、例えば、5分〜72時間、好ましくは、4〜24時間硬化反応させる。なお、硬化温度は、一定温度であってもよく、あるいは、段階的に昇温または冷却することもできる。
【0084】
また、プレポリマー法では、例えば、まず、イソシアネート組成物と活性水素化合物の一部(好ましくは、高分子量ポリオール)とを反応させて、分子末端にイソシアネート基を有するイソシアネート基末端プレポリマーを合成する。次いで、得られたイソシアネート基末端プレポリマーと、活性水素化合物の残部(好ましくは、低分子量ポリオールおよび/またはポリアミン成分)とを反応させて、硬化反応させる。なお、プレポリマー法において、活性水素化合物の残部は、鎖伸長剤として用いられる。
【0085】
イソシアネート基末端プレポリマーを合成するには、ポリイソシアネート組成物と活性水素化合物の一部とを、活性水素化合物の一部中の活性水素基に対するポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基の当量比(NCO/活性水素基)が、例えば、1.1〜20、好ましくは、1.3〜10、さらに好ましくは、1.3〜6となるように処方(混合)し、反応容器中にて、例えば、室温〜150℃、好ましくは、50〜120℃で、例えば、0.5〜18時間、好ましくは、2〜10時間反応させる。なお、この反応においては、必要に応じて、上記したウレタン化触媒を添加してもよく、また、反応終了後には、必要に応じて、未反応のポリイソシアネート組成物を、例えば、蒸留や抽出などの公知の除去手段により、除去することもできる。
【0086】
次いで、得られたイソシアネート基末端プレポリマーと、活性水素化合物の残部とを反応させるには、イソシアネート基末端プレポリマーと、活性水素化合物の残部とを、活性水素化合物の残部中の活性水素基に対するイソシアネート基末端プレポリマー中のイソシアネート基の当量比(NCO/活性水素基)が、例えば、0.75〜1.3、好ましくは、0.9〜1.1となるように処方(混合)し、例えば、室温〜250℃、好ましくは、室温〜200℃で、例えば、5分〜72時間、好ましくは、1〜24時間硬化反応させる。
【0087】
また、ポリウレタン樹脂を水系ディスパージョンとして得るには、例えば、まず、ポリイソシアネート組成物と、後述する親水基を含有する活性水素化合物(以下、親水基含有活性水素化合物と略する。)を含む活性水素化合物とを反応させることにより、イソシアネート基末端プレポリマーを得る。
次いで、得られたイソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを水中で反応させて分散させる。これによって、イソシアネート基末端プレポリマーが鎖伸長剤によって鎖伸長された水性ポリウレタン樹脂を、内部乳化型の水系ディスパージョンとして得ることができる。
【0088】
イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを水中で反応させるには、例えば、まず、イソシアネート基末端プレポリマーを水に添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを分散させる。次いで、これに鎖伸長剤を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長する。
親水基含有活性水素化合物は、親水基と活性水素基とを併有する化合物であって、親水基としては、例えば、アニオン性基(例えば、カルボキシル基など)、カチオン性基、ノニオン性基(例えば、ポリオキシエチレン基など)が挙げられる。親水基含有活性水素化合物として、より具体的には、カルボン酸基含有活性水素化合物、ポリオキシエチレン基含有活性水素化合物などが挙げられる。
【0089】
カルボン酸基含有活性水素化合物としては、例えば、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸などのジヒドロキシルカルボン酸、例えば、リジン、アルギニンなどのジアミノカルボン酸、または、それらの金属塩類やアンモニウム塩類などが挙げられる。
【0090】
ポリオキシエチレン基含有活性水素化合物は、主鎖または側鎖にポリオキシエチレン基を含み、2つ以上の活性水素基を有する化合物であって、例えば、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオール(側鎖にポリオキシエチレン基を含み、2つ以上の活性水素基を有する化合物)などが挙げられる。
これら親水基含有活性水素化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0091】
鎖伸長剤としては、例えば、上記した2価アルコール、上記した3価アルコールなどの低分子量ポリオール、例えば、脂環族ジアミン、脂肪族ジアミンなどのジアミンなどを使用することができる。
これら鎖伸長剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
このように、親水基含有活性水素化合物を含む活性水素化合物を使用する場合には、必要により、親水基を公知の中和剤で中和する。
【0092】
また、活性水素化合物として、親水基含有活性水素化合物を使用しない場合には、例えば、公知の界面活性剤を用いて乳化することにより、外部乳化型の水系ディスパージョンとして得ることができる。
【実施例】
【0093】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。また、製造例などに用いられる測定方法を、以下に示す。
<イソシアネート基濃度(単位:質量%)>
ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基濃度は、電位差滴定装置を用いて、JIS K−1556に準拠したn−ジブチルアミン法により測定した。
<イソシアネートの加水分解性塩素の濃度(単位:ppm)>
イソシアネートに含有される加水分解性塩素の濃度(以下、HCと略する。)は、JIS K−1556(2000)の附属書3に記載されている加水分解性塩素の試験方法に準拠して測定した。
<粘度測定(単位:mPa・s)>
東機産業株式会社製のE型粘度計TV−30を用いて25℃で測定した。
<イソシアネート基の転化率(単位:質量%)>
イソシアネート基の転化率は、以下の条件においてGPC測定し、得られたクロマトグラムにおいて、全ピーク面積に対する1,5−ペンタメチレンジイソシアネートのピークよりも高分子量側にあるピークのピーク面積の割合を、イソシアネート基の転化率とした。
【0094】
装置;HLC−8020(東ソー製)
カラム;G1000HXL、G2000HXLおよびG3000HXL(以上、東ソー製商品名)を直列に連結
カラム温度;40℃
溶離液;テトラヒドロフラン
溶離液の流量;0.8mL/min
検出方法;示差屈折率
標準物質;ポリエチレンオキシド(東ソー製、商品名:TSK標準ポリエチレンオキシド)
(1,5−ペンタメチレンジイソシアネートの製造)
製造例1
1,5−ジアミノペンタンを原料として、冷熱2段ホスゲン化法を加圧下で実施した。
【0095】
すなわち、電磁誘導撹拌機、自動圧力調整弁、温度計、窒素導入ライン、ホスゲン導入ライン、凝縮器、原料フィードポンプを備え付けたジャケット付き加圧反応器に、オルトジクロロベンゼン2000質量部を仕込んだ。次いで、ホスゲン2300質量部をホスゲン導入ラインより加え、撹拌を開始した。反応器のジャケットには冷水を通し、内温を約10℃に保った。そこへ、1,5−ジアミノペンタン400質量部をオルトジクロロベンゼン2600質量部に溶解した溶液を、フィードポンプにて60分かけてフィードし、30℃以下、常圧下で冷ホスゲン化を開始した。フィード終了後、加圧反応器内は淡褐白色スラリー状液となった。
【0096】
次いで、反応器の内液を徐々に160℃まで昇温しながら、0.25MPaに加圧し、さらに圧力0.25MPa、反応温度160℃で90分間熱ホスゲン化した。なお、熱ホスゲン化の途中で、ホスゲン1100質量部を、さらに添加した。熱ホスゲン化の過程で、加圧反応器内液は、淡褐色澄明溶液となった。熱ホスゲン化終了後、100〜140℃において、窒素ガスを100L/時で通気し、脱ガスした。
【0097】
次いで、減圧下で溶媒のオルトジクロルベンゼンを留去した後、同じく減圧下で1,5−ペンタメチレンジイソシアネート(以後、1,5−PDIと略する。)を留去させた。この時、1,5−PDIのHCは2400ppmであった。
次いで、留去させた1,5−PDIを、攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに装入し、窒素を導入しながら、常圧下で、190℃、3時間加熱処理を行った。この時、1,5−PDIのHCは950ppmであった。
【0098】
次いで、加熱処理後の1,5−PDIを、ガラス製フラスコに装入し、充填物(住友重機械工業株式会社製、商品名:住友/スルザーラボパッキングEX型)を4エレメント充填した蒸留管、還流比調節タイマーを装着した蒸留塔(柴田科学株式会社製、商品名:蒸留頭K型)、および、冷却器を装備する精留装置を用いて、127〜132℃、2.7KPaの条件下、さらに還流しながら精留し、1,5−PDIを480質量部得た。
【0099】
得られた1,5−PDIのガスクロマトグラフィー測定による純度は99.9%、APHA測定による色相は5、HCは21ppmであった。
(ポリイソシアネート組成物の製造)
実施例1
攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、製造例の1,5−PDIを500質量部、イソブチルアルコールを4.90質量部、2,6−ジ(tert-ブチル)−4−メチルフェノールを0.25質量部、トリス(トリデシル)ホスファイトを0.25質量部装入し、80℃で3時間反応させ、イソシアネート基濃度が53.3質量%の溶液を得た。この溶液を65℃に降温した後、イソシアヌレート化触媒としてN−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム−2−エチルヘキサノエートを0.1質量部添加した。1時間反応させた後、o−トルエンスルホンアミドを0.25質量部添加した(イソシアネート基の転化率:15質量%)。得られた反応液を薄膜蒸留装置(真空度0.093KPa、温度150℃)に通液して未反応の1,5−PDIを除去し、透明のポリイソシアネート組成物を得た。
【0100】
このポリイソシアネート組成物のイソシアネート基濃度は25.6質量%、粘度は410mPa・s、イソシアネートモノマー濃度は0.42質量%であった。また、H−NMR測定より求めたスルホンアミド基を含有する化合物濃度は520ppmであった。
比較例1
1,5−PDIに変え、ヘキサメチレンジイソシアネート(三井化学ポリウレタン株式会社製、商品名:タケネート700、以下、HDIと略する。)を500質量部用いた以外は、実施例と同様の条件および操作にて、透明のポリイソシアネート組成物を得た。
【0101】
このポリイソシアネート組成物のイソシアネート基濃度は23.2質量%、粘度は600mPa・s、イソシアネートモノマー濃度は0.46質量%であった。また、H−NMR測定より求めたスルホンアミド基を含有する化合物濃度は560ppmであった。
(ポリウレタン樹脂の製造)
調製例1
実施例1で得られたポリイソシアネート組成物と、アクリルポリオール(三井化学ポリウレタン株式会社製、商品名:タケラックUA−702、以下、UA−702と略する。)とを、アクリルポリオール中の水酸基に対するポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が1.0となる割合で配合し、23℃で90秒間攪拌し、反応混合液を得た。次いで、この反応混合液を、JIS G 3303に準拠した標準試験板(種類:電気めっきぶりき、以後、試験板と略する。)に塗布し、その後、80℃で30分、さらに110℃で1時間硬化させ、厚みが約45μmのポリウレタン樹脂を得た。
【0102】
得られたポリウレタン樹脂は、23℃、相対湿度55%の室内にて7日間静置した。
調製例2
UA−702に変え、ポリエステルポリオール(三井化学ポリウレタン株式会社、商品名:タケラックU−27、以下、U−27と略する。)を用いた以外は、調製例1と同様の条件および操作にて、厚みが約30μmのポリウレタン樹脂を得た。
【0103】
得られたポリウレタン樹脂は、23℃、相対湿度55%の室内にて7日間静置した。
調製比較例1
実施例1で得られたポリイソシアネート組成物に代えて、比較例1で得られたポリイソシアネート組成物を用いた以外は、調製例1と同様の条件および操作にてポリウレタン樹脂を得た。
【0104】
得られたポリウレタン樹脂は、23℃、相対湿度55%の室内にて7日間静置した。
調製比較例2
実施例1で得られたポリイソシアネート組成物に代えて、比較例1で得られたポリイソシアネート組成物を用いた以外は、調製例2と同様の条件および操作にてポリウレタン樹脂を得た。
【0105】
得られたポリウレタン樹脂は、23℃、相対湿度55%の室内にて7日間静置した。
物性評価
各調製例および各比較調製例で得られたポリウレタン樹脂(以下、塗膜と略する。)のマルテンス硬さ、破断強度、耐溶剤性、および引っかき硬度を、以下の方法で測定した。その結果を表1に示す。
<マルテンス硬さ(単位:N/mm)>
試験板に密着した状態の塗膜を、超微小硬度計(島津製作所製、DUH−211)を用いて、圧子の種類:Triangular115、試験モード:負荷−除荷試験、試験力:10.00mN、負荷速度3.0mN/sec、負荷保持時間:10secの条件にてマルテンス硬さ(HMT115)を測定した。
<破断強度(TS)(単位:MPa)>
塗膜を、幅1cm、長さ10cmのサイズにダンベルで打ち抜いた。次いで、この試験サンプルに対して、引張圧縮試験機(インテスコ社製、Model205N)を用いて、23℃、引張速度10mm/min、チャック間距離50mmの条件で引張試験した。これにより、破断強度(TS)を測定した。
<耐溶剤性(単位:回)>
試験液を充分に含浸させた綿棒を、試験板に密着した塗膜上に置き、一定荷重がかかるようにして約1cmの距離を往復させた。この作業を繰返し、塗膜に損傷が観察されたら時点で試験を終了させた。往路、復路をそれぞれ1回とし、塗膜に損傷が観察されるまでの回数を耐溶剤性とした。試験液は、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン(以下、MEKと略する。)とした。
<引っかき硬度>
試験板に密着した状態の塗膜を、鉛筆引っかき硬度試験機(株式会社安田精機製作所製、型式:No.553−M1)を用いJIS K 5600−5−4に従い試験を行った。
【0106】
【表1】

【0107】
なお、表1中の略号の詳細を下記に示す。
UA−702:アクリルポリオール、三井化学ポリウレタン株式会社製、商品名:タケラックUA−702
U−27:ポリエステルポリオール、三井化学ポリウレタン株式会社、商品名:タケラックU−27
MEK:メチルエチルケトン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に溶剤を含まず、
ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート化反応により得られ、
イソシアネート基濃度が25質量%を超過し、28質量%以下であることを特徴とする、ポリイソシアネート組成物。
【請求項2】
イソシアヌレート化反応では、炭素数が1〜20のアルコールと、ペンタメチレンジイソシアネートとを反応させることを特徴とする、請求項1に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項3】
スルホンアミド基を含有する化合物を、10〜5000ppm含有することを特徴とする、請求項1または2に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリイソシアネート組成物と、活性水素化合物とを反応させることにより得られることを特徴とする、ポリウレタン樹脂。

【公開番号】特開2010−121011(P2010−121011A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−294827(P2008−294827)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(501140544)三井化学ポリウレタン株式会社 (115)
【Fターム(参考)】