説明

ポリイミダゾール又はその前駆体の微粒子及びその製造方法

【課題】ポリイミダゾール又はその前駆体の微粒子を提供する。
【解決手段】テトラアミン系化合物とジアルデヒド系化合物とを反応させることによりポリイミダゾールの微粒子を製造する方法であって、(1)溶媒中でテトラアミン系化合物とジアルデヒド系化合物とを反応させるにあたり、前記溶媒の一部又は全部として前記ポリイミダゾール前駆体に対して不溶性の溶媒を用いることにより、ポリイミダゾール前駆体の微粒子を得る第1工程、(2)前記前駆体微粒子を閉環反応させることによりポリイミダゾールの微粒子を得る第2工程、を含むことを特徴とする製造方法に係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミダゾール又はその前駆体の微粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリベンゾイミダゾール(PBI)は、ポリイミドよりも優れた耐熱性、絶縁性、機械的特性、耐水性、低誘電性、低熱膨張率等を有することが知られている。このため、ポリベンゾイミダゾールを他の材料と複合化することにより、前記のような物性を活かした複合材料の開発が各方面で行われている。
【0003】
例えば、ジカルボン酸成分と2価のOH成分とからなる、極限粘度が0.2dl/g以上の直鎖状ポリエステル樹脂に対して、テトラアミン化合物を、非プロトン系極性溶媒から選ばれた少なくとも1種の溶媒からなる反応媒体中において反応させて、該直鎖状ポリエステル樹脂中の前記2価のOH成分を該テトラアミン化合物にて置換・脱水せしめることを特徴とするポリベンゾイミダゾール系樹脂の製造法が知られている(特許文献1)。
【0004】
また、ポリベンゾイミダゾールのプレポリマーを含んでなる溶液を基材表面に塗布し、その塗布された被膜を加熱することによって、前記プレポリマーを環化させて、基材表面に硬化塗膜を形成させる方法、ならびに形成された被膜を基材から剥離してフィルムを形成させる方法が提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2004−300287号公報
【特許文献2】特開2003−105259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の製造方法は、ポリエステル樹脂を原料としたエステル−ポリベンゾイミダゾール共重合体を製造するものであって、純粋なポリベンゾイミダゾールを製造するものではないため、たとえ粒子状のものが得られたとしても、ポリベンゾイミダゾール本来の特性を十分に得ることができない。
【0006】
また、特許文献2の製造方法で作製されるポリベンゾオキサゾールは膜状のものであり、粒子状のポリベンゾイミダゾールを得ることはできない。
【0007】
従って、本発明の主な目的は、ポリイミダゾール又はその前駆体の微粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定のプロセスによりポリイミダゾールを製造することによって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記のポリイミダゾール又はその前駆体の微粒子に係る。
1. テトラアミン系化合物とジアルデヒド系化合物とを反応させることによりポリイミダゾール前駆体の微粒子を製造する方法であって、
(1)溶媒中でテトラアミン系化合物とジアルデヒド系化合物とを反応させるにあたり、前記溶媒の一部又は全部として前記ポリイミダゾール前駆体に対して不溶性の溶媒を用いることにより、ポリイミダゾール前駆体の微粒子を得る第1工程、
を含むことを特徴とする製造方法。
2. テトラアミン系化合物とジアルデヒド系化合物とを反応させることによりポリイミダゾールの微粒子を製造する方法であって、
(1)溶媒中でテトラアミン系化合物とジアルデヒド系化合物とを反応させるにあたり、前記溶媒の一部又は全部として前記ポリイミダゾール前駆体に対して不溶性の溶媒を用いることにより、ポリイミダゾール前駆体の微粒子を得る第1工程、
(2)前記前駆体微粒子を閉環反応させることによりポリイミダゾールの微粒子を得る第2工程、
を含むことを特徴とする製造方法。
3. 第1工程において、テトラアミン系化合物及びジアルデヒド系化合物の少なくとも一方を前記溶媒に溶解してなる溶液として用いる、前記項1又は2に記載の製造方法。
4. 第1工程の反応を超音波による攪拌下で行う、前記項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
5. 前記ポリイミダゾール前駆体に対して不溶性の溶媒が、プロトン性極性溶媒である、前記項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
6. 前記ポリイミダゾール前駆体に対して不溶性の溶媒が、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、1-ペンタノール、イソアミルアルコール、3-ペンタノール、t-アミルアルコール、n-ヘキサノール、メチルアミルアルコール、2-エチルブタノール、n-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、2-オクタノール、ノナノール、n-デカノール、ウンデカノール、n-ドデカノール、シクロヘキサノール、2-メチルシクロヘキサノール及びベンジルアルコールの少なくとも1種である、前記項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
7. 前記溶媒中に、前記ポリイミダゾール前駆体に対して可溶性の溶媒がさらに含まれる、前記項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
8. 前記ポリイミダゾール前駆体に対して可溶性の溶媒が、非プロトン性極性溶媒である、前記項7に記載の製造方法。
9. 前記ポリイミダゾール前駆体に対して可溶性の溶媒が、N-メチルピロリドン、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ニトロメタン、モノメチルメタン、ニトロエタン、ジメチルアミン、1-ニトロプロパン、2-ニトロプロパン、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、アセトフェノン、メチルイソブチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジ-n-プロピルケトン、ジ-イソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸メチル、テトラヒドロフラン、エピクロヒドリン、アセトアニリド、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノール及びジオキサンの少なくとも1種である、前記項7に記載の製造方法。
10. 平均粒径30nm〜10μmである、ポリイミダゾール前駆体微粒子。
11. 前記項1に記載の製造方法により得られる、前記項10に記載のポリイミダゾール前駆体微粒子。
12. 平均粒径30nm〜10μmである、ポリイミダゾール微粒子。
13. 前記項2に記載の製造方法により得られる、前記項12に記載のポリイミダゾール微粒子。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、ポリイミダゾール前駆体の微粒子あるいはポリイミダゾールの微粒子を製造することができる。
【0011】
本発明に係るポリイミダゾール前駆体微粒子あるいはポリイミダゾール微粒子は、その形態上の優位性を活かして、各種の複合材料(コンポジット)に幅広く適用することができる。これらの複合材料は、例えば、半導体装置、液晶装置、ガラス製造用治具、電子・電気機器等の各種の部品・部材として利用できるほか、絶縁材料、断熱材料、摺動材料等としても有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
1.ポリイミダゾール前駆体微粒子の製造方法(第1発明)
本発明のポリイミダゾール前駆体微粒子の製造方法は、テトラアミン系化合物とジアルデヒド系化合物とを反応させることによりポリイミダゾール前駆体の微粒子を製造する方法であって、
(1)溶媒中でテトラアミン系化合物とジアルデヒド系化合物とを反応させるにあたり、前記溶媒の一部又は全部として前記ポリイミダゾール前駆体に対して不溶性の溶媒を用いることにより、ポリイミダゾール前駆体の微粒子を得る第1工程、
を含むことを特徴とする。
【0013】
第1工程
第1工程では、溶媒中でテトラアミン系化合物とジアルデヒド系化合物とを反応させるにあたり、前記溶媒の一部又は全部として前記ポリイミダゾール前駆体に対して不溶性の溶媒を用いることにより、ポリイミダゾール前駆体の微粒子を得る。
【0014】
テトラアミン系化合物としては、公知のポリベンゾイミダゾール前駆体の製法で採用されている原料と同様のものを使用することもできる。例えば、1,2,4,5-テトラアミノベンゼン、1,2,5,6-テトラアミノナフタレン、2,3,6,7-テトラアミノナフタレン、3,3′,4,4′-テトラアミノジフェニルメタン、3,3′,4,4′-テトラアミノジフェニルエタン、3,3′,4,4′-テトラアミノジフェニ−ル、3,3′,4,4′-テトラアミノジフェニルチオエーテル、および3,3′,4,4′-テトラアミノジフェニルスルフオン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。これらの中でも、本発明では、芳香族テトラアミンを好適に用いることができる。例えば、3,3′,4,4′-テトラアミノジフェニル等を用いることができる。
【0015】
ジアルデヒド系化合物としては、公知のポリベンゾイミダゾール前駆体の製法で採用されている原料と同様のものを使用することもできる。例えば、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、3−フルオロフタルアルデヒド、4−フルオロフタルアルデヒド、2−フルオロイソフタルアルデヒド、4−フルオロイソフタルアルデヒド、5−フルオロイソフタルアルデヒド、2−フルオロテレフタルアルデヒド、3−トリフルオロメチルフタルアルデヒド、4−トリフルオロメチルフタルアルデヒド、2−トリフルオロメチルイソフタルアルデヒド、4−トリフルオロメチルイソフタルアルデヒド、5−トリフルオロメチルイソフタルアルデヒド、2−フトリフルオロメチルテレフタルアルデヒド、3,4,5,6−テトラフルオロフタルアルデヒド、2,4,5,6−テトラフルオロイソフタルアルデヒド、2,3,5,6−テトラフルオロテレフタルアルデヒド、ピリジン−2,3−ジアルデヒド、ピリジン−3,4−ジアルデヒド、ピリジン−3,5−ジアルデヒド、ピラジン−2,3−ジアルデヒド、ピラジン−2,5−ジアルデヒド、ピラジン−2,6−ジアルデヒド、ピリミジン−2,4−ジアルデヒド、ピリミジン−4,5−ジアルデヒド、ピリミジン−4,6−ジアルデヒド、ナフタレン−1,5−ジアルデヒド、ナフタレン−1,6−ジアルデヒド、2,6−ジアルデヒド、ナフタレン−3,7−ジアルデヒド、2,3,4,6,7,8−ヘキサフルオロナフタレン−1,5−ジアルデヒド、2,3,4,5,6,8−ヘキサフルオロナフタレン−1,6−ジアルデヒド、1,3,4,5,7,8−ヘキサフルオロナフタレン−2,6−ジアルデヒド、1−トリフルオロメチルナフタレン−2,6−ジアルデヒド、1,5−ビス(トリフルオロメチル)ナフタレン−2,6−ジアルデヒド、1−トリフルオロメチルナフタレン−3,7−ジアルデヒド、1,5−ビス(トリフルオロメチル)ナフタレン−3,7−ジアルデヒド、1−トリフルオロメチル−2,4,5,6,8−ペンタフルオロナフタレン−3,7−ジアルデヒド、1−ビス(トリフルオロメチル)メトキシ−2,4,5,6,8−ペンタフルオロナフタレン−3,7−ジアルデヒド、1,5−ビス(トリフルオロメチル)−2,4,6,8−テトラフルオロナフタレン−3,7−ジアルデヒド、1,5−ビス[ビス(トリフルオロメチル)メトキシ]−2,4,6,8−テトラフルオロナフタレン−3,7−ジアルデヒド、2,2'−ビフェニルジアルデヒド、2,4'−ビフェニルジアルデヒド、3,3'−ビフェニルジアルデヒド、6,6'−ジフルオロ−3,4'− ビフェニルジアルデヒド、4,4'− ビフェニルジアルデヒド、6,6'−ジフルオロ−2,4'−ビフェニルジアルデヒド、6,6'−ジフルオロ−3,3'−ビフェニルジアルデヒド、6,6'−ジフルオロ−3,4'− ビフェニルジアルデヒド、6,6'−ジフルオロ−4,4'− ビフェニルジアルデヒド、6,6'−ジトリフルオロメチル−2,2'−ビフェニルジアルデヒド、6,6'− ジトリフルオロメチル−2,4'−ビフェニルジアルデヒド、6,6'− ジトリフルオロメチル−3,3'−ビフェニルジアルデヒド、6,6'− ジトリフルオロメチル−3,4'− ビフェニルジアルデヒド、6,6'− ジトリフルオロメチル−4,4'− ビフェニルジアルデヒド、2,4'−オキシジべンズアルデヒド、3,3'−オキシジべンズアルデヒド、3,4'− オキシジべンズアルデヒド、4,4'− オキシジべンズアルデヒド、2,4'−ジホルミルジフェニルメタン、3,3'−ジホルミルジフェニルメタン、3,4'−ジホルミルジフェニルメタン、4,4'−ジホルミルジフェニルメタン、2,4'−ジホルミルジフェニルジフルオロメタン、3,3'−ジホルミルジフェニルジフルオロメタン、3,4'−ジホルミルジフェニルジフルオロメタン、4,4'−ジホルミルジフェニルジフルオロメタン、3,3'−ジホルミルジフェニルスルホン、3,4'−ジホルミルジフェニルスルホン、4,4'−ジホルミルジフェニルスルホン、3,3'−ジホルミルジフェニルスルフィド、3,4'−ジホルミルジフェニルスルフィド、4,4'−ジホルミルジフェニルスルフィド、3,3'−ジホルミルジフェニルケトン、3,4'−ジホルミルジフェニルケトン、4,4'−ジホルミルジフェニルケトン、2,2−ビス(3−ホルミルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ホルミルフェニル)プロパン、2,2−(3,4'−ジホルミルフェニル)プロパン、2,2−(3,4'−ジホルミルフェニル)プロパン、2,2−(2,4'−ジホルミルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ホルミルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ホルミルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(2,4'−ジホルミルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(3,4'−ジホルミルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−ジホルミルフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−ホルミルフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−ホルミルシフェノキシ)ベンゼン、3,3'−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスベンズアルデヒド、3,4'−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスベンズアルデヒド、4,4'−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスベンズアルデヒド、2,2−ビス[4−(2−ホルミルフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−ホルミルフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−ホルミルフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス(4−[3−ホルミルフェノキシ]フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−ホルミルフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(3−ホルミルフェノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−ホルミルフェノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(3−ホルミルフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(4−ホルミルフェノキシ)フェニル)スルホン、フルオレン2,6−ジホルミルアントラキノン、フルオレン−2,7−ジアルデヒド、3,7−ジベンゾフランジアルデヒド、9,9−ビス[4−ホルミルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[3−ホルミルフェニル]フルオレン、9,9−(3,4'−ジホルミルフェニル)フルオレン、9,9−(3,4'−ジホルミルフェニル)フルオレン等の芳香族ジアルデヒド;また、1,4−シクロへキサンジアルデヒド、1,3−シクロへキサンジアルデヒド、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,5−ジアルデヒド、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,5−ジアルデヒド、ビシクロ[2.2.2]オクタ−7−エン−2,5−ジアルデヒド、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジアルデヒド、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジアルデヒド、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3,4−ジアルデヒド、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−4−エン−8,9−ジアルデヒド、ペルヒドロナフタレン−2,3−ジアルデヒド、ペルヒドロナフタレン−1,4−ジアルデヒド、ペルヒドロナフタレン−1,6−ジアルデヒド、ペルヒドロ−1,4−ジメタノナフタレン−2,3−ジアルデヒド、ペルヒドロ−1,4−メタノナフタレン−2,7−ジアルデヒド、ペルヒドロ−1,4−メタノナフタレン−7,8−ジアルデヒド、ペルヒドロ−1,4:5,8−ジメタノナフタレン−2,3−ジアルデヒド、ペルヒドロ−1,4:5,8−ジメタノナフタレン−2,7−ジアルデヒド、ペルヒドロ−1,4:5,8:9,10−トリメタノアントラセン−2,3−ジアルデヒド、4,4'−ジホルミルビシクロヘキシル、3,4'−オキシジシクロヘキサンカルバルデヒド、3,3'−ジホルミルジシクロヘキシルメタン、3,4'−ジホルミルジシクロヘキシルメタン、4,4'−ジホルミルジシクロヘキシルメタン、3,3'−ジホルミルジシクロヘキシルフルオロメタン、3,4'−ジホルミルジシクロヘキシルジフルオロメタン、4,4'−ジホルミルジシクロヘキシルジフルオロメタン、3,3'−ジホルミルジシクロヘキシルスルホン、3,4'−ジホルミルジシクロヘキシルスルホン、4,4'−ジホルミルジシクロヘキシルスルホン、3,3'−ジホルミルジシクロヘキシルスルフィド、3,4'−ジホルミルジシクロヘキシルスルフィド、4,4'−ジホルミルジシクロヘキシルスルフィド、3,3'−ジホルミルジシクロヘキシルケトン、3,4'−ジホルミルジシクロヘキシルケトン、4,4'−ジホルミルジシクロヘキシルケトン、2,2−ビス(3−ホルミルシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ホルミルシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(3−ホルミルシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ホルミルシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−ジホルミルシクロヘキシル)ベンゼン、1,4−ビス(3−ホルミルシクロヘキシル)ベンゼン、1,4−ビス(4−ホルミルシクロヘキシル)ベンゼン、3,3'−(1,4−シクロヘキシレンビス(1−メチルエチリデン))ビスシクロヘキシサンカルバルデヒド、3,4'−(1,4−シクロヘキシレンビス(1−メチルエチリデン))ビスシクロヘキシサンカルバルデヒド、4,4'−(1,4−シクロヘキシレンビス(1−メチルエチリデン))ビスシクロヘキシサンカルバルデヒド、2,2−ビス(4−(3−ホルミルシクロヘキシル)シクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−ホルミルシクロヘキシル)シクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−ホルミルシクロヘキシル)シクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−ホルミルフェノキシ)シクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(3−ホルミルシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル)スルフィド、ビス(4−(4−ホルミルシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル)スルフィド、ビス(4−(3シクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル)スルホン、ビス(4−(4−ホルミルシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル)スルホン、2,2'−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6'−ジアルデヒド、2,2'−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−6,6'−ジアルデヒド、1,3−ジホルミルアダマンタン等の脂環式ジアルデヒド等が挙げられる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。これらの中でも、本発明では、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド等の少なくとも1種を好適に用いることができる。
【0016】
本発明では、テトラアミン系化合物とジアルデヒド系化合物とを溶媒中で反応させる。このときの前記溶媒の一部又は全部として、得られるポリイミダゾール前駆体に対して不溶性の溶媒(貧溶媒)を用いる。貧溶媒を使用しない場合は、所望の前駆体微粒子の析出が得られなくなる。前記貧溶媒は、一般にプロトン性極性溶媒から適宜選択することができる。特に、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、1-ペンタノール、イソアミルアルコール、3-ペンタノール、t-アミルアルコール、n-ヘキサノール、メチルアミルアルコール、2-エチルブタノール、n-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、2-オクタノール、ノナノール、n-デカノール、ウンデカノール、n-ドデカノール、シクロヘキサノール、2-メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール等の少なくとも1種を好適に用いることができる。
【0017】
また、溶媒の一部として、得られるポリイミダゾール前駆体に対して可溶性の溶媒(良溶媒)が含まれていても良い。良溶媒を併用することによって、例えばテトラアミン系化合物、ジアルデヒド系化合物等の溶解性を調節することができる。良溶媒としては、一般に非プロトン性溶媒(好ましくは非プロトン性極性溶媒)の中から適宜選択することができる。特に、N-メチルピロリドン、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ニトロメタン、モノメチルメタン、ニトロエタン、ジメチルアミン、1-ニトロプロパン、2-ニトロプロパン、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、アセトフェノン、メチルイソブチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジ-n-プロピルケトン、ジ-イソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸メチル、テトラヒドロフラン、エピクロヒドリン、アセトアニリド、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノール、ジオキサン等の少なくとも1種を好適に用いることができる。
【0018】
反応時に用いる溶媒は、溶媒中における前記貧溶媒の割合が50〜100体積%、好ましくは90〜100体積%とする。前記良溶媒を併用する場合、その良溶媒の割合は、溶媒中1〜50体積%程度、好ましくは1〜10体積%とすれば良い。
【0019】
本発明では、出発原料であるテトラアミン系化合物及びジアルデヒド系化合物はそのままの形態で反応に供することができるが、特にテトラアミン系化合物及びジアルデヒド系化合物の少なくとも一方を前記溶媒に溶解してなる溶液(テトラアミン系化合物溶液又はジアルデヒド系化合物溶液)として用いることが好ましい。このように、反応に先立って予め溶媒に溶解させておくことにより、より効果的に反応を進行させることができる。これらの溶液の濃度は、用いる出発原料の種類等に応じて適宜設定できるが、通常は0.1mmol/L〜1mol/L程度、特に1mmol/L〜100mmol/Lとすることが好ましい。
【0020】
また、本発明では、テトラアミン系化合物とジアルデヒド系化合物との反応は、攪拌しながら行うことが望ましい。攪拌方法は、公知の攪拌手段(スターラー、攪拌機等)を使用することができるが、特に超音波攪拌下で攪拌を実施することが望ましい、超音波攪拌は、公知の超音波洗浄器等を用いて実施することができる。この場合の周波数は限定的ではないが、通常は28〜100kHz程度とすれば良い。また、攪拌時間は、所望の微粒子が生成されるまで適宜設定できるが、一般的には5〜120分程度とすれば良い。攪拌温度(反応温度)は限定されないものの、通常10〜30℃の範囲内で適宜設定すれば良い。
【0021】
第1工程では、テトラアミン系化合物とジアルデヒド系化合物との反応によりポリイミダゾール前駆体(ポリアゾメチン)の微粒子が生成する。生成した微粒子は、必要に応じて、例えばろ過、遠心分離等の公知の固液分離方法に従って回収することができる。さらに、必要に応じて、前記微粒子を洗浄することもできる。
【0022】
2.ポリイミダゾール微粒子の製造方法(第2発明)
ポリイミダゾール微粒子の製造方法は、テトラアミン系化合物とジアルデヒド系化合物とを反応させることによりポリイミダゾールの微粒子を製造する方法であって、
(1)溶媒中でテトラアミン系化合物とジアルデヒド系化合物とを反応させるにあたり、前記溶媒の一部又は全部として前記ポリイミダゾール前駆体に対して不溶性の溶媒を用いることにより、ポリイミダゾール前駆体の微粒子を得る第1工程、
(2)前記前駆体微粒子を閉環反応させることによりポリイミダゾールの微粒子を得る第2工程、
を含むことを特徴とする。
【0023】
第1工程は、第1発明と同様にして実施することができる。すなわち、第2発明では、第2工程として、第1発明の第1工程で得られたポリイミダゾール前駆体の微粒子の閉環反応させることにより、最終的にポリイミダゾールの微粒子を得ることができる。
【0024】
閉環反応自体は、公知のポリイミダゾールの製造方法に従って実施することができる。例えば、前記前駆体を200〜400℃、好ましくは250〜350℃で加熱することによって閉環反応を進行させることができる。この反応は、溶媒の存在下又は不存在下で実施することができる。すなわち、液相又は気相中のいずれで実施しても良い。特に、気相中で閉環反応させる場合は、例えばアルゴン、ヘリウム、窒素等の不活性ガス雰囲気で前駆体微粒子を加熱することが望ましい。
【0025】
3.ポリイミダゾール前駆体微粒子及びポリイミダゾール微粒子
本発明は、ポリイミダゾール前駆体微粒子及びポリイミダゾール微粒子を包含する。
【0026】
ポリイミダゾール前駆体微粒子の粒径は、特に限定されないが、通常は球状であることが好ましい。また、平均粒径は、一般的には30nm〜10μm程度、特に100nm〜5μm程度の範囲内である。ポリイミダゾール前駆体微粒子は、特に前記第1発明により好適に得ることができる。
【0027】
ポリイミダゾール微粒子の粒径は、特に限定されないが、通常は球状であることが好ましい。また、平均粒径は、一般的には30nm〜10μm程度、特に100nm〜5μm程度の範囲内である。ポリイミダゾール微粒子は、特に前記第2発明により好適に得ることができる。
【実施例】
【0028】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0029】
実施例1
モノマーである3,3,4,4-テトラアミノビフェニル0.535gをメタノール:ジメチルアセトアミド(DMAc)=97:3(v/v)の溶液(メタノール/DMAc混合溶媒200ml)に溶解し28kHzの超音波を照射しながらイソフタルアルデヒド0.335gを溶解させたメタノール溶液200mlを加えた。すぐに溶液が濁り沈殿物の生成を確認した。超音波照射下で2時間反応を行った後、遠心分離を行い得られた固体をメタノール洗浄し、ポリイミダゾール前駆体(ポリアゾメチン)微粒子を得た。続いてアルゴンガス雰囲気下、管状炉を用いて270℃で4時間加熱閉環反応を行い、ポリイミダゾール微粒子を得た。得られた微粒子を走査型電子顕微鏡で観察した。その結果を図1に示す。図1からも明らかなように、平均粒径2μm程度の球状粒子が得られることがわかる。
【0030】
実施例2
モノマーである3,3,4,4-テトラアミノビフェニル0.535gをメタノール:ジメチルアセトアミド(DMAc)=97:3(v/v)の溶液(メタノール/DMAc混合溶媒100ml)に溶解し28kHzの超音波を照射しながらイソフタルアルデヒド0.335gを溶解させたメタノール溶液100mlを加えた。すぐに溶液が濁り、沈殿物の生成を確認した。攪拌を72時間行い、遠心分離を行い、得られた固体をメタノール洗浄しポリイミダゾール前駆体(ポリアゾメチン)微粒子を得た。続いてアルゴンガス雰囲気下、管状炉を用いて270℃で4時間加熱閉環反応を行い、ポリイミダゾール球形粒子を得た。得られた微粒子を走査型電子顕微鏡で観察した。その結果を図2に示す。図2からも明らかなように、平均粒径2μm程度の球状粒子が得られることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1で得られたポリイミダゾール微粒子の走査型電子顕微鏡による観察結果を示す図である。
【図2】実施例2で得られたポリイミダゾール微粒子の走査型電子顕微鏡による観察結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラアミン系化合物とジアルデヒド系化合物とを反応させることによりポリイミダゾール前駆体の微粒子を製造する方法であって、
(1)溶媒中でテトラアミン系化合物とジアルデヒド系化合物とを反応させるにあたり、前記溶媒の一部又は全部として前記ポリイミダゾール前駆体に対して不溶性の溶媒を用いることにより、ポリイミダゾール前駆体の微粒子を得る第1工程、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
テトラアミン系化合物とジアルデヒド系化合物とを反応させることによりポリイミダゾールの微粒子を製造する方法であって、
(1)溶媒中でテトラアミン系化合物とジアルデヒド系化合物とを反応させるにあたり、前記溶媒の一部又は全部として前記ポリイミダゾール前駆体に対して不溶性の溶媒を用いることにより、ポリイミダゾール前駆体の微粒子を得る第1工程、
(2)前記前駆体微粒子を閉環反応させることによりポリイミダゾールの微粒子を得る第2工程、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項3】
第1工程において、テトラアミン系化合物及びジアルデヒド系化合物の少なくとも一方を前記溶媒に溶解してなる溶液として用いる、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
第1工程の反応を超音波による攪拌下で行う、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記ポリイミダゾール前駆体に対して不溶性の溶媒が、プロトン性極性溶媒である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記ポリイミダゾール前駆体に対して不溶性の溶媒が、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、1-ペンタノール、イソアミルアルコール、3-ペンタノール、t-アミルアルコール、n-ヘキサノール、メチルアミルアルコール、2-エチルブタノール、n-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、2-オクタノール、ノナノール、n-デカノール、ウンデカノール、n-ドデカノール、シクロヘキサノール、2-メチルシクロヘキサノール及びベンジルアルコールの少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記溶媒中に、前記ポリイミダゾール前駆体に対して可溶性の溶媒がさらに含まれる、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記ポリイミダゾール前駆体に対して可溶性の溶媒が、非プロトン性極性溶媒である、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ポリイミダゾール前駆体に対して可溶性の溶媒が、N-メチルピロリドン、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ニトロメタン、モノメチルメタン、ニトロエタン、ジメチルアミン、1-ニトロプロパン、2-ニトロプロパン、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、アセトフェノン、メチルイソブチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジ-n-プロピルケトン、ジ-イソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸メチル、テトラヒドロフラン、エピクロヒドリン、アセトアニリド、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノール及びジオキサンの少なくとも1種である、請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
平均粒径30nm〜10μmである、ポリイミダゾール前駆体微粒子。
【請求項11】
請求項1に記載の製造方法により得られる、請求項10に記載のポリイミダゾール前駆体微粒子。
【請求項12】
平均粒径30nm〜10μmである、ポリイミダゾール微粒子。
【請求項13】
請求項2に記載の製造方法により得られる、請求項12に記載のポリイミダゾール微粒子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−262160(P2007−262160A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−86425(P2006−86425)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000205627)大阪府 (238)
【Fターム(参考)】