説明

ポリイミドフィルム

【課題】多層の基板を加熱プレスにより積層した際のヒンジ部におけるフィルム同士の密着を低減し、フィルム同士が擦れあっての「音鳴り」トラブルを解消することのできる易滑性に優れたポリイミドフィルムを提供する。
【解決手段】表面にスジ状の凹凸を有し、フィルム表面同士の静摩擦係数が0.1〜0.7、フィルム表面粗さRzが0.8〜3.0μmであるポリイミドフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スジ状の凹凸を有することにより、易滑性に優れ、多層基板を結んでいるヒンジ部の離型性を良好にすることができる易滑性のポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムは、絶縁性、耐熱性、電気特性、機械的特性に優れていることから、例えば銅箔などの金属箔と積層したフレキシブル回路基板用のベースフィルムなどの用途に幅広く利用されている。
【0003】
そして、ポリイミドフィルムがこれらの用途に用いられる際の重要な要求特性の一つとして、フィルム表面の易滑性が挙げられる。フィルム表面が完全に平滑なポリイミドフィルムは滑り性が悪く、フィルム加工工程において、搬送時の支持体(例えばロールなど)との摩擦係数が大きく、しわが入ったり、ロールに巻き付いたりするため、例えばフレキシブルプリント基板を生産する際に、銅箔とのラミネートができないといったトラブルが生じることがある。
【0004】
さらには、多層の基板をボンディングシートを用いて加熱プレスにより積層した際に基板同士を接合する役目をになっているヒンジ部にも熱プレスの影響を受けフィルム同士が密着し合ってしまい、それらを剥がす手間が生じるほか、擦れあって「音鳴り」を起こしてしまうといった不具合が生じることがある。
【0005】
従来、ポリイミドフィルム表面に易滑性を付与する方法として表面の粗面化が挙げられ様々な方法が存在してきた。例えばポリイミドフィルムにリン酸カルシウムなどのフィラーを混合し、フィルム表面に微細な突起を生じさせることにより易滑性を付与する方法(例えば、特許文献1および特許文献2参照)が知られていた。また、ポリイミドがアルカリに溶解性があることを利用し、ポリイミドフィルム表面をアルカリ性溶液で処理して、表面を粗面化させることにより易滑性を付与する方法(例えば、特許文献3参照)が知られていた。これらの方法によってフィルム加工工程の搬送時に生じていた銅箔とのラミネートができないなどのトラブルは解消されたが、ヒンジ部におけるフィルム同士が密着し合うといった不具合、「音鳴り」などの不具合は生じたままであり、さらなるフィルム表面の粗面化が必要であった。
【特許文献1】特開昭62−68852号公報
【特許文献2】特開2002−256085号公報
【特許文献3】特開平6−313055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0007】
したがって、本発明の目的は、多層の基板を加熱プレスにより積層した際のヒンジ部におけるフィルム同士の密着を低減し、フィルム同士が擦れあっての「音鳴り」トラブルを解消することのできる易滑性に優れたポリイミドフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目標を達成するために、本発明のポリイミドフィルムは表面にスジ状の凹凸を有し、JIS K−7125に準じて測定したフィルム表面同士の静摩擦係数が0.1〜0.7であることを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明ポリイミドフィルムは下記(1)〜(4)を併せ持つことが好ましい。
(1)JIS B−0601に準じて測定したフィルム表面粗さRzが0.8〜3.0μmであること。
(2)スジ状の凹凸の高低差が0.05〜4.00μmの範囲にあること。
(3)スジ状の凹凸の幅が0.1〜10μmの範囲であること。
(4)スジ状の凹凸が、0.1〜1000本/mmの範囲で有すること。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリイミドフィルムは、スジ状の凹凸を有することによって、易滑性を高め、その結果フィルム同士の密着が無くなり、折り曲げ時のフィルムの擦れ合いも無くなり、フレキシブルプリント基板のヒンジ部へ好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明のポリイミドフィルムは、JIS K−7125に準じて測定したフィルム表面同士の静摩擦係数が0.1〜0.7であることが好ましく、0.2〜0.6がさらに好ましい。また、これに加えてJIS B−0601に準じて測定したフィルム表面粗さRzが0.8〜3.0μmであることが好ましく、1.0〜2.5μmがさらに好ましい。これらの特性は、フィルム表面上に特定のスジ状の凹凸を付与することによって得ることができる。
【0013】
まず、本発明のポリイミドフィルムへのスジ状の凹凸を付与する方法としては、例えば図1〜図3に示すように、ポリイミドフィルムに研磨テープを接触させて走行させることによって得ることができる。
【0014】
図1において、ポリイミドフィルムは巻出しロール1から送り出され、走行方向に対して逆方向に回転している研磨ロール3の表面を擦過しながら巻取りロール2に巻き取られる。図2では、巻出しロール1を出たポリイミドフィルムは逆方向に回転している研磨ロール3と押さえロール4との間を擦過しながら通り、巻取りロール2に巻き取られる。この時の面圧は1〜10kg/500mmが好ましい。図3では、巻出しロール1を出たポリイミドフィルムは2個の逆方向に回転している研磨ロール3、3’との間を擦過しながら通り、巻取りロール2に巻き取られる。ここでは面圧を高くするとフィルムの走行が困難となるので0.1〜5kg/500mmに面圧を設定しておくことが好ましい。
【0015】
フィルムの片面のみを処理する場合は図1あるいは図2のような方式で処理することができるが、図2の方が研磨ロールをフィルムに接触させる時の圧力をコントロールでき、効率的に凹凸を付与できるので好ましい。フィルムの両面を処理する場合は図3のように処理することによって得ることができる。これらの処理をする際にフィルムに与える張力としては10〜50N/mの範囲で調整することが好ましく、また処理速度は5〜40m/minの範囲で調整することが好ましい。
【0016】
研磨ロールは表面が硬く、粗い状態のものであればよいが、テープに研磨剤をコーティングした研磨テープを通常のロールに貼り付けたものも使用可能である。研磨テープとしては、例えばPETフィルムをベースとし、その上に研磨材がコーティングされている形式のものが挙げられる。そのベースとなるPETフィルムの厚みは25〜75μmの範囲にあると取り扱いやすいので好ましい。研磨材は炭化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化セリウム、ダイヤモンドなどが挙げられ、研磨材の粒度は粗面化したい程度に応じて0.1〜100μmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは1〜50μmの範囲にあることである。この範囲より粒度が大きいとフィルムを荒らしすぎて強度などの機械特性を損ねる恐れがあり、この範囲より粒度が小さいとフィルムの易滑性を付与する効果が低くなるので好ましくない。
【0017】
これらの条件を種々変えることによって、フィルム表面に付与させるスジ状の凹凸における、スジの高低差を0.05〜4.00μmの範囲に調整させることが好ましく、さらにはスジ状の凹凸の幅が0.1〜10μmの範囲に調整させることがより好ましい。また、スジ状の凹凸の密度は0.1〜1000本/mm幅、好ましくは10〜800本/mm幅、より好ましくは100〜500本/mm幅の範囲に調整させることがより好ましい。これによってフィルムへの易滑性を付与することができ、フレキシブルプリント基板のヒンジ部を形成した後、熱プレスの影響を受けてもフィルム同士が密着し合わず、音鳴りなどの不具合を防ぐことができる。
【0018】
スジ状の凹凸の方向は、フィルムの機械送り方向(MD)に平行に沿って付与させること、フィルムの幅方向(TD)に平行に沿って付与させること、また機械送り方向とは斜めに沿って付与させること等、どのように付与させても構わないが、図1〜3に示すようにフィルムの機械送り方向(MD)に平行に沿って付与させる方法が、最も工程的に簡易にできるので好ましい。
【0019】
その他研磨方法については、研磨テープとして円盤状のディスクタイプのものを使用して、これをフィルム表面に回転させながら接触させることで、スジ状の凹凸をまったくのランダム方向に発生させても良い。
【0020】
本発明で使用されるポリイミドフィルムの例としては、ピロメリット酸二無水物および4,4’−ジアミノジフェニルエーテルから得られるポリアミド酸から製造されたポリイミドフィルム、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの4成分から得られるポリアミド酸から製造されたポリイミドフィルム、ピロメリット酸二無水物、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルの3成分から得られるポリアミド酸から製造されたポリイミドフィルム、ピロメリット酸二無水物、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミンの3成分から得られるポリアミド酸から製造されたポリイミドフィルム、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物およびp−フェニレンジアミンから得られるポリアミド酸から製造されたポリイミドフィルム、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物および4,4’−オキシジアニリンから得られるポリアミド酸から製造されたポリイミドフィルム、等が挙げられる。ポリアミド酸からポリイミドへの脱環化は化学的閉環法、熱的閉環法のいずれでも構わない。また加工性改善などを目的として10重量%以下の無機質または有機質の添加物を含有することも可能である。
【0021】
本発明のポリイミドフィルムの厚みは3〜200μmであることが望ましい。すなわち、厚みが3μm未満では形状を保持することが困難となり、また200μmを越えると屈曲性に欠けるため、フレキシブル回路基板用途には不向きである。またポリイミドフィルムの寸法安定性を向上させるために、アニール処理等により低熱収縮化させることや、接着性を向上させるためにプラズマ処理等を行っても良い。
【0022】
かくして、易滑性に優れ、多層フレキシブル板を結んでいるヒンジ部の離型性を良好にすることができる易滑性ポリイミドフィルムを提供することができる。
【実施例】
【0023】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中の各特性は、以下の方法により測定した値である。
【0024】
[摩擦係数(静摩擦係数)]
JIS K−7125に準じて測定した。すなわち、スベリ係数測定装置Slip Tester(株式会社テクノニーズ製)を使用し、フィルム処理面同士を重ね合わせて、その上に200gのおもりを載せ、フィルムの一方を固定、もう一方を100mm/分で引っ張り、摩擦係数を測定した。
【0025】
[フィルムの表面粗さRzの測定]
JIS B−0601「表面粗さ」に基づき、レーザー顕微鏡により測定した。すなわちレーザーテック(株)製走査型レーザー顕微鏡「1LM15W」にて、ニコン製50倍レンズ(CF Plan Apo 50×/0.95 ∞/0 EPI)を用いて、「SURFACE2」モードにてフィルム表面を撮影後、三谷商事(株)製SALTにて、粗さ曲線を作成する時のカットオフ値を0.025mmに設定して、拡張表面粗さ0.01mm以上の面積を解析し、Rz(十点平均粗さ)の値を読み取った。
【0026】
[スジの高低差]
レーザーテック(株)製走査型レーザー顕微鏡「1LM15W」にて、ニコン製50倍レンズ(CF Plan Apo 50×/0.95 ∞/0 EPI)を用いて、「SURFACE1」モードにてフィルム表面を撮影・解析し得られたチャートから各スジの高低差を読み取った。代表値としては無作為に選んだ5点の平均値とし、最大値としては、「SURFACE2」モードで撮影後のSALTでの拡張表面粗さ0.01mm以上の面積での解析による最大高さRyで確認した。
【0027】
[スジ状凹凸の幅]
レーザーテック(株)製走査型レーザー顕微鏡「1LM15W」にて、ニコン製50倍レンズ(CF Plan Apo 50×/0.95 ∞/0 EPI)を用いて、「SURFACE1」モードにてフィルム表面を撮影・解析し、各スジにLキー(左)とRキー(右)を定めてスジ幅を読み取った。この視野で見える中で最大幅のスジを代表値とした。
【0028】
[スジ状凹凸の数(密度)]
レーザーテック(株)製走査型レーザー顕微鏡「1LM15W」にて、ニコン製50倍レンズ(CF Plan Apo 50×/0.95 ∞/0 EPI)を用いて、「SURFACE1」モードにてフィルム表面を撮影し、観察されているスジの数をカウントした。
【0029】
[プレス後の剥離性評価]
研磨処理されたフィルムについて、処理面とは反対側の面に接着剤Pyralux LF100(デュポン社製)を介して34μm厚の圧延銅箔(日鉱マテリアルズ社製)を積層させ、これを2組作成した。この銅張積層体のフィルム面同士を合わせて、180℃×1時間、10MPaの圧力で加熱プレスし、プレス後に2組の銅張積層体が剥離されるかどうかを評価した。手に持って軽く振っても剥離されず密着しているものをNG、取り出して既に剥離しているもの、軽く振ることで簡単に剥離するものをOKとした。
【0030】
[実施例1]
ピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルから得られるポリアミド酸に平均粒径1μmのリン酸水素カルシウムを約0.1重量%混入させ、製造された厚さ25μmのポリイミドフィルムに、粒度20μmの炭化ケイ素を研磨材として用いた研磨テープを使用して、図1の要領にて走行速度10m/minで処理した。得られたフィルムの静摩擦係数は0.46、表面粗さRzは、1.14μmであり、フィルム表面上に付与されたスジ状凹凸の高低差は0.54μm、最大高低差Ryは1.27μm、スジ状凹凸の最大幅は1.5μm、スジ状凹凸の数は219本/mm幅であった。プレス後の剥離性評価については、2組の銅張積層体は剥離しておりOKであった。
【0031】
[実施例2]
図2の要領にて走行速度10m/min、処理面圧3kg/500mmで処理した以外は実施例1と同様にした結果、得られたフィルムの静摩擦係数は0.45、表面粗さRzは、1.75μmであり、フィルム表面上に付与されたスジ状凹凸の高低差は1.39μm、最大高低差Ryは2.58μm、スジ状凹凸の最大幅は7.6μm、スジ状凹凸の数は204本/mm幅であった。プレス後の剥離性評価については、2組の銅張積層体は剥離しておりOKであった。
【0032】
[実施例3]
ピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルから得られるポリアミド酸に平均粒径1μmのリン酸水素カルシウムを約0.1重量%混入させ、製造された厚さ25μmのポリイミドフィルムに、粒度9μmの炭化ケイ素を研磨材として用いた研磨テープを使用して、実施例1と同様図1の要領にて処理した。得られたフィルムの静摩擦係数は0.39、表面粗さRzは、1.39μmであり、フィルム表面上に付与されたスジ状凹凸の高低差は0.44μm、最大高低差Ryは1.12μm、スジ状凹凸の最大幅は1.1μm、スジ状凹凸の数は350本/mm幅であった。プレス後の剥離性評価については、2組の銅張積層体は剥離しておりOKであった。
【0033】
[実施例4]
厚さ12.5μmのポリイミドフィルムを使用した以外は実施例1と同様にした結果、得られたフィルムの静摩擦係数は0.52、表面粗さRzは、1.18μmであり、フィルム表面上に付与されたスジ状凹凸の高低差は0.64μm、最大高低差Ryは1.32μm、スジ状凹凸の最大幅は1.7μm、スジ状凹凸の数は211本/mm幅であった。プレス後の剥離性評価については、2組の銅張積層体は剥離しておりOKであった。
【0034】
[実施例5]
厚さ12.5μmのポリイミドフィルムを使用し、図2の要領にて走行速度10m/min、処理面圧3kg/500mmで処理した以外は、実施例1と同様にした結果、得られたフィルムの静摩擦係数は0.45、表面粗さRzは、1.90μmであり、フィルム表面上に付与されたスジ状凹凸の高低差は1.41μm、最大高低差Ryは2.36μm、スジ状凹凸の最大幅は6.7μm、スジ状凹凸の数は214本/mm幅であった。プレス後の剥離性評価については、2組の銅張積層体は剥離しておりOKであった。
【0035】
[実施例6]
ピロメリット酸二無水物100モル%と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル50モル%、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル50モル%とから得られるポリアミド酸に平均粒径1μmのリン酸水素カルシウムを約0.1重量%混入させ、製造された厚さ25μmのポリイミドフィルムに、粒度20μmの炭化ケイ素を研磨材として用いた研磨テープを使用して、実施例1と同様図1の要領にて処理した。得られたフィルムの静摩擦係数は0.47、表面粗さRzは、1.20μmであり、フィルム表面上に付与されたスジ状凹凸の高低差は0.64μm、最大高低差Ryは1.41μm、スジ状凹凸の最大幅は1.7μm、スジ状凹凸の数は208本/mm幅であった。プレス後の剥離性評価については、2組の銅張積層体は剥離しておりOKであった。
【0036】
[実施例7]
ピロメリット酸二無水物70モル%、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物30モル%と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル80モル%、パラフェニレンジアミン20モル%とから得られるポリアミド酸に平均粒径1μmのリン酸水素カルシウムを約0.1重量%混入させ、製造された厚さ25μmのポリイミドフィルムに、粒度20μmの炭化ケイ素を研磨材として用いた研磨テープを使用して、実施例1と同様図1の要領にて処理した。得られたフィルムの静摩擦係数は0.33、表面粗さRzは、1.25μmであり、フィルム表面上に付与されたスジ状凹凸の高低差は0.72μm、最大高低差Ryは1.38μm、スジ状凹凸の最大幅は1.7μm、スジ状凹凸の数は225本/mm幅であった。プレス後の剥離性評価については、2組の銅張積層体は剥離しておりOKであった。
【0037】
[実施例8]
ピロメリット酸二無水物100モル%と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル70モル%、パラフェニレンジアミン30モル%とから得られるポリアミド酸に平均粒径1μmのリン酸水素カルシウムを約0.1重量%混入させ、製造された厚さ25μmのポリイミドフィルムに、粒度20μmの炭化ケイ素を研磨材として用いた研磨テープを使用して、実施例1と同様図1の要領にて処理した。得られたフィルムの静摩擦係数は0.44、表面粗さRzは、1.16μmであり、フィルム表面上に付与されたスジ状凹凸の高低差は0.66μm、最大高低差Ryは1.37μm、スジ状凹凸の最大幅は1.4μm、スジ状凹凸の数は217本/mm幅であった。プレス後の剥離性評価については、2組の銅張積層体は剥離しておりOKであった。
【0038】
[比較例1]
ピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルから得られ、ポリアミド酸から製造された厚さ25μmのポリイミドフィルムを研磨テープで処理することなく各種特性を測定した。スジ状の凹凸は無く、静摩擦係数は2.20、表面粗さRzは、0.13μmであった。プレス後の剥離性評価については、2組の銅張積層体は完全に密着してしまい手で振っても剥離せずNGであった。
【0039】
[比較例2]
ピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルから得られたポリアミド酸に平均粒径1μmのリン酸水素カルシウムを約0.1重量%混入させ、製造された厚さ25μmのポリイミドフィルムを研磨テープで処理することなく各種特性を測定した。スジ状の凹凸は無く、静摩擦係数は0.74、表面粗さRzは、0.68μmであった。プレス後の剥離性評価については、2組の銅張積層体は完全に密着してしまい手で振っても剥離せずNGであった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のポリイミドフィルムは絶縁性、耐熱性、電気特性、機械的特性に優れかつ,易滑性に優れていることから、例えば銅箔などの金属箔と積層したフレキシブル回路基板用のベースフィルムとして好ましく利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】フィルム表面にスジ状の凹凸を形成させる方法を示す説明図である。
【図2】フィルム表面にスジ状の凹凸を形成させる他の方法を示す説明図である。
【図3】フィルム表面にスジ状の凹凸を形成させるさらに他の方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1:巻出しロール、2:巻取りロール、3,3’:研磨ロール、4:押さえロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にスジ状の凹凸を有し、JIS K−7125に準じて測定したフィルム表面同士の静摩擦係数が0.1〜0.7であることを特徴とするポリイミドフィルム。
【請求項2】
JIS B−0601に準じて測定したフィルム表面粗さRzが0.8〜3.0μmであることを特徴とする請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項3】
スジ状の凹凸の高低差が0.05〜4.00μmの範囲にあることを特徴とする請求項2に記載のポリイミドフィルム。
【請求項4】
スジ状の凹凸の幅が0.1〜10μmの範囲であることを特徴とする請求項3に記載のポリイミドフィルム。
【請求項5】
スジ状の凹凸が、0.1〜1000本/mmの範囲で有することを特徴とする請求項4に記載のポリイミドフィルム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−182842(P2006−182842A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−375848(P2004−375848)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000219266)東レ・デュポン株式会社 (288)
【Fターム(参考)】