説明

ポリイミドフィルム

【課題】耐熱性、寸法安定性、表面平滑性に優れた遮光性ポリイミドフィルムを提供する。
【解決手段】フィルム厚さが2〜50μmの範囲であり、かつ波長450〜700nmの可視光領域での該ポリイミドフィルムの光線透過率が30%以下を示す、芳香族テトラカルボン酸類の残基としてピロメリット酸残基、芳香族ジアミン類の残基としてベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン残基とを有するポリイミドフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子などの電子部品の被覆に用いられる遮光性ポリイミドフィルムなどの遮光性と耐熱性を備えさらに寸法安定性に優れたポリイミドフィルムに関するものであり、詳しくは、ウェハーレベルパッケージや半導体素子等の電子部品の一面を被覆することで、電子装置の誤作動を防止し、部品へのレーザーマーキングを可能とする電子部品被覆用ポリイミドフィルムなどに使用されるポリイミドフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ICおよびLSI等の封止にはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、硬化触媒、無機充填物および添加剤等を混合、混練を行い、ペレット状に加工したものをトランスファー成型して封止を行っている。これら封止用材料としては、エポキシ樹脂材料が多く用いられてきたが、成形品に対する使用条件が近年ますます過酷になってきた結果、従来のエポキシ樹脂では、耐熱性等に関する要求水準を満足することができなくなってきている。例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材、カーボンブラックなどを原料とする半導体封止用樹脂組成物について、YAGレーザーマーキング性が優れていることが示されている(特許文献1参照)。しかしながら、ここに示された樹脂組成物は、一旦成型材料とした後、タブレット化してトランスファー成型して使われるもので、煩雑な工程を必要とするものであった。
ところで、従来、樹脂封止された半導体デバイスは、熱硬化又はUV硬化タイプの特殊なインクでマーキングされていたが、マーキングやその硬化に時間が掛かり、更にインクの取り扱いも容易でないため、最近はレーザーによるマーキングが好んで行われている。このYAG、グリーンおよびCOのレーザー光の短時間照射による印字は、インクによるマーキングよりも作業性に優れ、しかも短時間で終わる方法であるからである。
半導体デバイス等の電子部品の被覆に使用される樹脂材料に要求される特性としては、マーキング部分とマーキングをしていない部分とのコントラストが鮮明であるという上記レーザーマーキング性の他に、ICおよびLSI等の誤作動防止のためには樹脂材料自体が赤外域、紫外域、すなわち350〜2000nmの範囲で透過性がないことが必要である。更に、耐熱性や電子部品との接着性も優れていることが望ましい。ポリイミド樹脂は、耐熱性が高く、また、可とう性を有する材料でもありハンドリング性にも優れることから、これら耐熱性ポリイミド樹脂を構成材料とする新たな電子部品被覆用ポリイミドフィルムが求められ、例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物と、ビス(アミノフェノキシ)アルカン等の芳香族ジアミン及びシロキサンジアミンからなるジアミンとを反応させて得られるポリイミド樹脂を主成分とする樹脂成分に対して、カーボンブラックなどの着色顔料を1.5〜11重量%含有させ、厚み範囲が10〜200μmとした着色ポリイミドフィルムが提案されている(特許文献2参照)が、カーボンブラックなどの着色顔料のポリイミドへの均一分散が困難な場合が多く、得られたフィルムの表面平滑性に課題を有する場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−165875号公報
【特許文献2】特開2004−304024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ポリイミドにカーボンブラックのような遮光性粒子を添加して、フィルム化した遮光性フィルムにおける、添加物の不均一分散や生産性の低下を解決し得て、さらに耐熱特性に優れた特に耐熱寸法安定性に優れたポリイミドフィルムであってかつ表面平滑性にも優れた、ICおよびLSI等の誤作動防止に役立ち、レーザーマーキング性にも優れた、電子部品の保護のみならず視認性にも寄与する電子部品の被覆材料などに好適に用いられるポリイミドフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、以下の構成からなる。
1.芳香族テトラカルボン酸類と芳香族ジアミン類とを重縮合して得られるポリイミドフィルムであって、フィルム厚さが2〜50μmの範囲であり、かつ波長450〜700nmの可視光領域での該ポリイミドフィルムの光線透過率が30%以下を示すことを特徴とするポリイミドフィルム。
2.ポリイミドフィルムの中心線平均表面粗さRaが2〜10nmの範囲内となることを特徴とする1.のポリイミドフィルム。
3.ポリイミドフィルムが、少なくとも芳香族テトラカルボン酸類の残基としてピロメリット酸残基、芳香族ジアミン類の残基としてベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン残基とを有するポリイミドフィルムである1.または2.のいずれかのポリイミドフィルム。
4.フィルム面方向の線膨張係数が−5〜10ppm/℃であり、長手方向および幅方向の引張破断強度がいずれも300MPa以上である1.〜3.のいずれかのポリイミドフィルム。
【発明の効果】
【0006】
本発明の、芳香族テトラカルボン酸類と芳香族ジアミン類とを重縮合して得られるポ
リイミドフィルムであって、フィルム厚さが2〜50μmの範囲であり、かつ波長450〜700nmの可視光領域での該ポリイミドフィルムの光線透過率が30%以下を示すポリイミドフィルムは、表面平滑性にも優れたポリイミドフィルムであってかつ耐熱特性に優れた特に耐熱寸法安定性に優れた遮光性ポリイミドフィルムであり、かつポリイミドフィルムの中心線平均表面粗さRaが2〜10nmであり、またフィルム面方向の線膨張係数が−5〜10ppm/℃で長手方向および幅方向の引張破断強度がいずれも300MPa以上であるポリイミドフィルムである。そのため、本発明のポリイミドフィルムは、ICおよびLSI等の誤作動防止に役立つ、レーザーマーキング性にも優れた、電子部品の保護のみならず視認性にも寄与する電子部品の被覆材料などに好適に用いることができ、産業上極めて有意である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳述する。
本発明におけるポリイミドフィルムは、芳香族テトラカルボン酸類と芳香族ジアミン類とを重縮合して得られるポリイミドフィルムであれば特に限定されるものではないが、例えば芳香族テトラカルボン酸類(無水物、酸、およびアミド結合性誘導体を総称して類という、以下同)と芳香族ジアミン類(アミン、およびアミド結合性誘導体を総称して類という、以下同)とを反応させて得られるポリアミド酸溶液を流延、乾燥、熱処理(イミド化)してフィルムとなす方法で得られるポリイミドフィルムであり、ポリイミドは、特に限定されるものではないが、下記の芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸(無水物)類との組み合わせが好ましい例として挙げられる。
A.ピロメリット酸残基を有する芳香族テトラカルボン酸類、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類との組み合わせ。
B.フェニレンジアミン骨格を有する芳香族ジアミン類とビフェニルテトラカルボン酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
C.ジフェニルエーテル骨格を有する芳香族ジアミン類とピロメリット酸残基を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
中でも特にA.のベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン残基を有するポリイ
ミドフィルムが好ましい。
【0008】
前記のベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類の分子構造は特に限定されるものではなく、具体的には以下のものが挙げられる。これらのジアミンは全ジアミンの70モル%以上することが好ましく、より好ましくは80モル%以上である。
【0009】
【化1】

【0010】
【化2】

【0011】
【化3】

【0012】
【化4】

【0013】
【化5】

【0014】
【化6】

【0015】
【化7】

【0016】
【化8】

【0017】
【化9】

【0018】
【化10】

【0019】
【化11】

【0020】
【化12】

【0021】
【化13】

【0022】
これらの中でも、合成のし易さの観点から、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの各異性体が好ましく、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾールがより好ましい。ここで、「各異性体」とは、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールが有する2つアミノ基が配位位置に応じて定められる各異性体である(例;上記「化1」〜「化4」に記載の各化合物)。これらのジアミンは、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0023】
さらに、全ジアミンの30モル%以下であれば下記に例示されるジアミン類を一種または二種以上を併用しても構わない。そのようなジアミン類としては、例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリルおよび上記芳香族ジアミンの芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシル基、シアノ基、またはアルキル基またはアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基またはアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0024】
前記の芳香族テトラカルボン酸無水物類の分子構造は特に限定されるものではなく、具体的には、以下のものが挙げられる。これらの酸無水物は全酸無水物の70モル%以上することが好ましく、より好ましくは80モル%以上である。
【0025】
【化14】

【0026】
【化15】

【0027】
【化16】

【0028】
【化17】

【0029】
【化18】

【0030】
【化19】

【0031】
これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
さらに、全テトラカルボン酸二無水物の30モル%以下であれば下記に例示される非芳香族のテトラカルボン酸二無水物類を一種または二種以上を併用しても構わない。そのようなテトラカルボン酸無水物としては、例えば、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ペンタン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサ−1−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−エチルシクロヘキサン−1−(1,2),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0032】
前記の芳香族テトラカルボン酸類と芳香族ジアミン類とを反応(重合)させてポリアミド酸を得るときに用いる溶媒は、原料となるモノマーおよび生成するポリアミド酸のいずれをも溶解するものであれば特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等があげられる。これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。溶媒の使用量は、原料となるモノマーを溶解するのに十分な量であればよく、具体的な使用量としては、モノマーを溶解した溶液に占めるモノマーの重量が、通常5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%となるような量が挙げられる。
【0033】
ポリアミド酸を得るための重合反応(以下、単に「重合反応」ともいう)の条件は従来公知の条件を適用すればよく、具体例として、有機溶媒中、0〜80℃の温度範囲で、10分〜30時間連続して撹拌および/または混合することが挙げられる。必要により重合反応を分割したり、温度を上下させてもかまわない。この場合に、両モノマーの添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン類の溶液中に芳香族テトラカルボン酸無水物類を添加するのが好ましい。重合反応によって得られるポリアミド酸溶液の粘度はブルックフィールド粘度計による測定(25℃)で、送液の安定性の点から、好ましくは10〜2000Pa・sであり、より好ましくは100〜1000Pa・sである。
【0034】
重合反応中に真空脱泡することは、良質なポリアミド酸溶液を製造するのに有効である。また、重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封止剤を添加して重合を制御することを行ってもよい。末端封止剤としては、無水マレイン酸等といった炭素−炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。無水マレイン酸を使用する場合の使用量は、芳香族ジアミン類1モル当たり好ましくは0.001〜1.0モルである。
重合反応により得られるポリアミド酸溶液から、ポリイミドフィルムを形成するためには、ポリアミド酸溶液を支持体上に塗布して乾燥することによりグリーンフィルム(自己支持性の前駆体フィルム)を得て、次いで、グリーンフィルムを熱処理に供することでイミド化反応させる方法が挙げられる。支持体へのポリアミド酸溶液の塗布は、スリット付き口金からの流延、押出機による押出し、等を含むが、これらに限られず、従来公知の溶液の塗布手段を適宜用いることができる。
【0035】
支持体上に塗布したポリアミド酸を乾燥してグリーンシートを得る条件は特に限定はなく、温度としては70〜150℃が例示され、乾燥時間としては、5〜180分間が例示される。そのような条件を達する乾燥装置も従来公知のものを適用でき、熱風、熱窒素、遠赤外線、高周波誘導加熱などを挙げることができる。次いで、得られたグリーンシートから目的のポリイミドフィルムを得るために、イミド化反応を行わせる。その具体的な方法としては、従来公知のイミド化反応を適宜用いることが可能である。例えば、閉環触媒や脱水剤を含まないポリアミド酸溶液を用いて、必要により延伸処理を施した後に、加熱処理に供することでイミド化反応を進行させる方法(所謂、熱閉環法)が挙げられる。この場合の加熱温度は100〜500℃が例示され、フィルム物性の点から、より好ましくは、150〜250℃で3〜20分間処理した後に350〜500℃で3〜20分間処理する2段階熱処理が挙げられる。
【0036】
別のイミド化反応の例として、ポリアミド酸溶液に閉環触媒および脱水剤を含有させておいて、上記閉環触媒および脱水剤の作用によってイミド化反応を行わせる、化学閉環法を挙げることもできる。この方法では、ポリアミド酸溶液を支持体に塗布した後、イミド化反応を一部進行させて自己支持性を有するフィルムを形成した後に、加熱によってイミド化を完全に行わせることができる。この場合、イミド化反応を一部進行させる条件としては、好ましくは100〜200℃による3〜20分間の熱処理であり、イミド化反応を完全に行わせるための条件は、好ましくは200〜400℃による3〜20分間の熱処理である。
【0037】
前記ポリイミドフィルムの厚さは、2.0μm〜50.0μmが好ましく、より好ましくは3.0μm〜25μmである。膜厚が50μmより厚いものは、電子部品の軽小化という目的などからして好ましくない。一方、膜厚が2.0μmより薄いと、搬送中に破断しやすく、また皺も入りやすいため製膜が非常に困難であり、かつ遮光性と物性とのバランスが得られ難い。
本発明のポリイミドフィルムには、滑剤をポリイミドフィルム中に添加含有せしめるなどしてフィルム表面に微細な凹凸を付与しフィルムの滑り性を改善することが好ましい。
滑剤としては、無機や有機の0.03μm〜0.3μm程度の平均粒子径を有する微粒子が好ましく、より好ましくは0.05μm〜0.1μmである。具体例として、酸化チタン、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、燐酸水素カルシウム、ピロ燐酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、粘土鉱物などが挙げられる。
【0038】
本発明における、芳香族テトラカルボン酸類と芳香族ジアミン類とを重縮合して得られるポリイミドフィルムであって、フィルム厚さが2〜50μmの範囲であり、かつ波長450〜700nmの可視光領域での該ポリイミドフィルムの光線透過率が30%以下を示すポリイミドフィルムは、上記のポリイミドフィルム作成におけるポリアミド酸溶液の作成時または作成後に、該溶液に均一分散または溶解し、かつ400℃以上の熱処理でも完全に昇華しない化合物を適量添加し、均一分散または溶解させて、その後フィルム化させることで添加化合物が遮光性物としてフィルム内に残存せしめる方法などで得ることができる。添加する化合物としては、例えば、硫黄系やリン系、ヒンダーフェノール系の酸化防止剤などが挙げられるが、該溶液に均一分散または溶解し、かつ400℃以上の熱処理でも完全に昇華しない化合物であれば、その限りではない。この中のうち、リン系酸化防止剤の代表例としては、亜リン酸トリフェニル、フェニルホスホン酸、ポリホスホネート、ジアルキルペンタエリスリトールジホスファイト、およびジアルキルビスフェノールAジホスファイト、Irgamod295などが挙げられる。
【0039】
本発明のポリイミドフィルムに残存する添加化合物はドープ調整段階で均一分散または溶解するため、その添加量は2.5質量%以下でも遮光性の効果を発揮し、好ましくは、1.5質量%以下である。得られるポリイミドフィルムの透過率は、上記化合物の添加量で制御することが可能であり、その添加量とポリイミドフィルムの透過率との関係は添加する化合物の種類に依存する。波長450〜700nmの可視光領域での該ポリイミドフィルムの光線透過率が30%以下であることが、ポリイミドフィルムの物性に影響を与えることなく遮光性を発現するのに好適であり、より好ましくは20%以下である。
【0040】
本発明のフィルムは、そのフィルム面方向の線膨張係数が−5〜10ppm/℃であ
り、長手方向および幅方向の引張破断強度がいずれも300MPa以上であることが好ましい。フィルム面方向の線膨張係数が−5〜10ppm/℃であることで、本発明のフィルムが高温に曝されたときにもその寸法において極めて安定で遮光性フィルムとして有意であり、より好ましくは−3〜5ppm/℃である。この線膨張係数を発現するためには、前記組成を用いること以外に、添加化合物がnmオーダーの一次粒子径を有し、かつ均一に分散することが重要である。本発明で例示した化合物は、前期条件を満たすものである。また、フィルムの引張強度が300MPa以上であることで、本発明のフィルムを用いた加工の場合にフィルム破断の恐れがない点で好ましく、より好ましくは350MPa以上である。また、PCT処理後のフィルムの引張強度が250MPa以上であることで、本発明のフィルムを用いた加工品の形態を保持できる点で好ましく、より好ましくは300MPa以上である。
【0041】
また、ポリイミドフィルムの中心線平均表面粗さRaが2〜10nmであることが好ましく、より好ましくは4〜8nmである。この中心線平均表面粗さを得るためには、前記の種類の滑剤を用いること以外に、遮光材として添加する化合物がnmオーダーの一次粒子径を有することが必要である。
中心線平均表面粗さRaが2〜10nmであることで、電子部品の保護フィルムとして使用する際に電子部品への密着性においても優れたものとなる。
【0042】
本発明のポリイミドフィルムは、無延伸フィルムであっても延伸フィルムであってもよく、ここで無延伸フィルムとは、テンター延伸、ロール延伸、インフレーション延伸などによってフィルムの面拡張方向に機械的な外力を意図的に加えずに得られるフィルムをいう。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
【0044】
1.ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドン(又は、N,N−ジメチルアセトアミド)に溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。(ポリアミド酸溶液の調製に使用した溶媒がN,N−ジメチルアセトアミドの場合は、N,N−ジメチルアセトアミドを使用してポリマーを溶解し、測定した。)
2.ポリイミドフィルムの厚さ
マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定した。
3.ポリイミドフィルムの引張弾性率、引張破断強度および引張破断伸度
測定対象のポリイミドフィルムを、流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)にそれぞれ100mm×10mmの短冊状に切り出したものを試験片とした。引張試験機(島津製作所製、オートグラフ(R) 機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で、MD方向、TD方向それぞれについて、引張弾性率、引張破断強度及び引張破断伸度を測定した。
【0045】
4.ポリイミドフィルムの面方向での線膨張係数(CTE)
測定対象のポリイミドフィルムについて、下記条件にてMD方向およびTD方向の伸縮率を測定し、40〜50℃、50〜60℃、…と10℃の間隔での伸縮率/温度を測定し、この測定を450℃まで行い、50℃から400℃までの全測定値の平均値をCTE(平均値)として算出し、フィルム面方向での線膨張係数(CTE)とした。
装置名 : ブルカーAXS社製 TMA4000S
サンプル長さ : 10mm
サンプル幅 : 2mm
昇温開始温度 : 25℃
昇温終了温度 : 450℃
昇温速度 : 5℃/min
雰囲気 : アルゴン
5.分解温度
窒素雰囲気下で測定対象のポリイミドフィルムを充分に乾燥したものを試料として、下記条件で熱天秤測定(TGA)を行い、試料の重量が3%および5%減る温度を分解温度とした。
装置名 ; MACサイエンス社製TG−DTA2000S
パン ; アルミパン(非気密型)
試料重量 ; 10mg
昇温開始温度 ; 30℃
昇温速度 ; 20℃/min
雰囲気 ; アルゴン
3質量%減少温度(℃)を分解温度3とし、5質量%減少温度(℃)を分解温度5として評価した。
6.可視光領域での光線透過率
測定対象のポリイミドフィルムを、50mm×50mmのサイズに切り出したものを試験片とした。分光光度計(島津製作所製「UV−3150型」)を用い、波長:450〜700nmの範囲で、特定波長の光を照射し、室内の空気の透過率を参照値(ブランク)として測定した。可視光領域での光線透過率は、450〜700nmでの透過率の積算値を測定データ個数で割り返した平均値で評価した。
【0046】
7.P含有率
実施例に記載した、ポリアミド酸溶液に添加したリン化合物のフィルム残存量を評価するため、次の通りの方法を用いた。
試料0.1gを精秤し、密閉系マイクロ波酸分解法により分解した。分解装置は、Anton Paar製Multiwaveを使用し、分解時には、精密分析用硝酸5mlを用いて、分解容器内の最高温度220℃となるようにマイクロ波の出力を調整した。試料が完全に分解したことを確認した後、精製水を用いて希釈定容した。分解液中のリン濃度は、ICP発光分析法により求めた。装置は、リガク製CIROS−120を使用し、測定波長は177.5nmを用いた。定量は検量線法を用いて、硝酸濃度を分解液中の硝酸濃度に合わせた標準液を使用した。
8.フィルムの表面粗さの測定
突起の観測方法:直接位相干渉型顕微鏡vertscan(株式会社菱化システム製)を用いフィルムの表面観察(モード:wave560M、観察視野:75×75μm)を実施し、中心線平均表面粗さRaを算出した。
【0047】
《実施例1》
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール223質量部、N,N−ジメチルアセトアミド4416質量部を加えて完全に溶解させた後,コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(DMAC−ST30、日産化学工業社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)、ピロメリット酸二無水物217質量部を加え、25℃の反応温度で24時間攪拌すると、褐色で粘調なポリアミド酸溶液Aが得られた。この還元粘度は3.9dl/gであった。
このポリアミド酸溶液に下記化20の化合物を0.5質量%(ポリイミドに対して)添加、溶解せしめて後、これをポリエチレンテレフタレート製フィルムA−4100(東洋紡績社製)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし、110℃にて5分間乾燥後、支持体から剥がさずにポリアミド酸フィルムを巻き取った。ポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分、2段目220℃×2分、3段目475℃×4分間の熱処理を行い、テンター通過後20分間に6本のロールを通過させて両面フリーのプロセスを与え、最終的に500mm幅にスリットして、ポリイミドフィルムA1を得た。
得られたポリイミドフィルムA1の物性値を表1に示す。
【0048】
【化20】

【0049】
《実施例2》
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール223質量部、N,N−ジメチルアセトアミド4416質量部を加えて完全に溶解させた後,コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(DMAC−ST30、日産化学工業社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)、ピロメリット酸二無水物217質量部を加え、25℃の反応温度で24時間攪拌すると、褐色で粘調なポリアミド酸溶液Bが得られた。この還元粘度は3.9dl/gであった。
このポリアミド酸溶液に下記化21の化合物を0.5質量%(ポリイミドに対して)添加、溶解せしめて後、これをポリエチレンテレフタレート製フィルムA−4100(東洋紡績社製)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし、110℃にて5分間乾燥後、支持体から剥がさずにポリアミド酸フィルムを巻き取った。ポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分、2段目220℃×2分、3段目475℃×4分間の熱処理を行い、テンター通過後20分間に6本のロールを通過させて両面フリーのプロセスを与え、最終的に500mm幅にスリットして、ポリイミドフィルムA2を得た。
得られたポリイミドフィルムA2の物性値を表1に示す。
【0050】
【化21】

【0051】
《比較例1》
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール223質量部、N,N−ジメチルアセトアミド4416質量部を加えて完全に溶解させた後,コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(DMAC−ST30、日産化学工業社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)、ピロメリット酸二無水物217質量部を加え、25℃の反応温度で24時間攪拌すると、褐色で粘調なポリアミド酸溶液Cが得られた。この還元粘度は3.9dl/gであった、この溶液そのままを、ポリエチレンテレフタレート製フィルムA−4100(東洋紡績社製)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし、110℃にて5分間乾燥後、支持体から剥がさずにポリアミド酸フィルムを巻き取った。ポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分、2段目220℃×2分、3段目475℃×4分間の熱処理を行い、テンター通過後20分間に6本のロールを通過させて両面フリーのプロセスを与え、最終的に500mm幅にスリットして、ポリイミドフィルムA3を得た。
得られたポリイミドフィルムA3の物性値を表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
なお、表1中における/の前はMD方向、後はTD方向の値を示す。また、PCT後は、A4サイズに切り出したフィルムを、平山製作所製の超加速寿命試験装置PC−242IIIに投入し、プレッシャークッカーテスト(PCT)処理(条件121℃・2atm・96時間)を行った、処理後のフィルム物性を示し、常態はこの処理を行う前の未処理フィルム物性を示す。
【0054】
《応用例》
実施例1における、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾールとピロメリット酸二無水物との組み合わせを、(1)ジアミノジフェニルエーテルとピロメリット酸二無水物の組み合わせ、(2)フェニレンジアミンとジフェニルテトラカルボン酸二無水物の組み合わせに変えた以外は同様にしてフィルムを作成した。
得られたフィルムの評価結果は、表1における実施例1の結果とほぼ同様の結果であった。
また比較例と同様にして、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾールとピロメリット酸二無水物との組み合わせを、(1)ジアミノジフェニルエーテルとピロメリット酸二無水物の組み合わせ、(2)フェニレンジアミンとジフェニルテトラカルボン酸二無水物の組み合わせに変えた以外は同様にしてフィルムを作成した。
得られたフィルムの光線透過率の評価結果は、表1における比較例1の結果とほぼ同様の結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の、芳香族テトラカルボン酸類と芳香族ジアミン類とを重縮合して得られるポリイミドフィルムであって、フィルム厚さが2〜50μmの範囲であり、波長450〜700nmの可視光領域での該ポリイミドフィルムの光線透過率が30%以下を示すポリイミドフィルムは、耐熱特性に優れた特に耐熱寸法安定性に優れたポリイミドフィルムであり、表面平滑性にも優れた遮光性ポリイミドフィルムであり、ポリイミドフィルムの表面粗さRaが2〜10μmであり、またフィルム面方向の線膨張係数が−5〜10ppm/℃であり、長手方向および幅方向の引張破断強度がいずれも300MPa以上でありポリイミドフィルムである。そのため、本発明のポリイミドフィルムは、ICおよびLSI等の誤作動防止に役立つ、レーザーマーキング性にも優れた、電子部品の保護のみならず視認性にも寄与する電子部品の被覆材料などに好適に用いることができ、太陽電池モジュールのバックシート、薄膜系太陽電池にも好適に用いることができるので、産業上極めて有意義である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族テトラカルボン酸類と芳香族ジアミン類とを重縮合して得られるポリイミドフィルムであって、フィルム厚さが2〜50μmの範囲であり、かつ波長450〜700nmの可視光領域での該ポリイミドフィルムの光線透過率が30%以下を示すことを特徴とするポリイミドフィルム。
【請求項2】
ポリイミドフィルムの中心線平均表面粗さRaが2〜10nmの範囲内となることを特徴とする請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項3】
ポリイミドフィルムが、少なくとも芳香族テトラカルボン酸類の残基としてピロメリット酸残基、芳香族ジアミン類の残基としてベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン残基とを有するポリイミドフィルムである請求項1または2のいずれかに記載のポリイミドフィルム。
【請求項4】
フィルム面方向の線膨張係数が−5〜10ppm/℃であり、長手方向および幅方向の引張破断強度がいずれも300MPa以上である請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミドフィルム。

【公開番号】特開2010−209245(P2010−209245A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58081(P2009−58081)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】