説明

ポリウレタンフォームの製造方法

【課題】従来のポリウレタンフォームの製造方法においては、ボイド、ピンホール等の欠陥の低減と、耐熱性、ポリウレタンフォームからのウレタン化触媒に由来するVOC低減の両立が不十分であった。
【解決手段】活性水素化合物を主成分とする原料組成物およびポリイソシアネートを主成分とする原料組成物を少なくとも含む二種以上の原料組成物を、活性水素化合物に対し0.3〜5.0重量%のウレタン化触媒の存在下に反応させてポリウレタンフォームを成形した後、該ポリウレタンフォームに含まれるウレタン化触媒をポリウレタンフォームに対して0.15重量%以下になるまで除去することを特徴とするポリウレタンフォームの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリウレタンフォームの製造方法に関するものである。さらには、ボイド、ピンホール等の欠陥を低減できるとともに、耐熱性が良好で、ポリウレタンフォームからのアミン触媒に由来するVOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)を低減可能なポリウレタンフォームの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームはクッション性、断熱性等の優れた物性を有することから、産業用部品から一般消費者にわたる最終製品まで、種々の用途に使用されている。
【0003】
ポリウレタンフォームの製造方法としては、ポリイソシアネートを主成分とする原料とポリオールを主成分とする原料をRIM(Reaction Injection Molding)成形機により混合した後、原料混合液を成形用型内に注入,硬化する方法が一般的であり、発泡方法としては、(1)あらかじめ加熱により気化する液体,固体(例えば、フロン,メチレンジクロライド,ペンタン,アゾ系等各種有機系発泡剤)を原料中に混合し、反応時の発熱により発生した気体で発泡する方法、(2)ポリオール成分とする原料中に加えられた水とポリイソシアネート成分との反応で発生する炭酸ガスにより発泡する方法等が公知である。また、発泡剤の低減,原料注入時の流動性向上,低密度化,気泡径の制御等の目的で、ポリオール成分に気体を混合,溶解させるガスローディング法やメカニカルフロス法が、前述の製造方法と組み合わされて一般的に行われている(例えば、特許文献1)。
【0004】
ポリウレタンフォームを例えば生活用品や玩具等、その表面が露出し一般消費者の目に触れる用途に使用する場合、ポリウレタンフォーム表面にはボイド,ピンホール等の欠陥がないことが求められるが、ガスローディング法やメカニカルフロス法で製造したポリウレタンフォームにはボイド,ピンホール等の欠陥が発生しやすいことが問題であった。そのため、成形方法について種々の検討がなされており、特に、成形用型にあるガス排出孔の孔の位置、数、大きさが大きなポイントであると認識されている。これはポリウレタンフォーム原料を成形用型内に注入後、発泡しつつ充填して行く過程での残留ガスや余分の発泡ガスの成形用型外への排出性向上が目的である(例えば、特許文献2)。
【0005】
しかしながら、この方法では成形体表面のボイド,ピンホール等の欠陥を低減させることが可能ではあるが、成形体内部のボイド,ピンホール等の欠陥は成形体表面ほど低減することができないため、例えばウェットスーツ等の衣料用途や電子部品,研磨用部材等、厚い成形体を薄くスライスして使用する用途においては、製品表面にボイド,ピンホール等の欠陥が残り表面品位が不良となるため不適であった。
【0006】
また、半導体基板や光学部材、磁気ヘッド,ハードディスク等の電子材料等の研磨に使用される研磨パッドのような研磨用部材に使用する場合においては、表面品位の不良だけでなく、研磨後の製品に傷(スクラッチ)が入る等、研磨特性の悪化も懸念されるため不適であった。すなわち、従来のポリウレタンフォームおよびその製造方法においては、成形体内部のボイド,ピンホール等の欠陥の低減が不十分であった。
【特許文献1】特開平7−1493号公報
【特許文献2】特開平7−165084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らはこれらの問題を解決すべく鋭意検討した結果、ウレタン化反応時のウレタン化触媒量を特定範囲内に増量してウレタン化反応速度を速めることで、成形体内部のボイド,ピンホール等の欠陥を低減可能なことを見出した。
【0008】
しかしながら、ウレタン化反応速度を速めるためにウレタン化触媒を増量すると、ポリウレタンフォームの耐熱性が低下したり、ポリウレタンフォームからのウレタン化触媒に由来するVOCの増加により、例えば自動車部品用途に使用した場合にはフォギングと称されるウィンドウガラスの曇りが生じたり、人体に悪影響を及ぼす可能性が高くなることが問題であった。
【0009】
そこで、ポリウレタンフォームを成形後、得られるポリウレタンフォームに含まれるウレタン化触媒量を特定範囲以下になるまで除去することを組み合わせることにより、ボイド、ピンホール等の欠陥を低減できるとともに、耐熱性が良好で、ポリウレタンフォームからのウレタン化触媒に由来するVOCを低減可能なことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明の目的は、ボイド、ピンホール等の欠陥を低減できるとともに、耐熱性が良好で、ポリウレタンフォームからのウレタン化触媒に由来するVOCを低減可能なポリウレタンフォームの製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題の解決のために本発明は以下の構成からなる。
【0012】
「活性水素化合物を主成分とする原料組成物およびポリイソシアネートを主成分とする原料組成物を少なくとも含む二種以上の原料組成物を、活性水素化合物に対し0.3〜5.0重量%のウレタン化触媒の存在下に反応させてポリウレタンフォームを成形した後、該ポリウレタンフォームに含まれるウレタン化触媒をポリウレタンフォームに対して0.15重量%以下になるまで除去することを特徴とするポリウレタンフォームの製造方法」
【発明の効果】
【0013】
本発明により、ボイド、ピンホール等の欠陥を低減できるとともに、耐熱性が良好で、ポリウレタンフォームからのウレタン化触媒に由来するVOCを低減可能なポリウレタンフォームの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のポリウレタンフォームの製造方法は、ポリウレタンフォームのボイド、ピンホール等の欠陥を低減するとともに、耐熱性を向上し、ポリウレタンフォームからのウレタン化触媒に由来するVOCを低減するために、活性水素化合物を主成分とする原料組成物およびポリイソシアネートを主成分とする原料組成物を少なくとも含む二種以上の原料組成物を、活性水素化合物に対し0.3〜5.0重量%のウレタン化触媒の存在下に反応させてポリウレタンフォームを成形した後、該ポリウレタンフォームに含まれるウレタン化触媒をポリウレタンフォームに対して0.15重量%以下になるまで除去することが必須である。
【0015】
本発明におけるポリウレタンとは、ポリイソシアネートの重付加反応または重合反応に基づき合成される高分子をいう。ポリイソシアネートの対称として用いられる化合物は、活性水素化合物、すなわち、二つ以上のヒドロキシ基、あるいはアミノ基含有化合物である。典型的には、ポリイソシアネートとポリオール等の活性水素化合物との反応によって多数のウレタン結合を分子鎖中に有するポリマーを指すが、これに限定されるものではなく、ポリイソシアネートがポリマー形成反応に関与したものであればウレア結合等、ウレタン結合以外の結合を有するポリマーも本発明におけるポリウレタンに包含される。
【0016】
また、本発明におけるポリウレタンフォームとは、上述した方法等によりポリウレタンを発泡させたものをいう。
【0017】
ポリイソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、これらの変性物(例えば、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシヌアレート基、またはオキサゾリドン基含有変性物など)等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0018】
芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、1,3−および/または1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(粗製MDI)、などが挙げられる。
【0019】
脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0020】
脂環式ポリイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0021】
芳香脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0022】
変性ポリイソシアネートの具体例としては、ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDIなどが挙げられる。
【0023】
活性水素化合物としてはポリヒドロキシ基含有化合物であるポリオールが代表的であり、例えば、少なくとも2個の活性水素を含有する化合物(多価アルコール、多価フェノール、アミン、ポリカルボン酸、リン酸等)にアルキレンオキサイドが付加された構造の化合物(ポリエーテルポリオール)、ポリエステルポリオール、重合体ポリオール、多価アルコール、アルカノールアミン等が挙げられる。
【0024】
本発明におけるウレタン化触媒としては、ウレタン化反応を促進する公知の触媒を使用できる。具体的には、トリエチレンジアミン,ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル,N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン,N,N,N’,N’ ’,N’ ’−ペンタメチルジエチレントリアミン,N−メチル−N’−(2−ジメチルアミノエチル)ピペラジン,トリエチルアミン,N−メチルモルホリン,N−エチルモルホリン等の3級アミンおよびそのカルボン酸塩、オクチル酸鉛,ジブチル錫ジラウレート等のカルボン酸金属塩などの有機金属化合物等が挙げられる。これらは単独および2種以上の併用のいずれでも好ましく使用できる。また、これらの中でも環境への負荷の点から3級アミンが好ましい。
【0025】
また本発明は、悪臭,毒性等の成形時の作業環境上の問題や、成形後のポリウレタンフォームへの残留によるVOCの問題等から、沸点が150℃以上であるウレタン化触媒を使用する場合に好ましく使用される。このようなウレタン化触媒の中でも、ボイド、ピンホール等の欠陥を低減するために所望のウレタン化反応速度に調整するのが容易であることから、トリエチレンジアミン,ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテルから選ばれる少なくとも一種が好ましく使用できる。
【0026】
本発明におけるウレタン化触媒の使用量は、活性水素化合物に対し0.3〜5.0重量%であることが必須である。ウレタン化触媒量が0.3重量%未満である場合は、ウレタン化反応速度が遅くなるため、得られるポリウレタンフォームにボイド,ピンホール等の欠陥が多くなる,成形サイクルが遅くなる等の傾向があり、5.0重量%を超える場合は、ウレタン化反応速度が速くなり過ぎるため、ポリウレタンフォーム成形時の原料注入工程に支障を来す,得られるポリウレタンフォームの構造物性制御が困難になる,後述するウレタン化触媒除去の際、除去されずに残留するウレタン化触媒量が増加するため、得られるポリウレタンフォームの耐熱性が低下する,得られるポリウレタンフォームからのVOCが増加する等の傾向がある。ウレタン化触媒の使用量が活性水素化合物に対し0.4〜4.0重量%、さらには0.5〜3.0重量%であることが好ましく、0.7〜2.0重量%であることがより一層好ましい。
【0027】
本発明においてはポリウレタンフォームを成形した後、該ポリウレタンフォームに含まれるウレタン化触媒をポリウレタンフォームに対して0.15重量%以下になるまで除去することが必須である。ポリウレタンフォームに含まれるウレタン化触媒がポリウレタンフォームに対して0.15重量%を超える場合は、ポリウレタンフォームの耐熱性が低下する,得られるポリウレタンフォームからのVOCが増加する等の傾向がある。ポリウレタンフォームに含まれるウレタン化触媒をポリウレタンフォームに対して0.14重量%以下になるまで除去することが好ましく、0.13重量%以下になるまで除去することがさらに好ましい。
【0028】
ポリウレタンフォームに含まれるウレタン化触媒を除去する方法は特に限定されるものではない。具体的には加熱,溶媒による抽出等を挙げることができる。中でもポリウレタンフォームへのダメージが少ない,抽出後の溶媒乾燥工程が不要である等の点で、加熱による除去が好ましい。加熱温度は特に限定されるものではなく使用されるウレタン化触媒の種類等によって適宜決められるべきものであるが、あまり加熱温度が高いとウレタン化触媒除去工程でポリウレタンフォームの熱劣化が起こってしまう。具体的には20〜100℃、さらには20〜90℃であることが好ましく、20〜80℃であることがより一層好ましい。
【0029】
また、加熱温度の低温化,ウレタン化触媒除去工程の時間短縮のため、ウレタン化触媒を減圧下で除去することも好ましい。減圧時における到達真空度は特に限定されるものではないが、100Torr以下、さらには50Torr以下であることが加熱温度の低温化,ウレタン化触媒除去工程の時間短縮のため好ましく、10Torr以下であることがより一層好ましい。ウレタン化触媒を減圧下で除去する方法は特に限定されるものではないが、具体的には、市販の真空乾燥機中にポリウレタンフォームを入れ減圧,加熱する方法が簡便であり好ましい。
【0030】
本発明におけるポリウレタンフォームの成形方法は特に限定されるものではない。具体的には、成形用型内に活性水素化合物を主成分とする原料組成物とポリイソシアネートを主成分とする原料組成物を少なくとも含む二種以上の原料組成物を入れ、ミキサー等で混合しそのまま発泡させる方法、活性水素化合物を主成分とする原料組成物とポリイソシアネートを主成分とする原料組成物を少なくとも含む二種以上の原料組成物を低圧発泡機等で混合した後、原料混合液をベルトコンベア上に吐出し連続的にポリウレタンフォームを得る方法、活性水素化合物を主成分とする原料組成物とポリイソシアネートを主成分とする原料組成物を少なくとも含む二種以上の原料組成物をRIM成形機により混合した後、原料組成物混合液を成形用型内に注入,硬化してポリウレタンフォームを得る方法等を挙げることができる。
【0031】
その際、少なくとも一種の原料組成物中にはウレタン化触媒、発泡剤(水,フロン,メチレンジクロライド,ペンタン,アゾ系等各種有機系発泡剤等)、整泡剤(シリコーン化合物、特に各種ポリエーテル変性シリコーン等)、鎖延長剤,架橋剤(多価アルコール類,多価アミン類)等が適宜加えられる。なお、発泡剤としては、環境への負荷が小さい点で水を使用することが好ましい。
【0032】
また、これら以外にも特性改良を目的として、潤滑剤,帯電防止剤,酸化防止剤,安定剤,研磨剤,有機および無機フィラー,染料,香料等の各種添加剤を添加することができる。中でも密度,気泡径の制御がしやすく、所望の形状の発泡ポリウレタンが得られる点で、活性水素化合物を主成分とする原料組成物とポリイソシアネートを主成分とする原料組成物を少なくとも含む二種以上の原料組成物をRIM成形機により混合した後、原料組成物混合液を成形用型内に注入,硬化してポリウレタンフォームを得る方法が好ましい。なお、RIM成形機とは(1)温度調節可能な原料タンク,(2)計量ポンプ,(3)ミキシングヘッド,(4)ミキシングヘッド用油圧ユニットの各機構からなる成形機をいう。
【0033】
また、成形用型は注入された原料の漏れがなく、原料の発泡硬化時の圧力に耐えうるものであれば、形状,材質等は特に限定されるものではないが、気泡径,密度が良好に制御され、表面状態の良いポリウレタンフォームを得るためには、(1)原料の二次混合を行うためのアフターミキサー機能を有するランナー部,(2)乱流である原料混合液を層流となるように整流するためのフィルムゲート部,(3)空気抜き用孔,(4)型締め用プレス機構,(5)傾斜機構を有することが好ましい。
【0034】
また、本発明のポリウレタンフォームの成形方法は活性水素化合物を主成分とする原料組成物に対し1〜50容量%の割合で気体を混合または溶解させた原料組成物と、ポリイソシアネートを主成分とする原料組成物を、ミキシングヘッドに供給する工程、混合された原料組成物をミキシングヘッドから成形用型に注入する工程を有することが好ましい。ポリオールを主成分とする原料組成物中に、混合または溶解される気体は、気泡径の制御,原料注入時の流動性向上に作用する。
【0035】
混合または溶解される気体の量が1容量%を下回ると、気泡径の制御,原料注入時の流動性向上効果が小さくなるため、得られるポリウレタンフォームの気泡径が増大したり、密度が高くなる傾向があり、50容量%を超えると原料の特性上や装置の性能上、混合または溶解が困難となる傾向がある。ポリオールを主成分とする原料組成物に対し5〜40容量%の気体を混合または溶解することが、気泡径の制御,原料注入時の流動性向上効果を安定して得る上でより好ましい。
【0036】
気体の混合または溶解方法は特に限定されるものではない。原料組成物の入った原料タンクの背圧を溶解させる気体で加圧状態にし、原料組成物をミキサーで撹拌する方法が簡便であり好ましい。また、気体の混合または溶解量の測定と原料の撹拌速度を自動制御できる市販の装置(例えば、ポリマーエンジニアリング(株)製エアーローディングユニット“TA−200A−12”)を使用すれば、気体の混合または溶解量の調整が簡便に可能であるため好ましい。気体の種類は特に限定されるものではない。具体的には空気,窒素,アルゴン,ヘリウム,二酸化炭素等が挙げられる。
【0037】
これらの中でも、気体の混合または溶解量の制御が容易な点や得られるポリウレタンフォームの気泡の径が小さく,数が多いものが得られる点から、空気,窒素,アルゴンから選ばれる少なくとも一種の気体を使用することが好ましい。
【0038】
ポリオールを主成分とする原料組成物とポリイソシアネートを主成分とする原料組成物を別々の原料タンク内で気体の混合または溶解や温度調節をした後に、計量ポンプにより所定量をミキシングヘッドに供給し、混合すると同時に成形用型に注入、硬化することでポリウレタンフォームを得ることができる。
【0039】
本発明のポリウレタンフォームは、マットレス,寝具,家具,自動車・航空機用シート等のクッション材,インパネ,ハンドル等の自動車用部品,機械用部品,電子材料,研磨用部材,吸音材,断熱材,緩衝材,生活用品,衣料,玩具等のあらゆる用途に使用可能である。これらの中でも、成形体内部にボイド,ピンホール等の欠陥が少ないという特徴から、ウェットスーツ等の衣料用途や電子部品,研磨用部材等、厚い成形体を薄くスライスして使用する用途において好ましく使用することができる。また、耐熱性が良好で、ポリウレタンフォームからのウレタン化触媒に由来するVOCが少ないという特徴から自動車部品のような高温下で使用する用途において好ましく使用することができる。さらには、その構造,特性上の特徴から、特に研磨用部材および/または研磨用部材の原材料として好ましく使用することができる。
【0040】
研磨用部材としてはシリコンウェーハ等の半導体基板や、レンズ等の光学部材、磁気ヘッド,ハードディスク等の電子材料等の研磨に使用される研磨パッド、被研磨物の研磨ヘッドへの保持に使用されるバッキングパッドが挙げられる。これらの中でもシリコンウェーハ等の半導体基板の研磨に使用される研磨パッドとして好ましく使用することができる。半導体基板中の被研磨物としては、ベアシリコン、二酸化珪素等の層間絶縁膜、アルミ,タングステン,銅等の金属配線等が挙げられる。これらの中でも被研磨物にスクラッチが発生しにくい特徴から、スクラッチが半導体デバイス製造上致命的なダメージとなる被研磨物であり、軟質のためスクラッチが発生しやすいアルミ,タングステン,銅等の金属配線用の研磨パッドとして好ましく使用することができる。また、研磨パッドが研磨層とクッション層の二層構造である場合においては、研磨層,クッション層のいずれにも好適に使用可能である。
【0041】
また、研磨用部材として使用する際には、硬度の調整や親水性,疎水性付与等の特性改質のため、本発明のポリウレタンフォームを原材料とし、それに付加重合、重縮合、重付加、付加縮合、開環重合等の重合反応可能なモノマーを含浸させ、重合,硬化することも好ましい。具体的なモノマーとしてはビニル化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物等が挙げられる。なお、これらのモノマーは一種であっても二種以上を混合しても良い。耐熱性が高い特徴を有する本発明のポリウレタンフォームの使用により、重合時の外部加熱や重合時の内部発熱によるポリウレタンフォームの熱劣化を抑えることが可能である。
【0042】
本発明のポリウレタンフォームを研磨パッドとして使用する場合、その平均気泡直径が10〜100μmで、かつ直径400μm以上の気泡数が100cm当たり30個以下であることが好ましい。平均気泡直径が10μm未満である場合は研磨スラリーの保持性が低いため研磨速度が遅くなる傾向があり、平均気泡直径が100μmを超える場合は研磨パッドの圧縮変形が大きくなり、研磨精度や研磨安定性が不良になる傾向がある。直径400μm以上の気泡数が100cm当たり30個を超えると、表面品位が不良となり、被研磨物にスクラッチが入りやすい傾向がある。
【0043】
平均気泡直径は20〜90μmであることが好ましい。直径400μm以上の気泡数は100cm当たり20個以下であることがより好ましい。なお、平均気泡直径はポリウレタンフォームをスライスした0.4mm以上の断面を倍率200倍でSEM観察し、次に記録されたSEM写真の気泡径を画像処理装置で測定し、その平均値を取ることにより測定した値をいう。また、直径400μm以上の気泡数は、ポリウレタンフォームをスライスした900cm以上の断面を長さ計測可能な顕微鏡で観察しながらカウントし、100cm当たりの個数に換算することにより測定した値をいう。
【0044】
本発明のポリウレタンフォームの気泡は、連続気泡,独立気泡のいずれであっても良いが、研磨パッドとして使用する場合は独立気泡であることが好ましい。連続気泡の場合は、研磨中に研磨スラリーが連続気泡を通じて研磨パッドの内部に浸透して固着することで、硬度,弾性率等の研磨パッド物性が経時的に変化して研磨安定性が悪化したり、被研磨物にスクラッチが入ることが懸念される。
【0045】
本発明のポリウレタンフォームの密度は、0.2〜1.0g/cmであることが好ましい。密度が0.2g/cm未満である場合は、研磨中の研磨パッドの圧縮変形が大きいため研磨精度が悪化しやすく、1.0g/cmを超える場合は、研磨中の研磨パッドの圧縮変形が小さく、被研磨物のうねりや凹凸に追随できないため研磨精度が悪化しやすい傾向がある。密度が0.3〜1.0g/cmであることがより好ましい。なお、密度は日本工業規格(JIS)K 7222記載の方法により測定した値をいう。
【0046】
本発明のポリウレタンフォームのC型硬度は、30〜90度であることが好ましい。C型硬度が30度未満である場合は、研磨中の研磨パッドの圧縮変形が大きいため研磨精度が悪化しやすく、90度を超える場合は、研磨中の研磨パッドの圧縮変形が小さく、被研磨物のうねりや凹凸に追随できないため研磨精度が悪化しやすい傾向がある。C型硬度が40〜90度の範囲であることがより好ましい。なお、C型硬度は“アスカーC型硬度計”(高分子計器(株)製)により測定した値をいう。
【0047】
本発明により、ボイド、ピンホール等の欠陥を低減できるとともに、耐熱性が良好で、ポリウレタンフォームからのウレタン化触媒に由来するVOCを低減可能なポリウレタンフォームの製造方法を提供することができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例によって、さらに本発明の詳細を説明する。
【0049】
実施例および比較例におけるポリウレタンフォーム原料は次の通りである。
(1)ポリオ−ル−1:平均官能基数3.0、水酸基価28、EO単位の合計含有量27重量%、末端EO単位の含有量15重量%であるグリセリンのPO・EO・PO・EOブロック付加物
(2)ポリオ−ル−2:エチレングリコール、水酸基価1810
(3)ウレタン化触媒−1:トリエチレンジアミンの33重量%ジプロピレングリコ−ル溶液(花王(株)製“カオーライザー(登録商標)”No.31)
(4)ウレタン化触媒−2:ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテルの70重量%ジプロピレングリコール溶液(東ソ−(株)製“TOYOCAT(登録商標) ET”)
(5)整泡剤:ゴールドシュミットAG(株)製“TEGOSTAB(登録商標)”B−8474
(6)発泡剤:水
(7)ポリイソシアネ−ト:イソシアネート基含有量17重量%のMDI系イソシアネートプレポリマー(三洋化成工業(株)製“サンフォーム(登録商標)”NC−703)
ポリウレタンフォームの各種評価は以下のようにして行った。
【0050】
残存ウレタン化触媒量は次のようにして測定した。
(1)試料前処理
ポリウレタンフォーム約150mgを一辺約2mmのサイコロ状に切り出した後、クロロホルム2mlで12時間、23℃の室温下で浸漬抽出を行った。
(2)定量分析
(1)の抽出液2mlについて、以下の測定条件でガスクロマトグラフ測定を行い、濃度既知の標準液から作成した検量線を用いて、残存ウレタン化触媒量を定量した。
【0051】
装置:ガスクロマトグラフ“GC−2010”((株)島津製作所製)
カラム:“DB−WAX”(J&W社製)0.25mmID×30m,膜厚0.25μm
オーブン濃度:50〜240℃,昇温8℃/分
注入口温度:250℃
検出器温度:250℃
圧力:110kPa
注入法:スプリット(50:1)
平均気泡直径は、走査型電子顕微鏡“SEM2400”(日立製作所(株)製)を使用し、パッド断面(面積0.4mm)を倍率200倍で観察した写真を画像処理装置で解析することにより、写真中に存在するすべての気泡径を計測し、その平均値を平均気泡直径とした。
【0052】
直径400μm以上の気泡数は、ポリウレタンフォームをスライスした断面(面積900cm)をレーザー顕微鏡“VK−8500”((株)キーエンス製)で観察しながら直径400μm以上の気泡個数をカウントし、100cm当たりの個数に換算することにより測定した。
【0053】
密度は、JIS K 7222記載の方法により測定した。
【0054】
C型硬度は、加熱処理前および130℃,12h加熱処理後のポリウレタンフォームを“アスカーC型硬度計”(高分子計器(株)製)により測定した。なおポリウレタンフォームは測定前に23℃,40%RHの室内で24h静置したものを使用した。その後、以下の式により硬度保持率を求めた。なお、硬度保持率は耐熱性の指標となる。
【0055】
硬度保持率(%)=(加熱処理後C型硬度)/(加熱処理前C型硬度)×100
研磨評価は次のようにして行った。
(1) テストウェーハ
酸化膜(SiO)付き4インチシリコンウェーハ(膜厚:1μm)を使用した。
(2)研磨方法
評価すべき研磨パッドを研磨機“LM−15E”(ラップマスターSFT(株)製)の定盤上に貼り付けた。その後、ダイヤモンドドレッサー“CMP−M”(旭ダイヤモンド工業(株)製)(直径142mm)を用い、押し付け圧力0.04MPa、研磨定盤回転数25rpm、ドレッサー回転数25rpmで研磨定盤と同方向に回転させ、純水を10ml/分で研磨パッド上に供給しながら5分間、研磨パッドのコンディショニングを行った。純水を100ml/分で研磨パッド上に供給しながら研磨パッド上を2分間洗浄した後に、表面の酸化膜の厚みを、あらかじめ“ラムダエース”VM−2000(大日本スクリーン製造(株)製)を使用して決められた198点につき測定したテストウェーハを研磨ヘッドに取り付け、取扱説明書に記載された使用濃度の研磨スラリー“SS−25”(キャボット・マイクロエレクトロニクス・ジャパン(株)製)を35ml/分で研磨パッド上に供給しながら、研磨圧力0.04MPa、研磨定盤回転数45rpm、研磨ヘッド回転数45rpmで研磨定盤と同方向に回転させ、所定時間研磨を行った。
【0056】
ウェーハ表面を乾燥させないようにし、直ちに純水をかけながらポリビニルアルコールスポンジでウェーハ表面を洗浄し、自然状態に放置して乾燥を行った後、マイクロスコープ”VH−6300”((株)キーエンス製)でスクラッチを検査した。線幅10μm以上のスクラッチをスクラッチ数としてカウントした。次に研磨後の酸化膜の厚みを“ラムダエース”VM−2000(大日本スクリーン製造(株)製)を使用して決められた198点につき測定して、下記(1)式により各々の点での研磨速度を算出した。
【0057】
研磨速度=(研磨前の酸化膜の厚み−研磨後の酸化膜の厚み)/研磨時間 ・・・(1)
(実施例1〜3および比較例1)
高圧RIM成形機を用いて、表1に示す重量部数のポリオール成分とポリイソシアネート成分を、それぞれ窒素で0.3MPaに加圧した原料タンク内で40℃に温度調節した後、混合ヘッドで各原料の吐出圧を15MPa、反応混合液の吐出速度800g/秒で衝突混合させ、注入ゲートを通して70℃に温度調節した500×500×15mmの金属製密閉金型内に注入し、キュアー時間10分にて脱型し、ポリウレタンフォームを成形した。次に得られたポリウレタンフォームを真空乾燥機に入れ、到達真空度3Torrの減圧下、表1に示す条件で加熱することによりウレタン化触媒の除去を行った。その後得られたポリウレタンフォームの残存ウレタン触媒量および物性を測定した。測定結果を表1に示す。ウレタン化触媒1,2については、溶液込みの重量部およびカッコ内に溶媒を除いた純分の重量部を記載した。
【0058】
なお、ポリオール成分には、原料タンクに取り付けたポリマーエンジニアリング製エアーローディング装置を用いて窒素導入を行った。表中の測定値はエアーローディング装置での測定値である。
【0059】
【表1】

【0060】
(実施例4)
実施例1で得られたポリウレタンフォームシートをアゾビスイソブチロニトリル0.25重量部を添加したメチルメタクリレート100重量部に18時間浸漬し、その後膨潤したポリウレタンフォームシートを塩化ビニル製ガスケットを介してガラス板に挟み込んで70℃で24時間保持した。ガラス板を取り除いた後、真空乾燥を行った。得られた硬質発泡シートの両面をワイドベルトサンダーで厚み1.25mmまで研削した後、両面接着テープ“442JS”(住友スリーエム(株)製)を貼り付け、それをクッション層であるポリウレタン含浸不織布”Suba400”(ニッタ・ハース(株)製)に貼り合わせた。その後、表面に幅2mm,深さ0.6mm,ピッチ15mmの碁盤目上の溝を加工し、直径380mmの円に打ち抜いて二層の研磨パッドを作製し、研磨評価を行った。研磨速度は2320オングストローム/分であった。スクラッチは発生しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のポリウレタンフォームは、マットレス,寝具,家具,自動車・航空機用シート等のクッション材,インパネ,ハンドル等の自動車用部品,機械用部品,電子材料,研磨用部材,吸音材,断熱材,緩衝材,生活用品,衣料,玩具等のあらゆる用途に使用可能である。これらの中でも、成形体内部にボイド,ピンホール等の欠陥が少ないという特徴から、ウェットスーツ等の衣料用途や電子部品,研磨用部材等、厚い成形体を薄くスライスして使用する用途において好ましく使用することができる。また、耐熱性が良好で、ポリウレタンフォームからのウレタン化触媒に由来するVOCが少ないという特徴から自動車部品のような高温下で使用する用途において好ましく使用することができる。さらには、その構造,特性上の特徴から、特に研磨用部材および/または研磨用部材の原材料として好ましく使用することができる。研磨用部材としてはシリコンウェーハ等の半導体基板や、レンズ等の光学部材、磁気ヘッド,ハードディスク等の電子材料等の研磨に使用される研磨パッド、被研磨物の研磨ヘッドへの保持に使用されるバッキングパッドが挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性水素化合物を主成分とする原料組成物およびポリイソシアネートを主成分とする原料組成物を少なくとも含む二種以上の原料組成物を、活性水素化合物に対し0.3〜5.0重量%のウレタン化触媒の存在下に反応させてポリウレタンフォームを成形した後、該ポリウレタンフォームに含まれるウレタン化触媒をポリウレタンフォームに対して0.15重量%以下になるまで除去することを特徴とするポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項2】
ウレタン化触媒を減圧下で除去する、請求項1に記載のポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項3】
ウレタン化触媒の沸点が150℃以上である、請求項1または2に記載のポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項4】
ウレタン化触媒がトリエチレンジアミン,ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテルから選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項5】
得られるポリウレタンフォームが研磨用部材および/または研磨用部材の原材料として使用される、請求項1〜4のいずれかに記載のポリウレタンフォームの製造方法。

【公開番号】特開2007−238788(P2007−238788A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−63716(P2006−63716)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】