説明

ポリウレタンフォーム製造用の添加剤及びポリウレタンフォーム用組成物並びにポリウレタンフォームの製造方法。

【課題】
ポリウレタンフォーム製造の原料として使用した際に、酸価と塩基触媒量のバランスを調整し、効果的に反応性とキュア性、難燃性等の物性を制御することができるポリウレタンフォーム製造用の添加剤と、それを配合したポリウレタンフォーム用組成物ならびにそれを用いたポリウレタンフォームの製造方法を提供する。
【解決手段】
2価カルボン酸無水物に対する1価アルコールのモル比が1.0〜2.0の反応条件下で得られ、その酸価が50〜700mgKOH/gの範囲であるモノエステルを主成分とするモノエステル組成物を、添加剤としてポリウレタンフォーム用組成物に用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に断熱材等に使用されるポリウレタンフォーム製造用の添加剤及びポリウレタンフォーム用組成物並びにポリウレタンフォームの製造方法に関する。詳しくは、ポリウレタンフォーム製造の原料として使用した際に、酸価と塩基触媒量のバランスを調整し、効果的に反応性とキュア性を制御することができるポリウレタンフォーム製造用の添加剤及び当該添加剤を配合したポリウレタンフォーム用組成物並びにそれを用いたポリウレタンフォームの製造方法に関する。尚、ここで述べる反応性とは、ポリウレタンフォーム製造時のイソシアネート基と活性水素基との反応速度のことを指す。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームは一般に優れた断熱特性、難燃性を有することから、冷蔵室、冷蔵庫、冷凍室、冷凍庫、一般建造物の断熱材等に広く用いられている。ポリウレタンフォームは、一般にポリイソシアネート液(A液)と、ポリエーテルポリオール及び/またはポリエステルポリオールからなるポリオール、発泡剤、さらに必要に応じて触媒や界面活性剤等を混合した混合液(ポリオールプレミックス液:B液)を用意し、それらを混合して、短時間で発泡、硬化させる方法で製造される。
【0003】
ウレタンフォーム製造時、その反応性は塩基触媒の量及び/または活性に大きく依存する。工業的、産業的な製造において、例えば一般建造物で用いられるスプレー工法ではその発泡速度は一般的に非常に速く、高活性の塩基触媒や多量の塩基触媒を用いる。また、電気冷蔵庫やパネル成形等のいわゆる注入発泡等では、一般に注型可使時間を長くとる必要があることから、特に初期の反応速度を落とす必要がある。このため低活性の触媒を用いたり、添加量を減らしたりする等の措置がとられている。
【0004】
しかしながら注入発泡等で初期の反応速度を抑えるために塩基触媒を減らした場合、中盤以降の反応性も低下し、例えば未反応のポリイソシアネートが多く残り、ポリウレタンフォームの硬化性や初期寸法安定性、接着性等のいわゆるキュア性や難燃性に悪影響を与える場合がある。このために低活性の塩基触媒を多く用いる等の工夫が一般に行われているが、塩基触媒には泡化触媒、樹脂化触媒、イソシアヌレート化触媒等の種類があり、通常、様々な目的で何種類かを組み合わせて使用されるため、単に低活性の塩基触媒を用いたり、触媒量を減らしたりすることが難しい場合もある。
【0005】
スプレー工法においてもポリイソシアネートを3量化させて難燃性を向上させるイソシアヌレート変性が一般に行われるが、反応性を調整するために3量化触媒の量が少ない場合には、その3量化率が上がらず、目標とする難燃性能に到達できない。
【0006】
触媒量をあまり減らさずに初期反応性を落としつつキュア性を維持する方法として、例えば触媒の3級アミンが部分的または全体的にカルボン酸で中和された酸ブロック触媒、いわゆる遅延作用触媒を用いる方法が提案されている。(特開平7−97472) しかしながらこれらのブロック触媒は前述の泡化、樹脂化、イソシアヌレート化等の様々な種類に対応しないことや、一般に高価であるといった欠点がある。
【0007】
こういった酸ブロック触媒は問題点もあるものの、やはり反応性とキュア性の調整という面においては有用な方法の1つであり、様々な改良も行われてきた。例えば、3級アミンとヒドロキシル官能性を有するカルボン酸との塩を使用する方法(特開平7−233234)や、3級アミンとハロ官能性有するカルボン酸との塩を使用する方法(特開2000−204134)等が挙げられるが、こういったブロック触媒は他の成分との相溶性に乏しく、さらにはコスト的に不利になったり、ハロゲン化合物を用いた場合には環境的にも好ましくない。
【0008】
一方で、ポリウレタンフォームの難燃性や耐熱性、機械強度等の向上のため、芳香族及び./または脂肪族の各種ポリエステルポリオールがポリオールの一部として一般に用いられるが、それらポリエステルポリオールは酸価を指標とする未反応のカルボキシル基を有する。それら未反応のカルボキシル基は先述した塩基触媒を失活及び/又は低活性化し、発泡速度に影響を及ぼす場合がある。逆に先述のブロック触媒を用いず、ポリエステルポリオール中の若干量の未反応カルボキシル基を利用し、塩基触媒の活性を落とすことで反応性とキュア性を調整することも可能である。
【0009】
しかしながら、ポリエステルポリオールの製造において、通常、酸価は徹底的に落とされる。その理由としては、1)ポリエステルポリオールの需要はスプレー工法での使用が圧倒的に多く、低酸価品が望まれること 2)ポリエステルポリオールの保存安定性のため 3)工程的に中途半端な酸価(エステル化反応率)で制御して反応を止めることや、様々な種類の酸価の在庫品を持つことが難しいこと等が挙げられる。
【0010】
低酸価のポリエステルポリオールを用い、何らかの酸をさらに添加してその酸価を調整することも可能であるが、例えば脂肪族カルボン酸の酢酸、プロピオン酸等では蒸気圧、臭気が問題になり、芳香族カルボン酸の安息香酸、フタル酸等では相溶性に欠けるといった問題があるほか、コストを考えた場合に好ましくない。
【0011】
いわゆる酸価の高いポリエステルポリオールの極端な例として、5〜100mgKOH/gの酸価を有するカルボン酸末端化ポリエステルが提案されている。(特開平6−220236) これは水酸基を持たないエステル化合物であり、イソシアネートとの反応性に問題があるほか、製造が比較的難しくコストがかかる欠点がある。
【0012】
よって、ポリエステルポリオールの酸価、ひいてはポリウレタンフォーム用組成物の酸価と塩基触媒量のバランスを安価、かつ効果的に調整できるような材料があれば、これまで述べた課題、問題点の解決につなげることができる。
【0013】
一方、2価カルボン酸無水物と1価アルコールからなるモノエステルは公知である。例えば、2−エチルヘキサノールと無水フタル酸の開環反応生成物、即ち、フタル酸モノ(2−エチルヘキシル)エステルがある。(WO01/007395) これは可塑剤原料である無水フタル酸を液状化し、運搬や保存を容易にする方法として提案されている。しかしながらこういった2価カルボン酸無水物と1価アルコールからなるモノエステルをウレタンフォーム用組成物に用いて、その反応性や物性を改良したという例はない。
【特許文献1】特開平7−97472
【特許文献2】特開平7−233234
【特許文献3】特開2000−204134
【特許文献4】特開平6−220236
【特許文献5】WO01/007395
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、ポリウレタンフォーム用組成物において酸価と塩基触媒量のバランスを調整し、効果的に反応性とキュア性、難燃性のような物性を制御することのできるポリウレタンフォーム製造用の添加剤を提供すること、それを用いたポリウレタンフォーム用組成物及びポリウレタンフォームの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
これらの目的を達成すべく、鋭意検討した結果、特定の構造的特徴を備えた特定のエステル化合物をポリウレタンフォーム製造用の添加剤として用いることにより、上記課題を解決できるとの知見を得た。即ち、2価カルボン酸無水物と1価アルコールから得られるモノエステル組成物をポリウレタンフォーム製造用の添加剤として用いることで、酸価と塩基触媒量のバランスを調整し、効果的に反応性とキュア性を制御することができることを見いだし、本発明を完成させた。
【0016】
即ち、本発明は、以下を特徴とする要旨を有するものである。
(1)少なくとも、ポリイソシアネート、ポリオール、発泡剤、触媒、界面活性剤を含有するポリウレタンフォーム用組成物であって、更に、ポリオール100重量部に対し、2価カルボン酸無水物と1価アルコールから得られるモノエステル組成物0.01〜20重量部を含有して成ることを特徴とするポリウレタンフォーム用組成物。
(2)モノエステル組成物が、2価カルボン酸無水物に対する1価アルコールのモル比が1.0〜2.0の反応条件下で得られたものであり、その酸価が50〜700mgKOH/gの範囲である上記(1)に記載のポリウレタンフォーム用組成物。
(3)1価アルコールが炭素数4〜18の脂肪族1価アルコールであり、2価カルボン酸無水物が無水フタル酸であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のポリウレタンフォーム用組成物。
(4)上記(1)〜(3)の何れかに記載のポリウレタンフォーム用組成物を用いて製造したポリウレタンフォーム。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ポリウレタンフォーム製造の原料として使用した際に、酸価と塩基触媒量のバランスを調整し、効果的に反応性とキュア性、難燃性等の物性を制御することができるポリウレタンフォーム製造用の添加剤と、それを配合したポリウレタンフォーム用組成物ならびにそれを用いたポリウレタンフォームの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明におけるポリウレタンフォーム製造用の添加剤は、2価カルボン酸無水物と1価アルコールから得られるモノエステルを主成分とするモノエステル組成物である。
【0019】
本発明におけるモノエステル組成物の原料であるカルボン酸としては、2価カルボン酸無水物を用いる。2価カルボン酸無水物の具体例としては、無水フタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等の脂肪族又は芳香族のカルボン酸無水物が挙げられ、2種類以上の2価カルボン酸無水物を組み合わせて用いてもよい。好ましい2価カルボン酸無水物としては、無水フタル酸、無水マレイン酸が挙げられるが、反応をモノエステル化だけに留めやすいという点と、一般的な芳香族ポリエステルポリオールの主原料であることから物性をあまり大きく変えないという観点より、無水フタル酸が最も好ましい。カルボン酸無水物ではなく、例えばコハク酸のような通常の2価カルボン酸を用いてもいいが、エステル化反応時に副生水が生成することが問題となる場合があり、また、トリメリット酸無水物のような3価以上のカルボン酸無水物を用いてもいいが、コスト的に不利となる。1価カルボン酸無水物を用いることもできるが、例えば酢酸無水物を用いた場合、臭気や腐食性が問題となる場合があるので、注意が必要である。このような悪影響の少ない範囲で、2価カルボン酸無水物と1価及び/または3価以上のカルボン酸無水物を併用しても良い。
【0020】
本発明におけるモノエステル組成物の原料であるアルコールとしては、1価アルコールを用いる。用いられる1価アルコールとしては、例えばプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、イソオクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキシルアルコール、デシルアルコール、イソデシルアルコール、2−プロピルヘプチルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール等の脂肪族アルコールが挙げられ、これらは単独であっても併用しても良く、工業的に得られるような混合物を用いても良い。これら以外の1価アルコールを使用しても良く、例えばベンジルアルコールのような芳香族アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルのようなエーテル結合を持ったアルコール、エチレングリコールモノアリルエーテルのような二重結合を持ったアルコールが挙げられる。これら1価アルコールのうち、炭素数4〜18の脂肪族アルコールを用いることが好ましく、最も好ましい1価アルコールとしては、2−エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、イソデシルアルコールが挙げられる。本発明の効果の妨げにならない範囲で、例えば、水酸基価を調整するために、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールのような2価アルコールや、グリセリン、トリメチロールプロパンのような3価以上のアルコールを併用してもよい。
【0021】
本発明におけるモノエステル組成物の製造時、2価カルボン酸無水物と1価アルコールの組成比は、2価カルボン酸無水物の1モルに対し、1価アルコールを1.0〜2.0モルの範囲で用いることが好ましい。2価カルボン酸無水物に対する1価アルコールのモル比が1.0未満の場合、未反応の2価カルボン酸無水物が残り好ましくない。逆に2.0モルを超える場合には未反応のアルコールが多い組成となってしまい、未反応のアルコールがポリイソシアネートと反応した場合、ポリオールとポリイソシアネートのポリマー生長反応を停止させることになり好ましくない。また、さらにエステル化が進んだジエステルの副生量も増えてしまい好ましくない。2価カルボン酸無水物と1価アルコールの好ましい組成比は、2価カルボン酸無水物1モルに対し、1価アルコールを1.05〜1.7モルであり、より好ましくは、1.1〜1.5モルである。
【0022】
本発明におけるモノエステル組成物の酸価としては、50〜700mgKOH/gの範囲であり、好ましくは70〜600mgKOH/g、さらに好ましくは100〜500mgKOH/gの範囲である。酸価が50mgKOH/gより小さくても構わないが、ポリウレタンフォーム用組成物の酸価及び/または反応性の調整剤としての効果が小さくなる。一方、700mgKOH/gより大きいと保存安定性が悪くなったり、腐食性が大きくなる可能性がある。
【0023】
本発明のモノエステル組成物の主成分であるモノエステルは、2価カルボン酸無水物の1価アルコールによる開環反応で得られるモノエステル体であり、例えば、無水フタル酸と2−エチルヘキシルアルコールを原料として用いた場合、以下の構造式で表されるものを指す。本発明のモノエステル組成物には、エステル化の反応条件によって、未反応の1価アルコールや未反応の2価カルボン酸無水物、さらにエステル化が進んだジエステル体を含有しても良い。
【0024】
【化1】

【0025】
本発明のモノエステル組成物において、モノエステルの含有量は50重量%以上、好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上である。未反応の1価アルコールの量は、30重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。未反応の2価カルボン酸無水物の量は、3重量%以下、好ましくは2重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下である。さらにエステル化の進んだジエステルの含有量は、20重量%以下、好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。2価カルボン酸無水物が水で開環した2価カルボン酸が副生する場合も、その含有量は上記2価カルボン酸無水物の含有量の範囲であることが好ましい。なお、モノエステル組成物を蒸留精製等により、未反応のアルコールやカルボン酸及びジエステル体の含有量を低減させることで、実質的に、モノエステル組成物の全量をモノエステル体をとしても良い。
【0026】
モノエステルをはじめとするこれらの組成比は、2価カルボン酸無水物と1価アルコールの仕込モル比及び反応条件により制御でき、製造法、分析法はいずれも公知の方法を採用できる。
【0027】
本発明におけるポリウレタンフォーム用組成物としては、少なくとも、ポリイソシアネート、ポリオール、発泡剤、触媒、界面活性剤からなる組成物であり、さらに上記のモノエステル組成物を添加剤として用いるものである。本発明のモノエステル組成物は、A液の一部として用いても、B液の一部として用いてもよく、ポリオールの一部として、例えばポリエステルポリオールと一緒に取り扱っても構わない。例えば、ポリウレタンフォームは、ポリイソシアネートからなるA液と、ポリエーテルポリオール及び/またはポリエステルポリオール等からなるポリオール、発泡剤、触媒、界面活性剤、必要に応じてその他の助剤、さらに本発明のモノエステル組成物を含むB液とを、短時間で混合、発泡、硬化させる方法で製造される。
【0028】
本発明のモノエステル組成物の用い方としては、例えば、酸価:180の本発明のモノエステル組成物を用いて、酸価:0.5の無水フタル酸系ポリエステルポリオールを酸価:2.5の同ポリエステルポリオールと同等の酸価にする場合、その添加量は計算で求めることができ、無水フタル酸系ポリエステルポリオール:モノエステル組成物=100:1.13(重量比)となる。一方、同様に酸価:180の本発明のモノエステル組成物を用いて、酸価:0.5の無水フタル酸系ポリエステルポリオールを酸価:2.5の同ポリエステルポリオールと同等の反応性にする場合、一般的な無水フタル酸系ポリエステルポリオールの残存カルボキシル基は、その分子量から立体障害の影響を受けるが、本発明のモノエステル組成物は立体障害の程度が比較的小さく、カルボキシル基の酸性度がより高いと考えられる。そのため、同等の反応性にするためにはその添加量を酸価の計算で求めた量よりも少なくする必要があることもある。
【0029】
本発明のモノエステル組成物を用いることでイソシアヌレート化触媒を増量することができ、その結果、ポリイソシアネートの3量化率が上がることでポリウレタンフォームの難燃性や強度が向上する、といった使い方が可能である。
【0030】
ポリイソシアネートとしては、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する有機化合物であれば特に限定されるものではない。例えば、脂肪族系、脂環族系、及び芳香族系ポリイソシアネート、またはこれらの変性物が挙げられる。具体的には、脂肪族系及び脂環族系ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。芳香族系ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、及びポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート等が挙げられ、さらにこれらのカルボジイミド変性物やプレポリマー等の変性物も包含される。
【0031】
本発明における好ましいポリイソシアネートは、芳香族ポリイソシアネート、またはその変性物であり、特に好ましくは、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、及びこれらの変性物であり、単独でもそれらを混合して用いてもよい。ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートとしては、イソシアネート基含有率が通常、29〜32重量%、粘度が通常、250mPa・s(25℃)以下のものが使用される。また、これらの変性物のうち、カルボジイミド変性物は、公知のリン系触媒等を用いてカルボジイミド結合を導入したものである。プレポリマーは、上記のポリイソシアネートとポリオールとを反応させ、末端にイソシアネート基を残したものである。その際用いるポリオールは、ポリウレタンを製造する際に使用するポリオールが通常使用できる。
【0032】
実用的には、A液として、これらのポリイソシアネートの他に、用途に応じて、その他の添加剤、助剤をポリイソシアネートに混合して用いてもよい。例えば、B液との混合性を向上させる目的で、B液でも用いられる界面活性剤を相溶化剤として併用する場合がある。その際には、通常、ノニオン系界面活性剤が好ましく、特にシリコーン系界面活性剤がよく用いられる。また、難燃性の向上及び粘度の調整を目的として、難燃剤を併用する場合がある。ポリウレタンフォームの用途においては、通常、クロロアルキルホスフェート類、例えば、トリス(ベータクロロエチル)ホスフェートやトリス(ベータクロロプロピル)ホスフェート等がよく用いられる。上記以外の添加剤、助剤については、特に限定されるものではなく、通常の樹脂において物性向上や操作性向上等の目的で用いられるもので、ウレタン化反応に著しい悪影響を及ぼすものでなければ何を用いても構わない。
【0033】
ポリオールとしては、一般に、水酸基価が通常、50〜800、官能基数が通常、2.0〜8.0のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール等を用いることができ、また、これらを2種類以上混合して用いても構わない。
【0034】
ポリエーテルポリオールとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド及びテトラヒドロフラン等の単独、または併用によるアルキレンオキシドの重合物、ショ糖やソルビトール、及びグリセリン等の3官能以上のアルコール類と上記アルキレンオキシドの付加物、脂肪族アミン、及び芳香族アミンと上記アルキレンオキシドの付加物等が挙げられる。
【0035】
ポリエステルポリオールとしては、カルボン酸としてフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、コハク酸及びトリメリット酸等の芳香族あるいは脂肪族カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン及びトリメチロールプロパン等の2〜3価のアルコールを単独、または混合しエステル化反応により得られる、水酸基価が、通常、100〜500、官能基数が、通常、1.5〜3.0程度のポリエステルポリオールが挙げられる。
【0036】
本発明においては、これらのポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、すなわちポリオールと組み合わせて、前記した本発明のモノエステル組成物を用いることができる。モノエステル組成物の使用量としては、その組成物に含まれるモノエステルの含有量や酸価に応じて適宜選択しうるが、ポリオール100重量部に対し、モノエステルが0.01〜10重量部となる添加量であることが好ましい。実用的には、モノエステル組成物の使用量として、ポリオール100重量部に対し、通常、0.01〜20重量部の範囲、好ましくは0.05〜10重量部の範囲、さらに好ましくは0.1〜5重量部の範囲である。使用量が0.01重量部より少ないと反応性やキュア性、難燃性等の物性を制御する効果が小さくなる。一方、20重量%より多くても構わないが、逆に触媒の活性を落としすぎたり、ウレタンフォームの強度や寸法安定性等の物性に悪影響を与える可能性があることから、反応性やポリウレタンフォームの物性等を考慮し、実用上問題とならない範囲で使用することが好ましい。
【0037】
また、この他に、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール及びグリセリン等のアルコールやジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等、活性水素を1分子中に2個以上有する化合物も併用することができる。
【0038】
本発明のポリウレタンフォームに用いる発泡剤としては水や低沸点有機溶剤等の通常用いられる発泡剤を使用することができる。水以外には、例えば、HCFC−141bのようなHCFC系発泡剤の他に、HFC−245fa、HFC−365mfc等のHFC系発泡剤、ペンタン、シクロペンタン等のHC系発泡剤等が用いられ、その他にも今後用いられる発泡剤を使用しても構わない。
【0039】
触媒としては、通常のポリウレタンフォームの製造に使用される公知の触媒が使用できる。例えば、トリエチルアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン等のアミン系触媒の他に、四級アンモニウム塩やオクチル酸カリウム等のカリウム系、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫等の錫系、及びオクチル酸鉛等の鉛系等の金属系触媒等が挙げられる。
【0040】
界面活性剤としては、例えば界面活性剤としてノニオン系、アニオン系、カチオン系界面活性剤を用いることができるが、ノニオン系界面活性剤が好ましく、特にシリコーン系界面活性剤がよく用いられる。
【0041】
その他助剤としては、用途に応じて様々な化合物が、添加剤、助剤として用いことができる。例えば、代表的な添加剤として難燃剤が挙げられる。ポリウレタンフォームの用途においては、通常、クロロアルキルホスフェート類、例えば、トリス(ベータクロロエチル)ホスフェートやトリス(ベータクロロプロピル)ホスフェート等がよく用いられる。上記以外の添加剤、助剤については、特に限定されるものではなく、通常の樹脂において物性向上や操作性向上等の目的で用いられるもので、本発明及びウレタン化反応に著しい悪影響を及ぼすものでない限りにおいて使用することができる。
【0042】
本発明におけるポリウレタンフォームの製造方法は、ポリイソシアネート、ポリオール、発泡剤、触媒、界面活性剤及び本発明のモノエステル組成物、さらに必要に応じてその他助剤からなる組成物を発泡硬化させるというものであるが、実用的には、ポリイソシアネートをA液、ポリオールをB液として、発泡剤、触媒、界面活性剤、その他助剤、モノエステル組成物等はあらかじめA液及び/またはB液に適宜混合させ、後述する装置を用いて2液を混合し、発泡、硬化させるという方法である。尚、発泡剤、触媒、界面活性剤は通常、B液に混合しておくほうが好ましいが、場合によってはA液に混合させたり、それぞれのをウレタン化反応の直前まで混合せずに3種類以上の原料液として取り扱う場合もある。
【0043】
本発明によって得られたポリウレタンフォームは、ウレタン結合やウレア結合とイソシアヌレート結合等を有するものである。イソシアヌレート結合は、イソシアネート基を触媒により三量化させて生成され、機械的強度や耐熱性を向上させることができる。
【0044】
本発明において、好ましいイソシアネートインデックス(全イソシアネート基のモル数/全活性水素基のモル数×100)は、70以上であり、通常100〜600、好ましくは130〜500、さらに好ましくは150〜400である。イソシアネートインデックスが70未満になると、得られたウレタンフォームが十分な強度を有しないことがあり、収縮し易くなる可能性がある。また、600を超えると、得られるウレタンフォームの脆性が高くなり、接着強度が低下する傾向にあるので好ましくない。
【0045】
ポリウレタンフォームを製造するにあたっては、A液とB液を均一に混合可能であればいかなる装置でも使用することができる。例えば、小型ミキサーや、一般のウレタンフォームを製造する際に使用する、注入発泡用の低圧、または高圧発泡機、スラブ発泡用の低圧、または高圧発泡機、連続ライン用の低圧、または高圧発泡機、吹き付け工事用のスプレー発泡機等を使用することができる。尚、ポリウレタンフォームを製造するに際し、A液、B液それぞれの液温は20〜60℃に調節しておくことが好ましい。
【0046】
以下に、実施例により本発明の具体的態様をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0047】
用いたモノエステル組成物の原料の種類と酸価分析値及び各成分濃度を表1に示す。尚、モノエステル組成物は公知の方法により合成し、酸価はJIS K15571970に準拠して分析した。また、モノエステル組成物中の各成分濃度は、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミドを用いてシリル化した後、ガスクロマトグラフ法で定量した。また、水分はカールフィッシャー法で定量した。
【0048】
【表1】

【0049】
表2に示す配合でプレミックス−1〜5を作成し、ポリウレタンフォームの製造を行った。(実施例1〜3、比較例1、2)
【0050】
【表2】

【0051】
尚、表2の配合において、原料は表3のものを用いた。
【0052】
【表3】

【0053】
ポリウレタンフォームの製造は、以下の方法で行った。即ち、A液(ポリイソシアネート液)と表2に記載のB液(プレミックス)を混合した後、注入ボックスに流し込んでフリー発泡させ、ポリウレタンフォームを製造した。尚、ポリイソシアネート液は表3に記載のものを用いた。
【0054】
発泡条件は以下のように行った。
イソシアネートインデックス : 110
室温 : 23〜25℃
液温 : 15℃
注入ボックス : 木製 20cm×20cm×20cm 上部開放(フリーフォーム)
脱型時間 : 混合後30分
【0055】
得られたポリウレタンフォームの評価は、下記の方法で行い、結果を「表2」に示した。
【0056】
(1)反応性
CT(クリームタイム) : A液とB液を混合後、発泡高さ1%に達するまでの時間を測定した。
GT(ゲルタイム) : A液とB液を混合後、触針にて糸を引き始めるまでの時間を測定した。
RT(ライズタイム) : A液とB液を混合後、発泡高さ95%に達するまでの時間を測定した。
硬化時間 : 発泡後1分ごとにフォームを触診し、ある程度まで硬化するまでの時間を測定した。
【0057】
(2)コア密度
JIS A95112003に準拠して測定した。
【0058】
(3)自己消火性
JIS A95112003に準拠して測定した。
【0059】
(4)炭化性
切り出したウレタンフォームを燃焼させて、元のウレタンフォームの重量に対して残った炭化物の重量の割合を測定し、以下の基準で評価した。
◎ : 30重量%以上
○ : 25重量%以上
△ : 20重量%以上
× : 20重量%未満
【0060】
(5)圧縮強度
JIS A95112003に準拠して測定した。
【0061】
(6)寸法安定性
コア密度を測定したサンプルの−20℃における24時間後の寸法変化率(発泡に水平方向、垂直方向)を測定し、以下の基準で評価した。
◎ : 水平、垂直ともに−1%未満
○ : 水平、垂直ともに−2%未満
△ : 水平、垂直ともに−3%未満
× : 水平、垂直いずれかが−3%以上
【0062】
(7)接着性
クラフト紙面材を用いてフリーフォームを作成し、中央部を5x10x3cmに切り出して試験片を作成。クラフト紙面材の長さ方向端部を引き剥がした後に引張試験機で厚み方向に引っ張り、その剥離強度(N/5cm)を測定して、以下の基準で評価した。
◎ : 12N/5cm以上
○ : 10N/5cm以上
△ : 8N/5cm以上
× : 8N/5cm未満
【0063】
(8)脆性
ポリウレタンフォームの表面及び底部を触診、定性観察して、以下の基準で評価した。
◎ : 全く脆さがない
○ : ほとんど脆さがない
△ : 若干の脆さがある
× : 脆い
【0064】
表2より、主に以下のことが明らかである。
1)本発明のモノエステル組成物を用いた実施例は、用いなかった比較例1と比べ、強度や難燃性をほとんど変えることなく、特に初期の反応性を抑えることができる。従って、例えば、注入発泡用途に用いた場合に、注型可使時間を長くすることができる。
2)比較例2で触媒量を減らした場合、反応性は本発明のモノエステル組成物を用いた実施例と同等になるが、強度や難燃性が悪化している。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によれば、ポリウレタンフォーム用組成物において、酸価と塩基触媒量のバランスを調整し、効果的に反応性とキュア性、難燃性等の物性を制御することのできる、ポリウレタンフォーム製造用の添加剤を提供し、それを用いたポリウレタンフォーム用組成物及びポリウレタンフォームの製造方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、ポリイソシアネート、ポリオール、発泡剤、触媒、界面活性剤を含有するポリウレタンフォーム用組成物であって、更に、ポリオール100重量部に対し、2価カルボン酸無水物と1価アルコールから得られるモノエステル組成物0.01〜20重量部を含有して成ることを特徴とするポリウレタンフォーム用組成物。
【請求項2】
モノエステル組成物が、2価カルボン酸無水物に対する1価アルコールのモル比が1.0〜2.0の反応条件下で得られたものであり、その酸価が50〜700mgKOH/gの範囲である請求項1に記載のポリウレタンフォーム用組成物。
【請求項3】
1価アルコールが炭素数4〜18の脂肪族1価アルコールであり、2価カルボン酸無水物が無水フタル酸であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリウレタンフォーム用組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のポリウレタンフォーム用組成物を用いて製造したポリウレタンフォーム。

【公開番号】特開2009−155607(P2009−155607A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338647(P2007−338647)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000199795)川崎化成工業株式会社 (133)
【Fターム(参考)】