説明

ポリウレタン分散液及びそれから製造した物品

本発明はポリウレタン分散液及びそれから製造された製品であって、分散液に、過剰のポリイソシアネートとイソシアネート反応性分子との反応から製造されたポリウレタンプレポリマーが含有され、ポリイソシアネートがビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンである、分散液及びそれから製造された製品に関する。好ましくは、イソシアネートは、(i)トランス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン又は(ii)シス−1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、トランス−1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、シス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン及びトランス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの2種若しくはそれ以上の異性体混合物を含むが、前記異性体混合物は、少なくとも約5重量%の前記トランス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1種又はそれ以上のオリゴマーポリオール及び1種又はそれ以上の連鎖延長剤と共重合させた、ある種のシクロ脂肪族ジイソシアネート、例えば1,3−及び1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンをベースにするポリウレタン分散液並びにそれから製造した物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン分散液は広範囲の種々の応用で使用するためのポリマーを生成するように配合することができる。これらは、溶媒、水又は種々のこれらの組合せ中に分散された、ポリウレタン又はポリ(ウレタン−ウレア)ポリマーを含む。これらの分散液は、未反応イソシアネート基を含まない環境的に優しい材料であり、多くの異なった用途に対してのポリマーの配合に良好に選択される。
【0003】
ポリウレタン独特の化学は、使用するモノマーの種類及び相対比を注意深く選択することによって、特性の大きな変化を達成することを可能にすることにある。ポリウレタンポリマーは、種々のポリマー硬度で入手可能であり、他の水溶性ポリマーと容易にブレンドして、最終性能、応用特性及びコストを最適化することができる。
【0004】
その範囲の一端で、被覆への応用では、一般的に、応用方法論に起因する短時間の高温度に耐えることができる、強靱で耐久性のポリマーが必要である。逆に、シーラントでは、一般的に、良好な耐摩耗性、強靱性、強度、伸長性、低温柔軟度、耐薬品及び耐油性並びに他の化学的及び物理的特性によって特徴付けられる、一層弾性のポリマーが必要である。何れの場合にも、得られる機械的及び化学的要因のそれぞれのレベルは、任意の特定のポリウレタンを作る、成分又は構成ブロック材料の固有の特性に依存する。
【0005】
特に、他社製部品組込製品の製造販売会社(OEM)の場合には、耐衝撃性を保護し、なお高光沢、耐久性仕上げを与えるように配合される。更に、OEM自動車被覆は、典型的には、合理的に短い時間で組成物を硬化させるために、比較的高温度(約93℃以上)で焼付け乾燥される。それ故、ポリマーは、合理的なレベルの温度安定性を示さなくてはならない。これらの理由のために、分散配合物には、しばしば、ポリイソシアネート架橋剤と反応して、優れた耐久性、靱性及び耐溶剤性を有するポリウレタン被覆を形成する、低分子量の高度に官能化された樹脂が含まれている。また、自動車再仕上げ被覆は、熱可塑性組成物又は比較的低温度で硬化する熱硬化性組成物として配合される。これは、仕上げられた車両の多くのプラスチック成分が、高温度焼付け乾燥に耐えることができないため及び被覆を使用する衝突修理工場(collision repaid shop)の多くが、車両上に焼付け乾燥仕上げを施すために十分に大きい装置を有しないためである。それ故、再仕上げ被覆は、同じレベルの保護、光沢及び耐久性を与えなくてはならないが、一層低い温度で硬化できなくてはならない。
【0006】
シーラント及びエラストマー応用に於いて、ポリマーは、高いレベルの延性及びエラストマー性能を示さなくてはならず、そしてまた、広い温度範囲に亘って実行できなくてはならない。多様な支持体をカバーする被覆及びシーラントは、接合する支持体から亀裂したり、分離することなく、それぞれのレベルの熱膨張又は収縮を処理することができなくてはならない。この理由のために、分散配合物には、しばしば、ポリイソシアネート架橋剤と反応して、優れた耐久性、靱性及び耐溶剤性を有するポリウレタンポリマーを形成する、高分子量の低官能性樹脂が含まれている。
【0007】
ポリウレタン製品、特にエラストマーが、被覆又は製品の外側表面のために使用されるある種の応用に於いては、ポリウレタン層は透明なままであることが望ましい。ポリイソシアネートの化学的特徴に基づいて、市販のポリオール及び連鎖延長剤と組合せたときに、無黄変及び良好な耐候性特性を有する良品質のポリウレタンを生成する、僅かな市販のポリイソシアネートが存在している。
【0008】
それ故、改良された機械的及び/若しくは化学的特性を有するポリウレタン並びに/又はより低い揮発性及び/若しくはイソシアネート官能基のポリイソシアネート分子量に対する増加した比率を有するポリイソシアネートで製造されるポリウレタンについての要求が存在している。非常に望ましいポリウレタンは、良好な機械的及び化学的特性、無黄変特性、良好な日光に対する耐性、良好な耐候性、透明性を有するポリマーを生成し、これらの特性を、環境的に優しく且つ費用効果的な方法で達成することができる成分をベースにするものであろう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリイソシアネート及び水素活性部分を有する分子、並びに任意的な連鎖延長剤及び/又は界面活性剤の混合物、を含むポリウレタン分散液であって、ポリイソシアネートがビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン化合物を含む分散液である。
【0010】
本発明の他の面に於いて、本発明は、ポリイソシアネート及び水素活性部分を有する分子、並びに任意的な連鎖延長剤及び/又は界面活性剤の混合物、を含むポリウレタン分散液であって、ポリイソシアネートが(i)トランス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン又は(ii)シス−1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、トランス−1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、シス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン及びトランス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの2種若しくはそれ以上の異性体混合物を含むが、前記異性体混合物が少なくとも約5重量%の前記トランス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含有する分散液である。
【0011】
別の面に於いて、本発明は前記分散液から製造されたポリウレタン製品の製造である。
【0012】
本発明は、ポリウレタン分散液及びそれから製造された製品であって、分散液に、過剰のポリイソシアネートとイソシアネート反応性分子との反応から製造されたポリウレタンプレポリマーが含まれ、ポリイソシアネートがビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンである、分散液及び製品である。ポリイソシアネートは、好ましくは(i)トランス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン又は(ii)シス−1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、トランス−1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、シス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン及びトランス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの2種若しくはそれ以上の異性体混合物を含むが、前記異性体混合物は少なくとも約5重量%の前記トランス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含有する。ポリウレタンプレポリマーは、分散後の或る時間の間、幾らかのイソシアネート反応性を保持しているかもしれないが、本発明の目的のために、ポリウレタンプレポリマー分散液は、完全に反応したポリウレタンポリマー分散液であるとして考えるものとする。また、本発明の目的のために、ポリウレタンプレポリマー又はポリウレタンポリマーには、例えばウレア基のような他の種類の構造が含有されていてもよい。
【0013】
本発明の分散液から製造されたポリウレタンポリマーは、典型的な市販のポリイソシアネートから製造されたポリウレタンに比較して、優れた強度特性、高い耐熱性、良好な低温柔軟度及び耐日光性を含む優れた耐候性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施に有用であるポリウレタンプレポリマーは、活性水素化合物と、水素反応性部分、例えば−OH、アミン又は−SH基に対して、化学量論的過剰のNCO基が存在するような任意の量のイソシアネートとの反応によって製造される。本発明で有用なプレポリマー中のイソシアネート官能基は、約0.2重量%〜約20重量%の量で存在してよい。適当なプレポリマーは、約300〜約10,000の範囲内の分子量を有していてよい。NCO末端プレポリマーを製造する手順は当技術分野で公知である。
【0015】
本発明に於いて有用なシクロ脂肪族ジイソシアネートは、(i)トランス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン又は(ii)シス−1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、トランス−1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、シス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン及びトランス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの2種若しくはそれ以上の異性体混合物を含むが、前記異性体混合物は少なくとも約5重量%の前記トランス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含む。好ましいシクロ脂肪族ジイソシアネートは、下記の構造式I〜IVによって表される。
【0016】
【化1】

【0017】
これらのシクロ脂肪族ジイソシアネートは、例えばブタジエンとアクリロニトリルとのディールス−アルダー反応、続くヒドロホルミル化、次いでアミン、即ちシス−1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、トランス−1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、シス−1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及びトランス−1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン シクロヘキサンを生成する還元アミノ化、続くシクロ脂肪族ジイソシアネート混合物を生成するホスゲンとの反応から製造されるような混合物で使用することができる。シクロヘキサン−ビス(アミノメチル)の製造は米国特許第6,252,121号明細書に記載されている。
【0018】
前記反応混合物中に任意的な少量の他の多官能性イソシアネートを使用することができる。このようなイソシアネートの実例は2,4−及び2,6−トルエンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、メタ−及びパラ−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナト)フマラート、4,4’−ジシクロヘキサンメチルジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートである。他の多官能性イソシアネートの少量は、配合物中に使用される全多官能性イソシアネートの、約0.1重量%〜約30重量%以上、好ましくは約0重量%〜20重量%、更に好ましくは0重量%〜10重量%の範囲であってよい。
【0019】
本発明のポリウレタンプレポリマー組成物には、約1〜15重量%の未反応NCO、好ましくは約2〜10重量%のNCO、更に好ましくは2〜8重量%のNCOが含有されている。
【0020】
本発明に於いて有用であるポリオールは、2個又はそれ以上の、イソシアネート反応性基、一般には、−OH、第一級又は第二級アミン及び−SHのような活性水素基を含む化合物である。適当なポリオールの代表は公知であり、「高重合体(High Polymers)」第XVI巻;Saunders及びFrisch著、「ポリウレタン、化学と技術(Polyurethanes,Chemistry and Technology)」、インターサイエンス・パブリッシャーズ(Interscience Publishers)、ニューヨーク、第I巻、第32〜42頁、第44〜54頁(1962年)及び第II巻、第5〜6頁、第198〜199頁(1964年);K.J.Saunders、Chapman及びHall著、「有機ポリマー化学(Organic Polymer Chemistry)」、ロンドン、第323〜325頁(1973年)並びにJ.M.Burst編、「ポリウレタンの発達(Developments in Polyurethanes)」、第I巻、アップライド・サイエンス・パブリッシャーズ(Applied Science Publishers)、第1〜76頁(1978年)のような刊行物に記載されている。適当なポリオールの代表には、ポリエステル、ポリラクトン、ポリエーテル、ポリオレフィン、ポリカーボネートポリオール及び種々の他のポリオールが含まれる。
【0021】
ポリエステルポリオールの実例は、アルカン二酸に対してモル過剰の脂肪族グリコールを使用する一般的なエステル化プロセスによって製造されるポリ(アルキレンアルカンジオアート)グリコールである。ポリエステルを製造するのに使用することができるグリコールの実例は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び他のブタンジオール、1,5−ペンタンジオール及び他のペンタンジオール、ヘキサンジオール、デカンジオール並びにドデカンジオールである。好ましくは脂肪族グリコールには2〜約8個の炭素原子が含有されている。ポリエステルを製造するのに使用することができる二酸の実例は、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチル−1,6−ヘキサン酸、ピメリン酸、スベリン酸及びドデカン二酸である。好ましくは、アルカン二酸には4〜12個の炭素原子が含まれる。ポリエステルポリオールの実例は、ポリ(ヘキサンジオールアジパート)、ポリ(ブチレングリコールアジパート)、ポリ(エチレングリコールアジパート)、ポリ(ジエチレングリコールアジパート)、ポリ(ヘキサンジオールオキサラート)及びポリ(エチレングリコールセバカート)である。
【0022】
本発明の実施で有用であるポリラクトンポリオールは、実際にジ−又はトリ−又はテトラ−ヒドロキシルである。このようなポリオールは、ラクトンモノマーの反応によって製造される。ラクトンモノマーの実例は、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、ε−メチル−ε−カプロラクトン及びζ−エナントラクトンであり、活性水素含有基を有する開始剤(その実例は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール及びトリメチロールプロパンである)と反応される。このようなポリオールの製造は当技術分野で公知である。例えば米国特許第3,169,945号明細書、同第3,248,417号明細書、同第3,021,309号明細書〜同第3,021,317号明細書を参照されたい。好ましいラクトンポリオールは、ポリカプロラクトンポリオールとして知られているジ−、トリ−及びテトラ−ヒドロキシル官能性ε−カプロラクトンポリオールである。
【0023】
ポリエーテルポリオールには、適当な原料分子の、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド又はこれらの混合物のようなアルキレンオキシドによるアルコキシル化によって得られるものが含まれる。開始剤分子の例には、水、アンモニア、アニリン又は62〜399の分子量を有する二価アルコールのような多価アルコール、特にエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサメチレンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン若しくはトリメチロールエタンのようなアルカンポリオール又はジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール若しくはトリプロピレングリコールのようなエーテル基を含有する低分子量アルコールが含まれる。他の一般的に使用される開始剤には、ペンタエリスリトール、キシリトール、アラビトール、ソルビトール及びマンニトールが含まれる。好ましくは、ポリ(オキシプロピレン−オキシエチレン)ポリオールを含むポリ(プロピレンオキシド)ポリオールが使用される。好ましくは、オキシエチレン含有量は、ポリオールの全重量の、約40重量%より少なく、好ましくは約25重量%より少なくすべきである。エチレンオキシドは、任意の方式でポリマー鎖に沿って組み入れることができる。換言すると、エチレンオキシドを内部ブロック内に末端ブロックとして組み入れることができ、ポリマー鎖に沿ってランダムに分布していてもよく、又は末端オキシエチレン−オキシプロピレンブロック内にランダムに分布していてもよいことを意味する。これらのポリオールは、一般的な方法によって製造される一般的な物質である。
【0024】
他のポリエーテルポリオールには、ジオールとして市販されている、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコールとしても知られている、ポリ(テトラメチレンオキシド)ポリオールが含まれる。これらのポリオールは、Dreyfuss, P.及びM.P.Dreyfuss、Adv.Chem.Series、第91巻、第335頁(1969年)に記載されているように、テトラヒドロフランのカチオン性開環及び水による末端停止から製造される。
【0025】
ヒドロキシ基を含有するポリカーボネートには、プロパンジオール−(1,3)、ブタンジオール−(1,4)及び/若しくはヘキサンジオール−(1,6)、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール又はテトラエチレングリコールのようなジオールと炭酸ジアリール、例えば炭酸ジフェニル又はホスゲンとの反応から得られる生成物のような、それ自体公知のものが含まれる。
【0026】
本発明で使用するために適している種々の他のポリオールの実例は、スチレン/アリルアルコールコポリマー;ジメチロールジシクロペンタジエンのアルコキシル化付加物;塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコールコポリマー;塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル酸ヒドロキシプロピルコポリマー、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸エチル及び/又はアクリル酸ブチル若しくはアクリル酸2−エチルヘキシルのコポリマー;アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸エチル及び/又はアクリル酸ブチル若しくはアクリル酸2−エチルヘキシルのコポリマーである。
【0027】
一般的に、本発明で使用するために、ヒドロキシル末端ポリオールは200〜10,000の数平均分子量を有する。好ましくは、ポリオールは300〜7,500の分子量を有する。更に好ましくは、ポリオールは400〜5,000の数平均分子量を有する。ポリオールを製造するための開始剤を基準にして、ポリオールは1.5〜8の官能基を有する。好ましくは、ポリオールは2〜4の官能基を有する。本発明の分散液をベースにするエラストマーの製造のために、ポリオール又はポリオールのブレンドは、ポリオール又はブレンドの名目上の(nominal)官能基が3又はそれ以下であるように使用することが好ましい。
【0028】
また、この分散液には、プレポリマー中のウレア(尿素)又はウレタン結合の数を増加させるために機能する、低分子量の活性水素含有ポリオキシアルキレンジオールが含有されている。これは、次いで、エラストマーの機械的特性(極限引張強度、100%伸びでの応力、モジュラス及び極限伸び)を改良する。存在するときには、ポリウレタン分散液の約20重量%以下が、このようなポリオキシアルキレンジオールを含有してよい。適当なポリオキシアルキレンジオールには、ジエチレングリコール(DEG)、ジプロピレングリコール(DPG)及び約500より低い重量平均分子量のポリオキシプロピレンジオールが含まれる。使用するときには、低分子量活性水素含有ポリオキシアルキレンジオールは、分散液中に、0.1〜約10重量%、好ましくは約2〜約6重量%の量で存在する。
【0029】
本発明は連鎖延長剤又は架橋剤を含む。連鎖延長剤は、連鎖延長剤とポリウレタンプレポリマー中のイソシアネート官能基との反応によってポリウレタンプレポリマーの分子量を構築するために、即ち、連鎖延長したポリウレタンプレポリマーを構築するために使用される。適当な連鎖延長剤又は架橋剤は、典型的には、分子当たり約2又はそれ以上の活性水素基を有する、低等価重量活性水素含有化合物である。連鎖延長剤は、典型的には、2個又はそれ以上の活性水素基を有し、他方、架橋剤は3個又はそれ以上の活性水素基を有する。活性水素基は、ヒドロキシル、メルカプチル又はアミノ基であってよい。アミン連鎖延長剤はブロック、カプセル化又は他の方法で低い反応性にすることができる。他の物質、特に水は、鎖長を延長するように機能することができ、それで、本発明の目的のための連鎖延長剤であり得る。
【0030】
連鎖延長剤は、脂肪族、シクロ脂肪族又は芳香族であってよく、トリオール、テトラオール、ジアミン、トリアミン及びアミノアルコールによって例示される。アミン連鎖延長剤の具体例には、N−メチルエタノールアミン、N−メチルイソプロピルアミン、4−アミノシクロヘキサノール、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、ヘキシルメチレンジアミン、メチレンビス(アミノシクロヘキサン)、イソホロンジアミン、1,3−又は1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン又はこれらのブレンド、ジエチレントリアミン、トルエン−2,4−ジアミン及びトルエン−1,6−ジアミンが含まれる。
【0031】
好ましい連鎖延長剤は、それらの、水性相中でのイソシアネートとのより速い反応のために、ポリオールアミンである。連鎖延長剤を、例えばハンツマン・ケミカル社(Huntsman Chemical Company)からのジェファミン(JEFFAMINE)D−400のようなアミン末端ポリエーテル、アミノエチルピペラジン、2−メチルピペラジン、1,5−ジアミノ−3−メチルペンタン、イソホロンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及びその異性体、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、アミノエチルエタノールアミン、トリエチレンテトラアミン、トリエチレンペンタアミン、エタノールアミン、その立体異性形の全てでのリジン及びそれらの塩、ヘキサンジアミン、ヒドラジン並びにピペラジンからなる群から選択することが特に好ましい。一つの態様に於いて、連鎖延長剤は、プレポリマーを製造する際に使用されるイソシアネートの対応するアミンである。
【0032】
連鎖延長剤は、架橋剤、難燃化性又は他の望ましい特性を更に与えるための付属官能基を有するように変性することができる。適当な付属基には、カルボン酸、リン酸塩、ハロゲン化などが含まれる。
【0033】
本発明の実施に於いて、連鎖延長剤は、1当量の連鎖延長剤と反応する1当量のイソシアネート基準で、プレポリマー中に存在するイソシアネート官能基の約ゼロ〜約100%と反応させるために十分な量で使用される。残留するイソシアネートは、水と反応して除去される。好ましくは、連鎖延長剤は、イソシアネート官能基の20〜約98%と反応するための量で存在し、イソシアネートの20〜75%と反応するための量で存在してよい。水を連鎖延長剤として作用させ、存在するイソシアネート官能基の幾らか又は全部と反応させることが望ましい。連鎖延長剤とイソシアネートとの間の反応を促進するために、触媒を任意に使用することができる。本発明の連鎖延長剤が2個より多い活性水素基を有するとき、これらはまた同時に架橋剤としても機能し得る。
【0034】
ポリオールのハードセグメントに対する相対量は、特定のポリマー応用によって必要とされる性能規準に従って、10〜60重量%のハードセグメント、好ましくは10〜50重量%の重量比に亘って変化させることができる。ハードセグメントは、ポリウレタンの全重量で割った、連鎖延長剤と反応させるために必要なポリイソシアネートのグラム数プラス連鎖延長剤のグラム数の重量比である。
【0035】
得られたポリウレタンは、選択された化学組成物及びウレタン基の含有量に従って、それらの特性に於いて変化する。それで、ガラス硬さデュロプラスト(glasshard duroplast)まで硬度が変化する、軟質、粘着性組成物、熱可塑性及びエラストマー性製品を得ることが可能である。製品の親水性も一定の限界内で変化する。弾性製品は、それらが化学的に架橋しない限り、高温度で、例えば約100〜280℃で熱可塑性的に加工することができる。
【0036】
本発明の安定な分散液を製造するために及び/又は安定な泡を作るために、界面活性剤が有用である。安定な分散液を製造するのに有用な界面活性剤は、本発明の実施に於いて任意であり、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤であってよい。アニオン性界面活性剤の例には、スルホン酸塩、カルボン酸塩及びリン酸塩が含まれる。カチオン性界面活性剤の例には、第四級アミンが含まれる。非イオン性界面活性剤の例には、エチレンオキシドを含有するブロックコポリマー及びシリコーン界面活性剤が含まれる。本発明の実施に於いて有用である界面活性剤は、外部界面活性剤又は内部界面活性剤であってよい。外部界面活性剤は、分散液製造の間にポリマーの中に化学的に反応するようにならない界面活性剤である。ここで有用である外部界面活性剤の例には、ドデシルベンゼンスルホン酸の塩及びラウリルスルホン酸塩が含まれる。内部界面活性剤は分散液製造の間にポリマーの中に化学的に反応するようになる界面活性剤である。ここで有用である内部界面活性剤の例には、2,2−ジメチロールプロピオン酸及びその塩、四級化したアンモニウム塩並びにポリエチレンオキシドポリオールのような親水性種が含まれる。界面活性剤は、本発明の配合物中に、ポリウレタン成分100重量部当たり、約0.01〜約8重量部の範囲内の量で含有されていてよい。
【0037】
安定な泡を作るために有用である界面活性剤は、発泡体(フォーム)安定剤として本明細書に於いて参照される。上記の界面活性剤に加えて、発泡体安定剤には、例えば硫酸塩、スクシンアミド酸塩及びスルホスクシンアミド酸塩が含まれる。ポリウレタンフォームを製造する、当業者によって有用であると知られている任意の発泡体安定剤を、本発明で使用することができる。
【0038】
一般的に、ポリウレタン分散液を製造する、当業者に公知である任意の方法を、本発明のポリウレタン分散液材料を製造する本発明の実施に於いて使用することができる。本明細書に於いて定義されたような適当な貯蔵安定性ポリウレタン分散液は、約5ミクロンよりも小さい平均粒子サイズを有する任意のポリウレタン分散液である。好ましくは、この粒子サイズは、0.1〜1ミクロンである。貯蔵安定性ではないポリウレタン分散液は、5ミクロンよりも大きい平均粒子サイズを有する。例えば、適当な分散液は、ポリウレタンプレポリマーを水と混合し、そしてミキサーを使用してプレポリマーを水の中に分散させることによって製造することができる。また、適当な分散液は、プレポリマーを、静的混合装置の中に水と共に供給し、そして水及びプレポリマーを静的ミキサーの中に分散させることによって製造することができる。ポリウレタンの水性分散液を製造する連続式方法が公知であり、本発明の実施に於いて使用することができる。例えば、米国特許第4,857,565号明細書、同第4,742,095号明細書、同第4,879,322号明細書、同第3,437,624号明細書、同第5,037,864号明細書、同第5,221,710号明細書、同第4,237,264号明細書及び同第4,092,286号明細書の全てには、ポリウレタン分散液を製造するために有用である連続式プロセスが記載されている。更に、高い内部相比を有するポリウレタン分散液は米国特許第5,539,021号明細書に記載されているような連続式プロセスによって製造することができる。
【0039】
本発明のポリウレタン分散液は、また、溶媒又は水/溶媒混合物中で製造することができる。例えば米国特許第3,479,310号明細書及び同第4,858,565号明細書を参照されたい。一般的に、溶媒は常圧で100℃よりも低い沸点を有しており、好ましくはイソシアネート基に対して不活性である。このような溶媒の例は、トルエン、酢酸エチル、アセトン、N−メチルピロリドン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、アセトニトリル、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン又はテトラクロロエチレンである。溶媒を使用するとき、水混和性溶媒、特にアセトンを使用することが好ましい。
【0040】
水性分散液の他の種類を、本発明のポリウレタン分散液と組合せて、使用することができる。本発明のポリウレタン分散液とブレンドするために有用である適当な分散液には、スチレン−ブタジエン分散液;スチレン−ブタジエン−塩化ビニリデン分散液;スチレン−アクリル酸アルキル分散液;エチレン−酢酸ビニル分散液;ポリクロロプロピレンラテックス;ポリエチレンコポリマーラテックス;エチレン−スチレンコポリマーラテックス;ポリ塩化ビニルラテックス又はアクリル分散液等及びこれらの混合物が含まれる。
【0041】
一般的に、この分散液は5〜80重量%の固形物を含む。好ましくは、この分散液は10〜75重量%の固形物を含む。更に好ましくは、この分散液は30〜70重量%の固形物を含む。
【0042】
本発明には、任意的に、増粘剤が含まれる。増粘剤は、本発明に於いて、低粘度のポリウレタン分散液の粘度を増加させるのに有用である。本発明の実施で使用するのに適している増粘剤は、当前記技術分野で公知である任意のものであってもよい。例えば、適当な増粘剤には、アルコガム(ALCOGUM)(商標)VEP−II(アルコ・ケミカル社(Alco Chemical Corporation)の商品名)及びパラガム(PARAGUM)(商標)241(パラ−ケム・サザン社(Para-Chem Southern, Inc.)の商品名)が含まれる。増粘剤は、所望の粘度のコンパウンドを製造するために必要な量で使用することができる。
【0043】
本発明には、他の任意の成分が含まれていてよい。例えば、本発明の配合物には、界面活性剤、起泡剤、分散剤、増粘剤、難燃剤、顔料、耐電防止剤、強化繊維、酸化防止剤、保存剤、殺生物剤及び酸掃去剤が含まれてよい。適当な起泡剤の例には、例えば空気、二酸化炭素、窒素、アルゴン及びヘリウムのような気体及び/又は気体の混合物が含まれる。本発明の目的のためには任意であるが、幾つかの成分は、製造プロセスの間及び後に、製品安定性のために非常に有利である。例えば酸化防止剤、殺生物剤及び保存剤を含有させることは、本発明の実施に於いて非常に有利である。
【0044】
本発明の実施に於いて、起泡剤として気体を使用することが好ましい。起泡剤として空気を使用することが特に好ましい。起泡剤は、典型的には、泡を作るために液体の中への気体の機械的導入によって、即ち、機械的起泡によって導入される。起泡したポリウレタンバッキングを製造する際に、全ての成分を混合し、次いで、オークス(OAKES)又はファイヤーストーン(FIRESTONE)起泡器のような装置を使用して、この混合物の中に気体をブレンドすることが好ましい。
【0045】
本発明のポリウレタン分散液からフィルムを製造したいとき、分散液からフィルムを製造する当業者に公知である任意の他の添加剤を、それらの存在が、フィルムの特性を、フィルムがその意図される目的のために最早適合しないほど多く劣化させない限り、使用することができる。このような添加剤は、これらに限定されないが、プレポリマー配合物中に含有させること及び分散液を作るために使用される水中に含有させることを含む、有用であることが知られている任意の方法で、フィルムの中に含有させることができる。例えば、二酸化チタンは、本発明のフィルムを着色するために有用である。他の有用な添加物には、炭酸カルシウム、酸化ケイ素、脱泡剤、殺生物剤、炭素粒子が含まれる。本発明の特別の態様は、二酸化チタン、カーボンブラック又は他の適当な顔料を含有させて、フィルムを紫外線に対して不透明にしたフィルムを提供する。
【0046】
触媒は本発明の実施に於いて任意である。本発明のポリウレタン及びポリウレタンプレポリマーを製造する際に使用するために適している触媒には、第三級アミン及び有機金属化合物等並びにこれらの混合物が含まれる。例えば、適当な触媒には、ジ−n−ブチルスズビス(メルカプト酢酸イソオクチルエステル)、ジメチルスズジラウレート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジスルフィド、第一スズオクトエート(stannous octoate)、鉛オクトエート、第二鉄アセチルアセトネート、カルボン酸ビスマス、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等及びこれらの混合物が含まれる。触媒の量は、有利には、不粘着性状態までの比較的速い硬化が得られるように使用される。有機金属触媒を使用する場合、このような硬化は、重量基準で、ポリウレタンプレポリマー100部当り、約0.01〜約0.5部を使用し得ることができる。第三級アミン触媒を使用する場合、触媒は、好ましくは、重量基準で、ポリウレタン生成組成物100部当り、約0.01〜約3部の第三級アミン触媒を使用して、適当な硬化を与える。アミン型触媒及び有機金属触媒の両方は、組み合わせて使用することができる。
【0047】
本発明の分散液は、可撓性及び非可撓性下地(又は支持体)を被覆するために有用であり又は種々の材料のための被覆配合物の一部として使用される。特に、この分散液は、木材、織物、プラスチックス、金属、ガラス、繊維、医学応用、自動車内装材、皮革用の被覆を製造するために並びに靴底、木材及びガラス用の接着剤応用のために使用することができる。この分散液は、また、種々の建築用及び工業用被覆応用のための水性アクリル分散液又は水性ポリエステル樹脂とブレンドすることができる。本発明の分散液は、また、国際特許出願公開第WO02/055576号明細書に開示されているようなハイブリッドポリウレタン粒子を製造するためにも使用することができる。
【0048】
この分散液は、一般的に、安定で、貯蔵可能で、輸送可能であり、そして任意の後の段階で加工することができる。これらは、一般的に、直接乾燥して、寸法的に安定なプラスチック被膜を形成するが、プロセス製品の形成を、それ自体公知の架橋剤の存在下で実施することもできる。
【0049】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供される。この実施例は、本発明の範囲を限定することを意図しておらず、そのように解釈すべきではない。全ての%は、他に記載しない限り重量基準である。
【実施例】
【0050】
ADA−ほぼ75:25のシス:トランス比を有する、アルドリッチ社(Aldrich)から入手可能な、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン。
【0051】
イソシアネート1−1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(55%)及び1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(45%)異性体の混合物。この混合物の分析によって、下記の異性体量、25.5%の1,3−シス異性体、29.1%の1,3−トランス異性体、30.9%の1,4−トランス異性体及び14.5%の1,4−シス異性体が得られた。
【0052】
イソシアネート2−バイエルAG社(Bayer AG)から、デスモジュール(Desmodur)(商標)Wとして市販されている、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)又は4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート。このイソシアネートは、H12MDIとしても知られている。
【0053】
イソシアネート3−バイエルAG社又はローディア社(Rhodia)から入手可能な、5−イソシアナト−1−(イソシアナトメチル)−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン。このジイソシアネートは、イソホロンジイソシアネート又はIPDIとしても知られている。
【0054】
イソシアネート4−1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(50%)及び1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(50%)異性体の混合物。
【0055】
イソシアネート5−ほぼ60:40のシス:トランス異性体比を有する、1,4−ビス(シアナトメチル)シクロヘキサン。
【0056】
ポリオール1−ダウ・ケミカル社(The Dow Chemical Company)からトーン(TONE)(商標)2241として入手可能な、約2000の数平均分子量を有するポリカプロラクトングリコール(ポリエステルポリオール)。
【0057】
ポリオール2−ダウ・ケミカル社からMPEG(商標)950として入手可能な、約950の分子量を有する単官能性ポリエチレングリコール。
【0058】
ポリオール3−ダウ・ケミカル社からボラノール(VORANOL)(商標)E1000として入手可能な、分子量1000のポリエチレンオキシドジオール。
【0059】
ポリオール4−約2,000の数平均分子量を有するポリ(オキシテトラメチレン)グリコール。
【0060】
ポリオール5−ルコフレックス(Rucoflex)(商標)1500−120、約1,000の分子量を有する、バイエルAG社から得られた、アジピン酸ベースのポリエステルポリオール。
【0061】
T−12−エアー・プロダクツ社(Air Products Company)から市販されている、ジブチルスズジラウレート触媒。
【0062】
実施例1
種々のイソシアネートをポリオールとブレンドすることによって製造したプレポリマーの粘度を、図1に示す。この粘度は、コーン/プレート配置で1000ミクロンの隙間を使用して、AR−2000レオメーターで測定したときの、センチポアズ/秒(cps)で示す。プレポリマーは、表Iに示すような材料重量比を使用して、32オンスのガラスボトル(800g)内で製造する。
【0063】
【表1】

【0064】
この手順に於いて、ポリオールをオーブン(55℃)内で溶融し、そしてイソシアネートに添加する。プレポリマー800g当たり塩化ベンジル1滴(約50ppm)を添加し、この混合物を窒素パッド下で10分間攪拌し、次いで、90℃でオーブン内に入れる。30分後に、プレポリマーをオーブンから取り出し、混合し、そしてオーブンに10時間戻す。次いで、サンプルをオーブンから取り出し、60℃まで冷却し、NCO%を測定した。NCO測定値は、更なる反応のために利用可能である遊離イソシアネート含有量である。
【0065】
この粘度データは、本発明のプレポリマーが、同一のイソシアネート/ハードセグメント含有量で、H12MDI又はIPDIから製造したプレポリマーに比較したとき、所定の温度範囲に亘ってより低い粘度を有することを示している。
【0066】
実施例2
ポリウレタンプレポリマーを、768gのポリオール1,48gのポリオール3,24gのポリオール2及び48gのネオペンチルグリコールのポリオール混合物を調製することによって製造する。この混合物を80℃に加熱し、そして1時間混合する。この混合物を、312gの1,3/1,4ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン溶液に添加し、得られる混合物を90℃で9時間加熱する。最終生成物は、4.8重量%のNCOを有する。製造したこのプレポリマーを、高剪断連続プロセス中に分散させて、ポリウレタン水性分散液を形成する。このプロセスに於いて、100gのプレポリマーを高剪断ミキサー装置の中に導入し、そこで、これを、3.02g(固体)のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの水溶液とブレンドする。次いで、生成したプレエマルジョンを、二次ミキサーの中に導入し、そこで、これを、24gの脱イオン水及び38gの水中の6.85gのADA溶液とブレンドする。この分散液には、56.5重量%の固体含有量、320nmの体積平均粒子サイズ及び1000cpsよりも低い粘度が含まれる。
【0067】
実施例3
ポリウレタン分散液を、実施例1の手順に従って製造したプレポリマーを連鎖延長することによって製造する。プレポリマーの別の200gサンプルを、2.75インチのカウルス(Cowles)ブレードを取り付けた32オンスのガラスボトル内に入れる。ブレードを、ブレードが液体プレポリマーによってちょうど覆われるように配置する。このプレポリマーに、ラウリル硫酸ナトリウムの界面活性剤水溶液(29.5%活性)21.3gを添加する。45%固体分散液を作るために、237gの水を滴下により添加して、水中油滴型分散液を作る。転相点に達したとき、連鎖延長剤(ADA)をプレポリマーに導入する(水中10重量%溶液)。この分散液を濾過し、3日間放置し、その後フィルムを流延した。分散液の製造で使用した材料の重量比を、表IIに示す。
【0068】
【表2】

【0069】
薄いフィルムを、上記の分散液から、80gの分散液を、その縁が、プレートの上に分散液を保持するようにエッチングされている金属プレート(6×10インチ)の上に注ぐことによって製造する。このフィルムを実験室フード内で環境温度で一夜放置する。続いて、このフィルムを120℃のオーブン内に20分間入れる。硬化した後、フィルムを環境温度まで冷却する(20〜30分間)。次に、フィルムをテフロン(登録商標)(Teflon)プレートから取り外し、個々の薄いテフロン(登録商標)シートの間に置き、予熱した加圧オーブン内で、20,000psigの圧力及び120℃の温度で60分間硬化させる。硬化後に、フィルムを、オーブン及びテフロン(登録商標)シートから取り出し、個々の紙のシート上で冷却する。ドッグボーン(dogbone)引張試験片を切断し、フィルムの機械的特性、最終引張強度及び%伸びを、ASTM D412試験方法を使用して測定した。この試験の結果を表IIIに示す。
【0070】
【表3】

【0071】
これらの結果は、実施例3のフィルムが、比較例に比較して、減少した応力でより大きい伸びを有したことを示している。
【0072】
実施例4
本発明のイソシアネートを使用する分散液の性能への、異なった連鎖延長剤の影響を評価するために、実施例1の手順を使用して、表IVに示す重量比に基づくプレポリマーを製造した。
【0073】
【表4】

【0074】
得られたプレポリマーを、3重量%のドデシルベンゾリルスルホン酸ナトリウム(LDS−22、ステパン社(Stepan Company)から入手可能)を含有する水中に分散させる。次いで、このプレポリマーを、それらの類似のジアミン(IPDA及び1,3/1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン)で連鎖延長する(遊離重量%NCOの量基準で98%)。最終分散液は約50重量%の固形含有量を有する。フィルムを、テフロン(登録商標)被覆アルミニウムプレート上で、25℃及び50%相対湿度で、7日間、一定厚さ(約0.01〜0.02インチ)で流延する。ASTM D412によって測定したときの、フィルムの得られた機械的特性を、表Vに示す。
【0075】
【表5】

【0076】
この結果は、イソシアネート1から製造されたエラストマーがIPDIの使用に比較して向上した機械的特性を有することを示している。
【0077】
実施例5
ポリオール4(PTMG、1000グラム)及びジメチロールプロピオン酸(DMPA、134g)を、温度計、機械式攪拌機、加熱ジャケット及び乾燥窒素入口を装着した反応ケトル内に入れる。このポリオール及びDMPA混合物を約130℃に加熱し、この温度で、DMPAが完全に溶解し、溶液が透明になるまで保持する。N−メチルピロリドン(NMP)(5%溶媒を得るため)及びT12触媒(固形物基準で0.25重量%)を、その温度が50℃まで低下した後に、この混合物に添加する。次いで、化学量論的過剰のイソシアネート1を、反応ケトルに添加して、1.8の計算したNCO:OH比を得る。次いで、反応温度を85℃まで徐々に上昇させ、この温度で、ジ−n−ブチルアミン滴定によって決定したNCOの%が、その理論値に達するまで保持する。測定したNCOの%間の差が、理論的予想値の10%内であるとき、反応温度を50℃まで低下させる。生成したイソシアネート末端プレポリマーに、101gのトリエチルアミン(TEA)を添加して、NCO末端プレポリマーの付属COOH基を中和する。中和プロセスが完結した後(30分)、水を、反応ケトルの中に激しく攪拌しながら添加して、付属内部塩基含有NCO末端プレポリマーの分散を達成する。エチレンジアミンと水との混合物(1.0/1.0重量比)を添加することによって、連鎖延長を実施する。エチレンジアミンの添加は、残留する遊離のNCO基の全てを完全に反応させるために十分である。この分散液に数滴の脱泡剤を添加し、穏和に攪拌しながら数分間混合し、濾過し、そしてガラスジャー内に貯蔵する。
【0078】
比較として、ポリイソシアネートとしてイソホロンジイソシアネート(イソシアネート3)を使用して、ポリウレタン分散液を製造するために、同じ手順を使用した。2種のポリウレタン分散液によって製造したエラストマーの特性を、表VIに示す。
【0079】
【表6】

【0080】
これらの結果は、実施例5のエラストマーが、比較に対して比較したとき、より低い引張強度及びより低い伸び%で、より高いモジュラスを有することを示している。
【0081】
実施例6
ポリウレタン分散液から製造したエラストマーの特性への1,3−異性体及び1,4−異性体比の影響を評価するために、1,3−異性体対1,4−異性体濃度の種々の比で、エラストマーを製造する。このプレポリマーを、水又はイソシアネート1の類似アミンで連鎖延長する。水による連鎖延長のために、プレポリマーを、3重量%のLDS−22を含有する水中に分散させる。最終ポリウレタン分散液は、約50重量%の固形含有量を有する。イソシアネート1の類似アミンによる連鎖延長のために、プレポリマーを、3重量%のLDS−22を含有する水中に、50%固形物レベルにまで分散させ、次いでイソシアネート1の類似アミンを、NCO%基準で50%化学量論的量で添加する。
【0082】
ASTM D412によって測定したときの、エラストマーの機械的特性を、表VIIに示す。DMTA分析(動的機械的熱分析)からのデータ、図2は、1,4−異性体含有量に於ける増加が、上温度破断点によって測定したとき、温度安定性に於ける顕著な改良になることを示している。これは、ポリマーが、1,4−含有量の増加によって、より高い耐熱性を有することを意味する。
【0083】
【表7】

【0084】
1,4−含有量に於ける増加は、モジュラスに於ける増加及び伸びに於ける減少になる。低い1,3−含有量の比を有するポリマーは、優れた軟質エラストマーを作り、一方、1,4−異性体比を増加させることは、より高いモジュラスを有する被覆を作るために使用することができる。
【0085】
本発明の他の態様は、本明細書の考察又はここに開示された本発明の実施から、当業者に明らかであろう。明細書及び実施例は例示のみとして考えられ、本発明の真の範囲及び精神は特許請求の範囲によって示されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】温度によるプレポリマーの粘度の変化を示す。
【図2】動的機械的熱分析グラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート及び水素活性部分を有する分子、並びに任意的な連鎖延長剤及び/又は界面活性剤の混合物、を含んでなり、ポリイソシアネートがビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン化合物を含むポリウレタン分散液。
【請求項2】
ポリイソシアネートが(i)トランス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン又は(ii)シス−1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、トランス−1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、シス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン及びトランス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの2種若しくはそれ以上の異性体混合物を含んでなるが、前記異性体混合物が少なくとも約5重量%の前記トランス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含む請求項1に記載の分散液。
【請求項3】
前記ポリウレタンが水性媒体中に分散されている請求項2に記載の分散液。
【請求項4】
前記水性媒体が5%よりも少ない残留有機溶媒を含む請求項3に記載の分散液。
【請求項5】
前記水素活性部分を有する分子が300〜10,000の重量平均分子量及び1.8〜4.5の平均官能基を有するポリオール又はポリオールブレンドである請求項1に記載の分散液。
【請求項6】
前記ポリオールがポリエステル、ポリエーテル、ポリラクトン、ポリオレフィン、ポリカーボネート又はこれらのブレンドから選択された脂肪族又は芳香族ポリオールである請求項5に記載の分散液。
【請求項7】
前記分散液がポリマー連鎖延長剤を含む請求項1に記載の分散液。
【請求項8】
前記連鎖延長剤がピペラジン、エチレンジアミン又はビス(アミノメチル)シクロヘキサンから選択される請求項7に記載の分散液。
【請求項9】
前記分散液が30〜75重量%の固形分を含む請求項1に記載の分散液。
【請求項10】
前記分散液がアニオン性、イオン性、カチオン性又は双性イオン性外部界面活性剤を含む請求項1に記載の分散液。
【請求項11】
前記分散液が内部界面活性剤によって安定化されている請求項1に記載の分散液。
【請求項12】
前記ポリイソシアネート及び水素活性部分を有する分子、並びに任意的な連鎖延長剤及び/又は界面活性剤の混合物、を含んでなり、前記ポリイソシアネートがビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン化合物を含むポリウレタン分散液の製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載の分散液から製造された被覆、フィルム、エラストマー又は微孔質発泡体。
【請求項14】
請求項1に記載の分散液から製造された紫外線又は光安定性被覆、フィルム又はエラストマー。
【請求項15】
ポリイソシアネートが0.1〜20重量%の、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン以外の少なくとも1種のポリイソシアネートを含む請求項2に記載の分散液。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−504849(P2006−504849A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−550153(P2004−550153)
【出願日】平成15年10月28日(2003.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2003/034196
【国際公開番号】WO2004/041890
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】