説明

ポリウレタン樹脂製造用触媒組成物及び非発泡ポリウレタン樹脂の製造方法

【課題】毒性が低く、常温でも良好な触媒活性を示す非発泡ポリウレタン樹脂の製造用触媒組成物を提供する。
【解決手段】 (a)下記一般式(1)
M(L) (1)
[上記式(1)中、MはTi、又はZrであり、Lは各々独立して下記一般式(2)
【化1】


[上記一般式(2)中、R及びRは各々独立してR又はORであって、Rは炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。また、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す]
で表される配位子である。]
で示される金属β−ジケトネート錯体と(b)イミダゾール化合物を含有する触媒組成物をポリウレタン樹脂製造に用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂の製造に有用な触媒組成物に関する。本発明のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物は、毒性が低く、常温でも良好な触媒活性を示し、非発泡ポリウレタン樹脂の製造に有用である。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は、ポリオールと有機ポリイソシアネートとを触媒存在下で反応させることで得られる架橋構造を有する樹脂であり、基材との密着性、可とう性、耐候性に優れるため、自動車、建築、家電、重防食、プラスチック塗料、接着剤等の用途に広く使用されている。また、非発泡ポリウレタン樹脂は各種成形材料、シーリング材、塗料、接着剤等の用途に使用されている。
【0003】
ポリウレタン製造用触媒としては、アミン化合物や金属化合物が知られており、アミン化合物は、ポリオールと有機ポリイソシアネートからウレタン結合を生成する反応を促進すると同時に、水と有機ポリイソシアネートとの反応を促進し、炭酸ガスを発生させる作用も有しているため、通常発泡ウレタン用途に使用される。一方、金属化合物は主にウレタン化反応を促進するため、非発泡ウレタン分野に使用されている他、アミン化合物と併用して発泡ポリウレタン樹脂の製造にも使用されている。金属化合物系触媒の中でも活性の高さから、主にジブチル錫ジラウレート(DBTDL)又はスタナスオクトエート等の有機錫化合物が使用されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、現在使用されている前記有機錫化合物には、多くの問題点が指摘されている。例えば、近年有機スズ触媒の毒性問題が指摘され、特にDBTDL中に不純物として含まれるトリブチルスズは環境ホルモンとして人体への有害性が問題となっている。また、鉛、水銀、ビスマスの化合物もウレタン化反応を促進することが知られているが、これらの重金属化合物は毒性が高いため、有機スズ化合物と同様に使用が控えられる傾向がある。
【0005】
非重金属化合物系触媒としては、チタニウム、鉄、銅、ジルコニウム、ニッケル、コバルト、マンガン等の遷移金属のアセチルアセトネート錯体がウレタン化活性を有することが古くから知られている。近年、環境意識の高まりから、重金属触媒を代替できる低毒性の触媒が望まれており、中でもチタニウム/ジルコニウム化合物の高いウレタン化活性が注目され、新規な錯体化合物の開発が活発化している。
【0006】
炭素数が7以上のジケトネート配位子を含むジルコニウムのテトラジケトネート錯体をウレタン触媒として用いることで、反応性の改良が試みられている(例えば、特許文献1参照)。ジケトン配位子を含む混合錯体としては、アルコキシド、β―ジケトネート、カルボキシレートを組み合わせたチタニウム/ジルコニウム化合物が開示されている(例えば、特許文献2参照)。また、ジルコニウム錯体と特定のアミン化合物を組み合わせることにより、高活性な触媒が得られることが報告されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
しかしながら、これらの錯体化合物は重金属化合物と比較すると反応性が十分に高くないため、代替触媒として用いるのは難しいのが現状である。例えば、ウレタン系のエラストマー、封止剤の硬化触媒として使用すると、特に室温以下の条件では長い硬化時間を要し、樹脂硬度も十分に高くないという問題があり、また、コーティング用途では、DBTDLと比較して、長い乾燥時間を要するという問題があった。
【0008】
一方、ジルコニウム錯体と1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン(DBU)等の従来公知となっているアミン化合物との組合せ技術によれば、脂肪族ポリイソシアネートとポリオールとの反応では良好な触媒活性が得られるものの、芳香族ポリイソシアネートとポリオールとの反応においては常温で十分な活性が得られず、また、発泡が起こりやすく、非発泡ポリウレタン樹脂が得られないという問題があった。
【0009】
【非特許文献1】横山哲夫著「ポリウレタンの構造・物性と高機能化及び応用展開」技術情報協会出版、1998年発行、第325頁
【特許文献1】特表2001−524142公報
【特許文献2】国際特許公開2004/044027号パンフレット
【特許文献3】特開2004−300430公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の背景技術に鑑みなされたものであり、その目的は、毒性が低く、常温でも良好な触媒活性を示すポリウレタン樹脂製造用触媒組成物、及びこれを用いた非発泡ポリウレタン樹脂の製造方法を提供することである。とりわけ、反応時の硬化速度を改善し、発泡を起こさない触媒組成物、及びこれを用いた非発泡ポリウレタン樹脂の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは前記の事情に鑑み、ポリウレタン樹脂製造用触媒について鋭意検討した結果、金属β−ジケトネート錯体及びイミダゾール化合物からなる触媒組成物が前記課題を解決するために極めて有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち本発明は、以下に示すとおりの、ポリウレタン樹脂製造用触媒組成物及び非発泡ポリウレタン樹脂の製造方法である。
【0013】
<1>(a)下記一般式(1)
M(L) (1)
[上記一般式(1)中、MはTi、又はZrであり、Lは各々独立して下記一般式(2)
【0014】
【化1】

【0015】
[上記一般式(2)中、R及びRは各々独立してR又はORであって、Rは炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。また、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す]
で表される配位子である。]
で示される金属β−ジケトネート錯体、及び(b)下記一般式(3)
【0016】
【化2】

【0017】
[上記一般式(3)中、R、R、R及びRは各々独立して、水素原子、又は炭素数1〜12のアルキル基、アリール基、アルコキシアルキル基、若しくはヒドロキシアルキル基を表す。]
で表されるイミダゾール化合物を含有してなるポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【0018】
<2>(a)金属β−ジケトネート錯体と(b)イミダゾール化合物とのモル比[(b)/(a)]が1〜20の範囲であることを特徴とする上記<1>に記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【0019】
<3>上記一般式(1)中のMがZrであることを特徴とする上記<1>又は<2>に記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【0020】
<4>上記一般式(2)で表されるβ−ジケトネートが、2,4−ペンタンジオネート、3,5−ヘプタンジオネート、1−フェニル−1,3−ブタンジオネート、5−メチル−2,4−ヘキサンジオネート、及び6−メチル−2,4−ヘプタンジオネートからなる群より選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする上記<1>乃至<3>のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【0021】
<5>(a)金属β−ジケトネート錯体を2種以上含有することを特徴とする上記<1>乃至<4>のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【0022】
<6>(b)イミダゾール化合物が、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジルイミダゾール、及び1−ベンジル−2−メチルイミダゾールからなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物であることを特徴とする上記<1>乃至<5>のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【0023】
<7>(b)イミダゾール化合物を2種以上含有することを特徴とする上記<1>乃至<6>のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【0024】
<8>ポリオールと有機ポリイソシアネートとを、上記<1>乃至<7>のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物の存在下、反応させることを特徴とする非発泡ポリウレタン樹脂の製造方法。
【0025】
<9>ポリオールと有機ポリイソシアネートとを、上記<1>乃至<7>のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物及び添加剤の存在下、反応させることを特徴とする非発泡ポリウレタン樹脂の製造方法。
【0026】
<10>有機ポリイソシアネートが芳香族ポリイソシアネートであることを特徴とする上記<8>又は<9>に記載の非発泡ポリウレタン樹脂の製造方法。
【0027】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0028】
本発明のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物で用いられる(a)金属β−ジケトネート錯体は、上記一般式(1)で示される化合物である。
【0029】
上記一般式(1)中、MはTi、又はZrである。また、Lは各々独立して上記一般式(2)で表される配位子であり、具体的には、2,4−ペンタンジオネート、1−フェニル−1,3−ブタンジオネート、5−メチル−2,4−ヘキサンジオネート、6−メチル−2,4−ヘプタンジオネート、2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート、エチルアセトアセテート、メチルアセトアセテート等が例示される。本発明において、上記一般式(1)で示される(a)金属β−ジケトネートは、2種以上のβ−ジケトネート配位子を含んでいてもよい。
【0030】
本発明において、上記一般式(1)で示される(a)金属β−ジケトネートとしては、特に限定するものではないが、例えば、チタニウムテトラ(2,4−ペンタンジオネート)、チタニウムテトラ(3,5−ヘプタンジオネート)、チタニウムテトラ(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)、チタニウムテトラ(5−メチル−2,4−ヘキサンジオネート)、チタニウムテトラ(6−メチル−2,4−ヘプタンジオネート)、ジルコニウムテトラ(2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムテトラ(3,5−ヘプタンジオネート)、ジルコニウムテトラ(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)、ジルコニウムテトラ(3−メチル−2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムテトラ(2,4−ヘキサンジオネート)、ジルコニウムテトラ(5−メチル−2,4−ヘキサンジオネート)、ジルコニウムテトラ(6−メチル−2,4−ヘプタンジオネート)、ジルコニウムテトラ(2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート)、ジルコニウムテトラ(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオネート)、ジルコニウムテトラ(メチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラ(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムオキサイドビス(2,4−ペンタンジオネート)等が例示される。
【0031】
本発明においては、これらのうち、ジルコニウムテトラ(2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムテトラ(3,5−ヘプタンジオネート)、ジルコニウムテトラ(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)、ジルコニウムテトラ(5−メチル−2,4−ヘキサンジオネート)、ジルコニウムテトラ(6−メチル−2,4−ヘプタンジオネート)が好適なものとして例示される。
【0032】
これらの金属β−ジケトネート錯体は固体として単離したものをそのまま用いても良いし、有機溶媒と混合し溶液にして用いても良い。また、2種類以上の金属β−ジケトネート錯体を同時に用いても良い。金属β−ジケトネート錯体を溶解する有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセト酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール等が例示される。
【0033】
本発明のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物は、2種以上の(a)金属β−ジケトネート錯体を含有してもよい。
【0034】
本発明で用いられる(b)イミダゾール化合物は、上記一般式(3)で示される化合物である。
【0035】
上記一般式(3)で示される(b)イミダゾール化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−プロピルイミダゾール、1−ブチルイミダゾール、1−ビニルイミダゾール、1−フェニルイミダゾール、1−ベンジルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−メチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(1−ヒドロキシエチル)イミダゾール、1−(2−ヒドロキシプロピル)イミダゾール、1−(1−メトキシエチル)イミダゾール、1−(1−メトキシエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(1−ヒドロキシエチル)−2−メチルイミダゾールトリエチルアミン、2−メチル−4,5−ヒドロキシメチルイミダゾール、ゾール、1−ジメチルアミノプロピルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシプロピル)−2−メチルイミダゾール等が挙げられる。
【0036】
本発明においては、これらのうち、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジルイミダゾール、又は1−ベンジル−2−メチルイミダゾールが好適なものとして例示される。
【0037】
本発明のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物は、2種以上の(b)イミダゾール化合物を含有してもよい。
【0038】
本発明において、前記(a)金属β−ジケトン錯体に対する(b)イミダゾール化合物のモル比は、特に限定するものではないが、(b)/(a)=1〜20の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは(b)/(a)=2〜15の範囲である。モル比[(b)/(a)]が1〜20の範囲を外れると、両成分の相乗効果が得られない場合がある。すすなわち、モル比[(b)/(a)]が1未満であると、十分な触媒活性を示さない場合があり、20を超えると硬化時に発泡を起こす場合がある。
【0039】
本発明のポリウレタン樹脂組成物をポリウレタン樹脂製造に用いる場合の使用量は、特に限定はないが、ポリオールを100重量部とした時、(a)金属β−ジケトネート錯体は金属量として0.001〜1重量部の範囲であり、(b)イミダゾール化合物は0.005〜2重量部の範囲が好ましい。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、その他触媒を併用しても良い。
【0040】
本発明のポリウレタン製造用触媒組成物において、(a)金属β−ジケトネート錯体と(b)イミダゾール化合物は予め混合して使用しても良く、また、(a)成分、(b)成分各々をポリウレタン樹脂の製造時にポリオール、あるいは有機イソシアネートに混合して使用しても良い。
【0041】
本発明の非発泡ポリウレタン樹脂の製造方法は、ポリオールと有機ポリイソシアネートとを、本発明のポリウレタン製造用触媒組成物の存在下、反応させることをその特徴とする。
【0042】
本発明において、使用されるポリオールとしては、例えば、従来公知のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、アクリル系ポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、カプロラクトン変性ポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、エポキシ変性ポリオール、アルキド変性ポリオール、ひまし油、フッ素含有ポリオール等が使用できる。これらのポリオールは単独で使用することもできるし、適宜混合して併用することもできる。
【0043】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングルコール、テトラメチレングルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコール類、エチレンジアミン等の脂肪族アミン化合物類、トルエンジアミン、ジフェニルメタン−4,4−ジアミン等の芳香族アミン化合物類、エタノールアミン及びジエタノールアミン等のようなアルカノールアミン類等のような少なくとも2個以上の活性水素基を有する化合物を出発原料としてこれにエチレンオキシドやプロピレンオキシドに代表されるアルキレンオキサイドの付加反応により製造することができる[例えば、Gunter Oertel,“Polyurethane Handbook”(1985年版)Hanser Publishers(ドイツ),p.42〜53参照]。
【0044】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価アルコールと無水マレイン酸、フマル酸、無水イタコン酸、イタコン酸、アジピン酸、イソフタル酸等の多塩基酸との縮合物や、ナイロン製造時の廃物、トリメチロールプロパン、ペンタエリストールの廃物、フタル酸系ポリエステルの廃物、廃品を処理し誘導したポリエステルポリオール等[例えば、岩田敬治,「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版)日刊工業新聞社,p.117参照]が挙げられる。
【0045】
アクリル系ポリオールとしては、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタアクリル酸2−ヒドロキシエチル等の水酸基含有不飽和モノマー及び/又はこれらモノマーにε−カプロラクタム等のラクトン類を付加したラクトン変性不飽和モノマーと、スチレン、アクリル酸メチル、メタアクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタアクリル酸ブチル等の不飽和モノマーを重合反応させて得られるポリオールが挙げられる。
【0046】
ポリオールの平均分子量は200〜10,000の範囲のものが好ましい。平均分子量が200未満では架橋点間距離が短く、ウレタン樹脂の柔軟性が十分ではなく、耐割れ性が不充分となるおそれがあり、10,000を超えると架橋密度が低くなり、強靭性や硬度が不充分となり本発明の効果を発揮しないおそれがある。
【0047】
本発明に使用されるポリイソシアネートは、従来公知の有機ポリイソシアネートであればよく、特に限定するものではないが、例えば、ポリイソシアネートモノマ−の他にそのポリメリック体も使用することができる。ポリイソシアネートモノマ−としては、例えば、トルエンジイソシアネート(以下、TDIと称する場合がある)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと称する場合がある)、4,4’−ジフェニルエ−テルジイソシアネート、ナフタレンジイシシアネート、キシレン−1,3−ジイソシアネート、キシレン−1,4−ジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート、及びこれらの混合体が挙げられる。TDIとその誘導体としては、例えば、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物等を挙げることができる。また、MDIとその誘導体としては、例えば、MDIとその重合体のポリフェニル−ポリメチレンジイソシアネートの混合体、及び/又は末端イソシアネート基をもつジフェニルメタンジイソシアネート誘導体を挙げることができる。また、特に限定されるものではないが、本発明のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物は、上記、TDI、MDI等の芳香族ポリイソシアネートに特に有用である。
【0048】
本発明の製造方法においては、有機イソシアネートに換えて、ウレタンプレポリマーを使用することもできる。ウレタンプレポリマーは、前述のポリオールと有機ポリイソシアネートを反応させることにより製造されるが、該反応は高温で行うことが望ましく、例えば、60℃〜150℃の範囲間で反応を行うことが望ましい。ポリオールに対するポリイソシアネートの当量比は、約0.8〜約3.5の範囲間に設定するのが望ましい。
【0049】
本発明において、必要で応じて、その他の添加剤を使用することができる。その他の添加剤としては、架橋剤又は鎖延長剤、難燃剤、溶媒、顔料、着色剤、老化防止剤、抗酸化防止剤、充填剤、増粘剤、減粘剤、可塑剤、タレ防止剤、沈殿防止剤、消泡剤、UV吸収剤、チキソトロープ剤、吸着剤、その他公知の添加剤等が挙げられる。このような添加剤の種類及び添加量は、公知の形式と手順を逸脱しないならば、通常使用される範囲で使用することができる。
【0050】
本発明において、架橋剤又は鎖延長剤としては、低分子量の多価アルコール(例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン等)、低分子量のアミンポリオール(例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等)、ポリアミン(例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、キシリレンジアミン、メチレンビスオルソクロルアニリン等)等が例示される。
【0051】
本発明の方法において、難燃剤としては、例えば、リン酸とアルキレンオキシドとの付加反応によって得られるプロポキシル化リン酸、プロポキシル化ジブチルピロリン酸等の含リンポリオールの様な反応型難燃剤、トリクレジルホスフェート等の第3リン酸エステル類、トリス(2−クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート等のハロゲン含有第3リン酸エステル類、ジブロモプロパノール、ジブロモネオペンチルグリコール、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン含有有機化合物類、酸化アンチモン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸アルミニウム等の無機化合物等が挙げられる。
【0052】
本発明においては、有機ポリイソシアネートやポリオール等の原料を溶解、希釈するため、溶剤を使用することができる。このような溶剤としては、トルエン、キシレン、ミネラルターペン等の炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルグリコールアセテート、酢酸セルソルブ等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類の有機溶媒が挙げられる。
【0053】
本発明において、イソシアネートインデックスは特に限定するものではないが、通常は50〜300の範囲であり、更に好ましくは70〜250の範囲である。70以下では架橋密度が低くなり樹脂強度が低下するおそれがあり、250以上では未反応イソシアネート基が残存するおそれがある。
本発明の非発泡ポリウレタン樹脂の製造においては、系中に水分が存在すると反応の際に発泡現象が起きたり、触媒活性が低くなったりする恐れがあるため、水分を除去することが望ましい。水分の除去には、ポリオールやウレタンプレポリマー等の原料について、加熱真空脱水を行うことはもちろん、モレキュラーシーブやゼオライト等を系中に添加しても良い。また必要であれば消泡剤を用いることもできる。
【0054】
本発明の方法は、前記原料(ポリオール、有機ポリイソシアネート、本発明のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物、添加剤等)の混合液を混合、攪拌した後、適当な容器又はモールドに注入して成型することにより行われる。
【0055】
以下、実施例、比較例に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0056】
本発明のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物は、常温でも良好な触媒活性を示し、なおかつ環境的負荷の高い重金属を使用しないので、工業的に極めて有用である。
【0057】
特に、本発明のポリウレタン樹脂製造法触媒組成物は、金属β−ジケトネート錯体と(b)イミダゾール化合物とのモル比[(b)/(a)]を1〜20の範囲とすることにより、発泡を起こさないばかりでなく、硬化速度が著しく向上するという相乗効果を奏する。
【0058】
また、本発明のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物は、ポリウレタン樹脂生成過程において発泡を起こさないため、非発泡ポリウレタン樹脂の製造用途に特に有用である。
【実施例】
【0059】
<調製例>
[ジルコニウムテトラ(2,4−ペンタンジオネート)の調製]
窒素置換をしたシュレンク管の中にジルコニウムテトラブトキシド10.0gと塩化メチレン(脱水品)10.0gを入れ、次いで、2,4−ペンタンジオンを10.4g(ジルコニウムに対し4倍モル量)添加し、室温で12時間反応させた。反応後、反応液からブタノール、塩化メチレンを60℃で減圧留去し、得られた固形物を60℃で減圧乾燥し、ジルコニウム(2,4−ペンタンジオネート)15.9gを得た。
【0060】
なお、下記実施例5、実施例6で用いたジルコニウムテトラ(3,5−ヘプタンジオネート)、及びジルコニウムテトラ{6−メチル−2,4−ヘプタンジオネート}についても上記と同様の方法に従い調製した。
【0061】
<実施例1>
(a)成分(金属β−ジケトネート錯体)として、ジルコニウムテトラ(2,4−ペンタンジオネート)1.11gを、室温においてベンジルアルコール5.82gに溶解させた。得られた溶液中のジルコニウム濃度は3.0wt%であった。この溶液に(b)成分(イミダゾール化合物)として1,2−ジメチルイミダゾール1.75gを溶解させて触媒組成物溶液を得た。
【0062】
100mlのポリエチレン製カップに、ポリプロピレングリコール(分子量700、和光純薬工業(株)製)15.0g、上記触媒組成物86.8mg((a)成分(11.1mg)、(b)成分(17.5mg)の各実質添加量、及び全固形分に対する(a)成分の金属添加部数(0.010pbw)を表1に示す)混合、撹拌した。次に、ジフェニルメタンジイソシアネート(ミリオネートMR−200、日本ポリウレタン工業(株)製)5.8gを加え30秒間撹拌した。室温(24〜26℃)の条件において、直径2cm、厚さ2mmの金属性金型に上記混合液をすばやく流し込み、硬化挙動を評価した。
【0063】
混合液を流し込んでから、混合液がゲル化するまでの時間をゲルタイム、指で触ってベトツキが無くなるまでの時間をタックフリータイムとした。
【0064】
また、硬化樹脂の発泡状況を以下の5段階で評価した。
【0065】
1:発泡著しく樹脂の大半が金型の外側に出る
2:泡の発生が多く樹脂がかなり膨れる
3:泡の発生が多く樹脂に少し膨れがある
4:小さい泡の発生が見られるが樹脂の膨れはない
5:発泡はほとんど見られず樹脂の膨れがまったくない。
【0066】
これらの評価結果を表1にあわせて示す。
【0067】
【表1】

<実施例2〜実施例7>
(a)成分、(b)成分として、各々表1に示した金属β−ジケトネート錯体、及びイミダゾール化合物を、表1に示した量使用した以外は実施例1と同様に行った。評価結果を表1にあわせて示す。
【0068】
実施例1〜実施例7では、本発明の(a)金属β−ジケトネート錯体、及び(b)イミダゾール化合物からなる触媒組成物を使用した。これらの触媒は非常に高い触媒活性を有しており、硬化樹脂には発泡は見られず、良好な非発泡ポリウレタン樹脂が得られた。
【0069】
<比較例1〜比較例6>
表1に示した(a)成分の金属β−ジケトネート錯体及び/又はアミン化合物を、表1に示した量使用した以外は実施例1と同様に行った。評価結果を表1にあわせて示す。
【0070】
比較例1から、ジルコニウムテトラ(2,4−ペンタンジオネート)を単独で使用した場合、十分な触媒活性が得られないことがわかる。また比較例2から、1,2−ジメチルイミダゾールを単独で使用した場合も十分な触媒活性が得られないことがわかる。なお、実施例3から、ジルコニウムテトラ(2,4−ペンタンジオネート)と1,2−ジメチルイミダゾールをモル比2で使用した場合、すなわち、(b)成分を少量しか使用しない場合においても、硬化性が著しく向上することがわかる。
【0071】
比較例4〜比較例6から、(b)成分として本発明のイミダゾール化合物以外のアミン化合物を用いると、十分な触媒活性が得られないか、又は発泡が起こり、非発泡硬化樹脂が得られないことがわかる。
【0072】
<比較例7、比較例8>
触媒として、DBTDL(ジブチル錫ラウレート)、あるいはオクチル酸鉛を表1に示した量(金属添加部数は実施例1と同じく0.01pbw)使用した以外は実施例1と同様に行った。評価結果を表1にあわせて示す。
【0073】
比較例7から、DBTDLは室温ではタックフリーになるまでに長い時間を要することがわかる。また、DBTDLは不純物としてトリブチル錫を含有しており環境衛生上、安全に使用できるものではない。
【0074】
比較例8から、オクチル酸鉛は触媒活性が低く、表1の条件では2時間以内にタックフリーとならないことがわかる。また、有害な重金属である鉛を含んでおり、環境衛生上安全に使用できるものではない。
【0075】
<比較例9>
(a)成分としてDBTDLを、(b)成分として1,2−ジメチルイミダゾールを、表1に示した量使用した以外は実施例1と同様に行った。評価結果を表1にあわせて示す。
【0076】
比較例9から、DBTDLとイミダゾール化合物を併用した場合には、ゲルタイムは早くなるものの、タックフリーになるまでの時間は長く、発泡が起こりやすくなり、非発泡硬化樹脂が得られないことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記一般式(1)
M(L) (1)
[上記一般式(1)中、MはTi、又はZrであり、Lは各々独立して下記一般式(2)
【化1】

[上記一般式(2)中、R及びRは各々独立してR又はORであって、Rは炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。また、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す]
で表される配位子である。]
で示される金属β−ジケトネート錯体、及び(b)下記一般式(3)
【化2】

[上記一般式(3)中、R、R、R及びRは各々独立して、水素原子、又は炭素数1〜12のアルキル基、アリール基、アルコキシアルキル基、若しくはヒドロキシアルキル基を表す。]
で表されるイミダゾール化合物を含有してなるポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【請求項2】
(a)金属β−ジケトネート錯体と(b)イミダゾール化合物とのモル比[(b)/(a)]が1〜20の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【請求項3】
一般式(1)中のMがZrであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【請求項4】
一般式(2)で表されるβ−ジケトネートが、2,4−ペンタンジオネート、3,5−ヘプタンジオネート、1−フェニル−1,3−ブタンジオネート、5−メチル−2,4−ヘキサンジオネート、及び6−メチル−2,4−ヘプタンジオネートからなる群より選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【請求項5】
(a)金属β−ジケトネート錯体を2種以上含有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【請求項6】
(b)イミダゾール化合物が、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジルイミダゾール、及び1−ベンジル−2−メチルイミダゾールからなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【請求項7】
(b)イミダゾール化合物を2種以上含有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物。
【請求項8】
ポリオールと有機ポリイソシアネートとを、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物の存在下、反応させることを特徴とする非発泡ポリウレタン樹脂の製造方法。
【請求項9】
ポリオールと有機ポリイソシアネートとを、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒組成物及び添加剤の存在下、反応させることを特徴とする非発泡ポリウレタン樹脂の製造方法。
【請求項10】
有機ポリイソシアネートが芳香族ポリイソシアネートであることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の非発泡ポリウレタン樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2007−197507(P2007−197507A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15017(P2006−15017)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】