説明

ポリウレタン水性分散液及び該水性分散液の接着剤としての使用

本発明は、新規なポリウレタン及び/又はポリウレタン−ポリウレア分散液、該分散液の製造方法、並びに該分散液の接着剤としての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリウレタン及び/又はポリウレタン−ポリウレア分散液、該分散液の製造方法、並びに該分散液の接着剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン及び/又はポリウレタン−ポリウレアの水性分散液の調製法は、例えば、次の文献に記載されているように、当該分野においては知られている:D.ディーテリッチ、フーベン・ベイル社「メトーデン・デア・オーガニッシェン・ヘミー」、E20巻、第1670頁〜第1681頁(1987年)。
【0003】
米国特許US−A2968575号明細書に記載されているように、ポリウレタン及び/又はポリウレタン−ポリウレアの安定な水性分散液は、外部から添加される乳化剤を用いて分散させた後、ポリマーを水中へ安定化させることによって調製される。しかしながら、貯蔵安定性の水性分散液を調製するために必要な多量の外添乳化剤は、このような調製品の利用可能性に対して有害な効果をもたらすことが判明している。この理由は、この種の添加剤が該調製品に高い親水性を付与して水による影響を受けやすくするからである。
【0004】
この点に関しては、乳化剤として化学的に結合した親水性中心を有するポリウレタン及び/又はポリウレタン−ポリウレアの分散液は改良された特性を明確に示す。ポリマーへ組み込まれる親水性中心はカチオン性基(例えば、独国特許公報DE−A640789参照)、アニオン性基(例えば、DE−A1495745参照)及び/又は非イオン性基(例えば、DE−A2314512参照)にすることができる。
【0005】
ポリマー中へ組み込まれたこの種の親水性中心を有するポリウレタン及び/又はポリウレタン−ポリウレアの水性分散液は特徴的な利点と欠点を有する。例えば、イオン性基によって親水化されたポリウレタン及び/又はポリウレタン−ポリウレアの分散液は、これらの塩特性(salt character)に起因して、沸点までの高温によって実質上影響を受けない。一方、非イオン的に親水性化された分散液は、約60℃よりも高い温度に加熱すると凝固する。これとは反対に、非イオン的に親水性化された分散液は凍結と電解質に対して安定であるが、イオン的に親水性化された分散液はこのような条件下では安定ではない。
【0006】
DE−A2651506においては、上記の親水性化基の欠点を回避するための1つの方法として、イオン性親水性基と非イオン性親水性基を組み合わせる方法が教示されている。しかしながら、DE−A2651506に記載のポリウレタン−ポリウレア分散液は接着剤としては非常に適してはいないという欠点がある。
【0007】
接着剤として適したポリウレタン及び/又はポリウレタン−ポリウレアの水性分散液の調製法、特に熱的活性化法による調製法は、例えば、DE−A2804609、EP−A259679及びDE−A3728140等に記載されている。これらの特許文献に記載/開示されているポリウレタン−ポリウレアの水性分散液はアセトン法によってのみ調製される。しかしながら、この方法においては、補助溶剤として多量の有機溶剤を必要とするという問題があり、このような有機溶剤は、ポリウレタン及び/又はポリウレタン−ポリウレア分散液の調製後に蒸留によって除去されなければならない。
【0008】
DE−A3735587には、溶剤を使用しないで接着剤として適したポリウレタン及び/又はポリウレタン−ポリウレア分散液を調製する方法が記載されている。しかしながら、この特許文献に開示されている2段階の調製法は実用上実施することは不可能であるか、高いコストと労力を伴う場合にのみ実施可能である。さらに、次のことが判明している。即ち、該分散液の活性化温度は、熱的活性化法に対して過度に高い。熱的活性化法の場合、加工物は第一段階において接着剤で被覆される。溶剤又は水を蒸発させることによって、不粘着性の接着剤フィルムが形成される。このフルムは、例えば、赤外線ランプ等を用いて加熱することによって活性化される。接着剤フィルムが粘着性を帯びる温度は活性化温度と呼ばれている。一般的に言えば、活性化温度は非常に低い温度(40〜60℃)が望ましい。何故ならば、より高い活性化温度には高いエネルギーコストを必要とし、また、不可能でない場合におこなわれる手動による接合操作をより困難とするからである。
【0009】
特に熱的活性化法による接着剤として適当なポリウレタン及び/又はポリウレタン−ポリウレア水性分散液の1つの調製法は、例えば、DE−A10152405に記載/開示されている。この特許文献においては、芳香族金属スルホネート基を有する特殊なポリエシテルポリオールを使用することによって、50〜60℃において良好な活性化能を示すポリウレタン及び/又はポリウレタン−ポリウレア水性分散液が得られることが記載されている。しかしながら、芳香族金属スルホネート基を有するこの種のポリエステル類は入手が困難であり、また、調製原料として必要な金属スルオネート基又はスルホン酸基を有するジカルボン酸に起因して、該ポリエステル類は非常に高価になる。
【0010】
従来技術の問題点は、分散液接着剤が不十分な初期の熱的安定性を示すことである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、十分に高い初期の熱的安定性を示す新規なポリウレタン及び/又はポリウレタン−ポリウレア分散液接着剤を提供することである。驚くべきことには、本発明による下記のポリウレタン及び/又はポリウレタン−ポリウレア水性分散液が、熱活性化法において接着剤として使用するために著しく適していることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
即ち本発明は、下記のイオン性基若しくは潜在的イオン性基 i)だけでなく非イオン性基 ii)を含むポリウレタン及び/又はポリウレタン−ポリウレアの水性分散液であって、該ポリマーへ化学的に結合しない乳化剤を0.1〜7.5重量%含有する該水性分散液に関する:
i)付加的にスルホン酸基若しくはスルホネート基を1分子当たり0.5〜2モル含む二官能性ポリオール成分を介してポリマー主鎖中へ導入されるイオン性基若しくは潜在的イオン性基、及び
ii)イソシアネート重付加反応に対して単官能性であって、エチレンオキシド含有量が少なくとも50重量%で分子量が少なくとも400ダルトンである1種若しくは複数種の化合物を介してポリマー主鎖中へ導入される非イオン性基。
【0013】
本発明は、本発明によるポリウレタン及び/又はポリウレタン−ポリウレアの水性分散液の製造方法であって、下記の工程a)〜d)を含むことを特徴とする該製造方法にも関する:
a)2以上の官能価と400〜5000ダルトンの分子量を有するポリオール成分(A)、2以上の官能価と62〜399ダルトンの分子量を有する所望によるポリオール成分(B)、イソシアネート重付加反応に関して単官能性であって、エチレンオキシド含有量が少なくとも50重量%で分子量が少なくとも400ダルトンである1種若しくは複数種の化合物(C)、及びスルホン酸基若しくはスルホネート基を1分子当たり0.5〜2モル含む1種若しくは複数種の二官能性ポリオール成分(D)を、1種若しくは複数種のジイソシアネート成分若しくはポリイソシアネート成分(E)と反応させることによってイソシアネート官能性プレポリマーを合成し、
b)イソシアネート基に対して反応性を示す基を含有しない乳化剤(F)0.1〜7.5重量%、及び上記合成成分(D)に起因する遊離の酸性基をイオン性基へ変換させるための所望による中和剤を該プレポリマー中へ添加し、
c)得られるイソシアネート含有溶融物を水中へ分散させ、次いで
d)1〜3の官能価を有するアミノ官能性成分(G)の水溶液を添加することによって連鎖延長をおこなう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明によるポリウレタン及び/又はポリウレタン−ポリウレア水性分散液は、低い活性化温度(50〜60℃)、非常に良好な初期熱安定性(10mm/分以下、好ましくは5mm/分以下、より好ましくは0〜2mm/分)及び高い耐熱性によって特徴づけられる。さらに、該水性分散液は、非常に広範囲の支持体(substrate)、例えば、木材、革、織物、種々のグレードのポリビニルクロリド(非可塑化及び可塑化PVC)、ゴム、及びポリエチレン−ビニルアセテート等に対して優れた接着性を示す。
【0015】
2以上の官能価を有する適当なポリオール(A)は、少なくとも2個のイソシアネート−反応性水素原子及び400〜5000ダルトンの平均分子量を有する化合物である。適当な合成成分としては、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリラクトン及びポリアミド等が例示される。好ましい化合物は2〜4個(好ましくは2〜3個)のヒドロキシル基を有する化合物、例えば、均質ポリウレタン及び気泡ポリウレタンの調製用として知られている化合物であって、例えば、独国特許公報DE−A2832253(第11頁〜第18頁)に記載されている化合物が挙げられる。本発明においては、この種の化合物の任意の混合物も適当である。
【0016】
適当なポリエステルポリオールには、特に、分岐度の低い線状ポリエステルジオール又はポリエステルポリオールが包含され、この種の化合物は既知の方法に従って、以下に例示される酸成分及び/又は酸無水物成分に以下に例示される多価アルコール成分及び所望によるより高位の官能価を有するポリオール(例えば、トリメチロールプロパン、グリセロール及びペンタエリスリトール等)を用いて調製してもよい。
【0017】
脂肪族、脂環式又は芳香族のジカルボン酸又はポリカルボン酸及び/又は酸無水物:コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、o−フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、トリメリット酸、o−フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、コハク酸無水物及びこれらの任意の混合物。
【0018】
多価アルコール成分:エタンジオール、ジ−、トリ−及びテトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ジ−、トリ−及びテトラプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ブタン−1,4−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、ブタン−2,3−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、オクタン−1,8−ジオール、デカン−1,10−ジオール、ドデカン−1,12−ジオール及びこれらの任意の混合物。
【0019】
ポリエステルポリオール調製用の適当な多価アルコールには、もちろん、脂環式及び/又は芳香族のジヒドロキシ化合物及びポリヒドロキシ化合物が包含される。ポリエステルを調製するためには、遊離のポリカルボン酸の代わりに、対応するポリカルボン酸無水物又は対応するポリカルボン酸の低級アルコールエステルを使用することも可能である。
【0020】
ポリエステルポリオールは、もちろん、ラクトンのホモポリマー又はコポリマーであってもよい。この種のポリマーは、好ましくは、ラクトン(例えば、ブチロラクトン、ε−カプロラクトン及び/又はメチル−ε−カプロラクトン)又はラクトン混合物と適当なスターター分子(例えば、2及び/又はより高位の官能価を有する化合物、例えば、ポリエステルポリオールの合成成分として先に例示した低分子量多価アルコール等)との付加反応によって得られる。ε−カプロラクトンの対応するポリマーが好ましい。
【0021】
ヒドロキシル基含有ポリカーボネートも適当なポリヒドロキシル化合物である。この種の化合物としては、ジオール(例えば、1,4−ブタンジオール及び/又は1,6−ヘキサンジオール)をジアリールカーボネート(例えば、ジフェニルカーボネート)、ジアルキルカーボネート(例えば、ジメチルカーボネート)又はホスゲンと反応させることによって調製される化合物が例示される。
【0022】
適当なポリエーテルポリオールとしては、スチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブチレンオキシド又はエピクロロヒドリンの重付加物、これらの共付加物とグラフト重合物、多価アルコール若しくはこれらの混合物の縮合によって得られるポリエーテルポリオール、並びに多価アルコール、アミン及びアミノアルコールのアルコキシル化によって得られるポリエーテルポリオール等が例示される。
【0023】
合成成分(A)として適当なポリエーテルポリオールはプロピレンオキシド及びエチレンオキシドのホモポリマー、コポリマー、及びグラフトポリマーであり、これらのポリマーは、該エポキシドを、ポリエステルポリオールの合成用成分として先に記載した低分子量のジオール若しくはトリオール、ペンタエリスリトールのような高官能価を有する低分子量ポリオール若しくは糖、又は水と付加反応させることによって調製することができる。
【0024】
官能価が2又はこれよりも高い好ましいポリオール(A)はポリエステルポリオール、ポリラクトン及びポリカーボネートである。特に好ましいポリオールは、合成成分としてアジピン酸とブタン−1,4−ジオール及び/又はヘキサン−1,6−ジオールを含有する主として線状のポリエステルポリオールである。同様に、特に好ましいポリオールは主として線状のポリカプロラクトンである。本発明において用いる「主として線状の」という用語は、ヒドロキシル基に基づく算術平均官能価が1.9〜2.35(好ましくは1.95〜2.2、より好ましくは2)であることを意味する。
【0025】
合成成分(B)として適当なポリオールであって、2又はそれよりも高い官能価及び62〜399ダルトンの分子量を有するポリオール成分は、合成成分(A)として記載した生成物である(但し、該生成物の分子量は62〜399ダルトンである)。別の適当な成分としては、ポリエステルポリオールの調製に関連して先に記載した多価アルコール(特に二価アルコール)並びに低分子量ポリエステルジオール、例えば、ビス(ヒドロキシエチル)アジペート又は芳香族ジオールを出発原料として調製されるエチレンオキシド若しくはプロピレンオキシドの短鎖のホモ付加物及び共付加物が例示される。エチレンオキシド又はプロピレンオキシドの短鎖のホモポリマーとコポリマーのスターターとして使用してもよい芳香族ジオールとしては、1,4−、1,3−及び1,2−ジヒドロキシベンゼン及び2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が例示される。
【0026】
イソシアネートの重付加反応に対して単官能性であり、少なくとも50重量%のエチレンオキシド含有量と少なくとも400ダルトンの分子量を有する化合物であって、合成成分(C)として適当な該化合物は、次式(I)で表されるエチレンオキシドユニット含有末端親水性鎖を組み込むための親水性の合成成分である:

H−Y’−X−Y−R (I)
【0027】
式(I)における符号の意義は以下の通りである。
「R」:1〜12個の炭素原子を有する1価の炭化水素残基(好ましくは1〜4個の炭素原子を有する非置換アルキル残基)を示す。
「X」:5〜90個(好ましくは20〜70個)の鎖員を有するポリアルキレンオキシド鎖を示し、該鎖の少なくとも51%(好ましくは少なくとも65%)はエチレンオキシドユニットから構成され、該鎖は、エチレンオキシドユニットのほかに、プロピレンオキシドユニット、ブチレンオキシドユニット又はスチレンオキシドユニット(好ましくはプロピレンオキシドユニット)を含んでいてもよい。
「Y」:好ましくは酸素原子を示す。
「Y’」:好ましくは酸素原子又は−NR’−(式中、R’はRの場合と同意義であるか、又は水素原子を示す)を示す。
【0028】
単官能性の合成成分(C)を使用することが好ましいが、その使用量は、所望の高分子量構造を有するポリウレタン及び/又はポリウレタン−ポリウレアの調製を保証するためには、使用するポリイソシアネートに基づいて10モル%未満にする。単官能性のアルキレンオキシドポリエーテル(C)をこれよりも多く使用する場合には、イソシアネートに対して反応性のある水素原子を有する3官能性化合物を付加的に使用することが有利である。但し、出発化合物(A)〜(C)の官能価の平均値は2.7よりも大きくすべきではない(好ましくは2.35よりも大きくすべきではない)。
【0029】
単官能性の親水性成分は、次の特許文献に記載の調製法に準拠し、単官能性スターター(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール及びN−メチルブチルアミン等)を、例えば、エチレンオキシド及び所望によるその他のアルキレンオキシド(例えば、プロピレンオキシド等)を用いてアルコキシル化することによって調製される:DE−A2314512,DE−A2314513、US−A3905929及びUS−A3920598。
【0030】
好ましい合成成分(C)は、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマーである(エチレンオキシドの質量分率:>50%、より好ましくは55〜89%)。
【0031】
1つの好ましい態様においては、使用する合成成分(C)は、少なくとも400ダルトン(好ましくは、少なくとも500ダルトン、より好ましくは、1200〜4500ダルトン)の分子量を有する化合物である。
【0032】
適当な合成成分(D)は、1分子あたり0.5〜2モル(好ましくは0.8〜1モル)のスルホン酸基又はスルホネート基を付加的に含有するジオールである。適当な合成成分(D)は下記の一般式(II)で表される化合物である:

【0033】
式(II)における符号の意義は次の通りである。
「A」及び「B」:同一若しくは異なる2価の脂肪族炭化水素残基(炭素原子数:1〜12)を示す。
「D」:脂肪族炭化水素残基(炭素原子数:0〜6)を示す。
「X」:アルカリ金属カチオン、プロトン又はNR(式中、Rは同一又は異なる残基であって、水素原子、又は脂肪族若しくは脂環式残基(炭素原子数:1〜6)を示す)を示す。
「n/m」:同一若しくは異なる自然数を示し、n+mは0〜30の数を示す。
「o/p」:0又は1を示す。
【0034】
合成成分(D)を遊離のスルホン酸形態で使用する場合には、該成分は、ポリマー溶融物を水中へ導入する前に、適当な中和剤の添加によってイオン形態に変換されなければならない。適当な中和剤としては、第三アミン(例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルエタノールアミン及びトリエタノールアミン等)及び無機塩基(例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素塩及び炭酸塩等)等が例示される。好ましい対イオンはナトリウムイオンである。
【0035】
好ましい合成成分(D)は200〜4000ダルトン(好ましくは300〜2000ダルトン)の数平均分子量を有する成分である。特に好ましい合成成分(D)はアルカリ金属の亜硫酸水素塩をプロポキシル化2−ブテン−1,4−ジオール(プロポキシル化度n+m=4〜8)と付加反応させることによって得られる化合物である。
【0036】
適当な合成成分(E)は、1分子当たり少なくとも2個の遊離のイソシアネート基を有するいずれかの所望の有機化合物である。次式で表されるジイソシアネートを使用することが好ましい:Y(NCO)[式中、Yは2価の脂肪族炭化水素残基(炭素原子数:4〜12)、2価の脂環式炭化水素残基(炭素原子数:6〜15)、2価の芳香族炭化水素残基(炭素原子数:6〜15)又は2価の芳香族−脂肪族炭化水素残基(炭素原子数:7〜15)を示す]。
【0037】
好ましいジイソシアネートは以下に例示する化合物及びこれらの任意の混合物である:テトラメチレンジイソシアネート、メチルペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、2,2−ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)プロパン、1,4−ジイソシアナトベンゼン、2,4−ジイソシアナトトルエン、2,6−ジイソシアナトトルエン、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、2,2’−及び2,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、テトラメチルキシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、p−イソプロピリデンジイソシアネート。
【0038】
ジイソシアネート成分として使用できる別の化合物は、例えば、次の文献に記載されている化合物である:W.ジーフケン、ジュスツス・リービッヒス・アナーレン・デア・ヘミー、第562巻、第75頁〜第136頁。
【0039】
もちろん、ポリウレタン化学において知られているより高い官能価を有するポリイソシアネート、又は自体既知の変性ポリイソシアネート(例えば、カルボジイミド基、アロファネート基、イソシアヌレート基、ウレタン基及び/又はビウレット基を有するポリイソシアネート)等を付加的に適量使用することも可能である。
【0040】
これらの単純なジイソシアネートとは異なるポリイソシアネート、例えば、イソシアネート基を連結する残基中にヘテロ原子を有し、及び/又は1分子あたり2個よりも多いイソシアネート基を保有するポリイソシアネートの使用も適当である。前者は少なくとも2種のジイソシアネートから合成されるポリイソシアネートであって、例えば、単純な脂肪族、脂環式、芳香族−脂肪族及び/又は芳香族ジイソシアネートの変性によって調製され、ウレットジオン構造、イソシアヌレート構造、ウレタン構造、アロファネート構造、ビウレット構造、カルボジイミド構造、イミノオキサジアジンジオン構造及び/又はオキサジアジントリオン構造を有する。1分子あたり2個よりも多くのイソシアネート基を有する未変性ポリイソシアネートとしては、4−イソシアナトメチルオクタン1,8−ジイソシアネート(ノナントリイソシアネート)等が例示される。
【0041】
特に好ましいジイソシアネート(E)は脂肪族及び芳香族−脂肪族ジイソシアネート、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、2,2−ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)プロパン、及びこれらの任意の混合物である。
【0042】
適当な成分(F)には、例えば、次の文献に記載されている界面活性剤及び乳化剤が含まれる:K.コスビッヒ;K.コスビッヒ&H.スタッヘ編、「ディ・テンシド」、カール・ハンサー・フェアラーク(1993年)、第115頁〜第177頁。好ましい成分は非イオン性界面活性剤である(該文献、第147頁〜第161頁参照)。適当な非イオン性の外部乳化剤には、脂肪族、芳香族−脂肪族、脂環式又は芳香族カルボン酸、アルコール、フェノール誘導体及び/又はアミンとエポキシド(例えば、エチレンオキシド等)との反応生成物が含まれる。
【0043】
この種の乳化剤としては、エチレンオキシドと下記の反応成分i)〜vii)との反応生成物が例示される:i)ヒマシ油のカルボン酸、アビエチン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸及び/又はリグノセリン酸、又は不飽和モノカルボン酸、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、及び/又はリシノール酸、又は芳香族モノカルボン酸、例えば、安息香酸、ii)脂肪酸アルカノールアミド、iii)比較的鎖長の長いアルコール、例えば、オレイルアルコール、ラウリルアルコール又はステアリルアルコール、iv)フェニル誘導体、例えば、置換ベンジルフェノール、フェニルフェノール、ノニルフェノール、脂肪酸、v)比較的鎖長の長いアミン、例えば、ドデシルアミン及びステアリルアミン、vi)脂肪酸グリセリド、並びにvii)ソルビタンエステル。
【0044】
これらのエチレンオキシドの反応生成物は、重合度が2〜100(好ましくは5〜50)のオリゴエーテル及び/又はポリエーテルである。発泡性を抑制するためには、エチレンオキシドの一部をプロピレンオキシドで置き換えることが可能である。この場合、泡形成を最小限にするためには、エチレンオキシドとプロピレンオキシドをブロック状に付加させることが有利である。ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、又は不飽和モノカルボン酸(例えば、オレイン酸、リノール酸、リシノール酸又は芳香族モノカルボン酸(例えば、安息香酸)のソルビタンエステルのエトキシル化物が特に好ましい。
【0045】
本発明の目的にとって特に有利であることが判明した乳化剤は、室温で液状であって、12〜18(好ましくは15〜18)のLHB(親油性/親水性バランス)を有する外部乳化剤である。この種の乳化剤としては次の市販品が例示される:乳化剤EA9(ラウリルアルコール、EO:30モル)、EA12(ステアリルアルコール、EO:7モル)、EA17(オレイルアルコール、EO:19モル)、EPS4(フェノール/メチルスチレン、EO:96.5モル)、EPS5(フェノール/メチルスチレン、EO:27モル)、EPS8(フェノール/スチレン、EO:29モル)、EPS9(フェノール/スチレン、EO:54モル)[以上の市販品はバイエル社(レバークーセン、独国)の製品である]、ルテンソル(登録商標)XL140(デカノールエトキシレート、EO:約14モル)又はAP20(アルキルフェノール+20EO)[以上の市販品はBASF社(ルードビッヒスハーフェン、独国)の製品である]。
【0046】
特に好ましい乳化剤は、ソルビトールの脂肪酸エステルのエトキシル化生成物であり、次の市販品が例示される:ツイーン(登録商標)20、40、60又は80[ユニケマ社(ベーゼル、独国)の製品]、及びメルポキセン(登録商標)SML200、SMS200又はSMO200(ポリオキシエチレン−20ソルビタンモノラウレート)[バル・ヘミー社(ケンペン、独国)の製品]。
【0047】
外部乳化剤の使用量は、ポリウレタン及び/又はポリウレタン−ポリウレア分散液の不揮発性成分に基づいて0.1〜7.5重量%(好ましくは0.5〜5重量%、より好ましくは0.5〜3重量%)である。
【0048】
適当な合成成分(G)には脂肪族及び/又は脂環式の第一及び/又は第二モノアミン及びポリアミンであって、次の化合物が例示される:エチルアミン、プロピルアミンの異性体、ブチルアミンの異性体、より高位の線状脂肪族及び脂環式モノアミン、例えば、シクロヘキシルアミン、エタノールアミン、2−プロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ポリアミン、例えば、1,2−エタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミン)、ピペラジン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクリヘキシル)メタン、アジピン酸ジヒドラジドおよびジエチレントリアミン。
【0049】
その他のポリアミンにはポリエーテルポリアミンが含まれる。該ポリアミンは、形式的には、先に記載したポリエーテルポリオールのヒドロキシル基をアミノ基で置換して得られる化合物である。この種のポリエーテルポリアミンは、対応するポリエーテルポリアミンにアンモニア及び/又は第一アミンを反応させることによって調製することができる。
【0050】
好ましい合成成分(G)はヒドラジン又はヒドラジン水和物である。
【0051】
合成成分(G)としてモノアミンとジアミンの混合物を使用する態様も特に好ましい。このような混合物としては、エタノールアミン/エチレンジアミン、ジエタノールアミン/エチレンジアミン、エタノールアミン/1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチルシクロヘキサン又はジエタノールアミン/1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチルシクロヘキサン等が例示される。好ましい混合物は、モノアミンとジアミンの1:20〜1:1(より好ましくは1:15〜1:5)混合物である。
【0052】
本発明によるポリウレタン樹脂分散液は、従来から既知の方法、例えば、次の文献に記載された方法によって調製することができる:D.ディータリッチ、フーベン−ウェイル社発行、「メトーデン・デア・オーガニッシェンヘミー」、E20巻、第1670頁〜第1681頁(1987年)。本発明によるポリウレタン分散液の好ましい調製法は、既知のプレポリマー混合法である。
【0053】
プレポリマー混合法においては、本発明による分散液の基材となるポリウレタン樹脂の水性調製物の合成は、多段階操作でおこなわれる。
【0054】
第一段階においては、イソシアネート基含有プレポリマーが、合成成分(A)〜(E)から合成される。個々の合成成分の使用量は、1.1〜3.5(好ましくは1.35〜2.5)のイソシアネート指数が得られるように調整される。プレポリマー中のイソシアネートの含有量は1.5〜7.5%(好ましくは2〜4.5%、より好ましくは2.5〜4.0%)である。さらに、合成成分(A)〜(E)の使用量を割り当てるときには、算術数平均官能価が1.80〜3.50(好ましくは1,95〜2.25)になるようにすべきである。
【0055】
成分(A)〜(E)の使用量は次の通りである(但し、これらの成分の総量は100重量部である)。
成分(A):50〜90重量部(好ましくは65〜80重量部)、
成分(B):0〜15重量部(好ましくは0〜5重量部)、
成分(C):0.5〜10重量部(好ましくは1〜5重量部)、
成分(D):1〜15重量部(好ましくは3〜10重量部)、及び
成分(E):5〜30重量部(好ましくは10〜25重量部)。
【0056】
ウレタン化反応を促進するためには、常套の触媒、例えば、NCO−OH反応促進用触媒として当業者に既知の触媒を使用することが可能である。このような触媒としては、第三アミン、例えば、トリエチルアミン、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、又は有機錫化合物、例えば、ジブチル錫オキシド、ジメチル錫ジクロリド、ジブチル錫ジラウレート、又は錫ビス(2−エチルヘキサノエート)、又はその他の有機金属化合物。
【0057】
第二段階においては、第一段階において調製したイソシアネート含有プレポリマーを乳化剤(F)と混合して均質化させる。適当な場合には、中和剤の添加によって遊離のスルホン酸基を塩形態の基へ変換させる。中和剤を溶液として合成成分(F)中へ添加する態様が特に好ましいことが判明した。
【0058】
第三段階においては、イソシアネートと乳化剤を含有するプレポリマーは、適当な撹拌条件下における水の添加又は水中への導入によって、水中へ分散させる。好ましくは、プレポリマーの溶融物を水中へ導入する。得られるイソシアネート分散液には、30〜70重量%(好ましくは38〜58重量%)の固形分を含有する。
【0059】
第四段階においては、イソシアネート含有水性分散液をアミノ官能性合成成分(G)の水溶液と反応させることによって、ポリウレタン及び/又はポリウレタン−ポリウレアが調製される。全ポリマーに基づいて、0.5〜10重量%(好ましくは1〜7.5重量%)の合成成分(G)が使用される。連鎖延長剤の水溶液の濃度は5〜50重量%(好ましくは8〜35重量%、より好ましくは10〜25重量%)である。合成成分の量は、分散されたプレポリマー中のイソシアネート基1モルあたり合成成分(G)中の第一及び/又は第二アミノ基の量が0.3〜0.93モル(好ましくは0.5〜0.85モル)になるようにする。本発明によって得られるポリウレタン−ポリウレア樹脂のイソシアネート官能価の算術数平均値は1.5〜3.5(好ましくは1.7〜2.5)である。また、該樹脂の算術数平均分子量(Mn)は3000〜100000ダルトン(好ましくは4500〜25000ダルトン)である。
【0060】
第五段階においては、残存イソシアネート基は、連鎖延長を伴う水との反応によって消費される。本発明によって得られるポリウレタン−ポリウレア樹脂のヒドロキシル官能価の算術数平均値は1.5〜5(好ましくは1.95〜2.5)である。また、該樹脂の算術数平均分子量(Mn)は10000〜425000ダルトン(好ましくは25000〜250000ダルトン)である。
【0061】
本発明は、本発明によるポリウレタン及び/又はポリウレタン−ポリウレア分散液を含有する接着剤も提供する。
【0062】
この場合、塗布前に、1分子あたり少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を本発明による該分散液中へ添加することが可能である(2成分加工)。この場合、水中へ乳化可能なポリイソシアネート化合物を使用する態様が特に好ましい。この種の化合物は、例えば、EP−A206059、DE−A3112117及びDE−A10024624に記載されている。この種のポリイソシアネートの使用量は、水性調製物に基づいて0.1〜20重量%(好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは1.5〜6重量%)である。
【0063】
この種の接着剤は、所望のいずれの材質の支持体(例えば、紙、ボード、木材、織物、金属、革及び鉱物材料等)の接着結合にも適している。本発明による接着剤はゴム材料(例えば、天然ゴム及び合成ゴム)及び種々のプラスチック[例えば、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ポリビニルクロリド(特に好ましくは可塑化ポリビニルクロリドを含む)]を接着接合させるために特に適している。
【0064】
この種の接着剤の特に好ましい用途は、特にポリビニルクロリド(就中、可塑化ポリビニルクロリド)、ポリエチレン−ビニルアセテート又はポリウレタンエラストマーフォームを基材とするソールを本革製又は合成革製の履物甲へ接着させる用途である。さらに、本発明による接着剤はポリビニルクロリド又は可塑化ポリビニルクロリドに基づくフィルムを木材と接着結合させるための用途に特に適している。
【0065】
本発明による接着剤は、水性分散液接着剤の加工に関連するので、接着剤技術分野における既知の方法よって加工される。
【実施例】
【0066】
実施例で使用した反応成分を以下に示す。
「ポリエステルI」:1,4−ブタンジオールポリアジペートジオール(OH価:50)

「ポリエステルII」:1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール及びアジピン酸から調製されたポリエステルジオール(OH価:66)

「ポリエーテルI」:ポリプロピレングリコール(OH価:56)[デスモフェン(Desmophen)(登録商標)3600;バイエル社(レバークーセン、独国)の製品]

「ポリエーテルII」:n−ブタノールを出発原料として調製したエチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー(エチレンオキシド含有量:78%、OH価:25)

「ポリエーテルIII」:ブタン−1,4−ジオールを出発原料として調製したナトリウムスルホネート側基含有ポリプロピレングリコール(OH価:260)

「デスモデュール(Desmodur)(登録商標)H」:ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート[バイエル社(レバークーセン、独国)の製品]

「デスモデュール(登録商標)I」:イソホロンジイソシアネート[バイエル社(レバークーセン、独国)の製品]

「デスモデュール(登録商標)DA」:ヘキサメチレンジイソシアネートに基づく親水性脂肪族ポリイソシアネート[バイエル社(レバークーセン、独国)の製品]

「乳化剤」:「ツイーン(Tween)20」[ユニケマ社(エンメリッヒ、独国)の製品;ソルビタンを出発原料として調製されたポリエチレンオキシドエーテル]
【0067】
実施例1(本発明)
ポリエステルI(675g)、ポリエーテルIII(64.5g)及びポリエーテルII(20.3g)を110℃で15mbarの条件下での脱水処理に1時間付した。70℃において、デスモデュールH(45.4g)を添加した後、デスモデュールI(119.9g)を添加した。得られた混合物を、イソシアネート含有量が3.18%になるまで80〜90℃での撹拌処理に付した。次いで、ツイーン20(18.5g)を添加して得られた混合物を激しく撹拌しながら40℃の水(840g)の中へ導入した。得られた分散液を15分間撹拌した後、水100gに加えた12.6gのエチレンジアミンと1.2gのジエタノールアミンとの混合物を添加することによって連鎖延長処理をおこなった。
【0068】
上記操作によって溶剤を含有しないポリウレタン−ポリウレア水性分散液が得られた。該分散液中の固形分の含有量は49.6重量%であり、また、レーザー相関法によって測定した分散相の平均粒径は210nmであった。
【0069】
実施例2(本発明)
ポリエステルI(607.5g)、ポリエステルII(102.0g)、ポリエーテルIII(51.6g)及びポリエーテルII(20.3g)を110℃で15mbarの条件下での脱水処理に1時間付した。70℃において、デスモデュールH(45.6g)を添加した後、デスモデュールI(121.1g)を添加した。得られた混合物を、イソシアネート含有量が3.16%になるまで80〜90℃での撹拌処理に付した。次いで、ツイーン20(19.0g)を添加して得られた混合物を激しく撹拌しながら40℃の水(855g)の中へ導入した。得られた分散液を15分間撹拌した後、水105gに加えた12.6gのエチレンジアミンと1.9gのジエタノールアミンとの混合物を添加することによって連鎖延長処理をおこなった。
【0070】
上記操作によって溶剤を含有しないポリウレタン−ポリウレア水性分散液が得られた。該分散液中の固形分の含有量は50.0重量%であり、また、レーザー相関法によって測定した分散相の平均粒径は228nmであった。
【0071】
実施例3(本発明)
ポリエステルI(540.0g)、ポリエーテルI(120.0g)、ポリエーテルIII(65.1g)及びポリエーテルII(20.3g)を110℃で15mbarの条件下での脱水処理に1時間付した。70℃において、デスモデュールH(45.4g)を添加した後、デスモデュールI(119.9g)を添加した。得られた混合物を、イソシアネート含有量が3.19%になるまで80〜90℃での撹拌処理に付した。次いで、ツイーン20(18.2g)を添加して得られた混合物を激しく撹拌しながら40℃の水(820g)の中へ導入した。得られた分散液を15分間撹拌した後、水105gに加えた12.5gのエチレンジアミンと2.0gのジエタノールアミンとの混合物を添加することによって連鎖延長処理をおこなった。
【0072】
上記操作によって溶剤を含有しないポリウレタン−ポリウレア水性分散液が得られた。該分散液中の固形分の含有量は49.3重量%であり、また、レーザー相関法によって測定した分散相の平均粒径は145nmであった。
【0073】
実施例4(EP304718の実施例1による比較例)
ポリエステルI(360g)を110℃で15mbarの条件下での脱水処理に1時間付した。80℃において、デスモデュールH(23.4g)を添加した後、デスモデュールI(15.3g)を添加した。得られた混合物を、イソシアネート含有量が0.95%になるまで80〜90℃での撹拌処理に付した。反応混合物をアセトン(800g)に溶解させ、該溶液を50℃まで冷却した。この均質溶液中へ、水55gにN−(2−アミノエチル)−2−アミノエタンスルホン酸のナトリウム塩5.8gとジエタノールアミン2.1gを加えた溶液を激しく撹拌しながら添加した。7分後、水565gを添加することによって生成物を分散させた。アセトンを留去させることによって、溶剤を含有しないポリウレタン−ポリウレア水性分散液が得られた。該分散液中の固形分の含有量は40.1重量%であり、また、レーザー相関法によって測定した分散相の平均粒径は115nmであった。
【0074】
適用例
A)初期熱安定性の測定
試験材料/試験片
a)レノリットフィルム(「32052096ストラクトン」;レノリット社(ボルムス、独国)の製品);寸法50×300×0.4mm

b)ベークウッドシート(平削り);寸法50×140×4.0mm
【0075】
接着と測定
接着剤分散液を、ドクターブレード(200μm)を用いて木材試験片上へ塗布した。接着面は50×110mmとした。塗布接着剤の室温での蒸発時間は少なくとも3時間とした。次いで、2枚の試験片の上面を相互に重ね、77℃で4barの条件下で10秒間接合させた。直ちに、試験片を無荷重状態で80℃の条件下に3分間保持した後、80℃において2.5kgの荷重を加えた状態で5分間保持した。この場合、荷重は接着接合面に対して垂直方向に作用させた(180°剥離)。測定は、接着が剥離した距離(mm)によっておこなった。初期熱安定性は「mm/分」で表示した。
【0076】
B)耐熱性の測定
1成分系接着剤:架橋剤を含有しない接着剤

2成分系接着剤:乳化性イソシアネート架橋剤を含有する接着剤(接着剤100部あたり3部のデスモデュールDAを激しい均質化処理に付した。推奨される架橋剤の初期量は接着剤25gに対して0.75gである。)
【0077】
試験材料/試験片
a)非可塑化PVCラミネートフィルム[ベネリットフィルム;ベネッケ−カリコ社(ハノーバー、独国)の製品];寸法50×210×0.4mm

b)ベークウッドシート(平削り);寸法50×140×4.0mm
【0078】
接着と測定
接着剤分散液(1成分系)又は接着剤分散液とイソシアネート架橋剤との混合物(2成分系)を、ブラシを用いてベークウッド試験片上に塗布した。接着面は50×110mmとした。室温下で30分間乾燥させた後、第一接着剤層上へ第二接着剤層を塗布し、該試験片を室温下で60分間乾燥させた。次いで、2つの試験片の上面を相互に接着させ、90℃で4bar の条件下において10秒間接合させた。
【0079】
得られた試験体を室温下で3日間保存した後、該試験体の接着接合面に対して180°の角度で0.5kgの荷重を加えた。初期温度を50℃とし、60分後、10℃/時間の昇温速度で120℃の最高温度まで昇温させた。いずれの試験においても、接着剤の接合面が完全に剥離する温度を測定した。
【0080】
以上の試験結果を以下の表1にまとめて示す。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のイオン性基若しくは潜在的イオン性基 i)だけでなく非イオン性基 ii)を含むポリウレタン及び/又はポリウレタン−ポリウレアの水性分散液であって、該ポリマーへ化学的に結合しない乳化剤を0.1〜7.5重量%含有する該水性分散液:
i)付加的にスルホン酸基若しくはスルホネート基を1分子当たり0.5〜2モル含む二官能性ポリオール成分を介してポリマー主鎖中へ導入されるイオン性基若しくは潜在的イオン性基、及び
ii)イソシアネート重付加反応に対して単官能性であって、エチレンオキシド含有量が少なくとも50重量%で分子量が少なくとも400ダルトンである1種若しくは複数種の化合物を介してポリマー主鎖中へ導入される非イオン性基。
【請求項2】
下記の工程a)〜d)を含む請求項1記載のポリウレタン及び/又はポリウレタン−ポリウレアの水性分散液の製造方法:
a)2以上の官能価と400〜5000ダルトンの分子量を有するポリオール成分(A)、2以上の官能価と62〜399ダルトンの分子量を有する所望によるポリオール成分(B)、イソシアネート重付加反応に対して単官能性であって、エチレンオキシド含有量が少なくとも50重量%で分子量が少なくとも400ダルトンである1種若しくは複数種の化合物(C)、及びスルホン酸基若しくはスルホネート基を1分子当たり0.5〜2モル含む1種若しくは複数種の二官能性ポリオール成分(D)を、1種若しくは複数種のジイソシアネート成分若しくはポリイソシアネート成分(E)と反応させることによってイソシアネート官能性プレポリマーを合成し、
b)イソシアネート基に対して反応性を示す基を含有しない乳化剤(F)0.1〜7.5重量%、及び上記合成成分(D)に起因する遊離の酸性基をイオン性基へ変換させるための所望による中和剤を該プレポリマー中へ添加し、
c)得られるイソシアネート含有溶融物を水中へ分散させ、次いで
d)1〜3の官能価を有するアミノ官能性成分(G)の水溶液を添加することによって連鎖延長をおこなう。
【請求項3】
請求項1記載のポリウレタン及び/又はポリウレタン−ポリウレア水性分散液を含有する接着剤。
【請求項4】
請求項1記載のポリウレタン及び/又はポリウレタン−ポリウレア水性分散液の接着剤としての使用。
【請求項5】
請求項1記載のポリウレタン及び/又はポリウレタン−ポリウレア水性分散液の使用であって、ゴム又はプラスチック材料を接着接合させるための該使用。
【請求項6】
プラスチックが、ポリウレタン、ポリビニルアセテート及びポリビニルクロリドから成る群から選択されるプラスチックである請求項5記載の使用。
【請求項7】
材料がソールであって、該ソールを本革製又は合成革製の履物甲へ接着させる請求項5記載の使用。
【請求項8】
請求項1記載のポリウレタン及び/又はポリウレタン−ポリウレア水性分散液の使用であって、ポリビニルクロリド又は可塑化ポリビニルクロリドに基づくフィルムを木材と接着結合させるための該使用。

【公表番号】特表2007−537310(P2007−537310A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511966(P2007−511966)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【国際出願番号】PCT/EP2005/004549
【国際公開番号】WO2005/111107
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】