説明

ポリエステルの製造方法

【課題】 重縮合工程で留出したオリゴマーを効率的に、系外へ除去することで、ポリエステルを経済的に製造する方法を提供する。
【解決手段】 ジカルボン酸成分としてイソフタル酸とアゼライン酸とを含有し、グリコール成分として2−メチル−1,3−プロパンジオールを含有するポリエステルを、エステル化工程と重縮合工程とによって製造する方法において、重縮合工程で発生する留出液に2−メチル−1,3−プロパンジオールを投入して、留出液中の不溶成分を溶解させた後に、留出液を除去することを特徴とするポリエステルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はジカルボン酸成分としてイソフタル酸とアゼライン酸を含有し、グリコール成分として2−メチル−1,3−プロパンジオールを含有するポリエステルを経済的に製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
イソフタル酸と、アゼライン酸と、2−メチル−1,3プロパンジオールとからなるポリエステルは、これに導電性材料および/またはフィラーを分散させて樹脂組成物とすることによって、制振材料などに用いられている(例えば、特許文献1参照)。
このポリエステルをエステル化工程と重縮合工程とによって製造する際に、重縮合工程において、アゼライン酸と2−メチル−1,3プロパンジオールとからなる環状1量体を主成分とするオリゴマーが副生する。そして、このオリゴマーは、グリコール成分の2−メチル−1,3プロパンジオールとともに留出系へ留出する。しかし、重縮合反応時もしくは重縮合反応終了後に、このオリゴマーを含む留出液を留出系外へ除去する際に、不溶成分であるオリゴマーによって配管に閉塞が起きることがあり、生産性に問題があった。
【特許文献1】特開2006−52377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はかかる問題点を解決するため、重縮合工程で留出したオリゴマーを効率的に、系外へ除去することで、ポリエステルを経済的に製造する方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、重縮合工程で留出したオリゴマーを、留出系内に2−メチル−1,3プロパンジオールを加える方法により、留出系内での閉塞が発生せずに系外へ除去できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は下記のとおりである。
ジカルボン酸成分としてイソフタル酸とアゼライン酸とを含有し、グリコール成分として2−メチル−1,3−プロパンジオールを含有するポリエステルを、エステル化工程と重縮合工程とによって製造する方法において、重縮合工程で発生する留出液に2−メチル−1,3−プロパンジオールを投入して、留出液中の不溶成分を溶解させた後に、留出液を除去することを特徴とするポリエステルの製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において、ポリエステルは、イソフタル酸およびアゼライン酸又はこれを主体とするジカルボン酸成分と、2−メチル−1,3プロパンジオールを主体とするグリコール成分とのエステル化反応により、その低重合体を得るエステル化工程と、該低重合体から所望の重合度のポリエステルを得る重縮合工程との2工程によって製造される。
【0006】
本発明において、ポリエステルは、ジカルボン酸成分として、イソフタル酸とアゼライン酸とを含有するものであり、イソフタル酸とアゼライン酸の合計含有量は、全酸成分の80mol%以上であることが好ましい。イソフタル酸とアゼライン酸の合計含有量が全酸成分の80mol%未満であると、得られるポリエステルに導電性材料および/またはフィラーを分散させて樹脂組成物としたときに、良好な制振性が得られない。
また、良好な制振性を得るためには、イソフタル酸の含有量は全酸成分の50mol%以上であり、アゼライン酸の含有量は全酸成分の20mol%以上であることが好ましい。
イソフタル酸、アゼライン酸以外のジカルボン酸成分として、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその誘導体を用いることができる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、テレフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその誘導体、(無水)マレイン酸、フマル酸、ドデセニル無水コハク酸、テルペン−マレイン酸付加体などの不飽和ジカルボン酸及びその誘導体、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、1,2−シクロヘキセンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸及びその誘導体を用いることができる。
【0007】
また本発明において、ポリエステルはグリコール成分として2−メチル−1,3プロパンジオールを含有するものであり、2−メチル−1,3プロパンジオールの含有量は、全グリコール成分に対して80mol%以上であることが好ましい。2−メチル−1,3プロパンジオールの含有量が80mol%未満であると、得られるポリエステルに導電性材料および/またはフィラーを分散させてなる樹脂組成物としたときに、良好な制振性が得られない。
2−メチル−1,3プロパンジオール以外のグリコール成分として、本発明の効果を損なわない範囲で、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノールを用いることができ、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3価以上のポリオールを少量併用することもできる。
本発明において、エステル化工程は、例えば、ジカルボン酸成分と、それに対して1.01〜2.0倍モル量のグリコール成分とを、200〜280℃で約2〜10時間常圧下で反応させることにより行い、これにより低重合体を得る。エステル化工程で生成する水は分離塔を通して留去させるが、エステル化工程においては、オリゴマーの留出系への留出は見られない。
【0008】
なお、エステル化反応を行う際に、公知のエステル化触媒や重縮合触媒、コバルト化合物、蛍光剤、染料のような色調改良剤、二酸化チタンのような顔料、臭素化合物、リン化合物のような難燃剤等の添加物を共存させても差し支えない。
【0009】
次に重縮合工程は、例えば、200〜290℃で所望の重合度(通常30〜200)となるまで減圧下で行われる。重縮合触媒として、アンチモン、チタン、ゲルマニウム、スズ、亜鉛等の化合物から選ばれた触媒の存在下に行われ、必要に応じてリン酸、亜リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等の安定剤が併用される。
【0010】
この重縮合工程において、アゼライン酸と2−メチル−1,3−プロパンジオールとからなる環状1量体を主成分とするオリゴマーが、アゼライン酸の使用量に対して3〜8質量%副生し、グリコール成分などとともに留出系へ留出する。そして、重縮合反応時もしくは重縮合反応終了後に、オリゴマーは、グリコール成分などその他の留出成分中に溶解しきれず不溶成分となり、配管などに溜まるなどして減圧不良を引き起こしたり、あるいは留出液を系外へ除去する際に配管の閉塞を引き起こす。
【0011】
本発明では、2−メチル−1,3−プロパンジオールを留出液に投入し、留出液中に含まれる不溶成分であるオリゴマーを溶解させた上で、留出系外へ除去する。2−メチル−1,3プロパンジオールは、オリゴマー濃度が3質量%以下となるように投入し、投入後のオリゴマーを含む留出液は、50℃以上に加熱し、1時間以上留出系内を循環させることが好ましい。
【実施例】
【0012】
次に、実施例により本発明の方法をさらに具体的に説明する。なお、実施例および比較例における各特性値は下記の方法により測定した。
【0013】
(a)不溶成分の質量
留出液300gを300メッシュのフィルターで濾過し、フィルター上の不溶成分の質量を求めた。
【0014】
(b)留出液中のオリゴマー濃度
留出液に、留出液の3倍量となる純水を加え、オリゴマーを析出させ、フィルターで濾過し、フィルター上のオリゴマーの質量を測定し、これよりオリゴマー濃度を求めた。
【0015】
(c)極限粘度〔η〕
フェノールと四塩化エタンとの等質量混合溶媒中20℃で測定した溶液粘度より求めた。
【0016】
実施例1
アゼライン酸83モル(15.7kg)、イソフタル酸167モル(27.7kg)、2−メチル−1,3−プロパンジオール322モル(29.3kg)をエステル化反応槽に仕込み、圧力0.3MPaG、温度240℃、窒素雰囲気下で4時間エステル化反応を行った。
得られたエステル化物を重縮合反応槽に移送した後、テトラブチルチタネート5.3×10−4モル/酸成分1モル(45g)添加し、0.5hPaに減圧し、260℃で4時間重縮合反応を行い、極限粘度0.82dl/gのポリエステルを得た。この反応により8.3kgの留出液が留出した。
留出系に2−メチル−1,3−プロパンジオール40kgを投入してオリゴマー濃度を1.3質量%とし、80℃で1時間留出系内を循環させ、不溶成分を溶解させた。2−メチル−1,3−プロパンジオールを投入した後の留出液300gを取り出し、フィルターで濾過したが、不溶成分は認められなかった。
【0017】
比較例1
実施例1と同様の方法でポリエステルを得た後、留出系に2−メチル−1,3−プロパンジオール10kgを投入してオリゴマー濃度を3.4質量%とした。2−メチル−1,3−プロパンジオールの投入量が少なく、投入後の留出液300g中の不溶成分の量は1.2gであった。
【0018】
比較例2
実施例1と同様の方法でポリエステルを得た後、留出系にエチレングリコール40kgを投入してオリゴマー濃度を1.3質量%とした。投入にエチレングリコールを使用したため、オリゴマーが完全に溶けきらず、投入後の留出液300g中の不溶成分の量は1.5gであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸成分としてイソフタル酸とアゼライン酸とを含有し、グリコール成分として2−メチル−1,3−プロパンジオールを含有するポリエステルを、エステル化工程と重縮合工程とによって製造する方法において、重縮合工程で発生する留出液に2−メチル−1,3−プロパンジオールを投入して、留出液中の不溶成分を溶解させた後に、留出液を除去することを特徴とするポリエステルの製造方法。

【公開番号】特開2008−222871(P2008−222871A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63505(P2007−63505)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000228073)日本エステル株式会社 (273)
【Fターム(参考)】