ポリエステルの製造装置およびその方法
【課題】オリゴマーを製造する第1の反応器の効率化を図ったポリブチレンテレフタレートの製造装置及びその方法を提供することにある。
【解決手段】本発明のポリブチレンテレフタレートの連続製造装置は少なくとも、縦型円筒状のエステル化反応槽10と、複数の単位下部ヘッダ管111a−dから構成される下部ヘッダ管と、複数の単位上部ヘッダ管113a−dから構成される上部ヘッダ管と、上下方向に対向する単位下部ヘッダ管111a−d及び単位上部ヘッダ管113a−dを気相又は液相熱媒を流通可能に接続する複数の連通管であるである伝熱管112a−dと、撹拌翼120とを備え、各単位下部ヘッダ管111a−d及び各単位上部ヘッダ管113a−dには熱媒流出入部が形成されていることを特徴とする第1の反応器1を備える。
【解決手段】本発明のポリブチレンテレフタレートの連続製造装置は少なくとも、縦型円筒状のエステル化反応槽10と、複数の単位下部ヘッダ管111a−dから構成される下部ヘッダ管と、複数の単位上部ヘッダ管113a−dから構成される上部ヘッダ管と、上下方向に対向する単位下部ヘッダ管111a−d及び単位上部ヘッダ管113a−dを気相又は液相熱媒を流通可能に接続する複数の連通管であるである伝熱管112a−dと、撹拌翼120とを備え、各単位下部ヘッダ管111a−d及び各単位上部ヘッダ管113a−dには熱媒流出入部が形成されていることを特徴とする第1の反応器1を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート等のポリエステル系高分子の連続製造方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これらのポリエステルは、ジカルボン酸とグリコールを原料とし、これらの混合物に触媒を添加した後、エステル化工程、重合工程を経て、ポリエステルに合成される。エステル化工程ではジカルボン酸のカルボキシル基2つがそれぞれグリコールとエステル化反応してモノマーを生成し、モノマー同士が縮重合反応により平均重合度1〜10程度のオリゴマーを生成する。ポリエステル系高分子の一つであるポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと記す)の製造方法及びその装置としては、特開昭62−195017号公報(特許文献1)、特開2006−111647号公報(特許文献2)に開示された装置が知られている。
【0003】
特許文献1ではポリエステルの1つであるPBTについての重合方法が記載されている。この中で原料であるグリコール(1、4−ブタンジオール)の熱劣化によるテトラヒドロフラン(以下THFと記す)生成を低減する方法について言及がある。本方式によれば、できるだけ高温、低圧、短時間での重合が望ましいと特許文献1には記載されている。しかしながら特許文献1には装置規模が大きい場合において、この反応条件を実現する装置構成への言及はない。
【0004】
一方、特許文献2には、ジカルボン酸とグリコール類とを含む被処理液をエステル化反応させてオリゴマーを製造する第1の反応器と、該第1の反応器からのオリゴマーを縮重合させて、低重合度のポリマーを製造する第2の反応器と、該第2の反応器からの低重合ポリマーを更に縮重合させて、高重合度のポリマーを製造する第3の反応器とを備えたポリエステル系高分子の連続製造装置が開示されている。前記第1の反応器の主要部は図5aに記載した構造を有している。すなわち、前記第1の反応器1001はジカルボン酸とグリコール類とを含む被処理液を攪拌すると共に、気相又は液相熱媒の熱により加熱して前記被処理液をエステル化反応させてオリゴマーを製造するものである。第1の反応器1001は、被処理液が供給される縦型円筒状のエステル化反応槽1010と、該エステル化反応槽内の被処理液を攪拌する攪拌手段1120と、熱媒を流通すべく、エステル化反応槽1010内上部に配置された上部ヘッダ管1113、エステル化反応槽1010内下部に配置された下部ヘッダ管1111、及び上部ヘッダ管1113と下部ヘッダ管1111に前記熱媒が流通可能に上部ヘッダ管1113と下部ヘッダ管1111とを接続した複数の連通管である伝熱管1112を含む加熱器1140と、を少なくとも備える。下部ヘッダ管1111は熱媒流出入部である下部熱媒流出入ノズル1110を有する。上部ヘッダ管1113は熱媒流出入部である上部熱媒流出入ノズル1114を有する。特許文献2には、この装置を用いた場合に推奨すべき反応条件としては温度条件は220℃〜250℃であり、圧力条件は減圧あるいは微加圧条件であると記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭62−195017号公報
【特許文献2】特開2006−111647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に記載された第1の反応器1001は、上下ヘッダ管に設置された熱媒流出入部がそれぞれ1つのみであるため、温度むらが発生し易く、上下の各ヘッダ管と伝熱管との接合部分において熱応力破損の可能性があるという課題を有していた。この点を図5bに基づいて説明する。図5bでは特許文献2の装置における加熱器1140のみを平面的に示した模式図である。図5bでは簡略化して伝熱管を2本のみ描写する(1112a及び1112b)。例えば下部熱媒流出入ノズル1110から熱媒が導入される場合、熱媒が下部ヘッダ管の部位4から、伝熱管1112b内を上昇し、上昇中に被処理液と熱媒との熱交換が行われ、上部ヘッダ管の部位3を経て部位1に至り、上部熱媒流出入ノズル1114から排出される経路と、熱媒が下部ヘッダ管の部位4から、下部ヘッダ管の部位2を経て、伝熱管1112b内を上昇し、上昇中に被処理液と熱媒との熱交換が行われ、上部ヘッダ管の部位1に至り、上部熱媒流出入ノズル1114から排出される経路とがある。部位2と部位4との間の距離をLとし、部位1,2,3,4での熱媒の温度をそれぞれT1,T2,T3,T4とする。この場合、熱媒は下部ヘッダ管を距離L移動する際に熱を放出するためT4>T2となる。その結果、(T4−T3)>(T2−T1)となる。すなわち伝熱管ごとに上部ヘッダ管への接続部分と下部ヘッダ管への接続部分との温度差が異なることになる。温度差が異なれば鉛直方向の熱膨張率は異なるから、鉛直方向の熱膨張に伴う応力が伝熱管ごとに相違することとなる。この相違によって、伝熱管1112と、上下のヘッダ管との接続部分に負荷がかかり破損するという可能性があった。T4とT2との差は距離Lが長いほど大きい傾向がある。図5aに示すような特許文献2記載の装置では上下のヘッダ管がそれぞれ円周方向に沿って一体に形成されているため図5bの距離Lに相当する距離が長く熱応力破損の可能性が高まるという問題があった。また、このような熱応力破損の可能性は高温条件下で高まるため、反応時間が長くなり、反応副生成物が多く発生するため特許文献2の装置を用いた場合には、反応には不利な低温で反応を進めることを余儀なくされ、反応時間が長くなり、反応副生成物が多く発生するため、生産効率が下がるという問題があった。
【0007】
また、上記特許文献1に記載された第1の反応器は、上下ヘッダ部に多数の伝熱管を配設しているため、高温運転時においてはヘッダ部の円周方向の熱膨張に起因する熱応力破損の可能性があるという問題があった。同様な課題は、ポリエチレンテレフタレート重合におけるエチレングリコールのジエチレングリコール化、ポリトリメチレンテレフタレート重合における1、3−プロパンジオールのアクロレイン化に対応する際にも発生する。
【0008】
本発明の目的は、上記課題を解決すべく、ジカルボン酸とグリコール類とを反応させて平均重合度2〜5程度のオリゴマーを製造する第1の反応器において、高温条件下での運転を可能とするポリエステル系高分子の製造装置及びその方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸と1,4−ブタジオールを主成分とするグリコール類とを反応させて平均重合度2〜5程度のオリゴマーを製造する第1の反応器において、温度は220℃から250℃、望ましくは240℃から250℃、圧力は200Torrから800Torr、望ましくは200Torrから400Torrでの運転を可能とするポリブチレンテレフタレートの製造装置及びその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく検討し、本発明を完成するに至った。
本発明は、ジカルボン酸とグリコール類とを含む被処理液を攪拌すると共に、気相又は液相熱媒の熱により加熱して前記被処理液をエステル化反応させてオリゴマーを製造する第1の反応器を少なくとも備え、該第1の反応器は、前記被処理液が供給される縦型円筒状のエステル化反応槽と、該エステル化反応槽内の被処理液を攪拌する攪拌手段と、前記熱媒を流通すべく、前記エステル化反応槽内上部に配置された上部ヘッダ管、前記エステル化反応槽内下部に配置された下部ヘッダ管、及び前記上部ヘッダ管と前記下部ヘッダ管に前記熱媒が流通可能に前記上部ヘッダ管と前記下部ヘッダ管とを接続した複数の連通管を含む加熱器と、を少なくとも備えた、ポリエステル系高分子の連続製造装置であって、
前記上部ヘッダ管は、前記エステル化反応槽の円周方向に沿って配置された複数の単位上部ヘッダ管から構成され、前記下部ヘッダ管は、前記エステル化反応槽の円周方向に沿って配置された複数の単位下部ヘッダ管から構成され、前記各連通管は、上下方向に対向した前記単位上部ヘッダ管及び前記単位下部ヘッダ管に接続されており、各単位上部ヘッダ管及び各単位下部ヘッダ管には、前記熱媒を流入又は流出させるための熱媒流出入部が形成されていることを特徴とするポリエステル系高分子の連続製造装置を提供する。
【0011】
本発明はまた前記装置を用いて高温条件下でジカルボン酸とグリコール類とを含む被処理液をエステル化反応させてオリゴマーを製造することを特徴とする、ポリエステル系高分子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の装置では、第1の反応器において上部及び下部のヘッダ管がそれぞれ複数の単位ヘッダ管に分割されていることにより、上部及び下部のヘッダ管を連通する複数の連通管である複数の伝熱管ごとの温度むらが抑制され、伝熱管の接合部分において加熱時の熱応力破損の危険性が低くなる。そのためエステル化反応において高い加熱温度を確保することができる。その結果、品質の良好なポリエステル系高分子を効率よく連続生産できると同時に、反応副生成物の生成量を低減させ、生産効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係るポリエステル系高分子の製造装置及びその方法の実施の形態についてより詳細に説明する。
【0014】
本発明はジカルボン酸とグリコール類とを含む被処理液を攪拌すると共に、気相又は液相熱媒の熱により加熱して前記被処理液をエステル化反応させてオリゴマーを製造する第1の反応器の構造に特徴を有するポリエステル系高分子の連続製造装置に関する。本発明のポリエステル系高分子の連続製造装置には該第1の反応器のほかに、該第1の反応器からのオリゴマーを縮重合させて、低重合度のポリマーを製造する第2の反応器と、該第2の反応器からの低重合ポリマーを更に縮重合させて高重合度のポリマーを製造する第3の反応器とを更に備えていてもよい。
【0015】
前記第1の反応器は、前記被処理液が供給される縦型円筒状のエステル化反応槽と、該エステル化反応槽内の被処理液を攪拌する攪拌手段と、前記熱媒を流通すべく、前記エステル化反応槽内上部に配置された上部ヘッダ管、前記エステル化反応槽内下部に配置された下部ヘッダ管、及び前記上部ヘッダ管と前記下部ヘッダ管に前記熱媒が流通可能に前記上部ヘッダ管と前記下部ヘッダ管とを接続した複数の連通管を含む加熱器と、を少なくとも備える。熱媒が各連通管を通過する際にその表面において前記被処理液と前記熱媒との間で熱交換が行われる。すなわち前記各連通管は伝熱管として機能する。本明細書における用語「連通管」はその形態に着目した場合の呼称であり、用語「伝熱管」は「連通管」の機能に着目した場合の呼称である。また本明細書では複数の伝熱管を指して「マルチ伝熱管」と称することがある。
【0016】
本発明の第一の特徴は、前記上部ヘッダ管が、前記エステル化反応槽の円周方向に沿って配置された複数の単位上部ヘッダ管から構成され、前記下部ヘッダ管が、前記エステル化反応槽の円周方向に沿って配置された複数の単位下部ヘッダ管から構成され、前記各連通管が、上下方向に対向した前記単位上部ヘッダ管及び前記単位下部ヘッダ管に接続されており、且つ、各単位上部ヘッダ管及び各単位下部ヘッダ管には、前記熱媒を流入又は流出させるための熱媒流出入部が少なくとも一つ形成されていることにある。前記エステル化反応槽の円周方向に隣接する単位上部ヘッダ管同士及び前記エステル化反応槽の円周方向に隣接する単位下部ヘッダ管同士の流路は互いに連通していない。このように、上下のヘッダ管を複数の独立した流路を形成する小単位に分割することにより、伝熱管への流入前又は流出後における上下のヘッダ管内での熱媒の移動距離を短くすることができる。すなわち、図5bにおける距離Lに相当する距離を短くすることができる。このため、各単位ヘッダ管内での位置による熱媒の温度差は小さくなり、その結果、各伝熱管のヘッダ管への接続位置の相違による温度むらを抑制することができ、伝熱管の鉛直方向の熱膨張に伴う応力による熱破損の危険性を低くすることができる。単位上部ヘッダ管及び単位下部ヘッダ管の数は特に限定されない。各単位上部ヘッダ管及び各単位下部ヘッダ管は、その長手方向が前記エステル化反応槽の円周方向に沿って延伸した形状に形成されていることが好ましい。本特徴を有する第1の反応器を用いることによりジカルボン酸とグリコール類とを含む被処理液をエステル化反応させてオリゴマーを製造する反応を高温条件で行うことが可能となる。
【0017】
本発明の第二の特徴は、前記複数の単位上部ヘッダ管及び前記複数の単位下部ヘッダ管のうち前記エステル化反応槽の円周方向に隣接するもの同士の間に間隙が形成されていることにある。この特徴を有する第1の反応器の一例を図2及び図4に示す。この特徴により、各単位ヘッダ管のエステル化反応槽の円周方向への熱膨張を前記間隙で吸収することができ、熱破損を回避することができる。
【0018】
本発明の第三の特徴は、前記複数の単位上部ヘッダ管及び前記複数の単位下部ヘッダ管のうち前記エステル化反応槽の円周方向に隣接するもの同士は接続部材を介して接続されており、且つ、前記接続部材の熱膨張率は、前記複数の単位上部ヘッダ管及び前記複数の単位下部ヘッダ管の熱膨張率と同等であるかより小さいことにある。この特徴を有する第1の反応器の一例を図11及び図12に示す。この特徴によっても、各単位ヘッダ管のエステル化反応槽の円周方向への熱膨張を前記接続部材で吸収することができ、熱破損を回避することができる。
【0019】
本発明の第四の特徴は、前記複数の連通管(伝熱管)が、前記エステル化反応槽の中心軸に沿って、前記エステル化反応槽の中心軸を中心とした複数の同心円の円周上に配置されていることにある。この場合、前記複数の単位上部ヘッダ管及び前記複数の単位下部ヘッダ管はそれぞれ、前記エステル化反応槽の中心軸を中心とした複数の同心円の円周上に配置されていることが好ましく、前記複数の単位上部ヘッダ管と、前記複数の単位下部ヘッダ管とはそれぞれ、前記エステル化反応槽の中心軸を中心とした同一の半径を有する同一の数の同心円の円周上に配置されていることがより好ましい。この特徴を有する第1の反応器の一例を図4及び図12に示す。この特徴により広い伝熱面積を確保できるため、エステル化工程の伝熱性能が向上する。
【0020】
本発明の装置における撹拌手段としては、エステル化反応槽内でジカルボン酸とグリコール類とを含む被処理液を攪拌して、該被処理液を該エステル化反応槽内に配置された複数の伝熱管と十分に接触させることができるものであれば特に限定されない。このような撹拌手段としては例えば撹拌翼が挙げられる。撹拌翼は、前記エステル化反応槽の少なくとも一つの水平断面の中央部に配置されていることが好ましく、該撹拌翼は前記エステル化反応槽の中心軸と同一又はほぼ同一の軸を中心に回転するものであることが好ましい。撹拌翼はその直下方向に被処理液の流れを発生させるものであることが好ましい。撹拌翼が前記エステル化反応槽の少なくとも一つの水平断面の中央部に配置されている場合、前記複数の連通管は、前記エステル化反応槽の中心軸に沿って、前記少なくとも一つの水平断面の周辺部に配置されて、前記中央部を包囲していることが好ましい。
【0021】
本発明はまた、前記の特徴を有する本発明の装置を用いたポリエステル系高分子の製造方法を提供する。本方法の特徴は、ジカルボン酸とグリコール類とを含む被処理液をエステル化反応させてオリゴマーを製造する工程を、前記エステル化反応槽に前記被処理液を供給し、前記エステル化反応槽内部の温度を220℃〜250℃、前記エステル化反応槽内部の圧力を200Torr〜800Torrに設定して運転を行うことにより行うことにある。前記温度としては240℃〜250℃がより好ましい。前記圧力としては200Torr〜400Torrがより好ましい。このような条件での運伝は、従来の反応装置では実現が困難であった。本方法においては、前記ジカルボン酸としてテレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸を用い、前記グリコール類として1,4−ブタンジオールを主成分とするグリコール類を用いることが特に好ましい。
【0022】
以下に、本発明の装置の具体的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(装置全体)
図1は、本発明に係るポリエステル系高分子の連続製造装置の一例の全体の構成図である。図1にはまた、該装置を用いたポリエステル系高分子の製造プロセスの一例についても図示されている。一例としてポリエステル系高分子であるPBT(ポリブチレンテレフタレート)を製造する場合について説明する。工業的なポリエステルの製造方法として、直接エステル化法が、経済的に非常に有利であるので、最近ではポリエステルの製造には直接エステル化方法が多く採用されている。図1において、5は、PBTの原料であるTPA(テレフタル酸)とBD(1, 4−ブタンジオール)を所定の割合で混合、攪拌する原料調整槽である。原料調整槽5から得られる原料は、原料供給ライン2から原料入口105を経てエステル化反応槽10を備える第1の反応器1へ供給される。この段階で重合反応触媒(CAT)や安定剤、品質調整剤などの添加物(ADD)を加える場合には、重合反応触媒や添加剤はエステル化反応槽10へ触媒投入ライン14から触媒供給口108を通して投入することができる。重合反応触媒としては有機チタン、有機錫、有機ジルコニア等の公知の金属化合物が挙げられる。使用する触媒の種類や組み合わせにより、反応速度が異なるだけでなく、生成するPBTの色相及び熱安定性等の品質に大きな影響を及ぼすことが良く知られている。触媒としては現在最も多く工業的に使用されている有機チタンが価格や性能面で優れている。しかし、この触媒を用いても生成したポリエステル重合物の着色は避けられない。この点を改善するために安定剤として燐系安定剤(例えば、リン酸、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等)を併用してもよい。また、別のプロセスにおいては重合触媒や安定剤の投入位置を工夫して品質を安定させてもよい。通常のプロセスでは触媒の量はチタン金属換算濃度で20〜100ppmとすることが好ましく、また安定剤の量は必要に応じてリン金属濃度で0〜600ppmとすることが好ましい。
【0023】
(第1の反応器)
図2には、第1の反応器の好適な一実施形態を示す。図2に示す第1の反応器1は、縦型円筒状のエステル化反応槽10と、エステル化反応槽内下部に、前記エステル化反応槽の円周方向に沿って一重に配置された複数(4つ)の単位下部ヘッダ管111a−dと、エステル化反応槽内上部に、前記エステル化反応槽の円周方向に沿って配置された複数(4つ)の単位上部ヘッダ管113a−dと、上下方向に対向した前記単位上部ヘッダ管113a−dと前記単位下部ヘッダ管111a−dとをそれぞれ気相又は液相熱媒が流通可能に接続する複数の連通管である伝熱管112a−dと、エステル化反応槽の2つの水平断面における中央部に配置された、前記エステル化反応槽の中心軸を中心に回転する、前記供給された被処理液を撹拌するための2つの攪拌翼120と、該攪拌翼の撹拌軸121とを備えた実施形態を示す。単位下部ヘッダ管111a−dと、単位上部ヘッダ管113a−dと、伝熱管112a−dとから、熱媒を流通するための加熱器140が構成される。撹拌翼120はその直下方向に処理液の流れを発生させるものであることが好ましい。単位下部ヘッダ管111a−dはそれぞれ伝熱管熱媒を流入又は流出させるための熱媒流出入部である下部熱媒流出入ノズル110a−d(ただしbは図示していない)を有する。単位上部ヘッダ管113a−dはそれぞれ伝熱管熱媒を流入又は流出させるための熱媒流出入部である上部熱媒流出入ノズル114a−d(ただしbは図示していない)を有する。伝熱管112a−dのそれぞれの寸法は、例えば直径20mm程度で、長さが150cm程度であるがこれには限定されない。伝熱管熱媒は気相熱媒又は液相熱媒である。熱媒の温度は245℃〜260℃程度が好ましい。伝熱管熱媒として液相熱媒を用いる場合、液相熱媒はエステル化反応槽の外部から下部熱媒流出入ノズル110a−dを介して各ノズルが接続された単位下部ヘッダ管111a−dに供給され、該供給された液相熱媒が伝熱管112a−d内を下部から上部へ流動し、単位上部ヘッダ管113a−dから上部熱媒流出入ノズル114a−dを介してエステル化反応槽の外部に排出される。伝熱管熱媒として油等の気相熱媒(スチームガス)を用いる場合には、気相熱媒がエステル化反応槽の外部から上部熱媒流出入ノズル114a−dを介して各ノズルが接続された単位上部ヘッダ管113a−dに供給され、該供給された気相熱媒がマルチ伝熱管112a−d内を上部から下部へ流動し、単位下部ヘッダ管111a−dから下部熱媒流出入ノズル110a−dを介してエステル化反応槽の外部に排出される。なお、図2においては上部ヘッダ管及び下部ヘッダ管の円周方向の分割数を4としたが、実施にあたってはこれに限定されるものではない。単位下部ヘッダ管111a−d及び単位上部ヘッダ管113a−dはそれぞれエステル化反応槽の円周方向の流路長が短いため各単位上部ヘッダ管及び各単位下部ヘッダ管に連結された伝熱管ごとの温度むらが少なく、熱破損の危険性が低い。図2に示す実施形態では、単位下部ヘッダ管111a−dのうちエステル化反応槽の円周方向に隣接するもの同士の間には間隙115a−d(ただしbは図示していない)が存在しており、単位上部ヘッダ管113a−dのうちエステル化反応槽の円周方向に隣接するもの同士の間には間隙116a−d(ただしbは図示していない)が存在している。本構造をとることにより、単位下部ヘッダ管111a−dのそれぞれのエステル化反応槽の円周方向への熱膨張が間隙115a−dで吸収され、単位上部ヘッダ管113a−dのそれぞれのエステル化反応槽の円周方向への熱膨張が間隙116a−dで吸収されるため、熱破損を回避することができる。
【0024】
なお、単位下部ヘッダ管111a−d及び単位上部ヘッダ管113a−dのうちエステル化反応槽の円周方向に隣接するもの同士は、単位下部ヘッダ管111a−d及び単位上部ヘッダ管113a−dの熱膨張率と同等であるかより小さい熱膨張率を有する接続部材により接続されていてもよい。この実施形態を図11に示す。図11において115−2a−d(ただしbは図示していない)及び116−2a−d(ただしbは図示していない)は単位下部ヘッダ管111a−d及び単位上部ヘッダ管113a−dの熱膨張率と同等であるかより小さい熱膨張率を有する接続部材を示す。本構造をとることにより、単位下部ヘッダ管111a−dのそれぞれのエステル化反応槽の円周方向への熱膨張が接続部材115−2a−dで吸収され、単位上部ヘッダ管113a−dのそれぞれのエステル化反応槽の円周方向への熱膨張が接続部材116−2a−dで吸収されるため、熱破損を回避することができる。
【0025】
図3及び図4には、第1の反応器の他の一実施形態を示す。図3及び図4に示す第1の反応器1’の加熱器140’は、エステル化反応槽10内下部において、該エステル化反応槽10の中心軸を中心とした円周上に配置された4つの単位下部ヘッダ管からなる下部ヘッダ管111’と、下部ヘッダ管111’を構成する各単位下部ヘッダ管が配置された前記円周と同じ高さ位置で該円周の外側を通る、該円周と中心を同じくする円周上に配置された4つの単位下部ヘッダ管からなる下部ヘッダ管111’’と、下部ヘッダ管111’’を構成する各単位下部ヘッダ管が配置された前記円周と同じ高さ位置で該円周の外側を通る、該円周と中心を同じくする円周上に配置された4つの単位下部ヘッダ管からなる下部ヘッダ管111’’’と、エステル化反応槽10内上部において、該エステル化反応槽10の中心軸を中心とした円周上に配置された4つの単位上部ヘッダ管113’a−dからなる上部ヘッダ管113’と、単位上部ヘッダ管113’a−dが配置された前記円周と同じ高さ位置で該円周の外側を通る、該円周と中心を同じくする円周上に配置された4つの単位上部ヘッダ管113’’a−dからなる上部ヘッダ管113’’と、単位上部ヘッダ管113’’a−dが配置された前記円周と同じ高さ位置で該円周の外側を通る、該円周と中心を同じくする円周上に配置された4つの単位上部ヘッダ管113’’’a−dからなる上部ヘッダ管113’’’と、上部ヘッダ管113’を構成する各単位上部ヘッダ管113’a−d及びそれと上下方向に対向して存在する下部ヘッダ管111’を構成する単位下部ヘッダ管を連通する複数の連通管であるマルチ伝熱管112’と、上部ヘッダ管113’’を構成する各単位上部ヘッダ管113’’a−d及びそれと上下方向に対向して存在する、下部ヘッダ管111’’を構成する単位下部ヘッダ管を連通する複数の連通管であるマルチ伝熱管112’’と、上部ヘッダ管113’’’を構成する各単位上部ヘッダ管113’’’a−d及びそれと上下方向に対向して存在する、下部ヘッダ管111’’’を構成する単位下部ヘッダ管を連通する複数の連通管であるマルチ伝熱管112’’’とから構成される。下部ヘッダ管111’、111’’、111’’’を構成する各単位下部ヘッダ管はそれぞれ伝熱管熱媒を流入又は流出させるための熱媒流出入部である下部熱媒流出入ノズル110’、110’’、110’’’(ただし図3の右側、及び図4(b)では図示していない)を有する。上部ヘッダ管113’、113’’、113’’’を構成する各単位上部ヘッダ管はそれぞれ伝熱管熱媒を流入又は流出させるための熱媒流出入部である上部熱媒流出入ノズル114’、114’’、114’’’(ただし図3の右側、及び図4(b) では図示していない)を有する。図3及び図4において、図1と同じ又は対応する番号が付されている構成要素については図2と同様の機能及び構成を有する。図3及び図4では円周上に配置された複数の単位下部ヘッダ管及び単位上部ヘッダ管がそれぞれ3重に配置された例を示すが、これは一例であり、多重度は特に限定されない。図3及び図4では簡略化して描写しているが、この実施形態ではマルチ伝熱管112’、112’’、112’’’の合計本数は数千本とすることができる。図3及び図4に示す実施形態では、伝熱管が多重配置されていることにより処理時間を顕著に短縮することができる。エステル化反応槽10内において、攪拌駆動源122によって駆動される攪拌軸121を介して攪拌翼120を回転させ、被処理液104を撹拌すると、図4(b)に示すように、エステル化反応槽10内の中央部の被処理液は上部から下部に下降する流れとなり、下部においては図4(a)に示すように外周方向へ流れ、更に図4(b)に示すように、下部から上部に向かってリング状に配列されたマルチ伝熱管112’、112’’及び112’’’の間を通って上昇する流れとなる。その結果、マルチ伝熱管により効率よく被処理液を加熱し、エステル化反応工程で生成する揮発性のガスによる密度変化と温度差による相乗効果によって、反応を進行させる。加熱手段140’の熱交換量Qは、次の(1)式で表される。
Q=U・A・ΔT (1)
【0026】
Uは熱通過率[W/(m2・K)]、Aはマルチ伝熱管112’、112’’及び112’’’の合計の伝熱面積(m2)、ΔTは所定の対数平均温度差(K)。
【0027】
このように直径が20mm程度の数千本のマルチ伝熱管112’、112’’及び112’’’を多重同心円状に配列することによって伝熱面積を増大させると共に、被処理液の中にマルチ伝熱管112’、112’’及び112’’’を通し、中心に攪拌翼120を設けた場合、被処理液がマルチ伝熱管112’、112’’及び112’’’の間を絡むように下部から上部に流れるため熱通過率Uを400程度に大幅に向上させることができる。その結果、上記加熱手段の熱交換量Qを大幅に向上させて被処理液の滞留時間を2時間程度に大幅に短縮することが可能となる。
【0028】
また、個々の伝熱管112’、112’’及び112’’’を、その横断面がエステル化反応槽10の水平断面において千鳥状になるように配列すればさらに高密度に配列でき、本数増加による伝熱面積Aの増加および伝熱管の間の間隙の減少による熱通過率Uの向上を図ることが可能となる。
【0029】
図4に示す実施形態では、間隙116’a−d、116’’a−d、及び116’’’a−d、並びに、図示はしていないが下部ヘッダ管111’、111’’及び111’’’を構成する各単位下部ヘッダ管間の間隙により、各単位上部ヘッダ管及び各単位下部ヘッダ管のエステル化反応槽の円周方向への熱膨張が吸収され、熱破損を回避することができる。なお図12には、図4に示す間隙116’a−d、116’’a−d、及び116’’’a−dを、単位上部ヘッダ管113’a−d、113’’a−d、及び113’’’a−dの熱膨張率と同等であるかより小さい熱膨張率を有する接続部材116’−2a−d、116’’−2a−d、及び116’’’−2a−dに置換した他の実施形態を示す。なお図12の実施形態では、図示していないが下部ヘッダ管111’、111’’及び111’’’を構成する各単位下部ヘッダ管間の間隙もまた同様に下部ヘッダ管111’、111’’及び111’’’を構成する各単位下部ヘッダ管の熱膨張率と同等であるかより小さい熱膨張率を有する接続部材により置換されている。図12に示す実施形態ではこれらの接続部材の存在により各単位上部ヘッダ管及び各単位下部ヘッダ管のエステル化反応槽の円周方向への熱膨張が吸収され、熱破損を回避することができる。
【0030】
次に図3に基づいて、第1の反応器の他の構成要素について説明する。エステル化反応槽10の外周部には、図3に示すように被処理液を反応温度に保つための熱媒ジャケット101が形成されている。熱媒ジャケット101には、ジャケット熱媒用上部ノズル102とジャケット熱媒用下部ノズル103が接続される。105は原料入口、106はオリゴマー出口である。107はBD供給口、108は触媒供給口である。130は蒸気出口である。
【0031】
第1の反応器において反応により生成する水は水蒸気として発生し、気化したBD蒸気及び副生するTHF蒸気と共に気相部12を形成する。このときの推奨すべき反応温度条件は220℃〜250℃、望ましくは240℃〜250℃である。また反応圧力条件は200Torr〜800Torr、望ましくは200Torr〜400Torrである。このような高温条件下ではエステル化反応速度が速く、しかも減圧条件に設定することにより反応副生成物を迅速に除去できるため、2時間以下の滞留時間で目標のエステル化率に到達可能となる。このようにエステル化反応速度が向上することによりエステル化反応時間が短縮され、副反応生成物であるTHF生成量を大幅に低減できる。この時のTHF生成量は、原料TPAのモル分率で15〜25mol%/h程度である。被処理液中から出た揮発分である気相部12のガスは、第1の反応器においてエステル化反応槽10の上方に設けられた蒸留塔(図示せず)により水とTHF及びBDとに分離され、水とTHFは系外に除去され、BDは精製工程等を経て再び系内あるいは原料用として蒸留塔下部よりBD循環ライン42によりBDタンク40に戻される。循環BDはBDタンク40からBD供給ライン41により原料調整槽5に供給されるが、BDタンク40内の循環BDは必要に応じてBD精製処理(図示せず)を行い原料BDの純度を調整する。さらに必要に応じて、初期重合槽(第2の反応器)20および最終重合槽(第3の反応器)30に設置される減圧装置の湿式コンデンサ(図示せず)から排出された循環BDをBD循環ライン43よりBDタンク40に戻し、BD原単位をさらに向上させる。この場合、新BDは、最終重合槽30の湿式コンデンサへ新BD供給ライン45より供給し、BD循環ライン44から第2反応器20の湿式コンデンサへ供給し、BD循環ライン43よりBDタンク40に供給する。
【0032】
エステル化反応槽10で所定のエステル化率に到達した被処理液は、連絡管13を経由して初期重合槽(第2の反応器)20に供給される。即ち、被処理液は、エステル化反応槽10で所定のエステル化率に到達したとき、連絡管13の途中に設けたオリゴマポンプ15により初期重合槽(第2の反応器)20に供給される。
【0033】
(第2の反応器)
次に、第2の反応器(初期重合槽)20について図1及び図6を用いて簡単に説明する。図1において、初期重合槽20は堅長円筒状の容器本体の外周が熱媒ジャケット202で覆われており、容器本体中央上部に回転軸203及び駆動装置204が取り付けられている。容器本体内は円筒状の仕切板205により2室に分けられており、ドーナツ状の第1室206と円筒状の第2室207を形成し、それぞれの攪拌室206、207内を回転して攪拌する攪拌翼208及び209が1本の共通の半長の回転軸203に取り付けられている。さらに、それぞれの攪拌室206、207内の攪拌翼208、209の外側には伝熱管210、211が取り付けられ、この伝熱管210、211への熱媒入口ノズル214、213、出口ノズル212、215が容器本体を貫通して取り付けられている。また、容器本体の第1室206の下部には、被処理液の入口ノズル216が取り付けられ、容器本体の第2室207の下部中央には、被処理液の出口ノズル217が取り付けられている。さらに、容器本体の上部に揮発物の出口ノズル218が設けられ、配管で凝縮器及び真空引き装置(図示せず)に接続される。
【0034】
ここで第1室206内の攪拌翼208は、第2室207内の攪拌翼209に比べて周速が高いため、攪拌抵抗の小さいスリムな形状となっており、第2室207内の攪拌翼209は、周速が低いため、攪拌抵抗の大きい幅の広い形状となっている。これにより、同一の回転数でまわる両攪拌翼208及び209が両攪拌室206及び207で同程度の攪拌効果を得ることができる。
【0035】
このような装置において、入口ノズル216より連続して供給された被処理液は、まず第1室206内に入り、伝熱管210で加熱され、攪拌翼208で攪拌される間に重縮合反応が進み、生成した1,4−ブタンジオール等の揮発物は蒸発して揮発物の出口ノズル218より凝縮器に捕集される。このようにして反応が進んだ被処理液は第1室206の上部より仕切板205の上端を乗り越えて第2室207に入る。被処理液は第2室207においても第1室と同様に、伝熱管211で加熱され、攪拌翼209で攪拌される間にさらに重縮合反応が進み、生成した1,4−ブタンジオール等の揮発物は蒸発して揮発物の出口ノズル218より凝縮器に捕集される。
【0036】
このようにして反応が進んだ被処理液は、第2室207の下部より被処理液の出口ノズル217を通って次の最終重合機30へ送られる。このとき、被処理液は初期重合槽20内の2つの攪拌室206、207でそれぞれ完全混合状態で効率良く反応が進み、ショートパスすること無く、また第1、2室間では密閉配管内での熱分解も無く、品質の良い重合物を連続して生産することができる。
【0037】
このような装置でPBTを重合する場合には、平均重合度2から5までのビスヒドロキシブチルテレフタレートを入口ノズル216より連続供給して重縮合反応を進め、生成した1,4−ブタンジオール及び水の蒸気を初期重合槽20内で分離し、初期重合槽20中央部の出口ノズル217より平均重合度20から70までの間のPBTの重合物を得ることができる。操作条件は例えば液温度230〜255℃、圧力0.5〜20kPa、攪拌翼の回転数5〜100回/分の範囲で行われる。
【0038】
本発明の推奨される実施形態によれば、図6に示すように、初期重合槽20内を円筒状の仕切板205A及び205Bにより3室に分けて、ドーナツ状の第1室206A及び第2室206Bと円筒状の第3室207を形成し、それぞれの攪拌室206A、206B及び207内を回転して攪拌する攪拌翼208A、208B及び209が回転軸203に取り付けられ、さらにそれぞれの攪拌室206A、206B及び207内に伝熱管210A、210B、211が取り付けられて構成される。このように、初期重合槽20内を完全混合槽3槽と構成することにより、さらに短時間で重合反応を進めることができ、熱劣化が少ない品質の良いPBTの重合物を連続して生産することができる。
【0039】
初期重合槽(第2の反応器)20で所定の反応時間を経過した処理液は、連絡管21を経てプレポリマーポンプ22により最終重合機(第3の反応器)30に供給される。
【0040】
次に、最終重合機30について具体的に図1、図7、図8及び図9を用いて説明する。最終重合機(第3の反応器)30は、初期重合機(第2の反応器)20から得られる平均重合度が20〜70の低重合度ポリマー(プレポリマー)である粘度0.1〜45Pa・s程度のPBTから、一度に平均重合度が150〜200の高重合度ポリマーである粘度500〜2500Pa・s程度のPBT50を製造できるようにしたことにある。このように処理液の粘度は、0.1〜45Pa・sの低粘度から500〜2500Pa・s程度の高粘度の範囲に亘って使用できる高粘度液処理用の攪拌装置をもった反応器を用いなければならない。この反応器として最適な装置としては、特公平819241号公報に記載の連続攪拌装置(まゆ翼式重合機)をさらに改良し、これを用いて実現できるようにした特許文献2記載の装置が挙げられる。最終重合機(第3の反応器)30はまゆ形状の攪拌翼(図8に示すように、1枚または複数枚のまゆ形板状部材311と該まゆ形板状部材の先端部に、該まゆ形板状部材に直角に取り付けられた掻き取り板312とから構成される)31a、31bを90度の位相差をつけて、所定の間隔で外部動力源35に駆動される攪拌軸32a、32bに取り付け、この攪拌軸32a、32bを2本90度の位相差をつけて構成した二軸式の重合装置である。なお、一つのまゆ形状の攪拌翼を、複数枚のまゆ形板状部材311とその先端部に取り付けられた掻き取り板312とで構成した方が、ポリマーを効率よく攪拌することが可能となる。
【0041】
このときの反応条件としては、230℃〜255℃で、圧力は0.665kPa〜0.067kPaで反応させる。特にPBTの品質の評価項目の1つであるポリマー酸価の値を出来るだけ低くするには、反応温度を250℃以下(250℃を含む)にすることが望ましい。従って、最終重合機30の外周も、図7及び図8に示すように、ポリマーを反応温度に保つために、断面がまゆ形状をした熱媒ジャケット構造301になっている。3011は熱媒ジャケット301に対する熱媒入口、3012は該熱媒出口である。302はプレポリマー入口、303はポリマー出口である。304は蒸気出口である。321a、321bは攪拌軸32a、32bの各々の軸受である。
【0042】
そして、低粘度から高粘度の広い範囲に亘って縮重合させるため、プレポリマーの入口301に近い数段のまゆ形状の攪拌翼31a、31bについては、図1、図9及び図10に示すような約下半分に仕切板33a、33bを設け、滞留時間を増やすように構成した。しかし、単に仕切板33a及び33bを設けただけでは、0.1〜45Pa・s程度の粘度を有する低重合ポリマー(プレポリマー)が仕切板33a及び33bを越えることによって進むことになるので、抵抗が高すぎることになる。そのため、図9(a)に示すように、仕切板33a及び33bの底部に穴331を設けることによって低重合ポリマー(プレポリマー)が該穴331を通して進むことが可能となり、抵抗を幾分低くすることが可能となる。また、図9(b)に示すように、仕切板33a及び33bにスリット332を設けることによっても、低重合ポリマー(プレポリマー)が該スリット332を通して進むことが可能となり、抵抗を幾分低くすることが可能となる。さらに、好ましい実施形態は、図10(a)及び(b)に示すように、縮重合を促進するために仕切板33a及び33bに熱媒334を入口335から出口336に向って通すことにある。図10(b)に示す実施形態の場合、スリット332を設けるため、熱媒334の通路を管337によって接続する必要がある。
【0043】
このように、低重合プレポリマーは、仕切板33a及び33bで仕切られた領域で攪拌されて穴331又はスリット332及び仕切板33a及び33bを越えて進むことになり、滞留時間が確保されることになり、その後高重合のポリマーを得るための仕切板のない領域のまゆ形状攪拌翼に入れることが可能となる。勿論、入口側のまゆ形状攪拌翼の軸方向の間隔を狭めることによって低粘度のプレポリマーを持ち上げる量を増やして縮重合を増やすことが可能となる。逆に、出口側のまゆ形状攪拌翼の軸方向の間隔を広げることによって高粘度のポリマーに対応させることが可能となる。
【0044】
即ち、入口302より供給された低粘度のプレポリマーは、図8に示すように、お互いの攪拌翼31a、31bが互いに逆方向に中央から外側へ回転する構成のために外側に引き伸ばされながら、順次仕切板33a及び仕切板33bで仕切られた領域毎に滞留しながら、良好な表面更新作用を受け、プレポリマーの内部から揮発成分を蒸発させて反応が促進されて粘度が徐々に上昇する。続いて、粘度が徐々に上昇したポリマーは、図8に示すように、お互いの攪拌翼31a、31bが中央から上方を経由して外側へ回転する構成のために外側に引き伸ばされながら、良好な表面更新作用を受け、プレポリマーの内部から揮発成分を蒸発させて反応が促進されて500〜2500Pa・s程度の高粘度を有する高重合度のポリマー50が出口303から排出される。
【0045】
その結果、最終重合機30は一台の装置で縮重合が可能となり大幅な装置コストの低減が可能となる。第1〜第3反応器の滞留時間は4〜7.5時間であるが、品質面から、重合工程全体の滞留時間は2から4時間が最適な範囲である。また、滞留時間は必要に応じて、温度と圧力を調整することにより長くすることが可能であり、例えば生産量を減少させる場合に、品質の変動を最小限に保つために実施されることがある。
【0046】
以上説明したように、本実施の形態によれば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)の連続製造装置(システム)を構成する第1の反応器(エステル化反応を進行させる反応器)において、加熱手段による被処理液への熱交換効率を向上させて滞留時間の短縮を図ることができ、その結果、品質の良好なポリブチレンテレフタレートを効率よく連続生産できる。
【0047】
また、本実施の形態によれば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)の連続製造装置(システム)を構成する最終重合機(第3の反応器)を1台の装置で構成でき、装置コストの低減を図り、ポリブチレンテレフタレートの製造原価の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係るPBT(ポリブチレンテレフタレート)の連続製造装置の一例の全体の構成図の構成図である。
【図2】本発明に係る第1の反応器において複数の伝熱管を一重に配設した一実施形態のエステル化反応槽内の構造を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る第1の反応器の他の一実施形態を示す縦断面図である。
【図4】本発明に係る第1の反応器の他の一実施形態について被処理液の流動状態も含めて示す図であり、(a)平面図であり、(b)は縦断面図である。
【図5a】従来技術(特許文献2)における第1の反応器のエステル化反応槽内の構造を示す斜視図である。
【図5b】従来技術(特許文献2)における第1の反応器における加熱器の熱媒流路の模式図である。
【図6】本発明に係わる第2の反応器(初期重合槽)の一実施形態を示す縦断面図である。
【図7】本発明に係る一台で構成した最終重合機(第3の反応器)の一実施形態を示す図で、(a)は平面一部断面図、(b)は正面一部断面図である。
【図8】図7に示す最終重合機(第3の反応器)の一実施形態の側面断面図(仕切板図示省略)である。
【図9】(a)(b)は、各々仕切板の実施形態を示す側面図である。
【図10】(a)(b)は、各々仕切板の他の実施形態を示す側面図である。
【図11】本発明に係る第1の反応器の他の一実施形態を示す縦断面図である。
【図12】本発明に係る第1の反応器の他の一実施形態について被処理液の流動状態も含めて示す平面図である。
【符号の説明】
【0049】
1,1−2,1’,1’−2…第1の反応器、2…原料供給ライン、5…原料調整槽、10…エステル化反応槽、101…熱媒ジャケット、102…ジャケット熱媒用上部ノズル、103…ジャケット熱媒用下部ノズル、104…被処理液、105…原料入口、106…オリゴマー出口、107…BD供給口、108…触媒供給口、110,110’,110’’,110’’’…下部熱媒流出入ノズル(熱媒流出入部)、111a−d…単位下部ヘッダ管、111’,111’’,111’’’…下部ヘッダ管、112,112’,112’’,112’’’…伝熱管(連通管)、113a−d,113’a−d,113’’a−d,113’’’a−d…単位上部ヘッダ管、113’,113’’,113’’’…上部ヘッダ管、114,114’,114’’,114’’’…上部熱媒流出入ノズル(熱媒流出入部)、115a−d,116a−d,116’a−d,116’’a−d,116’’’a−d…間隙、115−2a−d,116−2a−d,116’−2a−d,116’’−2a−d,116’’’−2a−d…接続部材、120…攪拌翼、121…攪拌軸、122…攪拌駆動軸、140…加熱器、130…蒸気出口、12…気相部、13…連絡管、14…触媒投入ライン、15…オリゴマポンプ、20…初期重合槽(第2の反応器)、202…熱媒ジャケット、203…回転軸、204…駆動装置M、205…円筒状の仕切板、206…攪拌室(第1室)、207…攪拌室(第2室)、208…攪拌翼、209…攪拌翼、210、211…伝熱管、213,214…熱媒入口ノズル、212,215…熱媒出口ノズル、216…被処理液の入口ノズル、217…被処理液の出口ノズル、218…揮発物の出口ノズル、30…最終重合機(第3の反応器)、301…熱媒ジャケット、302…プレポリマー入口、303…ポリマー出口、304…蒸気出口、311…まゆ形板状部材、312…掻き取り板、321a、321b…軸受、31a、31b…まゆ形状の攪拌翼、32a、32b…攪拌軸、33a、33b…仕切板、331…穴、332…スリット、334…熱媒、335…熱媒入口、336…熱媒出口、337…管、40…BDタンク、43、44…BD循環ライン、45…新BD供給ライン、50…ポリマー、1001…特許文献2における第1の反応器、1010…特許文献2におけるエステル化反応槽、1110…特許文献2における下部熱媒流出入ノズル、1111…特許文献2における下部ヘッダ管、1112…特許文献2における伝熱管(連通管)、1113…特許文献2における上部ヘッダ管、1114…特許文献2における上部熱媒流出入ノズル、1140…特許文献2における加熱器。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート等のポリエステル系高分子の連続製造方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これらのポリエステルは、ジカルボン酸とグリコールを原料とし、これらの混合物に触媒を添加した後、エステル化工程、重合工程を経て、ポリエステルに合成される。エステル化工程ではジカルボン酸のカルボキシル基2つがそれぞれグリコールとエステル化反応してモノマーを生成し、モノマー同士が縮重合反応により平均重合度1〜10程度のオリゴマーを生成する。ポリエステル系高分子の一つであるポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと記す)の製造方法及びその装置としては、特開昭62−195017号公報(特許文献1)、特開2006−111647号公報(特許文献2)に開示された装置が知られている。
【0003】
特許文献1ではポリエステルの1つであるPBTについての重合方法が記載されている。この中で原料であるグリコール(1、4−ブタンジオール)の熱劣化によるテトラヒドロフラン(以下THFと記す)生成を低減する方法について言及がある。本方式によれば、できるだけ高温、低圧、短時間での重合が望ましいと特許文献1には記載されている。しかしながら特許文献1には装置規模が大きい場合において、この反応条件を実現する装置構成への言及はない。
【0004】
一方、特許文献2には、ジカルボン酸とグリコール類とを含む被処理液をエステル化反応させてオリゴマーを製造する第1の反応器と、該第1の反応器からのオリゴマーを縮重合させて、低重合度のポリマーを製造する第2の反応器と、該第2の反応器からの低重合ポリマーを更に縮重合させて、高重合度のポリマーを製造する第3の反応器とを備えたポリエステル系高分子の連続製造装置が開示されている。前記第1の反応器の主要部は図5aに記載した構造を有している。すなわち、前記第1の反応器1001はジカルボン酸とグリコール類とを含む被処理液を攪拌すると共に、気相又は液相熱媒の熱により加熱して前記被処理液をエステル化反応させてオリゴマーを製造するものである。第1の反応器1001は、被処理液が供給される縦型円筒状のエステル化反応槽1010と、該エステル化反応槽内の被処理液を攪拌する攪拌手段1120と、熱媒を流通すべく、エステル化反応槽1010内上部に配置された上部ヘッダ管1113、エステル化反応槽1010内下部に配置された下部ヘッダ管1111、及び上部ヘッダ管1113と下部ヘッダ管1111に前記熱媒が流通可能に上部ヘッダ管1113と下部ヘッダ管1111とを接続した複数の連通管である伝熱管1112を含む加熱器1140と、を少なくとも備える。下部ヘッダ管1111は熱媒流出入部である下部熱媒流出入ノズル1110を有する。上部ヘッダ管1113は熱媒流出入部である上部熱媒流出入ノズル1114を有する。特許文献2には、この装置を用いた場合に推奨すべき反応条件としては温度条件は220℃〜250℃であり、圧力条件は減圧あるいは微加圧条件であると記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭62−195017号公報
【特許文献2】特開2006−111647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に記載された第1の反応器1001は、上下ヘッダ管に設置された熱媒流出入部がそれぞれ1つのみであるため、温度むらが発生し易く、上下の各ヘッダ管と伝熱管との接合部分において熱応力破損の可能性があるという課題を有していた。この点を図5bに基づいて説明する。図5bでは特許文献2の装置における加熱器1140のみを平面的に示した模式図である。図5bでは簡略化して伝熱管を2本のみ描写する(1112a及び1112b)。例えば下部熱媒流出入ノズル1110から熱媒が導入される場合、熱媒が下部ヘッダ管の部位4から、伝熱管1112b内を上昇し、上昇中に被処理液と熱媒との熱交換が行われ、上部ヘッダ管の部位3を経て部位1に至り、上部熱媒流出入ノズル1114から排出される経路と、熱媒が下部ヘッダ管の部位4から、下部ヘッダ管の部位2を経て、伝熱管1112b内を上昇し、上昇中に被処理液と熱媒との熱交換が行われ、上部ヘッダ管の部位1に至り、上部熱媒流出入ノズル1114から排出される経路とがある。部位2と部位4との間の距離をLとし、部位1,2,3,4での熱媒の温度をそれぞれT1,T2,T3,T4とする。この場合、熱媒は下部ヘッダ管を距離L移動する際に熱を放出するためT4>T2となる。その結果、(T4−T3)>(T2−T1)となる。すなわち伝熱管ごとに上部ヘッダ管への接続部分と下部ヘッダ管への接続部分との温度差が異なることになる。温度差が異なれば鉛直方向の熱膨張率は異なるから、鉛直方向の熱膨張に伴う応力が伝熱管ごとに相違することとなる。この相違によって、伝熱管1112と、上下のヘッダ管との接続部分に負荷がかかり破損するという可能性があった。T4とT2との差は距離Lが長いほど大きい傾向がある。図5aに示すような特許文献2記載の装置では上下のヘッダ管がそれぞれ円周方向に沿って一体に形成されているため図5bの距離Lに相当する距離が長く熱応力破損の可能性が高まるという問題があった。また、このような熱応力破損の可能性は高温条件下で高まるため、反応時間が長くなり、反応副生成物が多く発生するため特許文献2の装置を用いた場合には、反応には不利な低温で反応を進めることを余儀なくされ、反応時間が長くなり、反応副生成物が多く発生するため、生産効率が下がるという問題があった。
【0007】
また、上記特許文献1に記載された第1の反応器は、上下ヘッダ部に多数の伝熱管を配設しているため、高温運転時においてはヘッダ部の円周方向の熱膨張に起因する熱応力破損の可能性があるという問題があった。同様な課題は、ポリエチレンテレフタレート重合におけるエチレングリコールのジエチレングリコール化、ポリトリメチレンテレフタレート重合における1、3−プロパンジオールのアクロレイン化に対応する際にも発生する。
【0008】
本発明の目的は、上記課題を解決すべく、ジカルボン酸とグリコール類とを反応させて平均重合度2〜5程度のオリゴマーを製造する第1の反応器において、高温条件下での運転を可能とするポリエステル系高分子の製造装置及びその方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸と1,4−ブタジオールを主成分とするグリコール類とを反応させて平均重合度2〜5程度のオリゴマーを製造する第1の反応器において、温度は220℃から250℃、望ましくは240℃から250℃、圧力は200Torrから800Torr、望ましくは200Torrから400Torrでの運転を可能とするポリブチレンテレフタレートの製造装置及びその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく検討し、本発明を完成するに至った。
本発明は、ジカルボン酸とグリコール類とを含む被処理液を攪拌すると共に、気相又は液相熱媒の熱により加熱して前記被処理液をエステル化反応させてオリゴマーを製造する第1の反応器を少なくとも備え、該第1の反応器は、前記被処理液が供給される縦型円筒状のエステル化反応槽と、該エステル化反応槽内の被処理液を攪拌する攪拌手段と、前記熱媒を流通すべく、前記エステル化反応槽内上部に配置された上部ヘッダ管、前記エステル化反応槽内下部に配置された下部ヘッダ管、及び前記上部ヘッダ管と前記下部ヘッダ管に前記熱媒が流通可能に前記上部ヘッダ管と前記下部ヘッダ管とを接続した複数の連通管を含む加熱器と、を少なくとも備えた、ポリエステル系高分子の連続製造装置であって、
前記上部ヘッダ管は、前記エステル化反応槽の円周方向に沿って配置された複数の単位上部ヘッダ管から構成され、前記下部ヘッダ管は、前記エステル化反応槽の円周方向に沿って配置された複数の単位下部ヘッダ管から構成され、前記各連通管は、上下方向に対向した前記単位上部ヘッダ管及び前記単位下部ヘッダ管に接続されており、各単位上部ヘッダ管及び各単位下部ヘッダ管には、前記熱媒を流入又は流出させるための熱媒流出入部が形成されていることを特徴とするポリエステル系高分子の連続製造装置を提供する。
【0011】
本発明はまた前記装置を用いて高温条件下でジカルボン酸とグリコール類とを含む被処理液をエステル化反応させてオリゴマーを製造することを特徴とする、ポリエステル系高分子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の装置では、第1の反応器において上部及び下部のヘッダ管がそれぞれ複数の単位ヘッダ管に分割されていることにより、上部及び下部のヘッダ管を連通する複数の連通管である複数の伝熱管ごとの温度むらが抑制され、伝熱管の接合部分において加熱時の熱応力破損の危険性が低くなる。そのためエステル化反応において高い加熱温度を確保することができる。その結果、品質の良好なポリエステル系高分子を効率よく連続生産できると同時に、反応副生成物の生成量を低減させ、生産効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係るポリエステル系高分子の製造装置及びその方法の実施の形態についてより詳細に説明する。
【0014】
本発明はジカルボン酸とグリコール類とを含む被処理液を攪拌すると共に、気相又は液相熱媒の熱により加熱して前記被処理液をエステル化反応させてオリゴマーを製造する第1の反応器の構造に特徴を有するポリエステル系高分子の連続製造装置に関する。本発明のポリエステル系高分子の連続製造装置には該第1の反応器のほかに、該第1の反応器からのオリゴマーを縮重合させて、低重合度のポリマーを製造する第2の反応器と、該第2の反応器からの低重合ポリマーを更に縮重合させて高重合度のポリマーを製造する第3の反応器とを更に備えていてもよい。
【0015】
前記第1の反応器は、前記被処理液が供給される縦型円筒状のエステル化反応槽と、該エステル化反応槽内の被処理液を攪拌する攪拌手段と、前記熱媒を流通すべく、前記エステル化反応槽内上部に配置された上部ヘッダ管、前記エステル化反応槽内下部に配置された下部ヘッダ管、及び前記上部ヘッダ管と前記下部ヘッダ管に前記熱媒が流通可能に前記上部ヘッダ管と前記下部ヘッダ管とを接続した複数の連通管を含む加熱器と、を少なくとも備える。熱媒が各連通管を通過する際にその表面において前記被処理液と前記熱媒との間で熱交換が行われる。すなわち前記各連通管は伝熱管として機能する。本明細書における用語「連通管」はその形態に着目した場合の呼称であり、用語「伝熱管」は「連通管」の機能に着目した場合の呼称である。また本明細書では複数の伝熱管を指して「マルチ伝熱管」と称することがある。
【0016】
本発明の第一の特徴は、前記上部ヘッダ管が、前記エステル化反応槽の円周方向に沿って配置された複数の単位上部ヘッダ管から構成され、前記下部ヘッダ管が、前記エステル化反応槽の円周方向に沿って配置された複数の単位下部ヘッダ管から構成され、前記各連通管が、上下方向に対向した前記単位上部ヘッダ管及び前記単位下部ヘッダ管に接続されており、且つ、各単位上部ヘッダ管及び各単位下部ヘッダ管には、前記熱媒を流入又は流出させるための熱媒流出入部が少なくとも一つ形成されていることにある。前記エステル化反応槽の円周方向に隣接する単位上部ヘッダ管同士及び前記エステル化反応槽の円周方向に隣接する単位下部ヘッダ管同士の流路は互いに連通していない。このように、上下のヘッダ管を複数の独立した流路を形成する小単位に分割することにより、伝熱管への流入前又は流出後における上下のヘッダ管内での熱媒の移動距離を短くすることができる。すなわち、図5bにおける距離Lに相当する距離を短くすることができる。このため、各単位ヘッダ管内での位置による熱媒の温度差は小さくなり、その結果、各伝熱管のヘッダ管への接続位置の相違による温度むらを抑制することができ、伝熱管の鉛直方向の熱膨張に伴う応力による熱破損の危険性を低くすることができる。単位上部ヘッダ管及び単位下部ヘッダ管の数は特に限定されない。各単位上部ヘッダ管及び各単位下部ヘッダ管は、その長手方向が前記エステル化反応槽の円周方向に沿って延伸した形状に形成されていることが好ましい。本特徴を有する第1の反応器を用いることによりジカルボン酸とグリコール類とを含む被処理液をエステル化反応させてオリゴマーを製造する反応を高温条件で行うことが可能となる。
【0017】
本発明の第二の特徴は、前記複数の単位上部ヘッダ管及び前記複数の単位下部ヘッダ管のうち前記エステル化反応槽の円周方向に隣接するもの同士の間に間隙が形成されていることにある。この特徴を有する第1の反応器の一例を図2及び図4に示す。この特徴により、各単位ヘッダ管のエステル化反応槽の円周方向への熱膨張を前記間隙で吸収することができ、熱破損を回避することができる。
【0018】
本発明の第三の特徴は、前記複数の単位上部ヘッダ管及び前記複数の単位下部ヘッダ管のうち前記エステル化反応槽の円周方向に隣接するもの同士は接続部材を介して接続されており、且つ、前記接続部材の熱膨張率は、前記複数の単位上部ヘッダ管及び前記複数の単位下部ヘッダ管の熱膨張率と同等であるかより小さいことにある。この特徴を有する第1の反応器の一例を図11及び図12に示す。この特徴によっても、各単位ヘッダ管のエステル化反応槽の円周方向への熱膨張を前記接続部材で吸収することができ、熱破損を回避することができる。
【0019】
本発明の第四の特徴は、前記複数の連通管(伝熱管)が、前記エステル化反応槽の中心軸に沿って、前記エステル化反応槽の中心軸を中心とした複数の同心円の円周上に配置されていることにある。この場合、前記複数の単位上部ヘッダ管及び前記複数の単位下部ヘッダ管はそれぞれ、前記エステル化反応槽の中心軸を中心とした複数の同心円の円周上に配置されていることが好ましく、前記複数の単位上部ヘッダ管と、前記複数の単位下部ヘッダ管とはそれぞれ、前記エステル化反応槽の中心軸を中心とした同一の半径を有する同一の数の同心円の円周上に配置されていることがより好ましい。この特徴を有する第1の反応器の一例を図4及び図12に示す。この特徴により広い伝熱面積を確保できるため、エステル化工程の伝熱性能が向上する。
【0020】
本発明の装置における撹拌手段としては、エステル化反応槽内でジカルボン酸とグリコール類とを含む被処理液を攪拌して、該被処理液を該エステル化反応槽内に配置された複数の伝熱管と十分に接触させることができるものであれば特に限定されない。このような撹拌手段としては例えば撹拌翼が挙げられる。撹拌翼は、前記エステル化反応槽の少なくとも一つの水平断面の中央部に配置されていることが好ましく、該撹拌翼は前記エステル化反応槽の中心軸と同一又はほぼ同一の軸を中心に回転するものであることが好ましい。撹拌翼はその直下方向に被処理液の流れを発生させるものであることが好ましい。撹拌翼が前記エステル化反応槽の少なくとも一つの水平断面の中央部に配置されている場合、前記複数の連通管は、前記エステル化反応槽の中心軸に沿って、前記少なくとも一つの水平断面の周辺部に配置されて、前記中央部を包囲していることが好ましい。
【0021】
本発明はまた、前記の特徴を有する本発明の装置を用いたポリエステル系高分子の製造方法を提供する。本方法の特徴は、ジカルボン酸とグリコール類とを含む被処理液をエステル化反応させてオリゴマーを製造する工程を、前記エステル化反応槽に前記被処理液を供給し、前記エステル化反応槽内部の温度を220℃〜250℃、前記エステル化反応槽内部の圧力を200Torr〜800Torrに設定して運転を行うことにより行うことにある。前記温度としては240℃〜250℃がより好ましい。前記圧力としては200Torr〜400Torrがより好ましい。このような条件での運伝は、従来の反応装置では実現が困難であった。本方法においては、前記ジカルボン酸としてテレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸を用い、前記グリコール類として1,4−ブタンジオールを主成分とするグリコール類を用いることが特に好ましい。
【0022】
以下に、本発明の装置の具体的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(装置全体)
図1は、本発明に係るポリエステル系高分子の連続製造装置の一例の全体の構成図である。図1にはまた、該装置を用いたポリエステル系高分子の製造プロセスの一例についても図示されている。一例としてポリエステル系高分子であるPBT(ポリブチレンテレフタレート)を製造する場合について説明する。工業的なポリエステルの製造方法として、直接エステル化法が、経済的に非常に有利であるので、最近ではポリエステルの製造には直接エステル化方法が多く採用されている。図1において、5は、PBTの原料であるTPA(テレフタル酸)とBD(1, 4−ブタンジオール)を所定の割合で混合、攪拌する原料調整槽である。原料調整槽5から得られる原料は、原料供給ライン2から原料入口105を経てエステル化反応槽10を備える第1の反応器1へ供給される。この段階で重合反応触媒(CAT)や安定剤、品質調整剤などの添加物(ADD)を加える場合には、重合反応触媒や添加剤はエステル化反応槽10へ触媒投入ライン14から触媒供給口108を通して投入することができる。重合反応触媒としては有機チタン、有機錫、有機ジルコニア等の公知の金属化合物が挙げられる。使用する触媒の種類や組み合わせにより、反応速度が異なるだけでなく、生成するPBTの色相及び熱安定性等の品質に大きな影響を及ぼすことが良く知られている。触媒としては現在最も多く工業的に使用されている有機チタンが価格や性能面で優れている。しかし、この触媒を用いても生成したポリエステル重合物の着色は避けられない。この点を改善するために安定剤として燐系安定剤(例えば、リン酸、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等)を併用してもよい。また、別のプロセスにおいては重合触媒や安定剤の投入位置を工夫して品質を安定させてもよい。通常のプロセスでは触媒の量はチタン金属換算濃度で20〜100ppmとすることが好ましく、また安定剤の量は必要に応じてリン金属濃度で0〜600ppmとすることが好ましい。
【0023】
(第1の反応器)
図2には、第1の反応器の好適な一実施形態を示す。図2に示す第1の反応器1は、縦型円筒状のエステル化反応槽10と、エステル化反応槽内下部に、前記エステル化反応槽の円周方向に沿って一重に配置された複数(4つ)の単位下部ヘッダ管111a−dと、エステル化反応槽内上部に、前記エステル化反応槽の円周方向に沿って配置された複数(4つ)の単位上部ヘッダ管113a−dと、上下方向に対向した前記単位上部ヘッダ管113a−dと前記単位下部ヘッダ管111a−dとをそれぞれ気相又は液相熱媒が流通可能に接続する複数の連通管である伝熱管112a−dと、エステル化反応槽の2つの水平断面における中央部に配置された、前記エステル化反応槽の中心軸を中心に回転する、前記供給された被処理液を撹拌するための2つの攪拌翼120と、該攪拌翼の撹拌軸121とを備えた実施形態を示す。単位下部ヘッダ管111a−dと、単位上部ヘッダ管113a−dと、伝熱管112a−dとから、熱媒を流通するための加熱器140が構成される。撹拌翼120はその直下方向に処理液の流れを発生させるものであることが好ましい。単位下部ヘッダ管111a−dはそれぞれ伝熱管熱媒を流入又は流出させるための熱媒流出入部である下部熱媒流出入ノズル110a−d(ただしbは図示していない)を有する。単位上部ヘッダ管113a−dはそれぞれ伝熱管熱媒を流入又は流出させるための熱媒流出入部である上部熱媒流出入ノズル114a−d(ただしbは図示していない)を有する。伝熱管112a−dのそれぞれの寸法は、例えば直径20mm程度で、長さが150cm程度であるがこれには限定されない。伝熱管熱媒は気相熱媒又は液相熱媒である。熱媒の温度は245℃〜260℃程度が好ましい。伝熱管熱媒として液相熱媒を用いる場合、液相熱媒はエステル化反応槽の外部から下部熱媒流出入ノズル110a−dを介して各ノズルが接続された単位下部ヘッダ管111a−dに供給され、該供給された液相熱媒が伝熱管112a−d内を下部から上部へ流動し、単位上部ヘッダ管113a−dから上部熱媒流出入ノズル114a−dを介してエステル化反応槽の外部に排出される。伝熱管熱媒として油等の気相熱媒(スチームガス)を用いる場合には、気相熱媒がエステル化反応槽の外部から上部熱媒流出入ノズル114a−dを介して各ノズルが接続された単位上部ヘッダ管113a−dに供給され、該供給された気相熱媒がマルチ伝熱管112a−d内を上部から下部へ流動し、単位下部ヘッダ管111a−dから下部熱媒流出入ノズル110a−dを介してエステル化反応槽の外部に排出される。なお、図2においては上部ヘッダ管及び下部ヘッダ管の円周方向の分割数を4としたが、実施にあたってはこれに限定されるものではない。単位下部ヘッダ管111a−d及び単位上部ヘッダ管113a−dはそれぞれエステル化反応槽の円周方向の流路長が短いため各単位上部ヘッダ管及び各単位下部ヘッダ管に連結された伝熱管ごとの温度むらが少なく、熱破損の危険性が低い。図2に示す実施形態では、単位下部ヘッダ管111a−dのうちエステル化反応槽の円周方向に隣接するもの同士の間には間隙115a−d(ただしbは図示していない)が存在しており、単位上部ヘッダ管113a−dのうちエステル化反応槽の円周方向に隣接するもの同士の間には間隙116a−d(ただしbは図示していない)が存在している。本構造をとることにより、単位下部ヘッダ管111a−dのそれぞれのエステル化反応槽の円周方向への熱膨張が間隙115a−dで吸収され、単位上部ヘッダ管113a−dのそれぞれのエステル化反応槽の円周方向への熱膨張が間隙116a−dで吸収されるため、熱破損を回避することができる。
【0024】
なお、単位下部ヘッダ管111a−d及び単位上部ヘッダ管113a−dのうちエステル化反応槽の円周方向に隣接するもの同士は、単位下部ヘッダ管111a−d及び単位上部ヘッダ管113a−dの熱膨張率と同等であるかより小さい熱膨張率を有する接続部材により接続されていてもよい。この実施形態を図11に示す。図11において115−2a−d(ただしbは図示していない)及び116−2a−d(ただしbは図示していない)は単位下部ヘッダ管111a−d及び単位上部ヘッダ管113a−dの熱膨張率と同等であるかより小さい熱膨張率を有する接続部材を示す。本構造をとることにより、単位下部ヘッダ管111a−dのそれぞれのエステル化反応槽の円周方向への熱膨張が接続部材115−2a−dで吸収され、単位上部ヘッダ管113a−dのそれぞれのエステル化反応槽の円周方向への熱膨張が接続部材116−2a−dで吸収されるため、熱破損を回避することができる。
【0025】
図3及び図4には、第1の反応器の他の一実施形態を示す。図3及び図4に示す第1の反応器1’の加熱器140’は、エステル化反応槽10内下部において、該エステル化反応槽10の中心軸を中心とした円周上に配置された4つの単位下部ヘッダ管からなる下部ヘッダ管111’と、下部ヘッダ管111’を構成する各単位下部ヘッダ管が配置された前記円周と同じ高さ位置で該円周の外側を通る、該円周と中心を同じくする円周上に配置された4つの単位下部ヘッダ管からなる下部ヘッダ管111’’と、下部ヘッダ管111’’を構成する各単位下部ヘッダ管が配置された前記円周と同じ高さ位置で該円周の外側を通る、該円周と中心を同じくする円周上に配置された4つの単位下部ヘッダ管からなる下部ヘッダ管111’’’と、エステル化反応槽10内上部において、該エステル化反応槽10の中心軸を中心とした円周上に配置された4つの単位上部ヘッダ管113’a−dからなる上部ヘッダ管113’と、単位上部ヘッダ管113’a−dが配置された前記円周と同じ高さ位置で該円周の外側を通る、該円周と中心を同じくする円周上に配置された4つの単位上部ヘッダ管113’’a−dからなる上部ヘッダ管113’’と、単位上部ヘッダ管113’’a−dが配置された前記円周と同じ高さ位置で該円周の外側を通る、該円周と中心を同じくする円周上に配置された4つの単位上部ヘッダ管113’’’a−dからなる上部ヘッダ管113’’’と、上部ヘッダ管113’を構成する各単位上部ヘッダ管113’a−d及びそれと上下方向に対向して存在する下部ヘッダ管111’を構成する単位下部ヘッダ管を連通する複数の連通管であるマルチ伝熱管112’と、上部ヘッダ管113’’を構成する各単位上部ヘッダ管113’’a−d及びそれと上下方向に対向して存在する、下部ヘッダ管111’’を構成する単位下部ヘッダ管を連通する複数の連通管であるマルチ伝熱管112’’と、上部ヘッダ管113’’’を構成する各単位上部ヘッダ管113’’’a−d及びそれと上下方向に対向して存在する、下部ヘッダ管111’’’を構成する単位下部ヘッダ管を連通する複数の連通管であるマルチ伝熱管112’’’とから構成される。下部ヘッダ管111’、111’’、111’’’を構成する各単位下部ヘッダ管はそれぞれ伝熱管熱媒を流入又は流出させるための熱媒流出入部である下部熱媒流出入ノズル110’、110’’、110’’’(ただし図3の右側、及び図4(b)では図示していない)を有する。上部ヘッダ管113’、113’’、113’’’を構成する各単位上部ヘッダ管はそれぞれ伝熱管熱媒を流入又は流出させるための熱媒流出入部である上部熱媒流出入ノズル114’、114’’、114’’’(ただし図3の右側、及び図4(b) では図示していない)を有する。図3及び図4において、図1と同じ又は対応する番号が付されている構成要素については図2と同様の機能及び構成を有する。図3及び図4では円周上に配置された複数の単位下部ヘッダ管及び単位上部ヘッダ管がそれぞれ3重に配置された例を示すが、これは一例であり、多重度は特に限定されない。図3及び図4では簡略化して描写しているが、この実施形態ではマルチ伝熱管112’、112’’、112’’’の合計本数は数千本とすることができる。図3及び図4に示す実施形態では、伝熱管が多重配置されていることにより処理時間を顕著に短縮することができる。エステル化反応槽10内において、攪拌駆動源122によって駆動される攪拌軸121を介して攪拌翼120を回転させ、被処理液104を撹拌すると、図4(b)に示すように、エステル化反応槽10内の中央部の被処理液は上部から下部に下降する流れとなり、下部においては図4(a)に示すように外周方向へ流れ、更に図4(b)に示すように、下部から上部に向かってリング状に配列されたマルチ伝熱管112’、112’’及び112’’’の間を通って上昇する流れとなる。その結果、マルチ伝熱管により効率よく被処理液を加熱し、エステル化反応工程で生成する揮発性のガスによる密度変化と温度差による相乗効果によって、反応を進行させる。加熱手段140’の熱交換量Qは、次の(1)式で表される。
Q=U・A・ΔT (1)
【0026】
Uは熱通過率[W/(m2・K)]、Aはマルチ伝熱管112’、112’’及び112’’’の合計の伝熱面積(m2)、ΔTは所定の対数平均温度差(K)。
【0027】
このように直径が20mm程度の数千本のマルチ伝熱管112’、112’’及び112’’’を多重同心円状に配列することによって伝熱面積を増大させると共に、被処理液の中にマルチ伝熱管112’、112’’及び112’’’を通し、中心に攪拌翼120を設けた場合、被処理液がマルチ伝熱管112’、112’’及び112’’’の間を絡むように下部から上部に流れるため熱通過率Uを400程度に大幅に向上させることができる。その結果、上記加熱手段の熱交換量Qを大幅に向上させて被処理液の滞留時間を2時間程度に大幅に短縮することが可能となる。
【0028】
また、個々の伝熱管112’、112’’及び112’’’を、その横断面がエステル化反応槽10の水平断面において千鳥状になるように配列すればさらに高密度に配列でき、本数増加による伝熱面積Aの増加および伝熱管の間の間隙の減少による熱通過率Uの向上を図ることが可能となる。
【0029】
図4に示す実施形態では、間隙116’a−d、116’’a−d、及び116’’’a−d、並びに、図示はしていないが下部ヘッダ管111’、111’’及び111’’’を構成する各単位下部ヘッダ管間の間隙により、各単位上部ヘッダ管及び各単位下部ヘッダ管のエステル化反応槽の円周方向への熱膨張が吸収され、熱破損を回避することができる。なお図12には、図4に示す間隙116’a−d、116’’a−d、及び116’’’a−dを、単位上部ヘッダ管113’a−d、113’’a−d、及び113’’’a−dの熱膨張率と同等であるかより小さい熱膨張率を有する接続部材116’−2a−d、116’’−2a−d、及び116’’’−2a−dに置換した他の実施形態を示す。なお図12の実施形態では、図示していないが下部ヘッダ管111’、111’’及び111’’’を構成する各単位下部ヘッダ管間の間隙もまた同様に下部ヘッダ管111’、111’’及び111’’’を構成する各単位下部ヘッダ管の熱膨張率と同等であるかより小さい熱膨張率を有する接続部材により置換されている。図12に示す実施形態ではこれらの接続部材の存在により各単位上部ヘッダ管及び各単位下部ヘッダ管のエステル化反応槽の円周方向への熱膨張が吸収され、熱破損を回避することができる。
【0030】
次に図3に基づいて、第1の反応器の他の構成要素について説明する。エステル化反応槽10の外周部には、図3に示すように被処理液を反応温度に保つための熱媒ジャケット101が形成されている。熱媒ジャケット101には、ジャケット熱媒用上部ノズル102とジャケット熱媒用下部ノズル103が接続される。105は原料入口、106はオリゴマー出口である。107はBD供給口、108は触媒供給口である。130は蒸気出口である。
【0031】
第1の反応器において反応により生成する水は水蒸気として発生し、気化したBD蒸気及び副生するTHF蒸気と共に気相部12を形成する。このときの推奨すべき反応温度条件は220℃〜250℃、望ましくは240℃〜250℃である。また反応圧力条件は200Torr〜800Torr、望ましくは200Torr〜400Torrである。このような高温条件下ではエステル化反応速度が速く、しかも減圧条件に設定することにより反応副生成物を迅速に除去できるため、2時間以下の滞留時間で目標のエステル化率に到達可能となる。このようにエステル化反応速度が向上することによりエステル化反応時間が短縮され、副反応生成物であるTHF生成量を大幅に低減できる。この時のTHF生成量は、原料TPAのモル分率で15〜25mol%/h程度である。被処理液中から出た揮発分である気相部12のガスは、第1の反応器においてエステル化反応槽10の上方に設けられた蒸留塔(図示せず)により水とTHF及びBDとに分離され、水とTHFは系外に除去され、BDは精製工程等を経て再び系内あるいは原料用として蒸留塔下部よりBD循環ライン42によりBDタンク40に戻される。循環BDはBDタンク40からBD供給ライン41により原料調整槽5に供給されるが、BDタンク40内の循環BDは必要に応じてBD精製処理(図示せず)を行い原料BDの純度を調整する。さらに必要に応じて、初期重合槽(第2の反応器)20および最終重合槽(第3の反応器)30に設置される減圧装置の湿式コンデンサ(図示せず)から排出された循環BDをBD循環ライン43よりBDタンク40に戻し、BD原単位をさらに向上させる。この場合、新BDは、最終重合槽30の湿式コンデンサへ新BD供給ライン45より供給し、BD循環ライン44から第2反応器20の湿式コンデンサへ供給し、BD循環ライン43よりBDタンク40に供給する。
【0032】
エステル化反応槽10で所定のエステル化率に到達した被処理液は、連絡管13を経由して初期重合槽(第2の反応器)20に供給される。即ち、被処理液は、エステル化反応槽10で所定のエステル化率に到達したとき、連絡管13の途中に設けたオリゴマポンプ15により初期重合槽(第2の反応器)20に供給される。
【0033】
(第2の反応器)
次に、第2の反応器(初期重合槽)20について図1及び図6を用いて簡単に説明する。図1において、初期重合槽20は堅長円筒状の容器本体の外周が熱媒ジャケット202で覆われており、容器本体中央上部に回転軸203及び駆動装置204が取り付けられている。容器本体内は円筒状の仕切板205により2室に分けられており、ドーナツ状の第1室206と円筒状の第2室207を形成し、それぞれの攪拌室206、207内を回転して攪拌する攪拌翼208及び209が1本の共通の半長の回転軸203に取り付けられている。さらに、それぞれの攪拌室206、207内の攪拌翼208、209の外側には伝熱管210、211が取り付けられ、この伝熱管210、211への熱媒入口ノズル214、213、出口ノズル212、215が容器本体を貫通して取り付けられている。また、容器本体の第1室206の下部には、被処理液の入口ノズル216が取り付けられ、容器本体の第2室207の下部中央には、被処理液の出口ノズル217が取り付けられている。さらに、容器本体の上部に揮発物の出口ノズル218が設けられ、配管で凝縮器及び真空引き装置(図示せず)に接続される。
【0034】
ここで第1室206内の攪拌翼208は、第2室207内の攪拌翼209に比べて周速が高いため、攪拌抵抗の小さいスリムな形状となっており、第2室207内の攪拌翼209は、周速が低いため、攪拌抵抗の大きい幅の広い形状となっている。これにより、同一の回転数でまわる両攪拌翼208及び209が両攪拌室206及び207で同程度の攪拌効果を得ることができる。
【0035】
このような装置において、入口ノズル216より連続して供給された被処理液は、まず第1室206内に入り、伝熱管210で加熱され、攪拌翼208で攪拌される間に重縮合反応が進み、生成した1,4−ブタンジオール等の揮発物は蒸発して揮発物の出口ノズル218より凝縮器に捕集される。このようにして反応が進んだ被処理液は第1室206の上部より仕切板205の上端を乗り越えて第2室207に入る。被処理液は第2室207においても第1室と同様に、伝熱管211で加熱され、攪拌翼209で攪拌される間にさらに重縮合反応が進み、生成した1,4−ブタンジオール等の揮発物は蒸発して揮発物の出口ノズル218より凝縮器に捕集される。
【0036】
このようにして反応が進んだ被処理液は、第2室207の下部より被処理液の出口ノズル217を通って次の最終重合機30へ送られる。このとき、被処理液は初期重合槽20内の2つの攪拌室206、207でそれぞれ完全混合状態で効率良く反応が進み、ショートパスすること無く、また第1、2室間では密閉配管内での熱分解も無く、品質の良い重合物を連続して生産することができる。
【0037】
このような装置でPBTを重合する場合には、平均重合度2から5までのビスヒドロキシブチルテレフタレートを入口ノズル216より連続供給して重縮合反応を進め、生成した1,4−ブタンジオール及び水の蒸気を初期重合槽20内で分離し、初期重合槽20中央部の出口ノズル217より平均重合度20から70までの間のPBTの重合物を得ることができる。操作条件は例えば液温度230〜255℃、圧力0.5〜20kPa、攪拌翼の回転数5〜100回/分の範囲で行われる。
【0038】
本発明の推奨される実施形態によれば、図6に示すように、初期重合槽20内を円筒状の仕切板205A及び205Bにより3室に分けて、ドーナツ状の第1室206A及び第2室206Bと円筒状の第3室207を形成し、それぞれの攪拌室206A、206B及び207内を回転して攪拌する攪拌翼208A、208B及び209が回転軸203に取り付けられ、さらにそれぞれの攪拌室206A、206B及び207内に伝熱管210A、210B、211が取り付けられて構成される。このように、初期重合槽20内を完全混合槽3槽と構成することにより、さらに短時間で重合反応を進めることができ、熱劣化が少ない品質の良いPBTの重合物を連続して生産することができる。
【0039】
初期重合槽(第2の反応器)20で所定の反応時間を経過した処理液は、連絡管21を経てプレポリマーポンプ22により最終重合機(第3の反応器)30に供給される。
【0040】
次に、最終重合機30について具体的に図1、図7、図8及び図9を用いて説明する。最終重合機(第3の反応器)30は、初期重合機(第2の反応器)20から得られる平均重合度が20〜70の低重合度ポリマー(プレポリマー)である粘度0.1〜45Pa・s程度のPBTから、一度に平均重合度が150〜200の高重合度ポリマーである粘度500〜2500Pa・s程度のPBT50を製造できるようにしたことにある。このように処理液の粘度は、0.1〜45Pa・sの低粘度から500〜2500Pa・s程度の高粘度の範囲に亘って使用できる高粘度液処理用の攪拌装置をもった反応器を用いなければならない。この反応器として最適な装置としては、特公平819241号公報に記載の連続攪拌装置(まゆ翼式重合機)をさらに改良し、これを用いて実現できるようにした特許文献2記載の装置が挙げられる。最終重合機(第3の反応器)30はまゆ形状の攪拌翼(図8に示すように、1枚または複数枚のまゆ形板状部材311と該まゆ形板状部材の先端部に、該まゆ形板状部材に直角に取り付けられた掻き取り板312とから構成される)31a、31bを90度の位相差をつけて、所定の間隔で外部動力源35に駆動される攪拌軸32a、32bに取り付け、この攪拌軸32a、32bを2本90度の位相差をつけて構成した二軸式の重合装置である。なお、一つのまゆ形状の攪拌翼を、複数枚のまゆ形板状部材311とその先端部に取り付けられた掻き取り板312とで構成した方が、ポリマーを効率よく攪拌することが可能となる。
【0041】
このときの反応条件としては、230℃〜255℃で、圧力は0.665kPa〜0.067kPaで反応させる。特にPBTの品質の評価項目の1つであるポリマー酸価の値を出来るだけ低くするには、反応温度を250℃以下(250℃を含む)にすることが望ましい。従って、最終重合機30の外周も、図7及び図8に示すように、ポリマーを反応温度に保つために、断面がまゆ形状をした熱媒ジャケット構造301になっている。3011は熱媒ジャケット301に対する熱媒入口、3012は該熱媒出口である。302はプレポリマー入口、303はポリマー出口である。304は蒸気出口である。321a、321bは攪拌軸32a、32bの各々の軸受である。
【0042】
そして、低粘度から高粘度の広い範囲に亘って縮重合させるため、プレポリマーの入口301に近い数段のまゆ形状の攪拌翼31a、31bについては、図1、図9及び図10に示すような約下半分に仕切板33a、33bを設け、滞留時間を増やすように構成した。しかし、単に仕切板33a及び33bを設けただけでは、0.1〜45Pa・s程度の粘度を有する低重合ポリマー(プレポリマー)が仕切板33a及び33bを越えることによって進むことになるので、抵抗が高すぎることになる。そのため、図9(a)に示すように、仕切板33a及び33bの底部に穴331を設けることによって低重合ポリマー(プレポリマー)が該穴331を通して進むことが可能となり、抵抗を幾分低くすることが可能となる。また、図9(b)に示すように、仕切板33a及び33bにスリット332を設けることによっても、低重合ポリマー(プレポリマー)が該スリット332を通して進むことが可能となり、抵抗を幾分低くすることが可能となる。さらに、好ましい実施形態は、図10(a)及び(b)に示すように、縮重合を促進するために仕切板33a及び33bに熱媒334を入口335から出口336に向って通すことにある。図10(b)に示す実施形態の場合、スリット332を設けるため、熱媒334の通路を管337によって接続する必要がある。
【0043】
このように、低重合プレポリマーは、仕切板33a及び33bで仕切られた領域で攪拌されて穴331又はスリット332及び仕切板33a及び33bを越えて進むことになり、滞留時間が確保されることになり、その後高重合のポリマーを得るための仕切板のない領域のまゆ形状攪拌翼に入れることが可能となる。勿論、入口側のまゆ形状攪拌翼の軸方向の間隔を狭めることによって低粘度のプレポリマーを持ち上げる量を増やして縮重合を増やすことが可能となる。逆に、出口側のまゆ形状攪拌翼の軸方向の間隔を広げることによって高粘度のポリマーに対応させることが可能となる。
【0044】
即ち、入口302より供給された低粘度のプレポリマーは、図8に示すように、お互いの攪拌翼31a、31bが互いに逆方向に中央から外側へ回転する構成のために外側に引き伸ばされながら、順次仕切板33a及び仕切板33bで仕切られた領域毎に滞留しながら、良好な表面更新作用を受け、プレポリマーの内部から揮発成分を蒸発させて反応が促進されて粘度が徐々に上昇する。続いて、粘度が徐々に上昇したポリマーは、図8に示すように、お互いの攪拌翼31a、31bが中央から上方を経由して外側へ回転する構成のために外側に引き伸ばされながら、良好な表面更新作用を受け、プレポリマーの内部から揮発成分を蒸発させて反応が促進されて500〜2500Pa・s程度の高粘度を有する高重合度のポリマー50が出口303から排出される。
【0045】
その結果、最終重合機30は一台の装置で縮重合が可能となり大幅な装置コストの低減が可能となる。第1〜第3反応器の滞留時間は4〜7.5時間であるが、品質面から、重合工程全体の滞留時間は2から4時間が最適な範囲である。また、滞留時間は必要に応じて、温度と圧力を調整することにより長くすることが可能であり、例えば生産量を減少させる場合に、品質の変動を最小限に保つために実施されることがある。
【0046】
以上説明したように、本実施の形態によれば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)の連続製造装置(システム)を構成する第1の反応器(エステル化反応を進行させる反応器)において、加熱手段による被処理液への熱交換効率を向上させて滞留時間の短縮を図ることができ、その結果、品質の良好なポリブチレンテレフタレートを効率よく連続生産できる。
【0047】
また、本実施の形態によれば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)の連続製造装置(システム)を構成する最終重合機(第3の反応器)を1台の装置で構成でき、装置コストの低減を図り、ポリブチレンテレフタレートの製造原価の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係るPBT(ポリブチレンテレフタレート)の連続製造装置の一例の全体の構成図の構成図である。
【図2】本発明に係る第1の反応器において複数の伝熱管を一重に配設した一実施形態のエステル化反応槽内の構造を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る第1の反応器の他の一実施形態を示す縦断面図である。
【図4】本発明に係る第1の反応器の他の一実施形態について被処理液の流動状態も含めて示す図であり、(a)平面図であり、(b)は縦断面図である。
【図5a】従来技術(特許文献2)における第1の反応器のエステル化反応槽内の構造を示す斜視図である。
【図5b】従来技術(特許文献2)における第1の反応器における加熱器の熱媒流路の模式図である。
【図6】本発明に係わる第2の反応器(初期重合槽)の一実施形態を示す縦断面図である。
【図7】本発明に係る一台で構成した最終重合機(第3の反応器)の一実施形態を示す図で、(a)は平面一部断面図、(b)は正面一部断面図である。
【図8】図7に示す最終重合機(第3の反応器)の一実施形態の側面断面図(仕切板図示省略)である。
【図9】(a)(b)は、各々仕切板の実施形態を示す側面図である。
【図10】(a)(b)は、各々仕切板の他の実施形態を示す側面図である。
【図11】本発明に係る第1の反応器の他の一実施形態を示す縦断面図である。
【図12】本発明に係る第1の反応器の他の一実施形態について被処理液の流動状態も含めて示す平面図である。
【符号の説明】
【0049】
1,1−2,1’,1’−2…第1の反応器、2…原料供給ライン、5…原料調整槽、10…エステル化反応槽、101…熱媒ジャケット、102…ジャケット熱媒用上部ノズル、103…ジャケット熱媒用下部ノズル、104…被処理液、105…原料入口、106…オリゴマー出口、107…BD供給口、108…触媒供給口、110,110’,110’’,110’’’…下部熱媒流出入ノズル(熱媒流出入部)、111a−d…単位下部ヘッダ管、111’,111’’,111’’’…下部ヘッダ管、112,112’,112’’,112’’’…伝熱管(連通管)、113a−d,113’a−d,113’’a−d,113’’’a−d…単位上部ヘッダ管、113’,113’’,113’’’…上部ヘッダ管、114,114’,114’’,114’’’…上部熱媒流出入ノズル(熱媒流出入部)、115a−d,116a−d,116’a−d,116’’a−d,116’’’a−d…間隙、115−2a−d,116−2a−d,116’−2a−d,116’’−2a−d,116’’’−2a−d…接続部材、120…攪拌翼、121…攪拌軸、122…攪拌駆動軸、140…加熱器、130…蒸気出口、12…気相部、13…連絡管、14…触媒投入ライン、15…オリゴマポンプ、20…初期重合槽(第2の反応器)、202…熱媒ジャケット、203…回転軸、204…駆動装置M、205…円筒状の仕切板、206…攪拌室(第1室)、207…攪拌室(第2室)、208…攪拌翼、209…攪拌翼、210、211…伝熱管、213,214…熱媒入口ノズル、212,215…熱媒出口ノズル、216…被処理液の入口ノズル、217…被処理液の出口ノズル、218…揮発物の出口ノズル、30…最終重合機(第3の反応器)、301…熱媒ジャケット、302…プレポリマー入口、303…ポリマー出口、304…蒸気出口、311…まゆ形板状部材、312…掻き取り板、321a、321b…軸受、31a、31b…まゆ形状の攪拌翼、32a、32b…攪拌軸、33a、33b…仕切板、331…穴、332…スリット、334…熱媒、335…熱媒入口、336…熱媒出口、337…管、40…BDタンク、43、44…BD循環ライン、45…新BD供給ライン、50…ポリマー、1001…特許文献2における第1の反応器、1010…特許文献2におけるエステル化反応槽、1110…特許文献2における下部熱媒流出入ノズル、1111…特許文献2における下部ヘッダ管、1112…特許文献2における伝熱管(連通管)、1113…特許文献2における上部ヘッダ管、1114…特許文献2における上部熱媒流出入ノズル、1140…特許文献2における加熱器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸とグリコール類とを含む被処理液を攪拌すると共に、気相又は液相熱媒の熱により加熱して前記被処理液をエステル化反応させてオリゴマーを製造する第1の反応器を少なくとも備え、該第1の反応器は、前記被処理液が供給される縦型円筒状のエステル化反応槽と、該エステル化反応槽内の被処理液を攪拌する攪拌手段と、前記熱媒を流通すべく、前記エステル化反応槽内上部に配置された上部ヘッダ管、前記エステル化反応槽内下部に配置された下部ヘッダ管、及び前記上部ヘッダ管と前記下部ヘッダ管に前記熱媒が流通可能に前記上部ヘッダ管と前記下部ヘッダ管とを接続した複数の連通管を含む加熱器と、を少なくとも備えた、ポリエステル系高分子の連続製造装置であって、
前記上部ヘッダ管は、前記エステル化反応槽の円周方向に沿って配置された複数の単位上部ヘッダ管から構成され、前記下部ヘッダ管は、前記エステル化反応槽の円周方向に沿って配置された複数の単位下部ヘッダ管から構成され、前記各連通管は、上下方向に対向した前記単位上部ヘッダ管及び前記単位下部ヘッダ管に接続されており、各単位上部ヘッダ管及び各単位下部ヘッダ管には、前記熱媒を流入又は流出させるための熱媒流出入部が形成されていることを特徴とするポリエステル系高分子の連続製造装置。
【請求項2】
前記複数の単位上部ヘッダ管及び前記複数の単位下部ヘッダ管のうち前記エステル化反応槽の円周方向に隣接するもの同士の間には間隙が形成されていることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記複数の単位上部ヘッダ管及び前記複数の単位下部ヘッダ管のうち前記エステル化反応槽の円周方向に隣接するもの同士は接続部材を介して接続されており、前記接続部材の熱膨張率は、前記複数の単位上部ヘッダ管及び前記複数の単位下部ヘッダ管の熱膨張率と同等であるかより小さいことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記複数の連通管は、前記エステル化反応槽の中心軸に沿って、前記エステル化反応槽の中心軸を中心とした複数の同心円の円周上に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の装置を用いたポリエステル系高分子の製造方法であって、前記エステル化反応槽にジカルボン酸とグリコール類とを含む被処理液を供給し、前記エステル化反応槽内部の温度を220℃〜250℃、前記エステル化反応槽内部の圧力を200Torr〜800Torrに設定して運転を行いオリゴマーを製造する工程を含むことを特徴とするポリエステル系高分子の製造方法。
【請求項6】
前記ジカルボン酸がテレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸であり、前記グリコール類が1,4−ブタンジオールを主成分とするグリコール類であることを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項1】
ジカルボン酸とグリコール類とを含む被処理液を攪拌すると共に、気相又は液相熱媒の熱により加熱して前記被処理液をエステル化反応させてオリゴマーを製造する第1の反応器を少なくとも備え、該第1の反応器は、前記被処理液が供給される縦型円筒状のエステル化反応槽と、該エステル化反応槽内の被処理液を攪拌する攪拌手段と、前記熱媒を流通すべく、前記エステル化反応槽内上部に配置された上部ヘッダ管、前記エステル化反応槽内下部に配置された下部ヘッダ管、及び前記上部ヘッダ管と前記下部ヘッダ管に前記熱媒が流通可能に前記上部ヘッダ管と前記下部ヘッダ管とを接続した複数の連通管を含む加熱器と、を少なくとも備えた、ポリエステル系高分子の連続製造装置であって、
前記上部ヘッダ管は、前記エステル化反応槽の円周方向に沿って配置された複数の単位上部ヘッダ管から構成され、前記下部ヘッダ管は、前記エステル化反応槽の円周方向に沿って配置された複数の単位下部ヘッダ管から構成され、前記各連通管は、上下方向に対向した前記単位上部ヘッダ管及び前記単位下部ヘッダ管に接続されており、各単位上部ヘッダ管及び各単位下部ヘッダ管には、前記熱媒を流入又は流出させるための熱媒流出入部が形成されていることを特徴とするポリエステル系高分子の連続製造装置。
【請求項2】
前記複数の単位上部ヘッダ管及び前記複数の単位下部ヘッダ管のうち前記エステル化反応槽の円周方向に隣接するもの同士の間には間隙が形成されていることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記複数の単位上部ヘッダ管及び前記複数の単位下部ヘッダ管のうち前記エステル化反応槽の円周方向に隣接するもの同士は接続部材を介して接続されており、前記接続部材の熱膨張率は、前記複数の単位上部ヘッダ管及び前記複数の単位下部ヘッダ管の熱膨張率と同等であるかより小さいことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記複数の連通管は、前記エステル化反応槽の中心軸に沿って、前記エステル化反応槽の中心軸を中心とした複数の同心円の円周上に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の装置を用いたポリエステル系高分子の製造方法であって、前記エステル化反応槽にジカルボン酸とグリコール類とを含む被処理液を供給し、前記エステル化反応槽内部の温度を220℃〜250℃、前記エステル化反応槽内部の圧力を200Torr〜800Torrに設定して運転を行いオリゴマーを製造する工程を含むことを特徴とするポリエステル系高分子の製造方法。
【請求項6】
前記ジカルボン酸がテレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸であり、前記グリコール類が1,4−ブタンジオールを主成分とするグリコール類であることを特徴とする、請求項5記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−24087(P2009−24087A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188778(P2007−188778)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】
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