説明

ポリエステルポリオール、それを用いたポリウレタン及び硬質ポリウレタンフォーム

ポリウレタン、特に、硬質ポリウレタンフォームの原料ポリオールとして使用する際に、低粘度で取扱が容易であることに加えて、発泡剤、特に、HFC−245fa及び/またはHFC−365mfc等のHFC系発泡剤との相溶性が高いポリエステルポリオールを提供する。多価カルボン酸及びアルコールをエステル化反応させて得られるポリエステルポリオールであって、アルコールとして、1−ヒドロキシ−2−アセトキシブタン、1−アセトキシ−2−ヒドロキシブタン及び1,2−ジアセトキシブタンからなる群から選ばれる少なくとも1種を2〜40重量%含有するものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ポリエステルポリオールに関する。詳しくは、ポリウレタン、特に、硬質ポリウレタンフォームに使用した際に、発泡剤との優れた相溶性を発現し低粘度で取扱いが容易なポリエステルポリオールに関するものである。
【背景技術】
硬質ポリウレタンフォームは優れた断熱特性を有することから、一般建造物の断熱材等に広く用いられている。硬質ポリウレタンフォームは、一般にポリイソシアネート成分液(以下、A液と略記)と、ポリエーテルポリオール及び/またはポリエステルポリオール、発泡剤、さらに必要に応じて触媒や整泡剤等を混合した混合液(以下、B液と略記)を用意し、A液とB液を混合して、短時間で発泡、硬化させる方法で製造される。このためポリエステルポリオールにも、発泡剤との相溶性が高いことに加えて低粘度で取扱いが容易であることが求められる。
発泡剤としては、一般的に低沸点無極性有機溶媒が用いられ、具体的には、HCFC系発泡剤の他、ペンタン、シクロペンタン等の飽和炭化水素系溶剤が用いられている。また、用途や硬質ポリウレタンフォームの製造条件によっては、引火点が低く爆発性を有する飽和炭化水素系溶剤では実用上問題があり、HCFC系発泡剤が多用されている。
一方、オゾン層破壊が問題となって以来、それまで汎用的に用いられてきたCFC系発泡剤、特にCFC−11E等からオゾン破壊係数の小さいHCFC系発泡剤、特にHCFC−141bが現在は代替使用されている。しかしこのHCFC−141bもオゾン破壊係数がゼロではなく、2003年末以降、使用が制限される予定である。HCFC−141bの代替品としては、HFC系発泡剤、特にHFC−245fa、HFC−365mfcが想定されている。
現在および将来使用が想定される発泡剤を用いた場合の共通の問題点として、B液の主成分であるポリエーテルポリオール及び/またはポリエステルポリオールからなるポリオール成分とこれらの発泡剤との相溶性が悪いことが挙げられる。特に、HCFC系発泡剤の代替品として想定されているHFC−245fa、HFC−365mfc等のHFC系発泡剤との相溶性の悪さが、今後大きな問題となる。
また、B液の均一安定化を図るために、一般的に整泡剤として、界面活性剤、特にノニオン系界面活性剤を添加することが広く行われているが、その効果は十分とは言えない。また、相溶性を向上させるある種の界面活性効果を有する相溶化剤が、近年種々提案され始めている。しかしながら、これらの相溶化剤は、通常水酸基を持たない化合物が殆どである。従って、たとえB液の補助成分として、上記の発泡剤との相溶性向上に寄与したとしても、ウレタン化反応には供しないため硬質ポリウレタンフォーム中にそのまま存在し、その物性、特に強度や耐熱性などを著しく悪化させる場合がある。
従って、発泡剤とB液との相溶性の低さを解決するためには、相溶性の向上と共に分子内に水酸基を有したポリオールとしても機能する化合物であることが、実用上極めて重要と考えられる。
ポリエステルポリオール、特に芳香族ポリエステルポリオールは、得られる硬質ポリウレタンフォームの耐熱性の向上等を目的として、ポリエーテルポリオールと併用されることがよくある。しかしながら、芳香族ポリエステルポリオールは、一般的には粘度が高いために取扱が困難であったり、発泡剤との相溶性が低かったりするため、発泡剤とB液との相溶性を満たす範囲でB液中に必要量を配合することが困難であり、実用上種々の課題を抱えていた。
一方、相溶性を含めてポリエステルポリオールの物性を向上させるために、ジオール、トリオール等原料のアルコールを選択することも有効であり、特に、相溶性向上のためには、アルコールの全量または一部を1,2−ブタンジオール(以下、1,2−BGと略記)とすることが効果的である。しかしながら、1,2−BGを用いた場合においても、得られたポリエステルポリオールの低粘度化には限界があり、通常汎用的に用いられている水酸基価が250(mgKOH/g)付近のポリエステルポリオールでは2万mPa・s(25℃)以下の粘度のものを合成することは困難であった。このことはB液を調整する際に十分満足され得るものではない。
従って、発泡剤との相溶性が良くかつ粘度の低い新規なポリエステルポリオールがあれば、ポリオール成分の一部として適当量用いることにより、均一安定性の良いB液が得られ、ひいてはB液の各成分の配合割合の自由度を高めることが可能であり、更には優れた物性を有する硬質ポリウレタンフォームを得ることができる。
【発明の開示】
これらの課題を解決すべく、本発明者らが検討した結果、ポリエステルポリオールの製造原料であるアルコールとして、1−ヒドロキシ−2−アセトキシブタン(以下、1,2−HABと略記)、1−アセトキシ−2−ヒドロキシブタン(以下、1,2−AHBと略記)及び1,2−ジアセトキシブタン(以下、1,2−DABと略記)からなる群から選ばれる少なくとも1種を特定量含有する混合物を用いることで、発泡剤との相溶性が高く、且つ低粘度のポリエステルポリオールが得られることを見いだし、本発明に至った。得られたポリエステルポリオールは、従来汎用的に用いられているポリエステルポリオールと同様に、ポリウレタンの一構成成分としてポリウレタンの分子内に組み込まれるため、ポリウレタンの物性を損なうことなく上記の特性を発揮することができる。
即ち、本発明は、以下を特徴とする要旨を有するものである。
(1)多価カルボン酸及びアルコールをエステル化反応させて得られるポリエステルポリオールであって、アルコールとして、1−ヒドロキシ−2−アセトキシブタン、1−アセトキシ−2−ヒドロキシブタン及び1,2−ジアセトキシブタンからなる群から選ばれる少なくとも1種を2〜40重量%含有するものを用いることを特徴とするポリエステルポリオール。
(2)アルコールが、1,2−ブタンジオールと、1−ヒドロキシ−2−アセトキシブタン、1−アセトキシ−2−ヒドロキシブタン及び1,2−ジアセトキシブタンからなる群から選ばれる少なくとも1種と、を含有する混合物であって、該混合物の1,2−ブタンジオールの含有量が60〜98重量%である混合物である、ポリエステルポリオール。
(3)混合物が、1,3−ブタジエンと酢酸とを分子状酸素及びパラジウム系触媒の存在下にアセトキシ化反応させ、得られたジアセトキシブテン類及びモノアセトキシブテン類等の反応生成物を貴金属触媒の存在下水素添加して、次いで得られたジアセトキシブタン類及びモノアセトキシブタン類等の反応生成物を固体酸触媒の存在下に加水分解し酢酸と水を留去した後に蒸留により分離して得られるものである、上記(2)に記載のポリエステルポリオール。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリエステルポリオールを含むポリオールとイソシアネート化合物とを反応させてなることを特徴とするポリウレタン。
(5)上記(4)に記載のポリウレタンを用いてなる硬質ポリウレタンフォーム。
(6)更に、オゾン破壊係数が0.8以下の発泡剤を含有してなる上記(5)に記載の硬質ポリウレタンフォーム。
(7)発泡剤がHFC−245fa及び/またはHFC−365mfcである上記(6)に記載の硬質ポリウレタンフォーム。
【発明の効果】
本発明によれば、ポリウレタン、特に、硬質ポリウレタンフォームの原料ポリオールとして、低粘度で取扱が容易であることに加えて、発泡剤、特に、HFC−245fa及び/またはHFC−365mfc等のHFC系発泡剤との相溶性が高いポリエステルポリオールを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明に於けるポリエステルポリオールは、好適には、ポリウレタン、特に、硬質ポリウレタンフォームに使用されるポリエステルポリオールであって、多価カルボン酸とアルコールから得られるポリエステルポリオールである。
<多価カルボン酸>
本発明における多価カルボン酸としては、ジまたはトリカルボン酸が挙げられる。好ましくは、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の芳香族ジまたはトリカルボン酸及びこれらの酸無水物が挙げられる。これらのうち、特に好ましくは、フタル酸、無水フタル酸またはテレフタル酸が挙げられる。
また、これらの芳香族カルボン酸類は、メタノール、エタノール、2−エチルヘキサノール等の炭素数が1〜8のモノアルコールでエステル化されたもの、例えばジメチルテレフタル酸等を用いても構わない。
更には、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸をこれら芳香族カルボン酸類に混合したり、場合によっては単独で用いても構わない。
<アルコール>
・1,2−HAB、1,2−AHB及び1,2−DABからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するアルコール
本発明において出発原料として用いるアルコールは1,2−HAB、1,2−AHB及び1,2−DABからなる群から選ばれる少なくとも1種を2〜40重量%含有するものである。
1,2−HAB、1,2−AHB及び1,2−DABからなる群から選ばれる少なくとも1種の含有量は、好ましくは、5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上であり、好ましくは35重量%以下、更に好ましくは30重量%以下である。この量が少なすぎると、ポリエステルポリオールの粘度を低下させる効果がほとんど認められない。一方、この量が多すぎると、ポリエステルポリオールを合成する際に、出来上がったポリエステルポリオール中の水酸基が著しく減少し、更に用いる多価カルボン酸との使用比率によっては、水酸基の全く存在しない化合物、すなわちポリオールではないものしか得られない場合がある。この様な傾向を示す範囲において得られたポリエステルポリオールを用いると、それから更にポリイソシアネートとウレタン化反応して得られる硬質ポリウレタンフォームの強度や耐熱性等の性能に著しい悪影響を及ぼす恐れがある。
また、1,2−HAB、1,2−AHB及び1,2−DABのうち、1,2−DABの量は、この3種の合計量に対し、通常、1重量%以上、好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上で、通常、50重量%以下、好ましくは33重量%以下、更に好ましくは25重量%以下である。
このようなアルコールとしては、より具体的には、1,2−BGと、1,2−HAB、1,2−AHB及び1,2−DABからなる群から選ばれる少なくとも1種と、を含有する混合物であって、該混合物中の1,2−BGの含有量が、通常好ましくは60〜98重量%である混合物が用いられる。この混合物は、主に1,3−ブタジエンと酢酸とを分子状酸素及びパラジウム系触媒の存在下にアセトキシ化反応させ、得られたジアセトキシブテン類及びモノアセトキシブテン類等の反応生成物を貴金属触媒の存在下、水素添加して、次いで得られたジアセトキシブタン類及びモノアセトキシブタン類等の反応生成物を固体酸触媒の存在下に加水分解し酢酸と水を留去した後に蒸留により分離することにより得ることができる。つまり、1,3−ブタジエンと酢酸とを反応させて1,4−ブタンジオールを製造する際に同時に生成する副生成物として得ることができる。
本発明で使用するパラジウム系触媒としては、パラジウム金属又はその塩を単独で、或いは、助触媒としてビスマス、セレン、アンチモン、テルル、銅等の金属又はその塩と組み合わせて用いられる。触媒は、シリカ、アルミナ、活性炭等の担体に担持させて用いることが好ましい。
1,2−BGと、1,2−HAB、1,2−AHB及び1,2−DABからなる群から選ばれる少なくとも1種と、を含有する混合物には、1,2−BGが、通常、60重量%以上、98重量%以下含まれるのが好ましい。1,2−BGの含有量が少なすぎると、ポリエステルポリオールを合成する際に、出来上がったポリエステルポリオール中の水酸基が著しく減少し、更に用いる多価カルボン酸との使用比率によっては、水酸基の全く存在しない化合物、すなわちポリオールではないものしか得られない場合がある。この様な傾向を示す範囲において得られたポリエステルポリオールを用いると、それから更にポリイソシアネートとウレタン化反応して得られる硬質ポリウレタンフォームの強度や耐熱性等の性能に著しい悪影響を及ぼす恐れがある。一方、多すぎると、ポリエステルポリオールの粘度を低下させる効果がほとんど認められない。
従って、1,2−BGの含量は、混合物の総重量に対して、好ましくは65重量%以上、更に好ましくは70重量%以上であり、好ましくは95重量%以下、更に好ましくは90重量%以下の範囲である。
混合物には、1,2−BGと、1,2−HAB、1,2−AHB及び1,2−DABからなる群から選ばれる少なくとも1種以外に、酢酸、水、1,4−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールの酢酸エステル等が微量含まれていても構わない。
通常、混合物には、1,2−HAB、1,2−AHB及び1,2−DABからなる群から選ばれる少なくとも1種が2重量%以上、40重量%以下含まれるのが好ましい。1,2−HAB、1,2−AHB及び1,2−DABからなる群から選ばれる少なくとも1種の含有量が多すぎると、ポリエステルポリオールを合成する際に、出来上がったポリエステルポリオール中の水酸基が著しく減少し、更に用いる多価カルボン酸との使用比率によっては、水酸基の全く存在しない化合物、すなわちポリオールではないものしか得られない場合がある。この様な傾向を示す範囲において得られたポリエステルポリオールを用いると、それから更にポリイソシアネートとウレタン化反応して得られる硬質ポリウレタンフォームの強度や耐熱性等の性能に著しい悪影響を及ぼす恐れがある。一方、少なすぎると、ポリエステルポリオールの粘度を低下させる効果がほとんど認められない。
従って、1,2−HAB、1,2−AHB及び1,2−DABからなる群から選ばれる少なくとも1種の含量は、混合物の総重量に対して、好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上であり、好ましくは35重量%以下、更に好ましくは30重量%以下の範囲である。
<その他のアルコール>
本発明におけるアルコールとしては、上記の混合物以外に、他のアルコールも併用することができる。通常、併用される他のアルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等のジオール及びグリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール等が挙げられる。
更に、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン/オキシプロピレン共重合グリコール及びポリテトラメチレンエーテルグリコール等の長鎖ポリエーテルポリオールを用いても構わない。
これらのアルコールを併用する場合において、上記の混合物の使用量が、原料のアルコール全量に対して少なすぎると、発泡剤に対する相溶性の向上及び低粘度化に著しい効果が認められなくなる。すなわち、上記の混合物の使用量は、原料のアルコール全量に対して、通常、40重量%以上、好ましくは50重量%以上である。ただし、ポリエステルポリオールに要求される低粘度化及び/または相溶性の特性バランスの程度によっては、前記範囲以下であっても構わない。
また、ポリエステルポリオールの粘度を下げる方法として、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2−エチルヘキサノール等のモノオールを用いることも出来るが、ポリエステルポリオールの合成において反応系外に留出して収率を悪化させたり、ポリウレタンの強度や耐熱性に悪影響を及ぼしたりする場合がある。
<エステル化触媒>
本発明におけるエステル化反応においては、通常、エステル化触媒が用いられる。
触媒としては、一般に酸触媒が用いられることが多い。ルイス酸としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート等のオルトチタン酸エステルや、ジエチル錫オキシド、ジブチル錫オキシド等の錫系化合物や、酸化亜鉛等の金属化合物が用いられる。
また、ルイス酸の他には、パラトルエンスルホン酸等のブレンステッド酸を用いても構わない。
一方、得られたポリエステルポリオールは、ポリイソシアネートとウレタン化反応してポリウレタンとなるが、この際、ポリエステルポリオールの合成に用いた触媒が、ウレタン化反応の反応挙動に影響を及ぼさない方が望ましい。上記のエステル化触媒の中では、オルトチタン酸エステルが好ましく、使用量についても、原料に用いる多価カルボン酸とアルコールの合計に対して、通常、1.0重量%以下、好ましく0.2重量%以下で、通常、0.01重量%以上、好ましくは0.03重量%以上である。
ポリウレタンの用途によっては、これらのエステル化触媒を用いないで反応しても構わない。
<反応条件>
本発明のポリエステルポリオールは、多価カルボン酸とアルコールに通常上記のエステル化触媒を添加して、エステル化反応させて得られる。
多価カルボン酸とアルコールの用いる割合については、目標とするポリエステルポリオールの水酸基価や粘度などによっても異なるが、多価カルボン酸のカルボキシル基1当量に対するアルコールの水酸基の当量として、通常、1.1当量以上、好ましくは1.3当量以上、更に好ましくは1.5当量以上で、通常、4.0当量以下、好ましくは3.0当量以下、更に好ましくは2.7当量以下である。特に、本発明の混合物をアルコールに対して40重量%以上用いる場合には、この値が小さすぎると、出来上がったポリエステルポリオール中の水酸基が著しく減少し、混合物中の1,2−HAB、1,2−AHB及び1,2−DABの含有量によっては、水酸基の全く存在しない化合物、すなわちポリオールではないものしか得られない場合がある。この様な傾向を示す範囲において得られたポリエステルポリオールを用いると、それから更にポリイソシアネートとウレタン化反応して得られる硬質ポリウレタンフォームの強度や耐熱性等の性能に著しい悪影響を及ぼす恐れがある。一方、この値が大きすぎると、ポリエステルポリオール中にエステル化反応に供されなかった、フリーのアルコールが多量に残ってしまう。この様にして得られたポリエステルポリオールを用いると、それから更にポリイソシアネートとウレタン化反応して得られる硬質ポリウレタンフォームの強度や耐熱性等の性能に、やはり著しい悪影響を及ぼす恐れがある。なお、アルコールとして、本発明の混合物を用いる場合には、1,2−HAB等のモノエステル類は水酸基として1当量、1,2−DABは水酸基として0当量に各々換算し、混合物の水酸基当量を推算した。
反応温度は、通常、150℃以上、好ましくは180℃以上で、通常、250℃以下、好ましくは230℃以下の範囲で行われる。例えば、180℃で反応を開始し、反応の進行に伴って200℃まで徐々に昇温するような条件であれば、反応を制御し易い。
反応圧力は常圧でも構わないが、副生する水及び微量の酢酸を系外に除去し、反応を速やかに完結させるために反応の進行に伴って、徐々に減圧すると良い。ただし、反応時の減圧度が不足するとエステル化反応の完結度が低くなり、酸価の高いポリエステルポリオールが生成してしまう。一方、反応時に過度に減圧してしまうと、1,2−BG、1,2−HAB、1,2−AHBなどのアルコール成分が系外に留去され収率を損なうばかりか、極端な場合においては、エステル化反応に供した1,2−HABや1,2−AHBなどのアセチル基が更にエステル交換反応によって脱酢酸を起こし、高分子量のポリエステルポリオールを形成してしまう。これらのことは、得られたポリエステルポリオールの粘度を著しく上昇させるばかりか、発泡剤に対する相溶性を低下させる傾向を示す場合もある。従って、適切な到達反応圧力は、反応温度によっても異なるが、例えば、反応温度が200℃の場合においては、圧力は、通常、20kPa以上、好ましくは30kPa以上で、通常、60kPa以下、好ましくは50kPa以下である。但し、目標とするポリエステルポリオールの粘度や水酸基価、用いる混合物の使用量、混合物中の1,2−HAB、1,2−AHB及び1,2−DABからなる群から選ばれる少なくとも1種の含有量によっては、上記の圧力範囲以外の条件で反応を行っても構わない。
また、減圧する代わりに、トルエン、キシレン等の有機溶媒を少量併用して、副生する水及び微量の酢酸を系外に共沸させて除去しても構わない。
反応の終点は、ポリエステルポリオールの場合には、通常、用いた多価カルボン酸の未反応のカルボキシル基の量で決定する。一方、ポリウレタンの用途においては、ポリイソシアネートとのウレタン化反応に対して、酸の存在は反応性を低下させる等好ましくない場合が多い。従って、ポリエステルポリオールについても、未反応のカルボン酸の量、すなわち酸価は出来るだけ低い方が好ましい。硬質ポリウレタンフォームの用途において、酸価は、通常、10mgKOH/g以下、好ましくは5mgKOH/g以下、更に好ましくは3mgKOH/g以下である。また、更に厳しいウレタン化反応条件下では、1mgKOH/g以下が望まれる場合がある。
上記の様にして得られたポリエステルポリオールは、通常、用いた多価カルボン酸とアルコールからなる構造を有するエステル化合物と未反応のアルコールとからなる。本発明において得られるポリエステルポリオールでは、上記のエステル化合物の平均官能基数は、1,2−BGと、1,2−HAB、1,2−AHB及び1,2−DABからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する混合物と2価の多価カルボン酸のみで合成した場合では、通常、0.8以上、好ましくは1.1以上、更に好ましくは1.5以上である。エステル化合物の平均官能基数が小さすぎると、それから更にポリイソシアネートとウレタン化反応して得られるポリウレタンの重合度を低下させ、例えば、硬質ポリウレタンフォームの場合には、特に強度や耐熱性などを著しく悪化させる場合がある。
また、エステル化合物の平均官能基数を一定の目標値に保ち及び/または平均分子量を一定以下に保つには、エステル化反応中にエステル交換反応に伴って平衡状態にある1,2−HAB、1,2−AHB及び1,2−DABの酢酸エステルの酢酸を極力反応系外に留出させないことが重要である。酢酸の留出が多すぎると、エステル化合物の平均官能基数が当初の製品設計に対して異なったものになったり、平均分子量が大きくなりその結果得られるポリエステルポリオールの粘度が著しく大きくなったりし好ましくない。従って、エステル化反応中に系外に留出する酢酸の量は、1,2−HAB、1,2−AHB及び1,2−DABに結合している酢酸の合計量に対して、通常、30%以下、好ましくは20%以下、更に好ましくは10%以下である。但し、目標とするポリエステルポリオールの粘度や水酸基価、用いる混合物の使用量、混合物中の1,2−HAB、1,2−AHB及び1,2−DABの含有量によっては、上記の範囲を超えて酢酸を留去しても構わない。
なお、反応開始時には、生成するポリエステルポリオールの着色を防ぐために反応容器の空間部を窒素置換し、さらに反応液中の溶存酸素も除去することが好ましい。
また、反応終了の後に、適当な減圧条件下に、未反応のフリーのアルコールを系外に留去させて、ポリエステルポリオールの物性や性能を調節しても構わない。
<反応形式>
本発明におけるポリエステルポリオールの反応形式は、通常のバッチ設備あるいは連続設備で適用できるが、反応時間が長時間に渡ること、及び得られるポリエステルポリオールの粘度が原料に用いられたアルコールに比べてかなり高くなること等から、バッチ反応の方が好ましい。
<用途>
本発明により得られるポリエステルポリオールは、好適には、ポリオールとイソシアネート化合物とを反応させて得られるポリウレタン、特に、硬質ポリウレタンフォームに使用され、低粘度で取扱いが容易であることに加えて、オゾン破壊係数が0.8以下の発泡剤、特に今後用いられるHFC−245fa及び/またはHFC−365mfc等の発泡剤との相溶性が高いポリエステルポリオールとして有用である。
硬質ポリウレタンフォームは、ポリイソシアネート成分からなるA液と、ポリエーテルポリオール及び/またはポリエステルポリオール等からなるポリオール成分、発泡剤、触媒及び整泡剤、更に必要に応じてその他の添加剤、助剤を混合してなるB液とを、短時間で混合、発泡、硬化させる方法で製造される。
ポリイソシアネート成分としては、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する有機化合物であれば特に限定されるものではない。例えば、脂肪族系、脂環族系および芳香族系ポリイソシアネートまたはこれらの変性物が挙げられる。具体的には、脂肪族系及び脂環族系ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。芳香族系ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート及びポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート等が挙げられ、更にこれらのカルボジイミド変性物やプレポリマー等の変性物も包含される。
本発明における好ましいポリイソシアネートは、芳香族ポリイソシアネートまたはその変性物であり、特に好ましくは、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート及びこれらの変性物であり、単独でもそれらを混合して用いてもよい。
ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートとしては、NCO基含有率が通常、29〜32重量%、粘度が通常、250mPa・s(25℃)以下のものが使用される。
また、これらの変性物のうち、カルボジイミド変性物は、公知のリン系触媒等を用いてカルボジイミド結合を導入したものである。プレポリマーは、上記のポリイソシアネートとポリオールとを反応させ、末端にイソシアネート基を残したものである。その際用いるポリオールは、ポリウレタンを製造する際に使用するポリオールが通常使用できる。
また、これらのポリイソシアネートの他に、用途に応じて、添加剤、助剤をポリイソシアネート成分に混合して用いる場合がある。
例えば、B液との混合性を向上させる目的で、B液でも用いられる整泡剤を相溶化剤として併用する場合がある。その際には、通常、ノニオン系界面活性剤が好ましく、特にシリコーン系界面活性剤がよく用いられる。
また、難燃性の向上及び粘度の調整を目的として、難燃剤を併用する場合がある。硬質ポリウレタンフォームの用途においては、通常、クロロアルキルホスフェート類、例えば、トリス(ベータクロロエチル)ホスフェートやトリス(ベータクロロプロピル)ホスフェート等がよく用いられる。
上記以外の添加剤、助剤については、特に限定されるものではなく、通常の樹脂において物性向上や操作性向上等の目的で用いられるもので、ウレタン化反応に著しい悪影響を及ぼすものでなければ何を用いても構わない。
ポリオール成分としては、水酸基価が通常、200〜800、官能基数が通常、2〜8のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール等を用いることができ、また、これらを2種類以上混合して用いても構わない。ポリエーテルポリオールとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド及びテトラヒドロフラン等の単独または併用によるアルキレンオキシドの重合物、ショ糖やソルビトール及びグリセリン等の3官能以上の多価アルコール類と上記アルキレンオキシドの付加物、脂肪族アミン及び芳香族アミンと上記アルキレンオキシドの付加物等が挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、前記した本発明の多価カルボン酸とアルコールをエステル化反応して得られたものを用いることができ、全ポリオール成分中、通常、2重量%以上、好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、通常、50重量%以下、好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下の範囲で用いるのが好ましい。
また、本発明のポリエステルポリオール以外に、よく用いられるポリエステルポリオールとしては、多価カルボン酸として無水フタル酸、テレフタル酸及びトリメリット酸等の芳香族ジまたはトリカルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等及びグリセリン、トリメチロールプロパン等の2〜3価のグリコールを単独または混合しエステル化反応により得られる、水酸基価が通常、200〜400、平均官能基数が通常、2〜3程度のポリエステルポリオールが挙げられる。
また、この他に、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール及びグリセリン等のアルコールやジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等、活性水素を1分子中に2個以上有する化合物も併用することができる。
発泡剤としては、オゾン破壊係数が通常、0.8以下の発泡剤、例えば、HCFC−141b、シクロペンタン及びn−ペンタン等の他に、特に今後用いられるHFC−245fa、HFC−365mfc等の発泡剤との相溶性が向上しているため好適に使用できる。また、これらの発泡剤を単独で使用しても、混合使用しても構わない。
触媒としては、通常のウレタンフォームの製造に使用される公知の触媒がいずれも使用できる。例えば、トリエチルアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン等のアミン系触媒の他に、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫等の錫系及びオクチル酸鉛等の鉛系等の金属系触媒等が挙げられる。
整泡剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系界面活性剤を用いることができるが、ノニオン系界面活性剤が好ましく、特にシリコーン系界面活性剤がよく用いられる。
その他、用途に応じて、様々な化合物が、添加剤、助剤として併せて用いられる場合がある。
例えば、代表的な添加剤として難燃剤が挙げられる。硬質ポリウレタンフォームの用途においては、通常、クロロアルキルホスフェート類、例えば、トリス(ベータクロロエチル)ホスフェートやトリス(ベータクロロプロピル)ホスフェート等がよく用いられる。
上記以外の添加剤、助剤については、特に限定されるものではなく、通常の樹脂において物性向上や操作性向上等の目的で用いられるもので、ウレタン化反応に著しい悪影響を及ぼすものでなければ何を用いても構わない。
【実施例】
以下に、実施例により本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。
<1,2−HAB、1,2−AHB及び1,2−DABからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する混合物>
1,2−HAB、1,2−AHB及び1,2−DABからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する混合物としては、下記の組成を有する3種のクルードの1,2−ブタンジオール(三菱化学株式会社製、以下、クルード1,2−BGと略記)を用いた。
3種のクルード1,2−BGの含有成分は次の通りである。
クルード1,2−BG▲1▼
1,2−BG 91.0重量%
1,2HAB及び1,2−AHB 2.4重量%
1,2−DAB 0.3重量%
その他 6.3重量%
クルード1,2−BG▲2▼
1,2−BG 75.0重量%
1,2−HAB及び1,2−AHB 19.8重量%
1,2−DAB 4.5重量%
その他 0.7重量%
クルード1,2−BG▲3▼
1,2−BG 76.0重量%
1,2−HAB及び1,2−AHB 18.7重量%
1,2−DAB 3.9重量%
その他 1.4重量%
<1,2−BG>
和光純薬工業株式会社製、試薬特級1,2−BGを用いた。試薬ラベルに記載された純度は98%以上であったが、自社にてガスクロマトグラフ法で分析した純度は99.5%以上であった。
<評価方法>
(1)酸価
JIS K15571970に準拠して測定した。
(2)水酸基価
JIS K15571970に準拠して測定した。
(3)粘度
JIS K15571970に準拠して回転粘度計(B型粘度計)を使用し、25℃で測定した。
(4)ポリエステルポリオールへの発泡剤の溶解度
300mlのビーカーにポリエステルポリオール100gを採り、室温・大気圧下の解放系において、30φの三方後退翼(実施例1〜4及び比較例1〜3においては30φ平羽根)で400rpmで攪拌しながら発泡剤を徐々に添加し、目視で30秒以内に透明な均一相を形成しうる最大添加量を測定して求めた溶解度をポリエステルポリオールと発泡剤の相溶性の指標とした。
なお、実施例1〜4及び比較例1〜3においては、直径30mmの平羽根を用いたため攪拌効率が低く、そのため気泡と白濁の区別がつき難くなり、HFC−365mfcの相溶性の判定が困難であった。そこで、実施例5〜14及び比較例4及び5においては、攪拌効率の良い直径30mmの三方後退翼を用いて正確を期した。
【実施例1】
攪拌機、還流冷却器、温度計、圧力計、加熱装置などを装備した、容積が1リットルのガラス製反応器に、無水フタル酸222g、クルード1,2−BG▲2▼299gを仕込み(仕込み当量比:水酸基/カルボキシル基=1.81)、反応器の空間部を窒素ガス置換した後、反応器内用物の加熱を開始した。反応器内温が180℃に達した時点で、触媒としてテトライソプロピルチタネート0.3gを反応器内に添加し、反応を開始した。その後、3時間かけて内温を200℃に昇温し、反応終了時までこの温度を保持した。一方、反応器内の圧力は、内温が180℃の時点から内温が200℃に達するまでは、97.3kPaに維持した。その後、2時間かけて徐々に減圧して、37.3kPaとし、反応が終了するまでこの圧力を保持した。反応進行中に、反応混合物の一部を反応器から抜き出して、抜き出した試料につき酸価を測定して、反応の進行状況を確認する指標とした。反応の終了は、酸価が3以下となった時点とし、反応容器に触媒を添加した時点から反応終了までの所用時間を反応時間とした(以下の実施例及び比較例において同じ)。このときの反応時間は7.5時間であった。反応終了後、加熱を停止して100℃付近まで冷却し、反応生成物を抜き出し、抜き出した試料につき粘度、酸価及び水酸基価を測定した。また、得られたポリエステルポリオールに対する発泡剤(HFC−245fa、HFC−365mfc)の溶解度を測定した。
【実施例2】
実施例1に記載の例において、仕込み成分のクルード1,2−BG▲2▼299gの代わりに、クルード1,2−BG▲1▼275gを用いた外は、同例におけると同様の手順で反応させた(仕込み当量比:水酸基/カルボキシル基=1.87)。反応進行中に、反応混合物の一部を反応器から抜き出して、抜き出した試料につき、酸価を測定することによって反応完結を確認し、反応を終了した。このときの反応時間は7.5時間であった。反応生成物についての粘度、酸価、水酸基価及び発泡剤(HFC−245fa、HFC−365mfc)溶解度の測定結果を、それぞれ表−1に示した。
比較例1
実施例1に記載の例において、仕込み成分のクルード1,2−BG▲2▼299gの代わりに、試薬1,2−BG270gを用いた外は、同例におけると同様の手順で反応させた(仕込み当量比:水酸基/カルボキシル基=2.00)。反応進行中に、反応混合物の一部を反応器から抜き出して、抜き出した試料につき、酸価を測定することによって反応完結を確認し、反応を終了した。このときの反応時間は7.5時間であった。反応生成物についての粘度、酸価、水酸基価及び発泡剤(HFC−245fa、HFC−365mfc)溶解度の測定結果を、それぞれ表−1に示した。
【実施例3】
攪拌機、還流冷却器、温度計、圧力計、加熱装置などを装備した、容積が1リットルのガラス製反応器に、無水フタル酸222g、クルード1,2−BG▲2▼150g及びジエチレングリコール159gを仕込み(仕込み当量比:水酸基/カルボキシル基=1.91)、反応器の空間部を窒素ガス置換した後、反応器内用物の加熱を開始した。反応器内温が180℃に達した時点で、触媒としてテトライソプロピルチタネート0.3gを反応器内に添加し、反応を開始した。その後、3時間かけて内温を200℃に昇温し、反応終了時までこの温度を保持した。一方、反応器内の圧力は、内温が180℃の時点から内温が200℃に達するまでは、97.3kPaに維持した。その後、3時間かけて徐々に減圧して、25.3kPaとし、反応が終了するまでこの圧力を保持した。このときの反応時間は7.5時間であった。反応生成物についての粘度、酸価、水酸基価及び発泡剤(HFC−245fa、HFC−365mfc)溶解度の測定結果を、それぞれ表−1に示した。
比較例2
実施例3に記載の例において、仕込み成分のクルード1,2−BG▲2▼150gの代わりに、試薬1,2−BG135gを用いた外は、同例におけると同様の手順で反応させた(仕込み当量比:水酸基/カルボキシル基=2.00)。反応進行中に、反応混合物の一部を反応器から抜き出して、抜き出した試料につき、酸価を測定することによって反応完結を確認し、反応を終了した。このときの反応時間は7.5時間であった。反応生成物についての粘度、酸価、水酸基価及び発泡剤(HFC−245fa、HFC−365mfc)溶解度の測定結果を、それぞれ表−1に示した。
【実施例4】
攪拌機、還流冷却器、温度計、圧力計、加熱装置などを装備した、容積が1リットルのガラス製反応器に、テレフタル酸249g、クルード1,2−BG▲2▼299gを仕込み(仕込み当量比:水酸基/カルボキシル基=1.81)、反応器の空間部を窒素ガス置換した後、反応器内用物の加熱を開始した。反応器内温が180℃に達した時点で、触媒としてテトライソプロピルチタネート0.3gを反応器内に添加し、反応を開始した。その後、8時間かけて内温を200℃に昇温し、反応終了時までこの温度を保持した。一方、反応器内の圧力は、内温が180℃の時点から内温が200℃に達するまでは、97.3kPaに維持した。その後、2時間かけて徐々に減圧して、37.3kPaとし、反応が終了するまでこの圧力を保持した。このときの反応時間は17.5時間であった。反応生成物についての粘度、酸価、水酸基価及び発泡剤(HFC−245fa、HFC−365mfc)溶解度の測定結果を、それぞれ表−1に示した。
比較例3
実施例4に記載の例において、仕込み成分のクルード1,2−BG▲2▼299gの代わりに、試薬1,2−BG270gを用いた外は、同例におけると同様の手順で反応させた(仕込み当量比:水酸基/カルボキシル基=2.00)。反応進行中に、反応混合物の一部を反応器から抜き出して、抜き出した試料につき、酸価を測定することによって反応完結を確認し、反応を終了した。このときの反応時間は7.5時間であった。反応生成物についての粘度、酸価、水酸基価及び発泡剤(HFC−245fa、HFC−365mfc)溶解度の測定結果を、それぞれ表−1に示した。

【実施例5】
攪拌機、還流冷却器、温度計、圧力計、加熱装置などを装備した、容積が2リットルのガラス製反応器に、無水フタル酸458g、クルード1,2−BG▲3▼598gを仕込み(仕込み当量比:水酸基/カルボキシル基=1.77)、反応器の空間部を窒素ガス置換した後、反応器内用物の加熱を開始した。反応器内温が180℃に達した時点で、触媒としてテトライソプロピルチタネート0.5gを反応器内に添加し、反応を開始した。その後、3時間かけて内温を200℃に昇温し、反応終了時までこの温度を保持した。一方、反応器内の圧力は、内温が180℃の時点から内温が200℃に達するまでは、93.3kPaに維持した。その後、2.5時間かけて徐々に減圧して、33.3kPaとし、反応が終了するまでこの圧力を保持した。反応終了の判定及び反応終了後の操作は、実施例1と同様に行い、このときの反応時間は8時間であった。反応生成物についての粘度、酸価、水酸基価及び発泡剤(HFC−245fa、HFC−365mfc、HCFC141b及びシクロペンタン)溶解度の測定結果を、それぞれ表−2に示した。
また、反応終了に至るまでの間に系外に留去した酢酸の量を確認したところ、合計0.54gの酢酸が、留出液中に存在した。この量は、クルード1,2−BGに含まれるモノエステル体及びジエステル体のアセトキシ基に対応する酢酸の量の約0.8%である。なお、測定をより正確に行うために、減圧装置と反応器の間に、ドライアイスとアセトンで冷却された真空トラップを設けたが、その中には酢酸は存在しなかった。
【実施例6】
実施例5に記載の例において、仕込み成分を、無水フタル酸429g、クルード1,2−BG▲3▼623g及び最終到達圧力を44.0kPaと変えた外は、同例におけると同様の手順で反応させた(仕込み当量比:水酸基/カルボキシル基=1.97)。反応進行中に、反応混合物の一部を反応器から抜き出して、抜き出した試料につき、酸価を測定することによって反応完結を確認し、反応を終了した。このときの反応時間は8時間であった。反応生成物についての粘度、酸価、水酸基価及び発泡剤(HFC−245fa、HFC−365mfc、HCFC141b及びシクロペンタン)溶解度の測定結果を、それぞれ表−2に示した。
【実施例7】
実施例5に記載の例において、仕込み成分を、無水フタル酸439g、クルード1,2−BG▲1▼164g、クルード1,2−BG▲3▼450g及び最終到達圧力を38.7kPaと変えた外は、同例におけると同様の手順で反応させた(仕込み当量比:水酸基/カルボキシル基=1.95)。反応進行中に、反応混合物の一部を反応器から抜き出して、抜き出した試料につき、酸価を測定することによって反応完結を確認し、反応を終了した。このときの反応時間は8時間であった。反応生成物についての粘度、酸価、水酸基価及び発泡剤(HFC−245fa、HFC−365mfc、HCFC141b及びシクロペンタン)溶解度の測定結果を、それぞれ表−2に示した。
【実施例8】
実施例5に記載の例において、仕込み成分を、無水フタル酸459g、クルード1,2−BG▲1▼358g、クルード1,2−BG▲3▼239g及び最終到達圧力を42.7kPaと変えた外は、同例におけると同様の手順で反応させた(仕込み当量比:水酸基/カルボキシル基=1.88)。反応進行中に、反応混合物の一部を反応器から抜き出して、抜き出した試料につき、酸価を測定することによって反応完結を確認し、反応を終了した。このときの反応時間は8時間であった。反応生成物についての粘度、酸価、水酸基価及び発泡剤(HFC−245fa、HFC−365mfc及びHCFC141b)溶解度の測定結果を、それぞれ表−2に示した。
【実施例9】
実施例5に記載の例において、仕込み成分を、無水フタル酸428g、クルード1,2−BG▲1▼375g、クルード1,2−BG▲3▼250g及び最終到達圧力を44.0kPaと変えた外は、同例におけると同様の手順で反応させた(仕込み当量比:水酸基/カルボキシル基=2.11)。反応進行中に、反応混合物の一部を反応器から抜き出して、抜き出した試料につき、酸価を測定することによって反応完結を確認し、反応を終了した。このときの反応時間は8時間であった。反応生成物についての粘度、酸価、水酸基価及び発泡剤(HFC−245fa、HFC−365mfc、HCFC141b及びシクロペンタン)溶解度の測定結果を、それぞれ表−2に示した。
【実施例10】
実施例5に記載の例において、仕込み成分を、無水フタル酸397g、クルード1,2−BG▲1▼391g、クルード1,2−BG▲3▼261g及び最終到達圧力を48.0kPaと変えた外は、同例におけると同様の手順で反応させた(仕込み当量比:水酸基/カルボキシル基=2.38)。反応進行中に、反応混合物の一部を反応器から抜き出して、抜き出した試料につき、酸価を測定することによって反応完結を確認し、反応を終了した。このときの反応時間は8時間であった。反応生成物についての粘度、酸価、水酸基価及び発泡剤(HFC−245fa、HFC−365mfc、HCFC141b及びシクロペンタン)溶解度の測定結果を、それぞれ表−2に示した。
【実施例11】
実施例5に記載の例において、仕込み成分を、無水フタル酸482g、クルード1,2−BG▲1▼577g及び最終到達圧力を34.7kPaと変えた外は、同例におけると同様の手順で反応させた(仕込み当量比:水酸基/カルボキシル基=1.81)。反応進行中に、反応混合物の一部を反応器から抜き出して、抜き出した試料につき、酸価を測定することによって反応完結を確認し、反応を終了した。このときの反応時間は8時間であった。反応生成物についての粘度、酸価、水酸基価及び発泡剤(HFC−245fa、HFC−365mfc及びHCFC141b)溶解度の測定結果を、それぞれ表−2に示した。
【実施例12】
実施例5に記載の例において、仕込み成分を、無水フタル酸423g、クルード1,2−BG▲1▼628g及び最終到達圧力を44.9kPaと変えた外は、同例におけると同様の手順で反応させた(仕込み当量比:水酸基/カルボキシル基=2.24)。反応進行中に、反応混合物の一部を反応器から抜き出して、抜き出した試料につき、酸価を測定することによって反応完結を確認し、反応を終了した。このときの反応時間は8時間であった。反応生成物についての粘度、酸価、水酸基価及び発泡剤(HFC−245fa、HFC−365mfc、HCFC141b及びシクロペンタン)溶解度の測定結果を、それぞれ表−2に示した。
【実施例13】
実施例5に記載の例において、仕込み成分を、無水フタル酸489g、クルード1,2−BG▲1▼342g、クルード1,2−BG▲3▼228g及び最終到達圧力を33.3kPaと変えた外は、同例におけると同様の手順で反応させた(仕込み当量比:水酸基/カルボキシル基=1.69)。反応進行中に、反応混合物の一部を反応器から抜き出して、抜き出した試料につき、酸価を測定することによって反応完結を確認し、反応を終了した。このときの反応時間は8時間であった。反応生成物についての粘度、酸価、水酸基価及び発泡剤(HFC−245fa、HFC−365mfc、HCFC141b及びシクロペンタン)溶解度の測定結果を、それぞれ表−2に示した。
比較例4
実施例5に記載の例において、仕込み成分を、無水フタル酸559g、試薬1,2−BG509gと変えた外は、同例におけると同様の手順で反応させた(仕込み当量比:水酸基/カルボキシル基=1.50)。反応進行中に、反応混合物の一部を反応器から抜き出して、抜き出した試料につき、酸価を測定することによって反応完結を確認し、反応を終了した。このときの反応時間は8時間であった。反応生成物についての粘度、酸価、水酸基価及び発泡剤(HFC−245fa、HFC−365mfc、HCFC141b及びシクロペンタン)溶解度の測定結果を、それぞれ表−2に示した。
比較例5
実施例5に記載の例において、仕込み成分を、無水フタル酸528g、試薬1,2−BG523g及び最終到達圧力を37.3kPaと変えた外は、同例におけると同様の手順で反応させた(仕込み当量比:水酸基/カルボキシル基=1.63)。反応進行中に、反応混合物の一部を反応器から抜き出して、抜き出した試料につき、酸価を測定することによって反応完結を確認し、反応を終了した。このときの反応時間は8時間であった。反応生成物についての粘度、酸価、水酸基価及び発泡剤(HFC−245fa、HFC−365mfc、HCFC141b及びシクロペンタン)溶解度の測定結果を、それぞれ表−2に示した。
【実施例14】
攪拌機、還流冷却器、温度計、圧力計、加熱装置などを装備した、容積が2リットルのガラス製反応器に、コハク酸201g、テレフタル酸281g及びクルード1,2−BG▲3▼641gを仕込み(仕込み当量比:水酸基/カルボキシル基=1.73)、反応器の空間部を窒素ガス置換した後、反応器内用物の加熱を開始した。反応器内温が150℃に達した時点で、触媒としてテトライソプロピルチタネート0.5gを反応器内に添加し、反応を開始した。その後、8時間かけて内温を210℃に昇温し、反応終了時までこの温度を保持した。一方、反応器内の圧力は、内温が180℃の時点から内温が210℃に達するまでは、80.0kPaに維持した。その後、4時間かけて徐々に減圧して、40.0kPaとし、反応が終了するまでこの圧力を保持した。反応終了の判定及び反応終了後の操作は、実施例1と同様に行い、このときの反応時間は14時間であった。反応生成物についての粘度、酸価、水酸基価及び発泡剤(HFC−245fa、HFC−365mfc及びHCFC141b)溶解度の測定結果を、それぞれ表−2に示した。

表−1および表−2より次の事が明らかである。
(1)実施例と比較例の比較結果
アルコール中の1,2−HAB、1,2−AHB及び1,2−DABを合わせた含有量が、3〜24重量%である実施例の場合、比較例の0.5重量%未満の場合に比べ、粘度が低く、かつ発泡剤の溶解度が高いポリエステルポリオールが得られる。
(2)実施例1、2及び5〜13と比較例1、4及び5の比較結果
仕込み当量比(水酸基/カルボキシル基)または水酸基価が同レベルで比較すると、クルード1,2−BGに含まれる1,2−BGの含有量(純度)が、70重量%以上、95重量%以下の場合には純度99.5重量%以上の試薬特級の1,2−BGを原料にした場合と比べて、粘度が低く、かつ発泡剤の溶解度が高いポリエステルポリオールが得られる。
(3)実施例3と比較例2の比較結果
原料アルコールの一部にクルード1,2−BG以外のアルコール(この場合は、ジエチレングリコール)を用いても、粘度が低く、かつ発泡剤の溶解度が高いポリエステルポリオールが得られる。
(4)実施例4と比較例3の比較結果及び実施例14
原料芳香族カルボン酸としてフタル酸または無水フタル酸ではなく、テレフタル酸を用いても、同様に粘度が低く、かつ発泡剤の溶解度が高いポリエステルポリオールが得られる。
また、原料芳香族カルボン酸の一部を脂肪族カルボン酸(この場合はコハク酸)に置き換えても、粘度が更に低く、かつ発泡剤の溶解度が高いポリエステルポリオールが得られる。
【産業上の利用可能性】
本発明のポリエステルポリオールは、低粘度で取扱が容易であることに加えて、発泡剤、特に、HFC−245fa及び/またはHFC−365mfc等のHFC系発泡剤との相溶性が高いため、ポリウレタン、特に、硬質ポリウレタンフォームの原料ポリオールとして有用である。
なお、本発明の明細書の開示として、本出願の優先権主張の基礎となる日本特許願2002−313420号(2002年10月28日出願)の全明細書の内容をここに引用し取り込むものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価カルボン酸及びアルコールをエステル化反応させて得られるポリエステルポリオールであって、アルコールとして、1−ヒドロキシ−2−アセトキシブタン、1−アセトキシ−2−ヒドロキシブタン及び1,2−ジアセトキシブタンからなる群から選ばれる少なくとも1種を2〜40重量%含有するものを用いることを特徴とするポリエステルポリオール。
【請求項2】
アルコールが、1,2−ブタンジオールと、1−ヒドロキシ−2−アセトキシブタン、1−アセトキシ−2−ヒドロキシブタン及び1,2−ジアセトキシブタンからなる群から選ばれる少なくとも1種と、を含有する混合物であって、該混合物の1,2−ブタンジオールの含有量が60〜98重量%である混合物である、ポリエステルポリオール。
【請求項3】
混合物が、1,3−ブタジエンと酢酸とを分子状酸素及びパラジウム系触媒の存在下にアセトキシ化反応させ、次いで得られたジアセトキシブテン類及びモノアセトキシブテン類等の反応生成物を貴金属触媒の存在下水素添加して、次いで得られたジアセトキシブタン類及びモノアセトキシブタン類等の反応生成物を固体酸触媒の存在下に加水分解し酢酸と水を留去した後に蒸留により分離して得られるものである、請求項2に記載のポリエステルポリオール。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステルポリオールを含むポリオールとイソシアネート化合物とを反応させてなることを特徴とするポリウレタン。
【請求項5】
請求項4に記載のポリウレタンを用いてなる硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項6】
更に、オゾン破壊係数が0.8以下の発泡剤を含有してなる請求項5に記載の硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項7】
発泡剤がHFC−245fa及び/またはHFC−365mfcである請求項6に記載の硬質ポリウレタンフォーム。

【国際公開番号】WO2004/037890
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【発行日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−546492(P2004−546492)
【国際出願番号】PCT/JP2003/013783
【国際出願日】平成15年10月28日(2003.10.28)
【出願人】(000199795)川崎化成工業株式会社 (133)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】