説明

ポリエステルポリオールの製造方法

(a)以下の成分を含む反応混合物を調製する工程;
A:天然原料から回収され且つ少なくとも2個の酸基を有する少なくとも1種のカルボン酸、B:少なくとも1種の多価アルコール、C:少なくとも1種の有機ホスファイト化合物、D:少なくとも1種のルイス酸、
(b)前記反応混合物を少なくとも160℃の温度に加熱し、反応の過程で生じた水を除去する工程;
(c)1013mbar未満の圧力下で0.1〜25時間の範囲の時間、前記反応混合物を少なくとも210℃の温度に加熱する工程;
を含むポリエステルポリオールの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルポリオールの製造方法に関し、特に天然原料からのポリエステルポリオールの製造方法に関し、更にポリエステルポリオールに関する。本発明は更に、そのポリエステルポリオールの、明るい自然色及び良好な機械的性質を有するポリウレタンへの転化に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルポリオール等のポリヒドロキシ化合物はイソシアネートと反応して、その特有の機械的性質に応じて様々な用途を有するポリウレタンを生成する。ポリエステルポリオールは特に有利な性質を有するため、高品質のポリウレタン製品に使用される。問題となるポリウレタン特有の性質は、使用するポリエステルオールの性質に実質的に依存する。
【0003】
ポリウレタンの製造に特に重要な要件は、使用するポリエステルポリオールが低い酸価を有することである(非特許文献1:Ullmann’s Encyclopedia,Electronic Release, Wiley−VCH−Verlag GmbH, 2000,「ポリエステル」2.3章[Quality Specifications and Testing」)。末端酸基は末端ヒドロキシル基と比べてジイソシアネートとゆっくり反応するので、酸価は低くあるべきである。従って、高い酸価を有するポリエステルポリオールによれば、比較的低分子量のポリウレタンとなる。
【0004】
ポリウレタンの製造において高い酸価を有するポリエーテルポリオールを使用することに関する一つの問題は、多数の末端酸基とイソシアネートが反応して、二酸化炭素の脱離によってアミド結合が形成し得ることである。気体の二酸化炭素によって、不要な泡の形成及び不利な機械的特性となり得る。また、フリーのカルボキシル基は、ポリウレタン形成反応における触媒作用及び製造されるポリウレタンの加水分解安定性を低下させる。安定化剤を高含有量とすることでこの影響は改善することができるが、費用が増えるとともに他の望ましくない結果を引き起し得る。
【0005】
化学的構造の点から2種のポリエステルポリオール、即ち、ヒドロキシカルボン酸タイプ(ABポリステルポリオール)及びジヒドロキシジカルボン酸タイプ(AA−BBポリエステルポリオール)が存在する。
【0006】
前者は、例えば、ω−ヒドロキシカルボン酸の縮重合又はラクトンとして知られる環状エステルの開環重合によりたった1つのモノマーから製造される。AA−BBポリエステルタイプは、多官能性ポリヒドロキシ化合物(例えばジオール、トリオール又はポリオール)と複数の官能性カルボン酸、特にジカルボン酸(例えばアジピン酸又はセバシン酸)とを反応させることにより、2つの相補的なモノマーの縮重合により製造される。
【0007】
多官能性ポリヒドロキシ化合物及びジカルボン酸を縮重合してAA−BBタイプのポリエステルポリオールを工業的大規模で生成することは一般に160〜280℃の高温で行われる。この縮重合は溶媒を使用してもしなくても行うことができる。これら高温での縮重合の欠点は進行が比較的遅いことである。そのため、高温での縮重合を早めるためには、エステル化触媒が屡々使用される。この場合使用される慣用のエステル化触媒は、好ましくは有機金属化合物、例えばチタンテトラブトキシド、スズジオクトエート又はジブチルスズジラウレート、又は酸、例えば硫酸、p−トルエンスルホン酸、又は塩基、例えば水酸化カリウムやナトリウムメトキシドである。これらのエステル化触媒は、好ましくは均一系であり、通常、反応が終わった後は(ポリエステルポリオール)生成物中に残存する。
【0008】
ポリマー工業において天然原料を使用することはますます重要になってきている。その理由はその出発材料が時折極めて安価であり、場合によっては事実上無制限の体積で使用することができるからである。
【0009】
天然原料は、植物又は植物の組織(あるいは動物)を処理することにより得られるより特別な物質である。再生可能な資源に基づく原料は、多くの割合の炭素同位体14Cにより特徴づけられる。その測定により、再生可能な原料の割合の実験的決定が可能となる。再生可能な原料は、化学合成及び/又は石油処理によって得られる材料とは、均質性が低い点で(これらの組成は非常に広い範囲で変わり得る)異なる。
【0010】
天然原料の組成におけるこれらの相違及び分解生成物や不純物等の除去困難な付随物の存在により、更なる処理における問題が屡々生じるので、これらの材料の工業的使用が制限される。
【0011】
天然原料の組成の相違は、例えば、植物が成長する気候及び地域、収穫される時期、生物学的種と亜種との間の相違並びに天然原料を回収するのに使用される抽出方法の種類(押出、遠心分離、ろ過、蒸留、切断、プレス等)等の要素に依存する。
【0012】
天然原料から回収される出発材料の反応によりポリエステルポリオールを製造することは、特に例えば製靴業における(熱可塑性)ポリウレタンの製造にとって非常に興味深いものである。天然原料から得られる供給原料中に存在し得る不純物及び/又は分解生成物が原因で、これらから製造されるポリエステルポリオールは現在まで大規模な工業的使用が見出されていない。その理由は、不純物及び/又は官能基の欠損に由来する回収ポリエーテルポリオールの本質的な変色である。この本質的な変色は、これらのポリエステルポリオールをポリウレタンに工業的且つ実用的に転化することができないことを意味する。その生成物は通常暗色であるので、光学的利用を必要とする場合には使用することができない。液状ポリエステルポリオール等の技術的等級流体(technical grade fluid)は、場合によって不純物又は分解生成物が原因で望ましくない黄色味を有することが屡々ある。
【0013】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)の使用には、射出成形及び特に押出成形における良好な加工性のための前提条件として、ポリエステルポリオールの官能基数2を維持することが求められる。高官能性不純物の量がごく少量であっても、熱可塑性ポリウレタンに不都合な架橋が生じ得る。
【0014】
技術的等級流体はAPHA/HAZEN色調評価スキームに従って色で分類され得る。米国公衆衛生行政(APHA)による推奨がその名前の由来である。
【0015】
この色調評価スキームの原理は、濃度が段階的に異なる黄色標準溶液を用いる標準容器内での分析サンプルの視覚的な比較である。APHA−/HAZEN色数は、Allen Hazenによって1892年に提唱されたように、ヘキサクロロ白金(IV)酸カリウム及び塩化コバルト(II)の酸性溶液を使用する。そして、比較溶液には、その白金含有量(mg/l)(範囲は0〜600)に従って色数が割り当てられる。
【0016】
特許文献1(WO1992/00947)には、生成物の方の色を明るくする還元剤、例えば水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム及びナトリウムを添加することにより、オキシ炭化水素ポリオールをエステル化する方法が記載されている。いくつかのアルキルグルコシドの脂肪酸エステルを製造するための合成、並びに低級アルコールでの脂肪酸エステルのエステル交換及び環化も記載されている。時間とともに暗化する傾向にある得られたポリオール混合物をエステル化工程の前及び間に記載された方法では還元剤で処理する。エステル交換の前の更なる工程には、例えば、次亜リン酸イオンの存在下で170℃においてソルビトールのソルビタンへの環化が行われること含まれる。使用する次亜リン酸イオンの量は、ポリオール成分に対して0.2〜0.7質量%と規定されている。
【0017】
特許文献2(EP−A0572256)には、生分解性の高分子量脂肪族ポリエステルの製造が記載されている。例えば、溶融した脂肪族ポリエステルを、有機リン酸エステル、例えばトリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(モノ−及び/又はジノニルフェニル)ホスファイト及びトリイソデシルホスファイト、からなる群から選択され得るリン成分に加える。このリン含有成分は更に、熱安定性を向上させ、変色を防止し、粘度の変動を回避する安定化剤として作用することが述べられている。
【0018】
特許文献3(US4677154)には、変色が解消された熱可塑性ポリウレタンの製造が記載されている。特定の製造方法、及びホスファイトを含む様々な成分からなる特別な安定化剤パッケージ(BHT)を加えることにより、着色が少ないか又は明色の熱可塑性ポリウレタンの形態で反応生成物を製造することが可能となる。
【0019】
特許文献4(EP−A1195395)には、自色が改善された熱可塑性的に処理可能なポリウレタンエラストマーが記載されている。特別に置換されたペンタエリスリトールジホスファイトを使用することにより、自色を改善させることが可能となる。ペンタエリスリトールジホスファイトはポリウレタン製造の前又は間に加えられる。
【0020】
特許文献5(DE−A10121866)には、脂肪酸アルキルエステルとポリオールとの反応により明色の脂肪酸ポリオールエステルを製造する方法が記載されている。この反応は、還元剤およびアルカリ金属塩基の存在下で行われる。
【0021】
特許文献6(JP−A7309937)には、着色が少ないポリエステル及びその製造が記載されている。この製造方法は、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトを含む様々な安定化剤を使用している。
【0022】
特許文献7(WO2008/031592)には、ジアンヒドロヘキシトールを基礎とするポリエステルの製造方法が記載されている。この方法では、ジカルボン酸の中でもコハク酸、グルタル酸、アジピン酸又はセバシン酸が使用されている。好ましいアルコールは、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール及び/又はトリメチロールプロパンである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】WO1992/00947
【特許文献2】EP−A0572256
【特許文献3】US4677154
【特許文献4】EP−A1195395
【特許文献5】DE−A10121866
【特許文献6】JP−A7309937
【特許文献7】WO2008/031592
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】Ullmann’s Encyclopedia,Electonic Release, Wiley−VCH−Verlag GmbH,Weinheim,2000,”Polyesters”,section2.3 ”Quality Specifications and Testing”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
示した従来技術の方法のいずれについても更なる精製をすることなく、ポリウレタンへの転化に好適な明色ポリエステルポリオールとなる天然原料を基礎とするものではない。
【0026】
本発明の目的は、天然原料、特に天然のカルボン酸及び/又はポリオールを使用して、着色がわずかであり、特にポリウレタンを形成する反応に有利な影響を有するポリエステルポリオールを製造可能な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
驚くべきことに、有機ホスファイトを、天然材料から回収された少なくとも1種のジカルボン酸に添加し、明色のポリエステルポリオールを得るポリエステルポリオールの製造方法により上記目的が達成されることが見出された。これらのポリエステルポリオールは極小の(明色の)自色のポリウレタンに転化することができる。
【0028】
この熱可塑性ポリウレタンはまた高い透明性の点で際立っている。
【0029】
従って、本発明は、
(a)以下の成分を含む反応混合物を調製する工程;
A:天然原料から回収され且つ少なくとも2個の酸基を有する少なくとも1種のカルボン酸、
B:少なくとも1種の多価アルコール、
C:少なくとも1種の有機ホスファイト化合物、
D:少なくとも1種のルイス酸、
(b)前記反応混合物を少なくとも160℃の温度に加熱し、反応の過程で生じた水を除去する工程;
(c)1013mbar未満の圧力下で0.1〜25時間の範囲の時間、前記反応混合物を少なくとも210℃の温度に加熱する工程;
を含むポリエステルポリオールの製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】ポリウレタンの機械的特性に関するダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
減圧段階(工程c)の継続時間は通常1〜22時間であり、好ましくは5〜20時間である。
【0032】
少なくとも2個の酸基(カルボキシル基)を有する有機カルボン酸は、特定の処理方法により天然原料から回収することができる。例えば、ヒマシ油を、比較的長鎖のアルコール(1−又は2−オクタノール等)の存在下で高温において水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムで処理すると、反応条件によって他の生成物に加えて>99.5%の純度で重要な原料としてセバシン酸が得られる。セバシン酸(1,8−オクタンジカルボン酸)は脂肪族ジカルボン酸の同族列の1つである。
【0033】
コハク酸及び/又は2−メチルコハク酸もセバシン酸と同様に特に好適である。これらは、糖又はトウモロコシ(maize)等の天然原料から発酵によって得ることができる。
【0034】
本発明の方法の成分Aは、特に1種以上の、例えば2又は3種の、C2−C12−ジカルボン酸の群から選択される異なるカルボン酸を含んでいてよい。C2−C12−ジカルボン酸とは、脂肪族又は分枝状であり且つ2〜12個の炭素原子を有するジカルボン酸を意味する。成分Aは、C2−C14−ジカルボン酸、好ましくはC4−C12−ジカルボン酸、より好ましくはC6−C10−ジカルボン酸を含んでいてもよい。
【0035】
天然原料から回収される少なくとも1種のジカルボン酸は、更に、カルボン酸ジエステルとして又はカルボン酸無水物として存在していてもよい。
【0036】
ジカルボン酸(A)には、原理的には、脂肪族及び/又は芳香族ジカルボン酸が含まれる。本発明の特に好ましい実施の形態では、天然原料から回収されたジカルボン酸(A)は、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸及びコハク酸からなる群から選択される。本発明の方法における多価アルコール(B)は、特に、1,3−プロパンジオール、1,2−エタンジオール及びブタンジオール(特に、1,4−ブタンジオール)からなる群から選択される。本発明の更に好ましい実施の形態では、成分Aは、再生可能な原料から回収されたセバシン酸を含む。
【0037】
本発明のある実施態様では、成分Bは脂肪族C2−C6−ジオールである。有用な脂肪族C2−C6−ジオールとしては、特に、多価アルコール(B)、好ましくはジオール成分、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、3−オキサペンタン−1,5−ジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール及び3−メチル−1,5−ペンタンジオールが挙げられる。
【0038】
更なる実施態様では、2〜14個の炭素原子を有する脂肪族ジオール、特にC4−C12−ジオールを成分Bとして使用する。
【0039】
3個以上のOH基を有するアルコールも、ポリエステルアルコールの官能基数を増やすために使用することができる。3個以上のOH基を有するアルコールの例は、グリセロール、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールである。2個以上のヒドロキシル基を有するオリゴマー又はポリマー生成物も使用することができる。これらの例は、ポリテトラヒドロフラン、ポリラクトン、ポリグリセロール、ポリエーテルオール、ポリエステルオール又はα,ω−ジヒドロキシポリブタジエンである。
【0040】
1,3−プロパンジオールは、合成して製造された1,3−プロパンジオールを含んでいてもよいが、特に再生可能な原料から得られる1,3−プロパンジオール(「バイオベース1,3−プロパンジオール」)を含んでいてもよい。バイオベース1,3−プロパンジオールは、例えば、マイゼ(トウモロコシ)及び/又は糖から得られる。本発明の特に好ましい実施の形態では、成分Bは1,3−プロパンジオールを含むが、この1,3−プロパンジオールは再生可能な原料から回収されたものが好ましい。
【0041】
本発明の方法は、当業者に知られているあらゆる有機ホスファイト化合物(C)を使用することができる。POR3型有機ホスファイト化合物(Rは、直鎖状、分枝状及び/又は芳香族C1−C12基であってよい。)を使用することが好ましい。有機ホスファイトはホスホン酸のエステルである。市販されている有機ホスファイトの例は、Ciba Specially Chemicals(スイス)又はBASF SE(ドイツ、ルートヴィスハーフェン)社の製品Irgafos(R)類である。
【0042】
本発明の特に好ましい実施態様では、成分Cは、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)エチルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト又は三塩化リンと1,1’−ビフェニル及び2,4−ビス(tert−ブチル)フェノールとの反応生成物(Irgaphos(R)P−EPQ)からなる群から選択される少なくとも1種の有機ホスファイト化合物を含む。
【0043】
ホスファイト化合物は、(安定化剤の全量に対して)100〜10000ppm、特に200〜2000ppm、好ましくは500〜1000ppmの濃度で使用することができる。ホスファイト化合物は活性部位を基準として5〜1500ppm、特に10〜400ppm、より好ましくは20〜150ppmの濃度で使用することが好ましい。活性部位は、着色反応を防止する化学的部位である。この場合、活性部位はホスファイトのリン原子である。
【0044】
本発明の方法は、当業者に知られているルイス酸を使用することができる。ルイス酸は電子対受容体であり、電子対を受け取って共有結合を形成することができるものである。既知のルイス酸の例は、BF3、AlH3、SiF4、PF3、SnCl4、SO2+、SO3+、H+、Mg2+、Al3+、Cu2+、Hg+、Ti4+及びSn2+である。
【0045】
本発明の好ましい実施態様では、少なくとも1種のルイス酸は、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド、スズジオクトエート、ジブチルスズラウレート及び塩化スズからなる群から選択される。
【0046】
本発明の特別な実施の形態では、工程(a)における反応混合物の調製は、まず成分A、B及びDを混合し、次いで初めて成分Cを加えることにより行われる。成分Cは原理的には、ジカルボン酸の反応の開始前のいずれの時点においても反応混合物に添加して、ポリエステルポリオールを生成することができるが、通常はその添加は20℃〜120℃の温度で行う。
【0047】
本発明の方法は溶媒を使用しないで行うことが好ましい。
【0048】
本発明の方法は、APHA/HAZEN色数が低い特別なポリエステルポリオールを提供する。本発明の方法が行われた後には、そのポリエステルポリオールは10〜200のAPHA/HAZEN色数を有する。APHA/HAZEN色数は10〜195の間、特に10〜150、特に好ましくは150未満であることが好ましい。
【0049】
得られるポリエステルポリオールの酸価は、3gKOH/kg未満、好ましくは2gKOH/kg未満、特に1gKOH/kg未満であることが好ましい。酸価は、ポリエステルポリオールのフリーの有機酸の水準を決めるために用いられる。酸価は、例えば、1g(又は1kg)の量のサンプルを中和するのに必要なKOHの量mg(又はKOHのg)により決定される。
【0050】
ポリエステルポリオールを製造するための慣用の装置は当業者に知られている。
【0051】
本発明は更に、本発明の方法により得られるポリエステルポリオール生成物を含む。
【0052】
本発明の好ましい実施の形態は、成分Aとしてセバシン酸を使用する上記方法により得られるポリエステルポリオールを提供する。
【0053】
本発明は更に、本発明の方法に従って得られた(得られる)ポリエステルポリオールと1種以上の有機ジイソシアネート(又はポリイソシアネート)を反応させることにより熱可塑性ポリウレタンを製造する方法を提供する。
【0054】
ポリウレタンは原理的には既知の方法に従って、バッチ式又は連続式で、例えばワンショット法又はプレポリマー法によって反応押出機又はベルトプロセス(複段階プレポリマープロセス、例えばUS6790916参照)使用して、好ましくはワンショット法に従って製造することができる。これらの方法では、反応成分−ポリエステルオール、鎖延長剤、イソシアネート(表1参照)及び必要に応じて助剤及び添加剤(特にUV安定剤)−を相次いで又は同時に互いに混合可能であり、反応は直ちに起こる。
【0055】
上記助剤及び添加剤材料に関する更なる情報は、技術文献、例えば、「Plastics Additive Handbook」第5反、H.Zweifel ed,Hanser Publishers,Munich,2001;H.Saunder及びK.C.Frisch「High Polymers」,Volume XVI,Polyurethane,Parts1及び2,Verlag Interscience Publishers 1962及び1964;Taschenbuch fur Kunststoff−Additive by R.Gachter and H.Muller(Hanser Verlag Munich 1990)又はDE−A2901774にから得られる。
【0056】
ポリウレタンを製造するための装置は当業者に知られている。
【0057】
本発明の方法に従って得られるポリエステルポリオールから得られるポリウレタンは、特に熱可塑性ポリウレタンである。以下、熱可塑性ポリウレタンをTPUとも称する。
【0058】
本発明は更に、ポリウレタン(以下、Puとも称する)、特にPU軟質フォーム、Pu硬質フォーム、ポリイソシアヌレート(PIR)硬質フォーム、非発泡PU材料又はポリウレタン分散体の製造において、本発明の方法に従って得られるポリエステルポリオールを使用する方法を提供する。上記ポリウレタンは、とりわけ、マットレス、靴底、ガスケット、ホース、床張り材、枠材、コーティング剤、接着剤、封止剤、スキー板、自動車のシート、スタジアムの陸上競技用トラック、ダッシュボート、様々な成形体、埋込み用樹脂、自己支持性フィルム/シート、遷移、不織布及び/又はキャスト床の製造に有用である。
【0059】
本発明の方法に従って得られる熱可塑性ポリウレタンは、透明であり黄色度(YI)が20未満であり得る。黄色度とは一般に、透明プラスチックの色の測定に関連するパラメータである。
【0060】
ポリエステルポリオールをポリウレタンの製造に使用することは更に、(発泡)軟質フォーム及び/又は圧縮一体成形システムの製造に関する。
【0061】
本発明は更に、成形体、ホース、自己支持性フィルム/シート及び/又は繊維の製造において、本発明の方法に従って得られる熱可塑性ポリウレタンを使用する方法を提供する。
【0062】
本発明は更に、本発明の方法に基づく熱可塑性ポリウレタンから得られる成形体、自己支持性フィルム/シート、ホース又は繊維に関する。
【0063】
図1は、熱可塑性ポリウレタン[TPU]番号6、10及び11の実施例による熱可塑性ポリウレタンの機械的特性に関するダイアグラムを示している。このダイアグラムは、80℃の熱水に浸した日[d]に対する引張強度[MPa]の依存性を示している。
【0064】
この図は、本方法で有機ホスファイトを使用することにより、生成物の方では耐水性が喪失しないことを示している。
【実施例】
【0065】
色数は、Hach Lange GmbH製のLICO150色数測定機器を用いて測定した。使い捨て可能な丸型ガラスキュベット(直径11mm)に入れる前に、サンプルを熱キャビネット内で90℃に加熱し、次いで無泡でキュベット内に入れた(超音波浴を使用)。色の測定の結果は、ヨウ素色数として及び/又はHazen色数(APHA)として示すことができる。
【0066】
実施例1(比較例)
4754.2gのセバシン酸、2092.9gの1,3−プロパンジオール、1ppmのチタンテトラブトキシド及び5ppmのスズオクトエートを、容量12リットルの丸底フラスコに室温で導入した。混合物を撹拌しながら180℃まで徐々に加熱し、次いで180℃において3時間撹拌しながら放置した。このプロセスでは、生じた水を大気圧下で蒸留により除去した。
【0067】
その後、酸価が1mgKOH/g未満に達するまで、この混合物を真空内で220℃に加熱し、40mbarの真空下で220℃において放置した。得られた液状ポリエステルポリオールは以下の特性値を有していた:
水酸基価: 81.0mgKOH/g
酸価: 0.1mgKOH/g
水: 0.002(質量%)
粘度: 305mPa・s(75℃で)
色数: 422APHA/Hazen
【0068】
実施例2(比較例)
4754.2gのセバシン酸、2092.9gのバイオベース1,3−プロパンジオール(Dupont製)、1ppmのチタンテトラブトキシド及び5ppmのスズオクトエートを、容量12リットルの丸底フラスコに室温で導入した。混合物を撹拌しながら180℃まで徐々に加熱し、次いで180℃において3時間撹拌しながら放置した。このプロセスでは、生じた水を大気圧下で蒸留により除去した。
【0069】
その後、酸価が1mgKOH/g未満に達するまで、この混合物を真空内で220℃に加熱し、40mbarの真空下で220℃において放置した。得られた液状ポリエステルポリオールは以下の特性値を有していた:
水酸基価: 74.5mgKOH/g
酸価: 0.1mgKOH/g
水: 0.003(質量%)
粘度: 390mPa・s(75℃で)
色数: 600APHA/Hazen
【0070】
実施例3(比較例)
4627.6gのセバシン酸、2198.0gの1,3−プロパンジオール、1ppmのチタンテトラブトキシド及び5ppmのスズオクトエートを、容量12リットルの丸底フラスコに室温で導入した。混合物を撹拌しながら180℃まで徐々に加熱し、次いで180℃において3時間撹拌しながら放置した。このプロセスでは、生じた水を大気圧下で蒸留により除去した。
【0071】
その後、酸価が1mgKOH/g未満に達するまで、この混合物を真空内で220℃に加熱し、40mbarの真空下で220℃において放置した。得られた液状ポリエステルポリオールは以下の特性値を有していた:
水酸基価: 112.0mgKOH/g
酸価: 0.04mgKOH/g
水: 0.004(質量%)
粘度: 175mPa・s(75℃で)
色数: 380APHA/Hazen
【0072】
実施例4
4754.2gのセバシン酸、2092.9gの1,3−プロパンジオール、160ppmのIrgafos38(Ciba製)、1ppmのチタンテトラブトキシド及び5ppmのスズオクトエートを、容量12リットルの丸底フラスコに室温で導入した。混合物を撹拌しながら180℃まで徐々に加熱し、次いで180℃において3時間撹拌しながら放置した。このプロセスでは、生じた水を大気圧下で蒸留により除去した。
【0073】
その後、酸価が1mgKOH/g未満に達するまで、この混合物を真空内で220℃に加熱し、40mbarの真空下で220℃において放置した。得られた液状ポリエステルポリオールは以下の特性値を有していた:
水酸基価: 79.2mgKOH/g
酸価: 0.7mgKOH/g
水: 0.003(質量%)
粘度: 370mPa・s(75℃で)
色数: 260APHA/Hazen
【0074】
実施例5
4754.2gのセバシン酸、2092.9gの1,3−プロパンジオール、160ppmのIrgafos38(Ciba製)、1ppmのチタンテトラブトキシド及び5ppmのスズオクトエートを、容量12リットルの丸底フラスコに室温で導入した。混合物を撹拌しながら180℃まで徐々に加熱し、次いで180℃において3時間撹拌しながら放置した。このプロセスでは、生じた水を大気圧下で蒸留により除去した。
【0075】
その後、酸価が1mgKOH/g未満に達するまで、この混合物を真空内で220℃に加熱し、40mbarの真空下で220℃において放置した。得られた液状ポリエステルポリオールは以下の特性値を有していた:
水酸基価: 73.0mgKOH/g
酸価: 0.6mgKOH/g
水: 0.004(質量%)
粘度: 260mPa・s(75℃で)
色数: 195APHA/Hazen
【0076】
実施例6
4754.2gのセバシン酸、2092.9gの1,3−プロパンジオール、8000ppmのIrgafos38(Ciba製)、1ppmのチタンテトラブトキシド及び5ppmのスズオクトエートを、容量12リットルの丸底フラスコに室温で導入した。混合物を撹拌しながら180℃まで徐々に加熱し、次いで180℃において3時間撹拌しながら放置した。このプロセスでは、生じた水を大気圧下で蒸留により除去した。
【0077】
その後、酸価が1mgKOH/g未満に達するまで、この混合物を真空内で220℃に加熱し、40mbarの真空下で220℃において放置した。得られた液状ポリエステルポリオールは以下の特性値を有していた:
水酸基価: 73.7mgKOH/g
酸価: 0.1mgKOH/g
水: 0.002(質量%)
粘度: 380mPa・s(75℃で)
色数: 135APHA/Hazen
【0078】
実施例7
4754.2gのセバシン酸、2092.9gの1,3−プロパンジオール、2200ppmのIrgafosTNPP(Ciba製)、1ppmのチタンテトラブトキシド及び5ppmのスズオクトエートを、容量12リットルの丸底フラスコに室温で導入した。混合物を撹拌しながら180℃まで徐々に加熱し、次いで180℃において3時間撹拌しながら放置した。このプロセスでは、生じた水を大気圧下で蒸留により除去した。
【0079】
その後、酸価が1mgKOH/g未満に達するまで、この混合物を真空内で220℃に加熱し、40mbarの真空下で220℃において放置した。得られた液状ポリエステルポリオールは以下の特性値を有していた:
水酸基価: 77.4mgKOH/g
酸価: 0.55mgKOH/g
水: 0.002(質量%)
粘度: 380mPa・s(75℃で)
色数: 150APHA/Hazen
【0080】
実施例8
4754.2gのセバシン酸、2092.9gのバイオベース1,3−プロパンジオール(Dupont製)、800ppmのIrgafosTNPP(Ciba製)、1ppmのチタンテトラブトキシド及び5ppmのスズオクトエートを、容量12リットルの丸底フラスコに室温で導入した。混合物を撹拌しながら180℃まで徐々に加熱し、次いで180℃において3時間撹拌しながら放置した。このプロセスでは、生じた水を大気圧下で蒸留により除去した。
【0081】
その後、酸価が1mgKOH/g未満に達するまで、この混合物を真空内で220℃に加熱し、40mbarの真空下で220℃において放置した。得られた液状ポリエステルポリオールは以下の特性値を有していた:
水酸基価: 78.6mgKOH/g
酸価: mgKOH/g
水: 0.60(質量%)
粘度: 370mPa・s(75℃で)
色数: 190APHA/Hazen
【0082】
実施例9
4627.6gのセバシン酸、2198.0gの1,3−プロパンジオール、800ppmのIrgafos38(Ciba製)、1ppmのチタンテトラブトキシド及び5ppmのスズオクトエートを、容量12リットルの丸底フラスコに室温で導入した。混合物を撹拌しながら180℃まで徐々に加熱し、次いで180℃において3時間撹拌しながら放置した。このプロセスでは、生じた水を大気圧下で蒸留により除去した。
【0083】
その後、酸価が1mgKOH/g未満に達するまで、この混合物を真空内で220℃に加熱し、40mbarの真空下で220℃において放置した。得られた液状ポリエステルポリオールは以下の特性値を有していた:
水酸基価: 115.6mgKOH/g
酸価: 0.37mgKOH/g
水: 0.003(質量%)
粘度: 200mPa・s(75℃で)
色数: 128APHA/Hazen
【0084】
実施例10
4627.6gのセバシン酸、2198.0gの1,3−プロパンジオール、800ppmのIrgafosP−EPQ(Ciba製)、1ppmのチタンテトラブトキシド及び5ppmのスズオクトエート
水酸基価: 116.1mgKOH/g
酸価: 0.10mgKOH/g
水: 0.005(質量%)
粘度: 182mPa・s(75℃で)
色数: 237APHA/Hazen
【0085】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)を製造する一般的手順
2リットルのブリキバケツ内で、実施例又は比較例の表2の量のポリオールを、表2に示した添加剤KV1及びS1−S3と、80℃の温かいポリエステルポリオールに添加することにより混合した。その後、80℃まで混合物を加熱した後、MDI(4,4−メチルジイソシアネート)を表2のように加え、発熱反応の温度が110℃に上昇するまで混合物を撹拌した。次いで反応混合物を浅い皿に注ぎ、ホットプレート上で10分間125℃において熱制御した。その後、得られた皮状物を80℃において熱キャビネット内で15分間熱制御した。次いでこの皮状物を粒状化し、TPUの一般的な処理方法に従って2mm及び6mmの試験板を作った。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
【表3】

【0089】
硬度、引張強度、破断伸び、タング引裂抵抗、摩耗度及び密度はそれぞれ示した特定のDIN標準で測定した。
【0090】
1枚の図面を添付する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)以下の成分を含む反応混合物を調製する工程;
A:天然原料から回収され且つ少なくとも2個の酸基を有する少なくとも1種のカルボン酸、
B:少なくとも1種の多価アルコール、
C:少なくとも1種の有機ホスファイト化合物、
D:少なくとも1種のルイス酸、
(b)前記反応混合物を少なくとも160℃の温度に加熱し、反応の過程で生じた水を除去する工程;
(c)1013mbar未満の圧力下で0.1〜25時間の範囲の時間、前記反応混合物を少なくとも210℃の温度に加熱する工程;
を含むポリエステルポリオールの製造方法。
【請求項2】
工程(a)における反応混合物の調製を、まず前記成分A、B及びDを混合し、次いで初めて前記成分Cを加えることにより行う請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記成分Aは、C2〜C12ジカルボン酸の群からの1種以上のカルボン酸を含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記成分Aは、再生可能な原料から回収されたセバシン酸を含む請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記成分Bは、脂肪族C2〜C6ジオールを含む請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記成分Bは、1,3−プロパンジオール又は1,4−ブタンジオールを含む請求項1〜5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記成分Cは、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)エチルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト又は三塩化リンと1,1’−ビフェニル及び2,4−ビス(tert−ブチル)フェノールとの反応生成物からなる群から選択される少なくとも1種の有機ホスファイト化合物を含む請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載の方法により得られるポリエステルポリオール。
【請求項9】
再生可能な原料から回収されたセバシン酸を成分Aとして使用し、ジオールを成分Bとして使用する請求項8に記載のポリエステルポリオール。
【請求項10】
請求項1〜7の何れか1項に記載の方法により製造されたポリエステルポリオールを1種以上の有機ジイソシアネートと反応させることによりポリウレタンを製造する方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法により得られる熱可塑性ポリウレタン。
【請求項12】
請求項1〜7の何れか1項に記載の方法で製造されたポリエステルポリオールをポリウレタンの製造に使用する方法。
【請求項13】
請求項11に記載の熱可塑性ポリウレタンを、成形体、ホース、自己支持性フィルム/シート又は繊維の製造に使用する方法。
【請求項14】
請求項11に記載の熱可塑性ポリウレタンから製造された成形体、自己支持性フィルム/シート、ホース又は繊維。

【図1】
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【公表番号】特表2013−514406(P2013−514406A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543718(P2012−543718)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069749
【国際公開番号】WO2011/083000
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】