説明

ポリエステル樹脂組成物の製造方法

【課題】強度・色相・耐加水分解性が改善され、さらには遊離のイソシアネート化合物による臭いのないポリエステル樹脂組成物の製造方法および当該製造方法によって製造された樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、ポリエステル(A成分)、およびカルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を含む化合物(B成分)を含有する樹脂組成物を該樹脂組成物の融点未満の温度で加熱し、ポリエステル(A成分)の重合度を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強度・色相・耐加水分解性が改善され、さらには遊離のイソシアネート化合物による臭いのないポリエステル樹脂組成物の製造方法および当該製造方法によって製造された樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に熱可塑性ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレートは優れた力学特性、化学特性を有しており、繊維、フィルムなどの成型品として広く用いられている。これらを広範な用途で使用するためには、強度や耐衝撃性などに代表される各種機械物性において高度な物性を有していることが必須であるが、そのためには該ポリエステルの分子量を向上させる必要がある。通常、ポリエステルは溶融重縮合法によって製造されるが、分子量が増加するにつれて溶融粘度が高くなり、均一に攪拌することが困難となる、溶融状態での熱履歴によりポリエステルの着色が顕著となる、などの問題があった。そのため、高分子量ポリエステルは、融点より低い温度からガラス転移点より高い温度までの温度範囲内で固相加熱する方法により製造される(固相重合)。しかしながら、ポリエステルはその末端の酸性基の触媒作用により加水分解を受けやすく、そのために繊維化工程などの過熱条件下での物性の低下や長期使用における経時劣化が問題となっていた。
【0003】
また、芳香族ポリエステルなどの石油系由来の汎用性ポリマー繊維は石油などの限りある化石資源を原料としているため、近年、該化石資源の埋蔵残量が懸念されるだけでなく、焼却廃棄時に発生する二酸化炭素についても地球温暖化を誘因するものとして大きな社会問題となっている。したがって、新たな資源の探索・開発や、製品中の石油系由来の汎用性ポリマー含有比率を低減することが急務となっていることも事実である。
【0004】
このような状況の中で、植物由来成分より誘導される原料から合成されるポリ乳酸が注目を浴びている。ポリ乳酸は植物から抽出したでんぷんやセルロースを発酵することにより得られる乳酸を原料としたポリマーであり、植物由来ポリマーの中では、力学特性、耐熱性、コストのバランスが優れている。そして、これを利用した樹脂製品、繊維、フィルム、シート等の開発が行われている。しかしながら、ポリ乳酸繊維は上記のポリエチレンテレフタレートと同様に加水分解を受け易いため製品寿命が短く、用途展開に制約があるという問題がある。
【0005】
この問題を解決するため、特許文献1では、カルボジイミド化合物等を添加して耐加水分解性を向上させたポリ乳酸も提案されている。しかしながら用いられているカルボジイミド化合物を高分子化合物の末端封止剤として用いると、カルボジイミド化合物がポリ乳酸の末端に結合する反応に伴いイソシアネート基を有する化合物が遊離し、イソシアネート化合物の独特の臭いを発生し、作業環境を悪化させることが問題となっていた。
【0006】
また、ポリ乳酸においても機械物性の向上のためには高分子量化は必須であるが、上記のポリエチレンテレフタレートと同様に溶融重合では経時熱劣化およびそれに伴う着色が顕著であることから、特許文献2では、スズ触媒を用いて最終生成物を得る前に融点より低い温度で第1段の溶融重合を行い、ポリ乳酸をペレット状に成型し、それをさらに第2段の固相重合で最終重合物とする方法を提案している。しかしながらこの方法では固相重合時間が50時間と長時間となっており、生産性に問題があった。
【0007】
また、特許文献3では、カルボジイミド化合物を添加した後溶融混練を行うことにより高分子量ポリ乳酸を得る方法が提案されている。しかしながら、この方法ではカルボジイミド化合物を添加した後に高温の熱処理が必要であるため、得られるポリ乳酸の色相が悪化する、という問題があった。
【0008】
また、特許文献4、5では、カルボジイミド化合物を架橋剤として使用し、添加したのちに溶融混練のみを行う方法が提案されているが、この方法では熱処理時間が短いために所望の高い分子量を有するポリ乳酸を得ることが困難であるという問題があった。
【0009】
さらに、特許文献3〜5の方法では特許文献1の場合と同様、カルボジイミド化合物とポリ乳酸との反応に伴いイソシアネート基を有する化合物が遊離し、イソシアネート化合物の独特の臭いを発生し、作業環境を悪化させることが問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−191411号公報
【特許文献2】特許第2850776号公報
【特許文献3】特開2006−63111号公報
【特許文献4】特開2006−77126号公報
【特許文献5】特開2009−286999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、強度・色相・耐加水分解性が改善され、さらには遊離のイソシアネート化合物による臭いのないポリエステル樹脂組成物の製造方法および当該製造方法によって製造された樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、ポリエステルの末端に反応しても、イソシアネート化合物を遊離しない構造のカルボジイミド化合物および当該カルボジイミド化合物を含有し、強度・色相・耐加水分解性が改善されたポリエステル樹脂組成物の製造方法および当該製造方法によって製造された樹脂組成物について鋭意検討した。
【0013】
その結果、環状構造の中にカルボジイミド基を有する化合物は、ポリエステルの末端に反応してもイソシアネート化合物を遊離しないこと、当該カルボジイミド化合物を含有する樹脂組成物を該樹脂組成物の融点未満の温度で加熱し、ポリエステルの重合度を向上させることにより強度・色相・耐加水分解性が改善されたポリエステル樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
即ち、本発明の目的は、
ポリエステル(A成分)、およびカルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を含む化合物(B成分)を含有する樹脂組成物を該樹脂組成物の融点未満の温度で加熱し、ポリエステル(A成分)の重合度を向上させる、ポリエステル樹脂組成物の製造方法によって達成される。また本発明には、該製造方法により製造されたポリエステル樹脂組成物を包含する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、イソシアネート化合物を遊離させず、カルボジイミド化合物により、ポリエステルの末端を封止することができる。その結果、イソシアネート化合物による悪臭の発生を抑制することができ作業環境を向上させることができる。さらには、当該カルボジイミド化合物を含有する樹脂組成物を該樹脂組成物の融点未満の温度で加熱し、ポリエステルの重合度を向上させることにより強度・色相・耐加水分解性が改善されたポリエステル樹脂組成物を得ることができる。
【0016】
また、環状カルボジイミド化合物により、ポリエステルの末端を封止すると、ポリエステルの末端にイソシアネート基が形成され、そのイソシアネート基の反応により、ポリエステルの高分子量化が可能となる。また環状カルボジイミド化合物は、ポリエステル中の遊離単量体やその他酸性基を有する化合物を捕捉する作用も有する。さらに本発明によれば、環状カルボジイミド化合物は、環状構造を有することにより、線状カルボジイミド化合物に比較して、より温和な条件で、末端封止できる利点を有する。
【0017】
末端封止の反応機構における、線状カルボジイミド化合物と環状カルボジイミド化合物との相違点は以下に説明する通りである。
線状カルボジイミド化合物(R−N=C=N−R)を、カルボキシ基末端を有するポリエステルの末端封止剤として用いると以下の式で表されるような反応となる。式中Xはポリエステルの主鎖である。線状カルボジイミド化合物がカルボキシ基と反応することにより、ポリエステルの末端にはアミド基が形成され、イソシアネート化合物(RNCO)が遊離される。
【0018】
【化1】

【0019】
一方、環状カルボジイミド化合物を、カルボキシ基末端を有するポリエステルの末端封止剤として用いると以下の式で表されるような反応となる。環状カルボジイミド化合物がカルボキシ基と反応することにより、ポリエステルの末端にはアミド基を介してイソシアネート基(−NCO)が形成され、イソシアネート化合物が遊離されないことが分かる。
【0020】
【化2】

【発明を実施するための形態】
【0021】
<環状カルボジイミド化合物(B成分)>
本発明において、環状カルボジイミド化合物(B成分)は環状構造を有する。環状カルボジイミド化合物は、環状構造を複数有していてもよい。
環状構造は、カルボジイミド基(−N=C=N−)を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている。一つの環状構造中には、1個のカルボジイミド基のみを有するが、例えば、スピロ環など、分子中に複数の環状構造を有する場合にはスピロ原子に結合するそれぞれの環状構造中に1個のカルボジイミド基を有していれば、化合物として複数のカルボジイミド基を有していてよいことはいうまでもない。環状構造中の原子数は、好ましくは8〜50、より好ましくは10〜30、さらに好ましくは10〜15である。
【0022】
ここで、環状構造中の原子数とは、環構造を直接構成する原子の数を意味し、例えば、8員環であれば8、50員環であれば50である。環状構造中の原子数が8より小さいと、環状カルボジイミド化合物の安定性が低下して、保管、使用が困難となる場合があるためである。また反応性の観点よりは環員数の上限値に関しては特別の制限はないが、50を超える原子数の環状カルボジイミド化合物は合成上困難となり、コストが大きく上昇する場合が発生するためである。かかる観点より環状構造中の原子数は好ましくは、10〜30、より好ましくは10〜20の範囲が選択される。
【0023】
環状構造は、下記式(1)で表される構造であることが好ましい。
【化3】

【0024】
式中、Qは、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価の結合基である。ヘテロ原子とはこの場合、O、N、S、Pを指す。この結合基の価のうち2つの価は環状構造を形成するために使用される。Qが3価あるいは4価の結合基である場合、単結合、二重結合、原子、原子団を介して、ポリマーあるいは他の環状構造と結合している。
【0025】
結合基は、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基またはこれらの組み合わせであり、上記で規定される環状構造を形成するための必要炭素数を有する結合基が選択される。組み合わせの例としては、アルキレン基とアリーレン基が結合した、アルキレン−アリーレン基のような構造などが挙げられる。
結合基(Q)は、下記式(1−1)、(1−2)または(1−3)で表される2〜4価の結合基であることが好ましい。
【0026】
【化4】

【0027】
式中、ArおよびArは各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基である。
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基(2価)として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0028】
およびRは各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、およびこれらの組み合わせ、またはこれら脂肪族基、脂環族基と2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基の組み合わせである。
【0029】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂肪族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0030】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。シクロアルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。シクロアルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂環族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0031】
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これら芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0032】
およびXは各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。
【0033】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂肪族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0034】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂環族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0035】
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0036】
式(1−1)、(1−2)においてs、kは0〜10の整数、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0〜1の整数である。sおよびkが10を超えると、環状カルボジイミド化合物は合成上困難となり、コストが大きく上昇する場合が発生するためである。かかる観点より整数は好ましくは0〜3の範囲が選択される。なお、sまたはkが2以上であるとき、繰り返し単位としてのX、あるいはXが、他のX、あるいはXと異なっていてもよい。
【0037】
は、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。
【0038】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これら脂肪族基は置換基を含んでいてもよく、置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0039】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これら脂環族基は置換基を含んでいてもよく、置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリーレン基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0040】
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0041】
また、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXはヘテロ原子を含有していてもよい、また、Qが2価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXは全て2価の基である。Qが3価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが3価の基である。Qが4価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。
【0042】
本発明で用いる環状カルボジイミドとして、下記式(2)〜(4)で表される化合物が好ましく挙げられる。
【0043】
<環状カルボジイミド(2)>
【化5】

【0044】
式中、Qaは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。脂肪族基、脂環族基、芳香族基は、式(1)で説明したものと同じである。但し、式(2)の化合物においては、脂肪族基、脂環族基、芳香族基は全て2価である。Qaは、下記式(2−1)、(2−2)または(2−3)で表される2価の結合基であることが好ましい。
【0045】
【化6】

【0046】
式中、Ara、Ara、Ra、Ra、Xa、Xa、Xa、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)中のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但し、これらは全て2価である。
かかる環状カルボジイミド化合物(2)としては、以下の化合物が好ましく挙げられる。
【0047】
【化7】

【0048】
【化8】

【0049】
【化9】

【0050】
【化10】

【0051】
【化11】

【0052】
【化12】

【0053】
【化13】

【0054】
【化14】

【0055】
【化15】

【0056】
【化16】

【0057】
【化17】

【0058】
【化18】

【0059】
【化19】

【0060】
【化20】

【0061】
<環状カルボジイミド(3)>
【化21】

【0062】
式中、Qbは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基、またはこれらの組み合わせである3価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。Yは、環状構造を担持する担体である。脂肪族基、脂環族基、芳香族基は、式(1)で説明したものと同じである。但し、式(3)の化合物においては、Qbを構成する基の内一つは3価である。Qbは、下記式(3−1)、(3−2)または(3−3)で表される3価の結合基であることが好ましい。
【0063】
【化22】

【0064】
式中、Arb、Arb、Rb、Rb、Xb、Xb、Xb、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但しこれらの内の一つは3価の基である。
Yは、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーであることが好ましい。Yは結合部であり、複数の環状構造がYを介して結合し、式(3)で表される構造を形成している。かかる環状カルボジイミド化合物(3)としては、下記化合物が好ましく挙げられる。
【0065】
【化23】

【0066】
【化24】

【0067】
【化25】

【0068】
【化26】

【0069】
<環状カルボジイミド(4)>
【化27】

【0070】
式中、Qcは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである4価の結合基であり、ヘテロ原子を保有していてもよい。ZおよびZは、環状構造を担持する担体である。ZおよびZは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
脂肪族基、脂環族基、芳香族基は、式(1)で説明したものと同じである。但し、式(4)の化合物において、Qcは4価である。従って、これらの基の内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。Qcは、下記式(4−1)、(4−2)または(4−3)で表される4価の結合基であることが好ましい。
【0071】
【化28】

【0072】
Arc、Arc、Rc、Rc、Xc、Xc、Xc、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)の、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但し、Arc、Arc、Rc、Rc、Xc、XcおよびXcは、これらの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。
およびZは各々独立に、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーであることが好ましい。ZおよびZは結合部であり、複数の環状構造がZおよびZを介して結合し、式(4)で表される構造を形成している。
かかる環状カルボジイミド化合物(4)としては、下記化合物を好ましく挙げることができる。
【0073】
【化29】

【0074】
【化30】

【0075】
【化31】

【0076】
<環状カルボジイミド化合物の製造方法>
環状カルボジイミド化合物は従来公知の方法を組み合わせることにより製造することができる。例として、アミン体からイソシアネート体を経由して製造する方法、アミン体からイソチオシアネート体を経由して製造する方法、アミン体からトリフェニルホスフィン体を経由して製造する方法、アミン体から尿素体を経由して製造する方法、アミン体からチオ尿素体を経由して製造する方法、カルボン酸体からイソシアネート体を経由して製造する方法、ラクタム体を誘導して製造する方法などが挙げられる。
【0077】
また、本発明の環状カルボジイミド化合物は、以下の文献に記載された方法を改変、組み合わせすることにより製造することができる。
Tetrahedron Letters,Vol.34,No.32,515−5158,1993.
Medium−and Large−Membered Rings from Bis(iminophosphoranes):An Efficient Preparation of Cyclic Carbodiimides, Pedro Molina etal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.61,No.13,4289−4299,1996.
New Models for the Study of the Racemization Mechanism of Carbodiimides.Synthesis and Structure(X−ray Crystallography and 1H NMR) of Cyclic Carbodiimides, Pedro Molina etal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.43,No8,1944−1946,1978.
Macrocyclic Ureas as Masked Isocyanates, Henri Ulrich etal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.48,No.10,1694−1700,1983.
Synthesis and Reactions of Cyclic Carbodiimides,
R.Richteretal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.59,No.24,7306−7315,1994.
A New and Efficient Preparation of Cyclic Carbodiimides from Bis(iminophosphoranea)and the System BocO/DMAP,Pedro Molina etal.
【0078】
製造する化合物に応じて、適切な製法を採用すればよいが、例えば、(1)下記式(a−1)で表されるニトロフェノール、下記式(a−2)で表されるニトロフェノールおよび下記式(b)で表される化合物を反応させ、下記式(c)で表されるニトロ体を得る工程、
【化32】

【化33】

(2)得られたニトロ体を還元して下記式(d)で表わされるアミン体を得る工程、
【化34】

(3)得られたアミン体とトリフェニルホスフィンジブロミドを反応させ下記式(e)で表されるトリフェニルホスフィン体を得る工程、および
【化35】

(4)得られたトリフェニルホスフィン体を反応系中でイソシアネート化した後、直接脱炭酸させることによって製造したものは、本願発明に用いる環状カルボジイミド化合物として好適に用いることができる。
(上記式中、ArおよびArは各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基で置換されていてもよい芳香族基である。EおよびEは各々独立に、ハロゲン原子、トルエンスルホニル基およびメタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、p−ブロモベンゼンスルホニル基からなる群から選ばれる基である。Arは、フェニル基である。Xは、下記式(i−1)から(i−4)の結合基である。)
【0079】
【化36】

【0080】
【化37】

【0081】
【化38】

【0082】
【化39】

【0083】
<ポリエステル(A成分)>
本発明においてポリエステル(A成分)は、(イ)ジカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体と(ロ)ジオールあるいはそのエステル形成性誘導体、(ハ)ヒドロキシカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体、(ニ)ラクトンから選択された1種以上を重合してなる重合体または共重合体の末端の少なくとも1部がB成分で封止されたものである。上記(イ)ジカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0084】
また、蓚酸、コハク酸、アジピン酸、1,6−ヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
また、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、デカリン−2,6−ジカルボン酸、テトラリン−2,6−ジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0085】
また上記(ロ)ジオールあるいはそのエステル形成性誘導体としては、炭素数2から20個の脂肪族グリコール即ち、例えばエチレングリコール、ジエチレグリコール、1,3−トリメチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、ダイマージオールなど、あるいは分子量200から100000の長鎖グリコール、即ちポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリプロピレンングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの脂肪族ジオールあるいはそのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0086】
また、シクロヘキサン1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメチロール等の脂環式ジオールあるいはそのエスエテル形成性誘導体などが挙げられる。
また芳香族ジヒドロキシ化合物すなわちキシリレングリコール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン、ビスフェノールA,ビスフェノールS、ビスフェノールFなどの芳香環を含む芳香族ジオールあるいはそのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0087】
ポリエステル(A成分)は、主鎖が主として下記式(II)で表される繰り返し単位からなるポリエステルが好ましい。
【化40】

【0088】
式中、nは2から4の整数である。Arは、フェニレン基またはナフタレンジイル基が好ましい。Arは、特に1,4−フェニレン基、2,6−ナフタレンジイル基が好ましい。
ポリエステルの還元粘度は、好ましくは0.2〜1.5dl/g、より好ましくは0.3〜1.3dl/gである。
【0089】
上記(ハ)ヒドロキシカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体としては例えばグリコール酸、D−乳酸、L−乳酸、ラセミ乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、オリゴあるいはポリカプロラクトン及びこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0090】
上記ヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体のうちラクトンはポリエステルの製造に好適に適用されるが、かかるラクトン(ニ)としては、例えばグリコリド、D−ラクチド、L−ラクチド、メソラクチド、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−プロピオラクトン、ピバロラクトン、β−ベンジルマロラクトネート、γ−ブチロラクトン、1,4−ジオキサン−2−オン、ウンデカラクトン、1,4−ジオキセパン−2−オン、(R)−3−メチル−4−オキサ−6−ヘキサノリド、(S)−3−メチル−4−オキサ−6−ヘキサノリドなどを挙げることができる。さらにステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、安息香酸、tert−ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸などの単官能成分や、トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、没食子酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール等の三官能以上の多官能成分などを用いてもよい。
【0091】
具体的には、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ3−ヒドロキシ酪酸、ポリ4−ヒドロキシ酪酸、ポリ4−ヒドロキシ吉草酸、ポリ3−ヒドロキシヘキサン酸またはポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネートまたはポリシクロヘキサンジジメタノールシクロヘキサンジカルボキシレートなどの脂肪族ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリ1,4−メチロールシクロヘキサンテレフタレート、ポリエチレン2,6−ナフタレート、ポリブチレン2,6−ナフタレート、ポリトリメチレン2,6−ナフタレートなどの芳香族ポリエステルなどが挙げられ、これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
【0092】
上記B成分で封止するポリエステルは、従来公知のいずれの製造方法によって得られたものも本発明に適用できる。
これらのうち、環境保護等の観点からはヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体が好ましく、特にポリ乳酸が好ましく使用される。
【0093】
ここで、ポリ乳酸は、主鎖が主として下記式(I)で表される乳酸単位からなり、末端の少なくとも一部がB成分により封止されている。本明細書において「主として」とは、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは98〜100モル%の割合である。
【0094】
【化41】

【0095】
式(I)で表される乳酸単位には、互いに光学異性体であるL−乳酸単位とD−乳酸単位がある。ポリ乳酸の主鎖は主として、L−乳酸単位、D−乳酸単位またはこれらの組み合わせであることが好ましい。
【0096】
ポリ乳酸は、主鎖が主としてD−乳酸単位よりなるポリD−乳酸、主鎖が主としてL-乳酸単位よりなるポリL−乳酸が好ましい。主鎖を構成する他の単位の割合は、好ましくは0〜10モル%、より好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜2モル%の範囲である。
主鎖を構成する他の単位としては、ジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等由来の単位が例示される。
【0097】
ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。多価アルコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族多価アルコール類あるいはビスフェノールにエチレンオキシドが付加させたものなどの芳香族多価アルコール等が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸として、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸等が挙げられる。ラクトンとしては、グリコリド、ε−カプロラクトン、β-プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられる。
【0098】
ポリ乳酸の重量平均分子量は、成形品の機械物性および成形性を両立させるため、好ましくは10万〜50万、より好ましくは11万〜35万、さらに好ましくは12〜25万の範囲である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定、標準ポリスチレンに換算した値である。
【0099】
ポリ乳酸(A成分)が、ポリD−乳酸またはポリL−乳酸であり、ホモ相ポリ乳酸であるとき、示差走査熱量計(DSC)測定で、150〜190℃の間に結晶融解ピーク(Tmh)を有し、結晶融解熱(△Hmsc)が10J/g以上であることが好ましい。かかる結晶融点および結晶融解熱の範囲を満たすことにより耐熱性を高めることができる。
また、ポリ乳酸の主鎖は、ポリL−乳酸単位とポリD−乳酸単位とにより形成されたステレオコンプレックス相を含むステレオコンプレックスポリ乳酸であることが好ましい。ステレオコンプレックスポリ乳酸は、示差走査熱量計(DSC)測定で、190℃以上の結晶融解ピークを示すことが好ましい。
【0100】
ステレオコンプレックスポリ乳酸は、下記式(i)で規定されるステレオコンプレックス結晶化度(S)が90〜100%であることが好ましい。
S=〔ΔHms/(ΔHmh+ΔHms)〕×100 (i)
(但し、ΔHmsは、ステレオコンプレックス相ポリ乳酸の結晶融解エンタルピー、ΔHmhは、ポリ乳酸ホモ相結晶の融解エンタルピーを表す。)
【0101】
ステレオコンプレックスポリ乳酸は、結晶性を有していることが好ましく、広角X線回折(XRD)測定による回折ピークの強度比によって、下記式(ii)で定義されるステレオコンプレックス結晶化率(Sc)が50%以上であることがより好ましい。
Sc(%)=〔ΣISCi/(ΣISCi+IHM)〕×100 (ii)
(ここで、ΣISCi=ISC1+ISC2+ISC3、ISCi(i=1〜3)はそれぞれ2θ=12.0°,20.7°,24.0°付近の各回折ピークの積分強度、IHMは2θ=16.5°付近に現れるホモ相結晶に由来する回折ピークの積分強度IHMを表す。)
【0102】
ステレオコンプレックス結晶化率(Sc)は、好ましくは50〜100%、さらに好ましくは60〜95%、とりわけ好ましくは65〜90%の範囲が選択される。即ち、ポリ乳酸が上記範囲のScを有することにより、成形品の耐熱性、耐湿熱性をより好適に満たすことができる。
【0103】
ステレオコンプレックスポリ乳酸の結晶化度、とりわけXRD測定による結晶化度は、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは5〜60%、さらに好ましくは7〜50%、特に好ましくは10〜45%の範囲である。
【0104】
ステレオコンプレックスポリ乳酸の結晶融点は、好ましくは190〜250℃、より好ましくは200〜230℃の範囲である。ステレオコンプレックスポリ乳酸のDSC測定による結晶融解エンタルピーは、好ましくは20J/g以上、より好ましくは20〜80J/g、さらに好ましくは30〜80J/gの範囲である。ステレオコンプレックスポリ乳酸の結晶融点が190℃未満であると、耐熱性が悪くなる。また250℃を超えると、250℃以上の高温において成形することが必要となり、樹脂の熱分解を抑制することが困難となる場合がある。
【0105】
ステレオコンプレックスポリ乳酸において、ポリD−乳酸とポリL−乳酸の重量比は90/10〜10/90であることが好ましい。より好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは30/70〜70/30、とりわけ好ましくは40/60〜60/40の範囲であり、理論的には1/1にできるだけ近い方が好ましい。
【0106】
ステレオコンプレックスポリ乳酸の重量平均分子量は、好ましくは10万〜50万、より好ましくは11万〜35万、さらに好ましくは12〜25万の範囲である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定、標準ポリスチレンに換算した値である。
【0107】
ポリL−乳酸およびポリD−乳酸は、従来公知の方法で製造することができる。例えば、L−またはD−ラクチドを金属含有触媒の存在下、開環重合することにより製造することができる。また金属含有触媒を含有する低分子量のポリ乳酸を、所望により結晶化させた後、あるいは結晶化させることなく、減圧下または常圧から加圧化、不活性ガス気流の存在下、あるいは非存在下、固相重合させ製造することもできる。さらに有機溶媒の存在または非存在下、乳酸を脱水縮合させる直接重合法により製造することができる。
【0108】
重合反応は、従来公知の反応容器で実施可能であり、例えば開環重合あるいは直接重合法においてはヘリカルリボン翼等、高粘度用攪拌翼を備えた縦型反応器あるいは横型反応
器を単独、または並列して使用することができる。また、回分式あるいは連続式あるいは半回分式のいずれでも良いし、これらを組み合わせてもよい。
【0109】
重合開始剤としてアルコールを用いてもよい。かかるアルコールとしては、ポリ乳酸の重合を阻害せず不揮発性であることが好ましく、例えばデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスルトールなどを好適に用いることができる。固相重合法で使用するポリ乳酸プレポリマーは、予め結晶化させることが、樹脂ペレット融着防止の面から好ましい実施形態と言える。プレポリマーは固定された縦型或いは横型反応容器、またはタンブラーやキルンの様に容器自身が回転する反応容器(ロータリーキルン等)中、プレポリマーのガラス転移温度から融点未満の温度範囲で、固体状態で重合される。
【0110】
金属含有触媒としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類、遷移金属類、アルミニウム、ゲルマニウム、スズ、アンチモン、チタン等の脂肪酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコラート等が例示される。なかでもスズ、アルミニウム、亜鉛、カルシウム、チタン、ゲルマニウム、マンガン、マグネシウムおよび稀土類元素より選択される少なくとも一種の金属を含有する脂肪酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコラートが好ましい。
【0111】
触媒活性、副反応の少なさからスズ化合物、具体的には塩化第一スズ、臭化第一スズ、ヨウ化第一スズ、硫酸第一スズ、酸化第二スズ、ミリスチン酸スズ、オクチル酸スズ、ステアリン酸スズ、テトラフェニルスズ等のスズ含有化合物が好ましい触媒として例示でされる。なかでも、スズ(II)化合物、具体的にはジエトキシスズ、ジノニルオキシスズ、ミリスチン酸スズ(II)、オクチル酸スズ(II)、ステアリン酸スズ(II)、塩化スズ(II)などが好適に例示される。
【0112】
触媒の使用量は、ラクチド1Kg当たり0.42×10−4〜100×10−4(モル)でありさらに反応性、得られるポリラクチド類の色調、安定性を考慮すると1.68×10−4〜42.1×10−4(モル)、特に好ましくは2.53×10−4〜16.8×10−4(モル)使用される。
【0113】
ポリ乳酸の重合に使用された金属含有触媒は、ポリ乳酸使用に先立ち、従来公知の失活剤で不活性化しておくのが好ましい。かかる失活剤として、イミノ基を有し且つ重合金属触媒に配位し得るキレート配位子の群からなる有機リガンドが挙げられる。またジヒドリドオキソリン(I)酸、ジヒドリドテトラオキソ二リン(II,II)酸、ヒドリドトリオキソリン(III)酸、ジヒドリドペンタオキソ二リン(III)酸、ヒドリドペンタオキソ二(II,IV)酸、ドデカオキソ六リン(III)酸、ヒドリドオクタオキソ三リン(III,IV,IV)酸、オクタオキソ三リン(IV,III,IV)酸、ヒドリドヘキサオキソ二リン(III,V)酸、ヘキサオキソ二リン(IV)酸、デカオキソ四リン(IV)酸、ヘンデカオキソ四リン(IV)酸、エネアオキソ三リン(V,IV,IV)酸等の酸価数5以下の低酸化数リン酸が挙げられる。また式xHO・yPで表され、x/y=3のオルトリン酸が挙げられる。また2>x/y>1であり、縮合度より二リン酸、三リン酸、四リン酸、五リン酸等と称せられるポリリン酸およびこれらの混合物が挙げられる。またx/y=1で表されるメタリン酸、なかでもトリメタリン酸、テトラメタリン酸が挙げられる。また1>x/y>0で表され、五酸化リン構造の一部をのこした網目構造を有するウルトラリン酸(これらを総称してメタリン酸系化合物と呼ぶことがある。)が挙げられる。またこれらの酸の酸性塩が挙げられる。またこれらの酸の一価、多価のアルコール類、あるいはポリアルキレングリコール類の部分エステル、完全エステルが挙げられる。またこれらの酸のホスホノ置換低級脂肪族カルボン酸誘導体などが例示される。
【0114】
触媒失活能から、式xHO・yPで表され、x/y=3のオルトリン酸が好ましい。また2>x/y>1であり、縮合度より二リン酸、三リン酸、四リン酸、五リン酸等と称せられるポリリン酸およびこれらの混合物が好ましい。またx/y=1で表されるメタリン酸、なかでもトリメタリン酸、テトラメタリン酸が好ましい。また1>x/y>0で表され、五酸化リン構造の一部を残した網目構造を有するウルトラリン酸(これらを総称してメタリン酸系化合物と呼ぶことがある。)が好ましい。またこれらの酸の酸性塩が好ましい。またこれらの酸の一価、多価のアルコール類、あるいはポリアルキレングリコール類の部分エステルが好ましい。
【0115】
本発明で使用するメタリン酸系化合物は、3〜200程度のリン酸単位が縮合した環状のメタリン酸あるいは立体網目状構造を有するウルトラ領域メタリン酸あるいはそれらの(アルカル金属塩、アルカリ土類金属塩、オニウム塩)を包含する。なかでも環状メタリン酸ナトリウムやウルトラ領域メタリン酸ナトリウム、ホスホノ置換低級脂肪族カルボン酸誘導体のジヘキシルホスホノエチルアセテート(以下DHPAと略称することがある)などが好適に使用される。
【0116】
ポリ乳酸は、含有ラクチド量が1〜5000重量ppmのものが好ましい。ポリ乳酸中に含有するラクチドは溶融加工時、樹脂を劣化させ、色調を悪化させ、場合によっては製品として使用不可能にする場合がある。
【0117】
溶融開環重合された直後のポリL−乳酸および/またはポリD−乳酸は通常1〜5重量%のラクチドを含有するが、ポリL−乳酸および/またはポリD−乳酸重合終了の時点からポリ乳酸成形までの間の任意の段階において、従来公知のラクチド減量法により、即ち一軸あるいは多軸押出機での真空脱揮法、あるいは重合装置内での高真空処理等を単独であるいは組み合わせて実施することにラクチドを好適な範囲に低減することができる。
【0118】
ラクチド含有量は少ないほど、樹脂の溶融安定性、耐湿熱安定性は向上するが、樹脂溶融粘度を低下させる利点もあり、所望の目的に合致した含有量にするのが合理的、経済的である。即ち、実用的な溶融安定性が達成される1〜1000重量ppmに設定するのが合理的である。さらに好ましくは1〜700重量ppm、より好ましくは2〜500重量ppm、特に好ましくは5〜100重量ppmの範囲が選択される。ポリ乳酸成分がかかる範囲のラクチド含有量を有することにより、本発明成形品の溶融成形時の樹脂の安定性を向上せしめ、成形品の製造を効率よく実施できる利点および成形品の耐湿熱安定性、低ガス性を高めることが出来る。
【0119】
ステレオコンプレックスポリ乳酸は、ポリL−乳酸とポリD−乳酸とを重量比で10/90〜90/10の範囲で接触させることにより、好ましくは溶融接触させることにより、より好ましくは溶融混練させることにより得ることができる。接触温度はポリ乳酸の溶融時の安定性およびステレオコンプレックス結晶化度の向上の観点より、好ましくは220〜290℃、より好ましくは220〜280℃、さらに好ましくは225〜275℃の範囲である。
【0120】
溶融混練の方法は特に限定されるものではないが、従来公知のバッチ式或いは連続式の溶融混合装置が好適に使用される。たとえば、溶融攪拌槽、一軸、二軸の押出し機、ニーダー、無軸籠型攪拌槽(フィニッシャー)、住友重機械工業(株)製バイボラック、三菱重工業(株)製N−SCR,(株)日立製作所製めがね翼、格子翼あるいはケニックス式攪拌機、あるいはズルツァー式SMLXタイプスタチックミキサー具備管型重合装置などを使用できるが、生産性、ポリ乳酸の品質とりわけ色調の点でセルフクリーニング式の重合装置である無軸籠型攪拌槽、N−SCR、2軸押し出しルーダーなどが好適に使用される。
【0121】
本発明の樹脂組成物は、B成分の環状カルボジイミド化合物がポリエステルの末端に結
合した構造を有する末端封止されたポリエステル(A成分)を含有する。環状カルボジイミド化合物は、ポリエステルのカルボキシル基と以下のように反応しポリエステルの末端に以下の構造を形成する。
【0122】
【化42】

(Xはポリエステルの主鎖で、Qはカルボジイミド基の第一窒素と第二窒素とを結ぶ結合基である。)
【0123】
後述するように本発明の樹脂組成物は、ポリエステルと環状カルボジイミド化合物(B成分)とを混合することにより製造することができる。環状カルボジイミド化合物は、ポリエステルの末端と反応し末端を封止する。余剰の環状カルボジイミド化合物は未反応のまま樹脂組成物中に残留する。
【0124】
従って本発明の樹脂組成物中には、末端が封止されたポリエステル(A成分)および環状カルボジイミド化合物(B成分)を含有する。また、末端変性の反応の程度により、末端が封止されていないポリエステルも含有することもある。
【0125】
未反応のまま樹脂組成物中に残留する環状カルボジイミド化合物(B成分)の含有量は、ポリエステル(A成分)100重量部あたり、0.001〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部、より好ましくは0.1〜1重量部である。
【0126】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明ではポリエステル(A成分)と環状カルボジイミド化合物(B成分)とを混合して得られた樹脂組成物を該樹脂組成物の融点未満の温度で加熱し、ポリエステル(A成分)の重合度を向上させることによりポリエステル樹脂組成物を製造する。好ましい温度はポリエステル(A)成分のガラス転移点以上融点未満である。ガラス転移点以上であれば重合度は良好に向上する。また、融点を越えると、ポリエステル樹脂組成物が溶融状態となるので、分子量増大に伴って溶融粘度が高くなりすぎ、高重合度の組成物を得られない。
【0127】
なお、ポリエステル(A成分)としてポリ乳酸を採用した場合には、A成分としてのポリL−乳酸、ポリD−乳酸およびB成分としての環状カルボジイミド化合物を混合し、ステレオコンプレックスポリ乳酸を形成した後に、融点未満の温度で加熱し、ポリ乳酸の重合度を向上させることができる。また、ポリL−乳酸とポリD−乳酸とを混合しステレオコンプレックスポリ乳酸(A成分)を形成させた後、環状カルボジイミド化合物(B成分)を混合した後に、融点未満の温度で加熱し、重合度を向上させることもできる。
【0128】
環状カルボジイミド化合物をポリエステルに添加、混合する方法は特に限定なく、従来公知の方法により、溶液、融液あるいは適用するポリエステルのマスターバッチとして添加する方法、あるいは環状カルボジイミドが溶解、分散または溶融している液体にポリエステルの固体を接触させ環状カルボジイミドを浸透させる方法などをとることができる。
【0129】
溶液、融液あるいは適用するポリエステルのマスターバッチとして添加する方法をとる場合には、従来公知の混練装置を使用して添加する方法ことができる。混練に際しては、溶液状態での混練法あるいは溶融状態での混練法が、均一混練性の観点より好ましい。混練装置としては、とくに限定なく、従来公知の縦型の反応容器、混合槽、混練槽あるいは一軸または多軸の横型混練装置、例えば一軸あるいは多軸のルーダー、ニーダーなどが例示される。高分子化合物との混合時間は特に指定はなく、混合装置、混合温度にもよるが、0.1分から2時間、好ましくは0.2分から60分、より好ましくは1分から30分が選択される。
【0130】
溶媒としては、ポリエステルおよび環状カルボジイミド化合物に対し、不活性であるものを用いることができる。特に、両者に親和性を有し、両者を少なくとも部分的に溶解、あるいは両者に少なくとも部分的に溶解より溶媒が好ましい。
溶媒としてはたとえば、炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン系溶媒、アミド系溶媒などを用いることができる。
【0131】
炭化水素系溶媒として、ヘキサン、シクロへキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘプタン、デカンなどが挙げられる。ケトン系溶媒として、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロへキサノン、イソホロンなどが挙げられる。
【0132】
エステル系溶媒としては、酢酸エチル、酢酸メチル、コハク酸エチル、炭酸メチル、安息香酸エチル、ジエチレングリコールジアセテートなどが挙げられる。エーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、ジフェニルエーテルなどが挙げられる。ハロゲン系溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、1,1’,2,2’−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどを挙げることができる。アミド系溶媒としては、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。これらの溶媒は単一であるいは所望により混合溶媒として使用することができる。
【0133】
本発明において、溶媒は、ポリエステルと環状カルボジイミド化合物の合計、100重量部あたり1〜1,000重量部の範囲で適用される。1重量部より少ないと、溶媒適用に意義がない。また、溶媒使用量の上限値は、特にないが、操作性、反応効率の観点より1,000重量部程度である。
【0134】
環状カルボジイミドが溶解、分散または溶融している液体にポリエステルの固体を接触させ環状カルボジイミドを浸透させる方法をとる場合には、上記のごとき溶剤に溶解したカルボジイミドに固体のポリエステルを接触させる方法や、カルボジイミドのエマルジョン液に固体のポリ乳酸を接触させる方法などをとることができる。接触させる方法としては、ポリエステルを浸漬する方法や、ポリエステルに塗布する方法、散布する方法などを好適にとることができる。
【0135】
環状カルボジイミド化合物による封止反応は、室温(25℃)〜300℃程度の温度で可能であるが、反応効率の観点より50〜250℃、より好ましくは80〜200℃の範囲ではより促進される。ポリエステルは、溶融している温度ではより反応が進行しやすいが、環状カルボジイミド化合物の揮散、分解などを抑制するため、300℃より低い温度で反応させることが好ましい。またポリエステルの溶融温度を低下、攪拌効率を上げるためにも、溶媒を適用することは効果がある。
【0136】
反応は無触媒で十分速やかに進行するが、反応を促進する触媒を使用することもできる。触媒としては、従来の線状カルボジイミド化合物で使用される触媒が適用できる。これらは1種または2種以上使用することができる。触媒の添加量は、特に限定されるものではないが、ポリ乳酸と環状カルボジイミドの合計100重量部に対し、0.001〜1重量部が好ましく、また0.01〜0.1重量部がより好ましく、さらには0.02〜0.1重量部が最も好ましい。
【0137】
環状カルボジイミド化合物の適用量は、酸性基1当量あたり、環状カルボジイミド化合物に含まれるカルボジイミド基が0.5〜100当量の範囲が選択される。0.5当量より過少に過ぎると、カルボジイミド適用の意義がない場合がある。また100当量より過剰に過ぎると、基質の特性が変成する場合がある。かかる観点より、上記基準において、好ましくは0.6〜100当量、より好ましくは0.65〜70当量、さらに好ましくは
0.7〜50当量、とりわけ好ましくは0.7〜30当量の範囲が選択される。
【0138】
本発明において上記方法で得られたポリエステル(A成分)と環状カルボジイミド化合物(B成分)を含有する樹脂組成物の固相における加熱処理方法は特に限定なく、従来公知の方法を用いるころができる。
【0139】
この固相における加熱処理を実施する際には、環状カルボジイミド化合物を含有するポリエステル樹脂組成物の形状は、特に限定されるものではなく、塊状、フィルム、ペレットおよび粉末などいずれでもよいが、固相における加熱処理での重合度の向上を効率的に進めるという観点においては、ペレットまたは粉末を用いることが好ましい。ペレットにする方法としては、環状カルボジイミド化合物を含有するポリエステル樹脂組成物を溶融状態にした後、ストランド状に押出し、ストランドカッターでペレタイズする方法が挙げられる。また、粉末にする方法としては、ミキサー、ブレンダー、ボールミルおよびハンマーミルなどの粉砕機を用いて粉砕する方法が挙げられる。
【0140】
この固相における加熱処理工程を実施する方法については特に限定されるものではなく、回分法でも連続法でもよく、また、反応容器は、撹拌槽型反応器、ミキサー型反応器および塔型反応器などを用いることができ、これらの反応器は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0141】
この加熱処理工程を実施する際には、環状カルボジイミド化合物を含有するポリエステル樹脂組成物が結晶化していることが好ましい。結晶化させる方法については特に限定されるものではなく、公知の方法を利用することができる。例えば、気相中または液相中において結晶化温度で保持する方法、環状カルボジイミド化合物を含有するポリエステル樹脂組成物から溶媒を揮発させる方法および環状カルボジイミド化合物を含有するポリエステル樹脂組成物を溶融させ、延伸または剪断の操作を行いながら冷却固化させる方法などが挙げられ、操作が簡便であるという観点においては、気相中または液相中において結晶化温度で保持する方法が好ましい。
【0142】
ここでいう結晶化温度とは、ガラス転移温度より高く、融点よりも低い温度範囲であれば特に限定されるものではないが、予め示差走査型熱量計(DSC)により測定した昇温結晶化温度および降温結晶化温度の範囲内であることがより好ましい。結晶化させる際には、減圧、常圧または加圧のいずれの条件でもよい。また、結晶化させる際の時間については特に限定されるものではない。
【0143】
この加熱処理工程を実施する際の温度条件としては、環状カルボジイミド化合物を含有するポリエステル樹脂組成物の融点未満であれば重合度が向上する限り、特に限定されないが、通常はポリエステル(A成分)のガラス転移温度以上であれば問題なく重合度は向上する。また、加熱処理時間を短縮するために、反応の進行とともに温度を段階的に上げてもよい。
【0144】
また、この加熱処理工程を実施する際には、真空下または乾燥窒素などの不活性気体気流下で行うことが好ましい。特にポリエステル(A成分)がポリ乳酸である場合には、ポリ乳酸中に含まれる残存モノマーを除去する目的で、真空下で加熱処理することが好ましい。
【0145】
上述した環状カルボジイミド化合物をポリエステルに添加、混合する工程、および環状カルボジイミド化合物を含有するポリエステル樹脂組成物を、その融点未満の温度で加熱処理して重合度を向上させる工程は、連続的に行ってもよく、またそれぞれの工程を回分的に行ってもよい。
【0146】
本発明の製造方法により得られる樹脂組成物の各種物性について、その好ましい範囲は下記の通りである。特にポリエステル(A成分)がポリD−乳酸、ポリL−乳酸、ステレオコンプレックスポリ乳酸のいずれかである場合は、還元粘度は、1.5〜3.0の範囲であることが好ましい。同様に重量平均分子量は15万〜35万であることが好ましい。
【0147】
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定、標準ポリスチレンに換算した値である。還元粘度および重量平均分子量がこれよりも小さいと各種用途で所望の物性を発現することができないことがあり好ましくない。また、各サンプルの1.5wt%溶液(溶媒:ポリD−乳酸、ポリL−乳酸の場合はクロロホルム、ステレオコンプレックスポリ乳酸の場合は5vol%ヘキサフルオロイソプロパノールを含むクロロホルム)のカラー(YI値)は7以下であることが好ましい。カラー(YI値)がこれよりも大きいと、各種用途において成形品の外観、特に色相が悪化し、用途展開が限定されるため好ましくない。さらに、カルボキシル末端濃度は15eq/ton以下であることが好ましい。カルボキシル末端濃度がこれよりも大きいと加水分解による経時劣化が顕著となり、製品の寿命や信頼性が低下するために好ましくない。
【0148】
<安定剤>
本発明の製造方法により得られた樹脂組成物には、安定剤を含有することができる。安定剤としては通常の熱可塑性樹脂の安定剤に使用されるものを用いることができる。例えば酸化防止剤、光安定剤等を挙げることができる。これらの剤を配合することで機械的特性、成形性、耐熱性および耐久性に優れた成形品を得ることができる。
【0149】
酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、ホスファイト系化合物、チオエーテル系化合物等を挙げることができる。
【0150】
ヒンダードフェノール系化合物としては、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、1,4−ブタンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9−ビス[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。
【0151】
ヒンダードアミン系化合物として、N,N’−ビス−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−テトラメチレン−ビス[3−(3’−メチル−5’−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ジアミン、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオニル]ヒドラジン、N−サリチロイル−N’−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N,N’−ビス[2−{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]オキシアミド等を挙げることができる。好ましくは、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。
【0152】
ホスファイト系化合物としては、少なくとも1つのP−O結合が芳香族基に結合しているものが好ましく、具体的には、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンホスファイト、ビス(2,6―ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルホスファイト−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、トリス(ミックスドモノおよびジ−ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、4,4’−イソプロピリデンビス(フェニル−ジアルキルホスファイト)等が挙げられる。
【0153】
なかでもトリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジホスファイト、テトラキス(2,6―ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンホスファイト等が好ましく使用できる。
【0154】
チオエーテル系化合物の具体例として、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−オクタデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ステアリルチオプロピオネート)等が挙げられる。
【0155】
光安定剤としては、具体的には例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、芳香族ベンゾエート系化合物、蓚酸アニリド系化合物、シアノアクリレート系化合物およびヒンダードアミン系化合物等を挙げることができる。
【0156】
ベンゾフェノン系化合物としては、ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、5−クロロ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メチル−アクリロキシイソプロポキシ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0157】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−メチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(4’−オクトキシ−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0158】
芳香族ベンゾエート系化合物としては、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等のアルキルフェニルサリシレート類が挙げられる。
【0159】
蓚酸アニリド系化合物としては、2−エトキシ−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−tert−ブチル−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−3’−ドデシルオキザリックアシッドビスアニリド等が挙げられる。
【0160】
シアノアクリレート系化合物としては、エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0161】
ヒンダードアミン系化合物としては、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−オクタデシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)オギザレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピ−4−ペリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピ−4−ペリジル)テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチルピ−4−ペリジルオキシ)−エタン、α,α’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−トリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1−「2−{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジメタノールとの縮合物等を挙げることができる。本発明においてE成分は1種類で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。また安定剤成分として、ヒンダードフェノール系化合物およびまたはベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。安定剤の含有量はポリ乳酸(A成分)100重量部当たり、好ましくは0.01〜3重量部、より好ましくは0.03〜2重量部である。
【0162】
<結晶化促進剤>
本発明の製造方法により得られた樹脂組成物は、有機若しくは無機の結晶化促進剤を含有することができる。結晶化促進剤を含有することで、機械的特性、耐熱性、および成形性に優れた成形品を得ることができる。
即ち結晶化促進剤の適用により、成形性、結晶性が向上し、通常の射出成形においても十分に結晶化し耐熱性、耐湿熱安定性に優れた成形品を得ることができる。加えて、成形品を製造する製造時間を大幅に短縮でき、その経済的効果は大きい。
【0163】
本発明で使用する結晶化促進剤は一般に結晶性樹脂の結晶化核剤として用いられるものを用いることができ、無機系の結晶化核剤および有機系の結晶化核剤のいずれをも使用することができる。
無機系の結晶化核剤として、タルク、カオリン、シリカ、合成マイカ、クレイ、ゼオライト、グラファイト、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫化カルシウム、窒化ホウ素、モンモリロナイト、酸化ネオジム、酸化アルミニウム、フェニルフォスフォネート金属塩等が挙げられる。これらの無機系の結晶化核剤は組成物中での分散性およびその効果を高めるために、各種分散助剤で処理され、一次粒子径が0.01〜0.5μm程度の高度に分散状態にあるものが好ましい。
【0164】
有機系の結晶化核剤としては、安息香酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸リチウム、安息香酸カリウム、安息香酸マグネシウム、安息香酸バリウム、蓚酸カルシウム、テレフタル酸ジナトリウム、テレフタル酸ジリチウム、テレフタル酸ジカリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸カルシウム、ミリスチン酸バリウム、オクタコ酸ナトリウム、オクタコ酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、トルイル酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム、サリチル酸亜鉛、アルミニウムジベンゾエート、β−ナフトエ酸ナトリウム、β−ナフトエ酸カリウム、シクロヘキサンカルボン酸ナトリウム等の有機カルボン酸金属塩、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、スルホイソフタル酸ナトリウム等の有機スルホン酸金属塩が挙げられる。
【0165】
また、ステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、トリメシン酸トリス(tert−ブチルアミド)等の有機カルボン酸アミド、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリイソプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリビニルシクロアルカン、ポリビニルトリアルキルシラン、高融点ポリ乳酸、エチレン−アクリル酸コポマーのナトリウム塩、スチレン−無水マレイン酸コポリマーのナトリウム塩(いわゆるアイオノマー)、ベンジリデンソルビトールおよびその誘導体、例えばジベンジリデンソルビトール等が挙げられる。
【0166】
これらのなかでタルク、および有機カルボン酸金属塩から選択された少なくとも1種が好ましく使用される。本発明で使用する結晶化促進剤は1種のみでもよく、2種以上を併用しても良い。
結晶化促進剤の含有量は、ポリエステル(A成分)100重量部当たり、好ましくは0.01〜30重量部、より好ましくは0.05〜20重量部である。
【0167】
<充填剤>
本発明の製造方法により得られた樹脂組成物は、有機若しくは無機の充填剤を含有することができる。充填剤成分を含有することで、機械的特性、耐熱性、および金型成形性に優れた成形品を得ることができる。
有機充填剤として、籾殻、木材チップ、おから、古紙粉砕材、衣料粉砕材等のチップ状のもの、綿繊維、麻繊維、竹繊維、木材繊維、ケナフ繊維、ジュート繊維、バナナ繊維、ココナツ繊維等の植物繊維もしくはこれらの植物繊維から加工されたパルプやセルロース繊維および絹、羊毛、アンゴラ、カシミヤ、ラクダ等の動物繊維等の繊維状のもの、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維等の合成繊維、紙粉、木粉、セルロース粉末、籾殻粉末、果実殻粉末、キチン粉末、キトサン粉末、タンパク質、澱粉等の粉末状のものが挙げられる。成形性の観点から紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末、ケナフ粉末、籾殻粉末、果実殻粉末、キチン粉末、キトサン粉末、タンパク質粉末、澱粉等の粉末状のものが好ましく、紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末、ケナフ粉末が好ましい。紙粉、木粉がより好ましい。特に紙粉が好ましい。
【0168】
これら有機充填剤は天然物から直接採取したものを使用してもよいが、古紙、廃材木および古衣等の廃材をリサイクルしたものを使用してもよい。
また木材として、松、杉、檜、もみ等の針葉樹材、ブナ、シイ、ユーカリ等の広葉樹材等が好ましい。
【0169】
紙粉は成形性の観点から接着剤、とりわけ、紙を加工する際に通常使用される酢酸ビニル樹脂系エマルジョンやアクリル樹脂系エマルジョン等のエマルジョン系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリアミド系接着剤等のホットメルト接着剤等を含むものが好ましく例示される。
【0170】
本発明において有機充填剤の配合量は特に限定されるものではないが、成形性および耐熱性の観点から、ポリエステル(A成分)100重量部当たり、好ましくは1〜300重量部、より好ましくは5〜200重量部、さらに好ましくは10〜150重量部、特に好ましくは15〜100重量部である。有機充填剤の配合量が1重量部未満であると、組成物の成形性向上効果が小さく、300重量部を超える場合には充填剤の均一分散が困難になり、あるいは成形性、耐熱性以外にも材料としての強度、外観が低下する可能性があるため好ましくない。
【0171】
本発明の製造方法により得られた組成物は、無機充填剤を含有することが好ましい。無機充填剤合により、機械特性、耐熱性、成形性の優れた組成物を得ることができる。本発明で使用する無機充填剤としては、通常の熱可塑性樹脂の強化に用いられる繊維状、板状、粉末状のものを用いることができる。
【0172】
具体的には例えば、カーボンナノチューブ、ガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ワラストナイト、イモゴライト、セピオライト、アスベスト、スラグ繊維、ゾノライト、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化珪素繊維およびホウ素繊維等の繊維状無機充填剤、層状珪酸塩、有機オニウムイオンで交換された層状珪酸塩、ガラスフレーク、非膨潤性雲母、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、タルク、クレイ、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、ドロマイト、カオリン、粉末珪酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシクム、酸化アルミニウム、酸化チタン、珪酸アルミニウム、酸化ケイ素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイトおよび白土フラーレンなどのカーボンナノ粒子等の板状や粒子状の無機充填剤が挙げられる。
【0173】
層状珪酸塩の具体例としては、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト等のスメクタイト系粘土鉱物、バーミキュライト、ハロサイト、カネマイト、ケニヤイト等の各種粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Li型四珪素フッ素雲母、Na型四珪素フッ素雲母等の膨潤性雲母等が挙げられる。これらは天然のものであっても合成のものであって良い。これらのなかでモンモリロナイト、ヘクトライト等のスメクタイト系粘土鉱物やLi型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母等の膨潤性合成雲母が好ましい。
【0174】
これらの無機充填剤のなかでは繊維状もしくは板状の無機充填剤が好ましく、特にガラス繊維、ワラステナイト、ホウ酸アルミニウムウイスカー、チタン酸カリウムウイスカー、マイカ、およびカオリン、陽イオン交換された層状珪酸塩が好ましい。また繊維状充填剤のアスペクト比は5以上であることが好ましく、10以上でありことがさらに好ましく、20以上であることがさらに好ましい。
【0175】
かかる充填剤はエチレン/酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂で被覆または収束処理されていてもよく、またアミノシランやエポキシシラン等のカップリング剤で処理されていても良い。
【0176】
無機充填剤の配合量は、ポリエステル(A成分)100重量部に対し、好ましくは0.1〜200重量部、より好ましくは0.5〜100重量部、さらに好ましくは1〜50重量部、特に好ましくは1〜30重量部、最も好ましくは1〜20重量部である。
【0177】
<離型剤>
本発明の製造方法により得られた樹脂組成物は、離型剤を含有することができる。本発明において使用する離型剤は通常の熱可塑性樹脂に用いられるものを使用することができる。
【0178】
離型剤として具体的には、脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、パラフィン、低分子量のポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸部分鹸化エステル、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、変性シリコーン等を挙げることができる。これらを配合することで機械特性、成形性、耐熱性に優れたポリ乳酸成形品を得ることができる。
【0179】
脂肪酸としては炭素数6〜40のものが好ましく、具体的には、オレイン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、アラキドン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、パルミチン酸、モンタン酸およびこれらの混合物等が挙げられる。脂肪酸金属塩としては炭素数6〜40の脂肪酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が好ましく、具体的にはステアリン酸カルシウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、等が挙げられる。
【0180】
オキシ脂肪酸としては1,2−オキシステリン酸、等が挙げられる。パラフィンとしては炭素数18以上のものが好ましく、流動パラフィン、天然パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等が挙げられる。
【0181】
低分子量のポリオレフィンとしては例えば分子量5000以下のものが好ましく、具体的にはポリエチレンワックス、マレイン酸変性ポリエチレンワックス、酸化タイプポリエチレンワックス、塩素化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等が挙げられる。脂肪酸アミドとしては炭素数6以上のものが好ましく、具体的にはオレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド等が挙げられる。
【0182】
アルキレンビス脂肪酸アミドとしては炭素数6以上のものが好ましく、具体的にはメチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリン酸アミド等が挙げられる。脂肪族ケトンとしては炭素数6以上のものが好ましく、高級脂肪族ケトン等が挙げられる。
【0183】
脂肪酸部分鹸化エステルとしてはモンタン酸部分鹸化エステル等が挙げられる。脂肪酸低級アルコールエステルとしてはステアリン酸エステル、オレイン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、アジピン酸エステル、ベヘン酸エステル、アラキドン酸エステル、モンタン酸エステル、イソステアリン酸エステル等が挙げられる。
【0184】
脂肪酸多価アルコールエステルとしては、グリセロールトリステアレート、グリセロールジステアレート、グリセロールモノステアレート、ペンタエリスルトールテトラステアレート、ペンタエリスルトールトリステアレート、ペンタエリスルトールジミリステート、ペンタエリスルトールモノステアレート、ペンタエリスルトールアジペートステアレート、ソルビタンモノベヘネート等が挙げられる。脂肪酸ポリグリコールエステルとしてはポリエチレングリコール脂肪酸エステルやポリプロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0185】
変性シリコーンとしてはポリエーテル変性シリコーン、高級脂肪酸アルコキシ変性シリコーン、高級脂肪酸含有シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、メタクリル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。
【0186】
そのうち脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、が好ましく、脂肪酸部分鹸化エステル、アルキレンビス脂肪酸アミドがより好ましい。なかでもモンタン酸エステル、モンタン酸部分鹸化エステル、ポリエチレンワックッス、酸価ポリエチレンワックス、ソルビタン脂肪酸エステル、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドが好ましく、特にモンタン酸部分鹸化エステル、エチレンビスステアリン酸アミドが好ましい。
【0187】
離型剤は、1種類で用いても良いし2種以上を組み合わせて用いても良い。離型剤の含有量は、ポリエステル100重量部に対し、好ましくは0.01〜3重量部、より好ましくは0.03〜2重量部である。
【0188】
<帯電防止剤>
本発明の製造方法により得られる樹脂組成物は、帯電防止剤を含有することができる。帯電防止剤として、(β−ラウラミドプロピオニル)トリメチルアンモニウムスルフェート、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの第4級アンモニウム塩系、スルホン酸塩系化合物、アルキルホスフェート系化合物等が挙げられる。
本発明において帯電防止剤は1種類で用いても良いし2種以上を組み合わせて用いても良い。帯電防止剤の含有量は、ポリエステル(A成分)100重量部に対し、好ましくは
0.05〜5重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。
【0189】
<可塑剤>
本発明の製造方法により得られる樹脂組成物は、可塑剤を含有することができる。可塑剤としては一般に公知のものを使用することができる。例えば、ポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤、およびエポキシ系可塑剤、等が挙げられる。
【0190】
ポリエステル系可塑剤として、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸等の酸成分とエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール等のジオール成分からなるポリエステルやポリカプロラクトン等のヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル等が挙げられる。これらのポリエステルは単官能カルボン酸または単官能アルコールで末端封止されていても良い。
【0191】
グリセリン系可塑剤として、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノオレート、グリセリンモノアセトモノモンタネート等が挙げられる。
【0192】
多価カルボン酸系可塑剤として、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリヘキシル等のトリメリット酸エステル、アジピン酸イソデシル、アジピン酸−n−デシル−n−オクチル等のアジピン酸エステル、アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸エステル、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)等のアゼライン酸エステル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)等のセバシン酸エステルが挙げられる。
【0193】
リン酸エステル系可塑剤として、リン酸トリブチル、リン酸トリス(2−エチルヘキシル)、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸ジフェニル−2−エチルヘキシル等が挙げられる。
【0194】
ポリアルキレングリコール系可塑剤として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)ブロックおよびまたはランダム共重合体、ビスフェノール類のエチレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のテトラヒドロフラン付加重合体等のポリアルキレングリコールあるいはその末端エポキシ変性化合物、末端エステル変性化合物および末端エーテル変性化合物等の末端封止剤化合物等が挙げられる。
【0195】
エポキシ系可塑剤として、エポキシステアリン酸アルキルと大豆油とからなるエポキシトリグリセリド、およびビスフェノールAとエピクロルヒドリンを原料とするエポキシ樹脂が挙げられる。
【0196】
その他の可塑剤の具体的な例としては、ネオペンチルグリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコール−ビス(2−エチルブチレート)等の脂肪族ポリオールの安息香酸エステル、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド、オレイン酸ブチル等の脂肪酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル等のオキシ酸エステル、ペンタエリスリトール、各種ソルビトール、ポリアクリル酸エステル、シリコーンオイル、およびパラフィン類等が挙げられる。
【0197】
可塑剤として、特にポリエステル系可塑剤およびポリアルキレン系可塑剤から選択された少なくとも1種よりなるものが好ましく使用でき、1種のみでも良くまた2種以上を併用することもできる。
【0198】
可塑剤の含有量は、ポリエステル(A成分)100重量部当たり、好ましくは0.01〜30重量部、より好ましくは0.05〜20重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部である。本発明においては結晶化核剤と可塑剤を各々単独で使用してもよいし、両者を併用して使用することがさらに好ましい。
【0199】
<耐衝撃改良剤>
本発明の製造方法により得られる樹脂組成物は、耐衝撃改良剤を含有することができる。耐衝撃改良剤とは熱可塑性樹脂の耐衝撃性改良に用いることができるものであり、特に制限はない。例えば以下の耐衝撃改良剤の中から選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0200】
耐衝撃改良剤の具体例としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、各種アクリルゴム、エチレン−アクリル酸共重合体およびそのアルカリ金属塩(いわゆるアイオノマー)、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体(例えばエチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体)、変性エチレン−プロピレン共重合体、ジエンゴム(例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン)、ジエンとビニル共重合体(例えばスチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンランダム共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリブタジエンにスチレンをグラフト共重合させたもの、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体)、ポリイソブチレン、イソブチレンとブタジエンまたはイソプレンとの共重合体、天然ゴム、チオコールゴム、多硫化ゴム、ポリウレタンゴム、ポリエーテルゴム、エピクロロヒドリンゴム等が挙げられる。
【0201】
さらに各種架橋度を有するものや各種ミクロ構造、例えばシス構造、トランス構造等を有するものやコア層とそれを覆う1以上のシェル層とから構成され、また隣接する層が異種重合体から構成されるいわゆるコアシェル型と呼ばれる多層構造重合体等も使用することができる。
さらに上記具体例に挙げた各種の(共)重合体はランダム共重合体、ブロック共重合体およびブロック共重合体等のいずれであっても、本発明の耐衝撃改良剤として用いることができる。
耐衝撃改良剤は、ポリエステル(A成分)100重量部に対して、好ましくは1〜30重量部、より好ましくは5〜20重量部、さらに好ましくは10〜20重量部である。
【0202】
<その他>
また本発明の製造方法により得られる樹脂組成物は、本発明の趣旨に反しない範囲において、フェノール樹脂、メラミン樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含有させても良い。また本発明の樹脂組成物は、本発明の趣旨に反しない範囲において、臭素系、リン系、シリコーン系、アンチモン化合物等の難燃剤を含有させても良い。また有機、無機系の染料、顔料を含む着色剤、例えば、二酸化チタン等の酸化物、アルミナホワイト等の水酸化物、硫化亜鉛等の硫化物、紺青等のフェロシアン化物、ジンククロメート等のクロム酸塩、硫酸バリウム等の硫酸塩、炭酸カルシウム等の炭酸塩、群青等の珪酸塩、マンガンバイオレット等のリン酸塩、カーボンブラック等の炭素、ブロンズ粉やアルミニウム粉等の金属着色剤等を含有させても良い。また、ナフトールグリーンB等のニトロソ系、ナフトールイエローS等のニトロ系、ナフトールレッド、クロモフタルイエロー等のアゾ系、フタロシアニンブルーやファストスカイブルー等のフタロシアニン系、インダントロンブルー等の縮合多環系着色剤等、グラファイト、フッソ樹脂等の摺動性改良剤等の添加剤を含有させても良い。これらの添加剤は単独であるいは2種以上を併用することもできる。
【0203】
<成形品>
本発明の製造方法により得られる樹脂組成物は、射出成形、押し出し成形、真空、圧空成形およびブロー成形等により成形できる。成形品として、ペレット、繊維、布帛、繊維構造体、フィルム、シート、シート不織布などが挙げられる。
【0204】
本発明の製造方法により得られる樹脂組成物よりなるペレットは、その溶融成形法は何ら限定されず、公知のペレット製造法により製造されたものが好適に使用できる。即ち、ストランド、あるいは板状におしだされた樹脂組成物を、樹脂が完全に固化した後、あるいは完全には固化されないで、いまだ溶融状態にあるとき、空気中、あるいは水中でカッティングする等の手法が従来公知であるが、本発明においてはいずれも好適に適用できる。
【0205】
上記の成形品は、各種ハウジング、歯車、ギア等の電気・電子部品、建築部材、土木部材、農業資材、自動車部品(内装、外装部品等)および日用部品などを挙げることができる。
【0206】
本発明の製造方法により得られた樹脂組成物からなる繊維および繊維構造体は通常の溶融紡糸およびその後の後加工により得られた材料を好適に使用することができる。
即ち、本発明の製造方法により得られた樹脂組成物はエクストルーダー型やプレッシャーメルター型の溶融押出し機で溶融された後、ギアポンプにより計量され、パック内で濾過された後、口金に設けられたノズルからモノフィラメンント、マルチフィラメント等として吐出される。
【0207】
口金の形状、口金数は特に制限されるものではなく、円形、異形、中実、中空等のいずれも採用することができる。吐出された糸は直ちに冷却・固化された後集束され、油剤を付与されて巻き取られる。巻き取り速度は特に限定されるものではないがポリエステル(A)成分がステレオコンプレックスポリ乳酸のときには、ステレオコンプレックス結晶が形成され易くなることより300m/分〜5,000m/分の範囲が好ましい。
【0208】
また延伸性の観点からは未延伸糸のステレオコンプレックス結晶化率(Sc)が0%となる巻き取り速度が好ましい。巻き取られた未延伸糸はその後延伸工程に供されるが、紡糸工程と延伸工程は必ずしも分離する必要はなく、紡糸後いったん巻き取ることなく引き続き延伸を行う直接紡糸延伸法を採用しても構わない。
【0209】
延伸は1段延伸でも、2段以上の多段延伸でも良く、高強度の繊維を作製する観点から、延伸倍率は3倍以上が好ましく、さらには4倍以上が好ましい。好ましくは3〜10倍が選択される。しかし、延伸倍率が高すぎると繊維が失透し白化し繊維の強度が低下したり破断伸度が小さくなりすぎ繊維用途としては小さくなり過ぎたりして好ましくない。
【0210】
延伸の予熱方法としては、ロールの昇温のほか、平板状あるいはピン状の接触式加熱ヒータ、非接触式熱板、熱媒浴などが挙げられるが、通常用いられる方法を用いればよい。
【0211】
延伸に引き続き、巻き取り前にはポリエステル(A成分)のガラス転移温度(Tg)以上、融点未満の温度で、熱処理が行われることが好ましい。熱処理にはホットローラーのほか、接触式加熱ヒータ、非接触式熱板など任意の方法を採用することができる。延伸温度は例えば、ポリエステル(A成分)がポリ乳酸であれば、ガラス転移温度(Tg)から170℃、好ましくは70℃〜140℃、特に好ましくは80〜130℃の範囲が選択される。
【0212】
また、ポリエステル(A成分)がステレオコンプレックスポリ乳酸であるときには、延伸後、テンション下、170℃〜220℃で熱固定することにより、高いステレオコンプレックス結晶化率(Sc)、低い熱収縮性を有するとともに強度3.5cN/dTex以上のポリ乳酸繊維を得ることもできる。
【0213】
本発明の製造方法により得られた樹脂組成物から得られる繊維は様々な繊維構造体の形態をとることができる。具体的には縫い糸、刺繍糸、紐類などの糸形態製品、織物、編み物、不織布、フェルト、等の布帛、シャツ、ブルゾン、パンツ、コート、セーター、ユニホームなどの外衣、下着、パンスト、靴下、裏地、芯地、スポーツ衣料、婦人衣料やフォーマルウエアなどの高付加価値衣料製品、カップ、パッド等の衣料製品、カーテン、カーペット、椅子張り、マット、家具、鞄、家具張り、壁材、各種のベルトやスリング等の生活資材用製品、さらに帆布、ベルト、ネット、ロープ、重布、袋類、フェルト、フィルター等の産業資材製品、車両内装製品、人工皮革製品などの各種繊維製品を含む。
【0214】
本発明の製造方法により得られた樹脂組成物からなる繊維および繊維構造体は、樹脂組成物からなる繊維単独で使用してもよく、他種繊維と混用することもできる。混用の態様としては、他種繊維からなる繊維構造物との各種組み合わせのほか、他の繊維との混繊糸、複合仮撚糸、混紡糸、長短複合糸、流体加工糸、カバリングヤーン、合撚、交織、交編、パイル織物、混綿つめ綿、長繊維や短繊維の混合不織布、フェルトなどが例示される。混用する場合、ポリエステル(A成分)の特徴を発揮するため混用比率は1重量%以上、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上の範囲が選択される。
【0215】
混用される他の繊維たとえば、綿、麻、レーヨン、テンセルなどのセルロース繊維、ウール、絹、アセテート、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ビニロン、ポリオレフィン、ポリウレタンなどを挙げることができる。
【0216】
また、本発明の製造方法により得られた樹脂組成物は従来公知の方法によりフィルム、シートに成形することが可能である。例えばフィルム、シートにおいては、押し出し成形、キャスト成形等の成形手法を用いることができる。即ち、Tダイ、円形ダイ等が装着された押出機等を用いて、未延伸フィルムを押し出し、さらに延伸、熱処理して成形することができる。このとき、未延伸のフィルムはシートとしてそのまま実用に供することもできる。フィルム化に際し、事前に樹脂組成物および前述した各種成分を溶融混練した材料を用いることもできれば、押し出し成形時に溶融混練を経て成形することもできる。未延伸フィルムを押し出し時、溶融樹脂にスルホン酸四級ホスホニウム塩などの静電密着剤を配合し表面欠陥の少ない未延伸フィルムを得ることができる。
【0217】
また、樹脂組成物および添加剤成分を共通溶媒、例えばクロロホルム、二塩化メチレン等の溶媒を用いて、溶解、キャスト、乾燥固化することにより未延伸フィルムをキャスト成形することもできる。
【0218】
未延伸フィルムを機械的流れ方向に縦一軸延伸、機械的流れ方向に直交する方向に横一軸延伸することができ、またロール延伸とテンター延伸の逐次2軸延伸法、テンター延伸による同時2軸延伸法、チューブラー延伸による2軸延伸法等によって延伸することにより2軸延伸フィルムを製造することができる。さらに該フィルムは、熱収縮性などの抑制のため延伸後、通常熱固定処理を行う。かくして得られた延伸フィルムには、所望により従来公知の方法で、表面活性化処理、たとえばプラズマ処理、アミン処理、コロナ処理を施すことも可能である。
【0219】
本発明の製造方法により得られたフィルム、シートは単一の形態である以外、他種類のフィルム、シートと混用することもできる。混用の態様としては、他種材料からなるフィルム、シートとの各種組み合わせ、例えば、積層、ラミネートなどのほか、他種形態たとえば射出成形品、繊維構造体などとの組み合わせが例示できる。
【実施例】
【0220】
以下、実施例により本発明を説明する。
各種特性は以下の方法で測定した。
【0221】
(1)ポリマーの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn):
ポリマーの重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定、標準ポリスチレンに換算した。GPC測定機器は、検出器;示差屈折計((株)島津製作所製)RID−6Aカラム;東ソ−(株)TSKgelG3000HXL、TSKgelG4000HXL,TSKgelG5000HXLとTSKguardcokumnHXL−Lを直列に接続したもの、あるいは東ソ−(株)TSKgelG2000HXL、TSKgelG3000HXLとTSKguardcokumnHXL−Lを直列に接続したものを使用した。
クロロホルムを溶離液とし温度40℃、流速1.0ml/minにて、濃度1mg/ml(1%ヘキサフルオロイソプロパノールを含むクロロホルム)の試料を10μl注入し測定した。
【0222】
(2)カルボキシル基濃度:
試料を精製o−クレゾールに窒素気流下溶解、ブロモクレゾールブルーを指示薬とし、0.05規定水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定した。
【0223】
(3)ステレオコンプレックス結晶化度〔S(%)〕,結晶融解温度などのDSC測定:
DSC(TAインストルメント社製,TA−2920)を用いて試料を、第一サイクルにおいて、窒素気流下、10℃/分で250℃まで昇温し、ガラス転移温度(Tg)、ステレオコンプレックス相ポリ乳酸結晶融解温度(Tm*)およびステレオコンプレックス相ポリ乳酸結晶融解エンタルピー(ΔHms)およびホモ相ポリ乳酸結晶融解エンタルピー(ΔHmh)を測定した。
また結晶化開始温度(Tc*)、結晶化温度(Tc)は上記測定試料を急速冷却し、さらに引き続き、同じ条件で第二サイクル測定を行い測定した。ステレオコンプレックス結晶化度は上記測定で得られたステレオコンプレックス相およびホモ相ポリ乳酸結晶融解エンタルピーより、下記式(ii)により求めた値である。
S=[ΔHms/(ΔHmh+ΔHms)]×100 (ii)
(但し、ΔHmsはコンプレックス相結晶の融解エンタルピー、ΔHmhはホモ相ポリ乳酸結晶の融解エンタルピー)
【0224】
(4)環状カルボジイミド構造のNMRによる同定およびポリエステル組成物中の環状カルボジイミドの定量:
合成した環状カルボジイミド化合物はH−NMR、13C−NMRによって確認した。NMRは日本電子(株)製JNR−EX270を使用した。溶媒は重クロロホルムを用いた。
【0225】
(5)環状カルボジイミドのカルボジイミド骨格のIRによる同定:
合成した環状カルボジイミド化合物のカルボジイミド骨格の有無は、FT−IRによりカルボジイミドに特徴的な2100〜2200cm−1の確認を行った。FT−IRはサーモニコレー(株)製Magna−750を使用した。
【0226】
(6)還元粘度の測定:
還元粘度(ηsp/c)の測定は試料1.2mgを〔テトラクロロエタン/フェノール=(6/4)wt%混合溶媒〕100mlに溶解、35℃でウベローデ粘度管を使用して測定し、還元粘度保持率は、分子を試料処理後の還元粘度、分母を試料処理前の還元粘度として求めた。
【0227】
(7)イソシアネート臭の発生の有無:
芳香族ポリエステル組成物においては、300℃、5分間、試料を溶融したとき、脂肪族ポリエステルにおいては260℃、5分間、試料を溶融したとき、官能評価により、測定者がイソシアネート臭を感じるかどうかで判定した。イソシアネート臭を感じないとき、合格と判断した。
【0228】
(8)作業環境の良否:
樹脂組成物製造時、作業環境がイソシアネート臭により悪化するかどうかにより判定した。悪化しない場合には良と評価した。
【0229】
(9)イソシアネートガス発生の定性・定量評価:
試料を、260℃で8分間加熱し、熱分解GC/MS分析により定性・定量した。尚、定量はイソシアネートで作成した検量線を用いて行った。GC/MSは日本電子(株)製GC/MS Jms Q1000GC K9を使用した。
【0230】
以下、本発明で使用する剤を記載する。
(10)カラー(YI値):
PLLA試料はクロロホルム、PLLAとPDLAからなるステレオコンプレックスポリ乳酸試料は5vol%ヘキサフルオロイソプロパノールを含むクロロホルムにそれぞれ資料濃度が1.5wt%となるように溶解させ、得られた溶液サンプルをカラーメーターにて測定し、YI値を求めた。
【0231】
環状カルボジイミド化合物として以下の剤を製造、使用した。
<製造例1>環状カルボジイミドCC2(MW=516):
o−ニトロフェノール(0.11mol)とペンタエリトリチルテトラブロミド(0.025mol)、炭酸カリウム(0.33mol)、N,N−ジメチルホルムアミド200mlを攪拌装置及び加熱装置を設置した反応装置にN雰囲気下仕込み、130℃で12時間反応後、DMFを減圧により除去し、得られた固形物をジクロロメタン200mlに溶かし、水100mlで3回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、ジクロロメタンを減圧により除去し、中間生成物D(ニトロ体)を得た。
【0232】
次に中間生成物D(0.1mol)と5%パラジウムカーボン(Pd/C)(2g)、エタノール/ジクロロメタン(70/30)400mlを、攪拌装置を設置した反応装置に仕込み、水素置換を5回行い、25℃で水素を常に供給した状態で反応させ、水素の減少がなくなったら反応を終了した。Pd/Cを回収し、混合溶媒を除去すると中間生成物E(アミン体)が得られた。
【0233】
次に攪拌装置及び加熱装置、滴下ロートを設置した反応装置に、N雰囲気下、トリフェニルホスフィンジブロミド(0.11mol)と1,2−ジクロロエタン150mlを仕込み攪拌させた。そこに中間生成物E(0.025mol)とトリエチルアミン(0.25mol)を1,2−ジクロロエタン50mlに溶かした溶液を25℃で徐々に滴下した。滴下終了後、70℃で5時間反応させる。その後、反応溶液をろ過し、ろ液を水100mlで5回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、1,2−ジクロロエタンを減圧により除去し、中間生成物F(トリフェニルホスフィン体)が得られた。
【0234】
次に、攪拌装置及び滴下ロートを設置した反応装置に、N雰囲気下、ジ−tert−ブチルジカーボネート(0.11mol)とN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(0.055mol)、ジクロロメタン150mlを仕込み攪拌させる。そこに、25℃で中間生成物F(0.025mol)を溶かしたジクロロメタン100mlをゆっくりと滴下させた。滴下後、12時間反応させる。その後、ジクロロメタンを除去し得られた固形物を、精製することで、下記構造のCC2を得た。CC2の構造はNMR、IRにより確認した。
【0235】
【化43】

【0236】
[製造例2](ポリD−乳酸の製造)
Dラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製、光学純度100%)100重量部に対し、オクチル酸スズを0.005重量部加え、窒素雰囲気下、攪拌翼のついた反応機にて、180℃で2時間反応し、オクチル酸スズに対し1.2倍当量の燐酸を添加しその後、13.3kPaで残存するラクチドを除去し、チップ化し、ポリD−乳酸を得た。
得られたポリD−乳酸の重量平均分子量は17万、ガラス転移点(Tg)63℃、融点は180℃であった。
【0237】
[実施例1]
製造例2で得られたポリD−乳酸およびポリL−乳酸(ネイチャーワークス製 還元粘度=1.52、 Mw=13万)を各50重量部と、リン酸エステル金属塩(燐酸2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)ナトリウム塩、平均粒径5μm、株式会社ADEKA製「アデカスタブ」NA−11)0.1重量部を230℃で溶融混練し水槽中にストランドを取り、チップカッターにてチップ化してステレオコンプレックスポリ乳酸チップを得た。得られたステレオコンプレックスポリ乳酸樹脂のMwは12.5万、融点(Tm)は217℃、ステレオコンプレックス結晶化度は100%であった。
【0238】
ここで得られたステレオコンプレックスポリ乳酸樹脂と環状カルボジイミド化合物(CC2)とをそれぞれ乾燥させた後、重量比で98.8:1.2となるように混合しシリンダー温度230℃で溶融混練し、水槽中にストランド押し出し、チップカッターにてチップ化してCC2添加ステレオコンプレックスポリ乳酸樹脂組成物を得た。得られたステレオコンプレックスポリ乳酸樹脂組成物のMwは14万、融点(Tm)は217℃、ステレオコンプレックス結晶化度は100%であった。
ここで得られたチップをさらに180℃、33.3Pa(0.25Torr)の条件下で5時間保持した。組成物製造時、イソシアネート臭を感じることもなく作業環境は良好に維持された。また260℃、5分間溶融したとき、イソシアネート臭評価は合格であった。この組成物の物性を表1に示す。この組成物について、GC/MSによりイソシアネートガス発生量を確認したところ、イソシアネートガスは検出されなかった。
【0239】
[実施例2]
製造例2で得られたポリD−乳酸チップと環状カルボジイミド化合物(CC2)とをそれぞれ乾燥させた後、重量比で99:1となるように混合しシリンダー温度230℃で溶融混練し、水槽中にストランド押し出し、チップカッターにてチップ化してCC2添加ポリD−乳酸樹脂組成物を得た。
ここで得られたチップをさらに150℃、33.3Pa(0.25Torr)の条件下で5時間保持した。組成物製造時、イソシアネート臭を感じることもなく作業環境は良好に維持された。また260℃、5分間溶融したとき、イソシアネート臭評価は合格であった。この組成物の物性を表1に示す。この組成物について、GC/MSによりイソシアネートガス発生量を確認したところ、イソシアネートガスは検出されなかった。
【0240】
[実施例3]
ポリL−乳酸(ネイチャーワークス製 還元粘度=1.52、 Mw=13万)と環状カルボジイミド化合物(CC2)とをそれぞれ乾燥させた後、重量比で98.8:1.2となるように混合しシリンダー温度230℃で溶融混練し、水槽中にストランド押し出し、チップカッターにてチップ化してCC2添加ポリL−乳酸樹脂組成物を得た。
ここで得られたチップをさらに150℃、33.3Pa(0.25Torr)の条件下で5時間保持した。組成物製造時、イソシアネート臭を感じることもなく作業環境は良好に維持された。また260℃、5分間溶融したとき、イソシアネート臭評価は合格であった。この組成物の物性を表1に示す。この組成物について、GC/MSによりイソシアネートガス発生量を確認したところ、イソシアネートガスは検出されなかった。
【0241】
[比較例1]
製造例2で得られたポリD−乳酸およびポリL−乳酸(ネイチャーワークス製)を各50重量部と、リン酸エステル金属塩(燐酸2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)ナトリウム塩、平均粒径5μm、株式会社ADEKA製「アデカスタブ」NA−11)0.1重量部を230℃で溶融混練し水槽中にストランドを取り、チップカッターにてチップ化してステレオコンプレックスポリ乳酸チップを得た。得られたステレオコンプレックスポリ乳酸樹脂のMwは12.5万、融点(Tm)は217℃、ステレオコンプレックス結晶化度は100%であった。
ここで得られたチップをさらに180℃、33.3Pa(0.25Torr)の条件下で5時間保持した。組成物製造時、イソシアネート臭を感じることもなく作業環境は良好に維持された。また260℃、5分間溶融したとき、イソシアネート臭評価は合格であった。得られた組成物の物性を表1に示す。この組成物について、GC/MSによりイソシアネートガス発生量を確認したところ、イソシアネートガスは検出されなかった。
【0242】
[比較例2]
製造例2で得られたポリD−乳酸およびポリL−乳酸(ネイチャーワークス製)を各50重量部と、リン酸エステル金属塩(燐酸2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)ナトリウム塩、平均粒径5μm、株式会社ADEKA製「アデカスタブ」NA−11)0.1重量部を230℃で溶融混練し水槽中にストランドを取り、チップカッターにてチップ化してステレオコンプレックスポリ乳酸チップを得た。得られたステレオコンプレックスポリ乳酸樹脂のMwは12.5万、融点(Tm)は217℃、ステレオコンプレックス結晶化度は100%であった。
ここで得られたステレオコンプレックスポリ乳酸樹脂と環状カルボジイミド化合物(CC2)とをそれぞれ乾燥させた後、重量比で98.8:1.2となるように混合し、セグメントミキサー(東洋精器製 ラボプラストミル KF−15V)で230℃で1時間溶融状態で混練してCC2添加ステレオコンプレックスポリ乳酸樹脂組成物を得た。得られたステレオコンプレックスポリ乳酸樹脂組成物のMwは13.3万、ステレオコンプレックス結晶化度は100%であった。
組成物製造時、イソシアネート臭を感じることもなく作業環境は良好に維持された。また260℃、5分間溶融したとき、イソシアネート臭評価は合格であった。この組成物の物性を表1に示す。この組成物について、GC/MSによりイソシアネートガス発生量を確認したところ、イソシアネートガスは検出されなかった。
【0243】
[比較例3]
実施例1において、カルボジイミド化合物を線状カルボジイミドSb−I(ラインケミージャパン(株)製「スタバクゾール」I)に変更したこと以外は同様にして、Sb−I添加ステレオコンプレックスポリ乳酸樹脂組成物を得た。得られた組成物は製造時、イソシアネート臭の発生が強く、排気装置の設置が必要であった。また260℃、5分間溶融したとき、イソシアネート臭評価は不合格であった。この組成物の物性を表1に示す。
【0244】
[比較例4]
ポリL−乳酸(ネイチャーワークス製 還元粘度=1.52、 Mw=13万)チップをさらに150℃、33.3Pa(0.25Torr)の条件下で5時間保持した。組成物製造時、イソシアネート臭を感じることもなく作業環境は良好に維持された。また260℃、5分間溶融したとき、イソシアネート臭評価は合格であった。得られた組成物の物性を表1に示す。この組成物について、GC/MSによりイソシアネートガス発生量を確認したところ、イソシアネートガスは検出されなかった。
【0245】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0246】
本発明によれば、強度・色相・耐加水分解性が改善され、さらには遊離のイソシアネート化合物による臭いのないポリエステル樹脂組成物の製造方法および当該製造方法によって製造された樹脂組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル(A成分)、およびカルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を含む化合物(B成分)を含有する樹脂組成物を該樹脂組成物の融点未満の温度で加熱し、ポリエステル(A成分)の重合度を向上させる、ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
B成分の環状構造を形成する原子数が8〜50である請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
B成分の環状構造が、下記式(1)で表される請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【化1】

(式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。)
【請求項4】
上記式(1)におけるQは、下記式(1−1)、(1−2)または(1−3)で表される2〜4価の結合基である請求項3記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【化2】

(式中、ArおよびArは各々独立に、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基である。RおよびRは各々独立に、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基またはこれらの組み合わせ、またはこれら脂肪族基、脂環族基と2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基の組み合わせである。XおよびXは各々独立に、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。sは0〜10の整数である。kは0〜10の整数である。なお、sまたはkが2以上であるとき、繰り返し単位としてのX、あるいはXが、他のX、あるいはXと異なっていてもよい。Xは、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。但し、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXはヘテロ原子を含有していてもよい、また、Qが2価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXは全て2価の基である。Qが3価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが3価の基である。Qが4価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。)
【請求項5】
B成分の環状構造を含む化合物が、下記式(2)で表される請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【化3】

(式中、Qaは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。)
【請求項6】
上記式(2)におけるQaは、下記式(2−1)、(2−2)または(2−3)で表される2価の結合基である請求項5記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【化4】

(式中、Ara、Ara、Ra、Ra、Xa、Xa、Xa、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)中のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。)
【請求項7】
B成分の環状構造を含む化合物が、下記式(3)で表される請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【化5】

(式中、Qbは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである3価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。Yは、環状構造を担持する担体である。)
【請求項8】
上記式(3)におけるQbは、下記式(3−1)、(3−2)または(3−3)で表される3価の結合基である請求項7記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【化6】

(式中、Arb、Arb、Rb、Rb、Xb、Xb、Xb、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但しこれらの内の一つは3価の基である。)
【請求項9】
上記式(3)におけるYは、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーである請求項7記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
B成分の環状構造を含む化合物が、下記式(4)で表される請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【化7】

(式中、Qcは、脂肪族基、芳香族基、脂環族基またはこれらの組み合わせである4価の結合基であり、ヘテロ原子を保有していてもよい。ZおよびZは、環状構造を担持する担体である。)
【請求項11】
上記式(4)におけるQcは、下記式(4−1)、(4−2)または(4−3)で表される4価の結合基である請求項10記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【化8】

(式中、Arc、Arc、Rc、Rc、Xc、Xc、Xc、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)の、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但し、これらの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。)
【請求項12】
上記式(4)におけるZおよびZは各々独立に、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーである請求項10記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】
ポリエステル(A成分)は、主鎖が主として下記式(I)で表される乳酸単位からなり、末端の少なくとも一部がB成分により封止されている請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【化9】

【請求項14】
ポリエステル(A成分)の主鎖は主として、L−乳酸単位、D−乳酸単位またはこれらの組み合わせである請求項13記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項15】
ポリエステル(A成分)は、ポリL−乳酸とポリD−乳酸とにより形成されたステレオコンプレックス相を含む請求項13記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項16】
ポリエステル(A成分)は、主鎖が主として下記式(II)で表される繰り返し単位からなり、末端の少なくとも一部がB成分により封止されている請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【化10】

(式中、nは2から4の整数、Arは1,4−フェニレン基、2,6−ナフタレンジイル基を表す。)
【請求項17】
B成分の含有量が、100重量部のポリエステル(A成分)あたり0.001〜10重量部である請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項18】
示差走査熱量計(DSC)測定で、190℃以上の結晶融解ピークを示す請求項13記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項19】
下記式(i)で規定されるステレオコンプレックス結晶化度(S)が90〜100%である請求項13記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
S=〔ΔHms/(ΔHmh+ΔHms)〕×100 (i)
(但し、ΔHmsは、ステレオコンプレックス相ポリ乳酸の結晶融解エンタルピー、ΔHmhは、ポリ乳酸ホモ相結晶の融解エンタルピーを表す。)
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか一項に記載の製造方法により製造されたポリエステル樹脂組成物。

【公開番号】特開2012−1569(P2012−1569A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135096(P2010−135096)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】