説明

ポリエステル樹脂組成物及びそれを含む接着剤

【課題】 本発明の課題は、自動車部品、電化製品などに配線部品のFFCに用いられる接着剤に関して、錫メッキ銅に対する接着性とブロッキング性の両立を得ることができるFFC用接着剤を提供すること。
【解決手段】 数平均分子量が5000〜40000、ガラス転移温度が50℃以上、カルボキシル末端基が50〜300eq/10gである非晶性ポリエステル樹脂(A)と、数平均分子量が5000〜40000、ガラス転移温度が20℃未満である非晶性ポリエステル樹脂(B)を含み、かつその配合比が(A)/(B)=10/90〜50/50(重量比)であるポリエステル樹脂組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気、電子機器の配線などに使用されるフレキシブルフラットケーブル用接着剤に特に適したポリエステル樹脂組成物に関するものである。さらに詳細にはフレキシブルフラットケーブルの絶縁フィルムを接着するための接着剤として好適なものである。本発明の接着剤は、優れた耐ブロッキング性、ポリエステルフィルムや錫メッキ銅に対する接着性に優れた性能を発揮する。
【背景技術】
【0002】
近年、家電製品や自動車部品の軽薄短小化に伴い、回路基板同士の配線には多心平型のフレキシブルフラットケーブル(以下FFCと略することがある)が多用されるようになった。FFCは錫メッキ銅箔を、接着剤を介して絶縁フィルムと貼り合わせる構造、すなわち絶縁フィルム/接着剤/金属導線/接着剤/絶縁フィルムの構造を有している。絶縁基材としては、機械特性、電気特性の優れた2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム層が用いられていることが多い。
【0003】
最近、フラットケーブルは可動部分の配線に使用されることが多くなっており、これに伴い、耐屈曲特性、耐熱性の要求も高まってきている。フラットケーブルの耐屈曲特性を向上させるには、一般に導体と絶縁基材の接着性を高める必要があるため、接着剤層には導体との接着性に優れる樹脂が選択され、熱可塑性飽和共重合体ポリエステルが主に用いられている(例えば特許文献1参照)。しかしながら従来知られてきたポリエステル系の接着剤では低温で接着させる際の接着性に劣り、耐屈曲特性、耐熱性、耐ブロッキング性に優れた接着剤は未だ提案されていない。
【0004】
【特許文献1】特開平5−17727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、自動車部品、電化製品などに配線部品のFFCに用いられる接着剤に関して、錫メッキ銅に対する接着性とブロッキング性の両立、優れた耐熱性を得ることができるFFC用接着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は以下の樹脂組成物、接着剤とそれを用いたFFCである。
数平均分子量が5000〜40000、ガラス転移温度が50℃以上、カルボキシル末端基が50〜300eq/10gである非晶性ポリエステル樹脂(A)と、数平均分子量が5000〜40000、ガラス転移温度が20℃未満である非晶性ポリエステル樹脂(B)を含み、かつその配合比が(A)/(B)=10/90〜50/50(重量比)であるポリエステル樹脂組成物、それを含む接着剤、その接着剤を用いたフレキシブルフラットケーブルである。
【発明の効果】
【0007】
本発明で得られた樹脂組成物は、錫メッキ銅への接着性と耐ブロッキング性に優れた接着剤として有用であり、特にFFC用接着剤として優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において用いられるポリエステル樹脂(A)のカルボキシル末端基は50〜300eq/10gである。より好ましくは50〜200eq/10g、さらに好ましくは80〜150eq/10gである。カルボキシル末端基がかかる範囲を越えると、金属への密着性、耐熱性、耐加水分解性などの特性に劣る場合がある。
【0009】
本発明において用いられるポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)の数平均分子量は5000〜40000が好ましい。より好ましくは10000〜35000である。数平均分子量が5000より低いと接着剤としての機械的特性が不足してしまい十分な接着性や耐熱性が得られない場合があり、40000を超えると加熱溶融時の溶融粘度が高くなり、接着時のラミネート温度が高くなる傾向にある。
【0010】
本発明において用いられるポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度は50℃以上である。好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上である。ガラス転移温度が50℃以下であるとブロッキングが発生する場合があり、接着剤を塗布した後、フィルム等の基材の取り扱いが困難となる。上限は特に限定されないが接着性の観点から120℃未満であることが好ましい。一方、ポリエステル樹脂(B)のガラス転移温度は20℃未満である。好ましくは15℃未満、より好ましくは10℃未満である。ガラス転移温度が20℃以上であると、金属への密着性が劣る傾向にある。下限は特に限定されないがブロッキング性や接着性、樹脂の取り扱い性を考慮すると−30℃以上であることが好ましい。
【0011】
本発明において用いられるポリエステル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の分散比(以下Mw/Mn)は2.5〜4.0が好ましい。より好ましくは2.7〜3.5である。Mw/Mnが2.5より小さいと接着剤としての耐熱性に劣る傾向にある。一方、4.0を越えると接着剤としての接着性が劣る場合がある。
【0012】
本発明において用いられるポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)の二塩基酸成分としては、以下に示す多価カルボン酸、もしくはそのアルキルエステル、酸無水物を使用できる。多価カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボンル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族二塩基酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂肪族や脂環族ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)等の芳香族多価カルボン酸等が挙げられる。耐熱性や屈曲性を考慮するとテレフタル酸および/またはイソフタル酸を全酸成分のうち、50モル%以上必須成分とするのがより好ましい。
【0013】
また、グリコール成分としては特に制限されるものでは無いが、エチレングリコ−ル、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオ−ル、2−メチル−1,3プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,5−ペンタンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物、1,9−ノナンジオール、2−メチルオクタンジオール、1,10−デカンジオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリカーボネートグリコール等が挙げられる。これらのグリコール成分の中ではエチレングリコール、1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,9−ノナンジオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリカーボネートグリコールが金属への密着性および溶解安定性の点から好ましい。
【0014】
ポリエステル樹脂にカルボキシル基を導入する方法は、ポリエステル樹脂を重合した後に、常圧、窒素雰囲気下で無水トリメリット酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水1,8−ナフタル酸、無水1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン−1,2,3,4−テトラカルボン酸−3,4−無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、ナフタレン−1,8:4,5−テトラカルボン酸二無水物などから1種または2種以上を選択して添加し、付加反応させる方法や、ポリエステルを重縮合する前のオリゴマーにこれらの酸無水物を投入し、次いで減圧下の重縮合反応により高分子量化することで、ポリエステル樹脂にカルボキシル基を導入する方法などがあるが特に限定されない。効率的にカルボキシル基を導入するためには前者の方法が好ましい。好ましい酸無水物は、無水トリメリット酸やエチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリスアンヒドロトリメリテートが挙げられる。
【0015】
本発明において用いられる非晶性ポリエステル樹脂(A)のMw/Mn(分散比)を2.5〜4に調整する方法としては、ポリエステル分子内に分岐構造を導入する方法が好ましい。分岐を導入するための共重合成分としては無水トリメリット酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリスアンヒドロトリメリテート等の多官能カルボン酸やトリメチロールプロパンやペンタエリスリトール等の多官能グリコールを用いる方法がある。これらの成分の共重合量は0.01〜10モル%の範囲にあることが好ましい。
【0016】
本発明において非晶性ポリエステル樹脂(A)と非晶性ポリエステル樹脂(B)の配合比は重量比で(A)/(B)=10/90〜50/50ある。より好ましくは20/80〜30/70である。ポリエステル樹脂(A)成分が10重量%より少ないと、ブロッキング性が劣る場合がある。また、ポリエステル樹脂(B)が50重量%より少ないと、金属への接着性が低下することがある。
【0017】
なお、本発明のポリエステル樹脂組成物には、必要に応じ難燃剤を併用することができる。難燃剤としては、例えば、トリフェニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、トリキシレニルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、キシレニルジフェニルフォスフェート、クレジルビス(2,6−キシレニル)フォスフェート、2−エチルヘキシルフォスフェート、ジメチルメチルフォスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニル)フォスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニル)フォスフェート、ビスフェノールAビス(ジクレジル)フォスフェート、ジエチル−N,N―ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルフォスフェート、リン酸アミド、有機フォスフィンオキサイド、赤燐等のリン系難燃剤、ポリリン酸アンモニウム、フォスファゼン、シクロフォスファゼン、トリアジン、メラミンシアヌレート、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、トリグアナミン、シアヌル酸トリアジニル塩、メレム、メラム、トリス(β−シアノエチル)イソシアヌレート、アセトグアナミン、硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラム等の窒素系難燃剤、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、芳香族スルフォンイミド金属塩、ポリスチレンスルフォン酸アルカリ金属塩等の金属塩系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化ジルコニウム、酸化スズ等の水和金属系難燃剤、シリカ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムスズ酸亜鉛等無機系難燃剤、シリコーンパウダー等のシリコン系難燃剤である。リン化合物含有樹脂自身の高い難燃性と難燃剤が持つ難燃機構の複合効果からより高い難燃効果が得られる。
【0018】
このポリエステル樹脂組成物には、必要に応じ、エポキシ樹脂、酸無水物、イソシアネート化合物等の硬化剤、スズ系、アミン系等の硬化触媒を使用することができる。特に、エポキシ樹脂は耐熱性を発現する上で非常に好ましい。
【0019】
また、本発明のポリエステル樹脂組成物には、各種の添加剤を混合して接着剤、コーティング剤に用いることができる。添加剤としては、上記に示した難燃剤の他にタルク、雲母、ポリエチレン、各種金属塩等の結晶核剤、着色顔料、無機、有期系の充填剤、タック性向上剤等が挙げられる。
【0020】
例えば本発明の組成物を接着剤として用いる場合には、有機溶剤に溶解させ、プラスチックフィルム上に塗工、乾燥することにより接着用フィルムを得ることが出来る。乾燥膜厚としては、200μm〜3μmが好ましい。より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは、70μm以下であり、10μm以上がより好ましい。
【0021】
プラスチックフィルムとしては、ポリエステルフィルム(以下PETフィルムと略す)、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリオキサベンザゾールフィルム等、任意のプラスチックフィルムが用いられるが、ポリエステルフィルムが経済性や汎用性の面で好ましい。プラスチックフィルムには、必要に応じコロナ処理や易接着層を設けることができる。
【実施例】
【0022】
本発明をさらに詳細に説明するために以下に実施例を挙げるが、本発明は実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例に記載された測定値は以下の方法によって測定したものである。
【0023】
樹脂組成:樹脂を重クロロホルムに溶解し、ヴァリアン社製核磁気共鳴分析計(NMR)ジェミニ−200を用いて、H−NMR分析を行ってその積分比より決定した。
【0024】
ガラス転移温度:示差走査熱量計を用い、測定試料10mgをアルミパンに入れ、蓋を押さえて密封し、セイコーインスツルメンツ(株)製示差走査熱量分析計(DSC)DSC−220を用いて、20℃/minの昇温速度で測定することにより求めた。
【0025】
数平均分子量:テトラヒドロフランを溶離液としたウォーターズ社製ゲルろ過浸透クロマトグラフィー(GPC)150cを用い、カラム温度30℃、流量1ml/分にてGPC測定を行った結果から計算して、ポリスチレン換算の測定値を得た。但し、カラムは昭和電工(株)shodex KF−802、804、806を用いた。
【0026】
酸価(カルボキシル末端基量):ポリエステル0.2gを20mlのクロロホルムに溶解し、0.1Nの水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、樹脂10gあたりの当量(eq/10g)を求めた。
【0027】
<ポリエステル樹脂(A)の合成例1>
撹拌器、温度計、流出用冷却機を装備した反応缶内に、テレフタル酸83部、イソフタル酸81部、トリメリット酸2部、エチレングリコール77部、ネオペンチルグリコール79部を仕込み、加圧下4時間かけて230℃まで徐々に上昇し、留出する水を系外に除きつつエステル化反応を行った。続いて重合触媒を入れ、常圧で10分間攪拌した後、1時間かけて10mmHgまで減圧初期重合を行うと共に温度を250℃まで上昇し、更に1mmHg以下で30分後期重合を行った。その後、窒素雰囲気下中、200℃まで冷却した後、トリメリット酸2部を仕込み、30分間攪拌を行い、ポリエステル樹脂(A)合成例1を得た。この様にして得られたポリエステル樹脂の特性値を表1に示した。
【0028】
<ポリエステル樹脂(A)の合成例2および3>
合成例1と同様にして、ポリエステル樹脂(A)の合成例2および3の作成を行った。この様にして得られたポリエステル樹脂の特性値を表1に示した。
【0029】
<ポリエステル樹脂(A)の合成例4>
撹拌器、温度計、流出用冷却機を装備した反応缶内に、テレフタル酸83部、イソフタル酸81部、エチレングリコール77部、ネオペンチルグリコール79部を仕込み、4時間かけて230℃まで徐々に上昇し、留出する水を系外に除きつつエステル化反応を行った。続いて重合触媒を入れ、常圧で10分間攪拌した後、1時間かけて10mmHgまで減圧初期重合を行うと共に温度を250℃まで上昇し、更に1mmHg以下で30分後期重合を行い、ポリエステル樹脂(A)合成例4を得た。この様にして得られたポリエステル樹脂の特性値を表1に示した。
【0030】
<ポリエステル樹脂(B)の合成例5〜8>
ポリエステル樹脂(A)の合成例4と同様にポリエステル(B)の合成例5〜8の作成を行った。この様にして得られたポリエステル樹脂の特性値を表1に示した。
【0031】
【表1】

【0032】
<実施例1>
錫メッキ銅接着性:合成例1〜8で得られた接着剤用ポリエステル樹脂を固形分濃度が30%となるように、メチルエチルケトン/トルエン=1/4(重量比)にて溶解した。この溶解した接着剤用ポリエステル樹脂を固形分量で100部、デカブロモジフェニルエーテルを50部、三酸化アンチモンを36部、二酸化チタンを14部、二酸化ケイ素を4部、ガラスビーズを100部、250mlマヨネーズ瓶に入れて、シェーカーで6時間分散した。この得られた分散溶液を25μmの二軸延伸PETフィルム上に乾燥後の厚みが25μmとなる様に塗布し、120℃で10分乾燥したものを作成した。これを用い、接着層と錫メッキ銅をテスター産業社製ロールラミネータを用いて接着した。なお、ラミネートは温度80〜120℃、圧力0.3MPa、速度1m/minで行った。接着強度は東洋ボールドウイン社製RTM100を用いて、25℃雰囲気下で引っ張り試験を行い、50mm/minの引っ張り速度で、90°剥離接着力を測定した。
【0033】
耐ブロッキング性:上記得られた接着フィルムを同方向に5枚重ね、接着層とPETフィルムが交互に重なるようにした。次いで、このようにして重ねた接着フィルムの上に20g/cmの荷重をかけ、70℃雰囲気中に72時間保存した。この後、接着シートを取り出し、重ねたシート間の接着強度を測定し、下記の判定を行った。
(判定)○:0〜1N/cm △:1〜2N/cm
×:2N/cm以上
【0034】
耐熱性:上記得られた接着フィルム2枚を用い、接着層で錫メッキ銅線を挟み込んでロールラミネータで貼り合せてFFC(PETフィルム/接着剤層/錫メッキ銅線/接着剤層/PETフィルム)を作成した。なお、ラミネートは温度160℃、圧力0.3MPa、速度1m/minで行った。このFFCを90°に折り曲げて、85℃×90RH%×168hrの条件下に放置し、折り曲げ部分のFFCの外観を確認した。
(判定)○:接着剤層と錫メッキCu、または接着剤層とPETの間で剥離が生じなかった。
×:接着剤層と錫メッキCu、または接着剤層とPETの間で剥離が生じた。
【0035】
<実施例2〜8、比較例1〜8>
以下同様にして行った実施例2〜8の評価結果を表2に、比較実施例1〜8の評価結果を表3に示した。
【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
本発明の接着剤組成物は従来技術と比較して、金属接着性および耐ブロッキング性に優れている。
【0039】
それに対して、表3に示したように、比較例1および4では、酸価の低いポリエステル樹脂(A)を使用しているため、金属への密着性に劣る。また、ポリエステル樹脂(A)が分子中に分岐を有していないため、耐熱性も劣る。比較例2および3では、ガラス転移温度の高いポリエステル(B)を使用しているため、金属への密着性に劣る。比較例5および6では、ガラス転移温度の低いポリエステル(B)の配合量が多いため、金属への密着性は優れているが、耐ブロッキング性に劣る。比較例7では、ガラス転移温度の高いポリエステル(B)を使用しているため、金属への接着性が劣り、またポリエステル樹脂(B)の配合量が多いため、耐ブロッキング性に劣る。比較例8ではガラス転移温度の低いポリエステル樹脂(B)の配合量が少ないため、金属への密着性に劣る。表2から分かる様に、本発明のポリエステル接着剤は、接着性、耐ブロッキング性、耐熱性に優れた性能を有することがわかる。それに対して、表3に示したように、比較例1〜8は、錫メッキ銅への接着性、耐ブロッキング性、耐熱性が劣っている。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明で得られた接着剤は、錫メッキ銅への接着性と耐ブロッキング性に優れた接着剤であり、FFC用接着剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量が5000〜40000、ガラス転移温度が50℃以上、カルボキシル末端基が50〜300当量/10gである非晶性ポリエステル樹脂(A)と、数平均分子量が5000〜40000、ガラス転移温度が20℃未満である非晶性ポリエステル樹脂(B)を含み、かつその配合比が(A)/(B)=10/90〜50/50(重量比)であるポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
非晶性ポリエステル樹脂(A)が、ポリエステル樹脂を重合した後に酸無水物を付加反応させて末端基をカルボキシル基に変性した樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
非晶性ポリエステル樹脂(A)が、下記式(1)を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル樹脂組成物。
2.5 ≦ 重量平均分子量/数平均分子量 ≦ 4.0 (1)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物を含む接着剤。
【請求項5】
金属箔とプラスチックフィルムを貼り合わせるために用いることを特徴とする請求項4に記載の接着剤。
【請求項6】
フレキシブルフラットケーブル用に用いることを特徴とする請求項4に記載の接着剤。
【請求項7】
請求項6に記載された接着剤を用いたフレキシブルフラットケーブル。

【公開番号】特開2008−19375(P2008−19375A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−193874(P2006−193874)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】