説明

ポリエステル樹脂組成物

【課題】高い難燃性を有し、加工性に優れるポリエステル樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】熱可塑性ポリエステル樹脂(a)100重量部に対して、エチレンビステトラブロモフタルイミド(b)1〜8重量部、平均粒子径が0.1μm以上1.0μm以下である三酸化アンチモン(c)1〜5重量部を含有するポリエステル樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂組成物に関する。より詳しくは、高い難燃性および高いヘイズを有し、特にフィルムなどの薄肉で不透明性を要求される用途に好適に使用されるポリエステル樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリエステル樹脂、中でもポリブチレンテレフタレート樹脂(以下、必要により「PBT」と略す。)は、優れた耐熱性、成形性、耐薬品性および電気絶縁性など、エンジニアリングプラスチックとして好適な性質を有することから、射出成形用を中心として、各種自動車部品、電気部品、機械部品および建設部品などの用途に使用されている。また、近年ではPBTの有するガスバリア性・耐熱性・形状保持性能などを活かしたフィルム用途における応用が注目されている。
【0003】
従来、各種容器、壁材、床材、テーブルトップ等の住宅用汚染防止材料として、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルムが広く使用されてきた。しかしながら、耐汚染性が十分ではないという課題があり、耐汚染性のより高い樹脂が求められていた。そのような動きの中で、近年、かかる用途に適する材料として、形状追随性、耐汚染性が高いPBTが注目されている。
【0004】
フィルム用PBT樹脂組成物としては、例えば、PBT100重量部に対して、低密度ポリエチレン0.1〜5重量部を含有する樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、熱可塑性ポリエステル樹脂は難燃性に乏しく、PBTを含む樹脂組成物に、臭素化芳香族化合物系難燃剤およびアンチモン化合物を配合して難燃性を付与することが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−265333号公報
【特許文献2】特開2004−277720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来公知のPBT樹脂組成物は、難燃剤含有量が少ないと難燃性が不十分となる一方、難燃性を確保するために難燃剤含有量を多くすると、フィルム成形の際に、難燃剤の凝集物を起点に穴が開いたり、製膜性が不安定になるなど、加工性に課題があった。本発明は、高い難燃性を有し、加工性に優れるポリエステル樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、熱可塑性ポリエステル樹脂に対して、特定の難燃剤、難燃助剤を含有せしめることにより、上記の目的が達成できることを見出し本発明に到達した。
【0009】
即ち、本発明は、
(1)熱可塑性ポリエステル樹脂(a)100重量部に対して、エチレンビステトラブロモフタルイミド(b)1〜8重量部、平均粒子径が0.1μm以上1.0μm以下である三酸化アンチモン(c)1〜5重量部を含有するポリエステル樹脂組成物、
(2)前記熱可塑性ポリエステル樹脂(a)がポリブチレンテレフタレート樹脂である(1)に記載のポリエステル樹脂組成物、
(3)さらにガラス繊維1〜100重量部を含有する上記(1)または(2)に記載のポリエステル樹脂組成物、
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物を成形して得られるフィルム、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高い難燃性を有し、加工性に優れるポリエステル樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「重量」とは「質量」を意味する。
【0012】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステル樹脂(a)とは、ジカルボン酸(あるいは、そのエステル形成誘導体)とジオール(あるいは、そのエステル形成誘導体)とを主成分とする重縮合反応によって得られる重合体ないしは共重合体である。上記ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸およびこれらのエステル形成誘導体などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。また、ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコールなどの炭素数2〜20の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなどの炭素数2〜20の脂環式グリコールおよびこれらのエステル形成誘導体などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0013】
熱可塑性ポリエステル樹脂の好ましい例としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリエチレン(テレフタレート/5−ナトリウムイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ビフェニル−4,4′−ジカルボキシレート)、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらのうち、ポリエステル樹脂組成物の加工性から、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどが好ましい。また、ガスバリア性、耐熱性、形状保持性能の面から、PBTがより好ましい。
【0014】
また、熱可塑性ポリエステル樹脂の相対粘度は、ポリエステル樹脂組成物の機械的特性を向上させるために、1.2以上が好ましく、1.3以上がより好ましい。一方、ポリエステル樹脂組成物の加工性をより向上させるためには、2.0以下が好ましく、1.8以下がより好ましい。なお、本発明における熱可塑性ポリエステル樹脂の相対粘度は、0.5重量%オルトクロロフェノール溶液で、25℃で測定したときの値をいう。
【0015】
本発明に用いられるエチレンビステトラブロモフタルイミド(b)は、一般に使用される他の有機臭素系化合物に比べて化合物中の臭素含有量が非常に高く、少ない含有量で高い難燃性効果を得ることができる。また、エチレンビステトラブロモフタルイミド(b)を含有することにより、ポリエステル樹脂組成物から得られるフィルムのヘイズを高くすることができ、不透明性が求められる用途に適する。
【0016】
本発明のポリエステル樹脂組成物において、エチレンビステトラブロモフタルイミド(b)の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(a)100重量部に対して、1〜8重量部である。エチレンビステトラブロモフタルイミドの含有量が1重量部より少ないと、ポリエステル樹脂組成物の難燃性が不十分となる。また、ポリエステル樹脂組成物から得られるフィルムのヘイズが低下する。好ましくは2重量部以上、より好ましくは4重量部以上である。一方、エチレンビステトラブロモフタルイミドの含有量が8重量部より多いと、フィルム成形時に穴が開いたり、製膜性が不安定になるなど、加工性が低下する。
【0017】
本発明に用いられる三酸化アンチモン(c)は、平均粒子径が0.1μm以上1.0μm以下であることが重要である。三酸化アンチモンの平均粒子径が0.1μm未満であると、粒子同士が凝集して見かけの粒子径が過度に大きくなり、ポリエステル樹脂組成物の難燃性が不十分となる。好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.3μm以上である。一方、三酸化アンチモンの平均粒子径が1.0μmを超えると、ポリエステル樹脂組成物中における分散性が低下し、難燃性が低下し、フィルム成形時に穴が開くなど、加工性が低下する。また、ポリエステル樹脂組成物から得られるフィルムのヘイズが低下する。好ましくは0.5μm以下である。
【0018】
なお、本発明において、三酸化アンチモンの平均粒子径は、以下の式により算出する。
平均粒子径(μm)=6/(比重(g/cm)×比表面積(cm/g)×10000
ここで、比表面積は、島津製作所製、粉体比表面積測定装置SS−100型を用いて、三酸化アンチモン粉末1g当たりの比表面積値を求めることができる。比重は5.2g/cmとする。
【0019】
本発明のポリエステル樹脂組成物において、平均粒子径が0.1μm以上1.0μm以下である三酸化アンチモン(c)の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(a)100重量部に対して、1〜5重量部である。三酸化アンチモンの含有量が1重量部より少ないと、ポリエステル樹脂組成物の難燃性が低下し、ポリエステル樹脂組成物から得られるフィルムのヘイズも低下する。好ましくは2重量部以上、より好ましくは2.5以上である。一方、三酸化アンチモンの含有量が5重量部より多いと、フィルム成形時に穴が開いたり、製膜性が不安定になるなど、加工性が低下する。好ましくは4重量部以下、より好ましくは3重量部以下である。
【0020】
本発明のポリエステル樹脂組成物はガラス繊維(d)を含有してもよく、ポリエステル樹脂組成物から得られる成形品の機械強度を向上させることができる。ガラス繊維としては、公知のガラス繊維を使用することができ、樹脂との親和性、接着性を高めるために適当な表面処理剤による処理が施されたガラス繊維を含有してもよい。
【0021】
上記表面処理剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤、チタネート系カップリング剤などが挙げられる。機械的特性を向上させる観点から、特にシランカップリング剤(例えばアミノシラン、エポキシシラン)が好適に用いられる。
【0022】
本発明のポリエステル樹脂組成物において、ガラス繊維(d)の含有量は、1〜100重量部が好ましく、ポリエステル樹脂組成物から得られる成形品の剛性および機械強度を向上させることができる。好ましくは10〜80重量部、更に好ましくは20〜70重量部である。
【0023】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、熱可塑性ポリエステル樹脂の結晶核剤(例えば、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸バリウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸バリウム、モンタン酸エステルの部分ナトリウム塩あるいはバリウム塩などの有機カルボン酸金属塩、アイオノマー、タルクなど)、結晶化促進剤(例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジベンゾエート、ネオペンチルグリコールジベンゾエート、ポリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノート)などのポリアルキレングリコール誘導体や安息香酸エステル、ポリラクトン類、N−置換トルエンスルホアミドなど)などを含有することができる。
【0024】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、さらに必要に応じて他の各種添加剤(例えば、モンタン酸ワックス、ポリエチレンワックス、シリコンオイルなどの離型剤、難燃剤、帯電防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料など)、他の熱可塑性樹脂(例えば、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂など)、熱硬化性樹脂(例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂など)、他の充填材(例えば、ワラステナイト、炭素繊維、チタン酸カリウム等のウイスカおよび有機繊維等、タルク、カオリン、マイカ、クレー、シリカ、セリサイト、酸化チタン、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスフレーク、ガラスパウダーなど)などを含有することができる。充填材は、樹脂との親和性、接着性を高めるために適当な表面処理剤が施されたものでもよい。
【0025】
本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法は特に限定されるものでないが、例えば、(1)熱可塑性ポリエステル樹脂、エチレンビステトラブロモフタルイミドおよび三酸化アンチモン、必要に応じてガラス繊維、その他添加剤を配合し、スクリュー式押出し機によって混練する一括ブレンド方法、(2)スクリュー式押出機にまず熱可塑性ポリエステル樹脂を供給して溶融し、他の供給口よりエチレンビステトラブロモフタルイミドおよび三酸化アンチモン、必要に応じてガラス繊維およびその他添加剤を供給して混練する分割ブレンド方法などが挙げられ、特に分割ブレンド方法を好適に用いることができる。本発明のポリエステル樹脂組成物は、成形用ポリエステル樹脂組成物として、0.5mm〜10mmの長さを有するペレットとすることが好ましい。
【0026】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、射出成形、押出し成形、吹き込み成形、真空成形などの任意の成形方法により望みの成形品に成形することができる。本発明のポリエステル樹脂組成物は加工性に優れることから、薄肉成形品、特にフィルムに好ましく用いることができる。本発明のポリエステル樹脂組成物を成形して得られるフィルムは、難燃性に優れ、高いヘイズを有することから、薄肉で不透明性が要求される用途に好適である。本発明のポリエステル樹脂組成物を成形して得られるフィルムの厚みは、形状追随性の観点から、100μm以下が好ましい。
【0027】
本発明の成形品は、凹凸に追随できる薄さと不透明性を兼ね備える成形品として、例えば、各種容器、壁材、床材、テーブルトップなどのフィルムに利用できる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明の効果を更に詳細に説明する。本発明の骨子は以下の実施例のみに限定されるものではない。各特性の評価方法は以下の通りである。
【0029】
(1)難燃性
各実施例および比較例で得られたポリエステル樹脂組成物のペレットから、東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温度260℃、金型温度80℃の条件で難燃性評価用試験片の射出成形を行った。試験片の厚みは1/16インチ(約1.59mm)とした。得られた試験片について、UL94垂直試験に定められている評価基準に従い、難燃性を評価した。難燃性はV−0>V−1>V−2の順に難燃性が低下しランク付けされる。
【0030】
(2)ヘイズ
各実施例および比較例で得られたポリエステル樹脂組成物のペレットをあらかじめ130℃で3時間乾燥した。40mmのTダイを有する単軸押出機に前記チップを投入しシリンダ温度260℃、ダイス温度260℃、スクリュー回転数100rpmに設定し、製膜速度5m/分でフィルムを押出し、20mm×20mm×厚み50μmの正方形の試験片を作製し、HGM−2Dスガ試験機で試験片中央のヘイズを測定した。ただし、比較例9については、厚み200μmとした。各試験片について3回ずつ測定し、その平均値を求めた。
【0031】
(3)加工性
上記(2)に記載の条件によりフィルムを5m作製した。得られたフィルムを目視で観察し、フィルムの穴開き数を数えた。
【0032】
(4)形状追随性
上記(2)に記載の方法により押出し、そのフィルム中央の流れ方向(MD方向)に40mm、流れ方向と直角方向に20mm切り取り厚み50μmの短冊状の試験片を作製した。ただし、比較例9については、厚み200μmとした。試験片を23℃50%RH環境下で24時間放置した後、MD方向に半分に折り、折り目に200gの重りを5秒間のせ、重りを取り除いてから5秒後にフィルムの立ち上がり角度を測定した。この操作を各試験片に対して5回実施し、その平均値を算出した。
【0033】
(5)引張強さ
各実施例および比較例で得られたポリエステル樹脂組成物のペレットからタイプA試験片を5個ずつ作製し、ISO527に従って状態調節後、引張強さを測定した。引張速度は、伸度10%以下の場合5mm/分、伸度10%をこえる場合50mm/分とし、伸度10%以下の場合破断強さ、伸度10%を超える場合は降伏強さを求めた。5個の試験片について上記測定を行い、その平均値を求めた。
【0034】
実施例中で使用した成分は次のとおりである。
【0035】
熱可塑性ポリエステル樹脂
<a−1>“トレコン(登録商標)”1100S(商品名、東レ(株)製PBT)。0.5重量%のオルトクロロフェノール溶液を25℃で測定したときの相対粘度が1.45。
<a−2>テレフタル酸65.6重量部、ドデカンジオン酸17.8重量部、1,4−ブタンジオール61.4重量部および触媒としてテトラブチルチタネート0.05重量部、モノブチルスズオキシド0.04重量部を、精留塔および撹拌機のついた反応缶に仕込み、常圧下にて150〜235℃まで4時間かけて昇温し、エステル化反応をさせた。生成した水とテトラヒドロフランとを精留塔を通して留去して、テトラヒドロフラン含有物を得た。次に得られたエステル化反応生成物に、着色防止剤のリン酸0.02重量部と重縮合触媒のテトラブチルチタネート0.05重量部を加えた後、重縮合反応缶に移し、常圧から67Paまで50分間かけて徐々に減圧し、同時に245℃まで昇温して、2時間50分重縮合反応を行い、ドデカンジオン酸13mol%共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂を得た。0.5重量%のオルトクロロフェノール溶液を25℃で測定したときの相対粘度が1.45。
<a−3>ドデカンジオン酸をイソフタル酸に変更した以外は上記のa−2と同様の方法で、イソフタル酸13mol%共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂を得た。0.5重量%のオルトクロロフェノール溶液を25℃で測定したときの相対粘度が1.45。
<a−4>三井PETJ005(商品名、三井化学製ポリエチレンテレフタレート樹脂)。0.5重量%のオルトクロロフェノール溶液を25℃で測定したときの相対粘度が1.45。
<a−5>“トレコン(登録商標)”1200S(商品名、東レ(株)製PBT)。0.5重量%のオルトクロロフェノール溶液を25℃で測定したときの相対粘度が1.60。
<a−6>“トレコン(登録商標)”1050S(商品名、東レ(株)製PBT)。0.5重量%のオルトクロロフェノール溶液を25℃で測定したときの相対粘度が1.37。
【0036】
難燃剤
<b−1>BT93W(商品名、アルベマール(株)製エチレンビステトラブロモフタルイミド)。
<b−2>FG8500(商品名、帝人化成(株)製テトラブロモビスフェノールAポリカーボネートオリゴマー)。
【0037】
三酸化アンチモン
<c−1>PATOX−MF(商品名、日本精鉱(株)製三酸化アンチモン平均粒子径0.3μm)。
<c−2>PATOX−M(商品名、日本精鉱(株)製三酸化アンチモン平均粒子径0.5μm)。
<c−3>PATOX−U(商品名、日本精鉱(株)製三酸化アンチモン平均粒子径0.02μm)。
<c−4>PATOX−SUF(商品名、日本精鉱(株)三酸化アンチモン平均粒子径11μm)。
【0038】
なお、上記三酸化アンチモンの平均粒子径は、以下の式により算出した。
平均粒子径(μm)=6/(比重(g/cm)×比表面積(cm/g))×10000
ただし、島津製作所製、粉体比表面積測定装置SS−100型を用いて、三酸化アンチモン粉末1g当たりの比表面積値を求めた。比重は5.2g/cmとした。
【0039】
ガラス繊維
<d−1>CS3J948(商品名、日東紡績(株)性 繊維径10μmのチョップドストランド状ガラス繊維)。
【0040】
実施例1〜14、比較例1〜9
表1〜3に記載する組成に従って、各成分全てを2軸押出機の元込め部から供給し、シリンダ温度250℃に設定したスクリュー径57mmφの2軸押出機で溶融混練を行い、ペレット状の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を用いて、前記(1)〜(5)記載の方法により、難燃性、ヘイズ、加工性、形状追随性、引張強さを測定した。
【0041】
表1〜3に実施例1〜14および比較例1〜9の組成および評価結果を示す。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
表1の実施例1〜14の評価結果から明らかなように、本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、高い難燃性と加工性を両立する。
【0046】
比較例1は、三酸化アンチモンの平均粒子径が小さいことから難燃性が満足できる結果ではなかった。
【0047】
比較例2は、三酸化アンチモンの平均粒子径が大きいことから難燃性が満足できず、また、フィルム作製時にフィルムに穴開きが発生し、加工性が低かった。また、ヘイズも低い結果であった。
【0048】
比較例3は、三酸化アンチモンの含有量が少ないことから難燃性が満足できず、また、ヘイズも低い結果であった。
【0049】
比較例4は、三酸化アンチモンの含有量が多いことからフィルム作製時に穴開きが発生し、加工性が低かった。
【0050】
比較例5は、エチレンビステトラブロモフタルイミドの含有量が少ないことから難燃性、ヘイズ共に満足できなかった。
【0051】
比較例6は、エチレンビステトラブロモフタルイミドの含有量が多いことからフィルム作製時に穴開きが発生し、加工性が低かった。
【0052】
比較例7は、エチレンビステトラブロモフタルイミドを含有しないことから難燃性が満足できなかった。
【0053】
比較例8は、エチレンビステトラブロモフタルイミド以外の難燃剤を多く含有することから、難燃性を確保できたものの、フィルム作製時に穴開きが発生しい、加工性が低かった。
【0054】
比較例9は、比較例3と同一組成でフィルムの厚みを50μmから200μmに変更した。その結果、ヘイズは92%から98%まで上昇したが、難燃性は不十分であり、形状追随性も低下した。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、薄肉で、難燃性と不透明性が要求される各種容器、壁材、床材、テーブルトップなどのフィルム用途に特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリエステル樹脂(a)100重量部に対して、エチレンビステトラブロモフタルイミド(b)1〜8重量部、平均粒子径が0.1μm以上1.0μm以下である三酸化アンチモン(c)1〜5重量部を含有するポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性ポリエステル樹脂(a)がポリブチレンテレフタレート樹脂である請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
さらにガラス繊維(d)1〜100重量部を含有する請求項1または2に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
上記請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物を成形して得られるフィルム。

【公開番号】特開2011−178975(P2011−178975A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47566(P2010−47566)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】