説明

ポリエステル組成物

【課題】飲料などの液体を充填する用途に好適な、口部の機械強度や密閉性に優れた中空中空成形容器を、高い生産性で成形できる結晶化特性に優れたポリエステルを提供すること。
【解決手段】ポリオレフィン成分を0.001ppm〜50000ppm含むポリエステル組成物であって、トルエンで抽出したときに、当該組成物重量に対するポリオレフィン成分の抽出量の割合が0.001ppm以下であることを特徴とするポリエステル組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶化特性に優れたポリエステルに関し、さらに詳しくは、飲料などの液体を充填する用途に用いられる容器の素材として好適であり、かつ生産性良く口部の機械強度や密閉性に優れた中空容器が成形できるようなポリエステル組成物、およびそれからなる中空成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、炭酸飲料、ジュース、ミネラルウォーター、酒、各種飲用茶、食用油、液体調味料などの液体を充填する容器の素材として、種々のプラスチック素材が用いられている。
中でもポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルは、透明性、ガスバリア性、耐熱性、機械的強度などに優れているため、飲料用の中空成形容器などの形成素材として多用されている。
【0003】
このような中空成形容器の製造にあたっては、高速で製造することが望まれており、生産性良く製造することのできる素材が求められている。高速で中空成形容器を製造するためには、円滑に成形が行える範囲で加熱結晶化速度の高い素材を用いることがよい。しかしながら、結晶化速度が高すぎると、好適な成形条件幅が狭くなるため、成形体製造時の歩留りが低くなる。このため上記のような中空成形容器の製造用素材は、成形効率と成形条件とを勘案して、適正な結晶化速度を有していることが望ましい。
【0004】
こうした要請から、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルに種々の添加剤を加えて結晶化速度を調整したポリエステル組成物が提案されている。
【0005】
例えば特許文献1には、ポリエチレンテレフタレートにポリプロピレンなどのポリオレフィンが0.002〜200ppmの割合で含まれているポリエステル樹脂組成物が提案され、特許文献2には、ポリエステル樹脂にポリプロピレンを0.1ppb〜1000ppmの割合で配合したポリエステル樹脂組成物が提案され、特許文献3には、エチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル樹脂にポリエチレンが0.1〜45ppbの割合で含まれているポリエステル樹脂組成物が提案されている。
【0006】
また添加剤の添加方法として、特許文献4および特許文献5には、輸送配管中でポリエチレンテレフタレートのチップを添加剤の棒状または網状部材に接触させて含有させる方法が提案されている。しかし上記の方法では、チップ表面に添加剤が付着しているだけであるため、プロセス内での輸送等により添加剤が剥がれる可能性がある。また一部のチップにのみ添加剤が付着し、樹脂中に添加剤量のばらつきが生じるという問題点があり、結晶化速度の制御性は十分ではない。このためより均一かつ確実に添加剤を混合する方法が必要とされている。
【0007】
また、特許文献6には、ポリエチレンテレフタレートと異種の結晶性熱可塑性樹脂を含有したポリエチレンテレフタレートとを粒状体で混合し、その後に溶融混錬する方法が提案されている。しかし上記の方法では、ポリエチレンテレフタレート粒状体を再度溶融するため、熱履歴の影響を受け、中空成形容器が黄色味を帯びること、および味覚に悪影響を及ぼすアセトアルデヒドが増加することが懸念される。
【特許文献1】特開平8−302168号公報
【特許文献2】特開平9−194697号公報
【特許文献3】特開平9−151308号公報
【特許文献4】特開平9−71639号公報
【特許文献5】特開平11−172084号公報
【特許文献6】特開平11−172088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであって、飲料などの液体を充填する用途に好適な、口部の機械強度や密閉性に優れた中空成形容器を、高い生産性で成形できる結晶化特性に優れたポリエステルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討の結果、
(A)ポリオレフィン成分を0.001ppm〜50000ppm含むポリエステル組成物であって、トルエンで抽出したときに、当該組成物重量に対するポリオレフィン成分の抽出量の割合が0.001ppm以下であることを特徴とするポリエステル組成物、
が上記課題を解決できることを見出して本発明を完成した。
【0010】
ポリオレフィン成分の、より好ましい範囲は以下の通りである:
好ましくは 0.002ppm〜50ppm
より好ましくは 0.003ppm〜1ppm
さらに好ましくは 0.005ppm〜0.1ppm
最も好ましくは 0.005ppm〜0.05ppm
【0011】
さらに、(B)285℃で成形した射出成形品における昇温結晶化温度と、半結晶化時間が次の関係を満たすことを特徴とするところの(A)記載のポリエステル、が好ましいことを見出した。
(式1) 40≦t1/2≦105
(式2) t1/2≦(Tcc−117)/0.45 (40≦t1/2≦60のとき)
t1/2≦(Tcc−134)/0.17 (60<t1/2≦105のとき)
(ただし、t1/2は示差走査熱分析装置により測定した成形体の180℃における半結晶化時間[秒]であり、Tccは示差走査熱分析装置において10℃/分にて昇温させたときの昇温結晶化ピーク温度[℃]である。)
【0012】
前記ポリエステルは下式を満たすことがより好ましく、
(式3) 40≦t1/2≦105
(式4) t1/2≦(Tcc −120)/0.45 (40≦t1/2≦60)
t1/2≦(Tcc −137)/0.17 (60<t1/2≦105)
【0013】
更に前記ポリエステルは下式を満たすことがとりわけ好ましい:
(式5) 40≦t1/2≦105
(式6) t1/2≦(Tcc −123)/0.45 (40≦t1/2≦60)
t1/2≦(Tcc −140)/0.17 (60<t1/2≦105)
【0014】
上記(A)または(B)に記載の組成物は、下記一般式(1)または(2)で表される構造の共重合ユニットをポリエステルに共重合して得ることができる。
【0015】
【化1】

【0016】
【化2】

【0017】
上記一般式(1)または(2)で表される構造において、R=R=R=水素であることが好ましい。
また、上記ポリエステル組成物は中空成形体として好適に用いることが出来る。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るポリエステル組成物は、透明性、口部の機械強度や密閉性に優れた中空成形体を生産性良く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(ポリエステル)
本発明に用いるポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体とから主になる。
【0020】
ここで、芳香族ジカルボン酸としては、たとえば、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−スルホンビス安息香酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−スルフィドビス安息香酸、4,4’−オキシビス安息香酸などを使用することができる。これらは1種単独で用いることもできるし、2種以上を用いることもできる。
【0021】
本発明のポリエステルの芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸のうち1種単独、或いは2種以上を主成分として80mol%以上含むことが好ましく、90mol%以上含むことがより好ましい。また、芳香族ジカルボン酸がテレフタル酸を主成分として80mol%以上含むことがさらに好ましく、90mol%以上含むことが特に好ましい。
【0022】
また、ジオールの主成分はエチレングリコールであるが、エチレングリコールは全ジオール単位中に好ましくは90mol%以上、より好ましくは95mol%以上含み、それ以外としては、たとえば、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ドデカメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどを使用することができる。これらはエチレングリコール以外に、1種、或いは2種以上を用いることもできる。
【0023】
また、本発明では、芳香族ジカルボン酸とともに、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸類、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸類等を共重合成分として使用することができる。
【0024】
また、エチレングリコール以外のジオール成分として、上記の脂肪族ジオールとともに、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族ジオール類、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビスフェノール類、ハイドロキノン、レゾルシンなどの芳香族基を含むジオール類等も使用することができる。
【0025】
さらに本発明では、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸等の多価カルボン酸類、グリセリン、ジグリセリン、(トリスヒドロキシメチル)メタン、1,1,1,−(トリスヒドロキシメチル)エタン、1,1,1,−(トリスヒドロキシメチル)プロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、グルコース、ラクトース、ガラクトース、フルクトース、サッカロース、1,3,5−トリスヒドロキシエトキシイソシアヌレート等の多価アルコール類、グリコール酸、乳酸、4−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、5−ヒドロキシ−n−吉草酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、p−ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸類などの多官能化合物から導かれる単位を共重合成分として少量例えばジカルボン酸単位100モル%に対して2モル%以下の量で含んでいてもよい。
【0026】
(ポリオレフィン)
本発明に用いられるポリオレフィンとは、分子中にポリオレフィン鎖を含有する物質を指す。ポリオレフィン鎖はMw(重量平均分子量)が250〜500000であることが好ましく、Mwが400〜100000であることがより好ましく、Mwが1000〜50000であることがさらに好ましい。
【0027】
ポリオレフィン鎖としては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4-メチル−1−ペンテン、ポリ−1−ヘキセン、ポリスチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−ノルボルネン共重合体、エチレン−スチレン共重合体などが挙げられる。また、これらのポリオレフィン鎖は、ブタジエン、イソプレン、ビニルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、酢酸ビニル等の共重合成分を含有していてもよい。
【0028】
本発明のポリエステル組成物は、ポリオレフィンを0.001ppm〜50000ppmの範囲で含有するが、トルエンで抽出される量が0.001ppm以下であることを特徴とする。
このようにトルエンで抽出される量を少なくするために、ポリオレフィン成分はポリエステルと化学的に結合していることが好ましい。
【0029】
ポリオレフィン鎖を共重合成分としてポリエステルに導入する方法は特に限定されない
が、エステル形成性官能基を有するポリオレフィンの存在下に芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体とを重縮合反応させることなどにより、ポリオレフィン鎖を共重合させることができる。
【0030】
ここで、ポリオレフィン鎖が有するエステル形成性官能基は1つでもよいが、好ましくは2つ以上であることが好ましく、より好ましくは2つ以上のエステル形成性官能基が隣接する炭素原子上に位置することが好ましい。ポリオレフィン鎖がエステル形成性官能基を1つしか有しない場合、これをポリエステルと共重合すると必然的にポリオレフィン鎖がポリエステルの末端部に位置することとなり、熱安定性その他の点で安定性が低いポリエステルしか得られないことがある。
【0031】
上記隣接する炭素原子上に位置するエステル形成性官能基としては、たとえばα,β−ジオール、α,β−ジカルボン酸、β−ヒドロキシカルボン酸、あるいはそれらのエステル形成性誘導体、およびエポキシ基が挙げられる。これらのエステル形成性官能基対等はポリオレフィン鎖の末端部に位置することが好ましいが内部に位置していてもよく、一つのポリオレフィン鎖に1つ存在することが好ましいが2つ以上存在していてもよい。これらの具体的な態様としては、たとえば、ポリオレフィンの片末端にα,β−ジオールが位置する形態、直鎖状ポリオレフィンの両末端にα,β−ジオールが位置する形態、ポリオレフィンの内部鎖にα,β−ジオールが位置する形態、直鎖状ポリオレフィンの分岐鎖にα,β−ジオールが位置する形態などが挙げられる。
【0032】
本発明のポリエステル組成物に共重合成分として含有されるポリオレフィン鎖の量は、ポリエステルの重量に対して好ましくは 0.002ppm〜50ppm
より好ましくは 0.003ppm〜1ppm
さらに好ましくは 0.005ppm〜0.1ppm
最も好ましくは 0.005ppm〜0.05ppmである。
【0033】
ポリオレフィン鎖の含有量が前記範囲未満であると、ポリエステル組成物の結晶化速度が遅くなり、中空成形体の生産性が低くなることがある。また前記範囲を超えると、透明性や耐熱性などに悪影響を与えることがある。
【0034】
本発明のポリオレフィンは、下記一般式で表されるジオール基含有ポリオレフィン化合物(A)またはそのエステル形成性誘導体、或いはエポキシ基含有ポリオレフィン化合物(B)が好ましい。(A)または(B)の共存下に、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体とを重縮合反応させるとポリオレフィン成分を0.001〜50000ppmの範囲で含有しつつ、かつトルエン抽出分が0.001ppm以下であるポリエステル組成物が得られる。
【0035】
【化3】

【0036】
【化4】

【0037】
上記のRは、Mw(重量平均分子量)が好ましくはMwが250〜500000、Mw/Mnが1〜10の炭化水素基全般、より好ましくはMwが400〜100000,Mw/Mnが1〜10の炭化水素基全般、さらに好ましくはMwが1000〜50000,Mw/Mnが1〜10の炭化水素基全般である。
【0038】
また、R2、R3、R4は、いずれも水素或いは、Mwが15〜1000000で、Mw/Mnが1〜10の炭化水素基全般、好ましくはいずれも水素或いは、Mwが15〜100000、Mw/Mnが1〜10の炭化水素基全般、より好ましくはいずれも水素或いは、Mwが15〜10000,Mw/Mnが1〜10の炭化水素基全般、特に好ましくはいずれも水素である。
【0039】
、R2、R3、R4で表される炭化水素基は、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4-メチル−1−ペンテン、ポリ−1−ヘキセン、ポリスチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−ノルボルネン共重合体、エチレン−スチレン共重合体などの各種ポリオレフィン鎖であることが好ましく、これらの中ではポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィン鎖であることがより好ましい。
【0040】
(共重縮合法)
ポリオレフィン鎖をポリエステルに導入する方法としては、特に限定されないが、前記一般式(A)で表されるジオール基含有ポリオレフィン化合物またはそのエステル形成性誘導体、或いは一般式(B)で表されるエポキシ基含有ポリオレフィン化合物を共存させて、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体とを重縮合反応させること、あるいは前記一般式(A)で表されるジオール基含有ポリオレフィン化合物またはそのエステル形成性誘導体、或いは前記一般式(B)で表されるエポキシ基含有ポリオレフィン化合物をポリエステルに添加した後ポリエステルを加熱溶融させることなどにより、これら共重合ユニットを共重合させることができる。
【0041】
一般式(A)で表されるジオール基含有ポリオレフィン化合物、または一般式(B)で表されるエポキシ基含有ポリオレフィン化合物は、特開2003-73412号公報に記載の方法でR1を主鎖とする末端ビニルオレフィンを重合し、ついで末端ビニル基を過酸化水素等でエポキシ化して調製することができる。このような化合物(A)は、同様に末端ビニル基を過酸化水素等で酸化してエポキシ化した後に、アルコール等で開環ジオール化して調製することができる。これらについては、H NMRなどを測定することにより末端構造を確認することができる。
【0042】
本発明のポリエステル組成物は、透明性を保持しながら、昇温時の結晶化速度を安定的
に向上させることが可能である。
【0043】
しかしながら、本発明のポリエステル組成物は、結晶化温度が成形に好適な範囲に制御
されるとともに、成形体の透明性がポリエステル単独の場合と同等に保持することができる。これは、本発明のポリエステルに共重合している共重合ユニット、或いはポリエステルの重縮合反応時に共存させたジオール基含有ポリオレフィン化合物(A)またはそのエステル形成性誘導体、およびエポキシ基含有ポリオレフィン化合物(B)が、溶融状態から非晶状態に急冷固化される際には、ポリエステルに対する核剤効果を示し得ないためであろうと考えられる。
【0044】
上記のジオール基含有ポリオレフィン化合物(A)またはそのエステル形成性誘導体、或
いはエポキシ基含有ポリオレフィン化合物素(B)の含有量は、ポリエステルの重量に対して
好ましくは 0.002ppm〜50ppm
より好ましくは 0.003ppm〜1ppm
さらに好ましくは 0.005ppm〜0.1ppm
最も好ましくは 0.005ppm〜0.05ppmである。
ジオール基含有ポリオレフィン化合物(A)またはそのエステル形成性誘導体、或いはエポキシ基含有ポリオレフィン化合物素(B)の含有量が前記範囲未満であると、ポリエステル組成物の結晶化速度が遅くなり、中空成形体の生産性が低くなることがある。また前記範囲を超えると、透明性や耐熱性などに悪影響を与えることがある。
【0045】
本発明のポリエステルは、チタンをチタン原子として0.1ppm以上含有してもよく、本発明のポリエステル中のチタン含有量は、チタン原子として0.1〜50ppmであることがより好ましく、1〜20ppmであることがさらに好ましい。
【0046】
チタン含有量が前記範囲未満であると、ポリエステルの生産性が低くなることがあり、一方、前記範囲を超えると、ポリエステルを溶融成形する際に色調などの品質が悪化することがある。
【0047】
本発明のポリエステルはアルミニウムをアルミニウム原子として0.1ppm以上含有してもよく、本発明のポリエステルのアルミニウム含有量は1〜100ppmであることがより好ましく、2〜50ppmであることがさらに好ましい。
【0048】
アルミニウム含有量が前記範囲未満であると、ポリエステルの生産性が低くなることがあり、一方、前記範囲を超えると、ポリエステルを溶融成形する際に色調などの品質が悪化することがある。
【0049】
本発明のポリエステルは、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を、それらの原子の総量として0.1ppm以上含有してもよく、本発明のポリエステルに含有されるアルカリ金属およびアルカリ土類金属の総量は0.1〜300ppmであることが好ましく、1〜200ppmであることがより好ましく、2〜100ppmであることがさらに好ましい。
【0050】
ポリエステルに含有されるアルカリ金属およびアルカリ土類金属の総量が前記範囲未満であると、ポリエステルを溶融成形する際に色調などの品質が悪化することがあり、一方、前記範囲を超えると、得られるポリエステル成形体の透明性などの品質が悪化することがある。
【0051】
本発明のポリエステルは、アンチモン原子として0.1ppm以上含有してもよく、本発明のポリエステルのアンチモン含有量は、アンチモン原子として0.1〜300ppmであることが好ましく、0.1〜250ppmであることがより好ましい。
【0052】
本発明のポリエステルは、ゲルマニウム原子として0.1ppm以上含有してもよく、本発明のポリエステルのゲルマニウム含有量は、ゲルマニウム原子として0.1〜200ppmであることが好ましく、0.1〜150ppmであることがより好ましい。
【0053】
本発明のポリエステルは、リンを含有してもよく、本発明のポリエステルのリン含有量はリン原子として0.1ppm〜100ppmであることが好ましく、2〜50ppmであることがより好ましく、3〜30ppmであることがさらに好ましい。
【0054】
リン含有量が前記範囲未満であると、ポリエステルを溶融成形する際に色調などの品質が悪化することがあり、一方、前記範囲を超えると、ポリエステルの生産性が低くなることがある。
【0055】
本発明のポリエステルの製造方法において、必要に応じて重縮合触媒を用いることができる。用いられる重縮合触媒としては、たとえば、ホウ素、アルミニウム、チタン、ガリウム、マンガン、コバルト、亜鉛、ケイ素、ジルコニウム、スズ、スカンジウム、イットリウム、ランタン、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンチモン、ゲルマニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の化合物などが挙げられる。
【0056】
本発明のポリエステルの製造方法において用いられるアルミニウム化合物としては、たとえば、フッ化アルミニウム、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化水酸化アルミニウム、臭化アルミニウム、ヨウ化アルミニウムなどのハロゲン化アルミニウム化合物;
炭酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムナトリウムなどの無機酸アルミニウム塩化合物;
水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミン酸アンモニウム、アルミン酸ナトリウム、水素化リチウムアルミニウムなどのその他の無機アルミニウム化合物;
トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、メチルアルモキサンなどのアルミニウム有機金属化合物;
トリフェノキシアルミニウムなどのアリーロキシアルミニウム化合物;
トリス(トリメチルシロキシ)アルミニウム、トリス(トリフェニルシロキシ)アルミニウムなどのシロキシアルミニウム化合物;
酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、酒石酸アルミニウム、アルミニウムアセチルアセトネート、有機スルホン酸アルミニウム、有機ホスホン酸アルミニウムなどの有機酸アルミニウム塩化合物;
トリス(ジエチルアミノ)アルミニウム、アルミニウムトリピロリドなどのアルミニウムアミド化合物;
アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ−n−プロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド、アルミニウムトリ−2−エチルヘキソキシドなどのアルミニウムアルコキシド類;
およびそれらの加水分解物が挙げられる。
【0057】
これらの中では、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、酢酸アルミニウム、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムトリ-sec-ブトキシドなどが好ましい。
【0058】
これらのアルミニウム化合物は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。また、これらのアルミニウム化合物は、必要に応じて、溶媒、たとえば水やアルコール類で希釈するなど、他の化合物と組み合わせて用いることができる。
【0059】
本発明のポリエステルの製造方法において必要に応じて用いられるチタン化合物としては、たとえば、
四フッ化チタン、四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン、ヘキサフロロチタン酸などのハロゲン化チタン化合物;
α−チタン酸、β−チタン酸、チタン酸アンモニウム、チタン酸ナトリウム、ペルオキソチタン酸錯体、アナターゼなどのチタン酸化合物;
硫酸チタン、硝酸チタン、リン酸チタン、ケイ酸チタンなどの無機酸チタン塩化合物;
テトラメチルチタン、テトラエチルチタン、テトラベンジルチタン、テトラフェニルチタン、ビス(シクロペンタジエニル)チタンジクロライドなどのチタン有機金属化合物;
テトラフェノキシチタンなどのアリーロキシチタン化合物;
テトラキス(トリメチルシロキシ)チタン、テトラキス(トリフェニルシロキシ)チタンなどのシロキシチタン化合物;
酢酸チタン、プロピオン酸チタン、乳酸チタン、クエン酸チタン、酒石酸チタン、シュウ酸チタニルカリウム、有機スルホン酸チタン、有機ホスホン酸チタンなどの有機酸チタン塩化合物;
テトラキス(ジエチルアミノ)チタン、チタンテトラピロリドなどのチタンアミド化合物;
または下記に詳述されるアルコキシチタン化合物など、およびそれらの加水分解物が挙げられる。
【0060】
上記のチタン化合物の加水分解物を得る方法には、たとえば欧州特許EP1013692号公報記載の方法を用いることができる。
【0061】
なお、上記のアルコキシチタン化合物としては、たとえば、
チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラ−n−プロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラ−2−エチルヘキソキシドなどのチタンテトラアルコキシド類;
ポリ(ジブチルチタネート)、Ti7O4(OC2H5)20、Ti16O16(OC2H5)32などの縮合チタンアルコキシド類;
クロロチタントリイソプロポキシド、ジクロロチタンジエトキシドなどのハロゲン置換チタンアルコキシド類;
チタンアセテートトリイソプロポキシド、チタンメタクリレートトリイソプロポキシドなどのカルボン酸基置換チタンアルコキシド類;
チタントリス(ジオクチルピロホスフェート)イソプロポキシド、チタン(モノエチルホスフェート)トリイソプロポキシドなどのホスホン酸基置換チタンアルコキシド類;
チタントリス(ドデシルベンゼンスルホネート)イソプロポキシドなどのスルホン酸基置換チタンアルコキシド類;
アンモニウムヘキサエトキシチタネート、ナトリウムヘキサエトキシチタネート、カリウムヘキサエトキシチタネート、ナトリウムヘキサ−n−プロポキシチタネートなどのアルコキシチタネート類;
チタンビス(2,4−ペンタンジオナート)ジイソプロポキシド、チタンビス(エチルアセトアセテート)ジイソプロポキシドなどのβ−ジケトネート置換チタンアルコキシド類;
チタンビス(アンモニウムラクテート)ジイソプロポキシドなどのα−ヒドロキシカルボン酸置換チタンアルコキシド類;および
チタンビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキシド、2−アミノエトキシチタントリイソプロポキシドなどのアミノアルコール置換チタンアルコキシド類などが挙げられる。
【0062】
これらの中では、四塩化チタン、α−チタン酸、酢酸チタン、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、およびそれらの加水分解物が好ましい。
【0063】
また国際特許公開WO2004/111105に記載の、チタンと脂肪族ジオールと3価以上の多価アルコールを含有するチタン含有溶液、および溶液中のチタン含有化合物の粒子直径が主として0.4nm以上5nm以下であるチタン含有溶液も好ましく用いることができる。
【0064】
これらのチタン化合物は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。また、これらのチタン化合物は、必要に応じて、溶媒、たとえば水やアルコール類で希釈するなど、他の化合物と組み合わせて用いることができる。
【0065】
本発明のポリエステルの製造方法において用いられるアンチモン化合物としては、酸化
アンチモン、酢酸アンチモン、塩化アンチモンなどが挙げられ、特に酸化アンチモンまたは酢酸アンチモンが好ましい。
【0066】
本発明のポリエステルの製造方法において用いられるゲルマニウム化合物としては、二
酸化ゲルマニウム、酢酸ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシドなどが挙げられ、特に二酸化ゲルマニウムが好ましい。
【0067】
本発明のポリエステルの製造方法において、必要に応じて用いられるアルカリ金属化合物は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の化合物である。
【0068】
リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の化合物としては、これらの元素の単体、水素化物、酸化物、硫化物、水酸化物、有機金属化合物、アルコキシド、酢酸塩などの脂肪酸塩、炭酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、アミノ酸塩、硫酸塩、有機スルホン酸塩、リン酸塩、有機ホスホン酸塩、硝酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、アルミン酸塩、塩化物などのハロゲン化物、アセチルアセトナート塩などが挙げられる。
【0069】
これらの化合物の中では、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ナトリウムメトキシド、酢酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウムなどが好ましい。
【0070】
本発明のポリエステルの製造方法において、必要に応じて用いられるアルカリ土類金属
化合物は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の化合物である。
【0071】
ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の化合物としては、これらの元素の単体、水素化物、酸化物、硫化物、水酸化物、有機金属化合物、アルコキシド、酢酸塩などの脂肪酸塩、炭酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、アミノ酸塩、硫酸塩、有機スルホン酸塩、リン酸塩、有機ホスホン酸塩、硝酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、アルミン酸塩、塩化物などのハロゲン化物、アセチルアセトナート塩などが挙げられる。
【0072】
これらの化合物の中では、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸カルシウムなど
が好ましい。
【0073】
本発明のポリエステルの製造方法においては、必要に応じて鉄、ニッケル、銅等その他
の金属化合物を用いることができる。
【0074】
本発明のポリエステルの製造方法においては、必要に応じてリン化合物を用いることが
できる。リン化合物を用いると、ポリエステルの色調などの品質が向上できることがある。
【0075】
上述した、必要に応じて用いられるリン化合物としては、たとえば、
トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ-n-ブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;
トリフェニルホスファイト、トリスドデシルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイトなどの亜リン酸エステル類;
メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート等の酸性リン酸エステル類;
メチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、3,5−ジ(t−ブチル)−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸などの有機ホスホン酸およびその塩またはエステル類;およびリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸などのリン化合物およびそれらの塩などが挙げられる。
【0076】
これらの中では、トリ-n-ブチルホスフェート、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、フェニルホスホン酸、リン酸、ピロリン酸、カルシウムビス(モノエチル((3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ホスフォネート)、ジエチル((3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ホスフォネート
などが好ましい。
【0077】
これらのリン化合物は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。また、これらのリン化合物は、必要に応じて、溶媒、たとえば水やアルコール類、好ましくはエチレングリコールで希釈するなど、他の化合物と組み合わせて用いることができる。
【0078】
本発明のポリエステルの製造方法において、必要に応じて用いられる窒素化合物は、ア
ンモニア、ヒドロキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピロリジン、モルホリン、1,4,7−トリアザシクロノナン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、アミノエタノール、アニリン、ピリジンなどのアミン化合物、および、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム化合物などが挙げられる。
【0079】
これらの化合物の中では、トリエチルアミン、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどが好ましい。
【0080】
上記のアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物および窒素化合物は、1種単独で
、または2種以上組み合わせて用いることができる。また、これらの化合物は、必要に応じて、水、アルコール類などの溶媒で希釈するなど、他の化合物と組み合わせて用いることができる。
【0081】
本発明のポリエステルの製造方法において、必要に応じて用いられるイオウ化合物としては、
硫黄単体;
硫化アンモニウム、硫化ナトリウムなどのサルファイド化合物;
亜硫酸、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウムなどのスルフィン酸化合物;
硫酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのスルホン酸類;
硫酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムリチウム、硫酸アルミニウムナトリウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムアンモニウムなどの硫酸塩;
三酸化硫黄、過硫酸、チオ硫酸ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウムなどその他の無機硫黄化合物;
硫酸ジメチル、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、などのその他の有機硫黄化合物などが挙げられる。
【0082】
これらの中では、硫酸、p−トルエンスルホン酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムナトリウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムアンモニウムなどが好ましい。
【0083】
上記の硫黄化合物は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
また、これらの化合物は、必要に応じて、水、アルコール類などの溶媒で希釈するなど、他の化合物と組み合わせて用いることができる。
【0084】
なお、上記のイオウ化合物は、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ナトリウムや4−カルボキシベンゼンスルホン酸ナトリウムのようなポリエステルに共重合可能なイオウ化合物であってもよいが、好ましくは共重合性のイオウ化合物でないことが望ましい。
【0085】
(ポリエステル組成物の製造方法)
本発明のポリエステル組成物は、前記一般式で表されるジオール基含有ポリオレフィン化合物(A)またはそのエステル形成性誘導体、或いはエポキシ基含有ポリオレフィン化合物(B)の共存下に、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とエチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体とを重縮合反応させることにより好適に得られる。
【0086】
芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とは、芳香族ジカルボン酸およびその塩、エステル、酸無水物または酸塩化物などを指す。エチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体とは、エチレングリコールおよびそのアルコキシド、エステルまたはエーテルなどを指す。以下、ポリエステル組成物の製造方法の一例(芳香族ジカルボン酸がテレフタル酸)について説明する。
【0087】
(エステル化)
まず、ポリエステルを製造するに際して、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸類またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコールを主成分とするジオール類またはそのエステル形成性誘導体をエステル化させる。
具体的には、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体とを含むスラリーを調製する。
【0088】
(EG/TAモル比)
このようなスラリーにはテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体1モルに対して、通常1.005〜1.5モル、好ましくは1.01〜1.2モルのエチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体が含まれる。このスラリーは、エステル化反応工程に連続的に供給される。
エステル化反応は、好ましくは2個以上の反応器を直列に連結した装置を用いて、ジオールが還流する条件下で反応によって生成した水を精留塔で系外に除去しながら行う。
【0089】
(エステル化反応条件)
エステル化反応工程は通常多段で実施され、第1段目のエステル化反応は、通常、反応温度が240〜270℃、好ましくは245〜265℃であり、圧力が0.02〜0.3MPaG(0.2〜3kg/cm2 G)、好ましくは0.05〜0.2MPaG(0.5〜2kg/cm2G)の条件下で行われ、また最終段目のエステル化反応は、通常、反応温度が250〜280℃、好ましくは255〜275℃であり、圧力が0〜0.15MPaG(0〜1.5kg/cm2G)、好ましくは0〜0.13MPaG(0〜1.3kg/cm2 G)の条件下で行われる。
【0090】
エステル化反応を2段階で実施する場合には、第1段目および第2段目のエステル化反応条件がそれぞれ上記の範囲であり、3段階以上で実施する場合には、第2段目から最終段の1段前までエステル化反応条件は、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件であればよい。
【0091】
例えば、エステル化反応が3段階で実施される場合には、第2段目のエステル化反応の反応温度は通常245〜275℃、好ましくは250〜270℃であり、圧力は通常0〜0.2MPaG(0〜2kg/cm2 G)、好ましくは0.02〜0.15MPaG(0.2〜1.5kg/cm2G)であればよい。
【0092】
(エステル化率)
これらの各段におけるエステル化反応率は、特に制限はされないが、各段階におけるエ
ステル化反応率の上昇の度合いが滑らかに分配されることが好ましく、さらに最終段目のエステル化反応生成物においては通常90%以上、好ましくは93%以上に達することが望ましい。
【0093】
このエステル化工程により、テレフタル酸とエチレングリコールとのエステル化反応物である低次縮合物(エステル低重合体)が得られ、この低次縮合物の数平均分子量が500〜5,000程度である。
【0094】
ジオール基含有ポリオレフィン化合物(A)またはそのエステル形成性誘導体、或いはエポキシ基含有ポリオレフィン化合物(B)は、原料スラリー調製工程、エステル化工程、液相重縮合工程等のいずれの工程に添加してもよく、エステル化工程終了後、下記溶融状態での重縮合の開始までに添加することが好ましい。
【0095】
上記のようなエステル化工程で得られた低次縮合物は、次いで重縮合(液相重縮合)工程に供給される。
【0096】
(液相重縮合工程)
液相重縮合工程においては、エステル化工程で得られた低次縮合物を、減圧下で、かつ改質ポリエチレンテレフタレートの融点以上の温度(通常250〜280℃)に加熱することにより重縮合させる。この重縮合反応では、未反応のエチレングリコールを反応系外に留去させながら行われることが望ましい。
【0097】
重縮合反応は、1段階で行ってもよく、複数段階に分けて行ってもよい。例えば、重縮合反応が複数段階で行われる場合には、第1段目の重縮合反応は、反応温度が250〜290℃、好ましくは260〜280℃、圧力が0.07〜0.003MPaG(500〜20Torr)、好ましくは0.03〜0.004MPaG(200〜30Torr)の条件下で行われ、最終段の重縮合反応は、反応温度が265〜300℃、好ましくは270〜295℃、圧力が1〜0.01kPaG(10〜0.1Torr)、好ましくは0.7〜0.07kPaG(5〜0.5Torr)の条件下で行われる。
【0098】
重縮合反応を3段階以上で実施する場合には、第2段目から最終段目の1段前間での重
縮合反応は、上記1段目の反応条件と最終段目の反応条件との間の条件で行われる。例え
ば、重縮合工程が3段階で行われる場合には、第2段目の重縮合反応は通常、反応温度が
260〜295℃、好ましくは270〜285℃で、圧力が7〜0.3kPaG(50〜2Torr)、好ましくは5〜0.7kPaG(40〜5Torr)の条件下で行われる。
【0099】
重縮合触媒やその他の化合物は、重縮合反応時に存在していればよい。このためこれらの化合物の添加は、原料スラリー調製工程、エステル化工程、液相重縮合工程等のいずれの工程で行ってもよい。また、触媒全量を一括添加しても、複数回に分けて添加してもよい。また、これらの化合物はあらかじめエチレングリコールなどの脂肪族ジオールに混合した混合触媒を調製して添加することが好ましい。
【0100】
以上のような液相重縮合工程で得られる液相重縮合改質ポリエチレンテレフタレートの
固有粘度[IV]は0.40〜1.0dl/g、好ましくは0.50〜0.70dl/gであることが望ましい。なお、この液相重縮合工程の最終段目を除く各段階において達成される固有粘度は特に制限されないが、各段階における固有粘度の上昇の度合いが滑らかに分配されることが好ましい。
【0101】
なお、本明細書において、固有粘度は、改質ポリエチレンテレフタレートを1,1,1−トリクロロエタン/フェノール=1/1(重量比)中、25℃で測定された溶液粘度から算出される。
【0102】
この重縮合工程で得られる液相重縮合改質ポリエチレンテレフタレートは、通常、溶融押し出しによりチップ状に造粒される。
【0103】
この液相重縮合工程においては、得られる液相重縮合改質ポリエチレンテレフタレートのCOOH基濃度を好ましくは60当量/トン以下、より好ましくは55〜10当量/トン、さらに好ましくは50〜15当量/トンとする。液相重縮合改質ポリエチレンテレフタレート中のCOOH基濃度を上記範囲にすると、固相重合後の改質ポリエチレンテレフタレートの透明性が高くなる。
【0104】
液相重縮合工程において、例えばエチレングリコールとテレフタル酸のモル比を0.98〜1.3、好ましくは1.0〜1.2とすることにより、液相重合温度を275〜295℃としたときに液相重縮合改質ポリエチレンテレフタレート中のCOOH基濃度を60当量/トン以下とすることができる。
【0105】
(固相重縮合工程)
この液相重縮合工程で得られる改質ポリエチレンテレフタレートは、所望によりさらに固相重縮合することができる。
【0106】
固相重縮合工程に供給される粒状改質ポリエチレンテレフタレートは、予め、固相重縮合を行う場合の温度より低い温度に加熱して予備結晶化を行った後、固相重縮合工程に供給してもよい。
【0107】
このような予備結晶化工程は、粒状改質ポリエチレンテレフタレートを乾燥状態で通常、120〜200℃、好ましくは130〜180℃の温度に1分から5時間加熱することによって行うことができる。またこのような予備結晶化は、粒状改質ポリエチレンテレフタレートを水蒸気雰囲気、水蒸気含有不活性ガス雰囲気下、または水蒸気含有空気雰囲気下で、120〜200℃の温度で1分間以上加熱することによって行うこともできる。
【0108】
予備結晶化された改質ポリエチレンテレフタレートは、結晶化度が20〜50%であることが望ましい。
【0109】
なお、この予備結晶化処理によっては、いわゆる改質ポリエチレンテレフタレートの固相重縮合反応は進行せず、予備結晶化された改質ポリエチレンテレフタレートの固有粘度は、液相重縮合後の改質ポリエチレンテレフタレートの固有粘度とほぼ同じであり、予備結晶化された改質ポリエチレンテレフタレートの固有粘度と予備結晶化される前の改質ポリエチレンテレフタレートの固有粘度との差は、通常0.06dl/g以下である。
【0110】
固相重縮合工程は、少なくとも1段からなり、温度が190〜235℃、好ましくは195〜225℃であり、圧力が120〜0.001kPa、好ましくは98から0.01kPaの条件下で、窒素、アルゴン、炭酸ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行われる。使用する不活性ガスとしては窒素ガスが望ましい。
【0111】
改質ポリエチレンテレフタレートと不活性ガスの流量はバッチ式の場合、改質ポリエチレンテレフタレート1kgに対し、0.1〜50Nm/hrであり、連続式の場合、改質ポリエチレンテレフタレート1kg/hrに対し、0.01〜2Nm/hrである。
【0112】
固相重合の雰囲気として使用される不活性ガスは常に純粋な不活性ガスを使用してもよく、また固相重合工程から排出される不活性ガスを循環再使用してもよい。固相重合工程から排出された不活性ガスには、水、エチレングリコール、アセトアルデヒドなどの縮合物、分解物が含有されている。循環再使用の際には縮合物、分解物を含んだ不活性ガスでもよく、また縮合物、分解物を除去、精製した不活性ガスでもよい。
【0113】
このような固相重縮合工程を経て得られた粒状改質ポリエチレンテレフタレートには、その後、熱水または水蒸気により後処理を行ってもよい。この処理を行うと、射出成形時の生産性を低下させる原因となる環状三量体の増加を抑制できるため好ましい。粒状改質ポリエチレンテレフタレートの熱水処理を行う温度は、通常40〜180℃、好ましくは50〜150℃であり、時間は通常1分〜10時間、好ましくは5分〜5時間である。あるいは40〜180℃の水蒸気または水蒸気含有ガスに5分〜14日間接触させることにより行われる。
【0114】
このようにして得られた改質ポリエチレンテレフタレートの固有粘度は、通常0.60〜2.0dl/g、好ましくは0.70〜1.5dl/g、より好ましくは0.70〜0.95dl/g、更に好ましくは0.75〜0.85dl/gであることが望ましい。
【0115】
このようにして得られた改質ポリエチレンテレフタレートの融点は通常210〜265℃、好ましくは220〜260℃であり、ガラス転移温度は通常50〜120℃、好ましくは60〜100℃である。
【0116】
このようにして得られた改質ポリエチレンテレフタレート中に含まれるオキシエチレンオキシテレフタロイル単位の環状三量体の含有量は、0.5重量%以下であることが好ましく、0.4重量%以下であることがより好ましい。環状三量体の含量が0.5重量%以下の改質ポリエチレンテレフタレートを用いると、樹脂組成物を成形する際に、金型などが汚染されにくく、しかも中空成形体の胴部が白化しにくいので好ましい。改質ポリエチレンテレフタレート中の環状三量体の含有量の含有量は、例えば固相重合温度を高くし、さらに重合時間を長くすることにより低減することが可能である。
【0117】
このようにして得られた改質ポリエチレンテレフタレートのCOOH基濃度は好ましくは10〜50当量/トン、より好ましくは12〜40当量/トンである。
【0118】
このようにして得られた改質ポリエチレンテレフタレートの密度は、1.37g/cm以上であること好ましく、1.38g/cm以上であることがより好ましく、さらに1.39g/cm以上であることが好ましい。
【0119】
このようにして得られる改質ポリエチレンテレフタレート中の、上記の共重合ユニット、ジオール基含有ポリオレフィン化合物(A)またはそのエステル形成性誘導体、或いはエポキシ基含有ポリオレフィン化合物(B)の含有量を極微量とする場合は、最終的に目的とする含有量よりも多い含有量の改質ポリエチレンテレフタレート(マスターバッチ)を上記の方法で予め製造し、製造したマスターバッチを、例えば単軸または二軸押出機によりポリエチレンテレフタレートと溶融混錬することによって得ることも可能である。溶融混錬は、複数回行いマスターバッチ中の共重合ユニット、ジオール基含有ポリオレフィン化合物(A)またはそのエステル形成性誘導体、或いはエポキシ基含有ポリオレフィン化合物(B)の含有量を段階的に下げることもできる。
【0120】
マスターバッチに含まれる共重合ユニット、ジオール基含有ポリオレフィン化合物(A)またはそのエステル形成性誘導体、或いはエポキシ基含有ポリオレフィン化合物(B)の割合は特に限定されないが、通常0.01ppm〜10%、好ましくは0.1ppm〜1%の範囲である。マスターバッチの量は、溶融混錬後のポリオレフィン含有量が最終的に目的とする0.001ppm〜50000ppmの範囲となるように選べばよい。ここでマスターバッチを調製する際に用いられるポリエチレンテレフタレートとしては、上記改質ポリエチレンテレフタレートと同様のポリエチレンテレフタレートが用いられる。マスターバッチの調製に用いられるポリエチレンテレフタレートは、上記改質ポリエチレンテレフタレートと同一の構成単位および同一の固有粘度を有するポリエチレンテレフタレートであってもよく、構成単位および固有粘度の少なくとも一方が異なるポリエチレンテレフタレートであってもよい。
【0121】
(半結晶化時間および昇温結晶化温度)
このようにして得られた改質ポリエチレンテレフタレートは、ボトルなどの中空成形容器を効率よく製造することができるような適切な結晶化温度を有している。具体的には、示差走査熱量計にて測定した際の180℃における半結晶化時間が40〜105秒、好ましくは50〜100秒、さらに好ましくは60〜95秒である。また、本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレートは、必要に応じて他の添加剤、例えば着色剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、潤滑剤を含有していてもよい。
【0122】
本発明に係る改質ポリエチレンテレフタレートは、チップ間のばらつきがほとんどなく、一様に結晶化速度を変えることができる。また、マスターバッチを用いた場合でも、改質ポリエチレンテレフタレートに対する熱履歴を受けたチップの量が少ないため、成形品の色相等に影響を及ぼさない。
【0123】
本発明の改質ポリエチレンテレフタレートは、ブロー成形時に改質ポリエチレンテレフタレートが加熱昇温結晶化する際に、共重合している共重合ユニット、或いはポリエチレンテレフタレートの重縮合反応時に共存させたジオール基含有ポリオレフィン化合物(A)またはそのエステル形成性誘導体およびエポキシ基含有ポリオレフィン化合物(B)が結晶化の核として作用するものと推定され、結晶化速度を速めているものと考えられる。
【0124】
本発明のポリエステル組成物は、トルエンで抽出したときに、当該組成物重量に対するポリオレフィン成分の抽出量の割合が0.001ppm以下であることが必要である。トルエンで抽出したときに、当該組成物重量に対するポリオレフィン成分の抽出量の割合が0.001ppm以上の場合は、口部の機械的強度に劣る、あるいは、チップ間の結晶化速度にばらつきを生ずるなどの不具合がある。
【0125】
また、昇温結晶化温度と、半結晶化時間の関係が
40≦t1/2≦105
t1/2≦(Tcc −117)/0.45 (40≦t1/2≦60のとき)
t1/2≦(Tcc −134)/0.17 (60<t1/2≦105のとき)
であることが必要である。
(ただし、t1/2は示差走査熱分析装置により測定した成形体の180℃における半結晶化時間(秒)であり、Tccは示差走査熱分析装置において10℃/分にて昇温させたときの昇温結晶化ピーク温度(℃)である。)
【0126】
半結晶化時間が105秒を超える、あるいは40秒未満の場合は、ボトルの口栓部を加熱結晶化させる際の結晶化速度が過小あるいは過大であることにより、口栓部の寸法がキャッピングした際の内容液のシール性能を確保するに必要な範囲内の寸法とすることができない不具合がある。
【0127】
また、半結晶化時間が
t1/2>(Tcc −117)/0.45 (40≦t1/2≦60のとき)
t1/2>(Tcc −134)/0.17 (60<t1/2≦105のとき)
となる場合は、ボトルの口栓部を加熱結晶化する際の結晶化速度が遅いか、あるいは、結晶化速度は満足すべき水準であるがポリオレフィンをより多量に含むために成形体の透明性に劣るという不具合を生じることがある。
【0128】
本発明のポリエステル組成物は、口部の機械的強度・結晶化速度・成形体の透明性の何れも優れるという特徴をもつ。その理由は必ずしも定かではないが、結晶核剤として作用するポリオレフィンがポリエステルと化学結合していることにより、衝撃力が加わったときに本来非相溶である両成分の界面が剥離することがないために機械強度に優れ、また、ポリオレフィンがエステル形成性官能基を隣接する炭素原子上に有する構造とすることにより、任意の位置にエステル形成性官能基を有する場合に比較してポリオレフィンとポリエステルの相溶性が核剤効果を減殺することがない。したがってポリエステル組成物を好ましい結晶化速度とするために必要なポリオレフィンの添加量がより少なくて済むためにポリエステルが本来有している透明性が犠牲にならないものと考えている。
【0129】
このようにして得られた改質ポリエチレンテレフタレートを275℃で成形して得られる段付き角板状成形体の5mm厚のヘイズは好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下である。
【0130】
このようにして得られた改質ポリエチレンテレフタレートを275℃で成形して得られる段付き角板状成形体の4mm厚のヘイズは好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下である。
【0131】
上記のようなエステル化工程と重縮合工程とを含む改質ポリエチレンテレフタレートの製造工程はバッチ式、半連続式、連続式のいずれでも行うことができる。
【0132】
このような改質ポリエチレンテレフタレートは、特に色相に優れ、透明性に優れ、ボトル用途に用いることが特に好ましい。
【0133】
このようにして製造された改質ポリエチレンテレフタレートは、従来から公知の添加剤、例えば、安定剤、離型剤、帯電防止剤、分散剤、核剤、染顔料等の着色剤などが添加されていてもよく、これらの添加剤は改質ポリエチレンテレフタレート製造時のいずれかの段階で添加してもよく、成形加工前、マスターバッチにより添加したものであってもよい。
【0134】
これに伴い、上記の添加剤は、粒状改質ポリエチレンテレフタレートの粒子内部に一様の濃度で含有されていてもよいし、粒状改質ポリエチレンテレフタレートの粒子表面近傍に濃縮されて含有されていてもよいし、また粒状改質ポリエチレンテレフタレートの一部の粒子に他の粒子より高濃度で含有されていてもよい。
【0135】
(成形方法)
本発明によって得られる改質ポリエチレンテレフタレートからボトル、シート、フィルム、繊維などを成形する方法としては、従来公知の方法を採用することができる。
【0136】
例えば、ボトルを成形する場合には、上記改質ポリエチレンテレフタレートを溶融状態でダイより押出してチューブ状パリソンを形成し、次いでパリソンを所望形状の金型中に保持した後空気を吹き込み、金型に着装することにより中空成形体を製造する方法、上記改質ポリエチレンテレフタレートから射出成形によりプリフォームを製造し、該プリフォームを延伸適性温度まで加熱し、次いでプリフォームを所望形状の金型中に保持した後空気を吹き込み、金型に着装することにより中空成形体を製造する方法などがある。
【0137】
本発明の改質ポリエチレンテレフタレートよりなるボトルは、特に色相に優れ、透明性に優れ、アセトアルデヒド含有量が少なく、高品質である。
【実施例】
【0138】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0139】
トルエンによりポリオレフィンを抽出し、定量する方法を以下に説明する。
ペレット形状の試料100gを、完全に溶解する量(通常10〜100倍量)のヘキサフルオロイソプロパノールに溶解させたのち、アセトンを加えて沈殿させる。沈殿物をろ過し、トルエンで100℃で抽出を行い、トルエン溶媒を100℃に設定したロータリーエバポレータで濃縮、蒸発乾固させる。残存物にはポリオレフィンの他にポリエチレンテレフタレートのオリゴマーが含まれているので、ヘキサフルオロイソプロパノールを加えて24時間静置してオリゴマーを溶解除去する。不溶分を1ミクロンのメンブレンフィルターでろ過する。フィルター上のろ過物の重量を測定する。トルエン抽出成分量は抽出に用いた組成物の重量に対するろ過物の割合(ppm)として算出した。また、ろ過物の同定はFT-IRによりおこない、ポリオレフィンであることを確認した。
【0140】
(口部破壊強度)
プリフォームを自家製の結晶化装置を用いて密度が1370Kg/m3になるように結晶化させ、23℃の環境下で図2に示すような装置を用い、突起付ジグ(重量150g、先端に3mmφの突起を有する)を口部側面上に設置し、突起付ジグの上面に重量200gの錘を落下させて口部が破壊する高さを求めた。測定は12個のサンプルについて行い平均を求めた。
【0141】
(GPC分析方法)
ポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略す)(ミリポア社製GPC−150)を用いて下記の条件の下で測定を行った。
分離カラム:TSK GNH HT(カラムサイズ:直径7.5mm,長さ:300mm)
カラム温度:140℃
移動相:オルトジクロルベンゼン(和光純薬社製)
酸化防止剤:ブチルヒドロキシトルエン(武田薬品工業社製)0.025質量%
移動速度:1.0ml/分
試料濃度:0.1質量%
試料注入量:500マイクロリットル
検出器:示差屈折計
【0142】
(固有粘度)
ポリエチレンテレフタレート0.5gをフェノール/テトラクロロエタン(1/1重量比)混合溶媒100mlに加熱溶解した後、冷却して25℃で測定された溶液粘度から固有粘度(IV)を算出した。
【0143】
(含有元素量の測定)
溶融成形したプレスシートを蛍光X線装置を用いて元素特有の蛍光X線の強度を測定し、検量線より濃度を求めた。
【0144】
(透明性(ヘイズ値)の測定)
真空下にて140℃、16時間乾燥した試料をシリンダー温度285℃の射出成形機(名機製作所製M−70B)を用いて金型温度10℃の条件で段付角板を成形し、5mm厚部分の透明性をヘイズ値(白色光の光線乱反射率)で比較した。
【0145】
(昇温結晶化温度Tcc)
真空下にて150℃、16時間乾燥した試料をシリンダー温度285℃の射出成形機(名機製作所製M−70B)を用いて金型温度10℃の条件で重量32gのプリフォームを成形した。プリフォームの口部から測定試料を切り出し10mg秤量し、パーキンエルマー社製示差走査型熱量計(DSC7、商品名)を使用して測定した。室温から290℃まで10℃/分の昇温速度で昇温し、その際に発生する発熱ピーク温度をTccとした。
【0146】
(半結晶化温度T1/2の測定)
真空下にて150℃、16時間乾燥した試料をシリンダー温度285℃の射出成形機(名機製作所製M−70B)を用いて金型温度10℃の条件で重量32gのプリフォームを成形した。プリフォームの口部から測定試料を切り出し、パーキンエルマー社製示差走査型熱量計(DSC7、商品名)を使用して測定した。非晶状態のプリフォーム成形品試料の口部を切り出してサンプルパンに10mg秤量し、室温から180℃まで320℃/分の昇温速度で昇温したのち、180℃に保持して結晶化に伴い発生する熱量を記録し、全発熱量の半分の発熱量に対応する経過時間を求めて、半結晶化時間とした。
【0147】
(調製例1)
(片末端二重結合含有エチレン系重合体(P−1)の合成)
触媒として使用した化合物(i)は特開2003-73412号公報の合成例6に従って合成し、片末端二重結合含有ポリエチレンは同公報実施例9に従って合成した。
【0148】
充分に窒素置換した内容積2000mlのステンレス製オートクレーブに、室温でヘプタン1000mlを装入し、150℃に昇温した。続いてオートクレーブ内をエチレンで30kg/cmG加圧し、温度を維持した。MMAO(東ソーファインケム社製)のヘキサン溶液(アルミニウム原子換算1.00mmol/ml)0.5ml(0.5mmol)を圧入し、次いで下記化合物(i)のトルエン溶液(0.0002mmol/ml)0.5ml(0.0001mmol)を圧入し、重合を開始した。エチレンガス雰囲気下、150℃で30分間重合を行った後、少量のメタノールを圧入することにより重合を停止した。得られたポリマー溶液を、少量の塩酸を含む3リットルのメタノール中に加えてポリマーを析出させた。メタノールで洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥させることにより、片末端二重結合含有エチレン系重合体(P−1)を得た。構造については、H NMRにより確認した。また、融点、分子量等の物性は以下の通り。
融点(Tm)123℃
Mw=1900
Mw/Mn=2.24(GPC)
【0149】
【化5】

【0150】
【化6】

【0151】
(α,β-ジオール重合体(A−1)の合成)
1000mlセパラブルフラスコに上記で得られた片末端二重結合含有重合体(P−1)100g、トルエン300g、NaWO4・2HO 1.79g(5.4mmol)、CH(nC17)NHSO 1.27g(2.7mmol)、85%りん酸 0.23g(2.7mmol)を仕込み、撹拌しながら30分間加熱還流し、重合物を完全に溶解させた。内温を90℃にした後、30%過酸化水素水37g(326mmol)を3時間かけて滴下した後、内温90〜92℃で3時間撹拌した。反応混合物をH-NMR で測定することにより、末端オレフィンが100%、エポキシ基に変性していることを確認した。その後、85℃に保ったまま25%チオ硫酸ナトリウム水溶液34.4g(54.4mmol)を添加し、30分撹拌した。過酸化物試験紙で反応系内の過酸化物が完全に分解されたことを確認した。内温80℃に冷却後、2-プロパノールを30分かけてゆっくり加えながら生成物を晶析させ、そのスラリー液を65℃で1時間撹拌した後、固体をろ取し、2-プロパノールで洗浄した。得られた固体を室温で、50%メタノール水溶液中で撹拌、固体をろ取しメタノールで洗浄した。更に該固体をメタノール400g中で撹拌して、ろ取しメタノールで洗浄した。60℃、1〜2hPaの減圧下乾燥させることによりα,β-ジオール重合体(A−1)の白色固体106.6gを得た。(P−1)同様、構造については、H NMRにより確認した。また、融点、分子量等物性は以下の通り。
融点(Tm)122℃
Mw=2788
Mw/Mn=2.03(GPC)
【0152】
α,β−ジオール重合体(A−1)の構造式:
【0153】
【化7】

【0154】
(エポキシ基含有重合体(B−1)の合成)
1000mlセパラブルフラスコに上記で得られた片末端二重結合含有重合体(P−1)100g、トルエン300g、NaWO4・2HO 1.79g(5.4mmol)、CH(nC17)NHSO 1.27g(2.7mmol)、85%りん酸 0.23g(2.7mmol)を仕込み、撹拌しながら30分間加熱還流し、重合物を完全に溶解させた。内温を90℃にした後、30%過酸化水素水37g(326mmol)を3時間かけて滴下した後、内温90〜92℃で3時間撹拌した。反応混合物をH-NMR で測定することにより、末端オレフィンが100%、エポキシ基に変性していることを確認した。その後、85℃に保ったまま40%チオ硫酸ナトリウム水溶液21.5g(54.4mmol)を添加し、30分撹拌した。過酸化物試験紙で反応系内の過酸化物が完全に分解されたことを確認した。内温80℃に冷却後、アセトニトリルを30分かけてゆっくり加えながら生成物を晶析させ、そのスラリー液を65℃で1時間撹拌した後、固体をろ取し、得られた固体を室温で、50%メタノール水溶液中で撹拌、固体をろ取しメタノールで洗浄した。更に該固体をメタノール400g中で撹拌して、ろ取しメタノールで洗浄した。60℃、1〜2hPaの減圧下乾燥させることによりエポキシ基含有重合体(B−1)の白色固体94.39gを得た。(P−1)同様、構造については、H NMRにより確認した。また、融点、分子量等物性は以下の通り。
【0155】
エポキシ基含有重合体(B−1)の構造式:
【0156】
【化8】

【0157】
融点(Tm)121℃
Mw=2058
Mw/Mn=1.84(GPC)
【0158】
(調製例2)
(片末端二重結合含有エチレン系重合体(P−2)の合成)
触媒として使用した(iii)は以下の様に合成した。
充分に乾燥、窒素置換した100mlの反応器に、5-クロル-3-クミルサリチルアルデヒド15.4g(56.1mmol)、トルエン60ml、メチルアミン4.42g(40%メタノール溶液、56.9mmol)を仕込み、室温で5時間撹拌した。この反応溶液を減圧濃縮することにより、下記式(ii)で示される赤褐色オイル16.0g(収率99%)を得た。構造はH NMRにより確認した。
【0159】
【化9】

【0160】
充分に乾燥、アルゴン置換した500mlの反応器に、化合物(ii) 12.1g(42.0mmol)とジエチルエーテル150mlを仕込み、−78℃に冷却し撹拌した。これにn-ブチルリチウム27.8ml(n-ヘキサン溶液、1.57M、43.7mmol)を30分かけて滴下し、そのままの温度で2時間撹拌した後、ゆっくりと室温まで昇温し、室温でさらに3時間撹拌してリチウム塩を調整した。
この溶液を、−78℃に冷却したZrCl4(THF)2錯体4.84g(20.8mol)を含むテトラヒドロフラン溶液150mlに滴下した。滴下終了後、ゆっくりと室温まで昇温しながら撹拌を続けた。
【0161】
さらに室温で12時間撹拌した後、反応液を溶媒留去した。得られた固体を塩化メチレン200mlに溶解し、不溶物をガラスフィルターで除去した。ろ液を減圧濃縮し、析出した固体をジエチルエーテル80ml、n-ヘキサン150mlで再沈し、減圧乾燥することにより下記式(iii)で示される黄色粉末の化合物11.4g(収率75%)を得た。構造については、H NMR、FD−MSにより確認した。
【0162】
【化10】

【0163】
充分に窒素置換した内容積2000mlのステンレス製オートクレーブに、ヘプタン1000mlを装入し、150℃に維持した。エチレンにて34Kg/cmGに昇圧し、MMAO(東ソーファインケム社製)のヘキサン溶液(アルミニウム原子換算1.00mmol/ml)1ml (1mmol) を圧入し、ついで化合物(iii)のトルエン溶液 (0.0001mmol/ml)3.0ml (0.0003mmol)を圧入し、重合を開始した。エチレンガス雰囲気下、150℃で30分間重合を行った後、少量のメタノールを圧入することにより重合を停止した。得られたポリマー溶液から溶媒を留去してポリマーを析出させた。その後、80℃にて10時間減圧乾燥することにより、片末端二重結合含有エチレン系重合体(P−2)30.45gを得た。重合活性は203Kg/mmol−Zr・hrであった。構造は(P−1)同様1H NMRで確認した。物性は以下の通り。
融点(Tm)116℃
Mw=1380,Mw/Mn=2.20(GPC)
【0164】
(α,β-ジオール重合体(A−2)の合成)
(調整例1)において、片末端二重結合含有エチレン系重合体(P−1)を(P−2)に変えた以外は同様の方法にて合成し、α,β-ジオール重合体(A−2)の合成を得た。
融点(Tm)119℃
Mw=1500
Mw/Mn=2.02(GPC)
【0165】
(エポキシ基含有重合体(B−2)の合成)
(調整例1)において、片末端二重結合含有エチレン系重合体(P−1)を(P−2)に変えた以外は同様の方法にて合成し、エポキシ基含有重合体(B−2)の合成を得た。
融点(Tm)119℃
Mw=1500
Mw/Mn=1.96(GPC)
【0166】
(実施例1)
(スラリーの調製)
重量平均分子量=1500で末端にエポキシ基を有するポリエチレン(B−2)をエチレングリコールに20ppm配合してスラリーを調製した。
【0167】
(共重合体の調製)
第2、第3、第4および第5の反応器が槽型であり、また第6の反応器が二軸回転式の横型反応器からなる連続重縮合装置を用いて、以下のとおり操作して連続重合を行い、ポリエチレンテレフタレート を製造した。
予め3750重量部の反応液が滞留されており、撹拌下255℃で窒素雰囲気下に1.7Kg/cm2Gの条件下に維持された第1反応器に、毎時高純度テレフタル酸1437重量部およびエチレングリコール645重量部を混合し、上記で調製したポリエチレン(B−2)とエチレングリコールからなるスラリーを、ポリエチレン(B−2)のポリエステル組成物に対する添加量が20ppbになるような量で連続的に供給し、第1段目のエステル化反応を行った。この第1段目のエステル化反応においては、203重量部の水 と3重量部のエチレングリコールとの混合液が留去された。また、この第1段目のエステル化反応物は、平均滞留時間が2.0時間になるように制御され、連続的に撹拌下260℃で0.8Kg/cm2Gの条件下に維持された第2反応器に導かれた。
【0168】
この反応器2においては、毎時0.35重量部の二酸化ゲルマニウムと32重量部のエチレングリコールとの均一溶液が連続的に供給されるとともに、毎時84重量部の水 と7重量部のエチレングリコールとの混合液が連続的に留去されて、第2段目のエステル化反応が継続された。また、この第2段目のエステル化反応物は、平均滞留時間が2.0時間になるように制御され、連続的に撹拌下265℃で常圧の条件下に維持された第3反応器に導かれた。
【0169】
この第3反応器においては、毎時1.23重量部のトリメチルホスフェートと22重量部のエチレングリコールとが混合された均一溶液が連続的に供給されるとともに、毎時21重量部の水 と38重量部のエチレングリコールとの混合液が連続的に留去され、第3段目のエステル化反応が継続された。
【0170】
この第3段目のエステル化反応物も平均滞留時間が2.0時間となるように制御され、連続的に撹拌下275℃で70mmHgに維持された第4反応器に導かれた。この第4反応器においては、毎時62重量部のエチレングリコールと6重量部の水 との混合物が連続的に留去されて第1段目の重縮合反応が行われた。また、この第1段目の重縮合反応物は、平均滞留時間が1.0時間となるように制御され、連続的に撹拌下280℃で5mmHgに維持された第5反応器に導かれた。
【0171】
この第5反応器においては、毎時26重量部のエチレングリコールと3重量部の水 との混合液が連続的に留去されて第2段目の重縮合反応が継続された。また、この第2段目の重縮合反応物は、平均滞留時間が1.0時間になるように制御され、連続的に282℃〜285℃で1.8mmHg〜2.5mmHgの条件下に維持された横型二軸回転式反応槽である第6反応器に導かれた。
【0172】
この第6反応器においては、毎時12重量部のエチレングリコールと1重量部の水との反応液が連続的に留去されて第3段目の重縮合反応が継続された。また、この第3段目の重縮合反応物は、平均滞留時間が2.5時間となるように制御され、連続的にポリエステル抜き出し装置によって、反応器外にストランド状で抜き出され、水中に浸漬されて冷却された後、ストランドカッターによってチップ状に裁断された。以上の液相重合によって得られたポリエチレンテレフタレートのフェノール/テトラクロロエタン(1/1重量比)中で25℃で測定した固有粘度IVは0.57dl/gであり、またジオキシエチレンテレフタレート成分の含有量は2.50モル%であった。
【0173】
さらに、その液相重合によるポリエチレンテレフタレート は、窒素雰囲気下約140℃で約15時間乾燥するとともに結晶化を行った後、塔型の固相重合器に装填し、窒素雰囲気下205℃で15時間固相重合を行った。このようにして得られたポリエチレンテレフタレートのフェノール/テトラクロロエタン(1/1重量比)中25℃で測定した固有粘度は0.77dl/gであり、密度は1.40g/cm3であり、オリゴマー含有量は0.31重量%であり、またそのジオキシエチレンテレフタレート成分の含量は2.53モル%であった。
このようにして得られたポリエチレンテレフタレート (A)5Kgを、ステンレス容器内で6.5Kgの蒸留水に浸漬させた。
【0174】
次に、ポリエチレンテレフタレート および蒸留水が入ったステンレス容器を外部より加熱し、内温を90℃にコントロールし、4時間保持して水処理を行なった後、脱水し、140℃で14時間窒素通気下で乾燥した。
乾燥ポリエチレンテレフタレートをすでに本明細書中で説明したようにして窒素ガス雰囲気下で215℃の温度に加熱して固相重縮合処理した重縮合速度は、0.0026dl/g・時間であった。
【0175】
また該ポリエチレンテレフタレート を名機製作所(株)製M−70Bの射出成形機で290℃において成形した段付角板状の成形物のオリゴマー含有量は0.35重量%であり、オリゴマー増加量は0.04重量%であった。
【0176】
この共重合体から、トルエンにて抽出操作を行ったが、組成物全体に対する抽出量の割合は0.001ppm以下であった。また、この共重合体を名機製作所(株)製M−70Bの射出成形機で285℃にて射出成形し、重量32gのプリフォームを得た。このプリフォームについてDSCにより10℃/分の昇温速度で結晶化ピーク温度(Tcc)および180℃における半結晶化時間(t1/2)を測定した。また、自家製の結晶化装置にて口部を結晶化のちブロー成形したボトルに水を充填したのちに倒立させ、内容液の漏洩の有無を確認した。結果を表1に示す。
【0177】
(実施例2)
重量平均分子量=1500で末端にエポキシ基を有するポリエチレン(B−2)の配合量を50ppbに変更した以外は実施例1と同様にして共重合体を得た。この共重合体について実施例1と同様の物性評価を行った。結果を表1に示す。
【0178】
(実施例3)
重量平均分子量=1500で末端にエポキシ基を有するポリエチレン(B−2)の配合量を150ppbに変更した以外は実施例1と同様にして共重合体を得た。この共重合体について実施例1と同様の物性評価を行った。結果を表1に示す。
【0179】
(実施例4)
ポリエチレン種を、重量平均分子量=1500で末端にジオール基を有するポリエチレン(A−2)に変更した以外は実施例2と同様にして共重合体を得た。この共重合体について実施例1と同様の物性評価を行った。結果を表1に示す。
【0180】
(実施例5)
ポリエチレン種を、重量平均分子量=2058で末端にエポキシ基を有するポリエチレン(B−1)に変更した以外は実施例2と同様にして共重合体を得た。この共重合体について実施例1と同様の物性評価を行った。結果を表1に示す。
【0181】
(実施例6)
ポリエチレン種を、重量平均分子量=2788で末端にジオール基を有するポリエチレン(A−1)に変更した以外は実施例2と同様にして共重合体を得た。この共重合体について実施例1と同様の物性評価を行った。結果を表1に示す。
【0182】
(比較例1)
重量平均分子量=1500で末端にエポキシ基を有するポリエチレン(B−2)を用いない以外は、実施例1と同様の方法でIV=0.77dl/gのポリエチレンテレフタレートを得た。これについて実施例1と同様の物性評価を行った。結果を表1に示す。
【0183】
(比較例2)
エチレン・メタクリル酸共重合体(メタクリル酸含有量8重量%、MFR=7g/10分)からなる成形部材を、比較例1におけるポリエチレンテレフタレートの製造工程中に設置し、積極的にポリエチレンテレフタレートのペレットと接触させて付着、添加した。添加量は、エチレン・メタクリル酸共重合体からなる成形部材の重量減少と、接触させたポリエチレンテレフタレートの重量の比から、150ppbであった。このポリエチレンテレフタレート樹脂組成物について、[1]に示す方法でトルエンによる抽出操作を行ったところ、約0.1ppmのポリオレフィン成分が検出された。また、この組成物について実施例1と同様の物性評価を行った。結果を表1に示す。
【0184】
(比較例3)
重量平均分子量=1500で末端にエポキシ基を有するポリエチレン(B−2)の代わりにエチレン・メタクリル酸共重合体(メタクリル酸含有量11重量%、MFR=8g/10分)を30000ppb配合する以外は実施例1と同様にして重合をおこない、IV=0.77dl/gの組成物を得た。このポリエチレンテレフタレート樹脂組成物について、実施例1と同様の物性評価を行った。結果を表1に示す。
【0185】
(比較例4)
重量平均分子量=1500で末端にエポキシ基を有するポリエチレン(B−2)の代わりに官能基のないポリエチレン(MFR=7g/10分)を20ppb配合する以外は実施例1と同様にして重合をおこない、IV=0.77dl/gの組成物を得た。このポリエチレンテレフタレート樹脂組成物について、[2]に示す方法でトルエンによる抽出操作を行ったところ、約0.005ppmのポリオレフィン成分が検出された。また、この組成物について実施例1と同様の物性評価を行った。結果を表1に示す。
【0186】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0187】
本発明によって得られる改質ポリエチレンテレフタレートは各種成形体の素材として使用することができ、例えば、溶融成形してボトルなどの中空成形体、シート、フィルム、繊維等に使用されるが、ボトルに使用することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】本発明において、ヘイズの測定に使用した角板の形状を概念的に示す図であ る。
【図2】本発明においてプリフォーム成形体の口部破壊強度の測定に用いた装置の概 念図である。
【図3】TccとT1/2の関係を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン成分を0.001ppm〜50000ppm含むポリエステル組成物であって、トルエンで抽出したときに、当該組成物重量に対するポリオレフィン成分の抽出量の割合が0.001ppm以下であることを特徴とするポリエステル組成物。
【請求項2】
285℃で成形した射出成形品における昇温結晶化温度と、半結晶化時間が次の関係を満たすことを特徴とするところの請求項1記載のポリエステル。
(式1) 40≦t1/2≦105
(式2) t1/2≦(Tcc−117)/0.45 (40≦t1/2≦60のとき)
t1/2≦(Tcc−134)/0.17 (60<t1/2≦105のとき)
(ただし、t1/2は示差走査熱分析装置により測定した成形体の180℃における半結晶化時間[秒]であり、Tccは示差走査熱分析装置において10℃/分にて昇温させたときの昇温結晶化ピーク温度[℃]である。)
【請求項3】
下記一般式(A)または(B)で表される構造の共重合ユニットをポリエステルに共重合して得られることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル組成物。
【化1】

【化2】

【請求項4】
上記一般式(A)または(B)で表される構造において、R=R=R=水素であることを特徴とする請求項3に記載のポリエステル組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のポリエステル組成物からなる中空成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−31426(P2008−31426A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136220(P2007−136220)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】