説明

ポリエステル芯鞘複合繊維およびその布帛

【課題】 製糸工程や芯成分の除去安定性が良好であり、品位の優れた溶出型中空断面構造を有するポリエステル芯鞘複合繊維を提供する。
【解決手段】 エチレンテレフタレート繰り返し単位が99モル%以上のポリエチレンテレフタレートを鞘成分とし、5−スルホイソフタル酸金属塩を2〜5.5モル%共重合させたポリエチレンテレフタレートを芯成分とし、かつ繊維横断面において該芯成分の一部が繊維表面に露出しており、断面異形度が下記式(1)を満足することを特徴とするポリエステル芯鞘複合繊維により達成する。1.5≦A/B≦3.3・・・・・(1) 但し、Aは繊維横断面における芯成分の内接円の直径(μm) Bは繊維横断面における鞘成分の開口部幅(μm)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高次工程にて芯成分を除去することで得られる溶出型中空断面構造を有するポリエステル芯鞘複合繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維特品化の要望が年々高まる中、各合繊メーカーから多くの機能性繊維が上市されている。とりわけ軽量・保温性繊維は特に要望が強く、永遠のテーマに位置づけられる。
【0003】
かかる中、中空断面糸は糸重量に対し、占める空間が大きいので軽く、かつ保温性の優れた特性を有すため、過去より検討がなされている。従来、中空断面糸は詰め綿や布団綿などの短繊維に用いられていたが、近年では一般衣料用途でも使用可能な長繊維が提案されている。しかしながら、長繊維の場合、仮撚や撚糸、製編織時に物理的圧力によって中空部が潰れる欠点を有しているため、用途上の制約があった。この欠点を改良するために、C型断面形状のポリエステルを鞘成分とし、該鞘成分よりもアルカリ溶解速度が大きい熱可塑性重合体を芯成分とし、かつ、該芯成分の一部が繊維表面に露出してなる複合繊維に仮撚捲縮加工を施した後にアルカリ水溶液で芯成分を除去する方法(特許文献1,2参照)、加えて、水に濡れた場合、中空部に水が進入して布帛が重たくなるのを回避するために、鞘成分の開口部幅を4μm以下とし、かつ内壁に撥水剤を付着させる方法(特許文献3参照)が開示されている。しかしながら、これらの技術は仮撚や撚糸、製編織時に物理的圧力によって中空部が潰れることはないが、芯成分の除去工程において具体的な安定化技術の開示には至っておらず、芯成分が不規則に残存し、織編物とした際に染色斑やタテ筋などの品位低下を招いていた。
【特許文献1】特開平1−52839号公報(請求項1)
【特許文献2】特開昭55−93812号公報(請求項1)
【特許文献3】特開平6−240534号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的は、上述の問題を解決し、製糸工程や芯成分の除去安定性が良好であり、品位の優れた溶出型中空断面構造を有するポリエステル芯鞘複合繊維を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の目的を達成せんとするものであって、エチレンテレフタレート繰り返し単位が99モル%以上のポリエチレンテレフタレートを鞘成分とし、5−スルホイソフタル酸金属塩を2〜5.5モル%共重合させたポリエチレンテレフタレートを芯成分とし、かつ繊維横断面において該芯成分の一部が繊維表面に露出しており、断面異形度が下記式(1)を満足することを特徴とする芯鞘複合繊維である。
1.5≦A/B≦3.3・・・・・(1)
但し、Aは繊維横断面における芯成分の内接円の直径(μm)
Bは繊維横断面における鞘成分の開口部幅(μm)
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、仮撚や撚糸、製編織時の物理的圧力によっても中空部を維持できる溶出型中空断面繊維において、製糸性や芯成分の除去等の工程安定性が良好であり、品位の優れた軽量・保温性繊維を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明のポリエステル芯鞘複合繊維について詳細に説明する。
【0008】
本発明のポリエステル芯鞘複合繊維は製編織後にアルカリ減量を施し、芯成分を除去するため、鞘成分のアルカリ浸食を低減させなければならない。鞘成分がアルカリ浸食を受けた場合、布帛の引き裂き強力が低下するだけでなく、品質や品位の低下を伴う。このため、鞘成分はエチレンテレフタレート繰り返し単位が99モル%以上のポリエチレンテレフタレートであることが重要である。エチレンテレフタレート繰り返し単位が99モル%以上のポリエチレンテレフタレートであることで、耐アルカリ性が向上し、品質・品位の低下を抑制できる。
【0009】
更には鞘成分のポリエチレンテレフタレートのカルボキシル末端基が0〜40当量/トンであると好ましい。
【0010】
同時に芯成分は5−スルホイソフタル酸金属塩を2〜5.5モル%共重合させたポリエチレンテレフタレートであることが重要である。5−スルホイソフタル酸金属塩を2モル%以上共重合させたポリエチレンテレフタレートを用いることで、芯成分の除去の際にアルカリ減量による溶出性が向上し、高品位な製品が得られる。一方、5−スルホイソフタル酸金属塩を5.5モル%以下共重合させたポリエチレンテレフタレートを用いることで製糸安定性が向上する。
【0011】
本発明のポリエステル芯鞘複合繊維は繊維横断面において芯成分の一部が繊維表面に露出しており、断面異形度が下記式(1)を満足することが重要である。
1.5≦A/B≦3.3・・・・・(1)
但し、Aは繊維横断面における芯成分の内接円の直径(μm)
Bは繊維横断面における鞘成分の開口部幅(μm)
繊維横断面において芯成分の一部が繊維表面に露出していることで芯成分のアルカリ減量効率が向上し、鞘成分のアルカリ浸食を低減するため製品の品位低下を回避できる。また、その断面異形度A/Bは1.5以上であることで芯成分に対して開口部が広くなるため、芯成分の除去が安定化する。一方、断面異形度A/Bが3.3以下であることで単糸間の形態バラツキを最少化し、布帛とした際の筋斑発生を抑制できる。より好ましくは断面異形度A/Bは1.8以上であり、更に好ましい断面異形度は2.0以上、3.0以下である。尚、本発明で規定する芯成分の内接円の直径(μm)および開口部幅(μm)とは走査型電子顕微鏡にて拡大撮影し、単糸20本の測定値の平均値から算出する。
【0012】
本発明のポリエステル芯鞘複合繊維の複合比率は芯/鞘=30/70〜80/20であることが好ましい。芯成分比率の下限は、軽量感・保温性を向上せしめる。また、芯成分除去後の布帛の引き裂き強力を考慮して、芯成分比率の上限を設定する。更に好ましくはポリエステル芯鞘複合繊維の複合比率は芯/鞘=40/60〜70/30である。
【0013】
本発明のポリエステル芯鞘複合繊維の芯成分に用いるポリエチレンテレフタレートは固有粘度が0.54〜0.7であることが好ましい。固有粘度が0.54以上であることで製糸安定性を可能にし、また固有粘度が0.7以下であることで品質の良好な製品を得ることができる。更に好ましくは芯成分に用いるポリエチレンテレフタレートの固有粘度は0.58〜0.7である。
【0014】
本発明のポリエステル芯鞘複合繊維の芯成分に用いるポリエチレンテレフタレートはカルボキシル末端基量が30〜50当量/トンであることが好ましい。カルボキシル末端基量が30〜50当量/トン以下であることで良好な芯成分の除去安定性が得られる。より好ましいカルボキシル末端基量は35〜50当量/トン、更に好ましくは45当量/トン以下である。なお、カルボキシル末端基量を変更する方法としては特に限定するものでないが、重合温度や重合の原料仕込量、重合触媒を変更することで適宜補正した。
【0015】
また、本発明のポリエステル芯鞘複合繊維の芯成分や鞘成分には、本発明の目的を損なわない限り、必要に応じて他のイソフタル酸、2,2−ビス{4−(β−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン等の共重合成分や、ヒンダートフェノール系化合物等の酸化防止剤、その他無機粒子(平滑剤、吸水剤、吸着剤、抗菌剤、防カビ剤、消臭剤等)を併有しても良い。
【0016】
本発明のポリエステル芯鞘複合繊維は布帛とした後にアルカリ減量によって芯成分を除去し、中空断面を形成することができる。その後、該中空部に機能剤を充填させることで機能性を付与することも可能である。このようにして得た機能性布帛は高摩擦・高洗濯耐久性を有し、従来、耐久性不足や風合い粗剛化の問題により繊維への応用が困難であった機能剤の使用を可能にする。
【0017】
本発明のポリエステル芯鞘複合繊維は単糸繊度を特に制約するものでないが、単糸繊度が1〜7dtexであることが好ましい。単糸繊度が1dtex以上であることで製品の軽量感を体感し易くなる。また単糸繊度が7dtex以下であることで一般衣料用途で好適に用いることができる。
【0018】
本発明のポリエステル複合繊維の繊維断面形状は、本発明の目的を損なわない範囲で偏平、三角、多葉断面化等の異形断面化することも可能である。異形断面化により、風合いの変化や毛細管現象等の物理的機能性付与が可能であり、またこれら異形断面の中空部に機能剤を付与した場合には機能性の向上効果を得ることも可能である。なお、ここで定義する異形断面とは、鞘成分で形成される繊維表面形態のみに限らず、芯成分と鞘成分の境界面も該当し、凹凸等を付与しても良い。
【0019】
本発明のポリエステル芯鞘複合繊維により得た布帛は織物、編物のいずれも展開可能であるが、該ポリエステル繊維糸条を30重量%以上含有することが好ましい。より好ましくは50〜100重量%である。本発明で用いられるポリエステル複合繊維からなる糸条には、他種の繊維を混紡することができ、また、他種の繊維糸条を混繊することができる。他種の繊維糸条との混繊によって複数の機能性(吸水、吸湿、冷感、温感等)を付与することが可能である。なお、他種の繊維糸条の一例としてポリエステル、ポリアミド等の合成繊維や絹や綿等の天然繊維が挙げられるが、これらに限るものではない。
【0020】
本発明のポリエステル芯鞘複合繊維は一旦ドラムに巻き取った後に延伸や延伸仮撚する方法や紡糸段階で連続的に延伸する方法などが挙げられるがこれらに限定するものでない。以下、これらの具体例について説明する。
【0021】
本発明のポリエステル芯鞘複合繊維はポリエチレンテレフタレートを主成分とする2成分のポリエステルを紡糸温度280〜300℃の範囲で各々溶融計量し、インサート型もしくはパイプ型構造によって、芯成分の一部を露出するように加工した芯鞘断面用口金ノズルから吐出した後に0.1〜5重量%の油剤を塗布してワインダーに巻き取る。この際に、紡速2000m/min未満で巻き取った未延伸糸は次工程にて2.0〜5.0倍程度、紡速2000〜4000m/minで巻き取った部分配向糸は1.2〜3.5倍程度の延伸もしくは延伸仮撚をした後に熱セットを施す。また、紡速4000m/minを超える1工程法では紡糸工程のローラー間で連続的に延伸熱セットする方法や降温途中の吐出糸条を高紡速にて巻き取ることによって配向結晶化が進行し、延伸糸を得ることができる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明のポリエステル芯鞘複合繊維について実施例をもって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例における評価方法は、次のとおりである。
【0023】
1.製糸性
168時間(7日間)連続紡糸を行い、製糸性を次の判定方法に従った。
○○:糸切れ率が3.0%未満
○:糸切れ率が3.0%以上5.0%未満
△:糸切れ率が5.0%以上7.0%未満
×:糸切れ率が7.0%以上
−:評価不可
2.溶出性
アルカリ減量後の布帛を走査型電子顕微鏡にて拡大撮影し、単糸20本の芯成分の残存有無を観察した。
○○:芯成分ポリマーが残存している単糸がない
○:芯成分ポリマーが残存している単糸が1〜2本
△:芯成分ポリマーが残存している単糸が3〜4本
×:芯成分ポリマーが残存している単糸が5本以上
3.製品風合い
着衣快適性、色調(ハンター法による)および染色斑を主体に、表面品位の均一性の総合評価を、熟練者5名にて4段階判定法で評価した。
○○:優
○:良
△:可
×:不可
4.固有粘度
25℃オルソクロロフェノール中で測定した値である。以下、固有粘度をIVと記す。
【0024】
実施例1〜6
紡糸温度295℃の条件下、芯成分ポリマーとして5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルを3モル%共重合したポリエチレンテレフタレートからなるIV=0.65のポリエチレンテレフタレートを鞘成分ポリマーとしてポリエチレンテレフタレート(PET)100%からなるIV=0.65のポリエチレンテレフタレートを、複合比率が芯成分ポリマー/鞘成分ポリマー=50/50となるように各々溶融計量し、総吐出量32g/分の溶融ポリマーをインサートにより芯成分ポリマーを吐出させることで鞘側がC字型となる芯鞘断面用口金ノズル(φ0.3mm、36ホール)より吐出させて紡速3000m/分で紡糸し、140dtex−36フィラメント、残留伸度160%の半延伸糸を得た。得られた半延伸糸を延伸温度90℃、熱セット温度145℃、倍率1.7倍で延伸熱セットし、84dtex−36フィラメントの延伸糸を得た。得られた延伸糸を経糸と緯糸に用い、生機密度54×57本/inの平織物を得、次いで精練を行った後に水酸化ナトリウム4%存在下、98℃、60分のアルカリ減量処理を施し、浴比が分散染料/染色液=1/20の条件下、130℃×60分の染色を実施した。得られた織物は(実施例1)は製糸性に優れ、かつ芯成分の溶出性および製品風合いに優れたものであった。
また、実施例2〜実施例6は実施例1の製糸条件を基本として、芯成分ポリマーを変更することで芯成分ポリマーのIVを変更した例である。実施例2〜実施例4はIVをそれぞれ0.58,0.70,0.54とした実験であるが、いずれも工程安定性に優れ、製品風合いが良好であった。また、実施例5は芯成分ポリマーのIVが0.52と低目であったために、若干糸切れが見られたが、製品風合いに優れた織物が得られた。一方、実施例6においては芯成分ポリマーのIVを0.72としたものであったが、製糸性に優れ、製品風合いも良好であった。評価結果を表1に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
実施例7〜10
実施例7〜実施例10は実施例1の製糸条件を基本として、芯成分ポリマーを変更することで芯成分ポリマーのカルボキシル末端基量を変更して行った実験である。
【0027】
実施例7および実施例8は芯成分ポリマーのカルボキシル末端基量をそれぞれ30,50当量/トンとした実験であるがいずれも実施例1対比、遜色ない結果が得られた。実施例9は芯成分ポリマーのカルボキシル末端基量を25当量/トンとした実験であるが、カルボキシル末端基量が若干低目であったため、溶出性がやや低下したものの、全般的に良好な結果が得られた。実施例10は芯成分ポリマーのカルボキシル末端基量を55当量/トンとした実験であるが、カルボキシル末端基量が多めであったせいか糸切れが散発したものの、製品風合いは極めて良好であった。評価結果を表2に示す。
【0028】
【表2】

【0029】
実施例11,12、比較例1,2
実施例1の製糸条件を基本として、芯成分ポリマーを変更することで共重合量の異なる芯成分ポリマーにそれぞれ変更し、実施例11〜12と比較例1〜2の平織物を得た。実施例11,12は芯成分ポリマーの共重合量を2.0,5.5モル%とした実験であるが、いずれも溶出性が安定しており、風合いが良好であった。比較例1は芯成分ポリマーの共重合量を1.5モル%とした実験であるが、芯成分ポリマーの共重合量が低すぎたために溶出性が不安定であり、製品風合いも本発明を満足するものでなかった。比較例2は芯成分ポリマーの共重合量を6.0モル%とした実験であるが、芯成分ポリマーの共重合量が大きすぎたせいか、糸切れが多発した。評価結果を表3に示す。
【0030】
【表3】

【0031】
実施例13,14
実施例1の製糸条件を基本として、鞘成分ポリマーを変更することで鞘成分ポリマーのカルボキシル末端基量をそれぞれ変更し、実施例13,14を行った。
【0032】
実施例13は鞘成分ポリマーのカルボキシル末端基量を40当量/トンとした実験であるが、製糸性は良好であり、製品風合いに優れていた。実施例14は鞘成分ポリマーのカルボキシル末端基量を50当量/トンをした実験であるが、製糸性は安定しており、溶出性に優れていた。評価結果を表4に示す。
【0033】
【表4】

【0034】
実施例15、比較例3
実施例15および比較例3は実施例1の製糸条件を基本として鞘成分ポリマーを変更することで鞘成分ポリマーの共重合量を変更して行った。
【0035】
実施例15は鞘成分の共重合量を1.0モル%とした実験であるが、実施例1と同等のものが安定して得られた。比較例3は鞘成分の共重合量を2.0モル%とした実験であるが、共重合量が多かったためにアルカリ減量の際に鞘成分の分解が進行し、ガサついた織物となった。評価結果を表5に示す。
【0036】
【表5】

【0037】
実施例16〜21
実施例16〜21は実施例1の製糸条件を基本として、2成分ポリマーの吐出量を各々変更することで複合比率を変更して実施した。
【0038】
実施例16,17は複合比率を芯/鞘=40/60,70/30とした実験であるが、いずれも本発明が目的とする製品風合いを有していた。
【0039】
実施例18,20は複合比率をそれぞれ芯/鞘=30/70,25/75とした実験である。これらはいずれも芯成分比率が低目であったために軽量感がやや見劣りするものの、溶出性に優れていた。一方、実施例19,21は複合比率をそれぞれ芯/鞘=80/20,85/15とし、芯成分比率を大きくした実験であるが、鞘成分比率が小さいせいかアルカリ減量の影響で製品風合いがやや低下したが、大きな問題でなく、本発明を満足する織物を安定して得ることができた。評価結果を表6に示す。
【0040】
【表6】

【0041】
実施例22〜25、比較例4,5
実施例1の製糸条件を基本として、パック交換を行うことで口金スペックを変更し、断面異形度の異なる実施例22〜25および比較例4,5を行った。
【0042】
実施例22,23は断面異形度をそれぞれ2.0,3.0とした実験であるが、実施例1を上回る製品風合いや工程安定性を有していた。また実施例24,25は断面異形度を1.5,3.3とした実験であるが、製糸性、溶出性、製品風合いのいずれにおいても良好な結果が得られた。比較例4は断面異形度を1.0とした実験であるが、断面異形度が小さく、鞘成分の開口部幅が広すぎたために布帛とした際に筋斑が発生しており、品位が悪かった。また、比較例5は断面異形度を3.5とした実験であるが、鞘成分の開口部幅が小さすぎるため、溶出性が極めて悪く、染め斑が酷かった。評価結果を表7に示す。
【0043】
【表7】

【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】断面異形度を説明するための繊維横断面の概略図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンテレフタレート繰り返し単位が99モル%以上のポリエチレンテレフタレートを鞘成分とし、5−スルホイソフタル酸金属塩を2〜5.5モル%共重合させたポリエチレンテレフタレートを芯成分とし、かつ繊維横断面において該芯成分の一部が繊維表面に露出しており、断面異形度が下記式(1)を満足することを特徴とするポリエステル芯鞘複合繊維。
1.5≦A/B≦3.3・・・・・(1)
但し、Aは繊維横断面における芯成分の内接円の直径(μm)
Bは繊維横断面における鞘成分の開口部幅(μm)
【請求項2】
複合比率が芯/鞘=30/70〜80/20である請求項1記載の芯鞘複合繊維。
【請求項3】
芯成分が固有粘度0.54〜0.7、カルボキシル末端基量30〜50当量/トンのポリエチレンテレフタレートからなる請求項1または2記載のポリエステル芯鞘複合繊維。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載のポリエステル芯鞘複合繊維を少なくとも1部に用いることを特徴とする布帛。
【請求項5】
芯成分を除去することで形成される中空部に機能剤を充填させることを特徴とする請求項4記載の布帛。

【図1】
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【公開番号】特開2006−161263(P2006−161263A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−287811(P2005−287811)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】