説明

ポリエチレンテレフタレートからのポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート共重合体の製造プロセスおよびその組成物と物品

あるプロセスは、不活性雰囲気下の第1の温度および少なくとも101kPaの第1の圧力で、シクロヘキサンジメタノールと、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレート共重合体から構成される群から選択されるポリエチレンテレフタレート成分と、を加熱して、溶融混合物を形成するステップと;前記第1の温度より高い第2の温度およびある期間第2の減圧下で、また下記の共重合体の形成に有効な条件下で、前記溶融混合物を攪拌しながら加熱して、前記ポリエチレンテレフタレート成分から誘導された残基を少なくとも1つ含む変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート共重合体を形成するステップと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、ポリエチレンテレフタレートからのポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートの製造プロセスおよびその組成物と物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)は、本質的に高い熱性能(Tm=295℃)を有する結晶性熱可塑性ポリマーであり、現在、鉛フリー半田、医療、食料および自動車分野で使用されている。従来のPCT成形用組成物は、多くの顧客にとって有用でありながら、使用済みの消費者用または工業用PCTスクラップ材料の大量供給がなされていないために、PCTの再利用源からは一般には作られていない。PCTと違って、ポリエチレンテレフタレート(PET)ははるかに大量に製造されており、消費者廃棄物からより容易に回収される。
【0003】
非再生資源の保存と未活用スクラップPETのより有効な再利用への要求が益々強まるにつれて、スクラップPET材料からPCTを誘導する、改良された、そしてより低コストのエコフレンドリーなプロセスが求められており、生成された誘導PCT組成物が、引張強度、衝撃強度および熱特性などで望ましい物性を有する場合に特に求められる。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に記載のあるプロセスは、不活性雰囲気下の第1の温度および少なくとも101kPaの第1の圧力で、シクロヘキサンジメタノールと、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレート共重合体から構成される群から選択されるポリエチレンテレフタレート成分と、を加熱して、エチレンテレフタレート基を含有するオリゴマ、エチレンイソフタレート基を含有するオリゴマ、ジエチレンテレフタレート基を含有するオリゴマ、ジエチレンイソフタレート基を含有するオリゴマ、シクロヘキサンジメチレンテレフタレート基を含有するオリゴマ、シクロヘキサンジメチレンイソフタレート基を含有するオリゴマ、前述の基の少なくとも2つを含む共有結合オリゴマ部分、シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコールおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択される成分を含む溶融混合物を形成するステップと;前記第1の温度より高い第2の温度およびある期間第2の減圧下で、また下記の共重合体の形成に有効な条件下で、前記溶融混合物を攪拌しながら加熱して、前記ポリエチレンテレフタレート成分から誘導された残基を少なくとも1つ含む変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート共重合体を形成するステップと、を含む。
【0005】
該プロセスで製造される組成物および該組成物を含む物品も開示される。
【0006】
本発明のこれらおよび他の特長、実施形態および効果は、以下の記載と添付の特許請求の範囲を参照することにより一層理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明者は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を、本明細書で変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)と呼ばれるものに効率的に変換できることを見出した。該変性PCT組成物は、商用の成形用途に適した物性を有する。未使用のPCT(モノマーから調製されたPCT)を含む従来の成形用組成物と異なり、該成形品に用いられる変性PCTは、ポリエチレンテレフタレート残基、例えばエチレングリコール基やイソフタル酸基(「未使用」のモノマー系PCTには存在しない成分)などの材料を含む。一部の例では、該変性PCT成形用組成物では、未使用のPCTを含む成形用組成物と比較して、流動特性と機械的特性が向上している。該プロセスによって、PCTの成形用途に活用される、使用済みの消費者用または工業用のスクラップPETの流れを有効に再利用する貴重な方法が提供される。さらに、該プロセスによって、非再生資源の保存が支援され、温室効果ガス、例えばCOなどの排出が低減される。
【0008】
本明細書において、単数表現は複数の対象を含む。用語「組み合わせ」には、配合、混合、合金、反応生成物などが含まれる。本明細書における技術用語および科学用語は、別途明示される場合を除き、当業者が通常理解しているものと同じ意味を有する。化合物は標準名称法を用いて記述される。「およびこれらの組み合わせ」の表現には、指定された成分と、選択的に、具体的に指定されていないが本質的に同様の機能を有する他の成分の1つまたは複数が含まれる。
【0009】
本明細書における「ランダム共重合体」は、所定のモノマー単位を該共重合体の骨格鎖の任意の所定サイトに見出す可能性が、隣接する単位の性質とは無関係である巨大分子を含む、共重合体を指す。
【0010】
作用例以外で、あるいは別途明示される場合を除いて、明細書と特許請求の範囲で使用される、成分量や反応条件などを表すすべての数あるいは表現は、すべての場合において用語「約」で修飾されると理解されるものとする。本出願では種々の数値範囲が開示されている。これらの範囲は連続しているため、最小値と最大値間のすべての数値が含まれる。同じ特性または成分に関するすべての範囲の終了点は互いに独立に組み合わせ可能であり、該終点を含む。別途明示される場合を除き、本出願における種々の数値範囲は近似である。「0超〜」ある量との表現は、指定された成分が0を上回るある量から指定された大きな数値(その数値を含む)まで存在することを意味する。
【0011】
別途明示される場合を除き、すべてのASTM試験およびデータは、ASTM標準2003年版からのものである。
【0012】
例えばある分子中の基の質量%を示すために用いられる「テレフタル酸基」、「イソフタル酸基」、「エチレングリコール基」、「ブタンジオール基」、「シクロヘキサンジメタノール基」および「ジエチレングリコール基」に関し、「イソフタル酸基」は、式(−O(CO)C(CO)−)を有するイソフタル酸の基または残基を、「テレフタル酸基」は、式(−O(CO)C(CO)−)を有するテレフタル酸の基または残基を、「ジエチレングリコール基」は、式(−O(C)O(C)−)を有するジエチレングリコールの基または残基を、「ブタンジオール基」は、式(−O(C)−)を有するブタンジオールの基または残基を、「シクロヘキサンジメタノール基」は、式(−O(C14)−)を有するシクロヘキサンジメタノールの基または残基を、そして、「エチレングリコール基」は、式(−O(C)−)を有するエチレングリコールの基または残基を意味する。
【0013】
一般に、変性PCT共重合体(PET変性PCT、あるいはPET由来PCTとも呼ぶ)は、該PET成分を1,4−シクロヘキサンジメタノールの存在下で解重合し、解重合されたPET成分を1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび選択的な触媒で重合するプロセスで作られる。1,4−シクロヘキサンジメタノールは、シクロヘキサンジメタノールの最も一般に入手し易い形態であるが、ここで説明するプロセス、組成物および物品は、1,2−シクロヘキサンジメタノールおよび1,3−シクロヘキサンジメタノールも包含することは理解されるべきである。用語シクロヘキサンジメタノール(「CHDM」)は、シクロヘキサンジメタノールのすべての異性体を意味するものとして用いられており、その中でも1,4−シクロヘキサンジメタノールが好適である。同様に、シクロヘキサンジメチレンは、二価の1,2−シクロヘキサンジメチレン、1,3−シクロヘキサンジメチレンおよび1,4−シクロヘキサンジメチレンを指し、その中でも1,4−シクロヘキサンジメチレンが好適である。また、シクロヘキサンジメチレンは、上記の各シクロヘキサンジメタノール種のcisおよびtrans異性体の任意の組み合わせも含む。trans異性体とcis異性体の典型的な比率は70:30だが、他の比率もあり得る。
【0014】
該変性PCT共重合体が作られるPET成分は種々の形態であり得る。該PET成分は一般に、フレーク状、パウダー/チップ状、フィルム状またはペレット状の再利用(スクラップ)PETを含む。一般に、使用前に該PETを処理して、紙、接着剤、例えばポリプロピレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ナイロン、ポリ乳酸(脂肪族ポリエステル)などのポリオレフィンおよび他の混入物質を除去する。また、該PET成分には、廃棄物ではない、フレーク状、チップ状またはペレット状のPETが含まれ得る。そのために、通常はごみ埋めたて地に堆積するPETは、今や生産的にそして有効に利用できる。ある実施形態では、該PET成分は、芳香族ジカルボン酸から誘導された他のポリエステルおよびまたはポリエステル共重合体も含むことができる。こうした材料には、ポリエチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、テレフタレートエステルとシクロヘキサンジメタノールおよびエチレングリコールを含むコモノマーとのコポリエステル、テレフタル酸とシクロヘキサンジメタノールおよびエチレングリコールを含むコモノマーとのコポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリキシリレンテレフタレート、ポリジアノールテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエステルナフタレートおよびこれらの組み合わせが含まれる。
【0015】
該変性PCT共重合体のある具体的な製造方法では、該PET成分は、(a)CHDMおよび選択的な触媒の存在下で解重合される。この解重合により、エチレンテレフタレート基を含有するオリゴマ、エチレンイソフタレート基を含有するオリゴマ、ジエチレングリコールテレフタレート基を含有するオリゴマ、ジエチレングリコールイソフタレート基を含有するオリゴマ、シクロヘキサンジメチレンテレフタレート基を含有するオリゴマ、シクロヘキサンジメチレンイソフタレート基を含有するオリゴマおよび前述の基の少なくとも2つを含む共有結合オリゴマ部分の溶融混合物が得られる。この解重合の実現に好適な条件には、少なくとも大気圧である圧力と210℃〜280℃の範囲の第1の温度が含まれる。該解重合混合物は不活性雰囲気下で攪拌される。
【0016】
次のステップ(b)で、該溶融混合物を加熱して第2の温度で少なくとも1つの揮発性材料を除去し、圧力を第2の減圧値まで、具体的には101kPa未満まで下げて、下式(1)、(2)、(3)および(4)から選択されたポリエステル単位を含む変性PCT共重合体を形成する。
【化1】

式中、Dは1,4−シクロヘキサンジメチレン(−(C14)−)であり、D’はエチレン(−(C)−)であり、R’はテレフタリレン(−1,4−(C)−)であり、R’’はイソフタリレン(−1,3−(C)−)である。
【0017】
該シクロヘキサンジメタノールは、該解重合の間、リアクタ内に連続的に還流される。ある実施形態では、シクロヘキサンジメタノールは、該解重合(ステップ(a))の間、リアクタ内に還流される。別の実施形態では、過剰のシクロヘキサンジメタノールとエチレングリコールは、該重合(ステップ(b))の間に除去される。
【0018】
該PET成分とシクロヘキサンジメタノール成分は一般に、不活性雰囲気下および少なくとも99kPa〜101kPaの、より具体的には少なくとも101kPa(大気圧)の第1の圧力で混合される。
【0019】
該PET成分とシクロヘキサンジメタノールとの混合・反応温度は、PET成分から、ポリエチレンテレフタレートオリゴマおよびポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートオリゴマなどのオリゴマ成分、シクロヘキサンジメタノールおよびエチレングリコールへの解重合を促進するのに十分なものとする。より具体的には、該PET成分は、エチレンテレフタレート基を含有するオリゴマ、エチレンイソフタレート基を含有するオリゴマ、ジエチレングリコールテレフタレート基を含有するオリゴマ、ジエチレングリコールイソフタレート基を含有するオリゴマ、シクロヘキサンジメチレンテレフタレート基を含有するオリゴマ、シクロヘキサンジメチレンイソフタレート基を含有するオリゴマおよび前述の基の少なくとも2つを含む共有結合オリゴマ部分、に解重合される。該PET成分とシクロヘキサンジメタノールの混合温度は、一般に210℃〜280℃である。
【0020】
該シクロヘキサンジメタノールは一般に、PET成分に対して過剰量で用いられる。ある実施形態では、シクロヘキサンジメタノールの過剰モル量は、エチレンテレフタレート繰り返し単位のモル数に対して1.05〜2モルである。
【0021】
該PET成分とシクロヘキサンジメタノールが、前記第1の温度で混合されて反応するプロセスの初期段階(ステップ(a))において、PET成分は溶融混合物に解重合する。上記の通り、該溶融混合物は少なくとも、ポリエチレンテレフタレートオリゴマ、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートオリゴマ、シクロヘキサンジメタノールおよびエチレングリコールを含む。一般に、該シクロヘキサンジメタノールとエチレングリコールは、第1温度での加熱の間、再循環されるかリアクタ内に還流される。ある実施形態では、該PET成分をさらにエチレングリコールで解重合することができる。
【0022】
該解重合ステップの継続時間は、使用装置、生産ニーズおよび所望の最終特性などの要因に依存するが、少なくとも30分である。ある実施形態では、該解重合ステップは30分〜2時間の範囲で行われ、別の実施形態では、2〜5時間の範囲で行われる。
【0023】
該プロセスはさらに、減圧下および少なくとも280℃の第2の高い温度で、より具体的には280℃〜310℃で、該溶融混合物を重合して該PET成分由来の変性PCT共重合体を形成するステップ(ステップ(b))を備える。
【0024】
一般に、該溶融混合物は、前記第1の圧力より低い第2の圧力下におかれる。ある実施形態では、第1の圧力は、99kPa〜0.013kPaの範囲の第2の圧力まで連続的に下げられる。別の実施形態では、第1の圧力は、1.33kPa〜0.013kPaの範囲の第2の圧力まで連続的に下げられる。より具体的には、前記第2の圧力は0.3kPa絶対値未満である。好都合なことに、該溶融混合物は、それからいかなる材料の分離や分解もなしに減圧状態下に置くことができる。該溶融混合物の分離ステップを回避できることによって、該プロセスの有用性が大いに高められる。該重合は、不活性雰囲気下で攪拌しながら行われる。
【0025】
該溶融混合物の減圧状態下での温度は、ポリエチレンテレフタレートオリゴマ、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートオリゴマ、シクロヘキサンジメタノールおよびエチレングリコールの重合を促進させる十分に高い温度である。
【0026】
該溶融混合物を減圧状態に置き加熱するステップの間、過剰のシクロヘキサンジメタノール、エチレングリコールまたはこれらの組み合わせをリアクタから除去して、オリゴマの分子量を形成することができる。連続的に攪拌を行って、低沸点成分の除去を促進させることができる。十分な分子量が得られた後、生成した溶融PCTポリマーをリアクタから滴下させて、冷却・撚り合わせ、ペレットに裁断する。
【0027】
ポリエチレンテレフタレートオリゴマ、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートオリゴマ、シクロヘキサンジメタノールおよびエチレングリコールから、溶融混合物が重合するステップの継続時間は、使用装置、生産ニーズおよび所望の最終特性などの要因によって変えられる。ある実施形態では、該重合は5分〜1時間の範囲で行われ、別の実施形態では、2〜5時間の範囲で行われる。生成した混合物は、変性PCTと少なくとも1つのポリエチレンテレフタレート成分残基を含む。
【0028】
該プロセスの2つのステップは同一のリアクタ内で行なうことができる。しかしながら、ある実施形態では、該プロセスを少なくとも2つの別々のリアクタ内で行い、その場合は、ステップ(a)を第1のリアクタ内で行い、溶融混合物の形成後にそれを第2のリアクタ内に投入してステップ(b)を行う。別の実施形態では、該プロセスを3つ以上のリアクタ内で行うことができ、さらに別の実施形態では、連続した一連のリアクタ内で行なうことができる。
【0029】
触媒を用いて該反応を促進させることができる。典型的な触媒としては、アンチモン化合物、スズ化合物、チタン化合物、これらの組み合わせ、および文献で開示された他の多くの金属触媒およびそれらの組み合わせなどが含まれる。触媒量は、具体的な反応成分および条件によって変わるが、10〜5000ppm以上の範囲とすることができる。触媒成分は一般に、ステップ(a)において、該PET成分、シクロヘキサンジメタノールおよびイオン性モノマーを最初に混合する間に添加される。別の実施形態では、触媒成分は、該PET成分とシクロヘキサンジメタノールの混合・反応後に形成される溶融混合物に添加される。触媒を、解重合と重合の2つのステップの間に添加することもできる。
【0030】
該変性共重合体の製造プロセスは、攪拌状態下で行われることが好ましい。「攪拌状態」あるいは「攪拌」との表現は、該PET成分、少なくとも1つの第2のポリマーおよびシクロヘキサンジメタノールを、PET成分とシクロヘキサンジメタノールとを物理的に混合してステップ(a)におけるPETの解重合を促進する状態に置くこと、およびまたは、該溶融混合物を物理的に混合して、ステップ(b)におけるポリエチレンテレフタレートオリゴマ、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートオリゴマ、シクロヘキサンジメタノールおよびエチレングリコールから変性PCTを形成する重合を促進する状態に、該溶融混合物を置くこと、を指す。前記物理的な混合は、当分野で既知の方法で実現することができる。ある実施形態では、回転軸とそれに垂直な羽根を備えたミキサを用いることができる。
【0031】
該変性PCT共重合体の別の製造方法では、3ステッププロセスが用いられる。このプロセスでは、該PET成分は、(a)少なくとも1つの第2のポリマー、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールあるいはこれらの組み合わせの存在下および下記の溶融混合物の形成に有効な条件下で解重合されて、エチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ、エチレンイソフタレート基を含有するオリゴマ、ジエチレングリコールテレフタレート基を含有するオリゴマ、ジエチレングリコールイソフタレート基を含有するオリゴマ、トリメチレンテレフタレート基を含有するオリゴマ、トリブチレンイソフタレート基を含有するオリゴマ、ブチレンテレフタレート基を含有するオリゴマ、ブチレンイソフタレート基を含有するオリゴマ、および前述の基の少なくとも2つを含む共有結合オリゴマ基の第1の溶融混合物が形成される。該解重合の実現に好適な条件には、少なくとも大気圧である圧力、210℃〜280℃の範囲の温度および不活性雰囲気が含まれる。該PET成分の解重合の継続時間は様々である。ある実施形態では、該解重合は少なくとも30分間行なわれる。
【0032】
該3ステッププロセスのステップ(b)では、下記の第2の溶融混合物の形成に有効な条件下で、1,4−シクロヘキサンジメタノールを前記第1の溶融混合物に添加して、エチレンテレフタレート基を含有するオリゴマ、エチレンイソフタレート基を含有するオリゴマ、ジエチレンテレフタレート基を含有するオリゴマ、ジエチレンイソフタレート基を含有するオリゴマ、トリメチレンテレフタレート基を含有するオリゴマ、トリメチレンイソフタレート基を含有するオリゴマ、ブチレンテレフタレート基を含有するオリゴマ、ブチレンイソフタレート基を含有するオリゴマ、シクロヘキサンジメチレンテレフタレート基を含有するオリゴマ、シクロヘキサンジメチレンイソフタレート基を含有するオリゴマ、前述の基の少なくとも2つを含む共有結合オリゴマ部分およびこれらの組み合わせから構成される群から選択される成分を含む第2の溶融混合物を形成する。該溶融混合物の形成に好適な条件は、リアクタ内、触媒成分の存在下で、温度が230℃〜280℃であることである。
【0033】
該3ステップの次のステップ(c)では、該溶融混合物を加熱し、圧力を減圧して、以下の式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)および(8)から選択されるエステル単位を含む変性PCT共重合体を形成する。
【化2】

式中、Dはシクロヘキサンジメチレン(−(C14)−)であり、D’はエチレン(−(C)−)であり、D’’は1,2−トリメチレン、1,3−トリメチレンまたはこれらの組み合わせであり、D’’’は1,4−テトラメチレン、1,2−テトラメチレン、1,3−テトラメチレンまたはこれらの組み合わせであり、R’はテレフタリレン(−1,4−(C)−)であり、R’’はイソフタリレン(−1,3−(CH4)−)である。前述のエステル単位を2つ以上含む混合物も存在し得る。
【0034】
前記第1および第2の溶融混合物中の成分は、該3ステッププロセスの解重合ステップ(a)で使用されたジオールによって異なり得ることは理解されるであろう。該PET成分がエチレングリコールで解重合されると、該第1の溶融混合物は、エチレンテレフタレート基を含有するオリゴマ、エチレンイソフタレート基を含有するオリゴマ、ジエチレンテレフタレート基を含有するオリゴマ、ジエチレンイソフタレート基を含有するオリゴマ、前述の基の少なくとも2つを含む共有結合オリゴマ部分、エチレングリコールおよびこれらの組み合わせを含む。該PET成分がプロピレングリコールで解重合されると、該第1の溶融混合物は、エチレンテレフタレート基を含有するオリゴマ、エチレンイソフタレート基を含有するオリゴマ、ジエチレングリコールテレフタレート基を含有するオリゴマ、ジエチレングリコールイソフタレート基を含有するオリゴマ、トリメチレンテレフタレート基を含有するオリゴマ、トリメチレンイソフタレート基を含有するオリゴマ、ブチレンテレフタレート基を含有するオリゴマ、ブチレンイソフタレート基を含有するオリゴマ、前述の基の少なくとも2つを含む共有結合オリゴマ部分、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールおよびこれらの組み合わせを含む。本明細書における「プロピレングリコール」は、1,3−または1,2−トリメチレングリコールか、またはこれらの組み合わせのいずれかであり、「ブタンジオール」は好適には1,4−ブタンジオールであるが、1,4−、1,3−、1,2−または2,3−ブタンジオールあるいはこれらの組み合わせでもあり得る。
【0035】
前記ジオール成分(エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールおよびこれらの組み合わせ)の、この3ステップ実施形態のステップ(a)におけるモル量は、少なくとも25モル%であり、あるいは該PET成分中のエチレングリコール部分の量の少なくとも50%である。
【0036】
該2ステッププロセスまたは3ステッププロセスで使用される化合物は、プロセスの進行とともに再利用または回収できる。ある実施形態では、該エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールあるいはこれらの組み合わせとシクロヘキサンジメタノールは、ステップ(b)で除去されて容器に収集される。別の実施形態では、シクロヘキサンジメタノールは、ステップ(b)でリアクタ内に還流され、過剰のシクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールあるいはそれらの組み合わせは除去される。ステップ(b)の継続時間も変えることができる。ステップ(b)を十分に長い時間行って、第2の溶融混合物からエチレングリコールの少なくとも65%を低減する。ある実施形態では、ステップ(b)を少なくとも45分間行う。ステップ(b)の圧力は変えることができる。ある実施形態では、ステップ(b)は大気圧状態で行われ、別の実施形態では、減圧状態で行われる。異なる組み合わせも可能である。ある実施形態では、ステップ(b)は、過剰のシクロヘキサンジメタノールを用い、30kPa〜150kPa(300〜1500mbar)絶対値の圧力で行われる。ステップ(b)の間に使用されたシクロヘキサンジメタノールは、ステップ(c)で得られる変性PCT共重合体に組み込まれたシクロヘキサンジメタノール部分のモル数に対して、過剰に、例えば少なくとも1.05倍の過剰モル量で添加できる。別の実施形態では、使用されるシクロヘキサンジメタノールの過剰モル量は1.05〜5であり、より具体的には1.05〜2モルである。
【0037】
該3ステッププロセスのステップ(c)も用途によって変更して行うことができる。ある実施形態では、例えば、過剰シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールあるいはこれらの組み合わせの群から選択される成分は、ステップ(c)の間に除去される。ステップ(c)の圧力も変えることができる。ある実施形態では、ステップ(c)は99kPa〜0.013kPaの範囲の圧力で行われる。
【0038】
該3ステッププロセスは、同一のリアクタ内で行なうことができ、または少なくとも2つのリアクタ内で行なうことができる。
【0039】
上記のいずれかのプロセスにおいて、固相重合ステップを選択的に用いることができる。該固相重合は一般に、該溶融混合物から形成された変性PCT共重合体を不活性雰囲気および減圧下に置くステップと、十分な時間加熱して該変性PCT共重合体の分子量を形成するステップと、を含む。一般に、該変性PCT共重合体を加熱する温度はその共重合体の融点より低く、例えば融点より5℃〜60℃低い。ある実施形態では、こうした温度の範囲は220℃〜285℃である。該固相重合の好適な継続時間は、反応成分や条件および使用装置などによって変わるが、2〜20時間の範囲とすることができる。固相重合は一般に十分な攪拌状態で行って、該変性PCT共重合体の好適な分子量への重合を一層促進させる。該変性PCT共重合体を攪拌することによって、すなわち、系内に不活性ガスをポンプで注入し、例えばペレット状、チップ状、フレーク状、パウダー状などのポリマー粒子の流動を促進させることによって、こうした攪拌状態を作ってもよい。該固相重合は、大気圧下およびまたは101kPa〜0.013kPa(1気圧〜0.13mbar)の範囲の減圧下で行うことができる。
【0040】
上記の方法で製造された変性PCT共重合体は、PET成分由来の残基を少なくとも1つ有するポリエステル単位を含む。該PET成分由来の残基は、エチレングリコール残基、ジエチレングリコール残基、イソフタル酸残基、アンチモン含有化合物、ゲルマニウム含有化合物、チタン含有化合物、コバルト含有化合物、スズ含有化合物、アルミニウム含有化合物、アルミニウム、アルミニウム塩、1,3−シクロヘキサンジメタノール異性体、1,4−シクロヘキサンジメタノール異性体(cis−1,3−シクロヘキサンジメタノール、cis−1,4−シクロヘキサンジメタノール、trans−1,3−シクロヘキサンジメタノールおよびtrans−1,4−シクロヘキサンジメタノールを含む)、カルシウム、マグネシウム、ナトリウムおよびカリウム塩類を含むアルカリ塩、アルカリ土類金属塩、リン含有化合物およびアニオン、硫黄含有化合物およびアニオン、ナフタレンジカルボン酸およびこれらの組み合わせから構成される群から選択できる。
【0041】
ポリエチレンテレフタレートあるいはポリエチレンテレフタレート共重合体のいずれが使用されたかなどの要因によって、PET成分から誘導される残基は、種々の組み合わせを含み得る。ある実施形態では、例えば、該残基は、エチレングリコールとジエチレングリコールの混合物を含む。別の実施形態では、該残基は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、イソフタル酸あるいはこれらの組み合わせを含む。別の実施形態では、少なくとも1つのポリエチレンテレフタレート残基は、1,3−シクロヘキサンジメタノールのcis異性体、1,4−シクロヘキサンジメタノールのcis異性体、1,3−シクロヘキサンジメタノールのtrans異性体、1,4−シクロヘキサンジメタノールのtrans異性体あるいはこれらの組み合わせを含む。別の実施形態では、該残基は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、イソフタル酸残基、シクロヘキサンジメタノールのcis異性体、シクロヘキサンジメタノールのtrans異性体およびこれらの組み合わせの混合物であり得る。ある実施形態では、ポリエチレンテレフタレート由来の残基は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、コバルト含有化合物、アンチモン含有化合物、イソフタル酸基あるいはこれらの組み合わせを含む。
【0042】
該変性PCT共重合体のポリマー骨格中のエチレングリコール基(すなわち残基)、ジエチレングリコール基およびイソフタル酸基の量は変えることができ、例えば少なくとも0.1モル%の、具体的には0または0.1〜10モル%(0または0.07〜7質量%)のイソフタル酸基を含むことができる。該変性PCT共重合体は、0モル%超の、少なくとも0.1モル%で0.1〜10モル%(0.02〜2質量%)のエチレングリコールを含むことができる。別の実施形態では、該変性PCT共重合体のエチレングリコール含量は、該共重合体の合計質量に対して、0質量%超、0.2質量%超または1質量%超で10質量%未満である。また、該変性PCT共重合体は、0.1〜10モル%(0.04〜4質量%)のジエチレングリコールも含むことができる。該シクロヘキサンジメタノール基の量は一般に約98モル%であり、一部の実施形態では95〜99.8モル%の範囲で変えることができる。該テレフタル酸基の量は一般に約98モル%であり、一部の実施形態では90〜99.9モル%の範囲で変えることができる。より具体的には、該ポリエチレンテレフタレート成分残基は、エチレングリコール基およびジエチレングリコール基から構成される群から選択され、該ポリエチレンテレフタレート成分残基の量は、該変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート共重合体中のグリコール100モル%に対して、0.1〜10モル%の範囲である。該ポリエチレンテレフタレート成分残基はさらに、該変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートランダム共重合体中の酸性官能基100モル%に対して、0〜10モル%の量のイソフタル酸基を含むことができる。
【0043】
別途明示される場合を除き、該イソフタル酸基およびまたはテレフタル酸基のモル量はすべて、該組成物中の酸性官能基(二酸/ジエステル)合計モル数に対するものである。別途明示される場合を除き、該シクロヘキサンジメタノール基、エチレングリコール基およびジエチレングリコール基のモル量はすべて、該組成物中のジオールの合計モル数に対するものである。上記の質量%の測定は、テレフタル酸基、イソフタル酸基、エチレングリコール基およびジエチレングリコール基が本明細書で定義された方法に基づく。
【0044】
該変性PCT共重合体中のポリエチレンテレフタレート残基の合計量は変えることができる。例えば、該残基の合計量は1.8〜2.5質量%に、あるいは0.5〜2質量%に、あるいは1〜4質量%とすることができる。該エチレングリコール基、ジエチレングリコール基およびシクロヘキサンジメタノール基の量は、該変性PBT共重合体のグリコール100モル%に対して、それぞれ独立にまたは組み合わせて0.1〜10モル%とすることができる。該イソフタル酸基の量は、該変性PCT共重合体中の二酸/ジエステル100モル%に対して、0.1〜10モル%とすることができる。
【0045】
該PET成分から誘導された無機残基の合計量は、該変性PCT共重合体の質量部に対して、0ppm超〜1000ppまでとすることができる。こうした無機残基としては、アンチモン含有化合物、ゲルマニウム含有化合物、チタン含有化合物、コバルト含有化合物、スズ含有化合物、アルミニウム含有化合物、アルミニウム、アルミニウム塩、アルカリ土類金属塩、カルシウム、マグネシウム、ナトリウムおよびカリウム塩類を含むアルカリ塩、リン含有化合物およびアニオン、硫黄含有化合物およびアニオンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。別の実施形態では、無機残基の量は250〜1000ppmに、具体的には500〜1000ppmとすることができる。
【0046】
該変性PCT共重合体の物性は、要求される性能特性、使用装置、プロセスパラメータなどの要因によって変えることができる。該変性PCT共重合体の分子量は一般に、少なくとも3,000g/molとすることができ、具体的には10,000〜40,000g/molとすることができ、より具体的には15,000〜30,000g/molとすることができる。
【0047】
該変性PCTの固有粘度(IV)は、少なくとも0.4dL/gとすることができ、具体的には0.5〜1.3dL/gとすることができ、より具体的には0.4〜1.2dL/gとすることができる。本出願における固有粘度はすべて、フェノール60質量%と1,1,2,2−テトラクロロエタン40質量%の溶液中、温度25℃で測定したものである。
【0048】
該変性PCT共重合体の溶融温度(Tm)は、ASTM E1356に準拠して示差走査熱量測定法(DSC)で測定して、少なくとも280℃である。別の実施形態では、該変性PCT共重合体の溶融温度は280℃〜294℃である。該変性PCT共重合体の結晶化温度(Tc)は、ASTM D3418に準拠して測定して、225℃〜255℃である。
【0049】
上記のプロセスで製造された組成物は、成形用組成物に使用することができる。該変性PCT共重合体を含む成形用組成物は、ポリエチレンテレフタレート成分由来の少なくとも1つの残基を有する。成形品、特に押出成形品または射出成形品は、該成形用組成物から調製される。
【0050】
該変性PCT共重合体は、単独で、例えば成形用組成物として使用することができ、あるいは広範な他の熱可塑性ポリマー、例えば他のポリエステル、ポリオレフィン(例えばポリエチレンやポリプロピレン)、ポリカーボネート(例えばビスフェノールA由来のポリカーボネート)、ポリイミド、ポリエーテルイミドおよびポリアミドなどと組み合わせて使用することができる。
【0051】
上記のプロセスで製造された組成物、すなわち変性PCTを含む成形用組成物は、さらなるエステル交換を抑えるために触媒失活剤を含むことができる。典型的な失活剤としては、亜リン酸の45%水溶液が挙げられる。失活剤としては他に、リン酸、遷移金属リン酸塩および他の非酸性種などが含まれる。具体的には、リン酸亜鉛、第1リン酸亜鉛、リン酸カルシウム、リン酸、亜リン酸およびこれらの組み合わせなどが挙げられる。失活剤の有効量は文献で周知である。ある有効量は通常50〜500ppm以上であろう。ある実施形態では、有効量は1〜5000ppmの範囲である。失活剤は、該変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートランダム共重合体、第2のポリマー成分および耐衝撃性改良剤を含む成形用組成物では特に有用であろう。
【0052】
該変性PCTを含む成形用組成物およびその物品は、好適な量で使用されると組成物にエネルギ吸収特性を付与する、通常はゴム材料である、耐衝撃性改良剤も含むことができる。典型的なゴム耐衝撃性改良剤としては、(a)メタクリレート−ブタジエン−スチレン類、(b)アクリレートエラストマ類、(c)アクリロニトリル−スチレン−アクリレート類、(d)高ゴムグラフトアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン類、(e)アクリレート−オレフィン共重合体類、(f)ポリオレフィン改良剤、(g)シリコーン−アクリル改良剤(例えば三菱レイヨン(株)製のMETABLEN(登録商標)S)などが挙げられる。ある実施形態では、耐衝撃性改良剤は、メタクリレート−ブタジエン−スチレン類、アクリレートエラストマ類、アクリロニトリル−スチレン−アクリレートゴム類、高ゴムグラフトアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン類、シリコーン−アクリル改良剤およびこれらの組み合わせから構成される群から選択される。他の耐衝撃性改良剤は、以下の材料あるいはこれらの2つ以上のブレンドである。(1)ブチルアクリレート−メチルメタクリレートコア−シェルゴムであるPARALOID EXL3300、(2)アクリロニトリル−スチレン−ブチルアクリレート共重合体であるASA−HRG、(3)アクリロニトリル−スチレン−EPDM共重合体(ここで、EPDMはエチレン−プロピレン非共役ジエンエラストマ)であるAES、および(4)メタクリレート含量が約8%のエチレン−メタクリレート−グリシジルメタアクリレート共重合体であるLOTADER AX8900。
【0053】
該耐衝撃性改良剤の量は、該変性PCT共重合体組成物の合計質量に対して、通常少なくとも1質量%である。ある実施形態では、該耐衝撃性改良剤の量は、該変性PCT共重合体組成物の合計質量に対して、1質量%〜50質量%の範囲である。別の実施形態では、該耐衝撃性改良剤の量は、該変性PCT共重合体組成物の合計質量に対して、5質量%〜25質量%の範囲である。
【0054】
失活剤および耐衝撃性改良剤に加えて、該変性PCTを含む成形用組成物およびその物品は、充填材、強化剤、難燃剤、熱安定剤、失活剤、離型剤、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン−ポリ(スチレン−co−アクリロニトリル)混合物およびこれらの組み合わせなどの他の添加剤も含むことができる。より具体的には、成形用組成物はさらにUV吸収剤を含むことができる。典型的なUV吸収剤としては、例えばサリチル酸UV吸収剤、ベンゾフェノンUV吸収剤、ベンゾトリアゾールUV吸収剤、シアノアクリレートUV吸収剤およびこれらの混合物が挙げられる。熱安定剤には、これに限定されないが、フェノール安定剤、有機チオエーテル安定剤、有機亜リン酸エステル安定剤、ヒンダードアミン安定剤、エポキシ安定剤およびこれらの混合物などが含まれる。
【0055】
成形用組成物のある製造方法には、該変性PCTを含むいずれかの組成物の成分を溶融混合するステップが含まれる。物品の成形方法には、混合された組成物を押出成形または型成形で該物品を成形するステップが含まれる。熱成形品の製造方法には、該変性PCTを含むいずれかの組成物を熱成形して該熱成形品を成形するステップが含まれる。
【0056】
該変性PCTに基づいた成形用組成物は、イソフタル酸基およびエチレングリコール基を含有する構造的に異なった材料を使用しているにもかかわらず、従来通りに調製されたPCTに基づいたものと同等に機能することができる。該成形用組成物は従来通りに調製されたPCTを必要としないので、本発明によってPETの使用要求が高まり、スクラップPETをごみ埋め立て地に捨てたり焼却処分する必要性が低減される。
【0057】
さらに好都合なことに、該組成物に用いられるPET由来のランダムな変性PCT共重合体組成物の製造プロセスによって、二酸化炭素排出と固形廃棄物を実質的に低減させることができる。本発明プロセスで作られたPET由来のポリエステルランダム変性PCT共重合体は、モノマーではなくスクラップPETから製造されるため、該プロセスによって、二酸化炭素排出量と固形廃棄物の量は著しく低減される。ポリエステルの製造に通常使用するジメチルテレフタレートまたはテレフタル酸を構成する炭素を使用せず、PET成分、例えばスクラップポリエステルで置き換えているので、炭素排出量が低減される(あるいは原油が節約される)。原油からDMTまたはTPAを作るプロセスは高度にエネルギ集約的であり、その結果、非再生エネルギ資源の燃焼によって、COの実質的な大気排出が生じる。該変性PCTの製造にDMTまたはTPAを使用しないことで、二酸化炭素排出量の削減が実現される。ある実施形態では、変性PCTの製造プロセスでは、モノマーから未使用のPCTホモポリマーを製造するプロセスと比較して、本プロセスで製造される変性PCT1kg当たり、CO排出量を少なくとも0.8kg削減することができる。別の実施形態では、変性PCTの製造プロセスでは、モノマーから未使用のPCTホモポリマーを製造するプロセスと比較して、本プロセスで製造される変性PCT1kg当たり、CO排出量を0.8kg〜1.19kg以上削減することができる。また、該エチレングリコール副産物を回収し、製造時に通常のエチレングリコールの代わりに使用すると、省エネルギ/二酸化炭素排出量削減が可能となる。
【0058】
好都合なことに、該変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートランダム共重合体を含む成形用組成物は、CO排出低減指数を有する。本明細書で定義するCO排出低減指数とは、該変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートランダム共重合体を含む1kgの組成物を製造する場合に、該組成物をモノマー由来のポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートで製造する場合のCO発生量(kg)と比較して、削減されたCO量(kg)を指す。
【0059】
該組成物のCO排出低減指数は一般に、約0.05kg超であり、その範囲を0.05kg〜1.8とすることができる。この特長の根拠について以下に議論する。未使用のモノマー由来PBTを作る通常のプロセスと、1kgの該変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートランダム共重合体を作るプロセス中に発生するCO量の差は1.04kg〜1.99kgとすることができ、より好適には1.36kg〜1.75kgとすることができる。この差は、原油からスタートしてモノマー、そしてPCTに至るプロセス対スクラップPETからオリゴマ、そして変性PCTに至るプロセスのすべてについて計算して求めたものであることは注目されるべきである。言い換えれば、0.8kgの変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートランダム共重合体を作るプロセスでは、原油から1kgの未使用PCTを作るプロセスと比較して、CO発生量は1.04〜1.99kg少ない。該組成物(変性PCTランダム共重合体量は5〜90質量%)に対するCO発生低減指数の範囲を求めるには、該組成物中のポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートの下限量(%)を1.04倍(0.05×1.04=0.05)し、上限量を1.99倍(0.90×1.99=1.8)すればよい。
【0060】
これらの結果は、材料とエネルギの収支計算(化学工学分野では周知の計算)を用いることによって、またPETからの変性PCTランダム共重合体の製造に使用したエネルギ量と、テレフタル酸からのPBT製造に使用したエネルギ量とを比較することによって、導出され実証される。
【0061】
以下の実例となる実施例で該変性PCT組成物をさらに説明するが、そこでの部とパーセントは、別途明示される場合を除き、質量で表す。
【実施例】
【0062】
表1は実施例で使用した組成物を示す。
【表1】

【0063】
再利用PETからの変性PCTの合成
パイロットプラントプロセス
ヘリコーンリアクタ内で、大量のポリエチレンテレフタレート成分から変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート共重合体を誘導した。ヘリコーンリアクタ容量は40Lで、270℃ねじれた2つの対向する螺旋ブレードを備えた特別設計のものであり、16gの研磨仕上げを施した316ステンレスで構成されている。ブレードの回転数は1〜65rpmの範囲で変更し得る。撹拌機は、230/460V交流電圧、3相、60Hzで作動する、7.5馬力の定トルクインバータモータに接続している。これらの撹拌機によって、溶融ポリマーには分子量を形成するための優れた表面積が与えられる。また、該ヘリコーンリアクタは上部に凝縮器を有するように設計されており、解糖段階、エステル交換段階(もしあれば)および重合段階における蒸発物を凝縮する。
【0064】
解重合段階については、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)を有する再利用PETペレット(3つのバッチそれぞれの化学量論については、表2を参照のこと)を該ヘリコーンリアクタ内に投入した。4.6mlのチタンテトライソプロポキシド(TPT)触媒(Tiとして100ppm)も上記反応混合物に添加した。
【表2】

加熱オイル(ヘリコーン用の)の温度を225℃に設定した。プロセスの各段階の温度勾配と保持時間を表3に示す。撹拌器の速度は最高の67%に設定した。温度をすぐに275℃まで上げた。過剰のCHDMと、PETとCHDM間のエステル交換反応で生成したエチレングリコールとを蒸発させて別の凝縮器に収集した。該反応を275℃×30分間保持し、CHDMとエチレングリコールの最大蒸発量を除去した。該反応混合物をすぐに295℃まで加熱して、重合段階をスタートさせた。
【表3】

【0065】
この手段で製造したPCTの組成物をNMR分光法で評価した(表4)。
【表4】

【0066】
重合段階では、ヘリコーンリアクタ内を真空にした。撹拌器の速度を最大の60%に設定し、モータの目標電流を3.5Aとした。系の圧力を真空ポンプで0.066kPa(0.5Torr)まで下げた。ポリマー物質が第3構造に達するまで反応を行った。第3構造になって15分後に反応を止め、該ポリマーを粒状に成形した。次に、反応生成物を乾燥しペレットに粉砕した。
【0067】
該ペレットを示差走査熱量測定(DSC)分析にかけて溶融温度と結晶化温度とを求め、Eastman社から購入した、従来通りに調製された(混ぜ物のない)市販のPCTと比較した。表5の結果は、再利用PETから誘導された変性PCTの溶融温度と結晶化温度が、従来通りに調製されたPCTと同等であることを示しており、このことから、変性PCTの、鉛フリー半田、医療、食料および自動車分野などへの応用を魅力的なものにしている。
【表5】

【0068】
本明細書では、その最良モードを含めて本発明を開示するために、また、任意の装置やシステムの製作と使用および組み込まれた任意の方法の実施を含めて、当業者による本発明の実施を可能とするために、実施例を用いている。本発明の特許可能な範囲は請求項によって定義され、当業者がもたらす他の実施例も包含し得る。こうした他の実施例は、請求項の文言と違わない構成要素を有する場合、あるいは請求項の文言との差異がわずかな、等価な構成要素を含む場合、請求項の範囲に含まれるものと意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性雰囲気下の第1の温度および少なくとも101kPaの第1の圧力で、シクロヘキサンジメタノールと、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレート共重合体から構成される群から選択されるポリエチレンテレフタレート成分と、を加熱して、エチレンテレフタレート基を含有するオリゴマ、エチレンイソフタレート基を含有するオリゴマ、ジエチレングリコールテレフタレート基を含有するオリゴマ、ジエチレングリコールイソフタレート基を含有するオリゴマ、シクロヘキサンジメチレンテレフタレート基を含有するオリゴマ、シクロヘキサンジメチレンイソフタレート基を含有するオリゴマ、前述の基の少なくとも2つを含む共有結合オリゴマ部分、シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコールおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択される成分を含む溶融混合物を形成するステップと;
前記第1の温度より高い第2の温度およびある期間第2の減圧条件下で、また下記の共重合体の形成に有効な条件下で、前記溶融混合物を攪拌しながら加熱して、前記ポリエチレンテレフタレート成分から誘導された残基を少なくとも1つ含む変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート共重合体を形成するステップと、
を含むことを特徴とするプロセス。
【請求項2】
前記第1の温度は、210℃〜280℃である請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記第2の温度は、280℃〜310℃である請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記第1の圧力は、101kPaである請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記第2の減圧条件は、99kPa〜0.013kPaである請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記溶融混合物を形成する加熱ステップは、30分間〜2時間行われる請求項1乃至5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記変性共重合体を形成する加熱ステップは、5分間〜1時間行われる請求項1乃至6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記シクロヘキサンジメタノールは、前記ポリエチレンテレフタレート成分に対して、過剰モル量である請求項1乃至7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記シクロヘキサンジメタノールの過剰モル数は、ポリエチレンテレフタレート繰り返し単位のモル数に対して、1.05〜2である請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記触媒の量は10〜5000ppmである請求項1乃至9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記触媒は、アンチモン化合物、スズ化合物、ゲルマニウム含有化合物、チタン含有化合物およびこれらの組み合わせから構成される群から選択される請求項1乃至10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記ポリエチレンテレフタレート成分から誘導される前記少なくとも1つの残基は、エチレングリコール基、ジエチレングリコール基またはイソフタル酸基から構成される群から選択される請求項1乃至11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記ポリエチレンテレフタレート成分から誘導される前記少なくとも1つの残基は、アンチモン含有化合物、ゲルマニウム含有化合物、チタン含有化合物、コバルト含有化合物、スズ含有化合物、アルミニウム含有化合物、アルミニウム、アルミニウム塩、1,3−シクロヘキサンジメタノール異性体、1,4−シクロヘキサンジメタノール異性体、アルカリ土類金属塩、アルカリ塩、リン含有化合物、リン含有アニオン、硫黄含有化合物、硫黄含有アニオン、ナフタレンジカルボン酸、1,3−プロパンジオール基、コバルト含有化合物およびこれらの組み合わせから構成される群から選択される請求項1乃至12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
加熱中に、前記溶融混合物から、シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコールまたはこれらの組み合わせを除去するステップをさらに含む請求項1乃至13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記プロセスは同一のリアクタ内で行われる請求項1乃至14のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記プロセスは少なくとも2つのリアクタ内で行われる請求項1乃至14のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項17】
シクロヘキサンジメタノールは、前記第1の温度での加熱の間、前記リアクタ内に還流され、過剰のシクロヘキサンジメタノールとエチレングリコールは、前記第2の温度での加熱の間に除去される請求項1乃至16のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記第1の温度での加熱後に、第2の温度および101kPa未満の第2の圧力で、前記溶融混合物から少なくとも1つの揮発性材料を除去するステップをさらに含む請求項1乃至17のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記溶融混合物を形成するための加熱により、前記ポリエチレンテレフタレート成分を解重合する請求項1乃至18のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項20】
該プロセスは、前記変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート共重合体を固相重合させてその分子量を増加させるステップをさらに含む請求項1乃至19のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項21】
請求項1乃至20のいずれか1項に記載の方法で製造されたことを特徴とする組成物。
【請求項22】
前記組成物の結晶化温度は、ASTM D3418に準拠して測定して、225℃〜255℃である請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物の溶融温度は、ASTM E1356に準拠して、280℃〜294℃である請求項21または22に記載の組成物。
【請求項24】
前記変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート共重合体のエチレングリコール基含量は、前記共重合体の合計質量に対して、0.05質量%を上回る請求項21乃至23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
前記変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート共重合体は、その合計質量に対して、1質量%を上回るエチレングリコール基を含む請求項21乃至24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物の250〜1000ppmの量の無機残基をさらに含む請求項21乃至25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
前記共重合体の合計質量に対して、0質量%超で5質量%未満のエチレングリコールをさらに含む請求項21乃至26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
請求項1乃至21のいずれか1項に記載の組成物を含むことを特徴とする物品。
【請求項29】
前記物品は、押出成形品または射出成形品である請求項28に記載の物品。

【公表番号】特表2012−514081(P2012−514081A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543628(P2011−543628)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/069129
【国際公開番号】WO2010/078141
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(508171804)サビック・イノベーティブ・プラスチックス・アイピー・ベスローテン・フェンノートシャップ (86)
【Fターム(参考)】