説明

ポリエチレン組成物の造粒方法

【課題】少なくとも添加剤としてアンチブロッキング剤を含むポリエチレン混合物を造粒機を用いて造粒する方法であって、極力気泡を含まないペレットの造粒、特に低密度ポリオレフィンまたは直鎖状低密度ポリエチレンに効果的なポリエチレン組成物の造粒方法を提供する。
【解決手段】少なくとも添加剤としてアンチブロッキング剤を含むポリエチレン混合物を溶融混練して造粒を行うに際し、造粒機のギアポンプの入口圧力と造粒機の造粒速度との関係が下記式(1)および(2)を同時に満足するようにギアポンプの入口圧力およびポリエチレンと少なくともアンチブロッキング剤を含む添加剤との合計の供給量を制御することを特徴とするポリエチレン組成物の造粒方法。
X≦0.25 (1)
Y≦−24X+21.6 (2)
(但し、Xはギアポンプ入口の圧力(MPaG)、Yは造粒機の造粒速度(T/Hr)である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン組成物の造粒方法に関し、さらに詳細には、低密度ポリエチレンまたは直鎖状低密度ポリエチレン組成物を造粒機を用いてペレット化する際の、造粒機の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンなどポリオレフィン樹脂は、最終用途に供する前に、造粒機でポリオレフィンパウダーにその用途に応じて酸化防止剤、耐候剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤等種々の添加剤を混練し、ペレット化して最終製品の過去プロセスに供するのが通常である。この混練・ペレット化の課程において、ペレットに気泡が混入することがあるが、この気泡はペレット嵩比重の低下、ペレットの変形、フィルム加工する場合の目やに現象などを生じ極力低減する必要がある。
【0003】
従来、ペレットへの気泡の混入を防ぐ方法として、例えば重合槽から溶融ポリマーをギアポンプで払い出して粒状化する場合は、ポンプのシール部のパッキンが磨耗して外部から空気が侵入してポリマーに混入し、ペレットに気泡が入りペレットが変形するような場合には、溶融ポリマーのストランドを連続的に撮像し、欠点の判定をする方法などが提案されている(特許文献1参照)。しかし、ポリオレフィンパウダーと添加物を溶融混練してギアポンプでダイから押し出して、ペレット化する際におけるペレット中への気泡の混入に関しては、適切な防止方法が知られておらず改良が望まれていた。
【特許文献1】特開平9−300345号公報(第1頁〜第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、少なくとも添加剤としてアンチブロッキング剤を含むポリエチレン混合物を造粒機を用いて造粒する方法であって、極力気泡を含まないペレットを造粒することを可能にするポリエチレン組成物の造粒方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、少なくとも添加剤としてアンチブロッキング剤を含むポリエチレン混合物を溶融混練して造粒を行うに際し、造粒機のギアポンプの入口圧力と造粒機の造粒速度との関係が下記式(1)および(2)を同時に満足するようにギアポンプの入口圧力およびポリエチレンと少なくともアンチブロッキング剤を含む添加剤との合計の供給量を制御することを特徴とするポリエチレン組成物の造粒方法に係るものである。
X≦0.25 (1)
Y≦−24X+21.6 (2)
(但し、Xはギアポンプ入口の圧力(MPaG)、Yは造粒機の造粒速度(T/Hr)である。)
【発明の効果】
【0006】
本発明により、少なくとも添加剤としてアンチブロッキング剤を含むポリエチレン混合物を造粒機を用いて造粒する方法であって、極力気泡を含まないペレットの造粒、特に低密度ポリオレフィンまたは直鎖状低密度ポリエチレンに効果的なポリエチレン組成物の造粒方法の提供が可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明におけるポリエチレンとは、高圧イオン重合法、気相重合法、溶液重合法等で製造されるポリエチレンであって、特に密度が935kg/m3以下のエチレンホモポリマーであるいわゆる低密度ポリエチレン(LDPE)やブテン−1、ヘキセン−1等が共重合された直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等の低密度ポリエチレンまたは鎖状低密度ポリエチレンパウダーとアンチブロッキング剤を含む組成物のペレットを造粒する際に発生するペレット内の気泡を低減させるのに有用な造粒方法である。重合後のポリエチレンパウダーに混合して溶融混練される添加剤としては、酸化防止剤、帯電防止剤、耐候剤、中和剤、滑剤、アンチブロッキング剤等種々用いられる。特に粘着性の高いLLDPEに、ソジウム・カルシウム・アルミノシリケートまたはアルミノシリケート等はアンチブロッキング剤として好適に用いられる。
【0008】
図1は、本発明が適用される造粒方法の流れを示す概念図である。ポリエチレンホッパー1にポリエチレンのパウダー、添加剤ホッパー2にアンチブロッキング剤等の添加剤を投入し、フィーダー3a、3bでそれぞれスクリューフィーダー4へ所定量供給して造粒機へ送る。造粒機は、二軸混練スクリュー6とギアポンプ7を備えており、二軸混練スクリューで溶融混練した後、ギアポンプ7でダイ8へ送り、アンダーウォータカッティングを行いペレット9にする。
【0009】
この操作を行う場合の、造粒機のギアポンプ入口の圧力X(MPaG)と造粒速度Y(T/Hr)、すなわちポリエチレンと添加剤との合計との間には、下記実験式(1)および(2)の関係を同時に満足するように制御することによって、生成したポリエチレンペレットには、含まれる気泡の量が少ないことが判った。
X≦0.25 (1)
Y≦−24X+21.6 (2)
(但し、Xはギアポンプ入口の圧力(MPaG)、Yは造粒機の造粒速度(T/Hr)である。)
【0010】
ポリエチレン等の樹脂パウダーとアンチブロッキング剤等の添加物は、窒素で加圧したスクリューフィーダーで水平方向に搬送され、造粒機の混練部分へ供給される。造粒機の混練部分の温度は150℃〜300℃であり、その空間部分は2〜10kPaGの窒素雰囲気で運転される。このとき混練される樹脂圧力は0.01〜0.35MPaGである。この樹脂圧力Xをギアポンプ入口では、式(1)および(2)を同時に満足するように、ギアポンプ入口の圧力および樹脂の供給速度を制御することによって、成型されたペレット中に含まれる気泡が非常に低減される。
【実施例】
【0011】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、もとより本発明はこの実施例に限定されるものではない。
実施例1
ポリエチレンとして直鎖状低密度ポリエチレンの樹脂パウダーを用い、アンチブロッキング剤としてソジウム・カルシウム・アルミノシリケートを3000ppm、その他の添加剤として酸化防止剤、中和剤、滑剤を添加し、造粒機(神戸製鋼製LCM300)のスクリュー高速、混練部分の空間圧力3〜4kPaGの条件下で溶融混練・造粒を行なった。
ギアポンプ入口圧力Xを0.01MPa〜0.4MPaG、造粒速度Yを8T/Hr〜17.9T/Hrと変化させて造粒し、得られたペレットを約5g採取し、顕微鏡(倍率3倍)で気泡の混入量を観察した。
ペレットの良否の判断は、次のとおり行った。
◎:気泡の存在が確認できない。
○:気泡のほとんど無いペレットと気泡の少ないペレットが混在する。
×:気泡の多いペレットが大部分を占める。
表1および図1に実験結果を示す。この結果より、○以上のペレットを得るための条件が前記の(1)(2)式で規定されることがわかる。
【0012】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明が適用される造粒方法の流れを示す概念図である。
【図2】実施例1の実験結果を示した図である。
【符号の説明】
【0014】
1…ポリエチレンホッパー、2…添加剤ホッパー、3a、3b…フィーダー、4…スクリューフィーダー、5…モーター、6…2軸混練スクリュー、7…ギアポンプ、8…ダイ、9…ペレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも添加剤としてアンチブロッキング剤を含むポリエチレン混合物を溶融混練して造粒を行うに際し、造粒機のギアポンプの入口圧力と造粒機の造粒速度との関係が下記式(1)および(2)を同時に満足するようにギアポンプの入口圧力およびポリエチレンと少なくともアンチブロッキング剤を含む添加剤との合計の供給量を制御することを特徴とするポリエチレン組成物の造粒方法。
X≦0.25 (1)
Y≦−24X+21.6 (2)
(但し、Xはギアポンプ入口の圧力(MPaG)、Yは造粒機の造粒速度(T/Hr)である。)
【請求項2】
前記アンチブロッキング剤がソジウム、カルシウム、アルミノシリケートまたはアルミノシリケートである請求項1記載のポリエチレン組成物の造粒方法。
【請求項3】
前記ポリエチレンが低密度ポリエチレンまたは直鎖状低密度ポリエチレンである請求項1または2記載のポリエチレン組成物の造粒方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−291158(P2007−291158A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−117617(P2006−117617)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】