説明

ポリエンポリケチド、その調製方法及び医薬品としてのその使用

本発明は、直鎖ポリエンポリケチドの新規な類(Class)と、薬学的に許容されるそれらの塩及び誘導体、並びにそれらの調製方法に関する。前記化合物は、ストレプトマイセス・メラノスポラファシエンス菌種(Streptomyces melanosporafaciens species)を培養し、ポリエンポリケチドを単離した後、かかる単離されたポリエンポリケチドの任意の化学的調製を実施することにより得ることができる。前記化合物はまた、他の既知の細菌により調製することもできる。本発明はさらに、真菌細胞の増殖抑制物質、及びがん細胞増殖抑制物質としてのこれらの化合物の使用法も含む。最後に本発明は、これらの新規ポリケチド化合物、又は薬学的に許容されるそれらの塩又はそれらの誘導体を含有する医薬組成物をも包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、2003年5月13日に提出された米国仮出願USSN60/469,810号及び、2003年8月1日に提出された米国仮出願USSN60/491,516号の優先権を主張する。上記仮出願は、参照によりその内容すべてが本出願に含まれる。
【0002】
本発明は、直鎖ポリエンポリケチドの新規な類(Class)と、薬学的に許容されるそれらの塩及び誘導体、並びにそれらの調製方法に関する。かかる化合物は、ストレプトマイセス菌種(Streptomyces species)を培養し、ポリエンポリケチドを単離した後、かかる単離されたポリエンポリケチドの任意の化学的調製を実施することにより得ることができる。前記化合物はまた、他の既知の細菌により調製することもできる。本発明はさらに、真菌及び細菌細胞の増殖抑制物質、並びにがん細胞増殖抑制物質としてのこれらの化合物の使用法も含む。最後に本発明は、これらの新規ポリケチド化合物、又は薬学的に許容されるそれらの塩又はそれらの誘導体を含有する医薬組成物をも包含する。
【背景技術】
【0003】
ポリケチドは、典型的には真菌及び菌糸体細菌を含む様々な有機体、特にアクチノミセテス(actinomycetes)によって産生される、多様性のある天然由来分子のクラス(Class)である。ポリケチドは、広く多様な構造を有しているが、ケチドと呼ばれる2つの炭素原子又は置換された2つの炭素原子の単位が、連続的、段階的に追加されることよってこれらの分子の炭素主鎖が組み立てられる、共通の生合成経路を有しているため、一緒に分類されている。ポリエンポリケチドはケチド単位の鎖から構成され、鎖は複数のモジュール部分からなるポリケチドの合成酵素タンパク質による、一連の酵素反応で連鎖している。
【0004】
自然環境においては普通、ポリケチドは微量でしかみられない。さらにポリケチドは、その構造の複雑さから、化学的に合成するのが難しいことでよく知られている。しかしながら、多くのポリケチドから、細菌性及び真菌性の感染症、がん及び高コレステロールといった症状を治療するための、有効な薬剤が開発されている。アドリアマイシン、ジスロマックス、ゾコール及びニスタチンは、ポリケチド分子から有益な製剤が開発された例の、ほんの一部に過ぎない。抗真菌及び抗細菌活性を持つとの報告がある直鎖ポリエンポリケチドの例としては、60の炭素鎖を有し、不飽和度が15のリニアマイシンA(Linearmycin A)がある(Sakuda et al., Tetrahedron Letters. Vol. 36, No. 16, 2777‐2870, 1995; Sakuda et al., J. Chem Soc., Perkin Trans. 1,2315‐2319, 1996)。
【0005】
治療上重要なポリケチドが数多く特定されているが、より強い特性又は全く新規の生物活性を有する、新規ポリケチドを得る必要性が引き続き残る。モジュール式のポリケチド合成酵素(modular polyketide synthases)により生成される複合ポリケチドは、駆虫薬、殺虫薬、免疫抑制剤、細胞毒性薬、抗真菌剤又は抗菌剤として既知の用途がある化合物を含むという点で、得に有益である。このような新規ポリケチドは、その複雑な構造のため、容易に全面的な化学合成によって得ることができない。本発明は、治療活性を有する新しいクラスのポリケチド化合物の提供により、この必要性に対応するものである。
【非特許文献1】Sakuda et al., Tetrahedron Letters. Vol. 36, No. 16, 2777‐2870, 1995
【非特許文献2】Sakuda et al., J. Chem Soc., Perkin Trans. 1, 2315‐2319, 1996
【発明の開示】
【0006】
本発明の化合物は、式Iにより表すことができる:
【化1】

[式I]
【0007】
式中、AがNHC(O)R、N=CR、又はNHRから選択され、かつR、R及びRが、独立してC1‐6アルキル、C2‐6アルケニル、C3‐6シクロアルキル、C3‐6ヘテロシクロアルキル、アリール及びヘテロアリールからなる群から選択され、かつかかるアルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール及びヘテロアリールが、ハロゲン、オキソ、OH、C2‐6アルケニル、NO、NH、シクロアルキル、ヘテロアリール又はアリールから選択される基により任意に置換され、かかるC2‐6アルケニル、ヘテロアリール及びアリールが、さらにハロゲン、OH、C1‐3アルキルNO又はNHから独立して選択される1又は2以上の基により任意に置換され;
【0008】
Bが
【化2】

又は
【化3】

から選択され、かつR10がOH、‐OS(O)OHであるか又は、点線が結合手である場合は、R10がオキソであり;
【0009】
DがOH又は1〜2のフェニル基によって任意に置換されたC1‐6アルコキシから選択され、かつ前記フェニル基がC1‐6アルキル又はハロにより任意に置換され;
及びWが各々独立して
【化4】

から選択され;

【化5】

であり;

【化6】

であり;

【化7】

であり;
【0010】
、X、X、X、X、X10、X11、X12及びX13のうち、隣り合う2つのいずれかが結合手である場合には、かかる隣り合う2つの酸素原子とそれらに結合する炭素原子が共に、式:
【化8】

の6員環アセタールを形成するように、X、X、X、X、X、X10、X11、X12、及びX13が、各々独立してH、‐C(O)‐R及び結合手から選択され、かつR、R及びRが、各々独立してH、C1‐6アルキル、C2‐7アルケニルから選択され;
【0011】
、Y、Y、Y、Y、Y、Y、Y、Y、Y10、Y11、Y12、Y13、及びY14が、各々独立して‐CH‐CH‐、‐CH=CH‐、
【化9】

又は‐CH(OH)‐CH(OH)‐から選択され、かつ、この選択の炭素がすべてメチル基で任意に置換され;
【0012】
Zが、OH、C3‐6シクロアルキル、C3‐6ヘテロシクロアルキル、NHR
【化10】

から選択され、点線が結合手の場合には、Zがオキソ又はNC1‐6アルキルであり、かつRがH、C1‐6アルキル、C2‐6アルケニル又はC3‐6シクロアルキルから選択され;かつ
【0013】
15、R16及びR17が、各々独立してH又はCHから選択されるか;又は薬学的に許容されるそれらの塩である。
【0014】
別の側面において本発明は、Zがオキソであり;他のすべての基が前述の通りに定義された、式Iの化合物を提供する。1つの実施形態において本発明は、Zがオキソであり、Aが
【化11】

であり、他のすべての基が前述の通りに定義された、式Iの化合物を提供する。別の実施形態において本発明は、Zがオキソであり、Aが
【化12】

であり、Bが
【化13】

であり、他のすべての基が前述の通りに定義されており、この側面においては、R10が‐OS(O)OHである、式Iの化合物を提供する。この実施形態の別の側面において、R15、R16及びR17が各々独立してCHである。この実施形態のさらに別の側面において本発明は、Zがオキソであり、Aが
【化14】

であり、Bが
【化15】

であり、その他のすべての基が前述の通りに定義されており、この側面においては、R10がOHであることを特徴とする、式Iの化合物を提供する。この実施形態のさらに別の側面においては、R15、R16及びR17が各々独立してCHである。これらの実施形態において薬学的に許容される塩もまた、本発明の範囲に含まれる。
【0015】
本発明はさらに、DがOHであり、その他のすべての基が前述の通りに定義されている式Iの化合物;又は薬学的に許容されるその塩を提供する。本実施形態の1つの側面において本発明は、DがOHであり、Zがオキソであり;その他のすべての基が前述の通りに定義されている式Iの化合物;又は薬学的に許容されるその塩を提供する。この実施形態の別の側面において本発明は、DがOHであり、Zがオキソであり、Aが
【化16】

であり;その他のすべての基が前述の通りに定義された式Iの化合物;又は薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0016】
本発明はさらに、次の式IIのポリエンポリケチドを提供する:
【化17】


[式II]
式中、A、B、D及びZが、前述のいずれかの実施形態に記載されている通りである。
【0017】
次に本発明の化合物の典型例を挙げる:
【化18】








又は化合物1〜47のいずれかの、薬学的に許容される塩。
【0018】
1つの実施形態において本発明は、式:
【化19】

の化合物1及び薬学的に許容される担体を提供する。
【0019】
もう1つの実施形態において本発明は、式:
【化20】

の化合物2及び薬学的に許容される担体を提供する。
【0020】
本発明は、式I又はIIのポリエンポリケチド化合物を含有する医薬組成物、又は薬学的に許容されるそれらの塩を、薬学的に許容される担体と共に提供するものである。1つの実施形態において本発明は、治療上有効な量の化合物1、化合物2又は化合物1若しくは2の薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される1つの担体とを共に含む医薬組成物に関する。
【0021】
本発明はさらに、次の手順を含む方法により得られるポリエンポリケチドを提供する:(a)少なくとも1つの炭素原子源と少なくとも1つの窒素原子源とを有する栄養培地で、ストレプトマイセス菌株を好気条件下で培養する。(b)(a)で培養された細菌から、式I又はIIの化合物を単離する。1つの実施形態において前記菌株は、ストレプトマイセス・メラノスポラファシエンス(Streptomyces melanosporafaciens)NRRL B−12234又はそのミュータントである。もう1つの実施形態において、ポリエンポリケチドは、化合物1又は2である。さらにもう1つの実施形態において、栄養培地は表1の培地から選択される。さらに別の実施形態において、ポリエンポリケチドは原則的に、図3に示すH NMRスペクトルを生じる。さらにまた別の実施形態において、ポリエンポリケチドは原則的に、図10に示すH NMRスペクトルを生じる。
【0022】
本発明はさらに、少なくとも1つの炭素原子源と、少なくとも1つの窒素原子源とを有する栄養培地でストレプトマイセス菌種株を培養し、ポリエンポリケチドを単離し精製することを含む、ポリエンポリケチドの調製方法を提供する。1つの実施形態において、ポリエンポリケチドは、式I又はIIの化合物である。もう1つの実施形態において、ポリエンポリケチドは、化合物1又は化合物2である。さらにもう1つの実施形態において、ポリエンポリケチドは、化合物1又は化合物2の合成後の化学修飾によって得られる、化合物1又は化合物2の誘導体又は構造アナログである。別の実施形態においては、前記菌株は、ストレプトマイセス・メラノスポラファシエンスである。また別の実施形態においては、前記菌株はストレプトマイセス・メラノスポラファシエンスNRRL B−12234又はそのミュータントである。さらに別の実施形態においては、炭素源および窒素源は、表1の組成分から選択される。さらにまた別の実施形態においては、栄養培地は表1の培地から選択される。さらに別の実施形態においては、培養は約18℃〜約40℃の範囲、好ましくは18℃〜30℃の範囲の温度で実施される。また他の実施形態では、培養はpH約6〜約9の範囲で実施される。さらに他の実施形態では、培養は好気条件下で実施される。さらにまた他の実施形態では、ポリエンポリケチドは、原則的に図3に示すH NMRスペクトルを生じ、さらにまた他の実施形態では、ポリエンポリケチドは、原則的に図10に示すH NMRスペクトルを生じる。
【0023】
さらに本発明は、真菌細胞の増殖を抑制する方法を提供し、かかる方法には、真菌細胞の増殖を抑制するように、式I若しくはIIの化合物又はそれらの誘導体又は塩と、真菌細胞とを接触させることが含まれる。1つの実施形態において化合物は、式I若しくはII又はそれらの誘導体又はそれらの塩と、薬学的に許容される1つの担体とを共に含む、医薬組成物の一部である。別の実施形態においてかかる化合物は、化合物1若しくは化合物2、又は化合物1若しくは化合物2の塩である。また本発明は、哺乳動物における真菌細胞の増殖又は感染症を抑制する方法を提供し、かかる方法には、哺乳動物における真菌細胞の増殖又は感染症を抑制するように、そのような真菌細胞の増殖又は感染症を有する哺乳動物に、治療上有効な量の式I若しくはIIの化合物又はそれらの塩を投与することが含まれる。1つの実施形態において前記化合物は、式I若しくはII又はそれらの塩と、薬学的に許容される1つの担体とを共に含む、医薬組成物の一部である。別の実施例においてかかる医薬組成物は、薬学的に許容される1つの担体を伴う、化合物1又は化合物2である。
【0024】
本発明は、抗真菌剤に用いられる、式I若しくはIIの化合物又はそれらの塩を提供するものである。1つの実施形態においてかかる化合物は、抗真菌剤に用いられる、化合物1若しくは化合物2、又は化合物1若しくは化合物2の塩である。また本発明は、抗真菌剤に用いられる、式I又はIIの化合物を含有する組成物を提供する。1つの実施形態において、抗真菌剤に用いられるかかる組成物は、薬学的に許容される1つの担体を伴う化合物1又は化合物2である。
【0025】
本発明の方法は、カンジダ・アルビカンス(C. albicans)によって起きる、哺乳動物の真菌感染症の治療又は真菌細胞の増殖の抑制に役立つ。また本発明は、対象における他の型の真菌感染症を治療又は抑制する方法をも包含し、かつ、かかる真菌感染症には、カンジダ・グラブラタ(C. glabrata)、カンジダ・ルシタニエ(C. lusitaniae)、カンジダ・パラプシロシス(C. parapsilosis)、カンジダ・クルセイ(C. kurusei)、カンジダ・トロピカリス(C. tropicalis)、サッカロミセス・セレビシエ(S. cerevisiae)のようなカンジダ菌種(Candida sp.);アスペルギルス・フミガタス(A. fumigatus)、アスペルギルス・ニガー(A. niger)、アスペルギルス・テレウス(A. terreus)、アスペルギウス・フラブス(A. flavus)のようなアスペルギルス菌種(Aspergillus sp.);フサリウム属菌(Fusarium spp.);セドスポリウム属菌(Scedosporium spp.);クリプトコッカス属菌(Cryptococcus spp.);ムコール亜種(Mucor ssp.);ヒストプラズマ属菌(Histoplasma spp.)、トリコスポロン属菌(Trichosporon spp.);及びブラストミセス属菌(Blastomyces spp.)によって起きるものが含まれる。このような方法には、かかる真菌感染症に罹患した対象に対し、治療上有効な量の式I若しくはIIの化合物、化合物1若しくは化合物2、又は薬学的に許容されるそれらの塩を投与することが含まれる。1つの実施形態において本発明は、抗真菌剤としての、又は真菌感染症の治療における、化合物1又は化合物2の用途を提供し、別の実施形態においては、真菌感染症治療に用いるための薬物の調製における、化合物1又は化合物2の用途を提供する。
【0026】
本発明はまた、がん細胞の増殖を抑制する方法を提供し、かかる方法には、がん細胞と、式Iの化合物、化合物1若しくは化合物2、又は薬学的に許容されるそれらの塩とを接触させることが含まれる。本発明はさらに、対象のがんを治療する方法を包含し、この方法には、かかるがんに罹患した対象に、治療上有効な量の式I、式IIの化合物、化合物1若しくは化合物2、又は薬学的に許容されるそれらの塩を投与することが含まれる。本発明の方法に従って治療または抑制できるがんには、白血病、非小細胞肺がん、直腸がん、中枢神経(CNS)がん、黒色腫、卵巣がん、腎臓がん、前立腺がん及び乳がんが挙げられる。本発明の1つの実施形態は、抗腫瘍剤としての化合物1又は化合物2の用途を提供し、別の実施形態は、抗腫瘍薬物の調製に際する、化合物1又は2の用途を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、ストレプトマイセス菌種の、アクチノミセテス菌株(strains of actinomycetes)から単離され、本明細書中で化合物1及び化合物2と称される、新規ポリケチド化合物に関する。本発明はさらに、化合物1及び化合物2の薬学的に許容される塩及び誘導体、並びにそのような化合物を得る方法に関する。かかる化合物を得る方法の1つは、ストレプトマイセス菌種の培養に適した条件下で、好ましくは本明細書に記載される発酵手順を用い、ストレプトマイセス菌種株NRRL B−12234又はそのミュータント又はバリアントを培養することである。
【0028】
本発明はまた、化合物1及び化合物2並びに薬学的に許容されるそれらの塩及び誘導体とを含む医薬組成物に関する。化合物1及び化合物2は各々、真菌細胞の増殖抑制剤、又は細胞毒性剤に用いられる医薬品として役立つ。
【0029】
下記の詳細な説明は、化合物1及び化合物2、並びにこれらの化合物を含有する組成物の調製方法と、真菌の増殖及び/又は特定の疾患媒介物の抑制のための、その利用方法とを開示する。
【0030】
従って、本発明の特定の側面は、本発明のポリエンポリケチドを含有する医薬組成物に関するとともに、薬学的に許容される担体と、かかる組成物を用いて真菌の増殖を抑制する方法と、かかる医薬組成物を用いて、真菌感染症を含む疾患を治療する方法とに関する。
I. 定義
【0031】
本出願において使用される一定の用語は、特定されない場合、それぞれ一般的な意味を有している。便宜上、本明細書、実施例及び添付されている特許請求の範囲の中で使用されているいくつかの用語や語句の意味を、以下に説明する。
【0032】
アルキルなる用語は、直鎖、分岐、又は環状の炭化水素基を表す。アルキル基の例としては、限定するものではないが、メチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、n‐ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキシメチル(Cyclohexymethyl)等が挙げられる。アルキル基は、アシル、アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、カルボアルコキシ、カルボキシ、カルボキシアミド、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、チオ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、スルフィニル、スルフォニル、オキソ、グアニジノ、及びフォルミルから選択される置換基で、任意に置換することができる。
【0033】
アルケニルなる用語は、少なくとも1つの炭素‐炭素の二重結合を有する、直鎖、分岐、又は環状の炭化水素基を表す。アルキル基の例としては、限定するものではないが、ビニル、1‐プロペン‐2‐イル、1‐ブテン‐4‐イル、2‐ブテン‐4‐イル、1‐ペンテン‐5‐イル等が挙げられる。アルケニル基は、アシル、アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、カルボアルコキシ、カルボキシ、カルボキシアミド、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、チオ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、スルフィニル、スルフォニル、フォルミル、オキソ、及びグアニジノから選択される置換基で、任意に置換することができる。不飽和炭化水素鎖の二重結合の部分(または複数の部分)は、シス又はトランス構造の、どちらかの中にあってよい。
【0034】
シクロアルキル又はシクロアルキル環なる用語は、3〜15員を有する単一又は融合した炭素環式の環系の中にある、飽和又は部分的に不飽和の炭素環式の環を表す。シクロアルキル基の例としては、限定するものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルが挙げられる。シクロアルキル基は、アシル、アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、カルボアルコキシ、カルボキシ、カルボキシアミド、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、チオ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、スルフィニル、スルフォニル及びフォルミルから選択される置換基で、任意に置換することができる。
【0035】
ヘテロシクリル、ヘテロ環式、又はヘテロシクリル環なる用語は、3〜15員を有する単一又は融合したヘテロ環式の環系の中に、O、N、NH,NR、PO、S、SO又はSOから選択される1〜4のヘテロ原子又はヘテロ基を有する、飽和又は部分的に不飽和の環を表す。ヘテロシクリル、ヘテロ環式又はヘテロシクリル環の例としては、限定するものではないが、モルフォリニル、ピペリジニル、及びピロリジニルが挙げられる。ヘテロシクリル、ヘテロ環式又はヘテロシクリル環は、アシル、アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、オキソ、チオカルボニル、イミノ、カルボアルコキシ、カルボキシ、カルボキシアミド、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、チオ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、スルフィニル、スルフォニル及びフォルミルから選択される置換基で、任意に置換することができる。
【0036】
アミノ酸なる用語は、天然アミノ酸、合成アミノ酸又は天然アミノ酸の合成誘導体を表す。天然アミノ酸の例としては、限定するものではないが、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン及びバリンが挙げられる。
【0037】
ハロなる用語は、ブロミン、クロリン、フルオリン、又はイオディンと定義される。
【0038】
アリール又はアリール環なる用語は、5〜15員を有する単一又は融合した環系の中の、芳香族基を表す。アリールの例としては、限定するものではないが、フェニル、ナフチル、ビフェニル、テルフェニルが挙げられる。アリールは、アシル、アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、アジド、アルキチオ(alkythio)、カルボアルコキシ、カルボキシ、カルボキシアミド、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、ニトロ、チオ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、スルフィニル、スルフォニル及びフォルミルから選択される1又は2以上の置換基により任意に置換することができる。
【0039】
ヘテロアリール又はヘテロアリール環なる用語は、O、N、S、SO、SOといったヘテロ原子を少なくとも1つ有する、5〜15員を有する、単一又は融合した環系の中の芳香族基を表す。ヘテロアリール基の例としては、限定するものではないが、ピリジニル、チアゾリル、チアジアゾイル(thiadiazoyl)、イソキノリニル、ピラゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾイル(oxadiazoyl)、トリアゾリル、及びピロリル基が挙げられる。ヘテロアリール基は、アシル、アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、カルボアルコキシ、カルボキシ、アルボキシアミド、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、チオ、チオカルボニル、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、スルフィニル、スルフォニル及びフォルミルから選択される1又は2以上の置換基で、任意に置換することができる。
【0040】
「アラルキル」及び「ヘテロアラルキル」なる用語は、ベンジルのようなアルキル基を通して各々直接結合しているアリール基またはヘテロアリール基を表す。アラルキル及びヘテロアラルキルは、アリール又はヘテロアリール基として任意に置換されてもよい。
【0041】
同様に、「アラルケニル」及び「ヘテロアラルケニル」なる用語は、ベンジルのようなアルケン基を通して各々直接結合しているアリール基又はヘテロアリール基を表す。アラルケニル及びヘテロアラルケニルは、アリール又はヘテロアリール基として任意に置換されてもよい。
【0042】
本発明の化合物は、1又は2以上の不斉炭素原子を有していてもよく、かつラセミ又は非ラセミ化合物の混合物を形成する光学異性体として存在していてもよい。本発明の化合物は、単一異性体又は立体化学異性体の混合物の形態で、有用である。ジアステレオ異性体、即ち重ね合わせることができない立体化学異性体は、クロマトグラフィー、蒸留、結晶化又は昇華のような従来の手段により分離することができる。かかる光学異性体は、従来の手順により、ラセミ混合物を分割することにより得ることができる。
【0043】
本発明は、単離又は精製された化合物をも包含する。「単離された」又は「精製された」化合物とは、1つの混合物の中に存在する本発明の化合物の、少なくとも10%、20%、50%、80%又は90%を占める化合物を表し、本発明の化合物を含有する前記混合物は、当業者に知られた従来の生物学的アッセイで試験した場合、抗細菌性、抗真菌性及び抗がん性を含む、明白な(即ち統計的に顕著な)生物活性を有していることが前提である。
【0044】
本明細書中で用いられる「治療」なる用語は、病気即ち疾患、疾患の症状又は疾患の素因を有する患者の治療、回復、軽減、緩和、修復、治癒、改善、好転のため、又は疾患、疾病の症状、又は疾病の素因に作用するために、患者に治療薬を使用又は投与すること、あるいは疾患を有する患者から単離された組織又は細胞壁に治療薬を使用又は投与することを表す。
【0045】
本明細書中で用いられている「医薬組成物」は、薬理学的に有効な量のポリケチド化合物及び薬学的に許容される担体を含有する。本明細書中で用いられている「薬理学的に有効な量の」「治療上有効な分量の」又は単に「有効な量の」とは、意図する薬理学的な、治療上の、又は予防的な結果を生むのに有効な量のポリケチド化合物を表す。例えば、疾病又は疾患に関連する測定可能な指数に少なくとも25%の減少がみられるときに、任意の臨床治療が有効であると考えられる場合、その疾病又は疾患の治療をするための治療上有効な量の薬剤とは、その指数を少なくとも25%減少させるのに必要な量のことである。
【0046】
「薬学的に許容される担体」なる用語は、治療薬の投与のための担体を表す。そのような担体には、限定するものではないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、ブドウ糖、水、グリセリン、エタノール及びそれらの併用が挙げられる。細胞培地は特に、前記用語から除外される。経口投与される薬剤の場合、薬学的に許容される担体には、限定するものではないが、不活性な希釈剤、崩壊剤、結合剤、平滑剤、甘味剤、香料添加剤、着色剤、及び保存料のような、薬学的に許容される賦形剤が挙げられる。適切な不活性希釈剤には、ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム及び乳糖が挙げられ、またコーンスターチやアルギン酸は適切な崩壊剤である。結合剤にはデンプンやゼラチンを挙げることができ、また平滑剤は、含有するとすれば一般的に、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、又はタルクである。錠剤は、胃腸管での吸収を遅らせるため、必要に応じてモノステアリン酸グリセリル、又はジステアリン酸グリセリルのような物質でコートすることができる。
【0047】
「薬学的に許容される塩」なる用語は、酸付加塩と塩基付加塩との両方を表す。薬学的に許容されるものであれば、塩の性質は重要ではない。典型的な酸付加塩には、限定するものではないが、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、シュウ酸、リンゴ酸、グルタミン酸、プロピオン酸、グリコール酸、グルコン酸、マレイン酸、エンボン酸(パモン酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2 ‐ヒドロキシエタンスルホン酸、パントテン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、スルファニル酸、メシル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、ステアリン酸、アルゲン酸、β‐ヒドロキシブチル酸、マロン酸、ガラクタル酸、ガラクツロン酸等が挙げられる。薬学的に許容される適切な塩基付加塩には、限定するものではないが、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛から作られる金属塩、又はN,N’‐ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N‐メチルグルカミン、リシン、プロカイン等から作られる有機塩が挙げられる。その他の薬学的に許容される塩は、Journal of Pharmaceutical Science 66:2, 1977に記載されている。慣用的な方法を用い、適切な酸または塩基で処理すれば、これらの塩はすべて、本発明のポリケチド化合物から調製することができる。
【0048】
特に指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲の中で用いられている、分子量、反応条件、IC50その他のような、成分の量や特性を表す数字はすべて、あらゆる場面で「約」なる用語で修飾されるものとする。従って、これに相反する指示がない限り、本明細書及び付随する特許請求の範囲に記載されている数値パラメータは、近似値である。少なくとも、本件特許請求の範囲の相等物の原理の適用を狭めることがないよう、各々の数値パラメータは、重要な図表の数値を踏まえて通常の四捨五入の手法を用いたものと理解されるべきである。本発明の広い範囲を示す数値の範囲やパラメータは近似値であるが、実施例、表及び図面に記載されている数値は、可能な限り正確に記録されている。数値はすべて本質的に、実験における偏差、検査測定法、統計分析等から生じる一定の誤差を有する可能性がある。
本発明のポリケチド化合物
【0049】
本発明の化合物は、式Iにより表すことができるもの又は薬学的に許容されるその塩である:
【化21】

[式I]
【0050】
式中、AがNHC(O)R、N=CR、又はNHRから選択され、かつR、R及びRが、独立してH、C1‐6アルキル、C2‐6アルケニル、C3‐6シクロアルキル、C3‐6ヘテロシクロアルキル、アリール及びヘテロアリールからなる群から選択され、かつかかるアルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール及びヘテロアリールが、ハロゲン、オキソ、OH、C3‐6アルキル、C1‐6アルキル、NO、NH、シクロアルキル、ヘテロアリール又はアリールから選択される基によって任意に置換され、かかるC3‐6アルキル、C1‐6アルキル、ヘテロアリール及びアリールが、ハロゲン、OH、C1‐3アルキルNO又はNHから独立して選択される1又は2以上の基によりさらに任意に置換され;
【0051】
Bは
【化22】

又は
【化23】

から選択され、かつR10がOH、‐OS(O)OHであるか、又は点線が結合手である場合は、R10がオキソであり;
【0052】
DがOH又は1から2のフェニル基によって任意に置換されたC1‐6アルコキシから選択され、かつ前記フェニル基がC1‐6アルキル又はハロにより任意に置換され;
及びWが各々独立して
【化24】

から選択され;

【化25】

であり;

【化26】

であり;

【化27】

であり;
【0053】
、X、X、X、X、X10、X11、X12及びX13のうち、隣り合う2つのいずれかが結合手である場合には、かかる隣り合う2つの酸素原子とそれらに結合する炭素原子が共に、式:
【化28】



の6員環アセタールを形成するように、X、X、X、X、X、X10、X11、X12、及びX13が、各々独立してH、‐C(O)‐R及び結合手から選択され、かつR、R及びRが、各々独立してH、C1‐6アルキル、C2‐7アルケニルから選択され;
【0054】
、Y、Y、Y、Y、Y、Y、Y、Y、Y10、Y11、Y12、Y13、及びY14が、各々独立して‐CH‐CH‐、‐CH=CH‐、
【化29】

又は‐CH(OH)‐CH(OH)‐から選択され、かつかかる‐CH‐CH‐、‐CH=CH‐、又は‐CH(OH)‐CH(OH)‐がメチル基で任意に置換され;

【0055】
Zが、OH、C3‐6シクロアルキル、C3‐6ヘテロシクロアルキル、NHR
【化30】

から選択され、点線が結合手の場合には、Zがオキソ又はNC1‐6アルキルであり、かつRがH、C1‐6アルキル、C2‐6アルケニル又はC3‐6シクロアルキルから選択され;かつ
【0056】
15、R16及びR17が、各々独立してHまたはCHから選択される。
【0057】
別の側面において本発明は、Zがオキソであり、他のすべての基が前述の通りに定義されたものである式Iの化合物、又は薬学的に許容されるその塩を提供する。1つの実施形態において本発明は、Zがオキソであり、Aが
【化31】

であり;他のすべての基が前述の通りに定義されたものである;式Iの化合物、又は薬学的に許容されるその塩を提供する。別の実施形態において本発明は、Zがオキソであり、Aが
【化32】

であり、Bが
【化33】

であり、他のすべての基が前述の通りに定義されたものであり;この側面においては、R10が‐OS(O)OHである、式Iの化合物を提供する。本実施形態の別の側面において、R15、R16及びR17は各々独立してCHである。本実施形態のさらなる側面において本発明は、Zがオキソであり、Aが
【化34】

であり、Bが
【化35】

であり、その他のすべての基が前述の通りに定義されたものであり;この側面においては、R10がOHである、式Iの化合物を提供する。本実施形態のさらに別の側面においては、R15、R16及びR17は各々独立している。
【0058】
本発明はさらに、DがOHであり、そのほかのすべての基が前述の通りに定義されたものである式Iの化合物、又は薬学的に許容されるその塩を提供する。本実施形態の1つの側面において本発明は、DがOHであり、Zがオキソであり、その他の全ての基が前述の通りに定義されたものである式Iの化合物、又は薬学的に許容されるその塩を提供する。本実施形態の別の側面において本発明は、DがOHであり、Zがオキソであり、Aが
【化36】

であり、その他のすべての基が前述の通りに定義されたものである式Iの化合物、又は薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0059】
本発明はさらに、次の式IIのポリエンポリケチド、又は化合物1〜47のいずれかの薬学的に許容される塩を提供する:
【化37】

[式II]
式中、A、B、D及びZは、前述のいずれかの実施形態に記載されている通りである。
【0060】
次に典型的な本発明の化合物を挙げる:
【化38】








又は化合物1〜47のいずれかの、薬学的に許容される塩。
【0061】
前記本発明の化合物は、本明細書に後述されるように、式I又はIIのポリケチド化合物とともに、薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物へと形成することができる。
【0062】
1つの側面において本発明は、式:
【化39】

の化合物1及び薬学的に許容される担体を含有する組成物を提供する。
【0063】
別の実施形態において本発明は、式:
【化40】

の化合物2を含む組成物及び薬学的に許容される担体を含有する組成物を提供する。
III. 発酵によるポリエンポリケチドの調製方法
【0064】
1つの実施形態において、化合物1及び化合物2は、ストプトレマイセス菌種株、即ちストレプトマイセス・メラノプポラファシエンス株NRRL B−12234を培養することにより得ることができる。ストレプトマイセス・メラノスポラファシエンス株NRRL B−12234は、Agricultural Research Service Culture Collection, National Center for Agricultural Utilization Research, 1815 N. University Street, Peoria IL 61604, USAから入手できる。しかし当然のことながら、本発明はNRRL B−12234という特定の菌株の使用に限定されるものではない。むしろ本発明は、化合物1又は化合物2を生成する他の有機体の使用を意図するものである。X線照射、紫外線照射、ナイトロジェンマスタードのような化学的突然変異誘発要因での処理、ファージ曝露、抗生物質耐性菌選択等の既知の方法により、NRRL B−12234という有機体に由来するミュータント又はバリアントも使用することがきる。
【0065】
本発明のポリエンポリケチド化合物は、様々な微生物から生合成することができる。本発明のポリエンポリケチドを合成する微生物には、限定するものではないが、放線菌アクチノマイセス目(order Actinomycetales)、又はアクチノミセテス(Actinomycetes)とも呼ばれる細菌が挙げられる。限定はされないが、アクチノミセテス属を構成するものとして、ノカルディア(Nocardia)、ゲオデルマトフィルス(Geodermatophilus)、アクチノプラネス(Actinoplanes)、ミクロモノスポラ(Micromonospora)、ノカルディオイデス(Nocardioides)、サッカロスリックス(Saccharothrix)、アミコラトプシス(Amycolatopsis)、クツネリア(Kutzneria)、サッカロモノスポラ(Saccharomonospora)、サッカロポリスポラ(Saccharopolyspora)、キタサトスポラ(Kitasatospora)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、ミクロビスポラ(Microbispora)、ストレプトスポランギウム(Streptosporangium)、及びアクチノマドゥラ(Actinomadura)が挙げられる。アクチノミセテスの分類法は複雑であり、次の文献を参照している:Goodfellow, Suprageneric Classification of Actinomycetes, 1989; Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology, Vol. 4 (Williams and Wilkins, Baltimore, pp.2322‐2339);及びEmbley and Stackebrandt, “The molecular phylogeny and systematics of the actinomycetes,” Annu. Rev. Microbiol. 48, 257‐289, 1994。本発明の化合物を合成し得る属について参照することにより、これらの文献は、各々その全体が本明細書の一部を構成するものとする。
【0066】
アクチノミセテス菌株を選択し、アクチノミセテスに適した既知の栄養源を有する培地で培養する。かかる培地は、同化可能な炭素源及び窒素源に加え、選択的な無機塩及びpHが約6〜約9の既知の増殖要素を含有する。適切な培地組成分には、限定するものではないが、グルコース、ショ糖、マンニトール、乳糖、サトウキビ液、可溶性デンプン、コーンスターチ、コーン・デキストリン、ポテト・デキストリン、アマニ粕、コーン・スティープ固形物、コーン・スティープ・リカー、ディスティラーズソリュブル(商標名Distiller’s Solubles)、乾燥酵母、酵母エキス、麦芽エキス、ファーマメディア(商標名)、グリセロール、N‐ZアミンA、大豆パウダー、大豆粉、大豆ミール、牛肉エキス、肉エキス、魚エキス、バクトペプトン、バクトトリプトン、カザミノ酸、チアミン、L‐グルタミン、L‐アルギニン、トマトペースト、オートミール、MgSO.7HO、MgSO、MgCL、6HO、CaCO、NaCl、Naアセテ‐ト、KHPO、KHPO、KSO、NaHPO、FeSO.7HO、FeCl.4HO、クエン酸鉄アンモニウム(ferric ammonium citrate)、Kl、Nal、(NHSO、NHPO、NHNO、KSO、ZnCl、ZnSO.7HO、ZnSO.5HO、MnCl.4HO、MnSO、CuSO.5HO、CoCl.2HO、フィト酸、カザミノ酸、プロフロオイル(proflo oil)及びモルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)が挙げられる。
【0067】
微生物を産生するポリエンポリケチドを植菌した培地は、例えば回転式振とう機上、又は振とう浴槽などで振とうし、攪拌してインキュベートすることにより、通気できる。通気はまた、空気、酸素又は適切な混合気体を、インキュベーション中の植菌培地に注入することでも実現できる。培養後、例えば遠心分離、クロマトグラフィー、吸収、ろ過を含めた当業者に知られた技術及び/又は、本明細書中に開示されている技術により、培養された培地からポリエンポリケチド化合物を抽出し、単離することができる。例えば前記培養培地は、n‐ブタノール、n‐ブチルアセテート又は4‐メチル‐2‐ペンタノンのような適切な有機溶媒と混合し、例えば遠心分離機にかけた後、溶媒を蒸発させ乾燥させるか、又は真空下で蒸発させ乾燥させて除去し、有機層を分離することができる。その残留物は、例えば水、エタノール、酢酸エチル、メタノール又はそれらの混合物で任意に還元することができ、ヘキサン、四塩化炭素、塩化メチレン、又はそれらの混合物のような、適切な有機溶媒で再抽出できる。溶媒の除去後、クロマトグラフィーのような標準技術を用い、化合物をさらに精製することができる。
【0068】
微生物により生合成されたポリエンポリケチドは、状況に応じ、無作為の及び/又は定められた化学修飾を任意に受け、式I又は式IIの範囲に含まれる化合物1又は2の誘導体又は構造アナログを形成することができる。同様の機能活性を有するそのような誘導体又は構造アナログも、本発明の範囲に含まれる。本技術分野で既知であり、本明細書中に記載されている方法は、例えば化合物1及び化合物2のような生合成から生成するポリエンポリケチドを化学修飾することにより、式I又は式IIのポリエンポリケチド化合物を製造するのに用いられる。
VI. 化学修飾によるポリエンポリケチドの調製
【0069】
式I又は式IIのポリエンポリケチド化合物は、生成されたポリエンポリケチドの生発酵とその後の標準的な有機化学修飾によりもたらされる。化学修飾をするのに好ましいポリエンポリケチドには、化合物1及び化合物2が挙げられる。式I及びIIの化合物の製造と操作に必要な有機化学の一般原理は、官能基、反応度及び共通プロトコルも含み、例えば ”Advanced Organic Chemistry”, 3rd Edition by Jerry March, 1985 に記載されており、参照により本文献はその全体が、本明細書の一部を構成するものとする。さらに当業者であれば、本明細書に記載されている合成方法は、明記されているかどうかにかかわらず、多種の保護基を使用するということが理解できる。本明細書で用いられる「保護基」とは、多官能化合物の別の反応位置で反応を選択的に行うため、酸素、硫黄、又は窒素を含む反応基のような、1又は2以上の官能基を封鎖するために用いる基を表す。保護基の使用、特定の官能基に対する保護基の適用、及びその使用とに関する一般原理は、例えばT.H. Greene and P.G.M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Edition, John Wiley & Sons, New York, 1999に記載されている。
【0070】
当業者であれば、化合物1又は化合物2に基づいたポリケチドの生成に、多くの合成化学的製法が用いられることは、容易に理解できる。次に記載する理論体系は、式I又はIIの化合物を製造するために用いられる所定の化学修飾の典型である。本明細書に記載されている構成を提供するものならば、当業者に知られたどのような化学合成の製法を用いてもよく、従ってそれらは本発明に含まれる。
【0071】
理論体系1:アシル化反応
【化41】

式中、Rは、C1‐16アルキル、C2‐6アルケン、アリール又はヘテロアリールを表し、かつRC(O)OHは天然アミノ酸(Nは、N‐ベンジルオキシカルボニル(CBZ)、N‐t‐ブトキシカルボニル(t‐BOC)、又はN‐フルオレン‐9‐イルメトキシカルボニル(FMOC)のような適切な保護基で保護されている)。
【0072】
[理論体系1]
理論体系1において、DIPEA(N,N‐ジソプロピルエチルアミン)のような塩基の存在下で、適切な溶媒(例えばN,N‐ジイメチルフォルマミド)に、EDC(1‐(3‐ジメチルアミノプロピル)‐3‐ジイソプロピルエチルカルボジイミド塩酸塩)のような結合試薬を用い、カルボン酸RC(O)OHをグアニジン残基に連結する。理論体系1を用い、化合物1から化合物3、4、5、及び10が、化合物2から化合物20、21、22、及び27が得られる。
【0073】
化合物1から化合物17、18、及び19を得るため、理論体系1の後に例えば木炭に水素とパラジウム触媒を用いてCBZを除去する、トリフルオロ酢酸を用いてt‐BOC基を除去する、又はピペリジンを用いてFMOC基を除去するといった、アミノ基の適切な脱保護を実施する。
【0074】
理論体系2:末端窒素のアミノ化/還元アミノ化
【化42】

式中、Rは前記に定義されている通りである。
【0075】
[理論体系2]
理論体系2において、アルデヒドRCHOにグアニジン残基を加えることにより、イミン(シッフ塩基)中間体が得られる。この中間体は、適切な溶媒を用いたシアノボロ水酸化ナトリウム(NaBHCN)溶液のような還元剤により、第2級アミンに変換される。理論体系2を用い、化合物1から化合物6、7、8及び9が、化合物2から化合物23、24、25及び26が得られる。
【0076】
理論体系3:オレフィン反応
【化43】

【0077】
[理論体系3]
理論体系3において、mCPBA(3‐クロロ過安息香酸)のような酸化剤でオレフィン基をエポキシ化することにより、エポキシドが得られる。また、かかるエポキシドを塩基性又は酸性の水性状態において開環させると、ジオールが得られる。水素下のパラジウム触媒作用で、水素化されたオレフィンからは、飽和アルキルが得られる。理論体系3を用い、化合物1から化合物12及び33を、化合物2から化合物28及び34が得られる。さらに理論体系3を用い、化合物33から化合物35を、化合物34から化合物36が得られる。
【0078】
理論体系4:ケトン反応
【化44】

式中、R及びRは前記に定義されている通りである。
【0079】
[理論体系4]
理論体系4において、NaBHCNのような還元剤でケトン基を還元することにより、第2級アルコールが得られ;ケトン残基の標準的な還元アミノ化によりアミン化合物が得られ;沸騰ベンゼン中にp‐トルエンスルホン酸を溶解したもののような、適切な酸性触媒作用条件において、ケトンにアルコール又はジオールを加え、ディーン・スターク(Dean‐Stark)装置を用いて生成された水を除去することにより、ケタールが得られる。理論体系4を用い、化合物1から化合物13及び14を、化合物12から化合物15及び16が得られる。さらに理論体系4を用い、化合物2から化合物29及び30を、化合物28から化合物31及び32が得られる。またさらに理論体系4を用い、化合物35から化合物39、41、43及び45を、化合物36から化合物40、42、44、及び46が得られる。
【0080】
理論体系5:O‐反応
【化45】

式中、R、R及びRは前記に定義されている通りである。
【0081】
[理論体系5]
理論体系5において、塩基の存在下でRC(O)ハロ(ハロは、Cl及びBrのような、適切な脱離基)を加えるといった標準的な手順により、アルコールがエステル化され、また酸性触媒作用下で適切なケトン又はアルデヒドとジオールとを反応させ、生成された水を除去することにより、5又は6員の環状ケタ‐ル又はアセタールが得られる。
【0082】
理論体系6:加水分解/エステル化
【化46】

【化47】

【0083】
[理論体系6]
理論体系6において、末端カルボン酸(例えばアルゴン下の乾燥THF中のジアゾメタン)の標準的なエステル化によりカルボン酸エステルが得られ;酸性水溶液中の硫酸塩残基を加水分解することにより、第2級アルコールが得られる。理論体系6を用い、化合物2から化合物11が、化合物36から化合物47が、化合物1から化合物2が得られる。
VII. ポリエンポリケチドを含む医薬組成物
【0084】
別の実施形態において本発明は、先のセクションに記載されているように、ポリエンポリケチドを含有する医薬組成物と、次に記載する薬学的に許容される1つの担体に関する。前記ポリエンポリケチドを含有する医薬組成物は、真菌感染症や腫瘍増殖を含む、様々な病気や疾患の治療に役立つ。
【0085】
本発明の化合物又は薬学的に許容されるそれらの塩は、特に細菌性及び真菌性の病気の治療又は予防ため、経口、静脈内、筋肉内、皮下、眼内、局所又は非経口の経路による投与に対応した処方とすることができる。経口又は非経口投与では、本発明の化合物は、通常の製剤担体及び賦形剤と混合することができ、錠剤、カプセル、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハース等の剤形で用いることができる。本発明の化合物を含有する組成物は、重量の約0.1%から約99.9%、約5%から約95%、約10%から約80%、又は約15%から60%の割合で、本発明の活性化合物を含有する。
【0086】
本明細書中で開示されている医薬製剤は、標準的な手順に従って調製し、真菌性感染症又は腫瘍増殖を軽減、予防、又は除去するために選択された薬量を投与する(参照例:Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, PA and Goodman and Gilman’s the Pharmaceuticals Basis of Therapeutics, Pergamon Press, New York, NY、かかる文献の内容は、ヒトの治療に用いる多種の抗菌薬投与法を概略的に記載したものとして参照したことにより、本明細書の一部を構成する)。本発明の組成物は、制御性の(例えばカプセル)又は徐放性の(例えば生分解性マトリックス)送達システムを用いて送達することができる。本発明の組成物の(好ましくは式Iの)投与に適した薬剤送達のための、遅延放出性の送達システムの典型例は、米国特許第4452775号(Kentに付与)、米国特許第5239660号(Leonardに付与)、米国特許第3854480号(Zaffaroniに付与)に記載されている。
【0087】
本発明の薬学的に許容される組成物は、1又は2以上の本発明の化合物を含有するのに伴い、本明細書中で集合的に「担体」物質と称される1又は2以上の無毒性の薬学的に許容される担体、又は/及び希釈剤、又は/及びアジュバント、又は/及び賦形剤、並びに必要に応じてその他の活性成分を含有する。前記組成物は、コーンスターチ、又はゼラチン、乳糖、ショ糖、微結晶セルロース、カオリン、マンニトール、ジカルシウムリン酸塩、塩化ナトリウム及びアルギン酸のような、一般的な担体及び賦形剤を含んでもよい。前記組成物はまた、クロスカメロースナトリウム、微結晶セルロース、グリコールデンプンナトリウム及びアルギン酸を含んでもよい。
【0088】
含有できる錠剤結合剤は、アカシア、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ヒドロキシプロピル、メチルセルロース、ショ糖、デンプン及びエチルセルロースである。
【0089】
使用できる潤沢剤には、ステアリン酸マグネシウム又はその他のステアリン酸金属、ステアリン酸、シリコーン液、タルク、ワックス、オイル及びコロイドシリカが挙げられる。
【0090】
また、ペパーミント、ウインターグリーンオイル、チェリー香料等の着香料も用いることができる。また見た目により美しい剤形となるよう、又は本発明の化合物を含有する製品を識別しやすくするよう、着色料を添加するのが望ましい。
【0091】
経口的に用いるものとしては、錠剤及びカプセルなどの固体剤形が特に実用的である。徐放性又は腸溶コーティングを施した製剤を考案してもよい。小児又は高齢者に使用する場合、懸濁剤、シロップ剤、及びチュアブル錠が特に適する。経口投与の場合、前記医薬組成物の剤形には、例えば錠剤、カプセル、懸濁剤、又は液剤が挙げられる。前記医薬組成物は、治療上有効な分量の活性成分を含有する、投与量単位という形で製剤されるのが好ましい。そのような投与量単位の例として、錠剤及びカプセルが挙げられる。治療に用いる場合、かかる錠剤及びカプセルは、活性成分の他に従来の担体を含有することがき、例えばアカシアガム、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ソルビトール、又はトラガカントのような結合剤;例えばリン酸カルシウム、グリシン、乳糖、トウモロコシデンプン、ソルビトール、又はショ糖のような賦形剤;ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、シリカ、又はタルクのような滑沢剤;トウモロコシデンンプン、着香料又は着色料、又は許容される湿潤剤のような錠剤分解物質が挙げられる。経口液体製剤は、一般的に水性溶液又は油性溶液の剤形であり、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、又はエリキシル剤は、懸濁化剤、乳化剤、非水溶媒、保存料、着色料、及び着香料のような、従来の添加物を含有してよい。液体製剤への添加物としては、アカシア、アーモンドオイル、エチルアルコール、分画したココナッツオイル、ゼラチン、グルコースシロップ、グリセリン、水添食用脂、レシチン、メチルセルロース、メチル又はプロピルパラヒドロキシベンゾアート、プロピレングリコール、ソルビトール、又はソルビン酸が挙げられる。
【0092】
静脈内(IV)に用いる場合、本発明の化合物は、一般的に用いられている静脈内輸液であれば、どのようなものにでも溶解又は懸濁させることができ、注入により投与できる。静脈内輸液には、限定するものではないが、生理食塩水又はリンゲル(商標名Ringer’s)液が挙げられる。
【0093】
非経口的投与製剤は、水性又は非水性の等張性(アイソトニック)の無菌注射液剤又は懸濁剤の剤形をとることができる。これらの液剤や懸濁剤は、経口投与の剤形に用いられるとして記載されている担体を1つ又は2つ以上有する無菌散剤、又は顆粒剤から調製することができる。前記化合物は、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、トウモロコシ油、ベンジルアルコール、塩化ナトリウム、及び/又は多種の緩衝剤に溶解させることができる。
【0094】
筋肉内に用いる製剤の場合、本発明の化合物である無菌製剤、又は前記化合物を形成する適切な可溶性の塩を、注射用水(WFI)、生理食塩水、又は5%グルコース溶液のような医薬用希釈剤に溶解し、投与することができる。適切な不溶性の形態をとる前記化合物は、水性基剤又は薬学的に許容される油性基剤による懸濁剤として調製し、投与することができ、そのような油性基剤には、エチルオレートのような長鎖脂肪酸エステルがある。
【0095】
局所に用いる本発明の化合物は、皮膚又は、鼻及びのどの粘膜に塗布するのに適切な剤形に調製することができ、クリーム、軟膏、液体スプレー、吸入剤、トローチ剤、又はのど塗布剤といった形態をとることができる。このような局所用製剤にはさらに、ジメチルスルホキシド(DMSO)のような化合物を含有させ、表皮からの活性成分の浸透を促進させることができる。
【0096】
眼や耳に用いる場合、本発明の化合物は、液体又は半流動体の剤形とすることができ、軟膏、クリーム、ローション剤、塗布剤、散剤のような、疎水性又は親水性の基剤中に処方できる。
【0097】
直腸に用いる場合、本発明の化合物は、ココアバター、ワックス又はその他のグリセリドのような一般的な担体と混合し、座薬の剤形で投与することができる。
【0098】
また別の方法として、本発明の化合物は散剤の剤形にし、送達の時に薬学的に許容される適切な担体中に再構成することができる。別の実施形態においては、前記化合物の溶液又はその塩を適切な希釈剤に溶解したものをアンプル中に無菌状態で密封し、前記化合物の単位処方量とすることができる。
【0099】
本発明の化合物の1単位処方量は、治療上有効な量の、少なくとも1つの本発明の活性化合物を含むが、その量はレシピエント対象、投与経路、投与頻度によって異なる。レシピエント対象とは、植物、細胞培養物又はヒツジのような動物、又はヒトを含む哺乳動物を表す。
【0100】
本発明のこの側面によれば、本明細書中に開示されている新規化合物は、薬学的に許容される担体中に配置され、既知の薬剤送達法に基づいて、(ヒト対象を含む)レシピエント対象に送達される。一般的に、本発明の組成物をインビボ(in vivo)で送達するための、本発明の方法は、当該技術分野において承認されている薬剤送達のプロトコルを用い、実質的な手順の変更点は、当該技術分野において承認されているプロトコルにおける薬剤の代わりに、本発明の化合物を使用することだけである。
【0101】
同様に、例えば細胞培地の真菌汚染を除去又はその度合いを軽減させるため、培地中の細胞の処理に用いる、特許請求の範囲に記載されている組成物の使用法は、抗菌又は抗真菌剤を使用した細胞培養処理法として当該技術分野で承認されているプロトコルを用い、実質的な手順の変更は、当該技術分野において承認されているプロトコルで使用される薬剤の代わりに、本発明の化合物を使用することだけである。
【0102】
本発明の化合物は、真菌感染症及び前がん状態、又はがん状態の治療方法を提供するものである。本明細書中で使用されている、「単位処方量」なる用語は、治療上の望ましい反応を引き出す、治療上有効な量の本発明の化合物量を表す。本明細書中で使用されている、「治療上有効な量の」なる用語は、真菌性感染症又は前がん状態又はがん状態の発症を予防、症状を軽減、又は進行を止める、本発明の化合物の量を意味する。「治療」なる用語は、真菌性感染症、前がん状態、又はがん状態の発現を予防するか、又は細菌性又は真菌性感染症、前がん状態又はがん状態を抑制又は除去するという、両方の目的のために、治療上有効な量の、少なくとも1つの本発明の化合物を、対象に投与することと定義される。「治療上の望ましい反応」なる用語は、レシピエント対象において、真菌性感染症、前がん状態、又はがん状態が軽快、抑制又は予防されるよう、本発明の化合物でレシピエント対象を治療することを表す。
【0103】
本発明の化合物は、一日に一回の処方として、又は一日に複数回の処方として投与することができる。治療計画では、例えば数日か、又は2週間から4週間の長期間の投与を要する場合がある。一回の投与あたりの処方量又は総投与量は、感染症の性質と重症度、レシピエント対象の年齢と全般的な健康状態、前記化合物に対するレシピエント対象の耐性及び真菌性感染症の型又はがんの型といった要因によって異なる。
【0104】
本発明による化合物にはまた、食事や飼料に入れて患者又は動物に投与できるものがある。動物の飼料は、本化合物を加えることのできる通常の食品でよく、又は予混済みとしてもよい。
【0105】
本発明の化合物は、治療の必要なレシピエント対象のために、臨床的に承認され既知であるすべての抗生物質、抗真菌剤又は抗がん剤と組み合わせ、それらと同時又は別々に摂取することができる。
【実施例1】
【0106】
発酵
ストレプトマイセス・メラノスポラファシエンスNRRL B−12234の凍結胞子を含むバイアルを冷凍庫から取り出し、ドライアイス上に保持した。無菌条件下で、1ループ分の凍結胞子を取り出し、トマトペースト‐オートミール寒天(ATCC培地1360)皿の表面に筋状に塗布し、胞子形成が起きるまで、28℃で5〜7日間インキュベートした。
【0107】
植物性培地を作るため、30gのトリプチケース大豆ブロス(BD)、3gの酵母エキス(Difco)、2gのMgSO4、5gのグルコース、及び4gのマルトースに蒸留水を加え、1リットルとしたITSB無菌培地25mlを入れた125mlフラスコに、トマトペースト‐オートミール寒天皿の表面から得た1〜2ループ分の胞子を移した。かかる植物性培地を、250rpmに設定した振とう機上で、28℃で約60時間インキュベートした。
【0108】
表1から選択した無菌増殖培地500ml含むそれぞれの2リットルのバッフルドフラスコに、前記植物性培地10mlを用いて植菌した。前記発酵の回分を28℃で4日間、攪拌(250rpm)しつつ好気的にインキュベートした。
【0109】
次の表1に記載の、それぞれAA、AB、ET、FA、JA及びVBと定められている、各々の増殖培地を用い、前記発酵プロトコルを繰り返した。表1中、ET培地中のNalがmg/Lの単位で表記されている以外は、すべての成分はg/Lの単位で表記され、かつpHはCaCOを加える前に、記載されているように調整されている。
【0110】
【表1】

表1中、微量要素は、0.1gのFeSO.7HO;0.01gのMnSO.HO;0.01gのCuSO.HO;0.01gのZnSO.7HO;HSO濃縮液1滴を、脱イオン化蒸留水100ml溶解した溶液である。
【0111】
AA、AB、ET、FA、JA、及びVBの各培地組成物上で微生物を増殖させたところ、化合物1が生成された。化合物1の生成に好ましい培地はJAであった。AA、AB、ET、FA、JA、及びVBのいずれかの培地組成物上で微生物を増殖させたところ、化合物2が生成された。化合物2の生成に好ましい培地は、ABである。
【実施例2】
【0112】
単離
実施例1のバッフルドフラスコの発酵ブロスから前記化合物を集菌する30分前に、実施例1の全部の発酵ブロスに、再生し、水で洗浄したDiaion HP‐20(登録商標)を、ウェットパック体積(wet‐packed volume)で当初の発酵ビール体積の12%に相等する量だけ加え、30分間緩やかに攪拌し続けた。集菌に際し、実施例1の各々の発酵ブロスを遠心分離にかけ、その上清を前記樹脂及びペレット状の菌糸体からデカントした。かかるペレットを、水中(もとの発酵ビール体積の半分)に再懸濁し、緩やかに攪拌し、再度遠心分離にかけ、残留物から上清をデカントした。かかる残留物を、2度目も水を用いて同様の方法で、3度目は水とメタノール(3:1V/V)で、それぞれ最初の発酵液体積の50%の体積で、同様の方法で洗浄し、再洗浄された残留物を得た。かかる再洗浄された残留物をさらに3回同様の方法で、当初の発酵ビール体積の20%の体積で洗浄し、続いてメタノールと水(1:1V/V)でさらに2回洗浄し、最後の1回は、メタノールと水(7:3V/V)で洗浄し、十分に洗浄された残留物を得た。かかる十分に洗浄された菌糸体と樹脂との残留物を、100%のメタノールで3回抽出したところ、各々のエキスは最初のビールの体積の20%であった。かかる3つのエキスを混合し、回転式蒸発装置上で、乾燥するまで真空濃縮した。かかる半固体の残留物である粗化合物1及び2は、それぞれ生成化合物に対する割合が、90%を上回り、これら2つの化合物は、総残留物の約25%を占めた。
【0113】
前記半固体の残留物である粗化合物を、表2に従い5mMの重炭酸アンモニウム水溶液からアセトニトリルへの勾配で、直径19mm、長さ150mmの寸法で、充填剤サイズが10mmの、Waters Xterra(登録商標)MS C‐18分取カラムを用いて精製した。
【0114】
【表2】

【0115】
溶出を390nmでモニターした。化合物1及び化合物2の各々につき、一回に1mlのメタノール中に約52mgの粗残留物を溶解したものを注入し、流速9ml/分で10.1分経過した溶出のピークで従来通りに区切ると、約95%の純度で、各化合物の生成物がそれぞれ12mgずつ回収できた。
【実施例3】
【0116】
化合物1の構造データ
化合物1の構造を、NMR質量分析を含む分光学的データにより決定した。図1の質量スペクトルに示されているように、エレクトロスプレー質量分析法により、分子量は、1217であると決定された。エレクトロスプレー法(ESI)及び大気圧化学イオン化法(APCI)の機能を備えた、Finnigan(商標名)社製のTSQ7000トリプルステージ4重極型質量分析機上において、陽イオンモードで、図1の質量スペクトルを測定した。陰イオンモードで測定したスペクトルを裏付けとし、質量/電荷比が1240.6486のピークを、M+Naイオンと同定できる。Waters(商標名)社製の996ダイオードアレイ検出器を使用して、化合物1のエタノール溶液について測定したUVスペクトル(図2)は、295、307、324、342、359及び380nmのあたりで、lmaxを示した。最後の3つの強いピークは、直鎖共役ヘキサエンの特徴的な発色団である。化合物1のH NMRスペクトル(図3)及び多次元パルスシーケンスの実験、gDQCOSY(図5)、gHSQC(図6)及びgHMBC(図7)について、MeOH‐d4に溶解した試料をおよそ500MHzで測定した。13C NMRスペクトル(図4)については、MeOH‐d4に溶解した試料を、125MHzで測定した。図15a及び15bは、化合物1の選択されたH NMR及び13C NMRの割り当てを示すものである。
【0117】
化合物1の構造は、ストレプトマイセス・メラノスポラファシエンス菌株(NRRL B−12234)における、化合物1及び化合物2の製造に際する生合成の座位をゲノム分析することにより完成、確認された。かかる生合成の座位は、米国特許出願第10/232,370号に詳細に記載されているゲノム走査技術を用いて得られた。
【0118】
化合物1及び化合物2の生合成には、9つの1型ポリケチド合成酵素(PKS)遺伝子により形成される複数モジュール式の1型ポリケチド合成酵素システムの作用が関係している。1型PKSは大きなモジュール式のタンパク質で、連続的な形でアシルチオエステルの単位を縮合する。PKSシステムは、各々複数のモジュールで構成される1又は2以上の、多機能のポリペプチドからなる。各1型PKSモジュールは、3つの領域:b‐ケトアシルタンパク合成酵素(KS)、アシルトランスフェラーゼ(AT)、及びアシル担体タンパク質(ACP)を有している。またPKSのモジュールには、ケトリダクターゼ(KR)、ジハイドラターゼ(DH)及びエノイルリダクダーゼ(ER)といった、付加的な酵素活性を付与する領域も認めることができる。これらの付加的な領域により、増殖するポリケチド鎖のb‐ケト基の、様々な程度の還元がもたらされる。各モジュールはb‐ケトアシル単位の一続きの縮合及び還元を担っている。その結果、モジュールの領域組成とポリケチド産生物の還元の程度のとの間の相関関係に加え、モジュールの数とポリケチド鎖の長さとの間にも、直接的な相関関係が存在する。
【0119】
各モジュール中の触媒領域の数と型だけではなく、PKSシステム中の生合成モジュールの順序もまた、もたらされるポリケチド分子の中の構成及び機能的要素の順序と型とを決定する。従って、PKSの構造とそれによって生成されるポリケチドとの間には直接的な関連性があることから、PKSからポリケチドの主鎖構造を決定することが可能となる。当業者であれば、ポリケチドの核構造が、PKSのモジュール及び任意の生合成経路に見られる領域の構造に基づいて決定できることが理解できる(Staunton and Weissman, Nat. Prod. Rep., 2001 18, 380‐416, 2001; Hopwood, Chem. Rev., 97, 2465‐2497, 1997)。
【0120】
9つのPKS遺伝子の中に存在する、28のモジュールの領域構造について決定した。負荷モジュール(loading module)は、ACP領域しか有していなかったが(モジュール0)、残りの27のモジュールは各々、KR、DH、ERの領域と様々に組み合わさった、KS、AT、及びACPの領域を有していた。27番目のモジュールにはチオエステラーゼ(TE)が存在し、それによりこれがポリケチド鎖の生合成における最後のモジュールであると同定できた。複数アミノ酸配列比較を実施し、関連する領域が全体的に類似していたこと、及びタンパク質領域と触媒活性に重要なアミノ酸残留物とが高保存性であったことから、機能領域であるKS、AT、DH、ER、KR、ACP及びTEを同定した。PKS系に一回のみ存在したTE領域を、ニスタチン1型ポリケチド系からの原型的領域と比較した(上記Brautaset)。
【0121】
ポリケチドの鎖に組み込まれているb‐ケトアシル単位の性質を評価するため、PKS系のAT領域の系統分析を実施した。PKS系のかかるAT領域と、ニスタチンPKS系(上記Brautaset)から得られ、それぞれメチルマロニル‐CoA及びマロニル‐CoAの組み込みを担っている2つの領域、AAF71775mod 1及びAAF71776mod3 (National Center for Biotechnology Information (NCBI) nonredundant protein database)とを比較した。
【0122】
化合物1及び2の構造的差異、即ち化合物1の中に硫酸基が存在することが、生合成の座位の中の、硫酸トランスフェラーゼの存在により立証された。硫酸基の位置は、化合物1のH NMRスペクトルにおけるカルビノール陽子信号の位置4.67ppmと、13C NMRスペクトルにおける炭素信号の位置79.1ppmとにより決定され、どちらの位置もこの炭素が修飾された酸素によって置換されていることを示している。化合物1のgHMBCの実験(図7)から、4.67ppmの位置の陽子に、各々36.2及び49.9ppmの位置の2つのb‐炭素が、また各々10.8、136.0、及び211.5ppmの位置の3つのg‐炭素が、長い範囲に及んで結合していることが明確に確認できる。エステル・カルボニルへの明確な結合がないことで、この酸素が他のヘテロ原子に結合しているに違いないことが強く示唆される。
【実施例4】
【0123】
化合物2の構造データ
化合物2の構造を、NMR質量分析を含む分光学的データにより決定した。図8の質量スペクトルに示されているように、エレクトロスプレー質量分析により、分子量は、約1137であると決定された。図8の質量スペクトルは、エレクトロスプレー(ESI)及び大気圧化学イオン化法(APCI)を装備するトリプルステージ四重極型Fennigan(商標名)社製TSQ7000質量分析器上において、陽イオンモードで測定した。図9のUVスペクトルに示されるように、化合物2のUV lmaxは、約296、約307、約325、約341、約358及び約380であると決定された。化合物2のUVスペクトルは、Waters(商標名)社製996ダイオードアレイ検出器上において、アセトニトリル水溶液中で測定した。化合物2のH NMRスペクトル(図10)及び多次元パルスシーケンスの実験、gCOSY(図12)、gHSQC(図13)及びgHMBC(図14)について、MeOH‐d4に溶解した試料を500MHzで測定した。13C NMRスペクトル(図14b)については、MeOH‐d4に溶解した試料を、125MHzで測定した。図16a及び16bは、化合物2の選択されたH NMR及び13C NMRの割り当てを示すものである。
【0124】
化合物2の構造は、ストレプトマイセス・メラノスポラファシエンス菌株(NRRL B−12234)において、化合物2の製造の生合成の座位をゲノム分析することにより完成、確認された。上記の実施例3に記載されているように、かかる生合成の座位は、1型PKS系を有している。これらの領域及びこれらが実行する反応については、文献(Staunton and Weissman(上記)及びHopwood(上記)を参照)に詳細に記載されており、当業者ならば、上記の実施例3に記載されているように、PKSシステムの構造と、生合成の座位に存在するタンパク質の分析とにより、化合物2の構造の確認が可能であったことは、容易に理解できる。
【実施例5】
【0125】
最小発育阻止濃度(MIC)判定
真菌生物のMIC判定は、承認基準ガイドラインM27‐A;酵母のブロス希釈抗真菌感受性試験の標準的方法である、米国臨床検査標準化委員会(NCCLS)M27‐A(vol. 17 No. 9, 1997)に準じたブロス微量希釈分析法を用いて実施した。
【0126】
試験化合物の微量希釈:試験化合物の初期ストック溶液を、100倍希釈濃度(100×)のDMSO溶液として調製した。かかるアッセイで用いられた最も高い濃度は3.2mg/mlであった。この溶液を用い、100倍希釈濃度のDMSO溶液の2倍希釈系列を11ポイント(over 11 points)にわたり調製した。これらの溶液を試験培地(RPMI‐1640倍地)で50倍(50×)に希釈し、11の2倍希釈濃度(2×)の培地/化合物の溶液を1セット得た(12番目の希釈溶液は、コントロールとして培地/溶媒のみで調製)。11の各2倍希釈濃度溶液100マイクロリットル(100ml)を、12ウェル列の対応するウェルに分注し、最終ウェルは、培地/溶媒のみのコントロール用に留保した。
【0127】
接種菌液の調製:ポリプロピレンのスクリューキャップチューブ中の無菌生理食塩水5mlに、一晩培養した培養物を、視覚的にマックファーランド0.5標準比濁液に等しい濁度を得るのに十分な量加えた。これにより、1mlあたり1×10〜5×10の細胞を含む酵母懸濁液を得た。かかる酵母懸濁液を15秒間ボルテックスし、試験培地を用い1:50に希釈し、これをさらに試験培地を用い1:20に希釈し、2倍希釈濃度の試験接種菌液を得た(1×10〜5×10CFU/ml)。この2倍希釈濃度接種菌液を最後の試験プレート中で1:1に希釈し、0.5×10〜2.5×10CFU/mlの最終接種菌液を得た。
【0128】
MIC判定:12ウェルが1セットの各セットに2倍希釈濃度に調製した接種菌液100mlを分注した。これらのプレートを35℃で48時間インキュベートした。各指示菌のMICの計測値は、増殖が起きなかった最低の化合物濃度である。かかる真菌MICのアッセイの結果を表3にまとめる。
【0129】
最小発育阻止濃度
【表3】

【実施例6】
【0130】
がん細胞壁上のインビトロ(in vitro)細胞毒性効果
表4に一覧とした細胞壁は、化合物1及び2の細胞毒性効果を特徴づけるために用いた。これらの細胞壁が、マイコプラズマに感染していないことを確認し、図4に示す適切な培地上に維持し、5%のCOで37℃という条件下において、10%の熱不活性化ウシ胎児血清と、1%のペニシリン‐ストレプトマイシンとを追加した。細胞を、1週あたり2〜3回継代した。トリパンブルーで染色して細胞生存率を調べ、生存度が95%よりも高かった唯一のフラスコを、化合物1及び2の細胞毒性効果を判定するために用いた。
【0131】
【表4】

【0132】
インビトロ(in vitro)細胞毒性効果判定
急激に増殖している細胞(100mlあたり1‐3×10の細胞)を、96ウェルプレートに植菌し、16時間インキュベートした。続いて細胞を、血清添加培地の中で様々な濃度の化合物1に連続して曝露した。96時間後、前記培地に代えてpH7.4の、4 - (2 - ヒドロキシエチル) - 1 - ピペラジンエタンスルホン酸の緩衝液10mMを含有する新鮮な培地150mlを用い、細胞生存率を評価した。次に、pH7.4の、2.5mg/mlの濃度の3 - (4,5 - ジメチルチアゾ - 2 - イル) - 2, 5 - ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT; Sigma, St. Louis, MO)のリン酸緩衝溶液50mlを加えた。37℃で3〜4時間インキュベートした後、前記培地とMTTを取り除き、ジメチルスルホキシド200mlを加えて還元されたMTTの沈殿物を溶解し、続いてグリシン緩衝液(0.1Mのグリシンと0.1Mの塩化ナトリウム、pH10.5)を加えた。吸光度は、マイクロプレートリーダー(BIO‐RAD社製)で、570nmと判定された。細胞生存率は、溶媒のみで処理された細胞の百分率(%)で評価した。化合物1及び化合物2の、細胞毒性効果の結果を、それぞれ表5及び6に示す。
【0133】
化合物1の細胞毒性効果
【表5】

【0134】
化合物2の細胞毒性効果
【表6】


【実施例7】
【0135】
化合物33及び34の合成
【化48】

【化49】

【0136】
化合物1又は化合物2のテトラヒドロフラン(THF)溶液に、1.1当量の
メタ‐クロロ過安息香酸を加える。反応物を、氷浴で冷却し、0℃で1〜2時間攪拌する。次に反応混合物を蒸発、乾燥させ、メタノール中に再溶解し、Sephadex LH - 20カラム上で液体クロマトグラフィーにかけ、化合物33又は化合物34をそれぞれ単離した。
【実施例8】
【0137】
化合物33及び化合物34のエポキシドの開環による、化合物35及び36の合成
【化50】

【0138】
少量の塩化水素水溶液(1.0N)で化合物33及び34を処理することにより、化合物33及び34のエポキシド基を加水分解し、それにより式35又は36の、対応するジオールがそれぞれ形成される。
【実施例9】
【0139】
29‐オキソ基の還元による化合物37及び38の合成
【化56】

【0140】
化合物35又は36のアセトニトリル溶液を、1.5当量のNaCNBHで処理する。かかる反応物を室温で1時間攪拌する。次に反応混合物を乾燥するまで濃縮し、メタノールに溶解する。混合物を濾過し、濾液をSephadex LH - 20カラム上で液体クロマトグラフィーにかけ、化合物37又は化合物38をそれぞれ単離する。別の方法として、29位のオキソ基の還元を、リチウムブロヒドライド(LiBH)を用いて実施することもできる。
【実施例10】
【0141】
29位にアセタール環を付加することによる、化合物39及び40の合成
【化57】

【0142】
化合物35又は36のテトラヒドロフラン溶液を、微量のトルエンスルホン酸存在下で、3当量の2, 2 - ジメチル - 1, 3 - ジオクサシクロペンタンで処理する。反応物を一晩室温で攪拌し、乾燥するまで蒸発させてTHFに溶解させ、続いてSephadex LH - 20カラム上で液体クロマトグラフィーにかけて精製する。微量のトルエンスルホン酸の存在下で、分子ふるいにかけて水を除去しながらアセトンをエチレングリコールと反応させると、2, 2 - ジメチル - 1, 3 - ジオクサシクロペンタンを合成することができる。
【0143】
別の方法として、微量のトルエンスルホン酸の存在下で、化合物35又は36を過剰量のエチレングリコールと反応させることにより、アセタール環を29位に付加することができる。かかる反応は、分子ふるいを用い、水を除去しながら行う。
【実施例11】
【0144】
化合物41及び42の合成
【化58】

【0145】
化合物35及び36のベンゼン又はトルエン溶液に10当量のベンジルアミンを加える。かかる反応物を一晩室温で攪拌する。かかる反応は、分子ふるいを用いて水を除去するか、別の方法として、ディーンスタークトラップ(Dean - Stark trap)を用いて還流により、ベンゼン又はトルエンとの共沸混合物として水を除去することもできる。前記反応混合物は真空下で濃縮し、残留試薬は室温で一晩、高真空に置くことにより除去される。
【実施例12】
【0146】
化合物43及び44の合成
【化59】

【化60】

【0147】
化合物41又は42の炭素‐窒素二重結合は、前記化合物とNaCNBH又はLiBH(1.5当量)のアセトニトリル溶液が反応することにより、アミンに還元され、化合物43又は44がそれぞれ生成される。
【実施例13】
【0148】
化合物45及び46
【化61】

【0149】
1当量の化合物35又は36のアセトニトリル溶液に10当量のイソブチルアミンを加える。かかる反応物を室温で2時間攪拌する。ベンゼン(1/10体積)を加え、かかる混合物を真空下の回転式蒸発装置上で、乾燥するまで濃縮する。次にシッフ塩基をCNBH又はLiBH(1.5当量)のアセトニトリル溶液で処理し、イミンの炭素‐窒素の二重結合をアミンに還元すると、化合物45又は46がそれぞれ生成される。
【実施例14】
【0150】
化合物47の合成
【化62】

【0151】
0.5当量の化合物36のメタノール溶液に、0.5当量のジアゾメタンのジエチルエーテル溶液を加える。かかる反応混合物を一晩室温で静置し、真空下で溶媒を蒸発させると、化合物47が生成される。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】化合物1の、質量スペクトルである。
【図2】化合物1の、UVスペクトルである。
【図3】化合物1の、H NMRスペクトルである。
【図4】化合物1の、13C NMRスペクトルである。
【図5】化合物1の、H‐HgDQCOSYパルスシーケンスである。
【図6】化合物1の、H‐13CgHSQCパルスシーケンスである。
【図7】化合物1の、H‐13CgHMBCパルスシーケンスである。
【図8】化合物2の、質量スペクトルである。
【図9】化合物2の、UVスペクトルである。
【図10】化合物2の、H NMRスペクトルである。
【図11】化合物2の、13C NMRスペクトルである。
【図12】化合物2の、H‐HgCOSYパルスシーケンスである
【図13】化合物2の、H‐13CgHSQCパルスシーケンスである。
【図14】化合物2の、H‐13CgHMBCパルスシーケンスである
【図15】図15a及び15bは、化合物1のH NMR及び13C NMRの割り当てを示す。
【図16】図16a及び16bは、化合物2のH NMR及び13C NMRの割り当てを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】

[式I]
式中、AがNHC(O)R、N=CR、又はNHRから選択され、かつR、R及びRが、独立してH、C1‐6アルキル、C2‐6アルケニル、C3‐6シクロアルキル、C3‐6ヘテロシクロアルキル、アリール及びヘテロアリールからなる群から選択され、かつ前記アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール及びヘテロアリールが、ハロゲン、オキソ、OH、C2‐6アルケニル、NO、NH、シクロアルキル、ヘテロアリール又はアリールから選択される基により任意に置換され、前記C2‐6アルケニル、ヘテロアリール及びアリールが、さらにハロゲン、OH、C1‐3アルキルNO又はNHから独立して選択される1又は2以上の基により任意に置換され;
Bが
【化2】

又は
【化3】

から選択され;かつR10がOH、‐OS(O)OHであるか、又は点線が結合手である場合にはR10がオキソであり;
DがOH又は1〜2のフェニル基によって任意に置換されたC1‐6アルコキシから選択され、かつ前記フェニル基がC1‐6アルキル又はハロにより任意に置換され;
及びW
【化4】

であり;

【化5】

であり;

【化6】

であり;

【化7】

であり;
かつX、X、X、X、X、X10、X11、X12及びX13のうち、隣り合う2つのいずれかが結合手である場合には、その隣り合う2つの酸素原子とそれらに結合する炭素原子とが共に、式:
【化8】

の6員環アセタールを形成するように、X、X、X、X、X、X10、X11、X12、及びX13が、各々独立してH、‐C(O)‐R及び結合手から選択され、R、R及びRが、各々独立してH、C1‐6アルキル、C2‐7アルケニルから選択され;
、Y、Y、Y、Y、Y、Y、Y、Y、Y10、Y11、Y12、Y13、及びY14が、各々独立して‐CH‐CH‐、‐CH=CH‐、
【化9】

又は‐CH(OH)‐CH(OH)‐から選択され、かつ、この選択からの炭素はすべてメチル基で任意に置換され;
Zが、OH、C3‐6シクロアルキル、C3‐6ヘテロシクロアルキル、NHR
【化10】

から選択され、点線が結合手の場合には、Zがオキソ又はNC1‐6アルキルであり;
がH、C1‐6アルキル、C2‐6アルケニル又はC3‐6シクロアルキルから選択され;
15、R16及びR17が、各々独立してHまたはCHから選択される;
ことを特徴とする、式Iの化合物、又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項2】
Zがオキソであることを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Aが
【化11】

であり、R、R及びRが、請求項1に定義された通りであることを特徴とする、請求項1又は2記載の化合物。
【請求項4】
Dが、‐OHであることを特徴とする、請求項1、2、又は3記載の化合物。
【請求項5】
【化12】

[式II]
A、B、D、及びZが、請求項1に定義されていることを特徴とする、式IIの化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項6】
Zがオキソであることを特徴とする、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
Aが
【化13】

であり、R、R及びRが、請求項1に定義された通りであることを特徴とする、請求項5又は6記載の化合物。
【請求項8】
Dが‐OHであることを特徴とする、請求項5、6、又は7記載の化合物。
【請求項9】
【化14】







からなる群から選択される化合物。
【請求項10】
【化15】


からなる群から選択される化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項11】
ストレプトマイセス・メラノスポラファシエンス菌株に由来する細胞を培養し;該培養細胞を、少なくとも1つの炭素原子源と、少なくとも1つの窒素原子源とを含有する増殖培地中で、請求項10記載の前記化合物の製造に要する期間、好気的にインキュベートし;前記培地を溶媒とともに抽出し;該粗抽出物から請求項10記載の化合物を精製する手順を含む、請求項1〜10のいずれか記載の化合物の製造方法。
【請求項12】
前記ストレプトマイセス・メラノスポラファシエンス菌株が、NRRL B−12234又はそのミュータントであることを特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項13】
治療上有効な量の、請求項1〜10のいずれか記載の化合物及び薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物。
【請求項14】
治療上有効な量の化合物
【化16】



又は薬学的に許容されるその塩、及び薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物。
【請求項15】
治療上有効な量の化合物
【化17】



又は薬学的に許容されるその塩、及び薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物。
【請求項16】
腫瘍増殖に罹患した対象に、治療上有効な量の請求項1〜10のいずれか記載の化合物を投与することを含む、対象の腫瘍増殖の治療方法。
【請求項17】
前記腫瘍増殖が、白血病、非小細胞肺がん、直腸がん、中枢神経系(CNS)がん、黒色腫、卵巣がん、腎臓がん、前立腺がん、及び乳がんを含む群から選択されることを特徴とする、請求項16記載の方法。
【請求項18】
真菌感染症に罹患した哺乳動物に、治療上有効な量の請求項1〜10のいずれか記載の化合物を投与することを含む、哺乳動物の真菌感染症の治療方法。
【請求項19】
前記真菌感染症が、カンジダ・アルビカンス(C. albicans)により引き起こされることを特徴とする、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記真菌感染症が、カンジダ菌種(Candida sp.)により引き起こされ、かつ該カンジダ菌種が、カンジダ・グラブラタ(C. glabrata);カンジダ・ルシタニエ(C. lusitaniae);カンジダ・パラプシロシス(C. parapsilosis);カンジダ・クルセイ(C. krusei);及びカンジダ・トロピカリス(C. tropicalis)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記真菌感染症が、フサリウム属菌(Fusarium spp.);セドスポリウム属菌(Scedosporium spp.);クリプトコッカス属菌(Cryptococcus spp.);ムコール亜種(Mucor ssp.);ヒストプラズマ属菌(Histoplasma spp.)、トリコスポロン属菌(Trichosporon spp.);ブラストミセス属菌(Blastomyces spp.)又はサッカロミセス・セレビシエ(S. cerevisiae)によって引き起こされることを特徴とする、請求項20記載の方法。
【請求項22】
真菌感染症に罹患した対象に、治療上有効な量の請求項1〜10のいずれか記載の化合物を投与することを含む、対象の真菌感染症の治療方法。
【請求項23】
前記真菌感染症が、カンジダ・アルビカンス;カンジダ菌種;アスペルギルス菌種(Aspergillus sp.);フサリウム属菌;セドスポリウム属菌;クリプトコッカス属菌;ムコール亜種;ヒストプラズマ属菌;トリコスポロン属菌;ブラストミセス属菌;及びサッカロミセス・セレビシエからなる群から選択される真菌によって引き起こされることを特徴とする、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記カンジダ菌種が、カンジダ・グラブラタ;カンジダ・ルシタニエ;カンジダ・パラプシロシス;カンジダ・クルセイ;及びカンジダ・トロピカリスからなる群から選択されることを特徴とする、請求項22記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15a】
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【図15b】
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【図16a】
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【図16b】
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【公表番号】特表2006−528664(P2006−528664A)
【公表日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529485(P2006−529485)
【出願日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【国際出願番号】PCT/CA2004/000711
【国際公開番号】WO2004/101502
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(503355580)エコピア バイオサイエンシーズ インク (5)
【Fターム(参考)】