説明

ポリエーテル、ポリエーテルポリオール組成物、およびこれらの製造方法、ならびに該ポリエーテルを含有する可塑剤

【課題】 水酸基と反応可能な官能基を有する化合物と混合した場合であっても、増粘などの経時的変化が起こりにくいポリエーテルおよびこれを含有するポリエーテルポリオール組成物およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 ポリエーテルは、全エーテル鎖末端のうち、水酸基をビニルモノマーで封止した末端基が30%以上であり、水酸基が70%未満である。このポリエーテルは、下記式(1)
【化8】


(式中、R1は、p+q個の水酸基を有する化合物から該水酸基を除いた残基であり、R2は、それぞれ独立にエチレン基またはプロピレン基であり、R3は、ビニルモノマーから
誘導される残基であり、複数存在する場合には同じであっても互いに異なっていてもよい。mは10〜600の整数であり、nは1〜100の整数であり、kは10〜600の整数である。pは0〜8の整数であり、qは1〜8の整数である。但し、pとqの和は2以上である。)で表される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエーテルおよびポリエーテルポリオール組成物、ならびにこれらの製造方法に関し、さらに、該ポリエーテルを含有する可塑剤に関する。より詳しくは、ポリオキシアルキレンポリオールの末端水酸基の一部または全部をビニルモノマーで封止して不活性化したポリエーテルおよびこのポリエーテルを含有するポリエーテルポリオール組成物に関する。さらに、本発明は、このポリエーテルを含有する可塑剤およびこの可塑剤を含有する樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエーテルポリオールはポリウレタン樹脂の原料として広く用いられている。また、このポリエーテルポリオールは、室温で液状であり、低温においても液状を保ち、取り扱いやすい粘度を持ち、ポリウレタン等の樹脂、水や有機溶剤のような溶媒との相溶性が良好であるという特徴を活かして、可塑剤、潤滑剤、溶剤、界面活性剤としても使用されてきた。特に、可塑剤の分野では、樹脂からのブリードや塗装汚染性という問題点や環境汚染の可能性が指摘されている低分子量可塑剤に替わる可塑剤として、このポリエーテルポリオールが高分子量可塑剤として提案されている(たとえば、特許文献1(特開昭55−31874号公報))。
【0003】
しかしながら、このポリエーテルポリオールはエーテル鎖末端が水酸基であるため、イソシアナート基、アルコキシシリル基、ジスルフィド基、エポキシ基、カルボン酸基、エステル基などの水酸基と反応可能な基を有する化合物の可塑剤や溶剤として使用すると、これらを混合して貯蔵した場合、増粘やゲル化が起こり、貯蔵安定性が低下するという問題があった。
【0004】
そこで、このような問題点を解決するため、エーテル鎖末端の水酸基を不活性化した種々のポリエーテル系高分子量可塑剤が提案されている。たとえば、エーテル鎖末端の水酸基をイソシアネート基と反応させてウレタン化したもの(たとえば、特許文献2(特開2001−64505号公報))、カルボン酸と反応させてエステル化したもの(たとえば、特許文献3(特開2003−119280号公報))、ウイリアムソンエーテル化法によりアルキルハロゲン化物と反応させたり、オレフィンを付加させて、エーテル化したもの(たとえば、特許文献4(特開2000−345137号公報))が挙げられる。
【0005】
ところが、末端水酸基をウレタン化したポリエーテル系高分子量可塑剤では、水素結合が形成されるため、粘度が上昇するという問題があった。また、末端水酸基をエステル化したポリエーテル系高分子量可塑剤では、水酸基やカルボン酸基を有する化合物が混在するとエステル交換反応が起こったり、水が混在すると加水分解反応起こったりすることがある。これらの反応が起こると、粘度や樹脂の硬化特性、樹脂物性等が経時的に変化するという問題があった。さらに、末端水酸基をエステル化したポリエーテル系高分子量可塑剤を添加した組成物やその硬化物が吸湿すると加水分解反応起こり、組成物の粘度、硬化特性、硬化物特性等の物性が変化するという問題があった。末端水酸基をエーテル化したポリエーテル系高分子量可塑剤では、ウイリアムソン合成においてアルカリ金属触媒を多量に使用することやアルキルハロゲン化物が比較的高価であるという問題があり、また、オレフィン付加反応によるエーテル化では、エチレンやプロピレンが気体であるため、取り扱いが煩雑であり、末端不活性化の効率も悪く、オレフィン付加反応の際にポリオレフィンが副生して混入するという問題があった。
【0006】
一方、ポリエーテルポリオールとビニルモノマーとの反応としては、ビニルモノマーによるポリエーテルポリオールのグラフト化が知られている。この反応はラジカル反応であり、具体的には、ラジカル重合開始剤として過酸化物を用い、この過酸化物の熱分解により生成する酸素ラジカルによりエーテル鎖中のアルキレン基において水素引き抜き反応が起こり、ポリエーテルポリオールがラジカル化し、これにビニルモノマーが反応することによってグラフト化が起こる。このようなラジカル反応では、ポリエーテルポリオールの末端水酸基の不活性化は困難である。
【特許文献1】特開昭55−31874号公報
【特許文献2】特開2001−64505号公報
【特許文献3】特開2003−119280号公報
【特許文献4】特開2000−345137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、イソシアナート基やアルコキシシリル基等の水酸基と反応可能な官能基を有する化合物と混合した場合であっても、増粘などの経時的変化が起こりにくいポリエーテルおよびこのポリエーテルを含有するポリエーテルポリオール組成物、ならびにこれらの製造方法を提供することを目的としている。特に、本発明は、ポリウレタンなどの樹脂組成物において高分子量可塑剤として有用な、前記ポリエーテルを含有する可塑剤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記問題点を解決すべく鋭意研究した結果、ポリオキシアルキレンポリオールの末端水酸基をビニルモノマーで不活性化したポリエーテルを含有するポリエーテルポリオール組成物が、イソシアナート基やアルコキシシリル基等の水酸基と反応可能な官能基を有する化合物と混合しても、貯蔵時における増粘やゲル化が起こりにくいことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明に係るポリエーテルは、全エーテル鎖末端のうち、水酸基をビニルモノマーで封止した末端基が30モル%以上であり、水酸基が70モル%未満であることを特徴としている。
【0010】
上記ポリエーテルは、下記式(1)
【0011】
【化3】

【0012】
(式中、R1は、p+q個の水酸基を有する化合物から該水酸基を除いた残基であり、R2は、それぞれ独立にエチレン基またはプロピレン基であり、R3は、ビニルモノマーから
誘導される残基であり、複数存在する場合には同じであっても互いに異なっていてもよい。mは10〜600の整数であり、nは1〜100の整数であり、kは10〜600の整数である。pは0〜8の整数であり、qは1〜8の整数である。但し、pとqの和は2以上である。)
で表されることが好ましい。
【0013】
上記ポリエーテルは、下記式(2)〜(6)
【0014】
【化4】

【0015】
(式中、R1〜R3は前記式(1)のR1〜R3と同義であり、a、c、e、g、iおよびrは、それぞれ独立に10〜600の整数であり、b、d、f、h、jおよびsは、それぞれ独立に1〜100の整数である。)
のいずれかで表されることが好ましい。
【0016】
上記ポリエーテルは、数平均分子量1000〜30000のポリオキシアルキレンポリオールの一部または全部の末端水酸基をビニルモノマーで封止したポリエーテルであることが好ましい。
【0017】
前記ビニルモノマーは、アクリロニトリル、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルからなる群から選択される1種または2種以上のビニルモノマーであることが好ましい。
【0018】
前記式(1)中のpおよびqは2≦p+q≦8の関係を満たすことが好ましい。
上記ポリエーテルは、全エーテル鎖末端のうち、水酸基がビニルモノマーで封止された末端基が50モル%以上、水酸基が50モル%未満であることが好ましい。
【0019】
本発明に係るポリエーテルポリオール組成物は、上記ポリエーテルを含有するポリエーテルポリオール組成物であって、該組成物中の全エーテル鎖末端のうち、水酸基をビニルモノマーで封止した末端基が30モル%以上であり、水酸基が70モル%未満であることを特徴としている。
【0020】
上記ポリエーテルポリオール組成物は、上記式(1)で表される1種または2種以上のポリエーテルを含有することが好ましい。
本発明に係る可塑剤は、上記ポリエーテルを含有することを特徴としている。
【0021】
本発明に係る樹脂組成物は、主剤および/または硬化剤に上記可塑剤を含有する二液硬化性ポリウレタン樹脂組成物、上記可塑剤を含有する一液硬化型ポリウレタン樹脂組成物、あるいは上記可塑剤とポリ塩化ビニルとを含有する樹脂組成物であることを特徴としている。
【0022】
本発明に係るポリエーテルの製造方法は、塩基性触媒存在下で、ポリオキシアルキレンポリオールの末端水酸基にビニルモノマーを付加することを特徴としている。
前記ポリオキシアルキレンポリオールは水酸基数1〜8のポリオールであることが好ましい。
【0023】
前記ビニルモノマーは、アクリロニトリル、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルからなる群から選択される1種または2種以上のビニルモノマーであることが好ましい。
【0024】
本発明に係るポリエーテルの製造方法において、前記ビニルモノマーとしてアクリロニトリルを用いる場合、水の存在下で、ポリオキシアルキレンポリオールの末端水酸基にアクリロニトリルを付加することが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、効率よく、安価で、容易に、ポリエーテルポリオールの末端水酸基を不活性化することができ、イソシアナート基やアルコキシシリル基等の水酸基と反応可能な官能基を有する化合物と混合した場合であっても、増粘などの経時的変化が起こりにくいポリエーテルおよびこのポリエーテルを含有するポリエーテルポリオール組成物、特に、ポリウレタンなどの樹脂組成物において高分子量可塑剤として有用な前記ポリエーテルを含有する可塑剤を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
〔ポリエーテル〕
本発明に係るポリエーテルは、全エーテル鎖末端のうち、水酸基をビニルモノマーで封止した末端基(以下、「末端封止基」ともいう。)が30%以上であり、水酸基が70%未満である。ここで、「全エーテル鎖末端」とは、ポリエーテルに含まれる全てのエーテル鎖末端を意味する。
【0027】
このようなポリエーテルは、後述するように、塩基性触媒存在下、ポリオキシアルキレンポリオールにビニルモノマーを末端付加させることにより製造できる。したがって、全エーテル鎖末端に対する上記末端封止基の割合および水酸基の割合は、それぞれ、原料のポリオキシアルキレンポリオールの末端水酸基のうち、ビニルモノマーで封止された末端水酸基の割合(以下、「末端封止率」ともいう。)および残存した水酸基の割合(以下、
「水酸基残存率」ともいう。)であり、末端封止前のポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価と封止後のポリエーテルの水酸基価をJIS K−1557に記載の方法に従って測定し、下記式により算出できる。
【0028】
【数1】

【0029】
上記ポリエーテルの末端封止率および水酸基残存率は、上述したように、それぞれ30%以上100%未満および0%を超え70%未満であるが、イソシアナート基等の水酸基と反応可能な官能基を有する化合物と混合した場合における増粘やゲル化をより効果的に抑制でき、貯蔵安定性に優れるという観点から、好ましくは末端封止率が40%以上100%未満かつ水酸基残存率が0%を超え60%未満、より好ましくは末端封止率が50%以上100%未満かつ水酸基残存率が0%を超え50%未満であることが望ましい。
【0030】
上記ポリエーテルは、下記式(1)
【0031】
【化5】

【0032】
で表されるポリエーテルであることが好ましい。
上記式(1)において、pは0〜8の整数であり、qは1〜8の整数である。pとqの和は2以上であり、好ましくは2≦p+q≦8の関係を満たすことが好ましい。
【0033】
前記R1は、p+q個の水酸基を有する化合物から該水酸基を除いた残基であれば特に
制限されないが、たとえば、炭素数1〜20の炭化水素基が挙げられる。上記p+q個の水酸基を有する化合物は、R1(OH)p+qで表される化合物であり、ポリオキシアルキレンポリオールの製造に通常用いられる水酸基含有化合物(以下、「開始剤」ともいう。)であれば特に制限されず、たとえば、p+q=2の化合物として、エチレングリコール、プロピレングリコール等;p+q=3の化合物として、グリセリン、トリメチロールプロパン等;p+q=4の化合物として、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等;p+q=6の化合物として、ソルビトール等;p+q=8の化合物としてショ糖等が挙げられる。
【0034】
前記R2は、それぞれ独立にエチレン基またはプロピレン基であり、上記水酸基含有化
合物にエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを開環重合させることにより形成される。
【0035】
前記R3は、アクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどのビ
ニルモノマーから誘導される残基であり、分子中に複数存在する場合(nが2以上の場合)には同じであっても互いに異なっていてもよい。具体的には、R3として下記式
【0036】
【化6】

【0037】
で表される基が挙げられる。
mおよびkは、それぞれ独立に、10〜600の整数、好ましくは20〜520の整数、より好ましくは90〜350の整数、最も好ましくは140〜260の整数である。mおよびkの値が小さすぎると、上記式(1)で表されるポリエーテルを含有する硬化物においてこのポリエーテルがブリードするおそれがあり、mまたはkの値が大きすぎるとこのポリエーテルを含有するポリエーテルポリオール組成物の粘度が高くなり過ぎることがある。なお、mおよびkの値は、後述するポリオキシアルキレンポリオールの調製においてアルキレンオキサイドの重合度をコントロールすることにより調整できる。
【0038】
nは1〜100の整数、好ましくは1〜50の整数、より好ましくは1〜30の整数、最も好ましくは1〜15の整数である。nの値が大きくなりすぎるとこのポリエーテルを含有するポリエーテルポリオール組成物の粘度が高くなり過ぎることがある。
【0039】
上記式(1)で表されるポリエーテルとしては、下記式(2)〜(6)
【0040】
【化7】

【0041】
で表されるポリエーテルが挙げられる。
式中、R1〜R3は上記式(1)のR1〜R3と同義であり、a、c、e、g、iおよびrは、それぞれ独立に10〜600の整数であり、b、d、f、h、jおよびsは、それぞれ独立に1〜100の整数である。
【0042】
〔ポリエーテルポリオール組成物〕
本発明に係るポリエーテルポリオール組成物は、上記ポリエーテルを含有するポリエーテルポリオール組成物であり、このポリオール組成物中の全エーテル鎖末端のうち、水酸基をビニルモノマーで封止した末端基が30モル%以上であり、水酸基が70モル%未満であるポリオール組成物である。ここで、「全エーテル鎖末端」とは、ポリエーテルポリオール組成物に含まれる全てのエーテル鎖末端を意味する。
【0043】
この全エーテル鎖末端に対する上記末端封止基の割合および水酸基の割合は、上記ポリエーテルと同様に、それぞれ、原料のポリオキシアルキレンポリオールの末端水酸基のうち、ビニルモノマーで封止された末端水酸基の割合(以下、「末端封止率」ともいう。)
および残存した水酸基の割合(以下、「水酸基残存率」ともいう。)であり、末端封止前のポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価と封止後のポリエーテルポリオール組成物の水酸基価をJIS K−1557に記載の方法に従って測定し、下記式により算出できる。
【0044】
【数2】

【0045】
上記ポリエーテルポリオール組成物の末端封止率および水酸基残存率は、上述したように、それぞれ30%以上100%未満および0%を超え70%未満であるが、イソシアナート基等の水酸基と反応可能な官能基を有する化合物と混合した場合における増粘やゲル化をより効果的に抑制でき、貯蔵安定性に優れるという観点から、好ましくは末端封止率が40%以上100%未満かつ水酸基残存率が0%を超え60%未満、より好ましくは末端封止率が50%以上100%未満かつ水酸基残存率が0%を超え50%未満であることが望ましい。
【0046】
上記ポリエーテルポリオール組成物は、上記ポリエーテルを、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70重量%以上、最も好ましくは80重量%以上の量で含有することが望ましい。ポリエーテルの含有量が上記範囲にあるポリエーテルポリオール組成物は貯蔵安定性に優れている。
【0047】
また、上記ポリエーテルポリオール組成物は、上記式(1)で表される1種または2種以上のポリエーテルを含有することが好ましい。
上記ポリエーテルポリオール組成物は、ポリエーテルポリオール組成物の末端封止率および水酸基残存率が上記範囲にあれば、ポリオキシアルキレンポリオールの一部の末端水酸基をビニルモノマーで封止したポリエーテルのみから構成されていてもよいし、ポリオキシアルキレンポリオールの一部または全部の末端水酸基をビニルモノマーで封止したポリエーテルとポリオキシアルキレンポリオールとの混合物であってもよい。この混合物に含まれるポリオキシアルキレンポリオールは、上記ポリエーテルの調製時に使用したポリオキシアルキレンポリオールが未反応の状態で残存したものでもよいし、調製したポリエーテルに新たに添加したものでもよい。
【0048】
混合物に含まれるポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量は、好ましくは1000〜30000、より好ましくは5000〜20000、最も好ましくは8000〜15000が望ましい。なお、ポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、カラム:TSKgel G1000H+G2000H+G3000H+GuardColumn)により測定された標準ポリエチレングリコールおよび標準ポリプロピレングリコール換算値である。このポリオキシアルキレンポリオールの含有量は、ポリエーテルポリオール組成物全体に対して、好ましくは50重量%未満、より好ましくは40重量%未満、特に好ましくは30重量%未満、最も好ましくは20重量%未満である。
【0049】
また、本発明に係るポリエーテルポリオール組成物は、GPCにより測定した数平均分子量が1000未満の低分子量化合物の含有量が30重量%以下であることが好ましい。
上記ポリエーテルポリオール組成物に低分子量化合物が多く含まれると、この組成物を用いた硬化物において低分子量化合物のブリードが発生することがある。
【0050】
さらに、本発明に係るポリエーテルポリオール組成物には、塩素化パラフィン、エポキシ大豆油、アクリル系可塑剤、ジオクチルテレフタレート等のフタル酸エステル系、ジオクチルアジペート等の公知の低分子量可塑剤、水やアルコール類、エーテル類等の溶剤を含有させることができる。
【0051】
このようなポリエーテルポリオール組成物は、水酸基と反応可能な官能基を有する化合物と混合した場合であっても、増粘などの経時的変化が起こりにくく、高分子量可塑剤として有用であり、さらに、この高分子量可塑剤とポリオールとポリイソシアネートとを含有するポリウレタン樹脂組成物は、これを硬化して得られる硬化物において可塑剤のブリードが発生しにくいという点で優れている。
【0052】
〔ポリエーテルおよびこれを含有するポリエーテルポリオール組成物の製造方法〕
本発明に係るは、塩基性触媒存在下で、ポリオキシアルキレンポリオールの末端水酸基にビニルモノマーを付加させ、全エーテル鎖末端水酸基を封止することにより製造でき、通常、このポリエーテルを含有するポリエーテルポリオール組成物として得ることができる。
【0053】
<ポリオキシアルキレンポリオールの製造>
本発明に用いられるポリオキシアルキレンポリオールは、従来公知の方法で製造することができ、たとえば、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属触媒、亜鉛とコバルトのシアノ錯体である複合金属触媒、または窒素-リン二重結合を有するフォスファ
ゼン、フォスファゼニウムなどのフォスファゼニウム触媒等の公知の触媒の存在下で、上記水酸基含有化合物(開始剤)にエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドから選択される1種または2種のアルキレンオキサイドを開環重合させることによって製造することができる。なお、上記触媒は、重合反応終了後、除去してもよいが、後述するビニルモノマー付加反応において同じ触媒を使用する場合には、得られたポリオキシアルキレンポリオールに含有していてもよい。
【0054】
上記ポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量は、好ましくは1000〜30000、より好ましくは5000〜20000、最も好ましくは8000〜15000が望ましい。ポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量が小さすぎると上記式(1)で表されるポリエーテルを含有する硬化物においてこのポリエーテルがブリードするおそれがあり、大きすぎるとポリエーテルポリオール組成物の粘度が高くなり過ぎることがある。なお、ポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量は、上記アルキレンオキサイドの開環重合度をコントロールすることにより調整できる。
【0055】
また、上記ポリオキシアルキレンポリオールは1分子中に、好ましくは1〜8個の水酸基を有し、より好ましくは2〜5個の水酸基を有することが望ましい。ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基数が多すぎると水酸基と反応可能な官能基を有する化合物と混合した場合、増粘などの経時変化が大きくなることがある。
【0056】
<ビニルモノマーによる末端封止>
次に、塩基性触媒存在下で、上記ポリオキシアルキレンポリオールの末端水酸基にビニルモノマーを付加させることにより、ポリオキシアルキレンポリオールの一部または全部の末端水酸基がビニルモノマーで封止されたポリエーテル、たとえば、上記式(1)で表されるポリエーテルを含有するポリエーテルポリオール組成物が得られる。
【0057】
上記ビニルモノマーとしては、アクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどが挙げられる。これらのビニルモノマーは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。上記ビニルモノマーは、ビニルモノマーのビニル基とポリオキシアルキレンポリオールの水酸基との当量比(ビニル基/水酸基)が、好ましくは0.5〜10、より好ましくは0.5〜8、最も好ましくは0.5〜5である。上記当量比が低すぎると末端封止率が低くなることがある。上記当量比が高すぎるとポリエーテルポリオール組成物の粘度が上昇することがある。また、未反応のビニルモノマーが多く残存し、経済的に好ましくない。
【0058】
上記塩基性触媒としては、水酸化カリウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属触媒、窒素-リン二重結合を有するフォスファゼン、フォスファゼニウムなどのフォスファゼニ
ウム触媒(たとえば、特開平10−36499号、平10−77289号等に記載の化合物)が挙げられる。触媒の使用量は、ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、好ましくは0.01〜5重量部、より好ましくは0.05〜3重量部、最も好ましくは0.1〜2重量部である。触媒の使用量が少なすぎるとビニルモノマーの付加反応が遅くなり、末端封止率が低くなることがある。また、触媒の使用量が多すぎると付加反応後の触媒除去が困難になることがあり、さらに経済的にも好ましくない。なお、上記触媒の使用量は、上記ポリオキシアルキレンポリオールの調製において触媒を除去しなかった場合には、残存している触媒の量も含める。
【0059】
上記ビニルモノマーの付加反応において、水を添加することができる。特に、ビニルモノマーとしてアクリロニトリルを用いる場合には、アクリルニトリルの単独重合を抑制できる点で、水を添加することが好ましい。水の添加量は、ポリオキシアルキレンポリオール100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.5〜15重量部、最も好ましくは1〜10重量部である。水の添加量が少なすぎるとアクリロニトリルの単独重合を十分に抑制できず、末端封止率が低くなることがある。また、水の添加量が多すぎると副反応が促進され、ポリエーテルポリオール組成物の純度が低下することがある。
【0060】
上記付加反応における反応温度は、好ましくは20〜100℃、より好ましくは30〜80℃、最も好ましくは40〜60℃である。付加反応温度が高すぎるとビニルモノマーの単独重合が起こり、末端封止率が低くなることがあり、付加反応温度が低すぎると反応速度が遅く、末端封止率が低くなることがある。
【0061】
また、ビニルモノマーの添加方法は、一括添加および逐次添加のいずれの方法でもよいが、一括添加の場合には反応熱により温度が急激に上昇することがあり、反応温度制御が困難になることがある。このため、ビニルモノマーは逐次添加することが好ましい。このときの添加時間は、好ましくは5〜600分以下、より好ましくは30〜300分、最も好ましくは好ましくは60〜120分である。逐次添加時間が短すぎると一括添加の場合と同様に反応温度制御が困難になることがあり、長すぎると生産時間が長くなり、経済的に好ましくない。
<可塑剤>
本発明に係るポリエーテルは、樹脂との相溶性、減粘性等に優れ、可塑剤に好適に用いることができる。特に、このポリエーテルは、高分子であるため、ブリードが極めて少なく、実質的にはブリードすることなく、可塑剤として用いることができる。また、このポリエーテルは、環境ホルモンとして作用することもなく、多量に使用しても安全であり、さらに耐候性に優れた可塑剤として使用できる。
【0062】
本発明に係るポリエーテルは、種々の樹脂の可塑剤として用いることができるが、特に、ポリウレタン樹脂や塩化ビニル樹脂との相溶性に優れることから、これら樹脂の可塑剤
として好適に用いることができる。
【0063】
本発明に係る可塑剤はブリードが少なく、耐候性等に優れることから、たとえば、シーリング剤等の建材用等のウレタン樹脂に好適に用いることができる。また、この可塑剤は一液硬化型および二液硬化型のいずれのウレタン樹脂組成物にも用いることができる。このとき、可塑剤の添加量は、ウレタン樹脂組成物の総量に対して、通常0.5〜50重量%、好ましくは1〜30重量%、特に好ましくは5〜10重量%が望ましい。
【0064】
さらに、ブリードをより少なくするためには、本発明に係るポリエーテルは数平均分子量(Mn)が8000以上であることが好ましい。また、Mnが15000以下のポリエーテルは、より良好な作業性が確保できる点で、望ましい。
【0065】
本発明に係る可塑剤において、上記ビニルモノマーとして、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルからなる群から選択される1種または2種以上のビニルモノマーを用いることは、より耐候性を向上することができる点で好ましい。また、上記式(1)においてnの値が大きいほど耐候性は良好となる。アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシルなどが挙げられ、メタクリル酸エステルとしてはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシルなどが挙げられる。
【0066】
また、本発明に係る可塑剤は、ポリ塩化ビニルとの相溶性がよく、耐候性等に優れ、環境ホルモンとして作用することもないことから、ポリ塩化ビニル樹脂の可塑剤としても好適に用いることができる。本発明に係る可塑剤をポリ塩化ビニル樹脂の可塑剤として用いる場合、その添加量は、通常0.5重量%〜60重量%、好ましくは1重量%から40重量%が望ましい。
【0067】
[実施例]
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されるものではない。まず、評価方法について説明する。
【0068】
(貯蔵安定性)
ポリウレタン樹脂組成物を調製した後、JIS K2207−1996に記載の針入度試験方法に準拠して針入度(5秒値)を測定した。その後、このポリウレタン樹脂組成物を50℃で14日間保存した後、上記と同様にして針入度(5秒値)を測定した。保存後の針入度の値を下記基準で評価した。
A:保存後の針入度が300以上
B:保存後の針入度が250以上300未満
C:保存後の針入度が250未満
(ブリード性)
ポリウレタン樹脂組成物を40mm×40mm×10mmのブロック状に成形し、常温で7日間静置した。その後、このブロックを半紙の上に置き、60℃の乾燥機内で3日間放置した後、半紙の状態を目視により観察、下記基準で評価した。
A:可塑剤の溶出の形跡なし(変化なし)。
B:可塑剤の溶出がわずかに見られた。
C:可塑剤の溶出の形跡がはっきりと認められた。
D:半紙が可塑剤で濡れていた。
(耐候性)
ポリウレタン樹脂組成物を40mm×40mm×2mmのシート状に成形し、常温で7日間放置した。その後Fedoメーター(スガ試験機製:型式FAL−5H−B)により
63℃、降雨なしの条件で18時間または100時間放置し、シートの形状変化を観察し、下記基準で評価した。なお、試験を促進するため、ポリウレタン樹脂組成物を調整する際、老化防止剤を配合せずに実施した。
A:形状変化なし
B:一部溶融
C:溶融
【実施例1】
【0069】
数平均分子量9000のポリオキシプロピレンポリオール(水酸基数:3、水酸基価:18.8mgKOH/g)250重量部に、触媒含有量がこのポリオール100重量部に対して0.35重量部となるような量の水酸化セシウムと水11重量部とを予め均一に溶解した溶液を、添加して混合した。この混合物に、40℃にて攪拌しながら、アクリロニトリル22重量部(ビニル基/水酸基=5.0)を1.3時間かけて滴下した後、さらに20時間反応させた。その後、80℃、1.33kPa以下の条件で未反応のビニルモノマーを除去した。さらに、固体酸(協和化学(株)製、商品名KW−700SEL)を全仕込み量100重量部に対して5重量部添加した後、80℃、2時間吸着反応を行い、次いで、80℃、3時間減圧脱水を行い、触媒を除去した。さらに、ろ紙による加圧ろ過を行い、末端封止されたポリエーテルを含有する褐色透明のポリエーテルポリオール組成物(1)を得た。
【0070】
このポリエーテルポリオール組成物(1)の水酸基価を測定したところ、4.0mgKOH/gであり、末端封止率は78.8%、水酸基残存率は21.2%であった。また、B型粘度計により測定した、調製直後のポリエーテルポリオール組成物(1)の粘度は2500mPa・s/25℃であった。
【0071】
次に、ポリオキシプロピレングリコール(三井武田ケミカル(株)製、商品名:アクトコールDIOL−3000)1モルに対して1.5モルの4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを90℃、6時間反応させて得られた、イソシアネート含有率が1.3重量%のウレタンプレポリマー35重量部と上記ポリエーテルポリオール組成物(1)25重量部と炭酸カルシウム20重量部と二酸化チタン6重量部と増粘剤(東新化成(株)製、商品名:アエロジル200)2重量部と、老化防止剤(チバガイギー(株)製、商品名:イルガノックス1010)1部とキシレン4重量部とを混合して、ポリウレタン樹脂組成物を調製した。
【0072】
このポリウレタン樹脂組成物について、貯蔵安定性およびブリード性を評価した。結果を表1に示す。
【実施例2】
【0073】
数平均分子量5500のポリオキシプロピレンポリオール(水酸基数:2、水酸基価:22.0mgKOH/g)250重量部に、触媒含有量がこのポリオール100重量部に対して0.30重量部となるような量のテトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォ
ラニリデンアミノ]ホスフォニウムヒドロキシドと水2.5重量部とを予め均一に溶解し
た溶液を、添加して混合した。この混合物に、40℃にて攪拌しながら、アクリロニトリル26重量部(ビニル基/水酸基=5.0)を1.5時間かけて滴下した後、さらに18時間反応させた。その後、実施例1と同様の触媒除去操作を行い、末端封止されたポリエーテルを含有する褐色透明のポリエーテルポリオール組成物(2)を得た。
【0074】
このポリエーテルポリオール組成物(2)の水酸基価を測定したところ、2.5mgKOH/gであり、末端封止率は88.6%、水酸基残存率は11.4%であった。また、B型粘度計により測定した、調製直後のポリエーテルポリオール組成物(2)の粘度は2
000mPa・s/25℃であった。
【0075】
次に、ポリエーテルポリオール組成物(1)の替わりにポリエーテルポリオール組成物(2)を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリウレタン樹脂組成物を調製し、貯蔵安定性およびブリード性を評価した。結果を表1に示す。
【実施例3】
【0076】
数平均分子量6000のポリオキシプロピレンポリオール(水酸基数:3、水酸基価:28.0mgKOH/g)250重量部に、触媒含有量がこのポリオール100重量部に対して0.39重量部となるような量のテトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォ
ラニリデンアミノ]ホスフォニウムヒドロキシドと水2.5重量部とを予め均一に溶解し
た溶液を、添加して混合した。この混合物に、40℃にて攪拌しながら、アクリロニトリル33.3重量部(ビニル基/水酸基=5.0)を1.5時間かけて滴下した後、さらに15時間反応させた。その後、実施例1と同様の触媒除去操作を行い、末端封止されたポリエーテルを含有する褐色透明のポリエーテルポリオール組成物(3)を得た。
【0077】
このポリエーテルポリオール組成物(3)の水酸基価を測定したところ、2.5mgKOH/gであり、末端封止率は91.0%、水酸基残存率は9.0%であった。また、B型粘度計により測定した、調製直後のポリエーテルポリオール組成物(3)の粘度は1400mPa・s/25℃であった。
【0078】
次に、ポリエーテルポリオール組成物(1)の替わりにポリエーテルポリオール組成物(3)を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリウレタン樹脂組成物を調製し、貯蔵安定性およびブリード性を評価した。結果を表1に示す。
【実施例4】
【0079】
数平均分子量5500のポリオキシプロピレンポリオール(水酸基数:2、水酸基価:22.0mgKOH/g)250重量部に、触媒含有量がこのポリオール100重量部に対して水酸化セシウムが0.39重量部となるような量の50%水酸化セシウム水溶液を添加して混合し、100℃、1.3kPa以下の条件で3時間減圧操作を行った。この混合物に、60℃にて攪拌しながら、アクリル酸メチル34.1重量部(ビニル基/水酸基=4.0)を2.5時間かけて滴下した後、さらに10時間反応させた。その後、実施例1と同様の触媒除去操作を行い、末端封止されたポリエーテルを含有する黄色透明のポリエーテルポリオール組成物(4)を得た。
【0080】
このポリエーテルポリオール組成物(4)の水酸基価を測定したところ、0.8mgKOH/gであり、末端封止率は96.4%、水酸基残存率は3.6%であった。また、B型粘度計により測定した、調製直後のポリエーテルポリオール組成物(4)の粘度は3900mPa・s/25℃であった。
【0081】
次に、ポリエーテルポリオール組成物(1)の替わりにポリエーテルポリオール組成物(4)を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリウレタン樹脂組成物を調製し、貯蔵安定性、ブリード性および耐候性を評価した。結果を表1に示す。
【実施例5】
【0082】
アクリル酸メチルの量を16.9重量部(ビニル基/水酸基=2.0)に変更し、その滴下時間を1.0時間、その後の反応時間を5時間に変更した以外は、実施例4と同様にして末端封止されたポリエーテルを含有する黄色透明のポリエーテルポリオール組成物(5)を得た。
【0083】
このポリエーテルポリオール組成物(5)の水酸基価を測定したところ、3.0mgKOH/gであり、末端封止率は86.4%、水酸基残存率は13.6%であった。また、B型粘度計により測定した、調製直後のポリエーテルポリオール組成物(5)の粘度は3900mPa・s/25℃であった。
【0084】
次に、ポリエーテルポリオール組成物(1)の替わりにポリエーテルポリオール組成物(5)を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリウレタン樹脂組成物を調製し、貯蔵安定性およびブリード性を評価した。結果を表1に示す。
【実施例6】
【0085】
アクリル酸メチルの替わりにアクリル酸ブチル50.3重量部(ビニル基/水酸基=4.0)を用い、その滴下時間を2.0時間に変更した以外は、実施例5と同様にして末端封止されたポリエーテルを含有する黄色透明のポリエーテルポリオール組成物(6)を得た。
【0086】
このポリエーテルポリオール組成物(6)の水酸基価を測定したところ、2.0mgKOH/gであり、末端封止率は91.0%、水酸基残存率は9.0%であった。また、B型粘度計により測定した、調製直後のポリエーテルポリオール組成物(6)の粘度は2500mPa・s/25℃であった。
【0087】
次に、ポリエーテルポリオール組成物(1)の替わりにポリエーテルポリオール組成物(6)を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリウレタン樹脂組成物を調製し、貯蔵安定性およびブリード性を評価した。結果を表1に示す。
【実施例7】
【0088】
実施例4で合成したポリエーテルポリオール組成物(4)81重量部と数平均分子量5500のポリオキシプロピレンポリオール(水酸基数:2、水酸基価:22.0mgKOH/g)19重量部とを60℃、1時間混合して、ポリオキシプロピレンポリオールを19重量%を含有する黄色透明のポリエーテルポリオール組成物(7)を得た。
【0089】
このポリエーテルポリオール組成物(7)の水酸基価を測定したところ、4.8mgKOH/gであり、末端封止率は78.2%、水酸基残存率は21.8%であった。また、B型粘度計により測定した、調製直後のポリエーテルポリオール組成物(7)の粘度は3400mPa・s/25℃であった。
【0090】
次に、ポリエーテルポリオール組成物(1)の替わりにポリエーテルポリオール組成物(7)を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリウレタン樹脂組成物を調製し、貯蔵安定性およびブリード性を評価した。結果を表1に示す
[比較例1]
ポリエーテルポリオール組成物(1)の替わりにフタル酸ジオクチルを25重量部用いた以外は、実施例1と同様にしてポリウレタン樹脂組成物を調製し、貯蔵安定性、ブリード性および耐候性を評価した。結果を表1に示す。
【0091】
[比較例2]
数平均分子量700のポリオキシプロピレンポリオール(水酸基数:2、水酸基価:160.0mgKOH/g)250重量部に、触媒含有量がこのポリオール100重量部に対して0.35重量部となるような量の水酸化カリウムと水11重量部とを予め均一に溶解した溶液を、添加して混合した。この混合物に、40℃にて攪拌しながら、アクリロニトリル113.4重量部(ビニル基/水酸基=3.0)を1.5時間かけて滴下した後、さらに20時間反応させた。その後、実施例1と同様の触媒除去操作を行い、末端封止さ
れたポリエーテルを含有する褐色透明のポリエーテルポリオール組成物(a)を得た。
【0092】
このポリエーテルポリオール組成物(a)の水酸基価を測定したところ、56.0mgKOH/gであり、末端封止率は65.0%、水酸基残存率は35.0%であった。また、B型粘度計により測定した、調製直後のポリエーテルポリオール組成物(a)の粘度は1000mPa・s/25℃であった。
【0093】
次に、ポリエーテルポリオール組成物(1)の替わりにポリエーテルポリオール組成物(a)を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリウレタン樹脂組成物を調製し、貯蔵安定性およびブリード性を評価した。結果を表1に示す。
【0094】
[比較例3]
数平均分子量5500のポリオキシプロピレンポリオール(水酸基数:2、水酸基価:22.0mgKOH/g)250重量部に、触媒含有量がこのポリオール100重量部に対して0.30重量部となるような量のテトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォ
ラニリデンアミノ]ホスフォニウムヒドロキシドを添加して混合し、100℃,1.3k
Pa以下の条件で3時間減圧操作を行った。この混合物に、60℃にて攪拌しながら、アクリロニトリル5.7重量部(ビニル基/水酸基=1.1)を1.0時間かけて滴下した後、さらに1.5時間反応させた。その後、実施例1と同様の触媒除去操作を行い、末端封止されたポリエーテルを含有する褐色で濁りのあるポリエーテルポリオール組成物(b)を得た。
【0095】
このポリエーテルポリオール組成物(b)の水酸基価を測定したところ、16.3mgKOH/gであり、末端封止率は26.0%、水酸基残存率は74.0%であった。また、B型粘度計により測定した、調製直後のポリエーテルポリオール組成物(b)の粘度は1600mPa・s/25℃であった。
【0096】
次に、ポリエーテルポリオール組成物(1)の替わりにポリエーテルポリオール組成物(b)を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリウレタン樹脂組成物を調製し、貯蔵安定性およびブリード性を評価した。結果を表1に示す。
【0097】
[比較例4]
数平均分子量6000のポリオキシプロピレンポリオール(水酸基数:3、水酸基価:28.0mgKOH/g)250重量部に、触媒含有量がこのポリオール100重量部に対して0.39重量部となるような量のテトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォ
ラニリデンアミノ]ホスフォニウムヒドロキシドを添加して混合し、100℃,1.3k
Pa以下の条件で3時間減圧操作を行った。この混合物に、60℃にて攪拌しながら、アクリル酸メチル32.5重量部(ビニル基/水酸基=3.0)を一括で添加した後、さらに6時間反応させた。その後、実施例1と同様の触媒除去操作を行い、末端封止されたポリエーテルを含有する黄色透明のポリエーテルポリオール組成物(c)を得た。
【0098】
このポリエーテルポリオール組成物(c)の水酸基価を測定したところ、21.0mgKOH/gであり、末端封止率は25.0%、水酸基残存率は75.0%であった。また、B型粘度計により測定した、調製直後のポリエーテルポリオール組成物(c)の粘度は1100mPa・s/25℃であった。
【0099】
次に、ポリエーテルポリオール組成物(1)の替わりにポリエーテルポリオール組成物(c)を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリウレタン樹脂組成物を調製し、貯蔵安定性およびブリード性を評価した。結果を表1に示す。
【0100】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明に係るポリエーテルおよびこれを含有するポリエーテルポリオール組成物は、水酸基と反応可能な官能基を有する化合物と混合した場合であっても増粘などの経時的変化が起こりにくく、ポリウレタン樹脂やポリ塩化ビニルなどに用いられる可塑剤、特に、シーリング剤、防水剤、接着剤、塗料、成形材料等に用いられる高分子量可塑剤や、潤滑剤、溶剤、界面活性剤等として用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全エーテル鎖末端のうち、水酸基をビニルモノマーで封止した末端基が30モル%以上であり、水酸基が70モル%未満であることを特徴とするポリエーテル。
【請求項2】
下記式(1)
【化1】

(式中、R1は、p+q個の水酸基を有する化合物から該水酸基を除いた残基であり、R2は、それぞれ独立にエチレン基またはプロピレン基であり、R3は、ビニルモノマーから
誘導される残基であり、複数存在する場合には同じであっても互いに異なっていてもよい。mは10〜600の整数であり、nは1〜100の整数であり、kは10〜600の整数である。pは0〜8の整数であり、qは1〜8の整数である。但し、pとqの和は2以上である。)
で表されることを特徴とする請求項1に記載のポリエーテル。
【請求項3】
下記式(2)〜(6)
【化2】

(式中、R1〜R3は前記式(1)のR1〜R3と同義であり、a、c、e、g、iおよびrは、それぞれ独立に10〜600の整数であり、b、d、f、h、jおよびsは、それぞれ独立に1〜100の整数である。)
のいずれかで表されることを特徴とする請求項2に記載のポリエーテル。
【請求項4】
数平均分子量1000〜30000のポリオキシアルキレンポリオールの一部または全部の末端水酸基をビニルモノマーで封止したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリエーテル。
【請求項5】
前記ビニルモノマーが、アクリロニトリル、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルからなる群から選択される1種または2種以上のビニルモノマーであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエーテル。
【請求項6】
前記式(1)中のpおよびqが2≦p+q≦8の関係を満たすことを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載のポリエーテル。
【請求項7】
全エーテル鎖末端のうち、水酸基がビニルモノマーで封止された末端基が50モル%以上、水酸基が50モル%未満であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリエーテル。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のポリエーテルを含有するポリエーテルポリオール組成物であって、該組成物中の全エーテル鎖末端のうち、水酸基をビニルモノマーで封止した末端基が30モル%以上であり、水酸基が70モル%未満であることを特徴とするポリエーテルポリオール組成物。
【請求項9】
上記式(1)で表される1種または2種以上のポリエーテルを含有することを特徴とする請求項8に記載のポリエーテルポリオール組成物。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載のポリエーテルを含有することを特徴とする可塑剤。
【請求項11】
二液硬化性ポリウレタン樹脂組成物であって、主剤および/または硬化剤に請求項10に記載の可塑剤を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項12】
一液硬化型ポリウレタン樹脂組成物であって、請求項10に記載の可塑剤を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項13】
ポリ塩化ビニルを含有する樹脂組成物であって、請求項10に記載の可塑剤を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項14】
塩基性触媒存在下で、ポリオキシアルキレンポリオールの末端水酸基にビニルモノマーを付加することを特徴とするポリエーテルの製造方法。
【請求項15】
前記ポリオキシアルキレンポリオールが水酸基数1〜8のポリオールであることを特徴とする請求項14に記載のポリエーテルの製造方法。
【請求項16】
前記ビニルモノマーが、アクリロニトリル、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルからなる群から選択される1種または2種以上のビニルモノマーであることを特徴とする請求項14または15に記載のポリエーテルの製造方法。
【請求項17】
水の存在下で、ポリオキシアルキレンポリオールの末端水酸基にアクリロニトリルを付加することを特徴とする請求項16に記載のポリエーテルの製造方法。

【公開番号】特開2006−70073(P2006−70073A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−251961(P2004−251961)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(501140544)三井武田ケミカル株式会社 (115)
【Fターム(参考)】