説明

ポリエーテルアルキルアルコキシシランの連続的工業的製造のための設備、反応器及び方法

本発明は、α,β−不飽和の脂肪族のポリエーテル化合物AをHSi−化合物Bと触媒C及び場合により更なる補助物質の存在下に反応させる反応の連続的な工業的な実施のための設備、反応器及び方法であって、該設備が、成分A(1)及びB(2)用の出発物質合流部(3)と、交換可能な予備反応器の形の少なくとも2つの反応器ユニット(5.1)及び該予備反応器システムに後接続された少なくとも1つの更なる反応器ユニット(5.3)を含む少なくとも1つのマルチエレメント反応器(5)と、生成物後処理部(8)とを基礎とする形式のものに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α,β−不飽和の脂肪族ポリエーテル化合物とHSi−化合物との反応によるポリエーテルアルキルアルコキシシランの連続的工業的製造のための新規の反応器及び設備(Anlage)並びにそれに関連する方法に関する。
【0002】
オルガノシラン、例えばビニルクロロ−もしくはビニルアルコキシシラン(EP0456901号A1、EP0806427号A2)、クロロアルキルクロロシラン(DE−AS2815316号、EP0519181号A1、DE19534853号A1、EP0823434号A1、EP1020473号A2)、アルキルアルコキシシラン(EP0714901号A1、DE10152284号A1)、フルオロアルキルアルコキシシラン(EP0838467号A1、DE10301997号A1)、アミノアルキルアルコキシシラン(DE−OS2753124号、EP0709391号A2、EP0849271号A2、EP1209162号A2、EP1295889号A2)、グリシジルオキシアルキルアルコキシシラン(EP1070721号A2、EP0934947号A2)、メタクリルオキシアルキルアルコキシシラン(EP0707009号A1、EP0708081号A2)、ポリエーテルアルキルアルコキシシラン(EP0387689号A2)及びその他の多数のものには、技術的にかつ工業的に高い関心が持たれている。その製造のための方法及び設備は、広く知られている。これらの生成物は、比較的に少ないトン数の生成物であり、主にバッチ法で製造される。一般に、バッチ式設備のできるだけ高い活用を達成するために、そのために多くの使用可能な設備が使用される。しかしながら、生成物の交換時に、係るバッチ式設備の費用のかかる清浄化工程及びすすぎ工程が必要となる。更に、十分な収率を達成するためには、大容量の高価な個別集中型(personalintensive)なバッチ式設備における反応混合物の長い滞留時間がしばしば必要となる。更に、上述の反応は、しばしば100〜180kJ/モルの範囲の反応熱でかなり発熱性である。従って、該反応に際して、不所望な副反応が、選択性と収率に少なからず影響を及ぼすことがある。上述の反応はヒドロシリル化であり、その可能性のある水素の脱離は、安全技術にかなりの要求を課している。更に、しばしば半バッチ様式では、一方の出発物質は触媒と一緒に装入され、もう一方の出発物質は計量供給される。更に、既に、バッチ式設備もしくは半バッチ設備の方法操作における小さい変動は、種々のバッチにわたる収率及び生成物品質にかなりのばらつきをもたらすことがある。研究所/工業の規模からの効果をバッチ規模に転用(スケールアップ)する場合に、その場合にもひどい困難性は生じない。
【0003】
微細構造化された反応器自体、例えばポリエーテルアルコールの連続的な製造のための(DE102004013551号A1)又はとりわけアンモニア、メタノール、MTBE(WO03/078052号)の合成のための反応器自体は知られている。また、微細反応器は、触媒反応のために知られている(WO01/54807号)。しかしながら、今までにオルガノシランの工業的製造のための微細反応器は後回しにされているか又は少なくとも実現されていない。その場合に、アルコキシシラン及びクロロシランが、少量の湿分でさえも加水分解の傾向にあることと、オルガノシラン製造設備において相応して固着物を形成する傾向にあることは、選択的に不利な問題点と見なされるべきである。
【0004】
従って、ポリエーテルアルキルアルコキシシランの工業的製造のために更なる方策を提供するという課題があった。特に、係るオルガノシランの連続的な製造のための更なる方策であって上述の欠点を最小限にすることが努められたものを提供することに関心が持たれていた。
【0005】
前記課題は、本発明によれば特許請求の範囲の記載に相応して解決される。
【0006】
本発明では、驚くべきことに、HSi含有成分B、特に水素アルコキシシランのヒドロシリル化を、α,β−不飽和の脂肪族ポリエーテル化合物(成分A)を用いて、触媒Cの存在下で、簡単かつ経済的な様式で、工業的規模においてかつ連続的に、マルチエレメント反応器(Multielementreaktor)(5)を基礎とする設備であって特に前記マルチエレメント反応器(5)が交換可能な予備反応器(Vorreaktor)の形の少なくとも2つの反応器ユニット(Reaktoreinheit)(5.1)と、該予備反応器に後接続された少なくとも1つの更なる反応器ユニット(5.3)とを含む設備において有利に実施できることが判明した。
【0007】
ここで、好ましくは、前記本発明の実施形態のマルチエレメント反応器(5)の使用によって、本発明による方法の連続的な運転に寄与しうる。それというのも、本発明のマルチエレメント反応器(5)は、運転時間後に明らかな量の加水分解物が沈積した予備反応器を、運転条件下でも、新たな予備反応器と狙い通りに定期的に交換することを可能にするからである。
【0008】
その際に、特に好ましくは、充填体が装填されている予備反応器を使用することができ、それによって、さらにより狙い通りにかつ効果的に、加水分解物もしくは加水分解物粒子の沈積と、それとともに反応器中での堆積と固着物の形成による該設備の閉塞傾向及び停止時間の低減を達成することができる。
【0009】
バッチ式の場合とは異なり、本発明では、出発物質をマルチエレメント反応器の直前で連続的に予備混合することが可能であり、その際に該予備混合は冷間でも行うことができ、引き続きマルチエレメント反応器において加温し、そこで目的に合わせて連続的に反応させることが可能である。また、出発物質混合物に触媒を添加することができる。引き続き、該生成物を連続的に、例えば幾つかの方策のみを挙げるに過ぎないが、蒸発、精留及び/又は分子蒸留器もしくは薄膜型蒸発器において後処理することができる。該反応に際して放出される反応熱は、該マルチエレメント反応器では、好ましくは、反応器容量と比較して大きな反応器内壁の表面を介して、かつ準備されていれば、伝熱媒体で排出することができる。更に、本発明によるマルチエレメント反応器を使用した場合に、迅速な熱作用のある反応の空時収量の明らかな向上が可能になる。そのことは、出発物質の迅速な混合によって、バッチ式の方法の場合よりも高い出発物質の平均濃度水準によって、すなわち出発物質による制限がないことによって、かつ/又は一般に反応の追加の促進をもたらしうる温度の上昇によって可能となる。更に、本発明は、比較的に容易にかつ経済的に、方法安全性の確保を可能にする。このように、本発明においては、劇的な方法の改善が達成でき、特に反応条件下で、標準的なバッチ式方法に比して、空時収量に対して99%より大きいプロセス時間の短縮が達成できる。また同時に、より高い転化率と選択性によって、20%まで高められた収率も達成された。好ましくは、本発明による反応は、特殊鋼製のマルチエレメント反応器中で実施した。従って、上述の反応の実施のためには、好ましくは特定の材料の使用を省くことができる。更に、連続的な運転様式によって、圧力下に実施されるべき反応の場合には、金属製の反応器のより長い寿命が確認できる。それというのも、該材料はバッチ様式と比べて明らかに緩慢に疲労するからである。さらに、バッチ式の方法での匹敵する試験に対する再現性も明らかに改善できた。更に、本発明の方法では、研究室規模もしくは工業規模からの結果の転用の際のスケールアップの危険性の明らかな低下がある。特に、本発明による連続的な方法では、1つのマルチエレメント反応器が好ましくは少なくとも1つの交換可能な、好ましくは充填体で充填された予備反応器を含む本発明による設備を使用すると、固着物の形成もしくは堆積に制限される停止状態もなくして、驚くべきほど長い設備運転時間を可能にすることができる。さらに、驚くべきことに、本発明による方法では、マルチエレメント反応器を反応混合物との本来の反応の開始前に、特に該反応器が均一系触媒を含有する場合にそれをすすぐこと、すなわち予備調整(vorkondeitionieren)することが特に好ましいことが判明した。この措置によって、一定の方法条件の予期せぬ迅速な調整を高い水準にもたらすことができる。
【0010】
従って、本発明の対象は、α,β−不飽和の脂肪族のポリエーテル化合物AをHSi−化合物Bと触媒C及び場合により更なる補助物質の存在下に反応させる反応の連続的な工業的な実施のための設備であって、成分A(1)及びB(2)用の出発物質合流部(Eduktzusammenfuehrung)(3)と、少なくとも1つの交換可能な予備反応器の形の少なくとも2つの反応器ユニット(5.1)及び該予備反応器システムに後接続された少なくとも1つの更なる反応器ユニット(5.3)を含む少なくとも1つのマルチエレメント反応器(5)と、生成物後処理部(8)とを基礎とする形式の設備である。
【0011】
本発明の対象は、更に、加水分解可能なシラン、特にH−Si単位を含むシランの反応のためのマルチエレメント反応器(5)であって、少なくとも1つの交換可能な予備反応器の形の少なくとも2つの反応器ユニット(5.1)及び該予備反応器システムに後接続された少なくとも1つの更なる反応器ユニット(5.3)を含む形式のマルチエレメント反応器である。
【0012】
その場合に、充填体が備え付けられている予備反応器(5.1)が好ましい。充填体としては、そのためには例えば、それ以外を排除するものではないが、構造化された充填体、すなわち同じもしくは異なる寸法を有する、好ましくは1つの平均粒度を有する規則的もしくは不規則的な粒子が適しており、その際、平均粒径は、それぞれの反応ユニット(5.1)の自由横断面の横断面積の1/3以下、特に有利には1/10〜1/100に相当し、同時に平均粒子断面積が100〜10-6mm2に相当し、例えば切り屑、繊維/織物、球体、細片、円形断面もしくはほぼ円形もしくは角張った断面を有するストランド、螺旋体、円筒体、管、カップ、サドル、ハニカム体、プレート、グリッド、網状体、開放気孔の海綿状組織、不規則な成形体もしくは中空体、(構造)充填物又は上述の構造体からなる束(Gebinde)など、金属、金属酸化物、セラミック、ガラスもしくはプラスチック(例えば鋼、特殊鋼、チタン、銅、アルミニウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、コランダム、酸化ケイ素、石英、ケイ酸塩、クレイ、ゼオライト、アルカリガラス、ホウ素ガラス、石英ガラス、多孔質セラミック、ガラス化セラミック、特殊セラミック、SiC、Si34、BN、SiBNC)からなる球状体及びその他の多数のものが適している。
【0013】
図1〜6には、本発明の好ましい実施形態としての設備もしくは設備部分の流れ図が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の連続的な設備の好ましい実施形態を示している。
【図2】図2は、本発明の連続的な設備の更なる好ましい実施形態を示している。
【図3】図3は、本発明の連続的な設備の更なる好ましい実施形態を示している。
【図4】図4は、本発明の連続的な設備の更なる好ましい実施形態を示している。
【図5】図5は、集積型ブロック反応器を示している。
【図6】図6は、微細管束熱交換反応器を示している。
【0015】
ここで、図1には、好ましい連続的な設備が示されており、その設備では、出発物質成分AとBはユニット(3)で合流し、固定化触媒を含んでよいユニット(5)に供給され、そこで反応され、そして該反応生成物はユニット(8)において後処理される。
【0016】
図2は、本発明の連続的な設備の更なる好ましい実施形態を示しており、その際、触媒Cが成分Bに供給される。触媒、特に均一系触媒は、しかしながらユニット(3)にも供給でき、又は図3に示されているように、触媒Cを、成分A及びBの混合物に、マルチエレメント反応器(5)への入口直前で計量供給することができる。
【0017】
更に、それぞれの上述の物質流には、場合により更なる補助物質を添加することができる。
【0018】
その場合に、反応器ユニットとは、マルチエレメント反応器(5)の1つのエレメントを表し、その際、各エレメントは、上述の反応のための領域もしくは反応室を表す。例えば図4における(5.1)(予備反応器の形の反応器ユニット)並びに図5における(5.5)[集積型ブロック反応器(integrierter Blockreaktor)(5.3.1)の反応器ユニット]並びに(5.10)[微細管束熱交換反応器(Mikrorohrbuendelwaermetauscherreaktor)(5.9)の反応器ユニット]を参照のこと。すなわち、本発明の範囲におけるマルチエレメント反応器(5)の反応器ユニットは、特に特殊鋼製もしくは石英ガラス製のキャピラリー、特殊鋼製の管もしくは選択的に寸法決めされた特殊鋼製の反応器、例えば予備反応器(5.1)、微細管束熱交換反応器[例えば(5.9)]における管(5.10)並びに集積型ブロック反応器[例えば(5.3.1)]の形の変換領域(5.5)である。その場合に、反応器エレメントの内壁は、例えばセラミック層で、金属酸化物、例えば幾つかのみを挙げるに過ぎないがAl23、TiO2、SiO2、ZrO2、ゼオライト、シリケートからなる層で、しかしながらまた有機ポリマー、特にフルオロポリマー、例えばテフロンで被覆されていてよい。
【0019】
ここで、本発明による設備は、1もしくは複数のマルチエレメント反応器(5)を含み、該反応器は、少なくとも2〜1000000個の反応器ユニットを、その間の全ての自然数を含み、好ましくは3〜10000個の、特に4〜1000個の反応器ユニットを基礎としている。
【0020】
その際、少なくとも1つの反応器ユニットの反応器室もしくは反応室は、好ましくは、流動方向に対して垂直に、半円形の、半楕円形の、円形の、楕円形の、三角形の、正方形の、長方形の又は台形の断面を有する。好ましくは、係る断面は、75μm2〜75cm2の断面積を有する。特に0.7〜120mm2の断面積が好ましく、その間にある全ての数値が好ましい。円形の断面の場合に、≧30μmないし<15mmの直径、特に150μmないし10mmの直径が好ましい。角張った断面は、好ましくは≧30μmないし<15mmの、有利には0.1〜12mmの辺長を有する。その場合に、本発明による設備のマルチエレメント反応器(5)においては、異なる形状の断面を有する反応器ユニットが存在してよい。
【0021】
更に、反応器ユニット内の構造長、すなわち反応器ユニットへの反応流もしくは生成物流の入口(例えば(5.1及び5.1.1)又は(5.5及び5.5.1)を参照)から、出口((5.1.2)もしくは(5.5.2)を参照)までは、好ましくは、間にある全ての数値を含んで、5cmないし500m、特に有利には≧15cmないし100m、殊に有利には20cmないし50m、特に25cmないし30mである。
【0022】
本発明による設備において、反応器ユニットであって、それぞれの反応容量(反応器容量とも呼称される、すなわち断面積と構造長とからなる積)が、間にある全ての数値を含んで0.01mlないし100lである形式の反応器ユニットが好ましい。特に好ましくは、本発明による設備の反応器ユニットの反応器容量は、0.05mlないし10l、殊に有利には1mlないし5l、殊に好ましくは3mlないし2l、特に5mlないし500mlである。
【0023】
更に、本発明による設備は、好ましくは並列接続されている1もしくは複数のマルチエレメント反応器(5)を基礎とすることができる。上述のマルチエレメント反応器(5)は、しかしながら直列接続されていてもよいので、先立つマルチエレメント反応器に由来する生成物を、後続のマルチエレメント反応器の入口に供給することができる。
【0024】
本発明のマルチエレメント反応器(5)には、より好適にはそれぞれの部分流に分けられる1つの出発物質成分流(4)もしくは(5.2)(例えば図5における(5.4)並びに図6における(5.11)を参照)を供給することができる。反応後に、生成物流を統合し(例えば図5における(5.7)、図6における(5.12)並びに(7)を参照)、引き続き、好ましくは後処理ユニット(8)で後処理することができる。その場合に、係る後処理ユニット(8)は、まず凝縮段階又は蒸発段階を有してよく、前記段階に引き続き1もしくは複数の蒸留段階が行われる。
【0025】
更に、本発明による設備のマルチエレメント反応器(5)は、少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つの並列接続された特殊鋼キャピラリー又は少なくとも2つの並列接続された石英ガラスキャピラリーもしくは少なくとも1つの管束熱交換反応器(5.9)又は少なくとも1つの集積型ブロック反応器(5.3.1)を基礎とすることができる。
【0026】
その場合に、特に特殊鋼製のキャピラリー、反応器もしくは予備反応器であって、好ましくは高い硬度で高温安定性で、かつさびない特殊鋼からなる形式のものを使用できるが、例えば他を排除するものでないが、タイプ1.4571もしくは1.4462の鋼(特にDIN17007による鋼も参照)からなる予備反応器、キャピラリー、ブロック反応器、管束熱交換反応器などが存在する。更に、特殊鋼キャピラリーもしくはマルチエレメント反応器の反応室に面した表面は、ポリマー層、例えばフッ素含有層、とりわけテフロンを、又はセラミック層、好ましくは場合により多孔質のSiO2層、TiO2層もしくはAl23層を、特に触媒の取り込みのために備えていてよい。
【0027】
特に、好ましくは、集積型ブロック反応器を使用することができ、該反応器は、例えばhttp://www.heatric.com/pcheconstruction.htmlに参照される、特定の構造化がなされた金属プレート(以下、平面とも呼ばれる)から構成される、温度調節可能なブロック反応器として明らかである。
【0028】
上述の構造化された金属プレートもしくは平面であってそれらからブロック反応器を作製できるものの製造は、例えばエッチング、旋削、切削、フライス削り、型押し、圧延、火花加工、レーザ加工、プラズマ技術もしくは自体公知の別の加工法技術によって行うことができる。このように、最高の精度で、選択的に定義されかつ狙い通りに配置された構造、例えば溝又は隙間は、金属プレート、特に特殊鋼からなる金属プレートの片面に付けられる。その場合に、それぞれの溝もしくは隙間は、金属プレートの正面で始まり、それを通り抜け、一般に金属プレートの反対側の面で終わる。
【0029】
ここで、図5は、複数の反応器ユニットもしくはエレメント(5.5)を有する集積型ブロック反応器(5.3.1)の平面を示している。この場合に、係る平面は、一般に、金属製の基礎プレートであってその上に金属壁(5.6)を有し、該金属壁が反応室(5.5)を金属製のカバープレート並びに温度調節用ユニット(6.5、6.6)と一緒に、好ましくは更なる平面もしくは構造化された金属プレートと一緒に区切っているものからなる。更に、該ユニット(5.3.1)は、反応器エレメント(5.5)への出発物質混合物(5.2)の装填及び分配のための領域(5.4)と、反応領域(5.5)からの生成物流の合流のための領域(5.7)と、生成物流(7)の排出部とを含む。更に、集積型ブロック反応器(5.3.1)の範囲において、複数の係る前記の平面が重なり合って接続されていてよい。その接続は、例えば(拡散)溶接又はろう付けによって行うことができる;それらと他の利用可能な加工技術については、www.imm−mainz.de/seiten/de/u_050527115034_2679.php?PHPSESSID=75a6285eb0433122b9cecaca3092dadbも参照のこと。更に、係る集積型ブロック反応器(5.3.1)は、好ましくは温度調節ユニット(6.5、6.6)によって取り囲まれており、前記ユニットはブロック反応器(5.3.1)の加熱もしくは冷却を、すなわち狙い通りの温度操作を可能にする。そのために、媒体(D)、例えばMarlothermもしくはMediathermを熱交換器によって温度調節し、ポンプ(6.9)の導管(6.8)と温度調節ユニット(6.5)の導管(6.1)を介して供給し、(6.6)と(6.2)を介して排出し、そして熱交換器ユニット(6.7)に供給することができる。その場合に、集積型ブロック反応器(5.3.1)内で放出される反応熱は、場合により最短経路で制御することができ、それによって狙い通りの反応操作に悪影響を及ぼす温度最高値を回避することができる。しかし、集積型ブロック反応器(5.3.1)及びこれに関する温度調節ユニット(6.5、6.6)は、また、2つの反応器エレメント平面の間にそれぞれ1つの温度調節平面が配置されており、それらが領域(6.1、6.5)と(6.6、6.2)との間の温度調節媒体のさらに方向付けられた誘導を可能にするようにも構成されていてよい。
【0030】
本発明による設備において、特に、少なくとも1つの予備反応器(5.1)と、少なくとも1つの他の反応器ユニット(5.3)、例えば特殊鋼キャピラリー又は少なくとも1つの予備反応器(5.1)と、少なくとも1つの集積型ブロック反応器(5.3.1)又は少なくとも1つの予備反応器(5.1)と、少なくとも1つの微細管束熱交換反応器(5.9)を含むマルチエレメント反応器(5)が好ましい(図4を参照)。更に、予備反応器(5.1)は、より好適には、温度調節可能に、すなわち冷却可能に及び/又は加熱可能に構成されている(D、6.3、6.4)。
【0031】
一般に、既に微量の水はアルコキシ−もしくはクロロシラン出発物質の加水分解をもたらし、そして堆積と固着物の形成をもたらす。予備反応器(5.1)の係る一実施形態の特定の利点は、特にシランの反応用のマルチエレメント反応器(5)の範囲では、連続的な反応の実施の他に、加水分解物もしくは粒子の狙い通りの堆積と排出によって予期しない停止時間もしくは中止時間を有利に削減できることにある。ここで、本発明により構成された予備反応器(5.1)には、更に粒子堆積のためにフィルタが前接続及び/又は後接続されてよい。
【0032】
一般に、反応の連続的な工業的実施のための本発明による設備は、成分A及びBのための出発物質合流部(3)と、少なくとも1つの上述のマルチエレメント反応器(5)と、生成物後処理部(8)を基礎とし(図1、2及び3を参照)、その際、該マルチエレメント反応器(5)は、好ましくは充填体が備え付けられている交換可能な予備反応器(5.1)の形の少なくとも2つの反応器ユニットと、前記予備反応器システムに後接続された少なくとも1つの更なる反応器ユニット(5.3)とを含む。
【0033】
その場合に、出発物質成分A及びBは、それぞれ貯蔵ユニットからポンプと、場合により差分秤量システムとによって、連続的に領域(3)において狙い通りに合流させることができる。一般に、成分A及びBは、周囲温度で、好ましくは10〜40℃で計量供給され、領域(3)で混合される。しかしながらまた、前記成分の少なくとも1つ、両方の成分、もしくは装填物又は相応の混合物を予熱することもできる。このように、上記の貯蔵ユニットは環境調節されていてよく、かつ貯蔵容器は温度調節可能に構成されていてよい。更に、出発物質成分を圧力下で合流させることができる。導管(4)を介して、出発物質混合物をマルチエレメント反応器(5)に連続的に供給することができる。
【0034】
その際に、該マルチエレメント反応器(5)は、好ましくは温度調節媒体D(6.1、6.2)によって所望の作業温度にされ、もしくは保持されるので、不所望な温度最大値及び温度変動というバッチ式設備から知られていることは、本発明による設備においては好ましくは回避でき、又は十分に少なくすることができる。
【0035】
生成物流もしくは粗生成物流(7)は、連続的に生成物後処理部(8)、例えば精留ユニットに供給され、その際、例えば頂部(10)を介して、低沸点生成物F、例えば過剰に使用される場合により再循環可能なシランを、そして底部(9)を介して、高沸点生成物Eを連続的に取り出すことができる。しかしながら、ユニット(8)から、生成物としての側流を取り出すこともできる。
【0036】
成分A及びBの反応を触媒Cの存在下で実施せねばならない必要があれば、好ましくは、均一系触媒を出発物質流への計量供給によって装入することができる。しかしながら、同様に出発物質流に計量供給できる懸濁液触媒を使用することもできる。その際に、懸濁液触媒の最大粒径は、好ましくは、マルチエレメント反応器(5)の反応器ユニットの最小の自由断面積の大きさの1/3未満であることが望ましい。
【0037】
このように、図2に示されるのは、上記の触媒Cを好ましくは成分Bに計量供給した後に、これを成分Aと領域(3)で合流させることである。
【0038】
しかしながら、均一系触媒C又は懸濁液触媒Cを、導管(4)に導かれるA及びBの混合物へと供給することができ、好ましくはマルチエレメント反応器への入口直前で、導管(2.2)を介して計量供給することができる(図3を参照)。均一系触媒の場合と同様に、出発物質成分A及びBは、また主に液状の他の補助物質、例えばそれ以外を排除するものではないが、活性化剤、開始剤、安定化剤、抑制剤、溶剤もしくは希釈剤などを添加することもできる。
【0039】
しかし、固定化触媒Cが取り付けられているマルチエレメント反応器(5)を選択することもできる(図1を参照)。その場合に、触媒Cは、例えばそれ以外を排除するものではないが、それぞれの反応器エレメントの反応室の表面上に存在してよい。
【0040】
一般に、上述の化合物Aと化合物Bとの反応を場合により触媒並びに他の補助物質の存在下で連続的に工業的に実施するための本発明による設備は、少なくとも1つの出発物質合流部(3)と、少なくとも1つのマルチエレメント反応器(5)であって少なくとも2つの本発明による反応器ユニットを含むものと、生成物後処理部(8)とを基礎としている。より好適には、出発物質もしくは装入物質は、反応の実施のために貯蔵ユニット中に提供され、必要に応じて供給あるいは計量供給される。更に、本発明による設備には、当該技術で自体慣用の測定装置、配量装置、遮断装置、輸送装置、搬送装置、点検装置、制御装置並びに排ガス−及び廃棄物の処理装置が取り付けられている。更に、係る本発明による設備は、好ましくは、輸送可能な並びに積み重ね可能なコンテナ中に収容され、かつ柔軟に取り扱うことが可能である。ここで、本発明による設備は、迅速にかつ柔軟に、例えばそれぞれ必要とされる出発物質源もしくはエネルギー源に至らしめることができる。しかしながら、本発明による設備では、全ての利点を伴って連続的に生成物を提供でき、特に生成物が更に処理もしくは更に使用される場所で、例えば顧客により直接的に提供できる。
【0041】
α,β−不飽和化合物AとHSi−化合物Bとの反応の連続的な工業的実施のための本発明による設備の更なる特定の強調されるべき利点は、ここで、年間5kgから100000t、好ましくは10kgから10000tの間の販売量の少量の特定の生成物も簡単にかつ経済的に連続的に柔軟に製造できる可能性を有することにある。その場合に、不必要な停止時間、収率、選択性に影響を及ぼす温度最大値と温度変動並びに長すぎる滞留時間と、それに伴う不所望な二次反応を有利に回避することができる。特に、係る設備は、経済的観点、環境的観点、そして顧客満足度の観点でも当該シランの製造のために最適に利用することができる。
【0042】
従って、本発明の更なる対象は、一般式(I)
Y−Si(R′)m(OR)3-m (I)
[式中、Yは、式H3C[O−(CH22nO−(CH23−のポリエーテルアルキル基(式中、nは1〜20である)を表し、又は式H[O−(CH22nO−(CH23−のポリエーテルアルキル基(式中、nは1〜20である)を表し、R′及びRは、無関係に、C1〜C4−アルキル基、好ましくはメチル、エチル、n−プロピルを表し、mは0又は1である]で示されるポリエーテルアルキルアルコキシシランの連続的な工業的な製造方法において、出発物質成分A及びBの反応を、触媒C並びに場合により他の成分の存在下で、少なくとも1つの交換可能な予備反応器(5.1)の形の少なくとも2つの反応器ユニットと、前記予備反応器システムに後接続された少なくとも1つの更なる反応器ユニット(5.3)とを基礎とするマルチエレメント反応器(5)中で実施する製造方法である。
【0043】
好ましくは、その場合に、該反応は、少なくとも1つのマルチエレメント反応器(5)において実施され、前記反応器の反応器ユニットは、特殊鋼もしくは石英ガラスからなり、あるいは前記反応器の反応室は、特殊鋼もしくは石英ガラスによって区切られており、その際、該反応器ユニットの表面は、例えばテフロンで被覆されあるいは覆われていてよい。
【0044】
更に、本発明による方法では、それぞれの断面が半円形、半楕円形、円形 楕円形、三角形、正方形、長方形もしくは台形に構成された反応器ユニットを使用することが好ましい。
【0045】
その際に、好ましくは、それぞれの断面積が75μm2ないし75cm2である反応器ユニットが使用される。
【0046】
更に、5cmないし200mの、特に好ましくは10cmないし120mの、殊に好ましくは15cmないし80mの、特に18cmないし30mの構造長であって上述の範囲に含まれる全ての可能な数値を含む長さを有する係る反応器ユニットが使用される。
【0047】
このように、本発明による方法では、より好適には、それぞれの反応容量が、間にある全ての数値を含んで0.01mlないし100lである、好ましくは0.1mlないし50l、特に好ましくは1mlないし20l、殊に有利には2mlないし10l、特に5mlないし5lである反応器ユニットが使用される。
【0048】
本発明による方法では、上述の反応は、同様に好ましくは、(i)少なくとも2つの並列接続された予備反応器(5.1)及び前記予備反応器に後接続された少なくとも1つの特殊鋼製キャピラリー又は(ii)少なくとも2つの並列接続された予備反応器(5.1)及び前記予備反応器に後接続された少なくとも1つの石英ガラス製キャピラリー又は(iii)少なくとも2つの並列接続された予備反応器(5.1)及び少なくとも1つの集積型ブロック反応器(5.3.1)又は(iv)少なくとも2つの並列接続された予備反応器(5.1)及び少なくとも1つの管束熱交換反応器(5.9)を基礎とするマルチエレメント反応器(5)を有する設備において実施することができる。
【0049】
特に、その場合には、少なくとも2つの本発明による交換可能な予備反応器(5.1)を含むマルチエレメント反応器(5)が好ましく、その際、前記反応器には、使用される加水分解可能なシランの加水分解産物の堆積のために、特に上述のような充填体が備え付けられている。特に好ましくは、本発明による方法は、特殊鋼製の反応器ユニット中で実施される。
【0050】
更に、本発明による方法では、出発物質/生成物混合物と接触している、マルチエレメント反応器の反応器ユニットの表面は触媒で覆われていることが好ましい。
【0051】
本発明による方法の範囲において、成分A及びBの反応が均一系触媒Cの存在下で実施される限りは、驚くべきことに、マルチエレメント反応器を、均一系触媒C及び成分Bの混合物又は均一系触媒C及び成分A及びBの混合物での1もしくは複数回のすすぎ工程によって、又は例えば10〜120分間という短時間の設備の稼働で、かつ場合によってはより高い触媒濃度で予備調整することが特に好ましいと判明した。
【0052】
マルチエレメント反応器の予備調整のために使用される物質は、収容され、後に出発物質流に少なくとも部分的に計量供給することができ、又は直接的に生成物後処理部に供給して、後処理することができる。
【0053】
マルチエレメント反応器の前記の予備調整によって、特にそれが特殊鋼からなる場合には、意想外かつ好ましくは、より迅速に最大の収率において一定の運転状態に至らしめることができる。
【0054】
本発明による方法では、上記の反応は、気相及び/又は液相中で実施することができる。その際に、反応混合物もしくは生成物混合物は、単相、二相もしくは三相で存在してよい。好ましくは、本発明による方法では、該反応は、単相で、特に液相中で実施される。
【0055】
ここで、本発明による方法は、好ましくはマルチエレメント反応器を使用しつつ、10〜250℃の温度で、0.1〜500バール(絶対圧)で作業される。好ましくは、その場合に、成分A及びBの反応は、特にヒドロシリル化は、マルチエレメント反応器において、50〜200℃、好ましくは60〜180℃で、かつ0.5〜300バール(絶対圧)、好ましくは1〜200バール(絶対圧)、特に好ましくは2〜50バール(絶対圧)で実施される。
【0056】
一般に、本発明による設備における差圧、すなわち出発物質合流部(3)と生成物後処理部(8)との間の差圧は、1〜10バール(絶対圧)である。好ましくは、本発明による設備は、特にトリメトキシシラン(TMOS)を使用する場合には、圧力保持弁を装備している。好ましくは、圧力保持弁は、1〜100バール(絶対圧)、好ましくは70バール(絶対圧)まで、特に有利には40バール(絶対圧)まで、特に10〜35バール(絶対圧)の値に設定される。
【0057】
反応は、本発明によれば、定常状態で、1〜1・104-1の線形速度(LV)で実施できる。その場合に、反応器ユニットにおける物質流の流動速度は、好ましくは定常状態で0.0001〜1m/s、特に有利には0.0005〜0.7m/s、特に0.05〜3m/sの範囲で、かつ上述の範囲内の全ての可能な数の範囲である。本発明による反応で優勢な反応器表面積(A)の反応器容量(V)に対する比率を引き合いに出せば、20〜5000m2/m3のA/V比率であって前記範囲にある全ての可能な個々の値を含む比率が、本発明による方法の好ましい実施のために有利である。その場合に、A/V比率は、伝熱並びに考えられる不均一な(壁面)効果の尺度である。
【0058】
このように、該反応は、本発明による方法では、好ましくは10秒ないし60分、好ましくは1ないし30分、特に好ましくは2ないし20分、特に3ないし10分の平均滞留時間(θ)で実施される。また、ここでは、改めて、前記の範囲に示される全ての可能な数値が個別に指摘される。
【0059】
成分Aとしては、本発明による方法の場合には、例えばそれ以外を排除するものではないが、以下のα,β−不飽和ポリエーテル化合物又はそれらの相応の混合物を使用することができる:
3C[O−(CH22nO−CH2CH=CH2(式中、nは、1〜20、特に2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18及び19の数である)、H[O−(CH22nO−CH2CH=CH2(式中、nは、1〜20、特に2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18及び19の数である)。
【0060】
好ましくは、本発明による方法では、一般式(I)に相当し、その際、mが0であり、かつnが2〜20、特に有利には4〜18、殊に有利には6〜16、特に8〜12、すなわち平均して約10であるDynasylan(登録商標)4140、つまり3−(メチルポリエチレングリコール)プロピルトリアルコキシシランが製造される。
【0061】
成分Bとしては、本発明による方法では、一般式(II)
HSi(R′)m(OR)3-m (II)
[式中、R′及びRは、無関係に、C1〜C4−アルキル基を表し、かつmは0又は1であり、好ましくはR′は、メチルであり、基Rとしては、メチルもしくはエチルが好ましい]で示されるシランが適している。
【0062】
ここで、本発明によれば好ましくは、トリメトキシシラン(TMOS)、トリエトキシシラン(TEOS)、メチルジメトキシシランもしくはメチルジエトキシシランが使用される。
【0063】
成分A及びBは、本発明による方法では、好ましくは1:5〜100:1、特に好ましくは1:4〜5:1、殊に有利には1:2〜2:1、例えばそれ以外を排除するものではないが、1:0.7〜0.9、特に1.0:1.5〜1.5:1.0のモル比A対Bであって上述の範囲内の全ての考えられる数を含む比率で使用される。
【0064】
本発明による方法は、有利には均一系触媒Cの存在下で実施される。しかし、本発明による方法は、触媒を添加しなくても作業できるが、その際に一般に収率の明らかな低下が見積もられる。
【0065】
特に、本発明による方法は、式(I)によるオルガノシランの製造のためのヒドロシリル化反応の実施のために用いられ、その際、特に、一連のPt錯体触媒からなる均一系触媒、例えばカルステッド(Karstedt)型の触媒、例えばキシレン中のPt(0)−ジビニルテトラメチルジシロキサン、PtCl4、H2[PtCl6]もしくはH2[PtCl6]・6H2O、有利には"シュパイヤー(Speyer)触媒"、シス−(Ph3P)2PtCl2、Pd、Rh、Ru、Cu、Ag、Au、Irの錯体触媒又は別の遷移金属もしくは貴金属の錯体触媒が使用される。その場合に、自体公知の錯体触媒は、有機溶剤、好ましくは極性溶剤中で、例えばそれ以外を排除するものではないが、エーテル、例えばTHF、ケトン、例えばアセトン、アルコール、例えばイソプロパノール、脂肪族もしくは芳香族の炭化水素、例えばトルエン、キシレンに溶解させてよい。
【0066】
付加的に、該均一系触媒もしくは均一系触媒の溶液には、活性化剤を、例えば幾つかのみを挙げるに過ぎないが、有機酸もしくは無機酸の形で、例えばHCl、H2SO4、H3PO4、モノカルボン酸もしくはジカルボン酸、HCOOH、H3C−COOH、プロピオン酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、フタル酸の形で添加することができる。
【0067】
更に、有機酸もしくは無機酸を反応混合物に添加することで、他の好ましい機能、例えば安定化剤もしくは微量の不純物のための抑制剤としての機能が発揮されることがある。
【0068】
本発明による方法で、均一系触媒もしくは懸濁液触媒が使用される場合に、オレフィン成分Aは、触媒に対して、金属に関連して、好ましくは2000000:1〜1000:1のモル比で、特に好ましくは1000000:1〜4000:1、特に500000:1〜10000:1及び上述の範囲内の可能な全ての数値の比率で使用される。
【0069】
しかしながらまた、遷移金属もしくは貴金属の系列からの固定化触媒あるいは不均一系触媒も、あるいは相応の多元素触媒を、ヒドロシリル化反応の実施のために使用することもできる。ここで、例えば、それ以外を排除するものではないが、貴金属スラリーもしくは活性炭上の貴金属を使用することもできる。しかしながらまた、マルチエレメント反応器の範囲内で不均一系触媒を取り込むために固定床を設けることもできる。ここで、例えばそれ以外を排除するものではないが、球体、ストランド、ペレット、円筒体、管などの、とりわけSiO2、TiO2、Al23、ZrO2からなる担体上で、反応器ユニットの反応領域に装入する不均一系触媒であってもよい。
【0070】
触媒床を有する集積型ブロック反応器のための例は、http://www.heatric.com/iqs/sid.0833095090382426307150/mab_reactors.htmlに示されている。
【0071】
更に、補助物質として、溶剤もしくは希釈剤、例えば幾つかを挙げるに過ぎないが、アルコール、脂肪族並びに芳香族の炭化水素、エーテル、エステル、ケトン、CKW、FCKWを使用することができる。係る補助物質は、例えば生成物後処理において生成物から除去することができる。
【0072】
同様に、本発明の方法では、抑制剤、例えば重合抑制剤又は相応の混合物を、追加の補助物質として使用することができる。
【0073】
一般に、本発明による方法は、以下のように実施される:
一般に、まず出発物質成分A、B及び場合によりC並びに場合により他の補助物質を計量供給し、混合する。その場合に、均一系触媒を、≦±20%の、有利には≦±10%の精度で計量供給するようにつとめる。特定の場合には、均一系触媒並びに場合により他の補助物質を、成分A及びBからなる混合物中に、マルチエレメント反応器への入口の直前ではじめて計量供給してもよい。引き続き、出発物質混合物をマルチエレメント反応器に供給し、そしてそれらの成分を温度制御下で反応させることができる。しかしながらまた、マルチエレメント反応器を、まず触媒含有の出発物質もしくは出発物質混合物ですすぎ、あるいは予備調整した後で、反応の実施のために温度を動かすことができる。しかしながらまた、マルチエレメント反応器の予備調整は、軽く高められた温度下で実施することもできる。マルチエレメント反応器で合流される、あるいは得られる生成物流(粗生成物)を、次いで本発明による設備の生成物後処理部で好適な様式で後処理することができる、例えばそれ以外を排除するものではないが、真空蒸留によって後処理することができる。またその際に、ストリッピング剤を使用することもできる。該方法は、好ましくは連続的に実施される。
【0074】
ここで、本発明による方法は、本発明による設備を使用しつつ、好ましくは連続的に、年間5kgないし100000tの生成物排出量で作業することができる。
【0075】
本発明を以下の実施例により詳細に説明するが、その対象を制限するものではない。
【0076】
実施例
実施例1
3−(メチルポリエチレングリコール)プロピルトリメトキシシランの製造
3−(メチルポリエチレングリコール)プロピルトリメトキシシラン(Dynasylan(登録商標)4140)の連続的な製造のために使用される設備は、実質的に、出発物質貯蔵容器、HPLCポンプ、制御ユニット、測定ユニット及び配量ユニット、T型ミキサ、4つの並列接続された交換可能でかつ充填体を装備した特殊鋼製の予備反応器(それぞれ直径10mm、長さ50mm、平均1.5mmの直径を有する充填体としての特殊鋼製小球)、特殊鋼製の集積型ブロック反応器(それについては図5も参照のこと)、温度制御装置、圧力保持弁、N2で駆動されるストリッピング塔と、上述の設備部分の間にある該設備における出発物質供給のための接続導管並びに生成物排出部、再循環排出部及び排ガス排出部とからなっている。更に、予備反応器及びブロック反応器については、加熱システムと冷却システムに関する温度調節部を設けた。
【0077】
まず、室温で、ポリエーテルオレフィン(ZALP500、Goldschmidt)及びヘキサクロロ白金酸のアセトン性のHOAc含有の溶液を、オレフィン:Ptのモル比=48000:1及びオレフィン:酢酸のモル比=1:0.01において計量供給し、あるいは混合し、そしてT型ミキサにおいてトリメトキシシラン(TMOS、Degussa AG)とオレフィン:TMOSのモル比=1:0.85において混合し、そして反応器システムに供給した。その際、圧力は、25±10バールであった。該設備の運転に際して、できる限りH2O不含の設備状態に努めることが望ましい。更に、該設備を、反応器中の温度を高める前に出発物質混合物で2時間にわたりすすいだ。合計で10kg/hの流量の場合に、反応器中の温度を動かし、110℃に調整し、そして27日間にわたり連続的に稼働させた。反応器の後で、複数の時間間隔において、GC−WLD−測定のためにサンプルを採取した。オレフィンに対する転化率は、平均で97%であり、かつ選択性は、目的生成物に対して、75%であった。得られた粗生成物を、連続的にストリッピング塔に導き、そして150℃のジャケット温度、20ミリバールの圧力で、N2(容積流=100l/h、T=150℃)で連続的にストリッピングした。頂部生成物を、凝縮させた。それは、ほぼ4質量%がアセトンからなり、5質量%が酢酸からなり、78質量%がTMOSからなり、11質量%がテトラメトキシシランからなり、かつ2質量%がメタノールからなっていた。底部物から連続的に約9.8kg/hのヒドロシリル化生成物(Dynasylan(登録商標)4140)が取り出された。
【0078】
実施例2
3−(メチルポリエチレングリコール)プロピルトリメトキシシランの製造
3−(メチルポリエチレングリコール)プロピルトリメトキシシラン(Dynasylan(登録商標)4140)の連続的な製造のために、実施例1による設備を使用した。
【0079】
まず、室温で、ポリエーテルオレフィン(ZALP500、Goldschmidt)及びPt(0)錯体触媒(CPC072、Degussa)のキシレン含有の溶液を、オレフィン:Ptのモル比=48000:1及びオレフィン:プロピオン酸のモル比=1:0.01において計量供給し、あるいは混合し、そしてT型ミキサにおいてトリメトキシシラン(TMOS、Degussa AG)とオレフィン:TMOSのモル比=1:0.85において混合し、そして反応器システムに供給した。その際、圧力は、25±10バールであった。該設備の運転に際して、できる限りH2O不含の設備状態に努めることが望ましい。更に、該設備を、反応器中の温度を高める前に出発物質混合物で2時間にわたりすすいだ。合計で10kg/hの流量の場合に、反応器中の温度を動かし、130℃に調整し、そして10日間にわたり連続的に稼働させた。反応器の後で、複数の時間間隔において、GC−WLD−測定のためにサンプルを採取した。オレフィンに対する転化率は、平均で97%であり、かつ選択性は、目的生成物に対して、80%であった。得られた粗生成物を、連続的にストリッピング塔に導き、そして150℃のジャケット温度、200ミリバールの圧力で、N2(容積流=100l/h、T=150℃)で連続的にストリッピングした。頂部生成物を、凝縮させた。それは、9質量%までがプロピオン酸からなり、80質量%がTMOSからなり、10質量%がテトラメトキシシランからなり、かつ1質量%がキシレンからなっていた。底部物から連続的に約9.8kg/hのヒドロシリル化生成物(Dynasylan(登録商標)4140)が取り出された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α,β−不飽和の脂肪族のポリエーテル化合物AをHSi−化合物Bと触媒C及び場合により更なる補助物質の存在下に反応させる反応の連続的な工業的な実施のための設備であって、少なくとも、成分A(1)及びB(2)用の出発物質合流部(3)と、少なくとも1つの交換可能な予備反応器の形の少なくとも2つの反応器ユニット(5.1)及び該予備反応器システムに後接続された少なくとも1つの更なる反応器ユニット(5.3)を含む少なくとも1つのマルチエレメント反応器(5)と、生成物後処理部(8)とを基礎とする形式の設備。
【請求項2】
請求項1に記載の設備であって、1〜100000個の反応器ユニットを含む反応器ユニット(5.3)を特徴とする設備。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の設備であって、予備反応器(5.1)が5mlないし10lの自由反応容量を有し、かつ反応器ユニット(5.3)が合計で1mlないし100lの自由反応容量を有する反応器ユニットを特徴とする設備。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の設備であって、(i)少なくとも2つの並列接続された予備反応器(5.1)及び前記予備反応器に後接続された少なくとも1つの特殊鋼製キャピラリー又は(ii)少なくとも2つの並列接続された予備反応器(5.1)及び前記予備反応器に後接続された少なくとも1つの石英ガラス製キャピラリー又は(iii)少なくとも2つの並列接続された予備反応器(5.1)及び少なくとも1つの集積型ブロック反応器(5.3.1)又は(iv)少なくとも2つの並列接続された予備反応器(5.1)及び少なくとも1つの微細管束熱交換反応器(5.9)を基礎とする少なくとも1つのマルチエレメント反応器(5)を特徴とする設備。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の設備であって、充填体が装填されている少なくとも2つの予備反応器(5.1)を特徴とする設備。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の設備であって、4ないし8個の並列接続されかつ充填体で充填された予備反応器(5.1)と、該予備反応器に後接続され、10〜4000個の反応器ユニット(5.5)を含む集積型ブロック反応器(5.3.1)を含むマルチエレメント反応器(5)を特徴とする設備。
【請求項7】
加水分解可能なシランの反応のためのマルチエレメント反応器(5)であって、交換可能な予備反応器の形の少なくとも2つの反応器ユニット(5.1)と、前記予備反応器に後接続された少なくとも1つの更なる反応器ユニット(5.3)とを含むマルチエレメント反応器。
【請求項8】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の設備又は請求項7に記載のマルチエレメント反応器であって、構造化された充填体(5.1.3)で充填されている予備反応器(5.1)を特徴とする設備又はマルチエレメント反応器。
【請求項9】
一般式(I)
Y−Si(R′)m(OR)3-m (I)
[式中、Yは、式H3C[O−(CH22nO−(CH23−のポリエーテルアルキル基(式中、nは1〜20である)を表し、又は式H[O−(CH22nO−(CH23−のポリエーテルアルキル基(式中、nは1〜20である)を表し、R′及びRは、無関係に、C1〜C4−アルキル基を表し、mは0又は1である]で示されるポリエーテルアルキルアルコキシシランの連続的な工業的な製造方法において、出発物質成分A及びBの反応を、触媒C並びに場合により他の成分の存在下で、少なくとも1つの交換可能な予備反応器の形の少なくとも2つの反応器ユニット(5.1)と、前記予備反応器システムに後接続された少なくとも1つの更なる反応器ユニット(5.3)とを基礎とするマルチエレメント反応器(5)中で実施する製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、該反応を、反応器ユニットが特殊鋼で仕上げられており、かつ予備反応器(5.1)の少なくとも2つに充填体(5.1.3)が装填されている少なくとも1つのマルチエレメント反応器(5)において実施することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の方法において、一連のH3C[O−(CH22nO−CH2CH=CH2(n=1〜20)又はH[O−(CH22nO−CH2CH=CH2(n=1〜20)からの成分Aと、一般式(II)
HSi(R′)mOR3-m (II)
[式中、R′及びRは、無関係に、C1〜C4−アルキル基を表し、かつmは、0又は1である]のシラン(成分B)とを反応させることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項9から11までのいずれか1項に記載の方法において、成分B(水素シラン)及びA(ポリエーテルオレフィン)を0.7〜0.9対1のモル比で使用することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項9から12までのいずれか1項に記載の方法において、均一系触媒Cを、貴金属について、成分Aに対するモル比1〜2対60000で使用することを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項9から13までのいずれか1項に記載の方法において、反応を、PtCl4又はH2PtCl6を基礎とする触媒Cの存在下で実施することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項9から14までのいずれか1項に記載の方法において、マルチエレメント反応器(5)を触媒含有の出発物質混合物で予備調整することを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項9から15までのいずれか1項に記載の方法において、反応を、マルチエレメント反応器(5)において、90〜140℃の温度で、かつ15〜35バール(絶対圧)の圧力で実施することを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項9から16までのいずれか1項に記載の方法において、反応を、1分ないし10分の平均滞留時間で実施することを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項9から17までのいずれか1項に記載の方法において、反応を、反応器表面積対反応器容量(A/V)の比率20〜50000m2/m3で実施することを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項9から18までのいずれか1項に記載の方法において、連続的に出発物質成分A、B及びCを計量供給し、そして混合し、引き続き、出発物質混合物の規定の容積流をマルチエレメント反応器(5)に供給し、反応させ、その場合に得られた生成物混合物を次いで後処理することを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項9から19までのいずれか1項に記載の方法において、成分A、B及びCを基礎とし、更なる成分として有機酸もしくは無機酸を含有する出発物質混合物を使用することを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項9から20までのいずれか1項に記載の方法において、更なる成分として酢酸を使用し、かつ酢酸対成分Aのモル比を0.01〜5対10000に調整することを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項9から21までのいずれか1項に記載の方法において、設備の規定の作業時間後に、充填体(5.1.3)で充填されていてよい少なくとも1つの予備反応器(5.1)を、充填体が装填されていてよい新たな予備反応器と交換し、一方で、少なくとも1つの他の予備反応器(5.1)を、連続的な方法の実施のために更に稼働させることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項9から22までのいずれか1項に記載の方法において、予備反応器(5.1)中の流動速度が、後接続された反応器ユニットでの流動速度よりも低いことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−500310(P2010−500310A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523224(P2009−523224)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056919
【国際公開番号】WO2008/017552
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】